(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】管装置
(51)【国際特許分類】
F16L 33/00 20060101AFI20231214BHJP
F16L 11/118 20060101ALI20231214BHJP
F16L 59/153 20060101ALI20231214BHJP
E03C 1/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F16L33/00 B
F16L11/118
F16L59/153
E03C1/02
(21)【出願番号】P 2019148326
(22)【出願日】2019-08-13
【審査請求日】2022-03-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】古田 建世
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/191735(WO,A1)
【文献】特開昭62-171591(JP,A)
【文献】特開2002-106759(JP,A)
【文献】特開2000-240889(JP,A)
【文献】米国特許第06173995(US,B1)
【文献】特開2002-372170(JP,A)
【文献】実開昭60-064390(JP,U)
【文献】特開2008-202743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/00-11/26
F16L 33/00
F16L 33/01
F16L 59/153
E03C 1/02
B32B 1/00-43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非発泡の合成樹脂材料からなる筒状の内層と、前記内層の外周面に密着し、発泡させた合成樹脂材料からなる筒状の外層との二層構造を軸方向全体に有し、
軸方向に沿って交互に設けられた環状の凹部と環状の凸部とを有する、又は軸方向に沿って螺旋状に延びる凹条部と凸条部とを有し、外面において軸方向に沿って凹凸が交互に連続する波付二重管と、
前記波付二重管の軸方向端部が内挿される管接続部、及び波付二重管の前記凹部又は前記凹条部に入り込む係止突起を有する管接続部材と、を備え、
前記係止突起を前記凹部又は前記凹条部に入り込ませ、かつ前記係止突起を、入り込んだ前記凹部又は前記凹条部に対し前記軸方向に隣り合う前記凸部又は前記凸条部に係止させた状態で、前記波付二重管を当該波付二重管の前記軸方向に沿って前記管接続部材に対する抜け出し方向に前記波付二重管を引っ張ったときに、前記外層は、前記係止突起に押圧された当該外層の圧縮変形に起因する前記係止突起の係止が解除されないように、当該外層の圧縮変形を抑制する硬さを有しており、前記管接続部材から当該波付二重管が抜け出すことを抑制
し、
前記係止突起を係止させた状態では、当該係止突起の先端は、前記凸部又は前記凸条部に位置する内層の最外位置よりも前記波付二重管の中心軸線寄りに位置する管装置。
【請求項2】
非発泡の合成樹脂材料からなる筒状の内層と、前記内層の外周面に密着し、発泡させた合成樹脂材料からなる筒状の外層との二層構造を軸方向全体に有し、
軸方向に沿って交互に設けられた環状の凹部と環状の凸部とを有する、又は軸方向に沿って螺旋状に延びる凹条部と凸条部とを有し、外面において軸方向に沿って凹凸が交互に連続する波付二重管と、
前記波付二重管の周方向に沿う支持部、当該支持部を構造物に固定するための固定部、及び前記支持部に設けられ前記波付二重管の前記凹部又は前記凹条部に入り込む係止突起を有する管支持部材と、を備え、
前記係止突起を前記凹部又は前記凹条部に入り込ませ、かつ前記係止突起を、入り込んだ前記凹部又は前記凹条部に対し前記軸方向に隣り合う前記凸部又は前記凸条部に係止させた状態で、前記波付二重管を当該波付二重管の前記軸方向に沿って前記管支持部材に対する抜け出し方向に前記波付二重管を引っ張ったときに、前記外層は、前記係止突起に押圧された当該外層の圧縮変形に起因する前記係止突起の係止が解除されないように、当該外層の圧縮変形を抑制する硬さを有しており、前記管支持部材から当該波付二重管が抜け出すことを抑制
し、
前記係止突起を係止させた状態では、当該係止突起の先端は、前記凸部又は前記凸条部に位置する内層の最外位置よりも前記波付二重管の中心軸線寄りに位置する管装置。
【請求項3】
前記波付二重管において、前記外層の発泡倍率は、3倍未満である請求項1又は請求項2に記載の管装置。
【請求項4】
前記波付二重管において、径方向内側に向けた外力を加えた際に、前記外層が圧縮変形する前に前記波付二重管自身が前記径方向へ潰れるように変形する請求項1又は請求項2に記載の管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建築物内において、トイレ、風呂等の湯水消費側に湯水を供給するために、合成樹脂材料により形成された通水管が配管されている。通水管には、例えば、温水や冷水が流通する。また、通水管は、合成樹脂材料製の保護管内に挿通されて保護されている。例えば、特許文献1において、通水管の端部は、湯水消費側に設置された継手の第1接続口に接続され、この継手の第2接続口は湯水消費側の水栓器具に接続される。特許文献1において、継手は水栓ボックスの内部に収容される。水栓ボックスは、波付形状の上記保護管が連結される保護管連結筒を備える。保護管連結筒は、水栓ボックスの外面から突設されるとともに、内周に複数の爪片を備える。そして、保護管連結筒の内側に保護管の接続端部を挿入して、複数の爪片を保護管の溝部に入り込ませることにより、水栓ボックスに保護管が接続される。この保護管の内側に通水管が挿通され、保護管により通水管が保護される。
【0003】
また、保護管においては、通水管の保護だけでなく、通水管を流通する湯水の断熱性能や耐火性能等の向上も求められている。そこで、例えば特許文献2のように、断熱性能を有する保護管が用いられる。特許文献2において、継手は、水栓器具等の配管接続部に螺着される螺着部を備えるとともに、螺着部の反対側に、通水管の端部が接続される内側接続部を備える。また、継手は、内側接続部の外周側に外側接続部を備える。また、特許文献2の継手においては、外側接続部に接続された保護管が抜け外れるのを抑制する抜止手段を備える。そして、内側接続部に通水管の端部が接続され、外側接続部に保護管の端部が接続されることにより、通水管が保護管によって保護されるとともに断熱されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-162208号公報
【文献】特開2009-127835号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献2において、保護管は軟質性の発泡ポリエチレンフォームなどの断熱発泡体から形成されており、弾力性及び可撓性を有する。このため、抜止手段によって外側接続部に抜け止めされた保護管が撓み変形して外側接続部から抜けるなど、保護管が、当該保護管の軸方向に移動してしまう虞がある。
【0006】
本発明の目的は、機能性能を有しつつ軸方向への移動を抑制できる管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するための管装置は、非発泡の合成樹脂材料からなる筒状の内層と、前記内層の外周面に密着し、発泡させた合成樹脂材料からなる筒状の外層との二層構造を軸方向全体に有し、軸方向に沿って交互に設けられた環状の凹部と環状の凸部とを有する、又は軸方向に沿って螺旋状に延びる凹条部と凸条部とを有し、外面において軸方向に沿って凹凸が交互に連続する波付二重管と、前記波付二重管の軸方向端部が内挿される管接続部、及び波付二重管の前記凹部又は前記凹条部に入り込む係止突起を有する管接続部材と、を備え、前記係止突起を前記凹部又は前記凹条部に入り込ませ、かつ前記係止突起を、入り込んだ前記凹部又は前記凹条部に対し前記軸方向に隣り合う前記凸部又は前記凸条部に係止させた状態で、前記波付二重管を当該波付二重管の前記軸方向に沿って前記管接続部材に対する抜け出し方向に前記波付二重管を引っ張ったときに、前記外層は、前記係止突起に押圧された当該外層の圧縮変形に起因する前記係止突起の係止が解除されないように、当該外層の圧縮変形を抑制する硬さを有しており、前記管接続部材から当該波付二重管が抜け出すことを抑制することを要旨とする。
【0008】
上記問題点を解決するための管装置は、非発泡の合成樹脂材料からなる筒状の内層と、前記内層の外周面に密着し、発泡させた合成樹脂材料からなる筒状の外層との二層構造を軸方向全体に有し、軸方向に沿って交互に設けられた環状の凹部と環状の凸部とを有する、又は軸方向に沿って螺旋状に延びる凹条部と凸条部とを有し、外面において軸方向に沿って凹凸が交互に連続する波付二重管と、前記波付二重管の周方向に沿う支持部、当該支持部を構造物に固定するための固定部、及び前記支持部に設けられ前記波付二重管の前記凹部又は前記凹条部に入り込む係止突起を有する管支持部材と、を備え、前記係止突起を前記凹部又は前記凹条部に入り込ませ、かつ前記係止突起を、入り込んだ前記凹部又は前記凹条部に対し前記軸方向に隣り合う前記凸部又は前記凸条部に係止させた状態で、前記波付二重管を当該波付二重管の前記軸方向に沿って前記管支持部材に対する抜け出し方向に前記波付二重管を引っ張ったときに、前記外層は、前記係止突起に押圧された当該外層の圧縮変形に起因する前記係止突起の係止が解除されないように、当該外層の圧縮変形を抑制する硬さを有しており、前記管支持部材から当該波付二重管が抜け出すことを抑制することを要旨とする。
【0009】
また、管装置について、前記波付二重管において前記内層及び前記外層が重なる方向を積層方向とした場合、前記波付二重管の前記軸方向に沿った断面視において、前記凸部又は前記凸条部に位置する前記内層のうち、最も前記積層方向の端に位置する部分を最外位置とすると、前記係止突起は、前記積層方向に沿って前記最外位置よりも前記波付二重管の中心軸線寄りに入り込んでもよい。
【0010】
前記波付二重管において前記外層の発泡倍率は、3倍未満であることとしてもよい。
【0012】
前記波付二重管において径方向内側に向けた外力を加えた際に、前記外層が圧縮変形する前に前記波付二重管自身が前記径方向へ潰れるように変形することとしてもよい。
前記係止突起を係止させた状態で、当該係止突起の先端は、前記凸部又は前記凸条部に位置する内層の最外位置よりも前記波付二重管の中心軸線寄りに位置することとしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、機能性能を有しつつ軸方向への移動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図6】(a)は別例の波付二重管を示す側面図、(b)は別例の波付二重管を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、管装置及び波付二重管を具体化した一実施形態を
図1~
図5にしたがって説明する。
図1~
図3に示すように、管装置10は、管接続部材としての水栓ボックス11と、波付二重管50と、を有する。水栓ボックス11は、箱状のボックス本体13を備える。ボックス本体13は、流体管継手40を収容する収容空間12を有する。
【0016】
ボックス本体13は、前板部14と、天板部15と、下板部16と、背面板部17とを有する四角箱状である。前板部14には複数の外壁用ビス挿通孔14aが設けられている。外壁用ビス挿通孔14aは、ボックス本体13の前面側において外壁板W1に固定するための図示しないビスが挿通される。
【0017】
天板部15には周辺部材用ビス挿通孔15aが設けられ、下板部16及び背面板部17には図示しない周辺部材用ビス挿通孔が設けられている。周辺部材用ビス挿通孔15aは、ボックス本体13の背面側において周辺部材に固定するための図示しないビスが挿通される。天板部15の側面には固定用ビス挿通孔15cが設けられている。固定用ビス挿通孔15cには、ボックス本体13を柱Hに固定するためのビス18が挿通される。
【0018】
水栓ボックス11は、ボックス本体13の下板部16に管接続部20を備える。管接続部20は、ボックス本体13の下板部16に袋ナット19を介して接続された円筒状の接続用筒部21と、接続用筒部21に接続される円筒状のコネクタ22と、を有する。コネクタ22は、内周面に複数の係止突起23を有する。複数の係止突起23は、コネクタ22の周方向へ間隔を空けて設けられている。そして、接続用筒部21に接続されたコネクタ22に、波付二重管50の接続端部が内挿された状態では、波付二重管50の後述の凹部53に係止突起23が入り込む。波付二重管50の凹部53に係止突起23が入り込むことで、コネクタ22を介して波付二重管50が接続用筒部21に抜け出ないように連結される。
【0019】
水栓ボックス11は、前板部14の前面に開口26を有する。開口26は、流体管継手40の第2接続口42をボックス本体13の外方に臨ませる。水栓ボックス11は、前板部14における開口26の周縁から円筒状に立設する継手固定筒部24を有する。継手固定筒部24の内周面には雌ねじ24aが形成されている。また、継手固定筒部24の雌ねじ24aには、固定リング25の外周面に設けられた雄ねじ25aが螺合される。そして、ボックス本体13内に流体管継手40が収容された状態で、継手固定筒部24の雌ねじ24aと、固定リング25の雄ねじ25aとを螺合させることにより、ボックス本体13と固定リング25によって流体管継手40の一部が挟持され、この挟持により、流体管継手40がボックス本体13に固定される。
【0020】
流体管継手40はエルボ状である。流体管継手40は、流体の流れる方向に沿った一端部に円筒状の第1接続口41を備えるとともに、他端部に円筒状の第2接続口42を備える。第1接続口41の外周面には、複数の抜止突条44が設けられている。第1接続口41は、ボックス本体13内において通水管Pと接続される。第2接続口42は、前板部14の開口26から、一部が壁表に突出して、水栓器具等と接続される。
【0021】
第1接続口41には、通水管Pを介してスリーブ49が外嵌めされる。具体的には、通水管Pの先端部にスリーブ49を嵌め込んだ状態において、第1接続口41の外側に通水管Pの先端部を嵌め込んだ後、スリーブ49を通水管Pの外側に圧入する。すると、通水管Pの内周面に抜止突条44が食い込むとともにスリーブ49の圧入によって、
図3に示すように、流体管継手40の第1接続口41に通水管Pが接続される。
【0022】
次に、波付二重管50について説明する。
図4及び
図5に示すように、波付二重管50は、環状の凹部53と環状の凸部54とを軸方向に交互に連続させた構造を有し、波付二重管50は複数の凹部53と複数の凸部54を有する。なお、波付二重管50の中心軸線L1の延びる方向を波付二重管50の軸方向とし、波付二重管50の中心軸線L1に直交する仮想線L2の延びる方向を波付二重管50の径方向とする。波付二重管50の径方向への最大寸法である外径は、上記接続用筒部21の内径より若干小さい。波付二重管50は、接続用筒部21の内側に挿入可能である。
【0023】
各凸部54は、波付二重管50の周方向に延びる先端面54aを有する。また、各凸部54は、先端面54aの周方向に延びる一対の周縁それぞれから中心軸線L1に向けて延びる側面54bを有する。つまり、各凸部54は、先端面54aと一対の側面54bによって構成されている。軸方向に隣り合う凸部54同士は、底面53aによって繋がっている。よって、凹部53は、底面53aと、軸方向において底面53aを挟み込む一対の側面54bによって区画されているといえる。
【0024】
凹部53には、管接続部20のコネクタ22に設けられた係止突起23が入り込む。上記のように係止突起23は、コネクタ22の周方向に並んで複数設けられている。このため、一つの凹部53に複数の係止突起23が入り込む。係止突起23は、当該係止突起23が入り込んだ凹部53に対し、軸方向に隣り合う凸部54の外面に係止する。係止突起23は、軸方向に向かい合う凸部54の側面54bに係止する。接続用筒部21及びコネクタ22の内側に波付二重管50が挿入され、凹部53に係止突起23が入り込んだ状態では、係止突起23の先端23aは、凹部53の底面53aに近接する。
【0025】
波付二重管50は、非発泡の合成樹脂材料からなる円筒状の内層51と、内層51の外周面に密着し、発泡させた合成樹脂材料からなる円筒状の外層52との二層構造を軸方向全体に有する。つまり、波付二重管50は、円筒状をなす内層51の外周に外層52を重ねて構成された二層管であるとともに、軸方向に沿った断面が波形状をなす波付管である。内層51と外層52は、波付二重管50の径方向に積層されており、波付二重管50の径方向は、内層51と外層52の積層方向でもある。
【0026】
内層51は、非発泡の合成樹脂材料としての高密度ポリエチレン(HD:High Density Polyethylene)によって形成されている。高密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンが分岐をほとんど持たず直鎖状に結合した結晶性の熱可塑性樹脂に属する合成樹脂である。高密度ポリエチレンの耐熱温度は90~110度である。高密度ポリエチレンの結晶性は低密度ポリエチレンの結晶性より高い。
【0027】
外層52は、発泡させた合成樹脂材料としての低密度ポリエチレン(LD:Low Density Polyethylene)によって形成されている。低密度ポリエチレンは、繰り返し単位のエチレンがランダムに分岐を持って結合した結晶性の熱可塑性樹脂に属する合成樹脂である。低密度ポリエチレンは、他のポリエチレンと比較し軟らかい性質を有する。低密度ポリエチレンの耐熱温度は70~90度である。低密度ポリエチレンは、発泡していることから、高密度ポリエチレンと比較すると軟らかい。
【0028】
低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、電気絶縁性や耐酸性、耐アルカリ性などの耐薬品性が良好である。また、低密度ポリエチレン及び高密度ポリエチレンは、耐寒性、断熱性に優れ、内層51及び外層52を有する波付二重管50は、一つの機能性能としての断熱性能を有する。
【0029】
外層52は発泡させた合成樹脂材料からなり、内層51は非発泡の合成樹脂材料からなる。外層52の発泡倍率は、3倍未満が好ましく、2倍より小さいのがより好ましい。なお、外層52の発泡倍率が3倍以上になると、外層52が圧縮変形しやすくなり、凸部54との係止状態を維持できず好ましくないからである。つまり、本実施形態では、外層52の発泡倍率を3倍未満に設定することで、凸部54における外層52を発泡させた合成樹脂材料としつつも圧縮変形しにくくし、凸部54に対する係止突起23の係止が解除されない硬さを有するようにしている。さらに、波付二重管50は、当該波付二重管50の径方向内側に向けた外力を加えた際に、外層52が圧縮変形する前に波付二重管50自身が径方向へ潰れるように変形するように形成されている。
【0030】
内層51及び外層52において、波付二重管50の径方向への寸法を厚さとすると、内層51の厚さは、外層52の厚さより薄い。言い換えると、外層52の厚さは、内層51の厚さより厚い。内層51の厚さを、外層52の厚さより薄くすることによって、波付二重管50の屈曲方向や巻回方向への可撓性を確保している。つまり、上記したように外層52は内層51より軟らかいため、外層52は曲げ易いことから厚さを厚くしつつ、硬い内層51の厚さを外層52より薄くすることで、波付二重管50全体として可撓性を確保している。
【0031】
凸部54に位置する内層51のうち、最も積層方向の端に位置する部分を最外位置56とする。波付二重管50が水栓ボックス11の管接続部20に接続され、係止突起23が凹部53に入り込んだ状態では、係止突起23の先端23aは、波付二重管50の径方向、つまり、内層51と外層52の積層方向に沿って最外位置56よりも波付二重管50の中心軸線L1寄りまで入り込む。
【0032】
次に、管装置10の製造方法を作用とともに説明する。
図1又は
図3に示すように、外壁板W1に対し、ボックス本体13の外壁用ビス挿通孔14aに挿通したビスを外壁板W1の裏面に固定し、ボックス本体13を外壁板W1の裏面に固定する。なお、外壁板W1には、壁孔Waが形成されており、この壁孔Waに水栓ボックス11の継手固定筒部24が挿入され、ボックス本体13の開口26は、外壁板W1の表側に向けて開口している。
【0033】
次に、外壁板W1の裏側において、水栓ボックス11の管接続部20の接続用筒部21の内側に波付二重管50の接続端部を挿入し、コネクタ22の係止突起23を波付二重管50の凹部53に入り込ませる。すると、
図5に示すように、係止突起23の入り込んだ凹部53に隣り合う凸部54の外面に、係止突起23が係止して、管接続部20に波付二重管50が接続される。つまり、断熱性能を有する波付二重管50が水栓ボックス11に接続され、管装置10が完成する。
【0034】
次に、波付二重管50における水栓ボックス11への接続端部とは反対側の端部から通水管Pを押し込みながら、該通水管Pの先端部をボックス本体13内まで挿入する。このとき、波付二重管50が引っ張られるなどして、波付二重管50に対し、水栓ボックス11からの抜け出し方向への力が作用するが、係止突起23と凸部54との係止状態が維持され、水栓ボックス11から波付二重管50が抜け出ることが抑制される。つまり、凸部54に対する係止突起23の係止が解除されず、波付二重管50の軸方向への移動が抑制される。
【0035】
次に、外壁板W1の表側において、ボックス本体13の開口26を通じて通水管Pを外壁板W1の表側まで引き出す。外壁板W1の表側に引き出された通水管Pの端部を流体管継手40の第1接続口41に接続する。その後、外壁板W1の表側に引き出された通水管P及び流体管継手40をボックス本体13内に戻し、ボックス本体13の継手固定筒部24の雌ねじ24aに固定リング25の雄ねじ25aを螺合する。すると、流体管継手40がボックス本体13に固定されるとともに、ボックス本体13内に流体管継手40が収容される。その結果、通水管Pの端部もボックス本体13内に収容される。そして、通水管Pは、流体管継手40への接続端部側が水栓ボックス11によって保護され、その他の部分が断熱性能を有する波付二重管50によって保護される。そして、通水管Pを流れる流体は、波付二重管50によって断熱される。
【0036】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)波付二重管50の内層51が非発泡の合成樹脂材料としての高密度ポリエチレンであるのに対し、外層52が、発泡させた合成樹脂材料としての低密度ポリエチレンである。そして、凸部54における外層52を発泡させた合成樹脂材料により形成しつつも、発泡倍率を圧縮変形しにくい値に設定することで、凸部54に対する係止突起23の係止が解除されない硬さを有するようにしている。よって、水栓ボックス11に接続された波付二重管50に対し、波付二重管50の抜き出し方向への力が作用したとき、係止突起23と凸部54との係止状態を維持できる。このため、水栓ボックス11の管接続部20から波付二重管50が抜け出ることを抑制でき、波付二重管50の軸方向への移動が抑制される。その結果として、断熱性能を有する波付二重管50を水栓ボックス11に接続することができる。
【0037】
(2)管装置10において、係止突起23の先端23aは、凸部54に位置する内層51の最外位置56よりも波付二重管50の中心軸線L1寄りに位置する。このため、軸方向に沿った波付二重管50の断面視において、係止突起23は、波付二重管50の径方向において外層52のほぼ全体に係止する。よって、凸部54に対する係止突起23の係止状態が維持されやすく、外層52の変形抑制と協働して、水栓ボックス11の管接続部20から波付二重管50が抜け出ることをより一層抑制できる。
【0038】
(3)波付二重管50の外層52は、発泡倍率が3倍未満であり、発泡倍率が小さい。このような発泡倍率に設定することにより、外層52を圧縮変形しにくくし、波付二重管50に対し、管接続部20から抜き出る方向への力が作用したとき、凸部54に対する係止突起23の係止状態が維持されやすい。
【0039】
(4)波付二重管50は、発泡させた外層52により、断熱性能を有するとともに外層52が発泡させた低密度ポリエチレンで形成されている。そして、外層52の発泡倍率を圧縮変形しにくい値に設定している。例えば、通水管Pの断熱のために通水管Pの回りに断熱材を巻き付けた場合と異なり、波付二重管50の剛性を維持でき、ひいては圧縮変形しにくくし、係止突起23の係止が解除されることを抑制できる。したがって、波付二重管50を用いることで、通水管Pを断熱できる波付二重管50であっても水栓ボックス11に接続できる。
【0040】
(5)波付二重管50は、当該波付二重管50の径方向内側に向けた外力を加えた際に、外層52が圧縮変形する前に波付二重管50自身が径方向へ潰れるように変形するように形成されている。このため、外層52としては所要の剛性を有することとなり、凸部54における外層52を圧縮変形しにくくし、凸部54に対する係止突起23の係止が解除されない。
【0041】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○
図6(a)又は
図6(b)に示すように、波付二重管60は、軸方向に沿って螺旋状に延びる凹条部61と凸条部62とを有し、内面及び外面に、軸方向に沿って凹凸が交互に連続する形状であってもよい。凹条部61及び凸条部62は、波付二重管60の軸方向の一端側から他端側へ向かって波付二重管50の周方向に沿って連続的に螺旋状に延びる。波付二重管60において、軸方向に隣り合う凸条部62同士の間に凹条部61が形成されている。凹条部61及び凸条部62は互いに交差することなく延びる。
【0042】
そして、波付二重管60は、非発泡の合成樹脂材料からなる円筒状の内層63と、内層63の外周面に密着し、発泡させた合成樹脂材料からなる円筒状の外層64との二層構造を軸方向全体に有する。波付二重管60は、軸方向に沿った断面が波形状をなす波付管である。内層63は、高密度ポリエチレンにより形成され、外層64は、低密度ポリエチレンにより形成されている。なお、凸条部62に位置する内層63のうち、最も積層方向の端に位置する部分を最外位置66とする。波付二重管60が水栓ボックス11の管接続部20に接続され、係止突起23が凹条部61に入り込んだ状態では、係止突起23の先端23aは、内層63と外層64の積層方向に沿って最外位置66よりも波付二重管60の中心軸線L1寄りまで入り込む。
【0043】
管装置10においては、波付二重管60が水栓ボックス11の管接続部20に接続され、係止突起23が凹条部61に入り込んだ状態では、係止突起23の先端23aは、波付二重管60の径方向、つまり、内層63と外層64の積層方向に沿って最外位置66よりも波付二重管50の中心軸線L1寄りに位置するまで入り込む。
【0044】
○
図7に示すように、管装置70は、波付二重管50,60を支持する管支持部材71と、波付二重管50,60とから構成されていてもよい。管支持部材71は、合成樹脂又は金属材料により略C字状に形成された支持部72と、支持部72の外面から延設された板状の固定部73と、支持部72に設けられた係止突起74と、を有する。
【0045】
支持部72は、円の一部が切り欠かれたC形状を有する。支持部72の厚さ方向の両端面に位置する円弧面のうち内側に面する円弧面は、波付二重管50,60の外面を支持する支持面72aを構成し、この支持面72aは、波付二重管50,60の周方向に沿う。
【0046】
係止突起74は、支持面72aからC形状の中心軸線に向けて突出する。係止突起74は、支持面72aの周方向に沿って間隔を空けて複数設けられている。固定部73は、支持部72の外面から延設され、当該支持部72を構造物、例えばフロア面Fに固定するために設けられている。固定部73には固定孔73aが設けられている。そして、固定孔73aに挿通したビス77をフロア面Fに固定することにより、管支持部材71がフロア面Fに固定されるようになっている。
【0047】
そして、支持部72の内側に波付二重管50,60を挿入し、係止突起74を、波付二重管50の凹部53や波付二重管60の凹条部61に入り込ませることにより、管支持部材71に波付二重管50,60が支持され、管装置70が構成される。
【0048】
このような管装置70においても、波付二重管50,60の内層51,63が非発泡の高密度ポリエチレンであるのに対し、外層52,64が発泡させた低密度ポリエチレンである。そして、波付二重管50において、発泡させた合成樹脂材料からなる外層52,64であっても、その発泡倍率を圧縮変形しにくい値としている。よって、管支持部材71に支持された波付二重管50,60に対し、波付二重管50,60の抜き出し方向への力が作用したとき、係止突起23,74による押圧によって凸部54又は凸条部62の外層52,64が圧縮変形することが抑制される。このため、管支持部材71から波付二重管50,60が抜け出ることを抑制でき、波付二重管50,60の軸方向への移動が抑制できる。その結果として、断熱性能を有する波付二重管50,60を管支持部材71に支持させることができる。
【0049】
なお、管支持部材71の固定部73が固定される構造物は、フロア面F以外でもよい。構造物は、管支持部材71によって波付二重管50を支持する場所によって異なり、構造物は、柱や天井であってもよい。
【0050】
○ 係止突起23,74による押圧によって凸部54又は凸条部62の外層52,64が圧縮変形することを抑制できれば、外層52,64の発泡倍率は3倍以上であってもよいし、外層52,64及び内層51,63を形成する合成樹脂材料の種類は変更してもよい。
【0051】
○ 実施形態では、波付二重管50,60を通水管Pの保護管に具体化したが、波付二重管50,60は、ケーブル等の配線を保護する保護管でもよい。この場合、管装置10を構成する管接続部材は、配線ボックスや配電ボックスになる。そして、波付二重管50,60が備える機能性能は耐火性能などが好ましい。また、波付二重管50,60は、エアコンの冷媒が流通する流体管を保護する保護管でもよい。この場合、管装置10を構成する管接続部材は、エアコンになる。また、波付二重管50,60が備える機能性能は断熱性能になる。
【0052】
○ 波付二重管50,60の内層51,63を高密度ポリエチレンから形成し、外層52,64を低密度ポリエチレンから形成したが、内層51,63及び外層52,64の材質は、例えば、発泡させた合成樹脂材料として、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂(EVA)やウレタンなどに適宜変更してもよい。
【0053】
○ 管装置10,70において、係止突起23,74は、波付二重管50,60の径方向に沿って、最外位置56,66を中心軸線L1寄りに超えなくてもよい。
【符号の説明】
【0054】
F…構造物としてのフロア面、L1…中心軸線、10,70…管装置、11…管接続部材としての水栓ボックス、20…管接続部、23,74…係止突起、50,60…波付二重管、51,63…内層、52,64…外層、53…凹部、54…凸部、56,66…最外位置、61…凹条部、62…凸条部、71…管支持部材、72…支持部、73…固定部。