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特許7402642認知的検知・分析・判定・応答フレームワークによりインテリジェントなネットワークサービスを可能にするシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】認知的検知・分析・判定・応答フレームワークによりインテリジェントなネットワークサービスを可能にするシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 45/00 20220101AFI20231214BHJP
【FI】
H04L45/00
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019164259
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2020043565
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-06-20
(31)【優先権主張番号】201821034028
(32)【優先日】2018-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】510337621
【氏名又は名称】タタ コンサルタンシー サービシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TATA Consultancy Services Limited
【住所又は居所原語表記】Nirmal Building,9th Floor,Nariman Point,Mumbai 400021,Maharashtra,India.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ラス、ヘマント クマール
(72)【発明者】
【氏名】ナダフ、シャメームライ モヒヌッディン
(72)【発明者】
【氏名】パニグラヒ、ビグナラジュ
(72)【発明者】
【氏名】カルジェー、ジョティルモイ
(72)【発明者】
【氏名】シャイレンドラ、サマル
(72)【発明者】
【氏名】バタチャルヤ、アブヒジャン
(72)【発明者】
【氏名】ミシュラ、ガリマ
(72)【発明者】
【氏名】パル、アルパン
(72)【発明者】
【氏名】プルショタマン、バラムルィドハル
【審査官】木村 雅也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0182344(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0093924(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第01850554(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0062746(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0010610(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0131799(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0244614(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0049755(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークとアプリケーションの間に配される中間層を使用して導入される検知・分析・判定・応答フレームワークにより、ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワークを可能にするためのプロセッサ実装方法であって、
1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータを検知して、複数の使用事例に関して得た多重時間尺度データセットである、複数の検知情報を得るステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、フィルタ処理し同期させた前記複数の検知情報を分析して、複数の導出パラメータを生成するステップであり、前記導出パラメータは、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータおよびプロトコルの調整されたパラメータの統計情報に対応するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の導出パラメータに基づき複数の判定規則を決定するステップであり、前記判定規則は、アプリケーション、プロトコル、およびネットワークの連合エミュレートシステム、ならびに観察したQoSパラメータの出力として定式化されるものであるステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数のシナリオに関して前記複数の判定規則を検証して、リアルタイム判定またはオフライン判定に対応する複数の判定を得るステップであり、前記検証は、エミュレーションに基づく試験によって実行し、観察データとエミュレーションにより生成した合成データは、複数の判定規則のために使用するステップと、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、前記複数の判定に基づき、(i)ネットワーク制御、(ii)アプリケーション制御、および(iii)プロトコル制御のうち少なくとも1つを可能にするステップとを備える
ことを特徴とするプロセッサ実装方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアプリケーションパラメータは、符号体系、エンド・ツー・エンド・ネットワークでの圧縮タイプ、アプリケーションを通して伝達されるデータの品質に対応する
請求項1に記載のプロセッサ実装方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つのネットワークパラメータは、(i)帯域幅の可用性および使用量、(ii)複数の遅延特性、(iii)スイッチでのポート可用性、(iv)エンド・ツー・エンドでのネットワーク可用性、(v)信号対干渉および雑音比または受信信号強度インジケータ、および(vi)複数のプロトコル関連パラメータのうち少なくとも1つに対応する
請求項1に記載のプロセッサ実装方法。
【請求項4】
現在の検知データに基づき前記ネットワークおよび前記アプリケーションの次の状態を予測するステップをさらに備える
請求項1に記載のプロセッサ実装方法。
【請求項5】
ネットワークとアプリケーションの間に配される中間層を使用して導入され、ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワークを可能にするための認知プラットフォームを伴う検知・分析・判定・応答システム(100)であって、
命令を記憶するメモリ(102)と、
1つまたは複数の通信インタフェース(104)と、
前記1つまたは複数の通信インタフェース(104)を介して前記メモリ(102)に連結された1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(106)と、を備え、
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(106)は、前記命令により、
少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータを検知して、複数の使用事例に関して得た多重時間尺度データセットである、複数の検知情報を得て、
フィルタ処理し同期させた前記複数の検知情報を分析して、複数の導出パラメータを生成し、
前記導出パラメータは、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータおよびプロトコルの調整されたパラメータの統計情報に対応し、
前記複数の導出パラメータに基づき複数の判定規則を決定し、
前記判定規則は、アプリケーション、プロトコル、およびネットワークの連合エミュレートシステム、ならびに観察したQoSパラメータの出力として定式化されるものであり、
複数のシナリオに関して前記複数の判定規則を検証して、リアルタイム判定またはオフライン判定に対応する複数の判定を得て、
前記検証は、エミュレーションに基づく試験によって実行し、観察データとエミュレーションにより生成した合成データは、複数の判定規則のために使用し、
前記複数の判定に基づき、(i)ネットワーク制御、(ii)アプリケーション制御、および(iii)プロトコル制御のうち少なくとも1つを可能にするように構成される
ことを特徴とする検知・分析・判定・応答システム。
【請求項6】
前記少なくとも1つのアプリケーションパラメータは、符号体系、エンド・ツー・エンド・ネットワークでの圧縮タイプ、アプリケーションを通して伝達されるデータの品質に対応する
請求項5に記載の検知・分析・判定・応答システム。
【請求項7】
前記少なくとも1つのネットワークパラメータは、(i)帯域幅の可用性および使用量、(ii)複数の遅延特性、(iii)スイッチでのポート可用性、(iv)エンド・ツー・エンドでのネットワーク可用性、(v)信号対干渉および雑音比または受信信号強度インジケータ、および(vi)複数のプロトコル関連パラメータのうち少なくとも1つに対応する
請求項5に記載の検知・分析・判定・応答システム。
【請求項8】
前記1つまたは複数のハードウェアプロセッサ(106)は、前記命令により、現在の検知データに基づき、前記ネットワークおよび前記アプリケーションの次の状態を予測するようにさらに構成される
請求項5に記載の検知・分析・判定・応答システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年9月10日に提出されたインド国特許出願第201821034028号明細書(特許文献1)に基づく優先権を主張する。前述の出願の内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書の本開示は、一般にInternet of Thingsに関し、より詳細には認知的検知・分析・判定・応答フレームワークによりインテリジェントなネットワークサービスを可能にするシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
インダストリ4.0(Industry 4.0)のシナリオでは、センサ、ゲートウェイ、ロボット、無人搬送車(Automated Guided Vehicle、AGV)、ドローンなどのようなさまざまなInternet of Things(IoT)機器を伴う適用分野が多くある。これらの適用分野では、高い処理量、短い待ち時間、および高い信頼度が要求される。適用分野の必要性を理解し、その必要性をネットワークパラメータおよびプロトコルパラメータに変換することは、大きな課題である。この場合、使用するIoT機器は、数が多く、多くの場合、Wi-Fi(Wireless Fidelity)、Bluetooth、LTE(Long Term Evolution)、LAA(Licensed Assisted Access)などのような異なるネットワーキング/通信技術を使用し、処理するために中央ノードまたはクラウドに伝達する必要があるデータトラフィックを適度な量から膨大な量まで生成する。これらの適用分野の必要性、機器およびネットワークの可用性、ならびに導入するプロトコルの能力に基づき、信頼性があり、安定した、費用効果の高い、管理しやすいネットワーク解決手段を提供することは、依然として大きな課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】インド国特許出願第201821034028号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ネットワークに制約のある適用分野に、高い体感品質(Quality of Experience、QoE)を保証する動的な最適意思決定は、重要な課題である。そのようなシナリオでは、判定規則は、多数のパラメータ(適用分野、ネットワーク、リンク、エネルギー、プロトコルなど)に依存し、したがって、即座の判定は不可能である。このほか、適切なフレームワークを用いて、ネットワーク/適用分野/プロトコルなどの変化に適切なタイミングで応答することは、極めて重要になっている。さらに、フレームワークはまた、適用分野、機器、プロトコル、およびネットワーキング技術に非依存性であるべきである。既存の解決手段は、今日では大部分は、機器または適用分野または技術を独立に、すなわち、サイロの中で管理する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態は、従来のシステムで本発明者らが認識した、上述の技術的問題の1つまたは複数に対する解決手段として技術的改善を提示する。たとえば、一実施形態では、検知・分析・判定・応答(sense analyze decide respond、SADR)フレームワークにより、ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワークを可能にするための方法を提供する。プロセッサ実装方法は、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータを検知して、複数の検知情報を得るステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、フィルタ処理し同期させた複数の検知情報を分析して、複数の導出パラメータを生成するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数の導出パラメータに基づき、複数の規則を決定するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数のシナリオに関して複数の規則を検証して、複数の判定を得るステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数の判定に基づき、(i)ネットワーク制御、(ii)アプリケーション制御、および(iii)プロトコルの制御のうち少なくとも1つを可能にするステップとを含む。複数の検知情報は、複数の使用事例に関して得た多重時間尺度データセットである。複数の判定は、リアルタイム判定またはオフライン判定に対応する。
【0007】
ある実施形態では、少なくとも1つのアプリケーションパラメータは、(i)複数のサービス品質(Quality of Service、QoS)パラメータおよび(ii)複数の主要性能指標(Key Performance Index、KPI)パラメータのうち少なくとも一方に対応してもよい。ある実施形態では、少なくとも1つのネットワークパラメータは、(i)帯域幅の可用性および使用量、(ii)複数の遅延特性、(iii)スイッチでのポート可用性、(iv)エンド・ツー・エンドでのネットワーク可用性、(v)信号対干渉および雑音比(signal to interference and noise ratio、SINR)または受信信号強度インジケータ(received signal strength indicator、RSSI)、および(vi)複数のプロトコル関連パラメータのうち少なくとも1つに対応してもよい。ある実施形態では、現在の検知データに基づき、ネットワークおよびアプリケーションの次の状態を予測するステップがさらに含まれる。
【0008】
別の様態では、ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワークを可能にするための認知プラットフォームを伴う検知・分析・判定・応答(SADR)システムが提供される。システムは、命令を記憶するメモリと、1つまたは複数の通信インタフェースと、1つまたは複数の通信インタフェースを介してメモリに連結された1つまたは複数のハードウェアプロセッサとを備え、1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、命令により、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータを検知して、複数の検知情報を得て、フィルタ処理し同期させた複数の検知情報を分析して、複数の導出パラメータを生成し、複数の導出パラメータに基づき複数の規則を決定し、複数のシナリオに関して複数の規則を検証して、複数の判定を得て、複数の判定に基づき、(i)ネットワーク制御、(ii)アプリケーション制御、および(iii)プロトコル制御のうち少なくとも1つを可能にするように構成される。複数の検知情報は、複数の使用事例に関して得た多重時間尺度データセットである。複数の判定は、リアルタイム判定またはオフライン判定に対応する。
【0009】
ある実施形態では、少なくとも1つのアプリケーションパラメータは、(i)複数のサービス品質(QoS)パラメータおよび(ii)複数の主要性能指標(KPI)パラメータのうち少なくとも一方に対応してもよい。ある実施形態では、少なくとも1つのネットワークパラメータは、(i)帯域幅の可用性および使用量、(ii)複数の遅延特性、(iii)スイッチでのポート可用性、(iv)エンド・ツー・エンドでのネットワーク可用性、(v)信号対干渉および雑音比(SINR)または受信信号強度インジケータ(RSSI)、および(vi)複数のプロトコル関連パラメータのうち少なくとも1つに対応してもよい。ある実施形態では、1つまたは複数のハードウェアプロセッサは、命令により、現在の検知データに基づき、ネットワークおよびアプリケーションの次の状態を予測するようにさらに構成される。
【0010】
さらに別の様態では、1つまたは複数のハードウェアプロセッサにより実行されたとき、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータを検知して、複数の検知情報を得るステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、フィルタ処理し同期させた複数の検知情報を分析して、複数の導出パラメータを生成するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数の導出パラメータに基づき、複数の規則を決定するステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数のシナリオに関して複数の規則を検証して、複数の判定を得るステップと、1つまたは複数のハードウェアプロセッサを介して、複数の判定に基づき、(i)ネットワーク制御、(ii)アプリケーション制御、および(iii)プロトコルの制御のうち少なくとも1つを可能にするステップのうち少なくとも1つをもたらす1つまたは複数の命令を備える1つまたは複数の非一時的機械可読情報記憶媒体が提供される。複数の検知情報は、複数の使用事例に関して得た多重時間尺度データセットである。複数の判定は、リアルタイム判定またはオフライン判定に対応する。
【0011】
ある実施形態では、少なくとも1つのアプリケーションパラメータは、(i)複数のサービス品質(QoS)パラメータおよび(ii)複数の主要性能指標(KPI)パラメータのうち少なくとも一方に対応してもよい。ある実施形態では、少なくとも1つのネットワークパラメータは、(i)帯域幅の可用性および使用量、(ii)複数の遅延特性、(iii)スイッチでのポート可用性、(iv)エンド・ツー・エンドでのネットワーク可用性、(v)信号対干渉および雑音比(SINR)または受信信号強度インジケータ(RSSI)、および(vi)複数のプロトコル関連パラメータのうち少なくとも1つに対応してもよい。ある実施形態では、現在の検知データに基づき、ネットワークおよびアプリケーションの次の状態を予測するステップがさらに含まれる。
【0012】
前述の一般的記述も以下の詳細な記述も、代表的なものであり、説明のためだけのものであって、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【0013】
本開示に組み込まれ、本開示の一部を構成する添付図面は、代表的実施形態を示し、本明細書と共に、開示する原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】本開示の実施形態による検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークの機能構成図
図1B】本開示の実施形態による検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークの代表的機能構成図
図1C】本開示の実施形態による検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークの代表的機能構成図
図2】本開示の実施形態によるSADRフレームワークの判定モジュールの分解図
図3】本開示の実施形態による、中間層を使用して導入してもよいSADRフレームワークを示す説明図
図4】本開示の実施形態によるSADRフレームワークの代表的導入モデルを示す構成図
図5】複数のアクセスポイント(access point、AP)および複数のワークステーションを伴う、従来型非SADRの実験的セットアップの説明図
図6】本開示の実施形態によるSADRフレームワークに基づくネットワーキングの実験的セットアップの説明図
図7】ハンドオフする前に著しい遅延およびパケット破棄を伴う従来型実験的セットアップによる実験結果を示すグラフ
図8】本開示の実施形態によるSADRフレームワークを導入することによる実験結果を示すグラフ
図9】本開示の実施形態による検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークにより、ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワークを可能にするための方法を示す流れ図
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、代表的実施形態について記述する。図では、参照番号の1つまたは複数の左端の数字は、参照番号が最初に出現する図を示す。好都合なときはいつでも、同じまたは類似する部分を指すために、図面全体を通して同じ参照番号を使用する。開示する原理の例および特徴について本明細書で記述するが、開示する実施形態の範囲を逸脱しない範囲で、修正形態、適応形態、および他の実装形態が可能である。以下の詳細な記述は、単に代表的なものと見なされ、真の範囲は、以下の特許請求の範囲により示される。
【0016】
本開示の実施形態は、アプリケーションを意識したネットワーキングおよびネットワークを意識したアプリケーションを提供するように構成された認知プラットフォームである、検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークを提供する。認知プラットフォームは、検知モジュール、分析モジュール、判定モジュール、および応答モジュールを含む。各モジュールは、クラウドプラットフォーム、デスクトップシステム、および類似のシステムのうち少なくとも1つを通して導入することができる1組のサービスを含む。検知モジュールは、サービス品質(QoS)パラメータ(たとえば、遅延、処理量、パケット破棄など)、主要性能指標(KPI)パラメータ(たとえば、ネットワーク可用性、ネットワーク使用量、遅延限界、信頼度、アクセス可能性)などのアプリケーションパラメータ、ならびに帯域幅の可用性および使用量、遅延特性、スイッチでのポート可用性、エンド・ツー・エンドでのネットワーク可用性、信号対干渉および雑音比(SINR)または受信信号強度インジケータ(RSSI)、プロトコル関連パラメータなどのようなネットワークパラメータを検知するように構成される。検知サービスはまた、1つまたは複数のネットワークタイプ(Wi-Fi、WLAN、LAN、5Gなど)および1つまたは複数のアプリケーション(たとえば、ビデオ、オーディオ、閲覧)に特有とすることができる。検知サービスを利用して、ネットワークおよびアプリケーションに関係がある情報を収集し、収集した情報を、分析モジュールを通して分析する。
【0017】
分析モジュールは、検知情報を分析するための1組のサービスを含む。本開示の実施形態では、1組のサービスは、処理量分析、SINRまたはRSSIの分析、負荷分析、アプリケーションタイプ、アプリケーション使用量、パケット破棄、パケット遅延、さまざまな学習または機械学習を通したサービスなどを含む。判定モジュールは、1組のサービスを含み、リアルタイム判定またはオフライン判定を提供する。1組のサービスは、静的と動的の両方の、規則に基づく判定を含む。判定モジュールはまた、サービスの必要性に応じて新しい規則を形作り、かつ新しい判定を行うことができるように、人工知能(artificial intelligence、AI)に基づくサービスを含む。本開示の実施形態は、新しい規則を形成する際に、モデル検証器と共に、エミュレータまたはシミュレータを使用することができる。判定モジュールは、プラットフォームの頭脳のように活動する。応答モジュールは、動的ネットワーク準備コマンド、ネットワーク機器構成、ファイアウォール規則またはルーティング規則などのネットワーク設定規則、優先度規則などを含む1組のサービスを含む。応答モジュールで使用するサービスは、符号体系、エンド・ツー・エンド・ネットワークでの圧縮タイプ、アプリケーションを通して伝達すべきデータのタイプおよび品質などのようなアプリケーションパラメータを構成することができるように、1つまたは複数のアプリケーションと相互に作用することができる。
【0018】
次に、図面を参照すると、より詳細には、類似する参照文字が図全体を通して、対応する特徴を一貫して示す図1図9を参照すると、好ましい実施形態が示されており、これらの実施形態について、以下の代表的なシステムおよび/または方法に関連して記述する。
【0019】
図1Aは、本開示の実施形態による検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークの機能構成図を示す。システム100は、プロセッサ106などの1つまたは複数のハードウェアプロセッサ、I/Oインタフェース104、メモリ102などの少なくとも1つのメモリを含み、または他の方法でそれらと通信状態にあり、メモリ102は、知識グラフ学習モジュール108をさらに含む。ある実施形態では、システム100内の独立型ユニットとして知識グラフ学習モジュール108を実装することができる。別の実施形態では、メモリ102内のモジュールとして知識グラフ学習モジュール108を実装することができる。プロセッサ106、I/Oインタフェース104、およびメモリ102をシステムバスにより連結してもよい。
【0020】
I/Oインタフェース104は、さまざまなソフトウェアおよびハードウェアのインタフェースを、たとえばウェブインタフェース、グラフィカル・ユーザ・インタフェースなどを含んでもよい。インタフェース104は、さまざまなソフトウェアおよびハードウェアのインタフェースを、たとえば、キーボード、マウス、外部メモリ、カメラ機器、およびプリンタなどの1つまたは複数の周辺機器のためのインタフェースを含んでもよい。I/Oインタフェース104は、たとえばローカル・エリア・ネットワーク(local area network、LAN)、ケーブルなどのような有線ネットワーク、および無線LAN(Wireless LAN、WLAN)、携帯電話、または衛星などの無線ネットワークを含む、多種多様なネットワークおよびプロトコルのタイプの範囲内で複数の通信を容易にすることができる。この目的のために、I/Oインタフェース104は、いくつかのコンピューティングシステムを互いに接続するための、または他のサーバコンピュータに接続するための、1つまたは複数のポートを含んでもよい。I/Oインタフェース104は、いくつかのデバイスを互いに接続するための、または他のサーバに接続するための、1つまたは複数のポートを含んでもよい。
【0021】
1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ、中央処理装置、状態機械、論理回路、および/または動作命令に基づき信号を操作する任意の機器として、ハードウェアプロセッサ106を実装してもよい。ハードウェアプロセッサ106は、さまざまな能力の中でもとりわけ、メモリ102に格納されたコンピュータ可読命令を取り出し、実行するように構成される。
【0022】
メモリ102は、たとえば、スタティック・ランダム・アクセス・メモリ(static random access memory、SRAM)およびダイナミック・ランダム・アクセス・メモリ(dynamic random access memory、DRAM)などの揮発性メモリ、ならびに/または読出し専用メモリ(read only memory、ROM)、消去/プログラム可能ROM、フラッシュメモリ、ハードディスク、光ディスク、および磁気テープなどの不揮発性メモリを含む、当技術分野で公知の任意のコンピュータ可読媒体を含んでもよい。ある実施形態では、メモリ102は、複数のモジュール、および複数のモジュールが処理し、受信し、生成したデータを記憶するためのリポジトリを含む。複数のモジュールは、特定のタスクを行う、または特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、およびデータ構造などを含んでもよい。
【0023】
リポジトリは、とりわけシステムデータベースおよび他のデータを含む。他のデータは、複数のモジュールの中の1つまたは複数のモジュールが実行した結果、生成されたデータを含む。
【0024】
図1Bおよび図1Cは、本開示の実施形態による検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークの代表的機能構成図を示す。SADRフレームワークは、アプリケーションおよびネットワーキングのSDN化制御を伴う、すなわち、(a)ネットワークパラメータの細かな/粗い制御、(b)ネットワークおよびアプリケーションのための自己回復(self-healing)解決手段を伴う認知アーキテクチャである。ある実施形態では、SADRフレームワークは、(ネットワーク用およびアプリケーション用にそれぞれ別個に)一般的インタフェースを提案する。これらのインタフェースは、ネットワークおよびアプリケーションの技術のシームレスなサポートを行うように、ソフトウェア・ディファインド・ネットワーク(Software Defined Network、SDN)方法論(たとえば、SDN化)の概念を利用する。SADRフレームワークは、検知モジュール202、分析モジュール204、判定モジュール206、および応答モジュール208を備える。
【0025】
SADRフレームワークは、(a)プローブエージェントを通して、たとえば、アプリケーション、ネットワーク、機器、およびプロトコルを検知するステップ、(b)適切な判定を行うために、収集したデータを分析する、たとえば、オンラインおよびオフラインの分析を行うステップ、(c)状況および将来の必要性に適合させるために適切な判定を行うステップ、(d)応答フレームワークを通して適切な手段をとる、たとえば、アプリケーションおよび他の情報に基づく、ネットワーク制御のための層間解決手段、ネットワークおよび他の情報に基づくアプリケーション制御、ならびにネットワーク、アプリケーション、および他の情報に基づくプロトコル制御を行うステップを伴う。検知モジュール202は、ネットワーク、アプリケーション、および機器のデータ検知、知的データ集約、データ予測、および推定のために構成される。分析モジュール204は、分析、多重時間尺度データ分析、および同期に基づきイベントを生成する。分析モジュール204は、機械学習または学習モジュールを用いて、検知データを適切に理解するように構成される。判定モジュール206は、人工知能モジュールを用いて将来のデータの検知、分析、および応答を判定するように構成され、ネットワークのエミュレーションおよび計画は、統合される。応答モジュール208は、ネットワーク、プロトコル、およびアプリケーションの準備に関して応答するために構成される。
【0026】
検知モジュール202は、ネットワーク、リンク、アプリケーション、プロトコルを検知するように構成される。検知モジュール202は、分析モジュール204を通して、現在の検知データに基づき、将来の状態を検知し、予測する頻度を判定するようにさらに構成される。ある実施形態では、リンク上の負荷、ネットワーク、エンド・ツー・エンドでの遅延、パケット誤り率、リンクでの干渉、リンクの最大容量、トラフィックタイプ、キューサイズ、送信電力などのようなパラメータを検知する。検知モジュール202は、他のモジュールと密接に相互作用し、必要に応じて、検知タイプの選択を判定することができる。
【0027】
一実施形態では、検知データは一般に、本質的に多重時間尺度である。たとえば、信号対干渉および雑音比(SINR)は、ミリ秒単位で変化し、一方では、アプリケーション処理量は、秒単位で変化する。ある実施形態では、検知モジュール202は、複数の検知タイプを、すなわち、(a)能動、受動/間接検知、すなわち、直接法による、またはログファイルからの検知、および(b)直接データ、導出データ、処理データの収集を備え、すなわち、(i)SINRは、導出パラメータであり、その場合、瞬時処理量は、直接パラメータであり、(ii)待ち時間は、処理パラメータである。
【0028】
検知モジュール202は、ネットワークおよび機器を探して検知するように構成され、そこでは、検知すべきネットワークは、仮想ネットワーク、従来型ネットワーク、情報指向ネットワーク(Information Centric Networking、ICN)、およびソフトウェア・ディファインド・ネットワーク(SDN)のタイプとすることができ、検知すべき機器は、制御(テレマティックス)およびデータ(送信/受信するように指定された情報)のいずれともすることができる。同様に、検知モジュール202は、アプリケーションを検知する、すなわち、1つまたは複数のアプリケーションを理解して、分析および意思決定のために使用することができるスコア、ならびに主要性能指標(KPI)および検知すべきアプリケーションパラメータ(KPIを標準化する、または解決手段特有とすることができる)を生成するための方法を検知する。検知モジュール202は、プローブエージェントを用いて、すなわち、中間層を介して導入されるように構成される。
【0029】
分析モジュール204は、一般的学習または機械学習のアルゴリズムを使用して、すなわち、データ特有の分析および一般化分析を使用して、検知データを分析する。分析モジュール204は、多重時間尺度データを分析して、同期させて、複数の導出パラメータを生成する。ある実施形態では、複数の導出パラメータは、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータの統計情報に対応する。分析モジュール204は、多次元データ分析を行う。ある実施形態では、コントローラを含むネットワークとアプリケーションの間に論理的に配置された中間層を通して、分析を遂行することができる。ある実施形態では、ネットワーク状態およびサービス品質(QoS)のマッピングのために必要な多次元分類のために、検知データの分析および分析データのマッピングを遂行することができる。
【0030】
たとえば、待ち時間(L)、処理量(T)、および信頼度(R)は、主要性能指標であり、主要性能指標のために、データ、すなわち、異なるLTR値を分析およびマッピングして、「LTR」の多数の順列および組合せを用いて、ネットワークの状態を規定しなければならない。分析モジュール204は、(i)直接データ、合成データ、および予測データの機械学習、(ii)分類(多次元分類)、(iii)単一パラメータおよび/または多数のパラメータに関する特徴抽出、ならびに(iv)モデル調整、すなわち、観察データ学習に基づく調整のような主要タスクを備える。分析モジュール204は、(a)シミュレーションによるパケット/キュー分析、たとえば、ブラックボックス法、エミュレーション/シミュレーション、(b)分析-予測および推定、ならびに(c)データ集約および時系列分析をさらに備える。
【0031】
判定モジュール206は、規則に基づく、または認知的な判定を提供し、これらの判定は、(a)最適対次善解決手段、(b)使用事例分析を必要とすること、すなわち、拡張エミュレーション/シミュレーションを使用してシナリオを再現し、規則またはモデルを形成すること、(c)これらの規則(またはモデル)をさらにトレーニングし、検証のために、適切なエミュレーションに基づく試験を必要とすること、(d)(応答フレームワークの一部として)導入すべき任意の判定をエミュレータ内で検証することができること、(i)観察データ(検知データ)と共に、エミュレーションにより生成した合成データを、モデリング、トレーニング、および意思決定のために使用することを備える。
【0032】
判定モジュール206は、以下の機能を備えて構成される。
(a)段階的取り組み手法
i.検知データの時系列分析、ネットワーク状態の多次元ファジー分類、およびエミュレートされたネットワークマッピングを使用して、アプリケーションの体感品質(QoE)を改善し、
ii.アプリケーション、プロトコル、およびネットワークの連合エミュレートシステム、ならびに観察したQoSパラメータの出力として判定規則を定式化する。
(b)予測および推定
i.分析データおよびエミュレートしたデータ/モデルを使用して、ネットワーク、プロトコル、およびアプリケーションのあるべき状態を利用可能にすることができる。たとえば、過去のデータおよびエミュレートしたデータに基づき、システム/ネットワークの待ち時間、処理量、および信頼度を予測することができる。
(c)プロトコル適合
i.使用すべきプロトコルのパラメータを調整するために、さらにまた判定モジュールを使用する。
【0033】
応答モジュール208は、(a)構成、ネットワークスライシング、ネットワーク仮想化、電力制御、経路選択などの(ネットワークおよびプロトコルに関係がある)機能、および(b)層間アプリケーション最適化のためにアプリケーションと共有することができる伝送制御プロトコルおよびインターネットプロトコル(Transmission Control Protocol/Internet Protocol、TCP/IP)のプロトコルスタックに関する、レイヤ1(物理層)からレイヤ4(トランスポート層)までのネットワークパラメータを扱う機能を伴い構成される。この機能の例として、リンクの容量またはネットワーク上の負荷に基づくビデオストリーミングのレート適合がある。
【0034】
応答モジュール208は、(a)判定を理解して、適切な制御論理を呼び出すための判定変換機構、(b)ネットワーク、アプリケーション、プロトコルの制御、(c)認知制御、すなわち、何を構成すべきかを応答モジュールが判定すること、(d)APS(Adaptable Prioritization and Segregation、適応可能優先順位づけおよび分離)、すなわち、アプリケーション層でのトラフィック優先順位づけおよび輻輳制御、ならびに(e)プローブマネージャ、すなわち、分析/判定モジュールから受信したメッセージに基づき何をプローブすべきかを判定する機能を備える。
【0035】
図2は、本開示の実施形態によるSADRフレームワークの判定モジュール206の分解図を示す。ある実施形態では、データは、検知モジュール202が収集し、分析モジュール204が分析し、判定モジュール206に供給される。判定モジュール206は、モデル分類モジュールをさらに含み、シミュレーションモジュールまたはエミュレーションモジュール、およびモデル検証モジュールが続く。ある実施形態では、エミュレーションは、(i)1つまたは複数のシナリオ(たとえば、ネットワークおよびアプリケーション)、(ii)処理量、(iii)既存の規則および方法のうち少なくとも1つを確認するのを、ならびに新しい規則またはアルゴリズムを生成するのを支援する。ある実施形態では、新しい規則またはアルゴリズムは、モデル検証モジュールにより検証されるべきであり、アルゴリズム/モデルモジュールに渡される。1つまたは複数のアルゴリズム/モデルからモデル分類への入力は、分析したデータを1つまたは複数の既存の規則またはアルゴリズムを用いて確認するのを支援する。エミュレーションおよびモデル検証は、新しい規則を生み出す、または新しい規則を追加する際に構成され、これは、応答モジュール208に不可欠である。
【0036】
図3は、論理的にネットワークとアプリケーションの間に置くことにより中間層を使用して導入してもよい、本開示の実施形態によるSADRフレームワークを示す。ある実施形態では、中間構成要素は、(a)状態情報、リクエスト、機器情報、ポリシなどを記憶するデータ記憶モジュール、(b)アプリケーションにサービスを、低デバイスレベル動作に変換を提供するコアモジュール、(c)機器、ネットワーク、トポロジ、統計情報収集などをモニタするモニタモジュール、(d)経路準備、トラフィック工学、ポリシ管理などを遂行するように構成されたQoSモジュール、(e)機器の仮想化、ネットワーク機能仮想化(network Functions Virtualization、NFV)のための仮想化モジュール、(f)OF-CONFIGまたは他のプロトコルを介した機器の構成および状態に関するインフラアシスタント、ならびに(g)ネットワークサービスに関する、たとえば、準備、フォールトトレランス、(TCP/IPプロトコルスタックの)レイヤ2、すなわちデータリンク層、およびレイヤ3、すなわちネットワーク層のサービス、およびハンドオーバに関するネットワークアシスタントのうち少なくとも1つを備える。
【0037】
図4は、本開示の実施形態によるSADRフレームワークの代表的導入モデルを示す構成図である。ある実施形態では、各モジュール(検知、分析、判定、および応答)は、1組のサービスを含む。たとえば、1つまたは複数のサービスは、任意のコンピュータ(またはコンピュータシステム)で独立して行うことができ、そこでは、分析および判定のサービスは、導入されたネットワークに伴うどんな種類のインタフェースのサポートも必要とせず、一方では、検知および応答のサービスは、通常の動作のために適切なインタフェースのサポート(検知および応答のためのアプリケーション・プログラミング・インタフェース(Application Programming Interface、API))を必要とする。また、ある実施形態では、場合によっては、SDN化取り組み手法を用いてこれらのサービスを取り扱うことができる。ある実施形態では、1つまたは複数のサービスは、中央コントローラまたは認知コントローラによる直接管理によって行われる。
【0038】
図5は、2つのアクセスポイント(AP1およびAP2)、すなわち、1つは送信側機器(携帯電話)および1つは受信側機器(ワークステーション)を伴う、従来型非SADR実験的セットアップを示す。送信側は、通常のハイパーテキスト転送プロトコル(HyperText Transfer Protocol、HTTP)ストリーミングを使用して受信側にビデオを送信する。送信している間、送信側は、一方の場所から他の場所へ移動し、その結果、アクセスポイントから受信するRSSI値は変化し、その後、AP1からAP2へハンドオフする。従来型機構を使用して、送信側がハンドオフをトリガすることができる。
【0039】
図6は、本開示の実施形態によるSADRフレームワークに基づくネットワーキングの実験的セットアップを示す。たとえば、2つのアクセスポイント(AP1およびAP2)、すなわち、1つは送信側機器(携帯電話)および1つは受信側機器(ワークステーション)を用いる簡単な実験について考えてみる。送信側は、通常のハイパーテキスト転送プロトコル(HTTP)ストリーミングを使用して受信側にビデオを送信する。送信している間、送信側は、一方の場所から他の場所へ移動し、その結果、アクセスポイントから受信するRSSI値は変化し、その後、AP1からAP2へハンドオフする。SADR(検知、分析、判定、および応答)サービスがサポートする認知コントローラ頭脳、ならびにSDNコントローラにより、ハンドオフをトリガすることができ、その結果、スムーズにハンドオフする。
【0040】
図7は、ハンドオフする前に著しい遅延およびパケット破棄を伴う従来型実験的セットアップによる実験結果を示すグラフ表示である。
【0041】
図8は、本開示の実施形態によるSADRフレームワークを導入することによる実験結果を示すグラフ表示である。たとえば、スムーズなハンドオフの効果を示す。SADRフレームワークは、より少ないジッタおよびパケット破棄、ならびにシームレスなハンドオフを保証する。
【0042】
図9は、本開示の実施形態による検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークにより、ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワークを可能にするための方法を示す流れ図である。方法は、1つまたは複数の以下のステップを含む。すなわちステップ902で、少なくとも1つのアプリケーションパラメータおよび少なくとも1つのネットワークパラメータを検知して、複数の検知情報を得る。ステップ904で、フィルタ処理し同期させた複数の検知情報を分析して、複数の導出パラメータを生成する。ステップ906で、複数の導出パラメータに基づき、複数の規則を決定する。ステップ908で、複数のシナリオに関して複数の規則を検証して、複数の判定を得る。ステップ910で、複数の判定に基づき、(i)ネットワーク制御、(ii)アプリケーション制御、および(iii)プロトコル制御のうち少なくとも1つを可能にする。複数の検知情報は、複数の使用事例に関して得た多重時間尺度データセットである。複数の判定は、リアルタイム判定またはオフライン判定に対応する。
【0043】
ある実施形態では、少なくとも1つのアプリケーションパラメータは、(i)1つまたは複数のサービス品質(QoS)パラメータおよび(ii)1つまたは複数の主要性能指標(KPI)パラメータのうち少なくとも一方に対応してもよい。ある実施形態では、少なくとも1つのネットワークパラメータは、(i)帯域幅の可用性および使用量、(ii)複数の遅延特性、(iii)スイッチでのポート可用性、(iv)エンド・ツー・エンドでのネットワーク可用性、(v)信号対干渉および雑音比(SINR)または受信信号強度インジケータ(RSSI)、および(vi)複数のプロトコル関連パラメータのうち少なくとも1つに対応してもよい。さらに、現在の検知データに基づき、ネットワークおよびアプリケーションの将来の状態を予測してもよい。
【0044】
本明細書の本開示の実施形態は、屋内、屋外、および混成のネットワークシナリオに関係がある未解決の問題に、すなわち、(a)ネットワークのプロービング、分析、シームレスな、およびインテリジェントな準備、ならびにアプリケーション層からの管理、(b)待ち時間の短い通信のためにリアル・タイム・ネットワークを準備およびスライシングするためのフレームワーク、(c)アプリケーション層プロトコルと下層プロトコルの両方を管理するための、アプリケーション層特有の解決手段のためのフレームワーク、(d)ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワーキングを実現するフレームワーク、(e)アプリケーション、プロトコル、およびネットワークの連合エミュレーションシステムのパラメータ/判定規則、ならびに観察したQoSに基づきリアルタイムで意思決定するためのフレームワーク、ならびに(f)アプリケーションのQoEを改善するための、ネットワーク状態およびエミュレータされたネットワークマッピングの多次元ファジー分類に対処する。
【0045】
本開示ならびに対応する方法およびシステムの実装形態では、アプリケーションは、異なるネットワークおよび機器で柔軟に実行されてもよい、すなわち、アプリケーションは、外的要因に基づき構成可能であってもよい。同様に、ネットワークは、柔軟性があり、拡張性があり、容易に構成可能であってもよい、すなわち、ネットワークは、外部要因に基づき構成可能であるべきである。
【0046】
一実施形態では、適応解は、以下のうち少なくとも1つを必要とする。
(a)アプリケーション/使用事例を理解する
i.QoS保証、計算、通信の問題点
(b)ネットワークを理解する
i.ネットワークの種類、プロトコル、ネットワークおよびプロトコルの可制御性
ii.ネットワークおよびプロトコルのリアルタイム挙動
iii.基礎となる要素の能力
(c)判定を行う
i.アプリケーション要件およびネットワーク挙動に基づく
ii.リアルタイムまたはオフラインとすることができる
(d)判定を導入する
i.アプリケーションを微調整し、プロトコルを制御し、ネットワークを準備する
ii.最適化に基づき最適な導入判定を行う。
【0047】
ネットワークを意識したアプリケーション
(i)サービス規定に基づきアプリケーションパラメータを判定することができる。
(ii)ネットワーク・データに基づき、リアルタイムなアプリケーションパラメータを調整することができる。
(iii)機器データはまた、ある役割を、たとえばテレマティックスの役割を果たし、検知データおよび合成データは、異なるQoS要件を有する。
(iv)アプリケーション層プロトコルは、層間データと、すなわち、TCP/IPプロトコルスタックの下層から得たフィードバックと、インタフェースをとるべきである。
【0048】
アプリケーションを意識したネットワーキング
アプリケーションパラメータに基づきネットワーク準備を遂行することができる。たとえば、ネットワーク準備は、スケジューリング、経路選択、ルーティング、輻輳制御、電力制御、干渉管理を含む。
【0049】
したがって、実施形態は、TCP/IPプロトコルスタックに対して徹底的な取り組み手法で機能する固有の認知フレームワークを提供する。実施形態は、ネットワーク、技術プロトコル、およびアプリケーションに非依存性とすることができる中間層フレームワークである。その上、本明細書の実施形態は、アプリケーション、プロトコル、およびネットワークの連合エミュレートシステムのパラメータ/判定規則、ならびに観察したQoSパラメータに基づき、リアルタイムな適応的意思決定をさらに提供する。これらの判定規則を使用して、アプリケーション、プロトコル、およびネットワークが必要とする一定の変化に応答することができる。
【0050】
実施形態は、ネットワークを意識したアプリケーションおよびアプリケーションを意識したネットワーキングを形作るSDN化フレームワークを提供する。実施形態は、層間フィードバックを使用して、中間層を通してアプリケーション、プロトコル、およびネットワークを調整するフレームワークを提供する。実施形態は、全体にわたる遅延および信頼度に関し独立して、および/またはその両方の組み合わせに関して、分析モジュールを通して検知データの多次元分類を提供する。
【0051】
本開示に記述する1つまたは複数のアーキテクチャ、システムは、ロボット工学だけではなくドローンに基づくアプリケーションのためにも使用することができる高水準のフレームワークであり、ロボットまたはドローンにより検知を遂行することができ、制約付きネットワークを介して、または5Gタイプのネットワーク(Wi-FiまたはLTEまたはLTE-Advancedなど)を介して、分析モジュールおよび判定モジュールが動作する中央プラットフォームに検知データを伝達することができる。アプリケーションおよびネットワークの必要性に基づき、適切な作動コマンドをドローンまたはロボットに引き渡すべきであり(テレマティックデータ)、一方では、SDN化フレームワークを通して、ハンドオフに関して適切なネットワーク準備、エンド・ツー・エンドでの帯域幅管理、またはスライシングなどを、基礎となるネットワークに引き渡す。
【0052】
ある実施形態では、検知・分析・判定・応答(SADR)フレームワークは、以下の重要な特徴の少なくとも1つを備える。
a)ネットワーク、アプリケーション、およびプロトコルのリアルタイム検知、
b)特徴、パターンの分析および学習、
i.多次元ネットワーク状態マッピング、
ii.エミュレーションによる最適な判定処理、
iii.認知ネットワーク/規則に基づくネットワーク予測および準備、
c)中間層解決手段。
【0053】
さらに、SADRフレームワークは、以下の少なくとも1つを提供する。
a)自動的な検知、分析、予測、および構成、
b)ネットワークおよびプロトコルの認知制御、
i.ベンダおよび技術に非依存性の解決手段、
ii.5Gネットワークおよび情報指向ネットワーキング(ICN)のサポート。
【0054】
さらに、SADRフレームワークは、アプリケーション/使用事例で1つまたは複数の利点を、すなわち、(a)人手を介さない自動的な、ネットワーク健全性のモニタおよび管理、(b)アプリケーション要件を達成するための、カスタマイズされたネットワーク、(c)故障からの迅速な回復を提供する。完全なネットワークは、ウェアハウスに、ネットワークおよびサービスを提供するために使用することができるが、工場自動化、救助動作のためのロボット導入、リアルタイム・ビデオ通信、5Gアプリケーションを意識したネットワークスライシングなどに限定されない。SADRフレームワークは、エンド・ツー・エンドでの調和のとれた統合を提供する。SADRフレームワークは、マルチ・ドメイン・サービスの、調和のとれた統合、監理者、操作者、およびユーザのドメインにわたるスパニング(spanning)、自動化分析およびエンド・ツー・エンドでの故障、構成、会計、性能、およびセキュリティ(fault、configuration、accounting、performance、and security、FCAPS)のサポート、異種のネットワークおよびアプリケーションのサポート、自己認識、自己修復、自己管理などを提供する。
【0055】
記載した記述は、任意の当業者が実施形態を作成し、使用することができるようにする、本明細書の主題について記述している。主題の実施形態の範囲は、特許請求の範囲により規定され、当業者が思いつく他の修正形態を含んでもよい。そのような他の修正形態は、特許請求の範囲の文言と異ならない類似の要素を有する場合、または特許請求の範囲の文言とわずかな差を有する相当要素を含む場合、特許請求の範囲に入る。
【0056】
保護の範囲は、そのようなプログラムに、さらには中にメッセージを有するコンピュータ可読手段に拡張され、そのようなコンピュータ可読記憶手段は、プログラムがサーバもしくは移動体機器、または任意の適切なプログラム可能機器上で実行されるとき、方法の1つまたは複数のステップを実装するためのプログラムコード手段を含有する。ハードウェア機器は、たとえば、サーバもしくはパーソナルコンピュータなど、またはそれらの任意の組合せのような任意の種類のコンピュータを含む、プログラムすることができる任意の種類の機器とすることができる。機器はまた、たとえば、特定用途向け集積回路(application-specific integrated circuit、ASIC)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(field-programmable gate array、FPGA)などのようなハードウェア手段、またはASICおよびFPGA、もしくは少なくとも1つのマイクロプロセッサおよび中にソフトウェア処理構成要素が配置された少なくとも1つのメモリなどのハードウェア手段とソフトウェア手段の組合せとすることができる手段を含んでもよい。したがって、手段は、ハードウェア手段とソフトウェア手段の両方を含むことができる。本明細書で記述する方法の実施形態を、ハードウェアおよびソフトウェアの形で実装することができる。機器はまた、ソフトウェア手段を含んでもよい。あるいは、たとえば複数のCPUを使用して、異なるハードウェア機器上に実施形態を実装してもよい。
【0057】
本明細書の実施形態は、ハードウェア要素およびソフトウェア要素を備えることができる。ソフトウェアの形で実装される実施形態は、ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含むが、それらに限定されない。本明細書で記述するさまざまな構成要素が遂行する機能を、他の構成要素で、または他の構成要素を組み合わせて実装してもよい。本明細書が意図するところでは、コンピュータ使用可能媒体またはコンピュータ可読媒体は、命令実行システム、装置、もしくは機器により使用する、またはそれらと共に使用するためのプログラムを備える、記憶する、伝達する、伝播する、または移送することができる任意の装置とすることができる。
【0058】
例示するステップは、示されている代表的実施形態を説明するために提示され、継続的技術開発により、特定の機能を遂行する手法が変わることを認識されたい。これらの例は、例示のために本明細書に提示され、限定するために提示されているわけではない。さらに、記述の便宜上、機能構成要素の境界について、本明細書で任意に規定してきた。指定された機能およびそれらの結びつきが適切に遂行される限り、代わりの境界を規定することができる。代替形態(本明細書で記述する実施形態の相当形態、拡張形態、変形形態、偏向形態などを含む)は、本明細書に含有される教示に基づき、1つまたは複数の関連技術分野の当業者に明らかであろう。そのような代替形態は、開示する実施形態の範囲に入る。また、用語「comprising(備える)」、「having(有する)」、「containing(含有する)」、および「including(含む)」、ならびに他の類似の形態は、意味が同等であることが意図され、これらの用語の任意の1つに続く1つまたは複数の項目が、そのような1つまたは複数の項目の網羅的な列挙であることを意味することも、列挙した1つまたは複数の項目だけに限定されることを意味することもないという点で、オープンエンド形式であることが意図される。また、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用するとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、前後関係を他の方法で明確に規定しない限り、複数の参照を含む。
【0059】
さらに、本開示と矛盾しない実施形態を実装する際、1つまたは複数のコンピュータ可読記憶媒体を利用してもよい。コンピュータ可読記憶媒体は、プロセッサにより可読の情報またはデータを記憶してもよい、任意のタイプの物理メモリを指す。したがって、コンピュータ可読記憶媒体は、本明細書で記述する実施形態と矛盾しないステップまたはステージを1つまたは複数のプロセッサに遂行させるための命令を含む、1つまたは複数のプロセッサにより実行するための命令を記憶してもよい。用語「コンピュータ可読媒体」は、有形の項目を含み、かつ搬送波および過渡信号を除外する、すなわち、非一時的であることを理解されたい。例には、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ハードドライブ、CD ROM、DVD、フラッシュドライブ、ディスク、および任意の他の公知の物理的記憶媒体が含まれる。
【0060】
本開示および本例は単に代表的なものと見なされ、かつ開示する実施形態の真の範囲は、以下の特許請求の範囲により示される。
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9