(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】光プローブ、光プローブアレイ、検査システムおよび検査方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20231214BHJP
G01R 31/28 20060101ALI20231214BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20231214BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H01L21/66 C
G01R31/28 L
G01R31/26 F
G02B6/42
(21)【出願番号】P 2019183669
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(72)【発明者】
【氏名】奥田 通孝
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 祐貴
(72)【発明者】
【氏名】竹谷 敏永
(72)【発明者】
【氏名】原子 翔
(72)【発明者】
【氏名】福士 樹希也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 実
(72)【発明者】
【氏名】成田 寿男
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-067088(JP,A)
【文献】特開平06-058986(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0290891(US,A1)
【文献】特開2019-035694(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203785(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/020713(WO,A1)
【文献】特開昭63-263438(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/28
G01R 31/26
G02B 6/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体から出力される光信号を受光する光プローブであって、
コア部および前記コア部の外周に配置されたクラッド部により構成される光導波路を有し、
前記光信号が入射する前記光導波路の入射面がほぼ一定の曲率半径の凸球面であ
り、
前記光導波路の前記入射面に接続する領域において、
前記被検査体と前記入射面との間で取り得る最大の作動距離WDである最大作動距離WDm、前記最大作動距離WDmでの前記光信号の光軸と前記光信号の放射範囲の最外縁の進行方向とのなす最大放射半角αm、および前記光信号の入射点における前記コア部の屈折率nを用いて、前記入射面の曲率半径Rと前記入射点における中心半角βが、
R=WDm×tan(αm)/{sin(β)+(cos(β)-1)×tan(αm)}
β=tan
-1
{sin(αm)/(n-cos(αm))}
の関係をほぼ満たすことを特徴とする光プローブ。
【請求項2】
前記光導波路が、前記入射面に接続する第1領域と、前記第1領域よりも前記コア部の径が小さい第2領域とを連結した構成であることを特徴とする請求項
1に記載の光プローブ。
【請求項3】
前記入射面から前記第1領域と前記第2領域の境界までの長さFLが、前記コア部を進行する前記光信号の周期に対する比率を示す係数P(0≦P≦1)、前記コア部の屈折率分布定数A
1/2、および前記コア部の中心軸の屈折率n0を用いて、
FL=2πP/A
1/2+(WDm-WD)/n0
の関係をほぼ満たすことを特徴とする請求項
2に記載の光プローブ。
【請求項4】
請求項
1乃至
3のいずれか1項に記載の光プローブを有する光プローブアレイであって、
それぞれの前記入射面を同一方向に向けて複数本の前記光プローブをアレイ状に配置して構成され、
前記コア部のコア半径rc、前記最大放射半角αm、前記コア部の中心軸の延伸方向の公差δz、および前記コア部の中心軸に垂直な平面の公差δxyを用いて、前記光プローブそれぞれの前記作動距離WDが
(rc-δxy)/tan(αm)-δz≧WD
の関係を満たすことを特徴とする光プローブアレイ。
【請求項5】
被検査体から出力される光信号を検査する検査システムであって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光プローブを保持する光プローブヘッドと、
前記光プローブヘッドの位置を制御する光プローブ駆動装置と、
前記入射面と同一方向に先端を向けて電気プローブを保持する電気プローブヘッドと、
前記電気プローブヘッドの位置を制御する電気プローブ駆動装置と
を備え、1の前記被検査体について前記光プローブと前記電気プローブを含む1のプローブユニットを構成することを特徴とする検査システム。
【請求項6】
前記光プローブヘッドの位置と前記電気プローブヘッドの位置を独立して制御することを特徴とする請求項
5に記載の検査システム。
【請求項7】
前記電気プローブと半導体基板に形成された前記被検査体の電気接続端子との位置を合わせて、前記光プローブヘッドと前記電気プローブヘッドを連結固定又は一体化して構成し、前記半導体基板を搭載したステージの位置を制御することを特徴とする請求項
5に記載の検査システム。
【請求項8】
被検査体から出力される光信号を
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光プローブによって受光する検査方法であって、
前記光信号の全体が前記光プローブに入射するように前記被検査体から第1の作動距離に前記光プローブを配置し、前記光信号の光出力を測定するステップと、
前記光プローブと前記被検査体との前記光信号の光軸の延伸方向に沿った相対的な距離を変化させることにより、前記光信号の光出力が、前記第1の作動距離での光出力に対して一定の比率となる第2の作動距離を検出するステップと、
前記光プローブのコア部のコア半径rcおよび前記第2の作動距離WD2を用いて、前記光信号の放射角2αを、
2α=2×tan
-1(rc/WD2)
の式を用いて算出するステップと
を含むことを特徴とする検査方法。
【請求項9】
前記第1の作動距離が、前記光信号の放射範囲が前記コア部の外縁より内側となる最大の作動距離であり、
前記第2の作動距離における前記光信号の光出力が、前記第1の作動距離における前記光信号の光出力の「1-1/e
2」倍である
ことを特徴とする請求項
8に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査体の特性の検査に使用される光プローブ、光プローブアレイ、検査システムおよび検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンフォトニクス技術を用いて、電気信号と光信号を入出力信号とする光半導体素子が半導体基板に形成される。光半導体素子の特性をウェハ状態で検査するために、電気信号を伝搬させる電気プローブと光信号を伝搬させる光プローブとを有する検査システムを用いて、光半導体素子とテスタなどの測定装置とを接続することが有効である。
【0003】
例えば、光ファイバの先端を被検査体に近接させて、光半導体素子の特性を取得する方法が開示されている(特許文献1参照)。また、光ファイバの先端にレンズを装着し、レンズの焦点近傍に被検査体を設置することにより光半導体素子の特性を検査する装置が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願公開第2006/0008226号明細書
【文献】特開昭62-31136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、複数個の光半導体素子が形成された半導体基板について、光半導体素子と光プローブの位置合わせを行いながら、1個ずつ光半導体素子の特性が検査されている。このとき、光半導体素子と光プローブの間を所定の強度で光信号が伝搬するように、光半導体素子と光プローブの位置合わせを高い精度で行う必要がある。このため、半導体基板に形成された光半導体素子の全数を検査する時間が増大するという問題があった。すべての光半導体素子の検査が困難なことから、良品、不良品判定が十分にできず、光半導体素子製品の歩留まり悪化の要因になった。
【0006】
上記問題点に鑑み、本発明は、光半導体素子の検査時間の増大を抑制できる光プローブ、光プローブアレイ、検査システムおよび検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、被検査体からの光信号を受光する光プローブであって、コア部およびコア部の外周に配置されたクラッド部により構成される光導波路を有し、光信号が入射する光導波路の入射面が一定の曲率半径の凸球面である光プローブが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光半導体素子の検査時間の増大を抑制できる光プローブ、光プローブアレイ、検査システムおよび検査方法を提供することができ、光半導体素子の歩留まりを改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光プローブの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る光プローブを光信号が伝搬する状態を示す模式図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る光プローブの入射面の曲率半径および最大作動距離と光信号の最大放射半角の関係を示すグラフである。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る光プローブにおける公差の影響を説明するための模式図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る光プローブの最大作動距離と光信号の最大放射半角の関係を示すグラフである。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る光プローブにおける伝送損失と公差の関係を示すグラフである。
【
図7】
図7(a)~
図7(d)は、光プローブの形状を示す写真である。
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る光プローブにおける伝送損失と公差の関係の例を示すグラフである。
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る光プローブにおける伝送損失と作動距離の関係の例を示すグラフである。
【
図10】
図7(a)~
図7(d)に示した光プローブにおける伝送損失と公差の関係を比較したグラフである。
【
図11】本発明の第1の実施形態に係る検査システムの構成を示す模式図である。
【
図12】光プローブアレイの構成を示す模式図である。
【
図13】電気プローブアレイの構成を示す模式図である。
【
図14】本発明の第1の実施形態に係る検査方法を説明するための模式図である。
【
図15】本発明の第1の実施形態に係る検査方法を説明するためのフローチャートである。
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る光プローブの構成を示す模式図である。
【
図17】本発明の第2の実施形態に係る光プローブの端部の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであることに留意すべきである。また、以下に示す実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の実施形態は、構成部品の構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0011】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る光プローブ10は、
図1に示すように、被検査体200の発光部210から出力される光信号Lを受光する。光プローブ10は、コア部111およびコア部111の外周に配置されたクラッド部112により構成される屈折率分布型の光導波路11を有する。コア部111の屈折率は、クラッド部112の屈折率よりも大きい。例えば、光導波路11にグレーデッドインデックス型(GI型)光ファイバを利用して光プローブ10を製造できる。
図1に示すように、光信号Lが入射する光導波路11の入射面100は、一定の曲率半径Rの凸球面である。
【0012】
図1では、光プローブ10のコア部111の中心軸C10および光信号Lの光軸C200の延伸方向をZ軸方向としている。また、Z軸方向に垂直な平面をXY平面として、紙面の左右方向をX軸方向、紙面に垂直な方向をY軸方向としている。光信号Lの光軸C200とコア部111の中心軸C10が平行であるように、光プローブ10が被検査体200の上方に位置している。
【0013】
被検査体200は、例えば垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)などの光半導体素子である。発光部210と光プローブ10とは光学的に接続され、発光部210から出力された光信号Lが光プローブ10に入射する。
【0014】
光プローブ10と被検査体200は、Z軸方向に沿って作動距離WDだけ離間して配置されている。作動距離WDは、被検査体200から出力された光信号Lを光プローブ10が受光できる範囲に設定される。例えば、光信号Lの放射範囲が入射面100のコア部111の外縁より内側となるように作動距離WDが設定される。ここで、光信号Lの放射範囲は、光信号Lがピーク値の1/e2以上の強度で進行する方向の範囲とする。
【0015】
放射範囲における光信号Lについて、入射面100において入射点Qに入射する光信号Lの進行方向と光軸C200とのなす角を、「放射半角α」とする。また、
図1に示すように、入射点Qにおける入射面100の中心角は、中心半角βを用いて2×βである。
【0016】
なお、放射半角αについて、光軸C200とのなす角の最大のものを「最大放射半角αm」とする。つまり、最大放射半角αmは、入射面100と被検査体200との間で取り得る最大の作動距離WD(以下において「最大作動距離WDm」という。)の場合に、放射範囲の最外縁の進行方向と光軸C200とのなす角である。
【0017】
また、中心半角βの最大のものを「最大中心半角βm」とする。つまり、最大中心半角βmは、最大作動距離WDmの場合における、コア部111の入射面100の最外縁における中心半角である。
【0018】
光信号Lは、入射面100の入射点Qに入射角(α+β)で入射する。
図1に示すように、入射面100を通過した直後の光信号Lの進行方向と曲率半径方向とのなす角を、屈折角γとする。
【0019】
中心軸C10から半径方向の距離rの入射点Qにおけるコア部111の屈折率n(r)は、式(1)で表される:
n(r)=n0×(1-(A1/2×r)2/2) ・・・(1)
式(1)で、n0はコア部111の中心軸C10での屈折率、A1/2はコア部111の屈折率分布定数である。屈折率分布定数A1/2は式(2)で表される:
A1/2={(n02-nd2)/(n0×rc)2}1/2 ・・・(2)
式(2)で、ndはクラッド部112の屈折率であり、rcはコア部111の半径(以下において「コア半径」という。)である。
【0020】
屈折率分布定数A1/2が大きいほど、コア部111での光信号Lの閉じ込め効果が強く、レンズ効果が大きくなる。つまり、コア部111の中心軸C10での屈折率n0とクラッド部112の屈折率ndの差が大きいほど、そして、コア半径rcが小さいほど、屈折率分布定数A1/2は大きく、コア部111での光信号Lの閉じ込め効果が強く、光信号Lがコア部111の内部で鋭く曲げられる。
【0021】
光信号Lが最短距離でコア部111を伝搬して光プローブ10での伝送損失を小さくするために、光信号Lが中心軸C10と平行な方向に沿ってコア部111を進行することが好ましい。すなわち、入射角(αm+β)である光信号Lについて、中心半角βと屈折角γの関係をほぼγ=βとする。これにより、光プローブ10での光信号Lの伝送損失を抑制できる。
【0022】
図2に、γ=βの場合における光信号Lの進行の状態を示す。
図2では、コア部111の中心軸C10と光信号Lの光軸が重なっている。その後、光軸C200を中心に2π/A
1/2の周期でコア部111内を正弦波状に光信号Lが伝搬する。また、光プローブ10の入射面100と被検査体200の間隔は最大作動距離WDmである。このとき、スネルの法則から式(3)が成立する:
n(r)×sin(β)=sin(αm+β) ・・・(3)
最大放射半角αmは、光信号Lの強度がピーク値の1/e
2になる放射角の半角である。作動距離WDが最大作動距離WDmよりも短い場合の光信号Lの放射半角αは、最大放射半角αmより小さい。つまり、αm≧α>0の関係である。
【0023】
光プローブ10の入射面100のコア径は2rcである。ここで、クラッド部112を含めた光プローブ10の外径が
図2に示すように2rdであると、R>2rdの場合に、最大作動距離WDmは、式(4)で近似される:
WDm=rc/tan(αm) ・・・(4)
被検査体200の検査における作動距離WDの範囲は、WDm>WD>0である。
【0024】
式(3)および式(4)から、光プローブ10の入射面100の曲率半径Rは、式(5)で表される:
R=WDm×tan(αm)/{sin(β)+(cos(β)-1)×tan(αm)} ・・・(5)
式(3)から、中心半角βは式(6)で表される:
β=tan-1{sin(αm)/(n(r)-cos(αm))} ・・・(6)
【0025】
図3に、光信号Lの最大放射半角αmと、入射面100の曲率半径Rおよび最大作動距離WDmとの関係を算出した結果を示す。
図3において、開口数NAが0.29、コア半径rcが44.5μmの光プローブ10の曲率半径をR1、最大作動距離をWDm1で示した。また、開口数NAが0.275、コア半径rcが31.25μmの光プローブ10の曲率半径をR2、最大作動距離をWDm2で示した。コア径が大きい光プローブ10ほど、被検査体200と光プローブ10の入射面100の間の作動距離WDを長くできる。また、コア径が大きいほど、曲率半径Rが大きくなる。例えば、光信号Lの最大放射半角αmが12度の場合、開口数NAが0.29、コア半径rcが44.5μmの光プローブ10では、曲率半径Rを115μmとし、作動距離WDを200μm以下にすればよい。
【0026】
なお、光プローブ10をアレイ状に配置した光プローブアレイにより、半導体基板にアレイ状に配置された複数個の被検査体200を同時に検査することができる。光プローブアレイは、入射面100を同一方向に向けて複数本の光プローブ10を配列して構成される。光プローブアレイについて、以下に検討する。
【0027】
光プローブ10をアレイ状に実装して光プローブアレイを製造する際に、機械加工や実装での公差によって、Z軸方向、X軸方向、Y軸方向にそれぞれ公差δz、δx、δyが生じる。以下において、公差δz、δx、δyを総称して「公差δ」とも称する。また、XY平面におけるX軸方向の公差δxとY軸方向の公差δyを公差δxyとも称する。ここで、δxy=(δx2+δy2)1/2 である。
【0028】
図4に示すように、公差δは光信号Lの光源の位置の公差として表れる。公差δの影響により、光信号Lが入射する入射面100の位置に偏差Sが生じる。このため、作動距離WDは、光プローブアレイの製造時の公差δxyおよび公差δzに対して以下の式(7)の関係を満足する必要がある:
WDm>(rc-δxy)/tan(αm)-δz≧WD>0 ・・・(7)
【0029】
式(7)の関係を満足しない場合、光信号Lの入射面100での放射範囲が、光プローブ10のコア径よりも広くなる。その場合、光信号Lの入射面100に入射しない分が伝送損失となり、損失特性の変動要因になる。したがって、光信号Lを安定して光プローブ10で受光するために、作動距離WDは式(8)を満たすように設定される:
(rc-δxy)/tan(αm)-δz≧WD ・・・(8)
【0030】
図5は、公差δxyが±15μm、公差δzが±15μmの場合の、最大放射半角αmと最大作動距離WDmの関係を示したグラフである。
図5に実線で示した最大作動距離WDm1は、開口数NAが0.29、コア径が89μmの大口径の光プローブ10の最大作動距離である。一方、破線で示した最大作動距離WDm2は、開口数NAが0.275、コア径が62.5μmの標準的なコア径の光プローブ10の最大作動距離である。ここで、「大口径」とは、標準的なコア径である50μmや62.5μmよりも大きい口径をいう。
【0031】
各軸方向の公差δと最大放射半角αmに応じて、光プローブ10の最大作動距離WDmを設定できる。例えば、開口数NAが0.29、コア径が89μmの光プローブ10の場合、光信号Lの最大放射半角αmを12度とすると、最大作動距離WDmは125μmである。したがって、光プローブ10や光プローブアレイの作動距離WDを125μm以下に設定すればよい。この設定により、XY平面およびZ軸方向の公差δが±15μmの範囲内で、損失変動が殆ど無い状態で被検査体200を検査することができる。
【0032】
図6は、XY平面の公差δxyおよびZ軸方向の公差δzと、光信号Lの伝送損失の関係を示すグラフである。
図6で、作動距離WDでの伝送損失を実線、作動距離WD-(+δz)での伝送損失を長点線(+δz)、作動距離WD-(-δz)での伝送損失を短点線(-δz)で示した。なお、公差δに起因する伝送損失の変動を損失変動ΔLとして示した。
【0033】
ここで、伝送損失が所望の範囲である光プローブ10の条件を、XY平面の公差δxyとZ軸方向の公差δzに対して損失変動ΔLが0.1dB以下とする。
【0034】
すなわち、公差δに起因する損失変動ΔLが0.1dB以下である光プローブ10を用いて、光プローブアレイを構成することが好ましい。損失変動ΔLが0.1dB以内となる公差δの絶対値の範囲が大きいほど、多くの光プローブ10をアレイ状に配置して光プローブアレイを構成できる。光プローブ10の本数が多い光プローブアレイによれば、同時に検査できる被検査体の個数が増加する。これにより、ウェハ状態での被検査体の検査を短時間化できる。
【0035】
図7(a)~
図7(d)は、本発明者らが製造した光プローブの形状を示す。
図7(a)~
図7(d)に示した光プローブのそれぞれは、開口数NAが0.29、コア半径rcが44.5μmである。
【0036】
図7(a)は、入射面100が平面である比較例の光プローブである。
図7(b)は、入射面100の曲率半径Rが116μmの光プローブ10である。
図7(c)は、入射面100の曲率半径Rが93μmの光プローブ10である。
図7(d)は、入射面100の曲率半径Rが75μmの光プローブ10である。
【0037】
なお、
図7(a)に示した比較例の光プローブの入射面100は、例えば光ファイバを冶具により固定して研磨材とシートを用いた端面研磨処理により、平面にする。また、
図7(b)~
図7(d)に示した光プローブ10の入射面100を曲率半径Rにする球状加工は、以下のような種々の方法が可能である。例えば、光ファイバの保護被覆を剥がした端部を高周波放電による局部加熱により整形する方法、CO
2レーザのパルス照射などにより光ファイバの端部を溶融整形する方法、シート及び研磨材を用いて光ファイバの端部を研磨加工する方法などにより、入射面100の球状加工を実施する。なお、中心軸C10の円周方向に対してほぼ対称な形状になるように、入射面100を整形する。入射面100の形状が非対称であると、公差δに起因する伝送損失がXY平面で非対称となり、損失変動ΔLが大きくなるため、好ましくない。
【0038】
図8は、
図7(b)に示した曲率半径Rが116μmの光プローブ10について測定した、最大放射半角αmが12度の光信号Lを受光した場合の公差δと伝送損失の関係を示すグラフである。
図8において、作動距離WDが基準距離である100μmでの伝送損失を実線、公差δzが-50μmであり作動距離WDが150μmでの伝送損失を短点線、公差δzが+50μmであり作動距離WDが50μmでの伝送損失を長点線で示した。
【0039】
図8に示すように、作動距離WDが100μmと150μmの損失特性は、公差δxyが±15μmの範囲で損失変動ΔLが0.1dB以下である。公差δzが±15μmの範囲では、伝送損失の変動が、公差δzが±50μmの場合の1/3程度になるため、ΔL≦0.1dBの条件が十分に満たされる。
【0040】
図9は、曲率半径Rが116μmの光プローブ10について、作動距離WDの基準を100μmとして公差δzが生じて作動距離WDが変化した場合の伝送損失と作動距離WDの関係を測定した結果を示すグラフである。作動距離WDが100±15μmの範囲での損失変動ΔLzは、±0.015dB程度である。また、曲率半径Rが116μmの光プローブ10の、XY平面の公差δxyが±15μmでの損失変動ΔLxyは、
図8より、0.083dBである。したがって、Z軸方向の公差δzとXY平面の公差δxyに起因する合計の損失変動ΔLxyzは、ΔLxy+ΔLz=0.098dBであり、0.1dBよりも小さい。つまり、曲率半径Rが116μmの光プローブ10は、公差δが±15μmの範囲で損失変動ΔLが0.1dB以内であり、光プローブアレイに好適に使用される。
【0041】
図10は、
図7(a)~
図7(d)に示した光プローブについて、光信号Lの最大放射半角αmが12度である場合のXY平面の公差δxyと伝送損失の関係を測定した結果を示すグラフである。
図10において、
図7(a)の比較例の光プローブの伝送損失を破線で示した。また、
図7(b)の曲率半径Rが116μmの光プローブ10の伝送損失を実線で示し、
図7(c)の曲率半径Rが93μmの光プローブ10の伝送損失を長点線で示し、
図7(d)の曲率半径Rが75μmの光プローブ10の伝送損失を短点線で示した。
【0042】
図10に示すように、
図7(b)の曲率半径Rが116μmの光プローブ10が、XY平面の公差δxyに対して最も平坦な損失特性を示している。そして、曲率半径Rが小さくなるにつれて、公差δxyに対する損失特性の平坦な領域が狭まる。損失特性の平坦な領域が狭まる主な理由は、曲率半径Rが小さくなると、公差δxyが大きくなるにつれて光信号Lの入射角が大きくなり、入射面100での光信号Lの反射が大きくなり、入射光が少なくなり、伝送損失が増大するためである。このため、
図7(b)~
図7(d)の光プローブ10のなかでは、損失特性の点で好ましいのは、曲率半径Rが最も大きい116μmの光プローブ10である。また、曲率半径Rが116μmの光プローブ10では、入射面100が平面である比較例の光プローブよりも広い範囲の公差δに対して平坦な損失特性が得られている。
【0043】
以上に説明したように、第1の実施形態に係る光プローブ10によれば、入射面100を凸球面にすることにより、入射面100において、光信号Lの進行方向が中心軸C10とほぼ平行方向になるように制御される。更に、光プローブ10の光導波路11を大口径にすることによって、入射面100の開口径のサイズや光信号Lの入射角度が広がる。これにより、作動距離WDや光信号Lが入射面100に入射してくる角度の変動などにより生じる公差に対する伝送損失の変動が抑制される。更に、伝送損失の変動が抑制されることにより、経時的な測定値の変動も抑制される。
【0044】
次に、光プローブ10を用いた検査システムについて説明する。
図11に、入射面100を同一方向に向けて複数本の光プローブ10をアレイ状に配置して構成した光プローブアレイを有する検査システムを示す。検査システムは、光プローブ10を保持する光プローブヘッド21と、電気プローブ30を保持する電気プローブヘッド23を備える。電気プローブ30として、例えば、カンチレバータイプ、垂直ニードルタイプ、垂直スプリングタイプなどが使用される。
図11に示すように、光プローブ10と電気プローブ30のそれぞれは、X軸方向に沿ってピッチPrで等間隔に配置されている。図示を省略するが、光プローブ10および電気プローブ30は、X軸方向と同様にY軸方向に沿っても等間隔に配置されている。
【0045】
光プローブヘッド21は、
図12に示すように、光プローブアレイ15を構成する複数本の光プローブ10を保持する。また、電気プローブヘッド23は、
図13に示すように、電気プローブアレイ35を構成する複数本の電気プローブ30を保持する。
【0046】
図11に示す検査システムは、半導体基板300に形成された複数の被検査体200の特性検査に使用される。半導体基板300は、例えばガリウムヒ素(GaAs)基板やシリコン(Si)基板などである。ステージ28に搭載された半導体基板300の主面には、面法線方向からみてピッチPdで等間隔に被検査体200がアレイ状に形成されている。例えば、1の被検査体200について光プローブ10と電気プローブ30が対で配置される。そして、被検査体200の電気信号端子(図示略)に電気プローブ30の先端が接触して、被検査体200に電気信号が印加される。電気信号が印加された被検査体200から出力される光信号Lが、光プローブ10により受光される。
【0047】
このように、1の被検査体200について、光プローブ10と電気プローブ30を含む1のプローブユニットが構成されている。プローブユニットは、半導体基板300に形成された被検査体200の配置に対応して配置されている。なお、
図11では、1の測定ユニットを構成する光プローブ10と電気プローブ30の本数が1本ずつである場合を例示的に示した。しかし、測定ユニットに含まれる光プローブ10と電気プローブ30の本数は、被検査体200の構成や検査内容に応じて任意に設定される。
【0048】
光プローブヘッド21は、光プローブ駆動装置22の制御によってZ軸方向に移動する。これにより、光プローブ10の入射面100と被検査体200とのZ軸方向に沿った距離の微調整が可能である。また、電気プローブヘッド23は、電気プローブ駆動装置24の制御によってZ軸方向に移動する。これにより、電気プローブ30の先端と被検査体200とのZ軸方向に沿った距離の微調整が可能である。
【0049】
光プローブヘッド21および電気プローブヘッド23と被検査体200とのX軸方向およびY軸方向の位置合わせは、ステージ駆動装置29によってステージ28を移動させることにより可能である。更に、ステージ駆動装置29装置によってZ軸方向を中心としてステージ28を回転させることにより、Z軸方向を中心とする回転方向(以下、「Z軸回転方向」という。)について、被検査体200に対して光プローブ10と電気プローブ30の位置を調整できる。
【0050】
なお、ステージ28の位置を固定し、光プローブヘッド21および電気プローブヘッド23をX軸、Y軸、Z軸の各方向に移動させてもよい。すなわち、光プローブ駆動装置22および電気プローブ駆動装置24によって、光プローブ10および電気プローブ30と被検査体200との相対的な位置を調整してもよい。
【0051】
上記のように、
図11に示した検査システムによれば、光プローブ10および電気プローブ30と被検査体200の位置合わせが可能である。なお、光プローブヘッド21の位置と電気プローブヘッド23の位置を独立して制御できるように、検査システムを構成してもよい。他に、光プローブヘッド21および電気プローブヘッド23を固定とし、ステージ28をX軸Y軸Z軸方向、Z軸回転方向に動かして、光プローブヘッド21、電気プローブヘッド23と、被検査体200とのそれぞれの位置を制御調整する方法も可能である。このように、光プローブ10および電気プローブ30と被検査体200の位置合わせに、様々な調整方法を使用することができる。
【0052】
図11に示した検査システムを介して電気信号と光信号が伝搬し、被検査体200の検査が行われる。すなわち、図示を省略したテスタから出力された電気信号が、電気プローブヘッド23に配置された接続端子(図示略)を介して、電気プローブ30に送信される。例えば、被検査体200が半導体基板に形成されたVCSELである場合は、電気プローブ30によってVCSELの上面に配置された電気信号端子に電気信号を印加することにより、VCSELが光信号Lを出力する。光信号Lは、光プローブ10により受光される。
【0053】
光プローブ10は、光電変換モジュール25および電気接続端子26を有する光電変換部27に接続する。被検査体200が出力した光信号Lは、光プローブ10と光学的に接続する光電変換モジュール25に伝搬する。光電変換モジュール25は、光信号Lを電気信号に変換し、変換した電気信号を電気接続端子26に出力する。電気接続端子26は図示を省略するテスタと電気的に接続しており、光信号Lから光電変換された電気信号が電気接続端子26からテスタに送信される。
【0054】
図11に示した検査システムを用いる被検査体200の検査は、例えば以下のように実行される。まず、Z軸方向に沿って電気プローブ30と被検査体200の相対的な位置を変化させて、被検査体200の電気信号端子に電気プローブ30の先端を接続する。そして、電気プローブ30によって被検査体200に電気信号を印加することにより、被検査体200が光信号Lを出力する。
【0055】
次に、光プローブヘッド21をZ軸方向に移動させて、所定の作動距離WDになるように光プローブ10を配置する。そして、光プローブ10によって受光した光信号Lを光電変換モジュール25により光電変換し、光信号Lの光出力をモニタする。このとき、被検査体200からの光信号Lの出力が最大になるように、光プローブ10の位置を制御する。特に、光プローブアレイ15の外縁の光プローブ10が受光する光信号L、すなわち検査範囲の外縁に位置する被検査体200からの光信号Lの光出力が最大になるように、光プローブヘッド21の位置を調整する。そして、光信号Lの光出力が最大である位置で光プローブ10を固定する。この状態で、光プローブ10からの光信号Lを測定する。これにより、被検査体200を検査できる。
【0056】
光電変換モジュール25には、光信号Lをフォトディテクタなどにより電気信号に変換するタイプや、回折格子型デバイスにより光信号Lを分光し、その回折角方向により波長変動を検出するタイプを使用できる。測定用途により、光電変換モジュール25のタイプを使い分けることができる。また、光電変換モジュール25の手前から光信号Lを分岐して、複数の種類の測定を同時に行うこともできる。光電変換部27を用いて光プローブ10の出力を光プローブヘッド21の近傍で光電変換することにより、検査システムの簡素化、測定時間の高速化、測定値の繰り返し再現性の向上を実現できる。
【0057】
他の検査方法として、被検査体200との位置合わせを、電気プローブ30と光プローブ10について同時に行ってもよい。光プローブ10および電気プローブ30と被検査体200との位置精度が確保された場合は、電気プローブ30の先端と光プローブ10の入射面100のZ軸方向の距離は、作動距離WDにほぼ等しい。このため、電気プローブ30の先端を被検査体200の電気信号端子に押し付けてオーバードライブを印加するときのZ軸方向のオーバードライブ量をqとして、光プローブ10の入射面100と被検査体200との間隔をWD+qに設定する。そして、光プローブ10と電気プローブ30を連結固定又は一体化して、各軸方向およびZ軸回転方向について位置を制御する。オーバードライブ量qは、30μm≧q≧5μmの範囲で設定する。その後、光プローブ10の先端と電気プローブ30の先端の光軸方向の位置を作動距離WDに戻すため、電気プローブ30は光軸方向にオーバードライブ量q撓む。
【0058】
電気プローブ30の先端のサイズは小さいが、一般的に被検査体200の電気信号端子のサイズは100μm程度と大きい。このため、機械加工の公差や、電気プローブヘッド23に電気プローブ30を実装する工程で±10μm程度の公差が生じても、電気信号端子と電気プローブ30の位置合わせは可能である。
【0059】
一方、光プローブ10と被検査体200の位置合わせは、Pd―Pr=δの場合、仮にδ=0ならば、1箇所で光プローブ10と被検査体200の位置合わせができれば、容易である。しかし、機械加工や光プローブ10を光プローブヘッド21に実装する工程において、通常、公差δが生じる。
【0060】
例えば光プローブ10のX軸方向やY軸方向に沿って配置された本数をk本とすると、被検査体200の発光部210と光プローブ10の間に、最大でδ×(k-1)の位置公差が生じる。このため、被検査体200と光プローブ10との間に生じるXY平面におけるδ×(k-1)の位置公差により損失変動が殆ど生じないように、光プローブ10を選択する必要がある。したがって、損失変動ΔLが0.1(dB)以下である光プローブ10は、光プローブアレイ15に好適に使用できる。
【0061】
なお、作動距離WDは、100μm以上であることが好ましい。これは、作動距離WDが短い場合には、光プローブ10の位置調整時に光プローブ10の入射面100と被検査体200が接触し、被検査体200を傷つけたり破壊したりする可能性があるためである。また、作動距離WDが短いと、被検査体200が、入射面100での反射戻り光の影響を受けやすくなる。反射戻り光の影響を受けると、光信号Lに光ノイズが発生して、測定値にノイズがのったり、測定値が変動し不安定になる。そのため、光プローブヘッド21の光プローブ10の固定箇所の形状を、Z軸方向からみてV形状、U形状、もしくは円形状とした。これにより、Pd―Pr=δは±1μm以下となり、k=12の場合の位置公差の積算値(δ×12)も±15μm以下となった。
【0062】
以上に説明したように、
図11に示す検査システムでは、光プローブ10と電気プローブ30の位置を同時若しくは別々に制御して、被検査体200と電気プローブ30を電気的に接続し、被検査体200と光プローブ10を光学的に接続する。光プローブ10の入射面100の曲率半径Rや中心半角βは、光プローブアレイ15の製造時に生じる公差δに対して損失変動を抑制するように設定されている。このため、光プローブ10を使用した検査システムによれば、半導体基板300に形成された複数個の被検査体200の検査を同時に且つ正確に行うことができる。
【0063】
したがって、
図11に示す検査システムによれば、1個ずつ被検査体200と光プローブの位置合わせをして検査する場合に比べて、被検査体200の検査時間を大幅に短縮することができる。これにより、例えば、検査時間の制限のために被検査体200の全数を測定することができない問題も解消される。また、
図11に示す検査システムによれば、安定した光信号Lを受光するために被検査体200ごとに光プローブ10の位置制御をする必要がなく、少なくとも一列ずつ、若しくは多数列を一体として被検査体200の位置合わせが可能なため、検査時間を大幅に短縮できる。このため、半導体基板300に形成された被検査体200のすべてについて、検査により良否判定ができる。
【0064】
次に、
図14を参照して、
図11に示した検査システムを用いて被検査体200から出力される光信号Lの放射角2αを検査する方法を、
図15のフローチャートを用いて説明する。
【0065】
まず、
図15のステップS10において、被検査体200から
図14に示す第1の作動距離WD1に光プローブ10を配置する。第1の作動距離WD1は、放射角2αの光信号Lの全体が入射する作動距離WDである。例えば、第1の作動距離WD1を、光信号Lの放射範囲が入射面100のコア部111の外縁より内側となる最大作動距離WDmとする。そして、ステップS20において、第1の作動距離WD1での光信号Lの光出力Wを測定する。
【0066】
次いで、ステップS30において、光プローブ10と被検査体200との光軸C200の延伸方向に沿った相対的な距離を変化させて、入射面100に入射する光信号Lの光強度が光出力Wに対して一定の比率となる、第2の作動距離WD2を検出する。第2の作動距離WD2は、光出力Wを基準として光信号Lの放射角を規定する光強度に基づいて設定される。例えば、光信号Lがピーク値の1/e
2以上の強度で進行する方向の範囲を光信号Lの放射範囲とする場合、光信号Lの光出力が光出力Wの「1-1/e
2」倍、つまり光出力Wの86.5%である第2の作動距離WD2を検出する。
図14に示すようにZ軸方向に沿って光プローブ10を移動させたときの、第1の作動距離WD1と第2の作動距離WD2との間隔をH1とする。この場合、放射半角αは式(9)で表される:
tanα=rc/WD2 ・・・(9)
このため、ステップS40において、以下の式(10)を用いて光信号Lの放射角2αを算出する:
2α=2×tan
-1(rc/WD2) ・・・(10)
【0067】
更に、光信号Lの光出力が光出力Wの半分である第3の作動距離WD3まで、Z軸方向に沿って光プローブ10を移動させる。第2の作動距離WD2と第3の作動距離WD3との間隔をH2とする。この場合、光信号Lの光出力がピーク値の半分である放射角として半値全角2αhが、式(11)で算出される:
2αh=2×tan-1(rc/(WD2+H2)) ・・・(11)
【0068】
コア径が89μmの光プローブ10について式(10)を用いて放射角2αを算出した結果、第1の作動距離WD1が50μm、間隔H1が184μm、第2の作動距離WD2が234μmであり、2α=21.53度が得られた。また、間隔H2が44μmであり、式(11)を用いて半値全角2αh=17.09度が得られた。一方、ファーフィールドパターン(Far Field Pattern:FFP)測定器による検査では、2α=21.19度、2αh=17.64度であった。したがって、
図11に示した検査システムを用いた上記の検査方法とFFP測定器を用いた検査方法で結果がほぼ一致することが確認された。
【0069】
上記に説明した検査システムを用いた検査方法では、光プローブアレイ15の位置を光軸C200に沿って変化させて光出力をモニタすることにより、ウェハ状態での放射角の検査が可能である。この検査方法によれば、半導体基板300に形成された複数個の被検査体200の放射角2αを一括して、短時間で検査することができる。また、被検査体200の放射角を検査するためにFFP測定器などの測定装置を別に用意する必要がなく、検査時間や検査コストを抑制することができる。
【0070】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る光プローブ10は、
図16に示すように、光導波路11が、第1領域101と、第1領域101よりもコア径が小さい第2領域102とを連結した構成である。すなわち、第1領域101のコア径2rcが、第2領域102のコア径2rcsよりも大きい。第1領域101の一端に入射面100が形成され、他端が第2領域102に連結している。
【0071】
入射面100が形成された第1領域101は、第1の実施形態で説明した光プローブ10と同様の構造を有する。すなわち、第1領域101は、式(5)および式(6)の関係を満足するように、曲率半径Rや中心半角βが設定されている。
【0072】
図16に示す光プローブ10は、第1領域101に大口径のGI型光ファイバを用い、第2領域102に標準的な口径のGI型光ファイバを用いて構成してもよい。例えば、第1領域101にコア径が90μmの大口径の光ファイバを用い、第2領域102にコア径が62.5μmの標準的な口径の光ファイバを用いる。
【0073】
図16に示した光プローブ10は、例えば以下のように製造される。まず、大口径のGI型光ファイバと標準的な口径のGI型光ファイバとの端面同士を融着接続する。そして、大口径のGI型光ファイバを、第1領域101の所定の長さにカットする。その後、大口径のGI型光ファイバの端面を曲率半径Rになるように加工する。
【0074】
図17に、
図16に示した光プローブ10の端部を示した。被検査体200からの光信号Lは、第1領域101の入射面100から光軸C200とほぼ平行に進行した後、第1領域101と第2領域102の境界の近傍で集束する。その後、光信号Lは、第2領域102のコア部111を進行する。光信号Lの集束点FPを第1領域101と第2領域102の境界の近傍に調整することにより、光信号Lは光プローブ10を低損失で伝搬する。これは、公差δによって光プローブ10に対する被検査体200の相対的な位置がずれた場合に、集束点FPが公差δ程度ずれるとしても、rc>δであるならば、光信号Lの伝送損失を抑制できるためである。
図17では、光信号Lの光源の位置がZ軸方向に距離DLずれたときに、集束点FPの位置の移動がδLである例を示している。
【0075】
光信号Lの集束点FPを第1領域101と第2領域102の境界の近傍に調整するために、入射面100から第1領域101と第2領域102の境界までのZ軸方向に沿った長さFLは、以下の式(12)を満たすように設定される:
FL=2πP/A1/2+(WDm-WD)/n0 ・・・(12)
式(12)で、Pはコア部111を進行する光信号Lの周期に対する比率を示す係数(0≦P≦1)であり、P=1が1周期に相当し、P=0.5が1/2周期に相当する。
【0076】
例えば、屈折率分布定数A1/2が0.00436の大口径のGI型光ファイバを第1領域101に用い、係数Pが0.25(1/4周期)、作動距離WDが100μmの場合、最大作動距離WDmが209μm、屈折率n0が1.488の光プローブ10では、FL=434μmである。光信号Lの集束点FPを第1領域101と第2領域102の境界の近傍になるように長さFLを設定することにより、光信号Lの伝送損失を抑制して光プローブ10を他の光回路用部品と接続することができる。
【0077】
以上に説明したように、第2の実施形態に係る光プローブ10は、コア径の異なる第1領域101と第2領域102を連結した構成である。入射面100を形成した大口径の第1領域101に標準的なコア径の第2領域102を連結することにより、第2領域102の端部を標準的なコア径の光ファイバを用いた光回路用部品、カプラー、光スイッチなどに接続して、低損失な多入力光回路を実現できる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0078】
(その他の実施形態)
上記のように本発明は実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0079】
例えば、上記では光導波路11が屈折率分布型の光プローブ10について説明したが、光導波路11がステップインデックス型であってもよい。また、光プローブ10の光導波路11を光ファイバ以外で構成して入射面100を凸球面にしてもよい。
【0080】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態などを含むことはもちろんである。
【符号の説明】
【0081】
10…光プローブ
11…光導波路
15…光プローブアレイ
21…光プローブヘッド
22…光プローブ駆動装置
23…電気プローブヘッド
24…電気プローブ駆動装置
30…電気プローブ
35…電気プローブアレイ
100…入射面
111…コア部
112…クラッド部
200…被検査体
210…発光部
300…半導体基板