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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】洗浄装置および洗浄水の循環方法
(51)【国際特許分類】
   B28C 5/12 20060101AFI20231214BHJP
   B08B 3/02 20060101ALI20231214BHJP
   B08B 3/04 20060101ALI20231214BHJP
   B08B 3/10 20060101ALI20231214BHJP
   G21F 9/16 20060101ALI20231214BHJP
   G21F 9/28 20060101ALI20231214BHJP
   G21F 9/30 20060101ALI20231214BHJP
   B01F 35/11 20220101ALI20231214BHJP
【FI】
B28C5/12
B08B3/02 F
B08B3/04 Z
B08B3/10 Z
G21F9/16 521J
G21F9/28 561A
G21F9/30 515Z
G21F9/28 521J
B01F35/11
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019192118
(22)【出願日】2019-10-21
(65)【公開番号】P2021067529
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 一人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼石 斉
(72)【発明者】
【氏名】山品 和久
(72)【発明者】
【氏名】谷内 俊範
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328580(JP,A)
【文献】特開平11-251283(JP,A)
【文献】特開2014-228415(JP,A)
【文献】特開2006-272908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 9/00
B01F
B08B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を溜める洗浄槽と、
前記洗浄槽と接続され、前記洗浄水が流れる循環配管及び前記循環配管に配置され洗浄水を循環させるポンプを備え、前記洗浄槽の前記洗浄水を前記循環配管で循環させる液循環部と、
前記循環配管に配置され、前記循環配管を流れ、前記洗浄槽に供給される洗浄水を冷却する冷却手段と、を有し、セメントと水とを混合する混合羽根を洗浄する、洗浄装置。
【請求項2】
前記冷却手段は、前記循環配管に向けて送風する送風器を備える請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記送風器は、前記循環配管を介して前記ポンプの反対側に備えられる請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記冷却手段は、前記循環配管に放熱板を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記循環配管は、屈曲部で接続された直線部が並列に配置された並列配管を備える請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記冷却手段は、前記洗浄槽の前記洗浄水を、60℃以下とする請求項1から請求項のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記液循環部は、前記循環配管を流れる前記洗浄水のレイノズル数が2,300以上である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記液循環部は、前記循環配管を流れる前記洗浄水の管内平均流速が、2.1m/sec以上である請求項1から請求項のいずれか一項に記載の洗浄装置。
【請求項9】
洗浄水を溜める洗浄槽の洗浄水を循環配管で循環させる液循環方法であって、
洗浄槽から排出され前記循環配管を流れる前記洗浄水を、ポンプにより加圧し、所定方向に流す加圧工程と、
前記循環配管を流れ、前記洗浄槽に供給される前記洗浄水を冷却する冷却工程と、
を有し、セメントと水とを混合する混合羽根を洗浄する循環方法。
【請求項10】
前記循環配管から前記洗浄槽に供給され、前記洗浄槽の内部に給送された洗浄水により、前記洗浄槽の備える撹拌翼を回転させ、前記洗浄槽内の前記洗浄水を撹拌する撹拌工程と、をさらに有する請求項に記載の循環方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、洗浄装置および洗浄水の循環方法に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントやスラッジ等を撹拌する撹拌装置がある。撹拌装置は、混合羽根を備える。撹拌装置は、混合羽根にセメントやスラッジが付着して固化することを防ぐために洗浄装置で洗浄する。洗浄装置は、洗浄水を溜めた洗浄槽を備え、洗浄槽内で、撹拌装置の撹拌羽根を回転させることで、付着物を除去する。
【0003】
特許文献1には、洗浄水を溜める洗浄槽と、洗浄槽の底板に設けられた排水口から洗浄水を排出し、排出した洗浄水を洗浄槽の側板に設けられた送給口から洗浄槽内へ送給する循環手段と、循環手段に設けられ、排出口から排出した洗浄水を洗浄槽の送給口側へ送給する送給手段と、洗浄槽の底板に設けられ、洗浄水を撹拌する撹拌手段とを備え、撹拌手段は、複数の翼体と、複数の翼体を回転可能に洗浄槽の底板に固定する固定手段と、を備える洗浄装置であって、複数の翼体の先端部に受圧部が設けられ、循環手段としての循環配管の送給口が、複数の翼体の先端と略同じ高さに洗浄槽の側板の接線方向に延在するよう設けられた洗浄装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-228415号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の洗浄装置に貯留している洗浄水は、スラッジを含んだ洗浄水であり、セメントと混合して固化に使用する場合がある。また、洗浄装置は、循環運転しておりポンプ入熱のため、洗浄水の水温が上昇する。洗浄装置で循環する洗浄水が高温となると、洗浄水を用いて固化体を製作した場合、固化体が規定の強度を発現しない可能性がある。
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、循環する洗浄水を冷却することにより、規定強度を確保できる健全な洗浄水固化体を製作することが可能となる状態を維持できる洗浄装置および洗浄水の循環方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の洗浄装置は、洗浄水を溜める洗浄槽と、前記洗浄槽と接続され、前記洗浄水が流れる循環配管及び前記循環配管に配置され洗浄水を循環させるポンプを備え、前記洗浄槽の前記洗浄水を前記循環配管で循環させる液循環部と、前記循環配管に配置され、前記循環配管を流れる洗浄水を冷却する冷却手段と、を有する。
【0008】
洗浄装置は、洗浄槽の外部に備えられる液循環部に、液循環部を冷却する冷却手段を有しているため、液循環部からの放熱を促進して、液循環部を冷却することができる。これにより、液循環部の内部を通過する洗浄水からの放熱を促進させて洗浄水の温度を低下させ、洗浄槽の洗浄水の水温の上昇を抑えることができる。
【0009】
上記課題を解決するために、本開示の液循環方法は、洗浄水を溜める洗浄槽の洗浄水を循環配管で循環させる循環方法であって、洗浄槽から排出され前記循環配管を流れる前記洗浄水を、ポンプにより加圧し、所定方向に流す加圧工程と、前記循環配管を流れる前記洗浄水を冷却する冷却手段と、を有する。
【0010】
従って、洗浄槽の底板から排出された洗浄水は、加圧工程で加圧されるため液循環部における流速を速く保つことができ、また、加圧工程でのポンプからの入熱後に冷却工程で冷却されるため、液循環部における洗浄水の水温を低く保つことができる。また、洗浄槽内のスラッジ濃度が高いとシステム系内で閉塞事象が発生することが考えられ、その対策として、スラッジを含む洗浄水を定期的に抜き出しセメント固化している。液循環方法は、適切な水温で固化することができ、固化体の規定強度を維持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、液循環部の配管を冷却する冷却手段を設けることで、洗浄槽の内側面に堆積したスケールにより、洗浄槽の側面からの放熱が妨げられる状態でも洗浄装置の洗浄槽を循環する洗浄水の水温の上昇を防止することができ、循環する洗浄水で、規定強度を確保できる健全な洗浄水固化体を製作することが可能となる状態を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本実施形態に係る洗浄装置を含む洗浄システムのブロック図である。
図2図2は、洗浄装置の正面図である。
図3図3は、図2のA-A断面で切断した平面図である。
図4図4は、洗浄装置の左側板図である。
図5図5は、図2のB-B断面で切断した平面図である。
図6図6は、放熱板の実施例の正面図である。
図7図7は、液冷ジャケットの実施例の正面図である。
図8図8は、比較例の洗浄水の水温の上昇の一例を示したグラフである。
図9図9は、実施例の洗浄水の水温の上昇一例を示したグラフである。
図10図10は、比較例の洗浄水の水温の上昇一例を示したグラフである。
図11図11は、本実施形態に係る洗浄水の循環方法を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。なお、本実施形態は、以下に説明する実施例のみに限定されるものではない。
【0014】
<洗浄システム>
図1は、本実施形態に係る洗浄装置を含む洗浄システムのブロック図である。洗浄システム200は、セメント固化装置210と洗浄装置100とを備える。洗浄装置100は、洗浄水が充填された洗浄槽110を備える。洗浄装置100は、セメント固化装置210に対して移動可能に配置されている。図1では、混合羽根Mを2か所で示しているが、使用時は、洗浄装置100が、混合羽根Mが配置されている領域に移動して、洗浄装置100の洗浄槽110に混合羽根Mが挿入される。
【0015】
セメント固化装置210は、セメント投入部213と、混練水供給部214と、混合羽根Mと、を備える。セメント固化装置210は、廃棄物が投入されたドラム缶211が所定位置に配置される。この状態で、混合羽根Mがドラム缶211に挿入される。セメント固化装置210は、ドラム缶211にセメント投入部213からセメントを供給し、混練水供給部214から混練水を供給し、ドラム缶211に廃棄物とセメントと混練水を充填する。なお、廃棄物をセメント等と同時に投入してもよい。また、セメント固化装置210は、廃棄物とセメントと混練水とが充填したドラム缶211の内部を混合羽根Mで混練する。
【0016】
洗浄システム200は、廃棄物とセメントと混練水との混合が完了した後、ドラム缶211を鉛直方向下側に移動させ、混合羽根Mをドラム缶211から抜いた状態とする。洗浄システム200は、洗浄装置100を移動させて、洗浄槽110に混合羽根Mが挿入された状態とする。洗浄システム200は、洗浄槽110内で混合羽根Mを撹拌時と同様に回転させる。洗浄システム200は、セメントと水との混合した際に混合羽根Mに付着したスラッジSを、混合羽根Mから洗浄槽110内に剥離する。スラッジSは、セメントや廃棄物が付着したものである。
【0017】
<洗浄装置>
図1に加え、図2から図7を用いて、本実施形態に係る洗浄装置について説明する。図2は、洗浄装置の正面図である。図3は、図2のA-A断面で切断した平面図である。図4は、洗浄装置の左側面図である。図5は、図2のB-B断面で切断した平面図である。図6は、放熱板の実施例の正面図である。図7は、液冷ジャケットの実施例の正面図である。
【0018】
洗浄装置100は、図2に示すように、洗浄水Lが溜められた洗浄槽110と、洗浄槽110の底部に備えられる撹拌翼120と、洗浄槽110の外部に備えられ、ポンプ130により洗浄槽110の洗浄水Lを循環させる液循環部140と、液循環部140を冷却する冷却手段150と、を有する。ここで、洗浄槽110は、支柱111により支持されており、洗浄槽110の下方には液循環部140が備えられている。また、洗浄装置100は、ベース101上に備えられており、ポンプ130は、洗浄装置100のX+方向における端に、備えられている。ここで、洗浄装置100は、洗浄水Lとの接水部は主にステンレス材料により構成されている。
【0019】
<洗浄槽>
洗浄槽110は、図2に示す通り、上部が開口した筒状体により構成され、洗浄槽110の底部は、外部に向かって突出した円錐形状をなしており、底板112に排水口113が、洗浄槽110の側板114には送給口115が備えられている。ここで、送給口115は、図3に示す通り、洗浄槽110に対して側板114の接線方向を向いて備えられている。洗浄槽110は、ベース101が備える4本の支柱111より支持されている。なお、洗浄槽110は、蓋を有してもよい。
【0020】
洗浄装置100による混合羽根Mの洗浄は、図2に示すように、洗浄槽110に溜められた洗浄水Lに浸漬するよう配置された混合羽根Mが、所定の回転動作を行うことにより行われる。混合羽根Mから剥離したスラッジSは、後述する撹拌翼の回転によって生じる流れに乗って、沈降または堆積せずに、洗浄水Lの水中を浮遊する。
【0021】
ここで、撹拌翼の回転によって生じる流れの不均一性により、洗浄水Lの水中を浮遊するスラッジの一部は洗浄槽110の内側面に堆積する。この洗浄槽110の内側面に堆積したスケールWは、洗浄槽110の側面からの放熱を妨げている。混合羽根Mを洗浄した後の洗浄水Lは、セメント固化装置210におけるセメントの混練水として使用される。なお、洗浄槽110の内側面に堆積したスケールWは、洗浄槽110をメンテナンスすることにより除去される。
【0022】
<撹拌翼>
撹拌翼120は回転することにより、洗浄槽110に溜められた洗浄水Lを撹拌する。撹拌翼120は、図2に示すように、洗浄槽110の内部の底板112に固定される固定軸部121によって回転可能に備えられている。撹拌翼120は、図3によると、8枚の板状の翼体122で構成されている。撹拌翼120の回転中心の位置は、洗浄槽110の筒状体の中心の同軸上であり、撹拌翼120の回転半径は、洗浄槽110の内径より一回り小さく形成されている。
【0023】
撹拌翼120の翼体122は、図3に示す通り、送給口115の反対側に突出する円弧をなしている。撹拌翼120の翼体122の半径方向における先端部は、洗浄槽110の送給口115と対向する平面をなし、受圧板123を備えている。撹拌翼120の翼体122は、図2に示す通り、洗浄槽110の底板112に沿う形状をし、翼体122の基端側の洗浄槽110の底板側には切り欠き124を有している。
【0024】
また、撹拌翼120を固定する固定軸部121は、図2に示す通り、洗浄槽110の底板112に固定される複数の支持柱125により支持されている。また、固定軸部121は、撹拌翼120の回転中心に設けられた円錐形状をした蓋体126と回転機構127と、オイルシール128を備え、蓋体126とオイルシール128により上下から回転機構127を挟むよう構成されている。ここで、撹拌翼120は、図3に示すように、洗浄槽110の送給口115から給送される洗浄水Lの吐出圧力を、受圧板123が受けることによって回転力を得る。なお、撹拌翼120は、例えばモータによって自ら回転するよう構成されてもよい。
【0025】
<液循環部>
液循環部140は、ポンプ130と、排水配管141と、給水配管142とを有する。液循環部140は、排水配管141と給水配管142が循環配管となる。排水配管141は、一方の端部が洗浄槽110の排水口113と接続され、他方の端部がポンプ130に接続される。給水配管142は、一方の端部がポンプ130に接続され、他方の端部が洗浄槽110の送給口115に接続される。これにより、液循環部140は、洗浄槽110から排出された洗浄水Lを洗浄槽110に供給する循環経路を形成する。
【0026】
排水配管141と、給水配管142とは、直線状の管路を、屈曲した継手で連結し、連続した流路を形成している。排水配管141と、給水配管142とは、例えば、ステンレス製の管路である。排水配管141と、給水配管142とは、直線状の配管と継手とが、フランジで接続される。ここで、液循環部140は、図2に示す通り、洗浄槽110の外部に備えられており、洗浄槽110の下方に設けられている。
【0027】
排水配管141は、図2および図4に示す通り、洗浄槽110の底板112の排水口113から洗浄水Lをポンプ流入口まで導く。すなわち、洗浄槽110の底板112の排水口113とZ-方向に接続され、やがてX-方向に導いた後に、Y-方向およびZ-方向に導き、再度曲がってX+方向に導き、ポンプ130のポンプ流入口131に到達する。
【0028】
給水配管142は、ポンプ130により加圧された洗浄水Lを、ポンプ流出口132から洗浄槽110の側板114に備えられた送給口115へと送る。ここで、給水配管142は、図5に示すように、複数の直線部の端部同士をU字状に屈曲した継手で接続し、洗浄水の経路が、複数回折り曲げられ、直線部が並列に配置された並列配管143を備える。すなわち、給水配管142は、洗浄水Lをポンプ流出口132から、X-方向に導かれた後180°折り曲げられてX+方向に導かれ、その後、再度X-方向に折れ曲げられることにより3本の配管が並列するよう構成されている。洗浄水Lは並列配管143を通った後、Y-方向へ曲がり、三分岐145にてX-方向に流れを変えた後、手動弁146を通過し、Y+方向およびZ+方向に90°折れ曲がり、洗浄槽110の送給口115へと接続される。なお、並列配管143の並列される3本の配管の並びに、排水配管141が配置されてもよい。
【0029】
ポンプ130は、スラッジを含む洗浄水Lを加圧可能に構成されている。ポンプ130は、洗浄水Lを加圧して、給水配管142側に送ることで、循環配管に所定の流速の流れを形成する。ポンプ130は、例えば遠心ポンプを使用することができる。この場合、ポンプ130は、ポンプ流入口131から供給された洗浄水Lを、ポンプケーシング内で、モータにより回転する羽根車の遠心力により遠心方向へ押し出されることにより加圧する。ポンプ130は、排水配管141からポンプ流入口131に送られた洗浄水Lを加圧した後、給水配管142に送る。
【0030】
ポンプ130は、例えば軸動力出力0.8kW以上とすることが好ましい。ポンプ130は、軸動力出力を上記範囲とすることで、液循環部140におけるスラッジSを含む洗浄水Lを所定の流速で送ることができる。また、ポンプ130は、インバータ機能付きのものが望ましい。ポンプ130は、インバータ機能付きのものとすることで、ポンプ130を駆動させる電力の周波数に寄らずに所定のポンプ性能を得ることができる。
【0031】
<冷却手段>
冷却手段150、放熱板144と、送風器151を備える。放熱板144は、排水配管141の並列配管143と並んだ部分、および給水配管142の並列配管143に配置される。放熱板144は、図6に示すように、並列配管143の外表に配置されたスパイラルフィンである。なお、放熱板144の構造はこれに限定されず、並列配管143から熱を受け取り、放熱できればよい。放熱板144は、例えば、複数のリング状の部材で、内周面が並列配管143と接続してもよい。放熱板144は、設けられる配管の外周面にろう付けで固定される。なお、放熱板144は溶接で固定してもよい。放熱板144は、配管の外周面から熱が伝わる。これにより、給水配管142を通過する洗浄水Lの放熱の効率を向上させることができる。
【0032】
例えば、並列配管143が、直径34mm、肉厚3mm、長さ500mmで、両端にフランジを有し、放熱板144が、高さ32mm厚み0.4mmのスパイラルフィンで、ピッチ8mmで400mmの長さに渡り巻きつけられる場合、並列配管143の伝熱面積が1本当たり0.45mなのに対し、放熱板144を有する場合には、1本当たり0.71mの伝熱面積とすることができる。
【0033】
送風器151は、放熱板144に向けて空気を送り、放熱板144の周囲に空気の流れを形成する。送風器151は、平面において並列配管143を介してポンプ130の反対側から送風するよう配置される。つまり、送風器151は、並列配管143を通過した空気がポンプ130にあたる向きで風を送る。これにより送風器151は、ポンプ130の熱によって暖められていない空気を、液循環部140に対して送風することができ、液循環部140の放熱の効率をより高めることができる。送風器151は、洗浄装置100に対して、並列配管143の高さと略同じ高さに設けられている。また、送風器151は、並列配管143の下に設けられても良い。本実施形態では、送風器151を、並列配管143を介してポンプ130と対面する位置に配置したが、上記風の流れを形成することができれば位置は限定されない。
【0034】
また、冷却手段150は、本実施形態のように放熱板144と送風器151とをもうけることで、簡単な構造とすることができるが、これに限定されない。冷却効率が低下するが、放熱板144のみを設け、送風器151を設けない構造としても、送風器151のみを設け、放熱板144を設けない構造としてもよい。
【0035】
また、冷却手段150は、図7に示すように、液冷ジャケット147を用いた水冷によるものでもよい。この場合、液冷ジャケット147は、配管部材Pと、配管部材Pの径より一回り大きい筒状の液冷ジャケット147とにより構成される二重管構造を有する。液冷ジャケット147は冷却水の流入口148と流出口149とを備え、配管部材Pと液冷ジャケット147との間の空間には冷却水が充填可能となっており、液冷ジャケット147を通過するよう構成される。ここで、液冷ジャケット147と図示しない冷却部との間を接続された配管により循環するよう構成されていてもよい。
【0036】
洗浄装置100が、冷却手段150として液冷ジャケット147を有することにより、液循環部140の放熱の効率を向上させ、液循環部140を効率よく冷却することができる。ここで、排水配管141または給水配管142を流れる洗浄水Lの流れ方向と、液冷ジャケット147を流れる冷却水の流れ方向とは、逆方向である対向流でもよく、同一方向である並行流でもよい。
【0037】
本実施形態に係る洗浄装置について、図8から図10に示す循環運転時間ごとの洗浄水Lの水温の変化についての計算結果を用いて説明する。図8は、比較例の洗浄水の水温の上昇の一例を示したグラフである。図9は、実施例の洗浄水の水温の上昇一例を示したグラフである。図10は、比較例の洗浄水の水温の上昇一例を示したグラフである。図8は、洗浄装置の液循環部が放熱板を備えず、かつ送風器による送風も行わない場合における洗浄水の水温の上昇を示したグラフである。図9は、洗浄装置の液循環部が放熱板を備え、かつ送風器により送風した場合における洗浄水の水温の上昇を示したグラフである。図10は、洗浄装置の洗浄槽の内側面にスケールが堆積した状態で、かつ液循環部が放熱板を備えず、かつ送風器による送風も行わない場合における洗浄水の水温の上昇を示したグラフである。計算条件は、いずれの場合も、水温30℃、大気温度30℃、ポンプ軸動力0.8kWとしている。
【0038】
まずは、送風器151も放熱板144も使用しない場合には、図8に示すように、循環運転開始後5hも経たないうちに洗浄槽110の内部温度Taは40℃を超え、15h経過前には水温が60℃を超え、30hを超えると内部温度Taは70℃を超えていることがわかる。なお、この場合の、熱伝達率は、約4.7W/m・Kであった。
【0039】
次に、液循環部140が放熱板144を有し、かつ送風器151を使用した場合には、図9に示す通り、循環運転開始後10hあたりまでは、内部温度Tbが40℃あたりまで上昇するものの、その後は循環運転を継続しても内部温度Tbの上昇は見られないことがわかる。なお、この場合の熱伝達率は、約11.6W/m・Kであった。このように、液循環部140に放熱板144および送風器151を用いると、洗浄槽110の内側面へのスケールWの堆積によらず、液循環部140の放熱の効率を向上させて冷却することで、洗浄水Lから液循環部140へと放熱の効率を向上させることができ、洗浄水Lの水温は60℃以下に維持することができる。
【0040】
なお、洗浄槽110の内側面にスケールWが堆積しており、かつ送風器151も放熱板144も使用しない場合は、図10に示すように、循環運転時間20hを超えたあたりで内部温度Tcは100℃に達した。この場合、洗浄槽110の外周面に強制対流を当てても、ほとんど効果は見られなかった。
【0041】
<循環方法>
図11を用いて、本実施形態の循環方法について説明する。図11は、本実施形態に係る洗浄水の循環方法を示したフローチャートである。本実施形態に係る循環方法は、洗浄槽110から排出された洗浄水Lがポンプ130により加圧される加圧工程と、加工工程後に洗浄水Lが冷却される冷却工程と、洗浄槽110の送給口115から給送された洗浄水Lが洗浄槽110の内部に備えられる撹拌翼120を回転させることにより洗浄槽110内の洗浄水Lが撹拌される撹拌工程S300を有する。
【0042】
<加圧工程>
洗浄装置100は、加圧工程S100として、ポンプ130により洗浄水Lは加圧される。洗浄装置100は、ポンプ130の動力で、液循環部140での洗浄水の流れを形成する。ここで、ポンプ130のモータの有する熱が、ポンプ130を通過する洗浄水Lに入熱される。
【0043】
<冷却工程>
洗浄装置100は、冷却工程S200として、加圧工程S100にて加圧および入熱された洗浄水Lを冷却手段150で冷却する。洗浄水Lは、循環配管の給水配管142を流れる際に、冷却手段150が設けられている領域で冷却される。なお、本実施形態の洗浄装置100は、排水配管141を流れる洗浄水Lに対しても冷却手段150での冷却を行っている。
【0044】
<撹拌工程>
洗浄装置100は、撹拌工程S300として、冷却工程S200にて冷却された洗浄水Lを、洗浄槽110の側板114に備えられた送給口115から洗浄槽110に溜められた洗浄水中Lに吐出する。ここで、洗浄水Lは、ポンプ130により加圧され、送給口115から吐出される位置で、洗浄槽110に溜められた洗浄水Lよりも圧力が高くなっている。また、上述の通り洗浄槽110の送給口115は、洗浄槽110に備えられる撹拌翼120と略同じ高さに備えられており、かつ送給口115は洗浄槽110の筒状体の接線方向に向けて備えられている。洗浄水Lは、送給口115から吐出されることで、撹拌翼120の先端に設けられた受圧板123に接線方向の力を与える。洗浄装置100は、送給口115から洗浄槽110内へと吐出された洗浄水Lによって、撹拌翼120は回転を生じ、撹拌翼120が回転することにより、洗浄槽110内の洗浄水Lは撹拌される。これにより、洗浄槽110内の洗浄水Lが撹拌され、洗浄槽110内のスラッジSは、沈降および堆積することなく洗浄水L中を浮遊し、また、洗浄槽110に溜められた洗浄水Lの水温は均一化される。
【0045】
洗浄装置100は、循環配管を冷却手段150で冷却を行うことで、図8から図10に示すように、洗浄水を好適に冷却することができる。具体的には、洗浄槽110の内周面にスラッジが付着することで、洗浄槽110の側面からの放熱が妨げられる状態でも洗浄水を好適に冷却することができる。また、液循環部140の循環配管は、撹拌翼120を回転させる動力としているため、所定以上の流速で洗浄水を循環させるため、管路の内面にスラッジが付着することを抑制できる。これにより、長時間洗浄装置100を運転した場合でも、継続して洗浄水を冷却することができる。
【0046】
洗浄装置100は、液循環部140として並列配管143を備えることで、冷却手段150で効率よく液循環部140を冷却することができる。また、洗浄装置100は、液循環部140をコンパクトにすることができるため、洗浄装置100の大きさをコンパクトにすることができる。
【0047】
洗浄装置100は、冷却手段150で、洗浄槽110の洗浄水の水温60℃以下に維持することが好ましい。洗浄装置100は、洗浄水の水温を60℃以下に維持することで、洗浄装置水の固化体製作に際し,セメント反応による温度上昇に起因した,ひび割れ等の固化体の品質低下を防止することができる。
【0048】
液循環部140は、排水配管141および給水配管142を通過する洗浄水Lの管内平均流速が、2.1m/sec以上であることが好ましい。液循環部140は、排水配管141及び給水配管142の管内平均流速を上記範囲とすることで、配管内の流れを乱流として、冷却手段150での洗浄水Lから配管への放熱を促進することができる。また、配管内へのスラッジSの堆積を防止することができる。
【0049】
液循環部140は、洗浄水Lの流れのレイノルズ数を2,300以上で配管内を流通させることが好ましい。洗浄装置100は、液循環部140の内部を流れる洗浄水Lの流れを上記範囲とすることで、乱流を維持することができ、配管内へのスラッジの付着を抑制しつつ、冷却手段150での冷却を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0050】
100 洗浄装置
101 ベース
110 洗浄槽
111 支柱
112 底板
113 排水口
114 側板
115 送給口
120 撹拌翼
121 固定軸部
122 翼体
123 受圧板
124 切り欠き
125 支持柱
126 蓋体
127 回転機構
128 オイルシール
130 ポンプ
131 ポンプ流入口
132 ポンプ流出口
140 液循環部
141 排水配管
142 給水配管
143 並列配管
144 放熱板
145 三分岐
146 手動弁
147 液冷ジャケット
148 流入口
149 流出口
150 冷却手段
151 送風器
200 洗浄システム
210 セメント固化装置
211 ドラム缶
212 廃棄物投入部
213 セメント投入部
214 混練水供給部
215 セメント投入口
216 配管
L 洗浄水
M 混合羽根
P 配管部材
S スラッジ
W スケール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11