(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】制御装置及び吐水システム
(51)【国際特許分類】
A47K 3/28 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A47K3/28
(21)【出願番号】P 2019214364
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】西澤 研一
(72)【発明者】
【氏名】今村 竜太
(72)【発明者】
【氏名】長瀬 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 和幸
(72)【発明者】
【氏名】中田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】水野 智之
(72)【発明者】
【氏名】白石 和久
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0312563(US,A1)
【文献】特開平03-277331(JP,A)
【文献】特開2006-320602(JP,A)
【文献】特開2019-154723(JP,A)
【文献】特開平04-200417(JP,A)
【文献】特開2019-154724(JP,A)
【文献】特開2006-051196(JP,A)
【文献】特開2006-349325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水装置を制御する制御装置であって、
前記吐水装置は、
少なくとも一つの吐水孔が形成された複数の吐水部
を備える吐水ヘッドと、
前記複数の吐水部のそれぞれに対応し、その対応する前記吐水部の前記吐水孔に給水する複数の通水路と、
前記複数の通水路のそれぞれに対応し、その対応する前記通水路を開閉可能な複数の開閉弁と、を備え、
本制御装置は、前記複数の開閉弁を制御可能であり、前記複数の開閉弁の開閉状態を連続的に切り替える切替吐水モードを実行可能である制御装置。
【請求項2】
前記吐水装置は、前記複数の通水路の上流側に設けられ、前記複数の通水路に共通して用いられる共通水路をさらに備え、
本制御装置は、前記切替吐水モードにおいて、前記複数の開閉弁のうちの何れかの開閉弁を閉じるとき、他の前記開閉弁を開状態に維持する請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記複数の吐水部のそれぞれは同芯状に設けられ、
前記複数の吐水部のそれぞれには環状に並ぶ複数の吐水孔が形成され、
前記複数の吐水部のそれぞれは、それぞれに形成された前記複数の吐水孔の配置態様に応じた位置として、環状に並ぶ位置を通るように水流を吐き出す、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
本制御装置は、前記切替吐水モードにおいて、前記複数の開閉弁のうちの何れかの開閉弁を閉じるタイミングと、他の前記開閉弁を開くタイミングとを同期させる請求項1から
3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
本制御装置は、前記複数の開閉弁それぞれの開閉状態の組み合わせを開閉パターンというとき、前記切替吐水モードにおいて、複数の前記開閉パターンに順々に切り替えるように、前記複数の開閉弁を制御し、
前記複数の開閉パターンのそれぞれは、少なくとも一つの前記開閉弁が閉状態となるように設定される請求項1から
4のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項6】
本制御装置は、前記切替吐水モードにおいて、少なくとも一つの前記開閉弁を開状態に維持したまま、他の前記開閉弁の開閉状態を連続的に切り替える請求項1から
5のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記複数の吐水部は、前記複数の開閉弁の開閉状態に応じて、前記複数の吐水部の吐き出す水流の分布範囲を増減可能に構成され、
本制御装置は、前記切替吐水モードにおいて、前記分布範囲が増減するように、前記複数の開閉弁の開閉状態を制御する請求項1から
6のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1項に記載の制御装置と、
請求項1から
7のいずれか1項に記載の吐水装置と、を備える吐水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及び吐水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、浴室、洗面台等に利用される吐水装置としてシャワーヘッドを開示する。このシャワーヘッドは、ユーザに対する水流の当たり感にバリエーションを持たせるため、吐水形態を切り替え可能に構成される。このシャワーヘッドは、吐水形態を手動で切り替え可能なレバーを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構造のもとでは、吐水形態を手動で切り替えた後、手動で意図的にレバーを操作しない限り、同じ吐水形態が継続したままとなる。水浴び時に同じ吐水形態が継続することは、ユーザにとって飽きの原因となる。本願発明者は、水浴びを更に楽しませるうえで、特許文献1の開示技術に関して、改良の余地があるとの認識を得た。
【0005】
本開示の目的の1つは、水浴びを更に楽しませることができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するための本開示のある態様は制御装置である。ある態様の制御装置は、吐水装置を制御する制御装置であって、前記吐水装置は、少なくとも一つの吐水孔が形成された複数の吐水部と、前記複数の吐水部のそれぞれに対応し、その対応する前記吐水部の前記吐水孔に給水する複数の通水路と、前記複数の通水路のそれぞれに対応し、その対応する前記通水路を開閉可能な複数の開閉弁と、を備え、本制御装置は、前記複数の開閉弁を制御可能であり、前記複数の開閉弁の開閉状態を連続的に切り替える切替吐水モードを実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1実施形態の吐水システムの利用シーンを示す側面断面図である。
【
図2】第1実施形態の吐水システムの構成図である。
【
図4】
図3のA矢視から吐水ヘッドを見た図である。
【
図5】
図3のB矢視から吐水ヘッドを見た図である。
【
図7】継続吐水モードでの吐水装置の動作状態を示す模式図である。
【
図9】通水路の通水流量と開閉弁に出力される出力信号との関係を模式的に示すタイミングチャートである。
【
図10】切替吐水モードでの吐水装置の動作状態を示す模式図である。
【
図11】第1実施形態における各通水路の通水流量の推移を示すタイミングチャートである。
【
図12】第1実施形態における切替サイクルの説明図である。
【
図13】第2実施形態における切替サイクルの説明図である。
【
図14】第3実施形態の吐水ヘッドを
図4と同じ視点から見た図である。
【
図15】第3実施形態における切替サイクルの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態を説明する。同一の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。各図面では、説明の便宜のため、適宜、構成要素を省略、拡大、縮小する。図面は符号の向きに合わせて見るものとする。本明細書で言及する構造には、言及している構造に厳密に一致する構造のみでなく、寸法誤差、製造誤差等の誤差の分だけずれた構造も当然に含まれる。
【0009】
(第1実施形態)
図1、
図2を参照する。本実施形態の吐水システム10は浴室設備に用いられる。吐水システム10は、吐水装置12と、吐水装置12を制御する制御装置14と、ユーザにより操作される操作部16A、16Bと、を備える。制御装置14は後述する。
【0010】
吐水装置12は、吐水ヘッド18と、水源から供給される水を吐水ヘッド18に供給する給水路20と、を備える。水源は、例えば、上水道、貯水槽等である。給水路20には、温度調整弁を通して温度調整された水が供給されてもよい。
【0011】
吐水ヘッド18は、少なくとも一つの吐水孔(
図2では不図示)が形成された複数の吐水部22A~22Dを備える。本実施形態の複数の吐水部22A~22Dは、第1吐水部22A、第2吐水部22B、第3吐水部22C及び第4吐水部22Dを含む。吐水ヘッド18及び吐水部22A~22Dの詳細は後述する。
【0012】
給水路20は、給水路20において上流側に設けられる共通水路24と、給水路20において共通水路24よりも下流側に設けられる複数の通水路26A~26Dとを備える。共通水路24は、複数の通水路26A~26Dに共通して用いられる。複数の通水路26A~26Dは、共通水路24から分岐する。水源から供給される水は共通水路24を通して複数の通水路26A~26Dのそれぞれに供給される。
【0013】
複数の通水路26A~26Dは、複数の吐水部22A~22Dのそれぞれに対応し、その対応する吐水部22A~22Dの吐水孔に給水する。複数の通水路26A~26Dは、第1吐水部22Aに対応する第1通水路26Aと、第2吐水部22Bに対応する第2通水路26Bと、第3吐水部22Cに対応する第3通水路26Cと、第4吐水部22Dに対応する第4通水路26Dとを含む。
【0014】
吐水装置12は、複数の通水路26A~26Dのそれぞれに対応し、その対応する通水路26A~26Dを開閉可能な複数の開閉弁28A~28Dを備える。開閉弁28A~28Dは、電磁弁、電動弁等の電気駆動弁である。開閉弁28A~28Dは、制御装置14から出力される出力信号に応じて、自らの開閉状態を切り替え可能である。
【0015】
複数の開閉弁28A~28Dは、第1通水路26Aに対応する第1開閉弁28Aと、第2通水路26Bに対応する第2開閉弁28Bと、第3通水路26Cに対応する第3開閉弁28Cと、第4通水路26Dに対応する第4開閉弁28Dとを含む。各開閉弁28A~28Dは、自らに対応する通水路26A~26Dと同様の吐水部22A~22Dにも対応している。例えば、第1開閉弁28Aは、第1通水路26Aと同様の第1吐水部22Aに対応している。
【0016】
操作部16A、16Bは、制御装置14に対して指令を入力するユーザインタフェースとして機能する。本実施形態の操作部16A、16Bは押しボタンである。操作部16A、16Bの具体例は特に限定されない。操作部16A、16Bは、この他にも、例えば、非接触式センサ、タッチパネル等でもよい。ユーザは、操作部16A、16Bを操作することによって、制御装置14に対して指令を入力できる。操作部16A、16Bは、後述する継続吐水モードの実行指令を入力する第1操作部16Aと、後述する切替吐水モードの実行指令を入力する第2操作部16Bと、を含む。
【0017】
図3~
図6を参照する。本実施形態の吐水ヘッド18はオーバーヘッドシャワー用のシャワーヘッドである。吐水ヘッド18は、外部構造体30に取り付けられる。本実施形態の外部構造体30は、室内空間を区画する壁部、詳しくは、天井壁部である。
【0018】
吐水ヘッド18は、複数の吐水孔32が開口する散水部材34を備える。複数の吐水孔32は、吐水ヘッド18の外面部に設けられる散水面36に開口する。吐水ヘッド18の外面部は室内空間に露出している。本実施形態の散水面36は、天井壁部の内壁面38と面一となるように設けられる。
【0019】
複数の吐水孔32は、散水面36の法線方向Pa(
図3参照)の速度成分を持つ水を吐き出す。吐水孔32の吐水方向に関して、散水面36の法線方向Paの第1成分と、その法線方向Paに直交する方向の第2成分とに分ける。このとき、第1成分は、第2成分よりも大きくなるように設定される。この条件を満たすうえで、各吐水孔32の吐水方向は同一でもよいし、異なっていてもよい。本実施形態の各吐水孔32の吐水方向は同一であり、法線方向Paに沿った方向となる。
【0020】
図4は、散水面36の法線方向Paから見た図でもある。複数の吐水部22A~22Dは、散水面36の法線方向Paから見て、散水面36を仮想的に分割した複数の分割領域によって構成される。
図4では、各吐水部22A~22Dの範囲を二点鎖線で示す。
【0021】
本実施形態の第2吐水部22B~第4吐水部22Dは、第1吐水部22Aを中心として同芯状に設けられる。第2吐水部22B~第4吐水部22Dは、径方向外側に向かって順に設けられる。法線方向Paから見て、第1吐水部22Aは、中実部分によって構成され、第2吐水部22B~第4吐水部22Dは、環状部分によって構成される。本実施形態の第1吐水部22Aには、環状に並ぶ複数の吐水孔32が形成される。第2吐水部22B~第4吐水部22Dには、第1吐水部22Aを中心として環状に並ぶ複数の吐水孔32が形成される。以下、吐水部22A~22Dに形成される各吐水孔32から水流Fを吐き出すことを、単に、「吐水部から吐水する」という。
【0022】
吐水ヘッド18は、複数の吐水部22A~22Dのそれぞれに対応する複数の水路形成部材40A~40Dを備える。複数の水路形成部材40A~40Dは、第1吐水部22Aに対応する第1水路形成部材40Aと、第2吐水部22B~第4吐水部22Dのそれぞれに対応する第2水路形成部材40B~第4水路形成部材40Dとを含む。第1水路形成部材40Aは、法線方向Paから見て、中実体である。第2水路形成部材40B~第4水路形成部材40Dは、第1水路形成部材40Aを中心として同芯状に配置される環状体である。
【0023】
複数の水路形成部材40A~40Dは、散水部材34の裏側に形成される収容部42に収容される。水路形成部材40A~40Dの内部には、複数の吐水部22A~22Dのそれぞれに対応する通水路26A~26Dの一部が形成される。水路形成部材40A~40Dは、通水路26A~26Dの一部を構成する配管部材が接続される配管接続部44を備える。水路形成部材40A~40Dの内部には、配管接続部44を通して水が供給され、その水が水路形成部材40A~40Dに対応する吐水部22A~22Dの吐水孔32に供給される。
図5では水路形成部材40A~40Dの内部での通水方向を示す。
【0024】
図7、
図8を参照する。
図7は、全ての吐水部22A~22Dが吐水状態にある吐水ヘッド18の側面図でもある。複数の吐水部22A~22Dは、各吐水部22A~22Dに対応する対応領域46A~46Dに対して束状の水流Fを吐き出す。
図8では、各対応領域46A~46Dの範囲を二点鎖線で示す。対応領域46A~46Dは、第1吐水部22Aに対応する第1対応領域46Aと、第2吐水部22B~第4吐水部22Dに対応する第2対応領域46B~第4対応領域46Dとを含む。第1対応領域46Aは中実領域であり、第2対応領域46B~第4対応領域46Dは、第1対応領域46Aを中心として同芯状に配置される環状領域である。各対応領域46A~46Dは、散水面36から法線方向Paに延びている。
【0025】
各吐水部22A~22Dは、自らに対応する対応領域46A~46Dに対して、自らの吐水孔32の配置態様に応じた位置を通るように水流Fを吐き出す。本実施形態の各吐水部22Aは、各対応領域46A~46Dに対して、吐水孔32の配置態様に応じた位置として、環状に並ぶ位置を通るように水流Fを吐き出す。
【0026】
複数の吐水部22A~22Dが吐き出す水流Fの流れ方向に直交する断面において、水流Fの分布範囲を水流分布範囲48という。
図8は、この条件を満たす断面図である。水流分布範囲48は、吐水状態にある各吐水部22A~22Dの対応領域46A~46Dによって構成される。本図では、全ての吐水部22A~22Dが吐水状態にあり、水流分布範囲48は、全ての吐水部22A~22Dの対応領域46A~46Dによって構成される。
【0027】
制御装置14の説明に移る。制御装置14は、CPU、ROM、RAM等のハードウェアとプログラム等のソフトウェアを組み合わせたコンピュータである。制御装置14は、予め設定されたプログラムに従って、吐水装置12を制御する。
【0028】
制御装置14は、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を制御可能である。
図9を参照する。本明細書において、タイミングチャートの横軸は経過時間を示す。Qは通水路26A~26Dを通り抜ける水の流量(以下、通水流量という)(m
3/s)を示し、Vは、通水路26A~26Dに対応する開閉弁28A~28Dに出力される出力信号を示す。本実施形態の出力信号は電圧信号である。本実施形態の制御装置14は、ハイレベルの電圧信号を出力することで開閉弁28A~28Dによって通水路26A~26Dを開き、ローレベルの電圧信号を出力することで開閉弁28A~28Dによって通水路26A~26Dを閉じる。
【0029】
開閉弁28A~28Dが通水路26A~26Dを開く開状態にあるとき、その通水路26A~26Dに対応する吐水部22A~22Dに給水され、その吐水部22A~22Dが吐水状態となる。開閉弁28A~28Dが通水路26A~26Dを閉じる閉状態にあるとき、その通水路26A~26Dに対応する吐水部22A~22Dに対する給水が停止し、その吐水部22A~22Dの吐水動作が停止する止水状態となる。
【0030】
制御装置14は、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を制御することによって、継続吐水モードと切替吐水モードを実行可能である。継続吐水モードは、
図7に示すような、同じ吐水態様を継続するモードである。切替吐水モードは、
図10に示すような、吐水態様を連続的に切り替えるモードである。
【0031】
制御装置14は、所定の第1開始条件を満たすと、継続吐水モードの実行を開始する。第1開始条件は、例えば、ユーザによる第1操作部16Aの操作を通じて、継続吐水モードの実行指令が入力されることである。制御装置14は、所定の第2開始条件を満たすと、切替吐水モードの実行を開始する。第2開始条件は、例えば、ユーザによる第2操作部16Bの操作を通じて、切替吐水モードの実行指令が入力されることである。制御装置14は、所定の停止条件を満たすと、継続吐水モード及び切替吐水モードの実行を停止する。所定の停止条件とは、例えば、開始条件と同様の実行指令が入力されることである。
【0032】
継続吐水モードは、少なくとも一つの吐水部22A~22Dを吐水状態に維持することで実現される。これは、吐水状態にすべき吐水部22A~22Dに対応する開閉弁28A~28Dを開状態に維持することで実現される。本実施形態の制御装置14は、継続吐水モードにおいて、全ての開閉弁28A~28Dを開状態に維持する。これにより、全ての開閉弁28A~28Dに対応する全ての吐水部22A~22Dが吐水状態に維持される。
【0033】
切替吐水モードは、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を連続的に切り替えることで実現される。これにより、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態が切り替わる毎に、吐水装置12の水流分布範囲48が逐次的に変化する。
図10では、水流分布範囲が徐々に増加してから元に戻るように変化する例を示す。
【0034】
図11、
図12を参照する。Q
A~Q
Dのそれぞれは、第1通水路26A~第4通水路26Dそれぞれの通水流量を示す。各通水路26A~26Dの通水流量がゼロのとき、通水路26A~26Dに対応する開閉弁28A~28Dが閉状態にある。各通水路26A~26Dの通水流量がゼロ超のとき、通水路26A~26Dに対応する開閉弁28A~28Dが開状態にある。
【0035】
本実施形態の制御装置14は、切替吐水モードにおいて、既定の順番で複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を切り替える。複数の開閉弁28A~28Dそれぞれの開閉状態の組み合わせを開閉パターンという。既定の順番で既定の複数の開閉パターンを切り替える一連の動作を切替サイクルという。本実施形態の制御装置14は、切替吐水モードにおいて、切替サイクルを繰り返すように複数の開閉弁28A~28Dを制御する。制御装置14は、切替吐水モードにおいて、複数の開閉パターンに順々に切り替えるように、複数の開閉弁28A~28Dを制御することになる。
【0036】
本実施形態の制御装置14は、所定のサイクル期間ta毎に一回の切替サイクルを実行する。
図11、
図12では、第1期間ta1の第1開閉パターン→第2期間ta2の第2開閉パターン→第3期間ta3の第3開閉パターン→第4開閉パターンの順番で、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を切り替える切替サイクルを示す。
図12の上段には、切替サイクルにおける水流分布範囲48の推移を示す。水流分布範囲48にはハッチングを付す。
図12の中段には、
図8の視点から見た、水流Fの推移を示す。
図12の下段には、切替サイクルにおける各通水路26A~26Dの通水流量のタイミングチャートを示す。
【0037】
第1開閉パターンでは、第1開閉弁28A及び第2開閉弁28Bを開状態にし、残りの開閉弁28C、28Dを閉状態にする。第2開閉パターンでは第2開閉弁28B及び第3開閉弁28Cを開状態にし、残りの開閉弁28D、28Aを閉状態にする。第3開閉パターンでは第3開閉弁28C及び第4開閉弁28Dを開状態にし、残りの開閉弁28A、28Bを閉状態にする。第4開閉パターンでは第4開閉弁28D及び第1開閉弁28Aを開状態にし、残りの開閉弁28B、28Cを閉状態にする。このように、制御装置14は、切替サイクルにおいて、複数の開閉弁28A~28Dのそれぞれを少なくとも一回は開状態に切り替える。
【0038】
第1開閉パターンにあるとき、第1開閉弁28A及び第2開閉弁28Bに対応する第1吐水部22A及び第2吐水部22Bが吐水状態となる。このとき、吐水装置12は、第1吐水部22A及び第2吐水部22Bの対応領域46A、46Bによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。この水流分布範囲48は第1の最大外形寸法L1となる。
【0039】
第2開閉パターンにあるとき、第2開閉弁28B及び第3開閉弁28Cに対応する第2吐水部22B及び第3吐水部22Cが吐水状態となる。このとき、吐水装置12は、第2吐水部22B及び第3吐水部22Cの対応領域46B、46Cによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。この水流分布範囲48は、第1の最大外形寸法L1より大きい第2の最大外形寸法L2となる。
【0040】
第3開閉パターンにあるとき、第3開閉弁28C及び第4開閉弁28Dに対応する第3吐水部22C及び第4吐水部22Dが吐水状態となる。このとき、吐水装置12は、第3吐水部22C及び第4吐水部22Dの対応領域46C、46Dによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。この水流分布範囲48は、第2の最大外形寸法L2より大きい第3の最大外形寸法L3となる。
【0041】
第4開閉パターンにあるとき、第4開閉弁28D及び第1開閉弁28Aに対応する第4吐水部22D及び第1吐水部22Aが吐水状態となる。このとき、吐水装置12は、第4吐水部22D及び第1吐水部22Aの対応領域46D、46Aによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。この水流分布範囲48は、第3開閉パターンにあるときと同様、第3の最大外形寸法L3となる。
【0042】
以上の切替サイクルを行うことで、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態が切り替わる毎に、水流分布範囲48が逐次的に変化する。複数の吐水部22A~22Dは、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態に応じて、水流分布範囲を増減可能に構成されることになる。水流分布範囲48が逐次的に変化することにより、ユーザに対する水流Fの当たり位置を動的に変化させることができる。
【0043】
水流分布範囲48は、切替吐水モードにおいて、増減するように変化する。詳しくは、水流分布範囲48は、一回の切替サイクルにおいて、徐々に増加してから元に戻るように変化する。制御装置14は、このような条件を満たすように、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を制御することになる。
【0044】
複数の開閉パターンは、本実施形態において、少なくとも一つ、かつ、多くとも二つの開閉弁28A~28Dが開状態となるように設定される。この条件は、切替サイクルに属する複数の開閉パターン(本実施形態では全ての開閉パターン)において満たされる。複数の開閉パターンは、少なくとも一つの開閉弁28A~28Dが閉状態となるように設定される。この条件は、切替サイクルに属する複数の開閉パターン(本実施形態では全ての開閉パターン)において満たされる。これにより、複数の開閉パターンにおいて吐水状態にある吐水部22A~22Dの数を減らすことができ、節水効果を期待できる。
【0045】
以上の工夫点による効果を説明する。制御装置14は、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を連続的に切り替える切替吐水モードを実行可能である。よって、制御装置14によって切替吐水モードが実行された後、ユーザが意図的に操作せずとも、吐水形態を連続的かつ自動的に切り替えることができる。これにより、吐水装置12から吐き出される水流Fによる当たり感を動的に変化させることができる。よって、水浴び時に同じ吐水形態が継続する場合と比べ、ユーザにとって飽きが生じ難く、水浴びを更に楽しませることができる。この他に、ユーザに水流Fの当たる位置が動的に変化するマッサージを実現できる。
【0046】
吐水装置12は、複数の吐水部22A~22Dを備える吐水ヘッド18を備える。よって、前述の切替吐水モードを単数の吐水ヘッド18によって実現できる。これにより、切替吐水モードを複数の吐水ヘッド18によって実現する場合と比べ、吐水システム10に要する部品点数を削減できる。
【0047】
次に、吐水システム10の他の工夫点を説明する。
図12を参照する。制御装置14は、切替吐水モードにおいて、複数の開閉弁28A~28Dのうちの何れかの開閉弁28A~28Dを閉じるとき、他の開閉弁28A~28Dを開状態に維持している。例えば、時刻tbにおいて、第1開閉弁28Aを閉じるとき、第2開閉弁28Bを開状態に維持しているということである。本実施形態の制御装置14は、複数の開閉弁28A~28Dのうちの二つ以上の開閉弁28A~28D(詳しくは全ての開閉弁28A~28D)を対象として、その対象となる開閉弁28A~28Dを閉じるときに、同様の制御を実行している。
【0048】
(A)この利点を説明する。開閉弁28A~28Dが通水路26A~26Dを閉じるとき、通水路26A~26D内を流れる水の慣性によって、通水路26A~26D内の水圧の増大を招くウォーターハンマーが発生する。本実施形態によれば、開閉弁28A~28Dが通水路26A~26Dを閉じたとき、慣性によって通水路26A~26D内に流れようとする水を、開状態にある他の通水路26A~26Dに逃がすことができる。この結果、開閉弁28A~28Dが通水路26A~26Dを閉じるときでも、その通水路26A~26D内での水圧の増大を抑制できる。これに伴い、通水路26A~26Dを構成する配管部材に要求される強度の軽減の他、水圧の増大に伴う騒音の低減を実現できる。
【0049】
制御装置14は、切替吐水モードにおいて、複数の開閉弁28A~28Dのうちの何れかの開閉弁28A~28Dを閉じるタイミングと、他の開閉弁28A~28Dを開くタイミングとを同期させる同期制御を実行する。例えば、時刻tbにおいて、第1開閉弁28Aを閉じるタイミングと、第3開閉弁28Cを開くタイミングとを同期させているということである。本実施形態の制御装置14は、複数の開閉弁28A~28Dのうちの二つ以上の開閉弁28A~28D(詳しくは全ての開閉弁28A~28D)を対象として、その対象となる開閉弁28A~28Dを閉じるときに同期制御を実行している。
【0050】
(B)これにより、開閉弁28A~28Dを閉じるタイミングと、他の開閉弁28A~28Dを開くタイミングをずらす場合と比べ、時間が経過する過程において開閉弁28A~28Dの動作音の発生回数を減らすことができる。ひいては静粛性を高めることができる。
【0051】
本実施形態の制御装置14は、開状態にある開閉弁28A~28Dを開状態に維持したまま、この同期制御を実行している。例えば、時刻tbにおいて、第2開閉弁28Bを開状態に維持したまま、第1開閉弁28Aを開くタイミングと、第3開閉弁28Cを開くタイミングとを同期させているということである。これにより、前述の(A)、(B)で説明した効果の両方を得られる。
【0052】
(第2実施形態)
図13を参照する。本実施形態の制御装置14は、切替吐水モードにおいて、少なくとも一つの開閉弁28A~28Dを開状態に常時維持したまま、他の開閉弁28A~28Dの開閉状態を連続的に切り替える。ここでの「少なくとも一つの開閉弁28A~28D」とは、図の例では、第1開閉弁28Aである。第2開閉弁28B~第4開閉弁28Dの開閉状態の切り替え方は
図13の例と同様である。
【0053】
これにより、常時開状態にある開閉弁28Aに対応する吐水部22A(
図13では第1吐水部22A)が常時吐水状態となる。これに伴い、水流分布範囲48には、常時吐水状態にある吐水部22Aの対応領域46Aが常に含まれるようになる。水流分布範囲48に含まれる他の対応領域46B~46Dは、他の開閉弁28B~28Dの開閉状態に応じて逐次的に変化する。よって、常時吐水状態にある吐水部22Aが吐き出す水流Fの当たり位置を一定にしつつ、他の吐水部22B~22Dが吐き出す水流Fの当たり位置を動的に変化させることができる。これに伴い、ユーザにとってより飽きが生じ難く、水浴びを更に楽しませることができる。
【0054】
(第3実施形態)
図14を参照する。本実施形態の複数の吐水部22A~22Dは、
図4の例と異なり、散水面36において、散水面36の法線方向Pa(図の紙面直交方向)と直交する並び方向Pbに順に並べられている。
【0055】
図15を参照する。本実施形態の制御装置14も、第1実施形態の制御装置14と同様の切替サイクルを用いて、複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を制御する。第1開閉パターンにあるとき、第1吐水部22A及び第2吐水部22Bの対応領域46A、46Bによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。第2開閉パターンにあるとき、第2吐水部22B及び第3吐水部22Cの対応領域46B、46Cによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。第3開閉パターンにあるとき、第3吐水部22C及び第4吐水部22Dの対応領域46C、46Dによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。第4開閉パターンにあるとき、第4吐水部22D及び第1吐水部22Aの対応領域46D、46Aによって構成される水流分布範囲48に水流Fを吐き出す。水流分布範囲48の位置は、開閉パターンが切り替わる毎に、前述の並び方向Pbに逐次的にずれてから元に戻るように変化する。
【0056】
このように、複数の吐水部22A~22Dの配置態様は特に限定されない。この他にも、水流分布範囲48の変化態様も特に限定されない。
【0057】
各構成要素の他の変形例を説明する。
【0058】
吐水システム10は、浴室設備に限定されず、手洗設備、キッチン設備等に用いられてもよい。
【0059】
吐水ヘッド18は、実施形態とは異なり、ハンドシャワー用のシャワーヘッドであってもよい。吐水ヘッド18の散水面36は、天井壁部から間を空けた位置に設けられてもよい。
【0060】
複数の吐水部22A~22Dは、実施形態とは異なり、複数の吐水ヘッド18に個別に設けられてもよい。
【0061】
複数の開閉弁28A~28Dは、実施形態とは異なり、室内空間に設けられてもよい。この場合、複数の開閉弁28A~28Dは、吐水ヘッド18の内部に設けられてもよい。
【0062】
制御装置14は、実施形態とは異なり、ランダムな順番で複数の開閉弁28A~28Dの開閉状態を切り替えてもよい。開閉パターンの具体例は特に限定されない。複数の開閉パターンは、例えば、全ての開閉弁28A~28Dが閉状態となる開閉パターンを含んでもよい。切替サイクルに属する開閉パターンの数は特に限定されない。この開閉パターンの数は、実施形態とは異なり、2つ、3つ、5つ以上の何れでもよい。各開閉パターンの期間ta1~ta4は、実施形態において、同等の長さである例を説明した。この他にも、各開閉パターンの期間ta1~ta4は互いに異なる長さでもよい。
【0063】
制御装置14は、複数の開閉弁28A~28Dのうちの何れかの開閉弁28A~28Dを閉じるとき、他の全ての開閉弁28A~28Dを閉状態に維持していてもよい。制御装置14は、水流分布範囲が徐々に減少してから元の大きさに戻るように、複数の開閉弁28A~28Dの開閉弁を制御してもよい。
【0064】
以上、実施形態及び変形例について詳細に説明した。実施形態及び変形例を抽象化した技術的思想を理解するにあたり、その技術的思想は、実施形態及び変形例の内容に限定的に解釈されるべきではない。前述した実施形態及び変形例は、いずれも具体例を示したものにすぎない。実施形態及び変形例の内容は、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。前述の実施形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「実施形態」との表記を付して強調している。しかしながら、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。以上の構成要素の任意の組み合わせも有効である。たとえば、実施形態に対して変形例の任意の説明事項を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0065】
10…吐水システム、12…吐水装置、14…制御装置、18…吐水ヘッド、22A~22D…吐水部、26A~26D…通水路、28A~28D…開閉弁、32…吐水孔。