(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231214BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20231214BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20231214BHJP
【FI】
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B41J2/01 401
B41M5/00 100
C09D11/40
B41M5/00 114
B41M5/00 116
(21)【出願番号】P 2019226889
(22)【出願日】2019-12-16
【審査請求日】2022-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000107907
【氏名又は名称】セーレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135448
【氏名又は名称】北川 泰隆
(72)【発明者】
【氏名】小川 和博
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-083950(JP,A)
【文献】特開2018-134853(JP,A)
【文献】特開2018-020489(JP,A)
【文献】特開2007-261204(JP,A)
【文献】特開2005-271314(JP,A)
【文献】特開2012-158188(JP,A)
【文献】特開2001-138474(JP,A)
【文献】特開2016-163967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41M 5/00
C09D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されている前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記記録媒体を加熱する加熱装置と、
吸込口を有し、前記吸込口から吸い込まれ且つ前記インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアが流れる排気流路と、を備え、
前記加熱装置は、
第一加熱器
と、
第二加熱器と、を含み、
前記第一加熱器は、前記搬送装置によって前記記録媒体が搬送される搬送路において前記インクジェットヘッドが設けられる記録領域より前記搬送路を前記記録媒体が搬送される搬送方向の上流側の第一領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、
前記吸込口は、前記第一領域には設けられず、前記記録領域より前記搬送方向の下流側の第二領域に設けら
れ、
前記第二加熱器は、前記第二領域より前記搬送方向の下流側の第三領域を搬送されている前記記録媒体を加熱する、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記加熱装置は、前記第二領域を搬送されている前記記録媒体を加熱しない、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されている前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記記録媒体を加熱する加熱装置と、
吸込口を有し、前記吸込口から吸い込まれ且つ前記インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアが流れる排気流路と、を備え、
前記加熱装置は、第一加熱器を含み、
前記第一加熱器は、前記搬送装置によって前記記録媒体が搬送される搬送路において前記インクジェットヘッドが設けられる記録領域より前記搬送路を前記記録媒体が搬送される搬送方向の上流側の第一領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、
前記吸込口は、前記第一領域には設けられず、前記記録領域より前記搬送方向の下流側の第二領域に設けられ、
前記加熱装置は、前記第二領域を搬送されている前記記録媒体を加熱しない
、インクジェット記録装置。
【請求項4】
前記加熱装置は、第三加熱器を含み、
前記第三加熱器の加熱領域は、前記搬送方向において前記記録領域を含み、
前記第三加熱器は、前記記録領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、
前記第一領域は、前記加熱領域より前記搬送方向の上流側である、請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
記録媒体を搬送する搬送装置と、
前記搬送装置によって搬送されている前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、
前記記録媒体を加熱する加熱装置と、
吸込口を有し、前記吸込口から吸い込まれ且つ前記インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアが流れる排気流路と、を備え、
前記加熱装置は、
第一加熱器と、
第三加熱器と、を含み、
前記第一加熱器は、前記搬送装置によって前記記録媒体が搬送される搬送路において前記インクジェットヘッドが設けられる記録領域より前記搬送路を前記記録媒体が搬送される搬送方向の上流側の第一領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、
前記吸込口は、前記第一領域には設けられず、前記記録領域より前記搬送方向の下流側の第二領域に設けられ、
前記第三加熱器の加熱領域は、前記搬送方向において前記記録領域を含み、
前記第三加熱器は、前記記録領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、
前記第一領域は、前記加熱領域より前記搬送方向の上流側である、インクジェット記録装置。
【請求項6】
前記吸込口は、前記第二領域で、前記記録領域を搬送されている前記記録媒体より下方に設置される、請求項1から請求項
5の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記加熱装置は、フッ素樹脂を含有する前記インクの有機溶剤の発火点より低い温度で前記記録媒体を加熱する、請求項1から請求項
6の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記加熱装置は、前記インクの有機溶剤の引火点より低い温度で前記記録媒体を加熱する、請求項
7に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録装置に関する技術が提案されている。例えば、特許文献1は、インクジェットプリンタを開示する。インクジェットプリンタは、ノズルから記録媒体にインクを吐出して記録媒体上に印刷を行う。インクジェットプリンタは、プリヒータと、第一排気手段と、第二排気手段と、吸着搬送手段とを有する。プリヒータは、記録媒体の搬送方向における印字ヘッドの上流側において記録媒体を圧接加熱する。第一排気手段は、プリヒータと印字ヘッドとの間に設けられる。第二排気手段は、印字ヘッド下流側で印字ヘッドに隣接して設けられる。吸着搬送手段は、印字ヘッドと対向する位置に設けられ、記録媒体を吸着搬送させる。
【0003】
この他、出願人による特許文献2は、インクを開示する。インクは、フッ素樹脂と、溶剤とを含む。溶剤の溶解度パラメータ値は、7~11である。溶剤は、グリコールエーテル系溶剤及びアセテート系溶剤の一方又は両方を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-1924号公報
【文献】特開2018-24775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インクジェット記録装置で記録媒体に柄を記録する場合、記録媒体を加熱することがある。柄の記録には、有機溶剤を含むインクが用いられることがある。記録媒体を加熱することで、記録媒体に着弾したこのインクの乾燥を早めることができる。これに伴い、インクの滲みを防止することができる。但し、記録媒体を加熱する場合、ノズル内のインクが乾燥し易くなる。ノズル内でのインクの乾燥は、吐出不良の原因となる。インクジェット記録装置では、吐出不良を防止するため、所定のタイミングでパージ処理が実施される。パージ処理では、ノズルからインクが強制的に吐出される。パージ処理の実施は、柄の記録効率を低下させる。パージ処理の実施回数が多くなると、記録媒体の生産性が低下する。
【0006】
本発明は、柄が記録された記録媒体の生産性を向上させることができるインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、記録媒体を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送されている前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記記録媒体を加熱する加熱装置と、吸込口を有し、前記吸込口から吸い込まれ且つ前記インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアが流れる排気流路と、を備え、前記加熱装置は、第一加熱器と、第二加熱器と、を含み、前記第一加熱器は、前記搬送装置によって前記記録媒体が搬送される搬送路において前記インクジェットヘッドが設けられる記録領域より前記搬送路を前記記録媒体が搬送される搬送方向の上流側の第一領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、前記吸込口は、前記第一領域には設けられず、前記記録領域より前記搬送方向の下流側の第二領域に設けられ、前記第二加熱器は、前記第二領域より前記搬送方向の下流側の第三領域を搬送されている前記記録媒体を加熱する、インクジェット記録装置である。
【0008】
このインクジェット記録装置によれば、次の気流によってインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを記録領域より搬送方向の下流側に流すことができる。前述の気流は、記録媒体を搬送方向に搬送することで生じる。記録領域を搬送方向に流れるエアに含まれるインクの有機溶剤の蒸発成分によってノズルの乾燥を防止することができる。第二領域でインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを吸い込み、インクジェット記録装置の外部に排気することができる。インクの有機溶剤の蒸発成分の濃度が上昇することを防止することができる。第二領域を通過した記録媒体を第三領域で再加熱することができる。
【0009】
前記加熱装置は、前記第二領域を搬送されている前記記録媒体を加熱しない、ようにしてもよい。この構成によれば、記録媒体を加熱することなく第二領域を通過させることができる。
【0010】
本発明の他の側面は、記録媒体を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送されている前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記記録媒体を加熱する加熱装置と、吸込口を有し、前記吸込口から吸い込まれ且つ前記インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアが流れる排気流路と、を備え、前記加熱装置は、第一加熱器を含み、前記第一加熱器は、前記搬送装置によって前記記録媒体が搬送される搬送路において前記インクジェットヘッドが設けられる記録領域より前記搬送路を前記記録媒体が搬送される搬送方向の上流側の第一領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、前記吸込口は、前記第一領域には設けられず、前記記録領域より前記搬送方向の下流側の第二領域に設けられ、前記加熱装置は、前記第二領域を搬送されている前記記録媒体を加熱しない、インクジェット記録装置である。
【0011】
このインクジェット記録装置によれば、次の気流によってインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを記録領域より搬送方向の下流側に流すことができる。前述の気流は、記録媒体を搬送方向に搬送することで生じる。記録領域を搬送方向に流れるエアに含まれるインクの有機溶剤の蒸発成分によってノズルの乾燥を防止することができる。第二領域でインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを吸い込み、インクジェット記録装置の外部に排気することができる。インクの有機溶剤の蒸発成分の濃度が上昇することを防止することができる。記録媒体を加熱することなく第二領域を通過させることができる。
【0012】
前記加熱装置は、第三加熱器を含み、前記第三加熱器の加熱領域は、前記搬送方向において前記記録領域を含み、前記第三加熱器は、前記記録領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、前記第一領域は、前記加熱領域より前記搬送方向の上流側である、ようにしてもよい。この構成によれば、記録領域を搬送中、記録媒体の温度低下を防止することができる。柄の記録時、記録媒体を所定の温度に維持することができる。
【0013】
本発明の更に他の側面は、記録媒体を搬送する搬送装置と、前記搬送装置によって搬送されている前記記録媒体にインクを吐出するインクジェットヘッドと、前記記録媒体を加熱する加熱装置と、吸込口を有し、前記吸込口から吸い込まれ且つ前記インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアが流れる排気流路と、を備え、前記加熱装置は、第一加熱器と、第三加熱器と、を含み、前記第一加熱器は、前記搬送装置によって前記記録媒体が搬送される搬送路において前記インクジェットヘッドが設けられる記録領域より前記搬送路を前記記録媒体が搬送される搬送方向の上流側の第一領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、前記吸込口は、前記第一領域には設けられず、前記記録領域より前記搬送方向の下流側の第二領域に設けられ、前記第三加熱器の加熱領域は、前記搬送方向において前記記録領域を含み、前記第三加熱器は、前記記録領域を搬送されている前記記録媒体を加熱し、前記第一領域は、前記加熱領域より前記搬送方向の上流側である、インクジェット記録装置である。
【0014】
このインクジェット記録装置によれば、次の気流によってインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを記録領域より搬送方向の下流側に流すことができる。前述の気流は、記録媒体を搬送方向に搬送することで生じる。記録領域を搬送方向に流れるエアに含まれるインクの有機溶剤の蒸発成分によってノズルの乾燥を防止することができる。第二領域でインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを吸い込み、インクジェット記録装置の外部に排気することができる。インクの有機溶剤の蒸発成分の濃度が上昇することを防止することができる。記録領域を搬送中、記録媒体の温度低下を防止することができる。柄の記録時、記録媒体を所定の温度に維持することができる。
【0015】
前記吸込口は、前記第二領域で、前記記録領域を搬送されている前記記録媒体より下方に設置される、ようにしてもよい。この構成によれば、第二領域の下方でインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを吸い込み、インクジェット記録装置の外部に排気することができる。
【0016】
前記加熱装置は、フッ素樹脂を含有する前記インクの有機溶剤の発火点より低い温度で前記記録媒体を加熱する、ようにしてもよい。この構成によれば、フッ素樹脂を含有するインクの有機溶剤の蒸発成分によってノズルの乾燥を防止することができる。フッ素樹脂を含有するインクによって柄の耐候性を高めることができる。
【0017】
前記加熱装置は、前記インクの有機溶剤の引火点より低い温度で前記記録媒体を加熱する、ようにしてもよい。この構成によれば、フッ素樹脂を含有するインクの有機溶剤の蒸発成分によってノズルの乾燥を防止することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、柄が記録された記録媒体の生産性を向上させることができるインクジェット記録装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】インクジェット記録装置の概略構成の一例を示す斜視図である。
【
図2】排気流路の概略構成の一例を示す平面断面図である。排気流路は、中間部を省略して示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を実施するための実施形態について、図面を用いて説明する。本発明は、以下に記載の構成に限定されるものではなく、同一の技術的思想において種々の構成を採用することができる。例えば、以下に示す構成の一部は、省略し又は他の構成に置換してもよい。本発明は、他の構成を含んでもよい。図面は、所定の構成を模式的に示したものである。ハッチングは、切断面を示す。破線は、かくれ線である。
【0021】
<インクジェット記録装置>
インクジェット記録装置10について、
図1,2を参照して説明する。インクジェット記録装置10は、記録媒体15を搬送し、記録媒体15に柄を記録する(
図1参照)。
図1で、後述するインクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kより搬送方向の下流側で記録媒体15に付した模様は、記録媒体15に記録された柄に対応する。搬送方向は、後述する搬送路Tを記録媒体15が搬送される方向である。
【0022】
実施形態では、搬送中の記録媒体15で柄が記録される面を「表面」といい、この表面とは反対の面を「裏面」という。記録媒体15の例としては、建築用資材及び布帛が挙げられる。建築用資材の例としては、外壁材が挙げられる。但し、記録媒体15は、柄の記録が可能な各種の媒体を含む。記録媒体15は、短尺材及び長尺材の何れであってもよい。実施形態では、記録媒体15として、長尺の布帛を例示する。記録媒体15が長尺の布帛である場合、搬送方向は、記録媒体15の長手方向に沿った方向となる。
【0023】
インクジェット記録装置10は、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクを用いて柄を記録する。但し、柄の記録には、これらとは異なる色のインクを用いてもよい。インク色数は、3色以下又は5色以上としてもよい。
【0024】
柄が記録された記録媒体15に耐候性が求められる場合、柄の記録には、フッ素樹脂を含有するインクを用いることが好ましい。フッ素樹脂を含有するインクは、耐候性に優れる。インクがフッ素樹脂を含有する場合、このインクは、溶媒として有機溶剤を含む。有機溶剤の例としては、グリコールエーテル系溶剤が挙げられる。グリコールエーテル系溶剤の例としては、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル及びエチレングリコールモノベンジルエーテルが挙げられる。グリコールエーテル系溶剤は、前述の複数の有機溶剤を含む群から選択される1種類の溶剤又は2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0025】
グリコールエーテル系溶剤の物性に関し、ジエチレングリコールジエチルエーテルを例とすると、引火点は、71℃であり、発火点は、174℃である。ジエチレングリコールジエチルエーテルは、空気に対して5.6倍の重さを有する。実施形態では、イエロー、マゼンタ、シアン及びブラックの4色のインクは、フッ素樹脂と、ジエチレングリコールジエチルエーテルとを含有するものとする。有機溶剤は、グリコールエーテル系溶剤とは異なっていてもよい。例えば、有機溶剤は、上述の有機溶剤の他に特許文献2に開示された有機溶剤であってもよい。有機溶剤は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0026】
インクジェット記録装置10は、搬送装置20と、インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kと、キャリッジ45と、走査装置50と、加熱装置60と、排気流路70とを備える(
図1参照)。搬送装置20は、搬送方向に記録媒体15を搬送する。実施形態では、インクジェット記録装置10を特定するための方向として、搬送方向の他、第一方向及び第二方向を用いる。第二方向は、搬送方向及び第一方向の両方向に直交する。第一方向を鉛直方向とし、第二方向を水平方向とする。第一方向の一方側を「第一側」といい、第一方向の他方側を「第二側」という。第一方向の第一側を鉛直方向の上側とし、第一方向の第二側を鉛直方向の下側とする。第二方向の一方側を「第三側」といい、第二方向の他方側を「第四側」という。
【0027】
搬送装置20は、第一搬送ローラ21と、第一モータ22と、第一ダンサローラ23と、支持ローラ24と、押圧ローラ25と、第二搬送ローラ26と、第二モータ27と、第二ダンサローラ28と、第三搬送ローラ29と、第三モータ30とを備える(
図1参照)。
図1で、前述のローラの内側又は外周の矢印は、矢印を含む又は矢印近くのローラの回転方向を示す。
【0028】
第一搬送ローラ21、第一ダンサローラ23、支持ローラ24、第二搬送ローラ26、第二ダンサローラ28及び第三搬送ローラ29は、搬送方向にこの順序で設けられ、搬送路Tを形成する。搬送路Tは、搬送装置20によって記録媒体15が搬送される経路である。記録媒体15は、搬送路Tを搬送方向に搬送される。押圧ローラ25は、第一搬送ローラ21の第一方向の第一側で第一搬送ローラ21の外周面に対向して設けられる。搬送装置20は、記録媒体15を、第一搬送ローラ21と第二搬送ローラ26との間に架け渡した状態で搬送する。第一搬送ローラ21と第二搬送ローラ26との間の記録媒体15には、張力が作用する。記録媒体15は、支持ローラ24と第二搬送ローラ26との間をぴんと張った状態で水平に搬送される。
【0029】
第一搬送ローラ21は、記録媒体15の裏面に接する。第一搬送ローラ21は、第一モータ22に連結される。第一モータ22は、第一搬送ローラ21を搬送方向に対応した方向に回転させる。第一搬送ローラ21は、第一モータ22からの駆動力によって搬送方向に対応した方向に回転する。
【0030】
第一ダンサローラ23は、記録媒体15の表面に接する。第一ダンサローラ23は、回転自在に支持される。第一ダンサローラ23は、記録媒体15の表面に接した状態で搬送方向に対応した方向に従動して回転する。第一ダンサローラ23は、第一搬送ローラ21と第二搬送ローラ26との間を搬送されている記録媒体15を、第一方向の第二側に引っ張る。これに伴い、記録媒体15には、上述した張力が作用する。
【0031】
支持ローラ24は、記録媒体15の裏面に接する。支持ローラ24は、回転自在に支持される。支持ローラ24は、記録媒体15の裏面に接した状態で搬送方向に対応した方向に従動して回転する。
【0032】
押圧ローラ25は、記録媒体15の表面に接する。押圧ローラ25は、回転自在に支持される。押圧ローラ25は、記録媒体15の表面に接した状態で搬送方向に対応した方向に従動して回転する。押圧ローラ25は、記録媒体15を第一搬送ローラ21の外周面に押圧する。
【0033】
記録媒体15は、第一搬送ローラ21と押圧ローラ25との間を通過する。その後、記録媒体15は、第一搬送ローラ21の外周面に沿って第一方向の第二側に向かい、第一ダンサローラ23に到達する。記録媒体15は、第一ダンサローラ23を折り返して第一方向の第一側に向かい、支持ローラ24に到達する。記録媒体15は、支持ローラ24の外周面に沿う。記録媒体15は、第一方向の第二側から第一側へと向かう方向から水平方向に搬送される。記録媒体15は、搬送途中に記録領域R0を通過する(
図1参照)。
【0034】
記録領域R0は、搬送路Tにおいてインクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kが設けられる領域である。後述するように走査装置50によってキャリッジ45を第二方向に往復移動させるインクジェット記録装置10では、記録領域R0は、搬送路Tにおいてキャリッジ45に搭載されてインクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kが通過する領域ともいえる。記録領域R0は、搬送路Tにおいてインクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kに設けられた全ノズルで最も搬送方向の上流側に設けられたノズルの搬送方向の上流側端から前述の全ノズルで最も搬送方向の下流側に設けられたノズルの搬送方向の下流側端に至る搬送方向の範囲を含む。
【0035】
第二搬送ローラ26は、記録媒体15の裏面に接する。第二搬送ローラ26は、第二モータ27に連結される。第二モータ27は、第二搬送ローラ26を搬送方向に対応した方向に回転させる。第二搬送ローラ26は、第二モータ27からの駆動力によって搬送方向に対応した方向に回転する。
【0036】
第二ダンサローラ28は、記録媒体15の表面に接する。第二ダンサローラ28は、回転自在に支持される。第二ダンサローラ28は、記録媒体15の表面に接した状態で搬送方向に対応した方向に従動して回転する。第二ダンサローラ28は、第二搬送ローラ26と第三搬送ローラ29との間を搬送されている記録媒体15を第一方向の第二側に引っ張る。これに伴い、記録媒体15は、第二搬送ローラ26の外周面に押圧される。
【0037】
第三搬送ローラ29は、記録媒体15の裏面に接する。第三搬送ローラ29は、第三モータ30に連結される。第三モータ30は、第三搬送ローラ29を搬送方向に対応した方向に回転させる。第三搬送ローラ29は、第三モータ30からの駆動力によって搬送方向に対応した方向に回転する。
【0038】
記録媒体15は、第二搬送ローラ26の外周面に沿って第一方向の第二側に向かい、第二ダンサローラ28に到達する。記録媒体15は、第二ダンサローラ28を折り返して第一方向の第一側に向かい、第三搬送ローラ29に到達する。記録媒体15は、第三搬送ローラ29の外周面に沿う。記録媒体15は、第一方向の第二側から第一側へと向かう方向から水平方向に搬送される。
【0039】
インクジェットヘッド40Yは、イエローインクを吐出し、イエローインクによって記録媒体15に柄を記録する。インクジェットヘッド40Mは、マゼンタインクを吐出し、マゼンタインクによって記録媒体15に柄を記録する。インクジェットヘッド40Cは、シアンインクを吐出し、シアンインクによって記録媒体15に柄を記録する。インクジェットヘッド40Kは、ブラックインクを吐出し、ブラックインクによって記録媒体15に柄を記録する。実施形態では、インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kは、第一方向の第一側から第二側に向けてインクを吐出し、記録媒体15の表面に柄を記録する。
【0040】
インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kは、同様の構成を有する。インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kは、複数のノズルを有する。但し、
図1では、ノズルの図示は、省略されている。複数のノズルは、搬送方向に沿って配列される。インクジェット記録装置10は、インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kとして、公知のインクジェットヘッドを採用することができる。従って、インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kに関するこの他の説明は、省略する。
【0041】
キャリッジ45には、インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kが搭載される。キャリッジ45上で、インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kは、第二方向に隣り合う。第二方向におけるインクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kの配列順序は、
図1とは異なる順序としてもよい。これらの配列順序は、諸条件を考慮して適宜決定される。
【0042】
実施形態では、記録領域R0より搬送方向の上流側の領域を「第一領域R1」という。記録領域R0より搬送方向の下流側の領域を「第二領域R2」という。第二領域R2より搬送方向の下流側の領域を「第三領域R3」という。
【0043】
走査装置50は、キャリッジ45を第二方向に往復移動させる。走査装置50は、2個のプーリ51,52と、タイミングベルト53と、第四モータ54とを備える(
図1参照)。プーリ51は、搬送装置20を基準として、第二方向の第三側に設けられる。プーリ52は、搬送装置20を基準として、第二方向の第四側に設けられる。プーリ52は、回転自在に支持される。タイミングベルト53は、張力が作用した状態でプーリ51,52に架け渡される。第四モータ54は、プーリ51に連結される。第四モータ54としては、例えば、エンコーダ付きのサーボモータが採用される。第四モータ54は、プーリ51を回転させる。
図1で、プーリ51の外周の矢印は、プーリ51の回転方向を示す。キャリッジ45は、ステー46を介してタイミングベルト53に取り付けられる。
【0044】
インクジェット記録装置10で記録媒体15に柄が記録される場合、走査装置50及び搬送装置20は、次のように動作する。走査装置50では、第四モータ54が時計回りと反時計回りとに往復して回転する。第四モータ54の回転に伴い、プーリ51が左右両側に往復して回転する。第四モータ54が所定の方向に回転することでプーリ51が左回転すると、タイミングベルト53も左回転する。プーリ52は、左回転するタイミングベルト53に従動して回転する。これに伴い、キャリッジ45は、第二方向の第四側から第三側に移動する。キャリッジ45が第二方向の第三側の移動端に到達すると、第四モータ54の回転方向は反転し、プーリ51は、右回転する。プーリ51が右回転すると、タイミングベルト53も右回転する。プーリ52は、右回転するタイミングベルト53に従動して回転する。これに伴い、キャリッジ45は、第二方向の第三側から第四側に移動する。キャリッジ45が第二方向の第四側の移動端に到達すると、第四モータ54の回転方向は再度反転し、プーリ51は、再度左回転する。
【0045】
搬送装置20は、キャリッジ45の第一走査及び第二走査に対応させて記録媒体15を搬送方向に搬送する。キャリッジ45は、第一走査によって第二方向の第四側から第三側に移動する。キャリッジ45は、第二走査によって第二方向の第三側から第四側に移動する。即ち、記録媒体15の搬送は、前述したキャリッジ45の第二方向の第三側の移動端又は第二方向の第四側の移動端への到達に応じて間欠的に行われる。インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kは、キャリッジ45の第二方向への移動に伴い記録領域R0の記録媒体15上を通過する所定のタイミングで、第一方向の第一側から第二側に向けてノズルからインクを吐出する。インクは、記録領域R0で記録媒体15の表面に着弾する。これに伴い、記録媒体15の表面には、柄が記録される。
【0046】
走査装置50は、柄の記録が終了するまで動作する。従って、キャリッジ45の第二方向への往復移動は、柄の記録が終了するまで繰り返される。搬送装置20は、柄の記録が終了した後、所定のタイミングで停止する。搬送装置20の停止に伴い、記録媒体15の搬送も終了する。
【0047】
加熱装置60は、搬送装置20によって搬送されている記録媒体15を加熱する。加熱装置60は、第一加熱器61と、第二加熱器62と、第三加熱器63とを備える(
図1参照)。実施形態では、第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63は、同様の構成を有する。例えば、第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63は、発熱体として、シート状のラバーヒータを備える。
【0048】
但し、第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63のこのような構成は、例示である。第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63の一部又は全部は、異なる構成であってもよい。例えば、第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63は、平板に発熱体を埋め込んでもよい。この場合、発熱体は、棒状の形状としてもよい。棒状の発熱体の例としては、シーズヒータが挙げられる。平板は、挿入孔を含む。棒状の発熱体は、挿入孔に埋め込まれる。棒状の発熱体の数は、複数としてもよく、又は1本としてもよい。挿入孔の数は、棒状の発熱体と同数としてもよい。
【0049】
第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63は、発熱体の形式に関わらず、発熱体が外気に直接触れる第一構造とは異なる第二構造とするとよい。第一構造では、記録媒体15の加熱が局部的になることが想定される。例えば、第二構造は、発熱体がプレートによって挟み込まれた構造である。第二構造によれば、記録媒体15の広い面に熱を与えることができる。記録媒体15の加熱をソフトに行うことができる。
【0050】
第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63で発熱体は、第二方向には次の寸法以上の範囲に設けることが好ましい。前述の寸法は、インクジェット記録装置10が対応可能な記録媒体15の第二方向の最大寸法である。
【0051】
第一加熱器61は、第一領域R1に設けられ、第一領域R1を搬送されている記録媒体15を加熱する。第一加熱器61は、第一領域R1を搬送されている記録媒体15に対して第一方向の第一側に設けられる。従って、第一加熱器61は、第一領域R1を搬送されている記録媒体15をこの記録媒体15の表面側から加熱する。第一加熱器61は、第一方向の第二側の面が第一領域R1を搬送されている記録媒体15の表面に接しない第一方向の位置に設けることが好ましい。
【0052】
第二加熱器62は、第三領域R3に設けられ、第三領域R3を搬送されている記録媒体15を加熱する。第二加熱器62は、第三領域R3を搬送されている記録媒体15に対して第一方向の第一側に設けられる。従って、第二加熱器62は、第三領域R3を搬送されている記録媒体15をこの記録媒体15の表面側から加熱する。第二加熱器62は、第一方向の第二側の面が第三領域R3を搬送されている記録媒体15の表面に接しない第一方向の位置に設けることが好ましい。
【0053】
第三加熱器63は、記録領域R0に設けられ、記録領域R0を搬送されている記録媒体15を加熱する。第三加熱器63の加熱領域R4は、搬送方向において記録領域R0を含む。加熱領域R4は、第三加熱器63で熱を発生する領域である。第三加熱器63を上述した第二構造とした場合、加熱領域R4は、第三加熱器63の第一方向の第一側の面の全体としてもよい。このことは、第一加熱器61及び第二加熱器62についても同様である。実施形態では、加熱領域R4は、搬送方向において記録領域R0より広く設定されている。但し、加熱領域R4は、搬送方向において記録領域R0に一致させてもよい。
【0054】
第三加熱器63は、記録領域R0を搬送されている記録媒体15に対して第一方向の第二側に設けられる。記録領域R0を搬送されている記録媒体15は、第三加熱器63の第一方向の第一側の面に接する。即ち、記録媒体15は、記録領域R0で第三加熱器63の第一方向の第一側の面上を搬送される。第三加熱器63は、第一方向の第一側の面上を搬送されている記録媒体15を加熱する。但し、第三加熱器63は、第一方向の第一側の面が記録領域R0を搬送されている記録媒体15の裏面に接しない第一方向の位置に設けてもよい。この場合、記録領域R0を搬送されている記録媒体15は、第三加熱器63の第一方向の第一側の面と離間する。即ち、記録媒体15は、記録領域R0で第三加熱器63の第一方向の第一側の面より第一方向の第一側を搬送され、第三加熱器63は、この記録媒体15を加熱する。
【0055】
加熱装置60による記録媒体15の加熱温度は、インクの有機溶剤の発火点より低い温度とすることが好ましい。この加熱温度は、インクの有機溶剤の引火点より低い温度とすることがより好ましい。即ち、インクの有機溶剤がジエチレングリコールジエチルエーテルである場合、加熱装置60による記録媒体15の加熱温度は、174℃より低い温度とすることが好ましく、71℃より低い温度とすることがより好ましい。但し、加熱装置60による記録媒体15の加熱温度は、加熱された記録媒体15の温度がインクの有機溶剤の発火点より低くなる温度としてもよい。この加熱温度は、加熱された記録媒体15の温度がインクの有機溶剤の引火点より低くなる温度としてもよい。
【0056】
加熱装置60による記録媒体15の加熱温度は、加熱装置60の設定温度であり、次の第一加熱温度、第二加熱温度及び第三加熱温度を含む。第一加熱温度は、第一加熱器61による記録媒体15の加熱温度であり、第一加熱装置61の設定温度である。第二加熱温度は、第二加熱器62による記録媒体15の加熱温度であり、第二加熱装置62の設定温度である。第三加熱温度は、第三加熱器63による記録媒体15の加熱温度であり、第三加熱装置63の設定温度である。加熱された記録媒体15の温度は、加熱装置60による記録媒体15の加熱温度以下となる。
【0057】
排気流路70は、吸込口71を有する(
図1,2参照)。排気流路70には、吸込口71から吸い込まれたエアが流れる。このエアは、インクの有機溶剤の蒸発成分を含む。排気流路70は、吸込口71とは反対側で吸引装置75と繋がる。吸引装置75は、エアを吸引する。吸引装置75としては、公知の吸引装置を採用することができる。例えば、吸引装置75は、電動機を備える。電動機の回転軸には、ファンが取り付けられる。ファンは、電動機の駆動に伴い回転する。これに伴い、吸引装置75は、エアを吸引する。
【0058】
吸込口71は、第一領域R1には設けられず、第二領域R2に設けられる(
図1参照)。更に、吸込口71は、第二領域R2で、記録領域R0を搬送されている記録媒体15より下方(第一方向の第二側)に設置される。排気流路70は、吸込口71を搬送方向の上流側に向けて設置することが好ましい(
図1,2参照)。但し、排気流路70は、吸込口71を上方(第一方向の第一側)に向けて設置してもよく、又は搬送方向の上流側向きの斜め上方に向けて設置してもよい。インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアは、次の気流によって搬送方向に流れる。前述の気流は、記録媒体15を搬送方向に搬送することで生じる。吸込口71を前述した向きとすることで、インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを吸込口71から排気流路70内に流すことができる。
【0059】
インクジェット記録装置10は、更に、公知のインクジェット記録装置が備える構成を備える。例えば、インクジェット記録装置10は、供給装置と、回収装置とを備える。供給装置には、記録媒体15がセットされる。記録媒体15は、供給装置から送り出される。その後、記録媒体15は、搬送装置20によって搬送方向に搬送される。記録媒体15は、第三搬送ローラ29を通過した後、回収装置によって回収される。
【0060】
<実施形態の効果>
実施形態によれば、次のような効果を得ることができる。
【0061】
(1)インクジェット記録装置10は、搬送装置20と、インクジェットヘッド40Y,40M,40C,40Kと、加熱装置60と、排気流路70とを備える(
図1参照)。排気流路70は、吸込口71を有する(
図1,2参照)。排気流路70には、吸込口71から吸い込まれたエアが流れる。このエアは、インクの有機溶剤の蒸発成分を含む。加熱装置60は、第一加熱器61を含む(
図1参照)。第一加熱器61は、搬送路Tにおいて記録領域R0より搬送方向の上流側の第一領域R1を搬送されている記録媒体15を加熱する。吸込口71は、第一領域R1には設けられず、記録領域R0より搬送方向の下流側の第二領域R2に設けられる(
図1参照)。
【0062】
そのため、次の気流によってインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを記録領域R0より搬送方向の下流側に流すことができる。前述の気流は、上述した通り、記録媒体15を搬送方向に搬送することで生じる。記録領域R0を搬送方向に流れるエアに含まれるインクの有機溶剤の蒸発成分によってノズルの乾燥を防止することができる。記録媒体15が湿気を含む場合、湿気の蒸発成分によってもノズルの乾燥を防止することができる。第二領域R2でインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを吸い込み、インクジェット記録装置10の外部に排気することができる。インクの有機溶剤の蒸発成分の濃度が上昇することを防止することができる。柄が記録された記録媒体15の生産性を向上させることができる。
【0063】
(2)加熱装置60は、第二加熱器62を含む(
図2参照)。第二加熱器62は、第二領域R2より搬送方向の下流側の第三領域R3を搬送されている記録媒体15を加熱する。そのため、第二領域R2を通過した記録媒体15を第三領域R3で再加熱することができる。
【0064】
(3)加熱装置60は、第二領域R2を搬送されている記録媒体15を加熱しない。そのため、記録媒体15を加熱することなく第二領域R2を通過させることができる。
【0065】
(4)加熱装置60は、第三加熱器63を含む(
図1参照)。第三加熱器63の加熱領域R4は、搬送方向において記録領域R0を含む。第三加熱器63は、記録領域R0を搬送されている記録媒体15を加熱する。第一領域R1は、加熱領域R4より搬送方向の上流側である。そのため、記録領域R0を搬送中、記録媒体15の温度低下を防止することができる。柄の記録時、記録媒体15を所定の温度に維持することができる。
【0066】
(5)吸込口71は、第二領域R2で、記録領域R0を搬送されている記録媒体15より下方に設置される(
図1参照)。そのため、第二領域R2の下方でインクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを吸い込み、インクジェット記録装置10の外部に排気することができる。
【0067】
(6)柄の記録にフッ素樹脂を含有するインクが用いられる場合、加熱装置60は、このインクの有機溶剤の発火点より低い温度で記録媒体15を加熱することが好ましく、加熱装置60は、このインクの有機溶剤の引火点より低い温度で記録媒体15を加熱することがより好ましい。これにより、フッ素樹脂を含有するインクの有機溶剤の蒸発成分によってノズルの乾燥を防止することができる。フッ素樹脂を含有するインクによって柄の耐候性を高めることができる。
【0068】
<変形例>
実施形態は、次のようにすることもできる。以下に示す変形例のうちの幾つかの構成は、適宜組み合わせて採用することもできる。以下では、上記とは異なる点を説明することとし、同様の点についての説明は、適宜省略する。
【0069】
(1)インクジェット記録装置は、搬送装置として、公知の搬送装置を採用することができる。記録媒体15が短尺材である場合、インクジェット記録装置は、搬送装置として、リニア搬送装置を採用してもよい。リニア搬送装置は、固定子と、可動子とを備える。固定子は、搬送方向に沿って設けられる。可動子は、固定子上を搬送方向に沿って往復移動する。可動子には、支持台が設けられる。支持台は、短尺の記録媒体15を支持する。例えば、短尺の記録媒体15は、支持台に載せ置かれる。可動子は、記録媒体15を支持する支持台を搬送方向に移動する。これに伴い、記録媒体15は、搬送方向に搬送される。搬送装置がリニア搬送装置である場合、第三加熱器63は、省略してもよい。
【0070】
インクジェット記録装置は、搬送装置として、ベルトコンベアを採用してもよい。搬送装置がベルトコンベアである場合、第三加熱器63は、無端ベルトが搬送方向に移動する領域で無端ベルトの裏側に設けることが好ましい。無端ベルトの裏側は、記録媒体15が載せ置かれる無端ベルトの表面とは反対の裏面の側である。この場合、第三加熱器63による記録媒体15の加熱は、無端ベルトを挟んで行われる。リニア搬送装置及びベルトコンベアは、既に実用化された公知の搬送装置である。従って、これらに関するこの他の説明は、省略する。
【0071】
(2)加熱装置60は、第一加熱器61と、第二加熱器62と、第三加熱器63とを備える(
図1参照)。第一加熱器61は、記録媒体15の第一方向の第一側に設けられる。第二加熱器62は、記録媒体15の第一方向の第一側に設けられる。第三加熱器63は、記録媒体15の第一方向の第二側に設けられる。記録媒体15に対する加熱装置60(第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63の一部又は全部)の第一方向の位置は、諸条件を考慮して適宜決定される。例えば、第一加熱器61及び第二加熱器62は、記録媒体15の第一方向の第二側に設けてもよい。この場合、記録媒体15は、第一加熱器61の第一方向の第一側の面に接し、この面上を搬送されてもよく、第二加熱器62の第一方向の第一側の面に接し、この面上を搬送されてもよい。第二加熱器62及び第三加熱器63の一方又は両方は、省略してもよい。
【0072】
加熱装置60は、第四加熱器を備えてもよい。第四加熱器は、第二領域R2に設けられ、第二領域R2を搬送されている記録媒体15を加熱する。第四加熱器で発熱体は、第一加熱器61、第二加熱器62及び第三加熱器63と同様、第二方向には次の寸法以上の範囲に設けることが好ましい。前述の寸法は、インクジェット記録装置10が対応可能な記録媒体15の第二方向の最大寸法である。加熱装置60が第三加熱器63と第四加熱器とを備える場合、第三加熱器63及び第四加熱器は、一体的な加熱器としてもよい。
【0073】
インクジェット記録装置10には、加熱装置60とは別の加熱装置を設けてもよい。例えば、加熱装置60とは別の加熱装置は、記録媒体15が短尺材である場合に設けられる。この別の加熱装置は、インクジェット記録装置10に搬入される前の記録媒体15を加熱する。搬送装置が上述したリニア搬送装置であるとする。この場合、支持台には、加熱装置60とは別の加熱装置によって加熱された短尺の記録媒体15が載せ置かれる。即ち、リニア搬送装置は、この別の加熱装置によって加熱された短尺の記録媒体15を搬送方向に搬送する。
【0074】
(3)インクジェット記録装置を、走査装置50を備えるシリアル型のインクジェット記録装置10とした(
図1参照)。インクジェット記録装置としては、インクジェット記録装置10とは異なるタイプの装置が実用化されている。この異なるタイプのインクジェット記録装置は、ライン型と称されるインクジェットヘッドを備える。搬送装置20、加熱装置60及び排気流路70は、上記同様(
図1,2参照)、ライン型のインクジェットヘッドを備えるインクジェット記録装置に採用することもできる。このインクジェット記録装置は、柄の記録に用いる色数分のライン型のインクジェットヘッドを備える。ライン型のインクジェットヘッドでは、複数のノズルは、第二方向に配列される。各色のインクジェットヘッドは、キャリッジに搬送方向に並んで搭載される。走査装置50は、省略される。搬送装置20は、柄の記録時、記録媒体15を搬送方向に連続的に搬送する。この場合、インクの有機溶剤の蒸発成分を含むエアを搬送方向に流す気流の風量及び風速は、
図1のインクジェット記録装置10以上となることがある。ライン型のインクジェットヘッド及びこれを備えるインクジェット記録装置は、既に実用化された公知の構成である。従って、これらに関するこの他の説明は、省略する。
【0075】
(4)搬送装置20は、第一搬送ローラ21と、第一モータ22と、第一ダンサローラ23と、支持ローラ24と、押圧ローラ25と、第二搬送ローラ26と、第二モータ27と、第二ダンサローラ28と、第三搬送ローラ29と、第三モータ30とを備える(
図1参照)。第一搬送ローラ21は、第一モータ22からの駆動力によって搬送方向に対応した方向に回転する。第二搬送ローラ26は、第二モータ27からの駆動力によって搬送方向に対応した方向に回転する。第三搬送ローラ29は、第三モータ30からの駆動力によって搬送方向に対応した方向に回転する。
【0076】
第一搬送ローラ21、第二搬送ローラ26及び第三搬送ローラ29の一部又は全部は、従動して回転する支持ローラ(支持ローラ24参照)としてもよく、支持ローラ24は、モータ(第一モータ22、第二モータ27及び第三モータ30参照)が連結された搬送ローラ(第一搬送ローラ21、第二搬送ローラ26及び第三搬送ローラ29参照)としてもよい。例えば、
図1の搬送装置20における第一搬送ローラ21は、従動して回転する支持ローラとしてもよく、
図1の搬送装置20における支持ローラ24は、モータが連結された搬送ローラとしてもよい。記録媒体15を押圧する押圧ローラ(押圧ローラ25参照)は、
図1の搬送装置20と同様、搬送ローラに対して設けるようにしてもよく、支持ローラに対して省略してもよい。搬送装置では、各種のローラの配置は、諸条件を考慮して適宜決定される。但し、記録媒体15が長尺材である場合、搬送装置は、
図1の搬送装置20と同様、記録媒体15を2個のローラ間をぴんと張った状態とし、記録領域R0を水平に搬送することが好ましい。
【符号の説明】
【0077】
10 インクジェット記録装置、 15 記録媒体、 20 搬送装置
21 第一搬送ローラ、 22 第一モータ、 23 第一ダンサローラ
24 支持ローラ、 25 押圧ローラ、 26 第二搬送ローラ
27 第二モータ、 28 第二ダンサローラ、 29 第三搬送ローラ
30 第三モータ、 40Y,40M,40C,40K インクジェットヘッド
45 キャリッジ、46 ステー、 50 走査装置、 51,52 プーリ
53 タイミングベルト、 54 第四モータ、 60 加熱装置
61 第一加熱器、 62 第二加熱器、 63 第三加熱器、 70 排気流路
71 吸込口、 75 吸引装置、 R0 記録領域、 R1 第一領域
R2 第二領域、 R3 第三領域、 R4 加熱領域、 T 搬送路