(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】保持装置、リソグラフィ装置、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20231214BHJP
H01L 21/027 20060101ALI20231214BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G03F7/20 521
H01L21/30 502D
H01L21/68 P
(21)【出願番号】P 2019230630
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】河原 泉
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-192982(JP,A)
【文献】特開平11-069855(JP,A)
【文献】特開2000-156399(JP,A)
【文献】特開平07-219212(JP,A)
【文献】特開2008-098208(JP,A)
【文献】特開平11-307425(JP,A)
【文献】特開2007-171667(JP,A)
【文献】特開2018-186194(JP,A)
【文献】米国特許第05684669(US,A)
【文献】特開2013-197225(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/20-7/24
G03F 9/00-9/02
H01L 21/683
H01L 21/30
H01J 37/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレートを保持する保持装置であって、
保持面で前記プレートを保持する保持部と、
前記保持面に保持された前記プレートに形成されているマークを撮像する撮像部と、
前記プレートを前記保持面から離脱させるための力が前記プレートに与えられ
る前の第1タイミングで前記撮像部により得られた前記マークの画像
である第1画像と、前記力が前記プレートに与えられている間の第2タイミングで前記撮像部により得られた前記マークの画像である第2画像とに基づいて、前記プレートが前記保持面から離脱したか否かの判定を行う処理部と、
を有することを特徴とする保持装置。
【請求項2】
前記処理部は、前
記第1画像
と前記第2画像とに基づいて、前記保持面に沿う第1方向における前記マークの位置および前記保持面と直交する第2方向における前記マークの位置の少なくともいずれか一方が変化したときに前記プレートが前記保持面から離脱したと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の保持装置。
【請求項3】
前記保持部に対して前記プレートを供給および回収を行う搬送部を更に有し、
前記第2タイミングは、前記保持部による前記プレートの保持力が解除され、前記プレートが前記搬送部によって保持され、かつ、前記力が前記プレートに与えられている間のタイミングである、
ことを特徴とする請求項
1または2に記載の保持装置。
【請求項4】
前記第1画像および前記第2画像はそれぞれ、前記マークの像および前記保持部に形成されている基準マークの像を含み、
前記処理部は、前記第1画像と前記第2画像との間で、前記基準マークに対する前記マークの前記第1方向の位置ずれ量、および、前記マークのコントラストの少なくともいずれか一方が変化したときに、前記プレートが前記保持面から離脱したと判定する、
ことを特徴とする請求項
2に記載の保持装置。
【請求項5】
前記保持面から前記プレートに向けて気体を噴射することにより前記力を前記プレートに与える気体噴射部を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項6】
前記保持面から前記プレートをリフトピンで押すことにより前記力を前記プレートに与えるピン駆動アクチュエータを有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の保持装置。
【請求項7】
原版を用いて基板にパターンを形成するリソグラフィ装置であって、
前記原版を保持する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の保持装置を有することを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項8】
基板にパターンを形成するリソグラフィ装置であって、
前記基板を保持する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の保持装置を有することを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項9】
請求項7または8に記載のリソグラフィ装置を用いて基板にパターンを形成する工程と、
前記工程で前記パターンが形成された基板を処理する工程と、
を有し、前記処理された基板から物品を製造する、ことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保持装置、リソグラフィ装置、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、基板にパターンを形成するリソグラフィ装置の重ね合わせ精度の向上に伴い、原版または基板とそれを保持するチャックの平面度が向上し、原版または基板とチャックとの間の密着性が向上している。リソグラフィ装置において、原版または基板を保持する方式としては、真空吸着方式および静電吸着方式がある。
【0003】
真空吸着方式においては、基板とチャックとの間へ異物が入り込んで異物が基板に固着したり、基板とチャックとが強固に密着したりすることがある。静電吸着方式においても、静電チャックや基板の帯電によって電源切断時において基板に残留吸着力が生じ、基板とチャックが固着するおそれがある。
【0004】
特許文献1には、チャック側に設けられる複数の非接触センサを用いて、チャックと基板との間の距離および基板の平面位置ずれを検出することが記載されている。特許文献2には、昇降ピンを用いて基板に力を加え、昇降ピンの位置変化により基板の離脱を検知することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-332519号公報
【文献】特開2005-123422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術では、基板(プレート)が局所的に固着している状態や基板が局所的に剥がれている状態を、基板がチャックから離脱したと誤って判定してしまう。また、従来技術では、基板の表面に沿う方向の大きな位置ずれしか検知することができず、微小な位置ずれを検知することができない。
【0007】
本発明は、プレートが保持面から離脱したことの判定の高精度化に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によれば、プレートを保持する保持装置であって、保持面で前記プレートを保持する保持部と、前記保持面に保持された前記プレートに形成されているマークを撮像する撮像部と、前記プレートを前記保持面から離脱させるための力が前記プレートに与えられる前の第1タイミングで前記撮像部により得られた前記マークの画像である第1画像と、前記力が前記プレートに与えられている間の第2タイミングで前記撮像部により得られた前記マークの画像である第2画像とに基づいて、前記プレートが前記保持面から離脱したか否かの判定を行う処理部と、を有することを特徴とする保持装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プレートが保持面から離脱したことの判定の高精度化に有利な技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】レチクルアライメントを行うためのマークの配置例を示す図。
【
図3】ウエハアライメントを行うためのマークの配置例を示す図。
【
図6】レチクルアライメントを行うためのマークの配置例を示す図。
【
図7】レチクル回収時のマークを用いた位置計測を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本発明の保持装置が適用される、リソグラフィ装置の一例である露光装置100の概略図である。本明細書および図面においては、水平面をXY平面とするXYZ座標系において方向が示される。一般には、レチクル1はその表面が水平面(XY平面)と平行になるようにレチクルステージ3の上に置かれ、ウエハ4はその表面が水平面と平行になるようにウエハステージ6の上に置かれる。よって以下では、レチクル1またはウエハ4の表面に沿う平面内で互いに直交する方向をX軸およびY軸とし、X軸およびY軸に垂直な方向をZ軸とする。また、以下では、XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向といい、X軸周りの回転方向、Y軸周りの回転方向、Z軸周りの回転方向をそれぞれθx方向、θy方向、θz方向という。
【0013】
露光装置100は、半導体デバイスの回路パターンが形成されたレチクル1(原版、マスク)を用いて、回路パターンを基板であるウエハ4に転写する露光装置である。露光装置100は、例えば、投影光学系7とウエハ4との間に液体を介在させずに基板を露光する露光装置でありうる。あるいは、露光装置100は、投影光学系7とウエハ4との間に液体を介在させて基板を露光する液浸露光装置であってもよい。
【0014】
本実施形態では、プレートであるレチクル1を保持する保持装置が露光装置100に適用された例を説明する。露光装置100は、レチクルステージ3と、レチクルステージ3によって保持されるレチクル1を照明する照明光学系8と、ウエハステージ6と、レチクル1のパターンをウエハステージ6上のウエハ4に投影する投影光学系7とを備える。露光装置100は、また、ウエハ4の表面の高さ(Z方向の位置)を検出する面位置検出器14と、ウエハ4の位置合わせを行うためのウエハアライメント検出器16を備えうる。面位置検出器14は、ウエハ4の表面に投光する投光部14aと、ウエハ4の表面で反射された反射光を受光する受光部14bとを含む。露光装置は、さらに、露光処理を制御する制御部Cを含みうる。レチクル1およびウエハ4はそれぞれ、レチクルチャック2(原版保持部)およびウエハチャック5(基板保持部)によって保持されており、投影光学系7を介して光学的にほぼ共役な位置(投影光学系7の物体面および像面)に配置される。レチクルチャック2は、例えば、真空吸着や静電吸着等によってレチクル1を保持し、レチクルステージ3は、レチクルチャック2およびレチクル1を伴って例えばXY方向に移動可能である。同様に、ウエハチャック5は、例えば、真空吸着や静電吸着等によってウエハ4を保持し、ウエハステージ6は、ウエハチャック5およびウエハ4を伴って例えばXY方向に移動可能である。
【0015】
レチクルステージ3の側方に設けられたレーザ干渉計10は、レチクルステージ3の位置を計測する。制御部Cは、レチクルステージ3を駆動するアクチュエータを制御して、レチクルステージ3のY方向の位置を制御する。レチクルステージ3には、レチクル基準プレート12が配置されている。レチクル基準プレート12のパターン面の高さは、レチクル1のパターン面の高さとほぼ一致する。レチクルステージ3には、レーザ干渉計10から射出されたビームを反射するバーミラー11が固定されていて、レーザ干渉計10によりレチクルステージ3の位置や移動量が逐次計測される。
【0016】
同様に、ウエハステージ6の側方に設けられたレーザ干渉計10は、ウエアステージ6の位置を計測する。制御部Cは、ウエハステージ6を駆動するアクチュエータを制御して、ウエハステージ6のY方向の位置を制御する。ウエハステージ6には、ウエハ基準プレート13が配置されている。ウエハステージ6には、レーザ干渉計10から射出されたビームを反射するバーミラー11が固定されていて、レーザ干渉計10によりウエハステージ6の位置や移動量が逐次計測される。
【0017】
光源9は、例えば、248nmの波長の光を発生するKrFエキシマレーザでありうるが、その代わりに、例えば、水銀ランプ、ArFエキシマレーザ(193nm)、EUV光源なども採用されうる。光源9から射出された光束は、照明光学系8に入射し、設定された形状、干渉性、偏光状態に整形された後に、レチクル1を照明する。レチクル1の下面に形成された繊細な回路パターンで回折された光は、投影光学系7により、ウエハステージ6上に配置されたウエハ4上に結像する。
【0018】
レチクル1の位置ずれを計測するために、レチクルアライメント検出器15が使用される。レチクルアライメント検出器15は、レチクルチャック2のレチクルを保持する保持面上のレチクル1に形成されているマークを撮像する撮像部である。制御部Cは、レチクルステージ3をレチクルアライメント検出器15上に駆動する。レチクルアライメント検出器15は、
図2に示されるような、レチクルステージ3上のアライメントマーク18(基準マーク)およびレチクル1上のアライメントマーク17の画像を撮像する。制御部Cは、レチクルアライメント検出器15により得られたマークの画像に基づいて、レチクル1が保持面から離脱したか否かの判定を行う処理部として機能しうる。例えば、制御部Cは、レチクルアライメント検出器15により得られた画像から、アライメントマーク17のアライメントマーク18に対する位置を求めることにより、レチクル1のレチクルステージ3に対する位置ずれ量を求める。
図2に示すように、レチクルステージ3上のアライメントマーク18およびレチクル1上のアライメントマーク17がそれぞれ、X方向に複数配置されることで、レチクル1のレチクルステージ3に対するX,Y,θz方向の位置ずれを計測することができる。
【0019】
ウエハアライメント検出器16は、ウエハ4上に形成された複数のショット領域のうち所定の複数のサンプルショット領域のそれぞれに設けられた複数のアライメントマークを検出する。制御部Cは、その検出の結果に基づいて、当該サンプルショットの位置を求める。
【0020】
なお、
図1において、レチクルアライメント検出器15およびウエハアライメント検出器16はそれぞれ、投影光学系7を介さずにアライメントマークを検出するオフアクシス検出部として設けられているが、それに限られるものではない。例えば、レチクルアライメント検出器15およびウエハアライメント検出器16はそれぞれ、投影光学系7を介してアライメントマークを検出するTTL(Through The Lens)検出部として設けられてもよい。
【0021】
図3に、ウエハアライメントを行うためのマークの配置例を示す。
図3(a)はウエハ4上に格子状に形成された複数のショット領域を示し、
図3(b)は複数のショット領域のうちの1つのサンプルショット領域の拡大図を示している。
図3(b)に示すように、サンプルショット領域には、複数のアライメントマークMX,MY,PMが形成されている。これら複数のアライメントマークMX,MY,PMがウエハアライメント検出器16の検出領域に位置するようにウエハステージ7が駆動される。その後、ウエハアライメント検出器16により各アライメントマークの位置が検出され、制御部Cによりウエハステージ6に対するウエハ4の位置ずれ量が計測される。このように本実施形態では、ウエハアライメント検出器16と制御部Cとでウエハ4の位置ずれ量を計測する計測部が構成される。
【0022】
図4は、本実施形態における、プレートであるレチクル1を保持する保持装置の構成を示す図である。
図4において、レチクル搬送部を構成するレチクルハンド21は、レチクル1を保持して回収または供給動作を行う。レチクルハンド21は、回収動作または供給動作終了後、レチクルステージ3の駆動に影響しない位置に退避可能である。
【0023】
保持装置は、レチクル1を回収するとき、レチクルチャック2のレチクル1を保持する保持面からレチクル1に向けて気体を噴射することにより、レチクル1を保持面から離脱させるための力をレチクル1に与える気体噴射部30を備えうる。レチクル1を回収するときに気体噴射部30によってレチクル1の裏面に気体を噴射することによって、レチクル1のレチクルチャック2からの離脱が補助される。気体噴射部30は、気体供給部20と、気体供給部20からの気体の流路である気体供給路19とを含みうる。気体供給路19は、レチクルステージ3内に形成されている。レチクルチャック2の保持面には、レチクル1に向けて気体を噴射する複数の気体噴射口19aが形成され、複数の気体噴射口19aはそれぞれ、気体供給路19に連通する。
【0024】
なお、気体噴射によってレチクル1に外力を加える代わりに、保持面に対して出没可能なリフトピンを駆動するピン駆動アクチュエータを設けてもよい。ピン駆動アクチュエータがリフトピンを押し上げることによってレチクル1をレチクルチャックの保持面から離脱させるための力を与えることができる。ただし、リフトピンによってレチクル1に加えられる外力は、レチクル1がレチクルチャック2に固着している場合であってもレチクル1またはレチクルチャック2に破壊が生じない力とされる。
【0025】
また、レチクル1を回収、供給する位置は、レチクルステージ3の下部にレチクルアライメント検出器15が存在する位置とする。したがって、レチクルアライメント検出器15により、レチクルステージ3上のアライメントマーク18およびレチクル1上のアライメントマーク17の画像が撮像され、制御部Cは、それらの相対位置を計測することができる。
【0026】
本実施形態における露光装置の構成は概ね以上のとおりである。次に、本実施形態における、レチクル1に対するレチクルチャック2の離脱検知方法について説明する。
【0027】
図5を参照して、保持装置によるレチクル回収動作を説明する。
図5(a)は、レチクル1がレチクルチャック2から離脱される前の状態を示している。レチクルアライメント検出器15によってレチクルステージ3上のアライメントマーク18とレチクル1上のアライメントマーク17が撮像され、制御部Cにより相対位置が計測される。このとき、レチクルハンド21はレチクル1には接触していない。
【0028】
図5(b)は、
図5(a)の状態からレチクルハンド21が降下し、レチクル1にレチクルハンド21が接触している状態を示す。レチクルハンド21は、レチクル回収のためレチクル1を保持し、レチクルチャック2は、レチクル1の保持状態を解除するため、真空保持力または静電保持力を解除する。
【0029】
図5(c)は、
図5(b)の状態から、気体噴射部30によりレチクル1をレチクルチャック2の保持面から離脱させるための力が与えられた状態を示している。レチクルハンド21によってレチクル1が保持されつつ、レチクルチャック2からレチクル1に対して気体噴射部30により気体22が噴射されて、これによってレチクル1がレチクルチャック2から離脱可能な状態となる。
【0030】
図6に示すように、レチクル1の例えばX方向の両端部にレチクルアライメントマーク17aおよび17bが構成される。また、レチクルステージ3上の、レチクルアライメントマーク17aおよび17bの対応する位置にそれぞれ、基準マークとなるアライメントマーク18aおよび18bが構成される。レチクルチャック2が分割された構成である場合は、例えば、分割されたそれぞれのチャックに
図6のような2対のアライメントマークが設けられる。なお、
図6に示されたマーク配置は一例であって、例えばマークを3つ以上配置するなど、その他のマーク配置が採用されてもよい。
【0031】
処理部としての制御部Cは、レチクル1を保持面から離脱させるための力がレチクル1に与えられる前の第1タイミングで撮像部であるレチクルアライメント検出器15により得られたマークの画像である第1画像を取得する。また、制御部Cは、レチクル1を保持面から離脱させるための力がレチクル1に与えられている間の第2タイミングでレチクルアライメント検出器15により得られたマークの画像である第2画像を取得する。制御部Cは、取得された第1画像および第2画像とに基づいて、レチクル1が保持面から離脱したと判定する。例えば、制御部Cは、保持面に沿う第1方向(XY方向)におけるマークの位置および保持面と直交する第2方向(Z方向)におけるマークの位置の少なくともいずれか一方が変化したときにレチクル1が保持面から離脱したと判定する。以下、その具体例を説明する。
【0032】
図7を参照して、レチクル回収時にレチクルアライメント検出器15を用いたレチクルステージ3上のアライメントマーク18aとレチクル上のアライメントマーク17aの相対位置計測を説明する。なお、アライメントマーク17bと18bの相対位置計測も同様に行われる。
【0033】
図7(a)は、レチクル1をレチクルチャック2から離脱させる前の状態(
図5(a)、第1タイミング)での相対位置計測を示している。このとき、アライメントマーク17aと18aのX方向の相対位置dx1とY方向の相対位置dy1が計測される。また、アライメントマーク17aのコントラストであるコントラスト1も計測される。
【0034】
図7(b)は、レチクル1がレチクルチャック2から離脱した状態(
図5(c)、第2タイミング)での相対位置計測を示している。このとき、アライメントマーク17aと18aのX方向の相対位置dx2とY方向の相対位置dy2が計測される。また、アライメントマーク17aのコントラストであるコントラスト2も計測される。レチクル1とレチクルチャック2との間で局所的に固着が発生している場合、コントラスト計測時のレチクル1とレチクルチャック2の隙間が大きいと、固着箇所で破壊が生じうる。そのため、計測する相対位置の変位の範囲は例えば100μm以下とする。
【0035】
制御部Cは、アライメントマーク17aと18aのX方向の相対位置dx1とdx2との差分、アライメントマーク17aと18aのY方向の相対位置dy1とdy2の差分から、レチクル1と水平方向(XY方向)の位置変化量を算出する。また、制御部Cは、コントラスト1とコントラスト2の差から、レチクル1の鉛直方向(Z方向)の変化量を算出する。
【0036】
同様に、制御部Cは、もう一方のアライメントマーク17b、18bのレチクル1の水平方向、鉛直方向の変化を確認する。2対のアライメントマークが同時に、レチクル1の水平方向と鉛直方向の少なくともどちらか一方が変化している場合、制御部Cは、レチクル1がレチクルチャック2の保持面から離脱したと判定する。
【0037】
上記の例では、レチクル上のアライメントマーク17とレチクルステージ上のアライメントマーク18(基準マーク)との相対位置計測により、レチクル1の水平方向であるXY位置を計測した。しかし、レチクルアライメントマーク検出系の基準位置に対する相対位置の変化で確認することでも同様の効果が得られる。
【0038】
図8は、本実施形態におけるレチクル回収動作を示すフローチャートである。S102は、レチクル1がレチクルチャック2から離脱される前の、気体噴射部30によりレチクル1をレチクルチャック2の保持面から離脱させるための力が与えられていない状態(
図5(a)の状態)で実行される事前計測工程である。この状態にある第1タイミングでレチクルアライメント検出器15により、レチクル1上のアライメントマーク17の像とレチクルステージ3上の基準マークであるアライメントマーク18の像とを含む第1画像が取得される。制御部Cは、
図7(a)を参照して説明した方法で、取得された第1画像から両マークの相対位置およびコントラストを計測する。
【0039】
S103で、制御部Cは、レチクルチャック2によるレチクル1の保持力を解除し、レチクルチャック2の上のレチクル1がレチクルハンド21に保持させ、かつ、気体噴射部30によりレチクル1に外力を作用させる。S104では、この状態にある第2タイミングで、レチクルアライメント検出器15により、レチクル1上のアライメントマーク17の像とレチクルステージ3上の基準マークであるアライメントマーク18の像とを含む第2画像が取得される。制御部Cは、
図7(b)を参照して説明した方法で、取得された第2画像から両マークの相対位置およびコントラストを計測する。
【0040】
S105で、制御部Cは、S102およびS104で計測された相対位置に基づいて、レチクル1の水平位置(XY方向の位置)の変化の判定を実施する。レチクル1の水平位置が変化していないと判定された場合、S107で、制御部Cは、離脱異常、すなわち、レチクルは保持面から正常に離脱していないと判定する。レチクル1の水平位置が変化したと判定された場合、S106で、制御部Cは、S102およびS104で計測されたコントラストに基づいて、レチクル1の鉛直方向(Z方向)の位置の変化の判定を実施する。コントラストが変化していないと判定された場合は、S107で、制御部Cは、離脱異常、すなわち、レチクルは保持面から正常に離脱していないと判定する。離脱異常と判定された場合、S108で、制御部Cは、離脱異常をユーザに知らせるための警告を表示する等の報知を行う。S106でレチクル1の鉛直方向の位置が変化したと判定された場合は、S109で、制御部Cは、離脱正常、すなわち、レチクル1は保持面から正常に離脱したと判定する。離脱正常と判定された場合、制御部Cは、レチクルハンド21を制御してレチクル1を所定の回収位置まで搬送する。
【0041】
以上説明した実施形態によれば、レチクルが保持面から離脱したことの判定を高精度に行うことができる。
【0042】
<第2実施形態>
上述の第1実施形態では、プレートであるレチクル1を保持する保持装置を有する露光装置100について説明したが、上述の説明は、プレートであるウエハ4を保持する保持装置を有する露光装置にも同様に適用することができる。その場合、レチクルアライメント検出器15に代えてウエハアライメント検出器16を、マークを撮像する撮像部として用いることにより、ウエハ4がウエハチャック5の保持面から離脱したか否かの判定を行うことができる。
【0043】
上述の実施形態では、露光装置に本発明を適用する実施形態について説明した。しかし、本発明は、インプリント装置や描画装置等の、露光装置以外のリソグラフィ装置にも適用することができる。インプリント装置は、基板上に供給されたインプリント材とモールドとを接触させ、インプリント材に硬化用のエネルギーを与えることにより、モールドのパターンが転写された硬化物のパターンを形成する。描画装置は、荷電粒子線(電子線)やレーザビームで基板に描画を行うことにより基板上にパターン(潜像パターン)を形成する。
【0044】
<物品製造方法の実施形態>
本発明の実施形態における物品製造方法は、例えば、半導体デバイス等のマイクロデバイスや微細構造を有する素子等の物品を製造するのに好適である。本実施形態の物品製造方法は、上記のリソグラフィ装置(露光装置やインプリント装置、描画装置など)を用いて基板に原版のパターンを転写する工程と、かかる工程でパターンが転写された基板を加工する工程とを含む。更に、かかる製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージング等)を含む。本実施形態の物品製造方法は、従来の方法に比べて、物品の性能・品質・生産性・生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。
【0045】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0046】
1:レチクル、2:レチクルチャック、3:レチクルステージ、15:レチクルアライメント検出器、17、8:アライメントマーク、19:気体供給路、20:気体供給部、21:レチクルハンド、30:気体噴射部