(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
B60R 13/02 20060101AFI20231214BHJP
F16B 21/08 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60R13/02 B
F16B21/08
(21)【出願番号】P 2019237321
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100180644
【氏名又は名称】▲崎▼山 博教
(72)【発明者】
【氏名】梅林 達矢
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-121980(JP,A)
【文献】特開2012-081785(JP,A)
【文献】特開2013-006448(JP,A)
【文献】特開2016-132950(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0001291(US,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0438747(KR,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/02
F16B 21/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアの車室内側に形成された内側部材に取り付けられるパネル部材を有する車両構造であって、
前記パネル部材は、
車両前方側が上方側に傾斜する傾斜部、及び略水平となるように形成された水平部で構成されると共に、当該パネル部材の上面側に形成された引手用凹部を有し、
前記傾斜部及び前記水平部は、それぞれ前記内側部材に対して上方側から係止される
少なくとも一つの係止爪
を有し、
前記傾斜部及び前記水平部に形成される前記係止爪は、それぞれ突出方向が略平行となるように形成されると共に、車両前方下方側に向けて突出形成されていることを特徴とする車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両ドアにおける車室内側の車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両ドアにおける車室内側には、アームレストが設けられている。前記アームレストには、車両ドアの開閉を行うための引手用の凹部や、窓の開閉スイッチ等が設けられている。前記アームレストは、車両ドアの車室内側に形成されたインナーパネルやドアトリムに取り付けられている。前記アームレストのインナーパネルやドアトリムへの取り付けは、当該アームレストの下面側に突出するように形成された係止爪をドアトリム等の取り付け孔に挿入し、係止させることで行われる(例えば、特許文献1)。
【0003】
上述した特許文献1では、アームレストに設けられる係止爪が、車両ドアの鉛直方向に沿って設けられ、当該係止爪をドアトリムの上方側から、取り付け孔に挿入して係合させている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の係止爪は、上述したように車両ドアの鉛直方向に沿って設けられており、アームレストの取り付けは、ドアトリムの取り付け面に対して直交する方向に係合爪を挿入し、係止させることで行われている。
【0006】
しかしながら、上述した特許文献1の係止爪は、車両ドアの回動時に車両後方側に働く力のベクトルが、係止爪の係止方向と異なる方向となる。そのため、アームレストに捻れ方向の力が作用し、係止爪の係止が緩んでアームレストにガタが生じたり、係止爪がドアトリムから抜けて、アームレストが脱落したりする問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、簡素な構造で、アームレストの取り付け強度を向上させることができると共に、係止爪が抜けることを抑制できる車両構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上述した課題を解決すべく提供される本発明の車両構造は、車両ドアの車室内側に形成された内側部材に取り付けられるパネル部材を有する車両構造であって、前記パネル部材が、前記内側部材に対して上方側から係止される係止爪と、当該パネル部材の上面側に形成された引手用凹部とを有し、前記係止爪が、車両前方下方側に向けて突出形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の車両構造は、車両ドアの車室内側に形成された内側部材に取り付けられるパネル部材が、当該内側部材に対して上方側から係止される係止爪を有している。そのため、係止爪を上方側から容易に内側部材に取り付けることができる。また、本発明の車両構造は、パネル部材の上面側に引手用凹部が形成されているので、当該引手用凹部に手を掛けることで容易に車両ドアを開閉できる。また、本発明の車両構造は、係止爪が、車両前方下方側に向けて突出形成されている。そのため、上述の引手用凹部によって車両ドアを開閉により回動させる際に働く車両後方側への力のベクトル方向と、係止爪が係止されている方向とが、平行となって一致する。従って、パネル部材への組み付け強度が増し、係止爪の係止の緩みや係止爪の抜けが抑制される。また、パネル部材のガタや脱落を回避することができる。
【0010】
(2)上述した課題を解決すべく提供される本発明の車両構造は、前記内側部材が、ドアトリムであることが望ましい。
【0011】
本発明の車両構造において、内側部材をドアトリムとすることにより、ドアトリムにパネル部材を組み付けることで、車両ドア内側に内装を形成することができる。
【0012】
(3)上述した課題を解決すべく提供される本発明の車両構造は、前記内側部材が、前記車両ドアのインナーパネルであることが望ましい。
【0013】
本発明の車両構造において、内側部材をインナーパネルとすることにより、車両ドアにアームレストを形成することができる。この場合において、インナーパネルにパネル部材の係止爪が係止されることで、車両ドア内側に強固にパネル部材を取り付けすることができる。
【0014】
(4)上述した課題を解決すべく提供される本発明の車両構造は、前記内側部材が、前記パネル部材と係止されることで、アームレストが形成されることが望ましい。
【0015】
本発明の車両構造において、内側部材が、パネル部材と係止されることで、アームレストが形成されるようにすれば、車両ドア内側に容易にアームレストを形成することができる。
【0016】
(5)上述した課題を解決すべく提供される本発明の車両構造は、前記アームレストが、
車両前方側において上方側に傾斜した傾斜部と、前記傾斜部の後方側に形成された水平部とを有し、前記傾斜部には、下方側に向けて前記傾斜部の傾斜方向に対して交差する方向に傾斜部係止爪が形成され、前記水平部には、水平部係止爪が、前記傾斜部係止爪に沿う方向に形成されていることが望ましい。
【0017】
かかる構成とすることにより、傾斜部及び水平部における係止爪の形成方向が一致しているので、アームレストの成形性が向上する。また、アームレストを内側部材に組み付ける際に一方向へ組み付けることができるので、組み付けの作業性が向上する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡素な構造で、アームレストの取り付け強度を向上させることができると共に係止爪が抜けることを抑制できる車両構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の車両構造を備える車両ドアの概略正面図である。
【
図3】本発明の車両構造を構成するパネル部材の平面図である。
【
図4】本発明の車両構造を構成するパネル部材の正面図である。
【
図5】本発明の車両構造を備える車両ドアの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、説明を容易にするため、実際のスケールとは異なっていることに留意されたい。
【0021】
本実施形態では、車両構造1が、車両のフロントドアに形成される場合を例として説明する。また、本実施形態では、本実施形態では、車両右側(運転席側)の車両ドア2を例として説明するが、車両左側(助手席側)にも、ほぼ同様の車両構造1が、形成されている。
図1に示すように、車両ドア2は、車両外側に形成されたアウターパネル(図示しない)と、車室内側に形成されたインナーパネル3と、ドアトリム5と、パネル部材10等を備えている。
【0022】
インナーパネル3は、車両ドア2を形成する鋼板の内側に形成されており、本発明の内側部材を構成している。インナーパネル3は、上方側に窓部4が形成され、窓部4には、適宜の手段で開閉可能な窓が嵌め込まれている。また、インナーパネル3には、車室内側にドアトリム5が取り付けられている。
【0023】
図1及び
図5に示すように、ドアトリム5は、例えば樹脂成形されて形成されており、インナーパネル3の車室内側において、窓部4の下方側に図示しない適宜の爪やピン等によって取り付けられている。ドアトリム5は、インナーパネル3に取り付けられることにより、インナーパネル3と共に内側部材を構成する。また、ドアトリム5は、例えばアームレスト20を形成するパネル部材10と、車両ドア2を開閉するためのインナーハンドル30とを有している。インナーハンドル30は、乗員が引っ張ることにより、車両ドア2に形成されるストライカー(図示しない)のロックが解除されるものである。
【0024】
パネル部材10は、例えば樹脂成形により形成されており、本実施形態においては、ドアトリム5の車室内側に、後述する係止爪11によって取り付けられている。また、パネル部材10は、車両前方側(
図1の左側)が上方側に屈曲された傾斜部10aと、傾斜部10aの車両後方側に、略水平となるように形成された水平部10bとを有している。
【0025】
傾斜部10aには、例えば、ドアミラー、パワーウインドウ、ドアロック等の操作スイッチ25が設けられている。水平部10bには、例えば、略矩形状の引手用凹部26が下方側に凹むように形成されている。引手用凹部26は、インナーハンドル30を操作してロックを解除した後、乗員が車室内側に向けて引っ張ることにより、車両ドア2が開閉される。また、パネル部材10は、本実施形態においては、傾斜部10aに複数の傾斜部係止爪11aが形成され、水平部10bには、複数の水平部係止爪11bが形成されている。
【0026】
図6は、
図3のA-A方向から見た矢視断面図であり、中央部を一部省略したものである。
図6に示すように係止爪11は、例えば、パネル部材10と一体成形されることにより、車両前方下方側に向けて突起状に形成されている。また、係止爪11は、ドアトリム5に係止されるものとされている。そのため、係止爪11を上方側から容易にインナーパネル3やドアトリム5等の内側部材に取り付けることができる。
【0027】
図1、
図2及び
図5に示すように、パネル部材10が、インナーパネル3やドアトリム5等の内側部材に取り付けられることにより、アームレスト20が車両ドア2の車室内側に形成される。また、本発明の車両構造1は、パネル部材10の水平部10bの上面側に引手用凹部26が形成されているので、当該引手用凹部に手を掛けることで容易に車両ドア2を開閉できる。係止爪11は、パネル部材10と一体成形ではなく、金属や樹脂等で、パネル部材10に別途取り付けて形成するものであっても良い。
【0028】
ここで、傾斜部係止爪11aは、下方側に向けて傾斜部10aの傾斜方向に対して交差する方向(本実施形態では、傾斜方向に対して略垂直に交差する方向)に形成されている。また、水平部係止爪11bは、傾斜部10aに設けられた傾斜部係止爪11aの傾斜方向と沿う方向(車両前方下方側)に向けて形成されている。そのため、上述の引手用凹部26を用いて車両ドア2を開閉する際に働く車両後方側への力のベクトル方向と、傾斜部係止爪11a及び水平部係止爪11bが係止されている方向とが、略平行となる。従って、係止爪11に無理な力が作用しないので、係止爪11の内側部材への組み付け強度が増し、係止の緩みや係止爪11の抜けが抑制される。これにより、パネル部材10のガタや脱落を回避することができる。
【0029】
上述したように本発明の車両構造1は、パネル部材10の傾斜部10aの傾斜方向に対して交差する方向に傾斜部係止爪11aが形成されており、水平部係止爪11bも傾斜部係止爪11aの傾斜方向に沿って形成されている。そのため、パネル部材10を、傾斜部10aの傾斜方向の一方向に向けて容易に取り付けることができる。また、傾斜部係止爪11aと水平部係止爪11bの傾斜方向が平行であるため、成形性が向上する。以上が、本発明の実施形態であるが、本発明の車両構造1は、これに限定されるものではなく、発明の範囲内で各種の変形を行うことができる。
【0030】
本発明の実施形態では、車両構造1が、車両のフロントドアに形成されるものであったが、後部ドア等、各種の車両のドアに形成されるものであっても良い。また、車両構造1は、1つだけ設けられるものであっても、複数の車両ドアに設けられるものであっても良い。また、車両構造1は、一つの車両ドアに複数設けられるものであっても良い。パネル部材10は、各種の素材で形成することができ、複数の素材の組合せで形成されるものであっても良い。また、係止爪11は、パネル部材10と一体成形した樹脂や、パネル部材10に別途取り付けられた樹脂や金属などの各種素材で形成されたクリップ等の各種係合部材を用いても良い。
【0031】
引手用凹部26の形状は、矩形状だけではなく、各種の形状のものが採用できる。パネル部材10の傾斜部10aの傾斜方向も各種の角度を採用できる。また、傾斜部係止爪11aと水平部係止爪11bの傾斜角度も車両ドア2の旋回方向に合わせて各種の角度を採用できる。係止爪11の形状も内側部材の係止部の形状に合わせて各種の形状のものを採用できる。
【0032】
また、本発明の実施形態では、内側部材としてドアトリム5を採用しているが、パネル部材10は、ドアトリム5だけでなく車両ドア2の内側に形成される各種の部材に取り付けることが可能である。例えば、係止爪11がインナーパネル3に係止されるものであっても良い。また、インナーパネル3は、鋼板だけではなく、CFRP等の樹脂素材を用いたものであっても良い。
【0033】
本発明の実施形態では、内側部材が、パネル部材10と係止されることで、アームレスト20が形成されるようにしているが、アームレスト20だけではなく、例えば、引手用部材のみを形成するものであっても良い。
【0034】
また、本発明の実施形態では、アームレスト20が、車両前方側において上方側に傾斜した傾斜部10aと、傾斜部10aの後方側に形成された水平部10bとを有しているが、アームレスト20の形状は各種の形状のものを採用できる。アームレスト20は、一体形成されていることが、取り付けの作業上、好ましいが、複数に分割形成されているものであっても良い。
【0035】
本発明の実施形態では、傾斜部10aには、傾斜部係止爪11aが形成され、水平部10bには、水平部係止爪11bが、傾斜部係止爪11aに沿う方向に形成されているが、これに限定されるものではない。例えば、傾斜部係止爪11aを有しない構成とし、水平部10bのみに係止爪11が設けられるものであっても良い。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例において例示したものに限定されるものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない範囲でその教示及び精神から他の実施形態があり得ることは当業者に容易に理解できよう。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、ガソリン車、ディーゼル車、ハイブリッド車、電気自動車等の車両ドアに広く利用することが可能である。また、車両用ドアの引手部分の取り付けに広く利用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 :車両構造
2 :車両ドア
3 :インナーパネル(内側部材)
4 :窓部
5 :ドアトリム(内側部材)
10 :パネル部材
10a :傾斜部
10b :水平部
11 :係止爪
11a :傾斜部係止爪
11b :水平部係止爪
20 :アームレスト
25 :操作スイッチ
26 :引手用凹部
30 :インナーハンドル