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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】紙葉類収納装置及び紙葉類処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/12 20190101AFI20231214BHJP
【FI】
G07D11/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019237611
(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公開番号】P2021105893
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001432
【氏名又は名称】グローリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 喜智
【審査官】永安 真
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-200789(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 11/00 - 11/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を処理する処理装置に着脱可能に取り付けられる紙葉類収納装置であって、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられかつ、紙葉類を収納する第1収納部と、
前記紙葉類を搬送する第1ローラを有しかつ、前記第1ローラが、投出方向に回転することによって前記第1収納部内の前記紙葉類を前記筐体の外へ投出し、前記第1ローラが投入方向に回転することによって前記筐体の外から前記第1収納部へ前記紙葉類を投入する第1搬送機構と、
電気駆動のアクチュエータを有しかつ、前記アクチュエータによって、前記投出方向への前記第1ローラの回転を許容するアンロック状態と、前記投出方向への前記第1ローラの回転を禁止するロック状態とに切り替わるロック機構と、を備え
前記ロック機構は、
前記第1ローラに連結されていると共に、前記第1ローラの回転に同期して回転する第1回転体と、
前記アクチュエータによって、前記第1回転体に対し係合した状態と、前記第1回転体に対し係合しない状態と、に切り替わる第1係合体と、を有し、
前記ロック機構は、前記第1係合体が前記第1回転体に対し係合した状態において、前記第1回転体が前記第1ローラの投入方向に回転することを許容しかつ、前記第1回転体が前記第1ローラの投出方向に回転することを禁止し、
前記第1係合体は、前記第1係合体の回転軸となる部材に前記第1係合体を取り付ける取付部を有し、前記取付部は、前記回転軸となる部材に対して遊嵌状態で取り付けられている紙葉類収納装置。
【請求項2】
前記第1搬送機構は、前記紙葉類収納装置が前記処理装置に取り付けられている状態において、前記処理装置の駆動部に接続される第1接続部と、前記駆動部によって回転される前記第1接続部の回転力を前記第1ローラへ伝達する第1伝達部と、を有し、
前記第1回転体は、前記第1接続部に一体に設けられている請求項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項3】
紙葉類を処理する処理装置に着脱可能に取り付けられる紙葉類収納装置であって、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられかつ、紙葉類を収納する第1収納部と、
前記紙葉類を搬送する第1ローラを有しかつ、前記第1ローラが、少なくとも投出方向に回転することによって前記第1収納部内の前記紙葉類を前記筐体の外へ投出する第1搬送機構と、
電気駆動のアクチュエータを有しかつ、前記アクチュエータによって、前記投出方向への前記第1ローラの回転を許容するアンロック状態と、前記投出方向への前記第1ローラの回転を禁止するロック状態とに切り替わるロック機構と、
前記筐体の内部に設けられた第2収納部と、
第2ローラを有しかつ、前記第2収納部内の前記紙葉類を、少なくとも前記筐体の外へ投出する第2搬送機構と、を備え、
前記ロック機構は、前記アクチュエータによって、前記投出方向への前記第1ローラ及び前記第2ローラの回転を許容するアンロック状態と、前記投出方向への前記第1ローラ及び前記第2ローラの回転を禁止するロック状態とに切り替わる紙葉類収納装置。
【請求項4】
前記ロック機構は、
前記第1ローラに連結されていると共に、前記第1ローラの回転に同期して回転する第1回転体と、
前記第1回転体に対し係合した状態と、前記第1回転体に対し係合しない状態と、に切り替わる第1係合体と、
前記第2ローラに連結されていると共に、前記第2ローラの回転に同期して回転する第2回転体と、
前記第2回転体に対し係合した状態と、前記第2回転体に対し係合しない状態と、に切り替わる第2係合体と、
前記第1係合体と前記第2係合体とを互いにつなぐ連結部と、を有し、
前記アクチュエータは、前記連結部によって互いにつながった前記第1係合体及び前記第2係合体の両方を、係合状態と非係合状態とに切り替える請求項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項5】
前記第1回転体及び前記第1係合体は、前記筐体の第1側部に配設され、
前記第2回転体及び前記第2係合体は、前記筐体の第2側部に配設され、
前記連結部は、前記第1側部の前記第1係合体から、前記第2側部の前記第2係合体まで伸びる棒状であって、その中心軸を中心に回動し、
前記第1係合体及び前記第2係合体はそれぞれ、前記連結部に取り付けられかつ、前記連結部と共に前記中心軸を中心に回動することによって、係合状態と非係合状態とに切り替わる請求項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項6】
前記第1係合体及び前記第2係合体は、前記連結部に対し特定の角度でそれぞれ取り付けられ、
前記第1係合体及び前記第2係合体の少なくとも一方は、前記連結部に対する取付角度が特定の角度範囲で変化するように、前記連結部に取り付けられている請求項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項7】
前記第1係合体及び前記第2係合体の少なくとも一方は、前記連結部に対して遊嵌状態で取り付けられている請求項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項8】
前記第1係合体及び前記第2係合体はそれぞれ、爪を有し、
前記第1回転体は、前記第1係合体の爪が当接する外周面に設けられた開口部を有し、
前記第2回転体は、前記第2係合体の爪が当接する外周面に設けられた開口部を有し、
前記特定の角度範囲は、前記第1係合体及び前記第2係合体の爪が前記開口部へ入る際の、前記第1係合体及び前記第2係合体の回動角度よりも小さい請求項6又は7に記載の紙葉類収納装置。
【請求項9】
前記ロック機構は、前記第1係合体を係合状態の方へ付勢する第1付勢部材と、前記第2係合体を係合状態の方へ付勢する第2付勢部材と、を有している請求項6~8のいずれか1項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項10】
前記第1搬送機構は、前記紙葉類収納装置が前記処理装置に取り付けられている状態において、前記処理装置の駆動部に接続される第1接続部と、前記駆動部によって回転される前記第1接続部の回転力を前記第1ローラへ伝達する第1伝達部と、を有し、
前記第1回転体は、前記第1接続部に一体に設けられている請求項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項11】
前記ロック機構は、前記紙葉類収納装置が前記処理装置に取り付けられている状態において、前記アクチュエータが前記処理装置から給電されることによりアンロック状態となりかつ、前記紙葉類収納装置が前記処理装置から取り外されている状態において、前記アクチュエータが給電を停止されることによりロック状態になる請求項1~10のいずれか1項に記載の紙葉類収納装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか1項に記載の紙葉類収納装置が着脱可能に取り付けられる紙葉類処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示する技術は、紙葉類収納装置及び紙葉類処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、紙葉類収納カセットが記載されている。紙葉類収納カセットは、紙葉類の処理装置に着脱自在に取り付けられる。紙葉類収納カセットは、収納している紙葉類をカセットの外に投出するローラを有している。紙葉類収納カセットが処理装置から取り外された状態において、人がローラを手で回転させると、紙葉類収納カセットから紙葉類を繰り出すことができる。不正な繰り出しを阻止するために、紙葉類収納カセットは、ローラの回転を規制する機構を有している。この機構は、紙葉類収納カセットが処理装置から取り外されたことに連動してローラの回転を規制する。
【0003】
具体的に、前記の機構は、ローラの軸に係合可能なロック部材と、リンク機構を介してロック部材に接続されたピニオン部材とを有している。ピニオン部材は、紙葉類処理装置に固定されたラック部材と噛み合う。ラック部材は、紙葉類収納カセットを処理装置に取り付ける際に、紙葉類収納カセットの底面に開口する凹部に進入しかつ、ラック部材と噛み合う。
【0004】
紙葉類収納カセットが処理装置に取り付けられている状態においては、ロック部材はローラの軸に係合していない。ローラは、紙葉類の投出方向及び投入方向に回転できる。
【0005】
紙葉類収納カセットを処理装置から取り外す際に、ピニオン部材がラック部材に対して相対移動する。ラック部材に噛み合ったピニオン部材が回転する。ピニオン部材の回転に伴いリンク機構を介してロック部材が移動をし、ローラの軸に係合する。紙葉類収納カセットが処理装置から取り外された状態においては、ロック部材がローラの軸に係合しているため、ローラは紙葉類の投出方向に回転できない。紙葉類収納カセットから紙葉類が繰り出される不正が抑制される。
【0006】
紙葉類収納カセットを処理装置に取り付ける際に、ピニオン部材がラック部材に対して逆方向に相対移動する。ラック部材と噛み合ったピニオン部材が逆方向に回転する。ピニオン部材の回転に伴いリンク機構を介してロック部材が移動をし、ローラの軸に非係合になる。ローラは、紙葉類の投出方向及び投入方向に回転できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第5456285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、特許文献1に記載された紙葉類収納カセットは、紙葉類収納カセットが処理装置から取り外された状態であっても、例えば処理装置に固定されているラック部材と同一形状の部材を、紙葉類収納カセットの凹部へ挿入すれば、ピニオン部材を回転できる。ピニオン部材が回転すれば、ロック部材の係合状態が解除される。つまり、特許文献1に記載された紙葉類収納カセットは、紙葉類収納カセットが処理装置から取り外された状態において、ローラのロック状態を不正に解除できる。
【0009】
また、特許文献1に記載された紙葉類収納カセットは、ロック機構が、ピニオン部材及びリンク機構を有しており、部品点数が多くて、しかも、その構造が複雑であるという不都合がある。
【0010】
ここに開示する技術は、簡易な構成の、紙葉類収納装置用のロック機構を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ここに開示する技術は、紙葉類を処理する処理装置に着脱可能に取り付けられる紙葉類収納装置に係る。紙葉類収納装置は、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられかつ、紙葉類を収納する第1収納部と、
前記紙葉類を搬送する第1ローラを有しかつ、前記第1ローラが、少なくとも投出方向に回転することによって前記第1収納部内の前記紙葉類を前記筐体の外へ投出する第1搬送機構と、
電気駆動のアクチュエータを有しかつ、前記アクチュエータによって、前記投出方向への前記第1ローラの回転を許容するアンロック状態と、前記投出方向への前記第1ローラの回転を禁止するロック状態とに切り替わるロック機構と、を備えている。
【0012】
電気駆動のアクチュエータを有するため、ロック機構の構成が簡略化する。また、紙葉類収納装置を処理装置から取り外した状態において、ロック機構を、ロック状態からアンロック状態へ切り替える不正操作が抑制される。
【0013】
前記第1搬送機構はさらに、前記第1ローラが投入方向に回転することによって前記筐体の外から前記第1収納部へ前記紙葉類を投入し、
前記ロック機構は、
前記第1ローラに連結されていると共に、前記第1ローラの回転に同期して回転する第1回転体と、
前記アクチュエータによって、前記第1回転体に対し係合した状態と、前記第1回転体に対し係合しない状態と、に切り替わる第1係合体と、を有し、
前記ロック機構は、前記第1係合体が前記第1回転体に対し係合した状態において、前記第1回転体が前記第1ローラの投入方向に回転することを許容しかつ、前記第1回転体が前記第1ローラの投出方向に回転することを禁止し、
前記第1係合体は、前記第1係合体の回転軸となる部材に前記第1係合体を取り付ける取付部を有し、前記取付部は、前記回転軸となる部材に対して遊嵌状態で取り付けられている
【0014】
こうすることで、操作者は、紙葉類収納装置が処理装置から取り外されている状態において、紙葉類収納装置の中へ紙葉類を送り込むことができる。
【0015】
前記ロック機構は、前記紙葉類収納装置が前記処理装置に取り付けられている状態において、前記アクチュエータが前記処理装置から給電されることによりアンロック状態となりかつ、前記紙葉類収納装置が前記処理装置から取り外されている状態において、前記アクチュエータが給電を停止されることによりロック状態になる、としてもよい。
【0016】
紙葉類収納装置は、バッテリが不要である。
【0017】
前記第1搬送機構は、前記紙葉類収納装置が前記処理装置に取り付けられている状態において、前記処理装置の駆動部に接続される第1接続部と、前記駆動部によって回転される前記第1接続部の回転力を前記第1ローラへ伝達する第1伝達部と、を有し、
前記第1回転体は、前記第1接続部に一体に設けられている、としてもよい。
【0018】
この紙葉類収納装置は、ロック機構の部品点数が少なく、ロック機構の構成が、より簡略になる。
【0019】
ここに開示する紙葉類収納装置は、紙葉類を処理する処理装置に着脱可能に取り付けられる紙葉類収納装置であって、
筐体と、
前記筐体の内部に設けられかつ、紙葉類を収納する第1収納部と、
前記紙葉類を搬送する第1ローラを有しかつ、前記第1ローラが、少なくとも投出方向に回転することによって前記第1収納部内の前記紙葉類を前記筐体の外へ投出する第1搬送機構と、
電気駆動のアクチュエータを有しかつ、前記アクチュエータによって、前記投出方向への前記第1ローラの回転を許容するアンロック状態と、前記投出方向への前記第1ローラの回転を禁止するロック状態とに切り替わるロック機構と、
前記筐体の内部に設けられた第2収納部と、
第2ローラを有しかつ、前記第2収納部内の前記紙葉類を、少なくとも前記筐体の外へ投出する第2搬送機構と、を備え、
前記ロック機構は、前記アクチュエータによって、前記投出方向への前記第1ローラ及び前記第2ローラの回転を許容するアンロック状態と、前記投出方向への前記第1ローラ及び前記第2ローラの回転を禁止するロック状態とに切り替わる。
【0020】
一つのアクチュエータを有するロック機構が、第1収納部の第1ローラ及び第2収納部の第2ローラの両方をロックする。ロック機構の部品点数が少ない。
【0021】
前記ロック機構は、
前記第1ローラに連結されていると共に、前記第1ローラの回転に同期して回転する第1回転体と、
前記第1回転体に対し係合した状態と、前記第1回転体に対し係合しない状態と、に切り替わる第1係合体と、
前記第2ローラに連結されていると共に、前記第2ローラの回転に同期して回転する第2回転体と、
前記第2回転体に対し係合した状態と、前記第2回転体に対し係合しない状態と、に切り替わる第2係合体と、
前記第1係合体と前記第2係合体とを互いにつなぐ連結部と、を有し、
前記アクチュエータは、前記連結部によって互いにつながった前記第1係合体及び前記第2係合体の両方を、係合状態と非係合状態とに切り替える、としてもよい。
【0022】
一つのアクチュエータが、第1係合体及び第2係合体の両方を係合状態と非係合状態とに切り替えるため、ロック機構の部品点数が少ない。
【0023】
前記第1回転体及び前記第1係合体は、前記筐体の第1側部に配設され、
前記第2回転体及び前記第2係合体は、前記筐体の第2側部に配設され、
前記連結部は、前記第1側部の前記第1係合体から、前記第2側部の前記第2係合体まで伸びる棒状であって、その中心軸を中心に回動し、
前記第1係合体及び前記第2係合体はそれぞれ、前記連結部に取り付けられかつ、前記連結部と共に前記中心軸を中心に回動することによって、係合状態と非係合状態とに切り替わる、としてもよい。
【0024】
第1係合体及び第2係合体は、係合状態と非係合状態との間の切り替えが同期する。
【0025】
前記第1係合体及び前記第2係合体は、前記連結部に対し特定の角度でそれぞれ取り付けられ、
前記第1係合体及び前記第2係合体の少なくとも一方は、前記連結部に対する取付角度が特定の角度範囲で変化するように、前記連結部に取り付けられている、としてもよい。
【0026】
こうすることで、第1係合体及び第2係合体の、係合状態の切り替えを同期しつつ、第1係合体及び第2係合体の両方を、安定的に、第1回転体及び第2回転体に係合できる。
【0027】
前記第1係合体及び前記第2係合体の少なくとも一方は、前記連結部に対して遊嵌状態で取り付けられている、としてもよい。
【0028】
こうすることで、第1係合体及び第2係合体の少なくとも一方の取付角度を、特定の角度範囲で変化させることができる。
【0029】
前記第1係合体及び前記第2係合体はそれぞれ、爪を有し、
前記第1回転体は、前記第1係合体の爪が当接する外周面に設けられた開口部を有し、
前記第2回転体は、前記第2係合体の爪が当接する外周面に設けられた開口部を有し、
前記特定の角度範囲は、前記第1係合体及び前記第2係合体の爪が前記開口部へ入る際の、前記第1係合体及び前記第2係合体の回動角度よりも小さい、としてもよい。
【0030】
こうすることで、第1係合体及び第2係合体の両方を、第1回転体及び第2回転体に安定的に係合できると共に、係合している第1係合体及び第2係合体が、第1回転体及び第2回転体から外れてしまうことが抑制される。
【0031】
前記ロック機構は、前記第1係合体を係合状態の方へ付勢する第1付勢部材と、前記第2係合体を係合状態の方へ付勢する第2付勢部材と、を有している、としてもよい。
【0032】
こうすることで、第1係合体を第1回転体に、第2係合体を第2回転体に、それぞれ安定的に係合できる。
【0033】
ここに開示する紙葉類処理装置は、前述した紙葉類収納装置が着脱可能に取り付けられる紙葉類処理装置である。紙葉類処理装置から取り外された紙葉類収納装置は、第1ローラの不正な回転が抑制される。
【発明の効果】
【0034】
以上説明したように、紙葉類収納装置及び紙葉類処理装置によると、ロック機構の構成が簡易になる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は、紙幣処理装置の内部構造を例示する図である。
図2図2は、紙幣処理装置の構成を例示するブロック図である。
図3図3は、紙幣処理装置から紙幣収納装置を取り外す状態を示す図である。
図4図4は、紙幣収納装置の外観を例示する斜視図である。
図5図5は、紙幣収納装置の内部の構造を正面から見た図である。
図6図6は、第1搬送機構の構造を紙幣収納装置の左側から見た図である。
図7図7は、第2搬送機構の構造を紙幣収納装置の右側から見た図である。
図8図8は、ロック機構の構造を例示する斜視図である。
図9図9の上図は、第1係合体と第1回転体との係合構造を示す断面図(図8のA-A断面図)、下図は、第2係合体と第2回転体との係合構造を示す断面図(図8のB-B断面図)である。
図10図10は、ロック機構のロック状態及びアンロック状態を示す図である。
図11図11は、ロック機構の変形例を示す図9相当図である。
図12図12は、検知板の構成を例示する図である。
図13図13は、第2下側搬送部の構造を例示する説明図である。
図14図14は、ロック機構に遊びを設けていない場合の、ロック機構の状態を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、紙葉類収納装置及び紙葉類処理装置の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここで説明する紙葉類収納装置及び紙葉類処理装置は例示である。図1は、紙葉類処理装置としての紙幣処理装置1を示している。紙幣処理装置1は、例えば銀行等の金融機関に設置される。尚、紙幣処理装置1は、金融機関に設置する以外に、例えば小売店舗のバックオフィス等に設置して用いることも可能である。紙幣処理装置1は、入金処理及び出金処理を含む各種の処理を実行する装置である。
【0037】
(紙幣処理装置の全体構成)
図1は、紙幣処理装置1の内部の構造を、概念的に示している。図2は、紙幣処理装置1構成を示すブロック図である。紙幣処理装置1は、前後方向に細長い形状を有している。紙幣処理装置1の前は、後述する入金口211及び出金口221が形成されている部位を指す。紙幣処理装置1の後は、入金口211及び出金口221が形成されている部位とは逆の部位を指す。
【0038】
紙幣処理装置1は、バラ紙幣の処理を行う。紙幣処理装置1は、上部の処理部11と、下部の金庫部13とを有している。処理部11は、上部筐体111によって構成されている。上部筐体111の中には、入金部21、出金部22、リジェクト部23、一時保留部24、識別部25、及び、上側搬送部41が配設されている。上側搬送部41は、搬送部4の一部である。尚、図示は省略するが、操作者は、図1において一点鎖線で囲んだ部位を、上部筐体111から前方へ引き出すことができる。当該部位は、入金部21、出金部22、リジェクト部23、一時保留部24、識別部25、及び、上側搬送部41を含む。
【0039】
金庫部13は、金庫筐体131によって構成されている。金庫筐体131の中には、複数の収納装置31~35、下側搬送部42及び第2下側搬送部43が配設されている。下側搬送部42及び第2下側搬送部43は、搬送部4の一部である。金庫筐体131は、収納装置31~35を、所定以上のセキュリティレベルで防護する。具体的に金庫筐体131は、所定の厚み以上の金属板によって形成されている。金庫筐体131のセキュリティレベルは上部筐体111より高い。
【0040】
図示は省略するが、金庫筐体131は、その前部に扉を有している。操作者は、扉を開けると、図3に示すように、収納装置31~35、下側搬送部42及び第2下側搬送部43を、金庫筐体131から前方へ引き出すことができる。
【0041】
入金部21は、例えば入金処理の際に、入金対象の紙幣が投入される部分である。入金部21は、入金口211を有している。入金口211は、上部筐体111の前部において、上向きに開口している。操作者は、入金口211を通じて、入金部21に、紙幣を手で投入する。入金部21は、複数枚の紙幣を、重ねた状態で保持できる。入金部21は、紙幣を一枚ずつ紙幣処理装置1内に取り込む機構を有している。
【0042】
出金部22は、例えば出金処理の際に、収納装置から繰り出された紙幣が搬送される部分である。出金部22は、複数枚の紙幣を、重ねた状態で保持できる。出金部22は、出金口221を有している。出金口221は、入金口211よりも前の位置において、上向きに開口している。操作者は、出金部22に集積されている紙幣を、出金口221を通じて手で取り出すことができる。尚、出金口221に、開閉するシャッターを設けてもよい。
【0043】
リジェクト部23は、例えば入金処理の際に発生したリジェクト紙幣が搬送される部分である。リジェクト部23は、上部筐体111内の前部に配設されている。リジェクト部23は、複数枚の紙幣を、重ねた状態で保持するよう構成されている。リジェクト部23は、第2出金口231を有している。第2出金口231は、上部筐体111の前部において前向きに開口している。第2出金口231にはシャッターが設けられている。シャッターが開くと、操作者は、リジェクト部23に集積されている紙幣を、第2出金口231を通じて取り出すことができる。
【0044】
一時保留部24は、例えば入金処理の際に、入金対象の紙幣を一時的に収納する。一時保留部24は、収納した紙幣を繰り出すことができる。一時保留部24は、上部筐体111の中における、前方位置に配設されている。一時保留部24は、リジェクト部23の下に配設されている。一時保留部24は、テープ式の収納ユニットである。一時保留部24は、紙幣を、テープと共にドラムに巻き付けることによって、紙幣を収納する。テープ式の収納ユニットは、紙幣の収納時及び紙幣の繰出時において、紙幣の順番が入れ替わらないという利点を有している。また、テープ式の収納ユニットは、様々なサイズの紙幣を、混合状態で収納することができる、という利点も有している。一時保留部24は、テープ式の収納ユニットの、公知の構成を採用できる。
【0045】
識別部25は、第1搬送路411に配設されている。識別部25は、第1搬送路411に沿って搬送される紙幣の一枚一枚について、少なくとも、真偽、金種及び正損を識別する。識別部25はまた、紙幣の記番号を取得する。
【0046】
紙幣処理装置1は、第1収納装置31、第2収納装置32、第3収納装置33、第4収納装置34、及び、第5収納装置35を有している。第1収納装置31、第2収納装置32、第3収納装置33、第4収納装置34、及び、第5収納装置35は、前後方向に並んでいる。
【0047】
第1収納装置31、第2収納装置32、及び、第3収納装置33は、同じ構成を有している。第1収納装置31、第2収納装置32、及び、第3収納装置33はそれぞれ、詳細な図示は省略するが、スタック式の収納装置である。スタック式の収納装置は、紙幣を重ねて収納する。第1収納装置31、第2収納装置32、及び、第3収納装置33はそれぞれ、一つの収納部を有している。第1収納装置31、第2収納装置32、及び、第3収納装置33はまた、搬送機構を有している。搬送機構は、収納装置の外から中へ紙幣を投入して、収納部内に紙幣を収納する。搬送機構はまた、収納部に収納している紙幣を、収納装置の中から外へ投出する。
【0048】
第4収納装置34及び第5収納装置35は、同じ構成を有している。第4収納装置34及び第5収納装置35はそれぞれ、スタック式の収納装置である。第4収納装置34及び第5収納装置35はそれぞれ、第1収納部51と第2収納部52とを有している。第1収納部51は、上側に設けられている。第2収納部52は、第1収納部51の下に設けられている。第1収納部51と第2収納部52とは互いに独立している。第4収納装置34及び第5収納装置35はそれぞれ、後述するように、第1収納部51用の第1搬送機構61と、第2収納部52用の第2搬送機構62とを有している。第4収納装置34及び第5収納装置35はそれぞれ、第1収納部51に紙幣を収納しかつ、第1収納部51から紙幣を繰り出すと共に、第2収納部52に紙幣を収納しかつ、第2収納部52から紙幣を繰り出すことができる。第4収納装置34及び第5収納装置35の構成の詳細は後述する。
【0049】
尚、図1の収納装置の構成は一例であり、金庫筐体131内に収容する収納装置の数、及び、配置、並びに、各収納装置の構造は、図1の構成に限定されない。
【0050】
搬送部4は、紙幣処理装置1内で、紙幣と紙幣との間に間隔を空けて、紙幣を一枚ずつ搬送する。搬送部4は搬送路を有している。搬送路は、図示は省略するが、多数のローラ、複数のベルト、これらを駆動するモータ、及び、複数のガイドの組み合わせによって構成されている。搬送部4は、例えば紙幣の長辺の縁を前にして、紙幣を搬送する。搬送部4は、紙幣の短辺の縁を前にして、紙幣を搬送してもよい。
【0051】
搬送部4は、上側搬送部41と、下側搬送部42と、第2下側搬送部43と、を有している。上側搬送部41は、前述したように、上部筐体111内に配設されている。下側搬送部42及び第2下側搬送部43は、金庫筐体131内に配設されている。尚、金庫筐体131を形成する上壁には、三つの搬送路が、上下方向に貫通して形成されている。三つの搬送路は、前後方向に並んでいる。三つの搬送路はそれぞれ、後述する第6搬送路416と第9搬送路421とを接続し、第7搬送路417と第10搬送路422とを接続し、第8搬送路418と第11搬送路423とを接続する。
【0052】
上側搬送部41は、第1搬送路411、第2搬送路412、第3搬送路413、第4搬送路414、第5搬送路415、第6搬送路416、第7搬送路417、及び、第8搬送路418を有している。
【0053】
第1搬送路411は、ループ状に構成されている。より詳細に、第1搬送路411は、前後方向に伸びる上側路4111と、上側路4111に並列な下側路4112と、前側において上側路4111と下側路4112とをつなぐ前反転部4113と、後側において上側路4111と下側路4112とをつなぐ後反転部4114と、を有している。識別部25は、上側路4111に配設されている。搬送部4は、紙幣を、第1搬送路411に沿って、図1における時計回り方向及び反時計回り方向のそれぞれに搬送する。
【0054】
第2搬送路412は、入金部21と第1搬送路411の上側路4111とを互いにつなぐ。第2搬送路412は、入金部21から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。
【0055】
第3搬送路413は、出金部22と第1搬送路411の前反転部4113とを互いにつなぐ。第3搬送路413は、第1搬送路411から出金部22へ向かって、紙幣を搬送する。第3搬送路413と前反転部4113との接続箇所には、詳細な図示は省略するが、紙幣の搬送先を変える分岐機構が設けられている。
【0056】
第4搬送路414は、リジェクト部23と第3搬送路413の途中箇所とを互いにつなぐ。第4搬送路414は、第3搬送路413からリジェクト部23へ向かって、紙幣を搬送する。第4搬送路414と第3搬送路413との接続箇所には、分岐機構が設けられている。
【0057】
第5搬送路415は、一時保留部24と第1搬送路411の前反転部4113とを互いにつなぐ。第5搬送路415は、第1搬送路411から一時保留部24へ向かって、紙幣を搬送すると共に、一時保留部24から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。第5搬送路415と前反転部4113との接続箇所には、分岐機構が設けられている。
【0058】
第6搬送路416は、下側搬送部42と第1搬送路411の前反転部4113とを互いにつなぐ。第6搬送路416は、第1搬送路411から下側搬送部42へ向かって、紙幣を搬送すると共に、下側搬送部42から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。第6搬送路416と前反転部4113との接続箇所には、分岐機構が設けられている。
【0059】
第7搬送路417も、第6搬送路416と同様に、下側搬送部42と第1搬送路411の前反転部4113とを互いにつなぐ。第7搬送路417は、第1搬送路411から下側搬送部42へ向かって、紙幣を搬送すると共に、下側搬送部42から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。第7搬送路417と前反転部4113との接続箇所には、分岐機構が設けられている。
【0060】
第8搬送路418は、下側搬送部42と第1搬送路411の下側路4112とを互いにつなぐ。第8搬送路418は、第1搬送路411から下側搬送部42へ向かって、紙幣を搬送すると共に、下側搬送部42から第1搬送路411へ向かって、紙幣を搬送する。第8搬送路417と下側路4112との接続箇所には、分岐機構が設けられている。
【0061】
下側搬送部42は、第1~第5収納装置31~35の上側に配設されている。下側搬送部42は、前後方向に広がっている。下側搬送部42は、第9搬送路421、第10搬送路422及び第11搬送路423、を有している。下側搬送部42は、第9搬送路421、第10搬送路422及び第11搬送路423を含んでユニット化されている。
【0062】
第9搬送路421は、第5収納装置35の第1収納部51と、第6搬送路416とを互いにつなぐ。第9搬送路421は、第6搬送路416から第5収納装置35の第1収納部51へ向かって、紙幣を搬送すると共に、第5収納装置35の第1収納部51から第6搬送路416へ向かって、紙幣を搬送する。
【0063】
第10搬送路422は、第2下側搬送部43と、第7搬送路417とを互いにつなぐ。第10搬送路422は、第7搬送路417から第2下側搬送部43へ向かって、紙幣を搬送すると共に、第2下側搬送部43から第7搬送路417へ向かって、紙幣を搬送する。
【0064】
第11搬送路423は、第1収納装置31、第2収納装置32、第3収納装置33、及び、第4収納装置34の第1収納部51のそれぞれと、第8搬送路418とを互いにつなぐ。第11搬送路423は、第8搬送路418から各収納装置31~34へ向かって、紙幣を搬送すると共に、各収納装置31~34から第8搬送路418へ向かって、紙幣を搬送する。より詳細に、第11搬送路423は、前後方向に伸びている。第11搬送路423の端は、第1収納装置31に接続されている。第11搬送路423は、第1~第3の三つの分岐路424、425、426を含んでいる。第1分岐路424は、第2収納装置32に接続されている。第2分岐路425は、第3収納装置33に接続されている。第3分岐路426は、第4収納装置34の第1収納部51に接続されている。尚、各分岐路424、425、426の分岐箇所には、分岐機構が配設されている。
【0065】
第2下側搬送部43は、第4収納装置34と第5収納装置35との間に配設されている。第2下側搬送部43は、上下方向に伸びている。第2下側搬送部43は、第12搬送路431を有している。第12搬送路431は、第4収納装置34の第2収納部52及び第5収納部35の第2収納部52のそれぞれと、下側搬送部42の第10搬送路422とを互いにつなぐ。第12搬送路431は、上下方向に伸びている。第12搬送路431は、第4分岐路432及び第5分岐路433を含んでいる。第4分岐路432は、第5収納装置35の第2収納部52に接続されている。第5分岐路433は、第4収納装置34の第2収納部52に接続されている。尚、第4分岐路432及び第5分岐路433の分岐箇所には、分岐機構が配設されている。
【0066】
第1~第12搬送路411~418、421~426、431~433における各所には、図示は省略するが、紙幣の通過を検知する通過センサが配設されている。搬送部4は、後述するコントローラー15からの指令を受けると、通過センサの検知信号に基づいて各分岐機構を制御することにより、紙幣を、所定の搬送先に搬送する。
【0067】
紙幣処理装置1は、図2に示すように、コントローラー15を備えている。コントローラー15には、入金部21、出金部22、リジェクト部23、一時保留部24、識別部25、搬送部4、第1収納装置31、第2収納装置32、第3収納装置33、第4収納装置34、及び、第5収納装置35が、それぞれ信号の授受可能に接続されている。
【0068】
紙幣処理装置1は、操作者が操作をする操作部26、各種のデータ等を記憶する記憶部27、及び、端末機29との間で通信を行うための通信部28を有している。操作部26、記憶部27、及び通信部28も、コントローラー15に信号の授受可能に接続されている。操作部26は、例えばタッチパネル式の表示装置によって構成してもよい。端末機29は、紙幣処理装置1を利用して行う各種の処理の実行のために、操作者が操作をする。
【0069】
コントローラー15は、操作者が操作部26を操作したときや、操作者が端末機29を操作したときに、各種の処理が実行されるよう、入金部21、出金部22、リジェクト部23、一時保留部24、識別部25、搬送部4、第1収納装置31、第2収納装置32、第3収納装置33、第4収納装置34、及び、第5収納装置35を制御する。以下、紙幣処理装置1が各種の処理を実行する際の動作について説明する。
【0070】
(入金処理)
紙幣処理装置1は、入金処理時に、紙幣を収納装置の中に収納する。操作者は、入金対象の紙幣を、入金部21に投入する。入金部21は、紙幣を一枚一枚、装置内に取り込む。搬送部4は、紙幣を識別部25に搬送する。識別部25は、紙幣を識別する。搬送部4は、識別部25の識別結果に従って、紙幣を、第1収納装置31、第2収納装置32、第3収納装置33、第4収納装置34、又は、第5収納装置35へ搬送する。収納装置31~35は、紙幣を収納する。尚、搬送部4は、識別部25がリジェクトと識別した紙幣を、リジェクト部23へ搬送する。
【0071】
入金部21に投入された紙幣が全て、紙幣処理装置1内に取り込まれると、例えば端末機29が、入金金額を表示する。操作者が、端末機29を操作することによって、又は、操作部26を操作することによって入金処理が確定すれば、入金処理は終了する。コントローラー15は、収納装置31~35に収納した紙幣に関するデータを、記憶部27に記憶させる。
【0072】
尚、入金処理時に、一時保留部24を利用する場合、搬送部4は、識別部25を通過した紙幣を、一時保留部24へ搬送する。一時保留部24は、紙幣を収納する。入金部21に投入された紙幣が全て紙幣処理装置1内に取り込まれた後、例えば端末機29が入金金額を表示する。操作者は、端末機29を操作することによって、又は、操作部26を操作することによって、入金処理の確定と入金処理のキャンセルとを選択できる。操作者が入金処理を確定した場合、搬送部4は、一時保留部24が繰り出した紙幣を、第1収納装置31、第2収納装置32、第3収納装置33、第4収納装置34、又は、第5収納装置35へ搬送する。収納装置31~35は、紙幣を収納する。操作者が入金処理をキャンセルした場合、搬送部4は、一時保留部24が繰り出した紙幣を、出金部22へ搬送する。入金対象の紙幣が返却される。
【0073】
(出金処理)
紙幣処理装置1は、出金処理時に、紙幣を紙幣処理装置1の外へ投出する。収納装置31~35は、出金対象の紙幣を繰り出す。搬送部4は、紙幣を、識別部25に搬送する。識別部25は、紙幣の識別を行う。搬送部4は、識別後の紙幣を、出金部22へ搬送する。出金部22は、出金対象の紙幣を保持する。搬送部4は、識別部25がリジェクト紙幣であると識別をした紙幣を、リジェクト部23へ搬送する。リジェクト部23は、リジェクト紙幣を収納する。出金対象の紙幣が全て、出金部22に出金されれば、出金処理は終了する。コントローラー15は、収納装置31~35から繰り出した紙幣に関するデータを、記憶部27から消去する。識別部25がリジェクト紙幣であると識別をした紙幣を、リジェクト部23へ搬送する代わりに、搬送部4は一時保留部24へ搬送し、一時保留部24は当該紙幣を収納し、出金処理の終了後に一時保留部24は、一時的に収納した紙幣を繰り出し、識別部25が識別し、その識別結果に応じて紙幣を収納装置31~35へ収納してもよい。識別部25にて再度リジェクト紙幣と識別された紙幣は、回収部に収納してもよい(回収部は、収納装置の一つを回収用に割り当ててもよい)。
【0074】
(紙幣収納装置の構成)
収納装置31~35は、紙幣処理装置1から取り外すことができる。具体的には、図3に示すように、操作者は、金庫筐体131の前に設けられた扉を開けると、金庫筐体131の中の第1~第5収納装置31~35、下側搬送部42及び第2下側搬送部43を、金庫筐体131の外へ引き出すことができる。第1~第5収納装置31~35を金庫筐体131の外へ引き出した後、操作者は、各収納装置31~35を個別に、上向きに引き上げることにより、各収納装置31~35を紙幣処理装置1から取り外すことができる。
【0075】
図4は、第4紙幣収納装置34及び第5紙幣収納装置35の外観を例示している。以下の説明においては、第4紙幣収納装置34及び第5紙幣収納装置35を単に、紙幣収納装置5と呼ぶ。紙幣収納装置5は、前述したように、筐体50の内部に、第1収納部51と第2収納部52とを有している。第1収納部51に対して紙幣が出入りするための第1通過口53は、筐体50の上面に開口している。第2収納部52に対して紙幣が出入りするための第2通過口54は、筐体50の側面に開口している。
【0076】
図5~7は、紙幣収納装置5の構成を例示している。前述したように、紙幣収納装置5は、スタック式の収納装置である。第1収納部51及び第2収納部52はそれぞれ、ステージ55を有している。ステージ55は、図示を省略するが、紙幣を積み重ねて保持する。ステージ55は、積み重なった紙幣の量に応じて、第1収納部51又は第2収納部52の中を上下に移動する。ステージ55の上で積み重なった紙幣の最上位の位置は、紙幣の量に関わらず、一定またはほぼ一定になる。
【0077】
第1収納部51用の第1搬送機構61は、フィードローラ63、ゲートローラ64、キッカローラ65、札たたき車66、及び、第1伝達部67を有している。第2収納部52用の第2搬送機構62は、フィードローラ63、ゲートローラ64、キッカローラ65、札たたき車66、及び、第2伝達部68を有している。尚、図6及び図7においては、札たたき車66の図示を省略している。
【0078】
フィードローラ63は、紙幣を、通過口53又は54を通過させて第1収納部51又は第2収納部52内へ投入する。フィードローラ63はまた、第1収納部51又は第2収納部52内の紙幣を、通過口53又は54を通じて投出する。フィードローラ63は、前後方向に直交する左右方向に伸びる支持軸631に支持されている。支持軸631は、五つのフィードローラ63を支持している。各フィードローラ63は、支持軸631を中心にして、時計回り方向及び反時計回り方向の両方向に回転可能である。
【0079】
第1搬送機構61及び第2搬送機構62はそれぞれ、二つのゲートローラ64を有している。各ゲートローラは、フィードローラ63に対向すると共に、フィードローラ63に圧接している。ゲートローラ64には、図示を省略するワンウェイクラッチが設けられている。ワンウェイクラッチは、ゲートローラ64が、紙幣の投入方向(図6における反時計回り方向、図7における時計回り方向)に回転することを許容し、投出方向(図6における時計回り方向、図7における反時計回り方向)に回転することを禁止する。収納部51又は52に紙幣が投入される場合、ゲートローラ64は、フィードローラ63に連れ回って紙幣の投入方向に回転をする。紙幣が、収納部51又は52から投出される場合、ゲートローラ64は、ワンウェイクラッチによって回転しない。収納部51又は52から紙幣が投出される場合、フィードローラ63とゲートローラ64との間で紙幣が一枚ずつに分離される。
【0080】
キッカローラ65は、詳細な図示は省略するが、その外周面の一部に摩擦部が形成されている。キッカローラ65は、ステージ55に積み重なっている紙幣を繰り出すときに、最上位の紙幣を一枚ずつ繰り出す。キッカローラ65が、図6における反時計回り方向、又は、図7における時計回り方向に回転すると、摩擦部が最上位の紙幣の表面に当たることで、紙幣が投出方向に移動する。その最上位の当該紙幣は、フィードローラ63とゲートローラ64との間に蹴り出される。
【0081】
札たたき車66は、可撓性を有する複数の羽根を有している。複数の羽根は、周方向に等間隔で放射状に設けられている。札たたき車66は、紙幣をステージ55に積み重ねるときに回転する。羽根が、紙幣の後端部を叩いて、紙幣を下にはたき落とす。
【0082】
紙幣収納装置5は、第1搬送機構61及び第2搬送機構62を駆動する駆動部を有していない。第1搬送機構61の第1伝達部67、及び、第2搬送機構62の第2伝達部68はそれぞれ、紙幣収納装置5が紙幣処理装置1に取り付けられた状態において、紙幣処理装置1の駆動部(図示省略)の駆動力を、フィードローラ63に伝達する。
【0083】
第1伝達部67は、紙幣収納装置5の左側部に配設されている。第1伝達部67は、上下方向に伸びている。第1伝達部67は、伝達ベルト670と、伝達ベルト670が巻きかけられる複数のプーリ671とを有している。伝達ベルト670は、この構成例では、歯付きベルトである。複数のプーリ671は、紙幣収納装置5の左側部において、上下方向の所定の位置に配設されている。伝達ベルト670は、第1プーリ673に巻きかけられている。第1プーリ673は、紙幣収納装置5の下部に配設されている。第1プーリ673は、第1接続部674に一体化されている。第1接続部674は、紙幣収納装置5を紙幣処理装置1に取り付けた状態において、紙幣処理装置1の駆動部に接続される。第1接続部674は、駆動部によって回転し、第1プーリ673は、第1接続部674と共に回転する。伝達ベルト670はまた、第2プーリ675に巻きかけられている。第2プーリ675は、紙幣収納装置5の上部に配設されている。第2プーリ675は、フィードローラ63を支持する支持軸631に固定されている。第1プーリ673が回転をすることによって伝達ベルト670が走行すれば、第2プーリ675が回る。第2プーリ675が回転すると、支持軸631を介してフィードローラ63が回転する。
【0084】
第2伝達部68は、紙幣収納装置5の右側部に配設されている。第2伝達部68は、上下方向に伸びている。第2伝達部68は、複数のギヤを有している。複数のギヤは、互いに噛み合ってギヤ列681を構成している。複数のギヤの内の一つは、第2接続部682を構成している。前述したように、第2接続部682は、紙幣収納装置5を紙幣処理装置1に取り付けた状態において、紙幣処理装置1の駆動部に接続される。第2接続部682は、駆動部によって回転する。複数のギヤの内の一つは、フィードローラ63を支持する支持軸631に固定されている。第2接続部682が回転をすると、ギヤ列681を介して回転力が伝達する。その結果、支持軸631を介してフィードローラ63が回転する。
【0085】
前述したように、紙幣収納装置5は、紙幣処理装置1から取り外すことができる。紙幣収納装置5が紙幣処理装置1から取り外されると、第1搬送機構61の第1接続部674及び第2搬送機構62の第2接続部682はそれぞれ、紙幣処理装置1の駆動部から離れる。第1接続部674及び第2接続部682はそれぞれ、人の手によって回すことができる。フィードローラ63が紙幣の投出方向に回転するよう、第1接続部674又は第2接続部682を手で回転させると、紙幣収納装置5の第1収納部51又は第2収納部52に収納している紙幣を、紙幣収納装置5の外へ投出することができる。この構造は、紙幣を不正に繰り出す行為を招く恐れがある。
【0086】
紙幣収納装置5は、紙幣の不正な繰り出しを阻止するために、ロック機構8を有している。ロック機構8は、紙幣収納装置5が紙幣処理装置1から取り外されている状態において、第1搬送機構61のフィードローラ63及び第2搬送機構62のフィードローラ63のそれぞれが、紙幣の投出方向へ回転することを禁止する。ロック機構8はまた、紙幣収納装置5が紙幣処理装置1に取り付けられている状態において、第1搬送機構61のフィードローラ63及び第2搬送機構62のフィードローラ63のそれぞれが、紙幣の投入方向及び投出方向へ回転することを許容する。
【0087】
図8はロック機構8の構成を例示している。ロック機構8は、電気駆動のアクチュエータ81と、第1回転体82及び第2回転体83と、第1係合体84及び第2係合体85と、連結部86と、を有している。
【0088】
アクチュエータ81は、例えばソレノイドアクチュエータである。アクチュエータ81は、進退するプランジャー811を有している。アクチュエータ81の通電時には、プランジャー811は退避して短くなる。アクチュエータ81の非通電時には、プランジャー811は進出して長くなる。紙幣収納装置5はバッテリを有していない。紙幣収納装置5が紙幣処理装置1に取り付けられている状態において、アクチュエータ81は、紙幣処理装置1から給電される。紙幣収納装置5が紙幣処理装置1から取り外されている状態において、アクチュエータ81は、紙幣処理装置1からの給電が停止される。
【0089】
第1回転体82は、第1搬送機構61の第1接続部674に一体に設けられている。第1接続部674と、第1プーリ673と、第1回転体82とは、互いに一体化している。第1回転体82は、第1接続部674が回転すると回転する。従って、第1回転体82は、第1搬送機構61のフィードローラ63に同期して回転する。
【0090】
第1回転体82は、図9の上図に拡大して示すように、円筒状を有している。第1回転体82はまた、円形状の外周面に設けられた開口部821を有している。図例において開口部821は、周方向に等間隔を空けて四つ設けられている。各開口部821は、第1壁822と第2壁823とによって形成されている。第1壁822は平面状である。第2壁823は曲面状である。後述するように、第1壁822は、第1係合体84の爪843の係止面8431に当たることによって、第1回転体82及び第1接続部674が、フィードローラ63の投出方向に対応する方向に回転することを阻止する。フィードローラ63の投出方向に対応する方向は、図9の上図における時計回り方向である。一方、第1係合体84が第1回転体82に係合した状態において、第1回転体82が、フィードローラ63の投入方向に対応する方向、つまり、図9の上図における反時計回り方向に回転しようとしたときに、第2壁823は、爪843の乗上面8432に当たることによって、その回転を許容する。
【0091】
第2回転体83は、第2搬送機構62の第2接続部682に一体に設けられている。第2回転体83は、第2接続部682が回転すると回転する。従って、第2回転体83は、第2搬送機構62のフィードローラ63に同期して回転する。
【0092】
第2回転体83は、図9の下図に拡大して示すように、第1回転体82と同じ形状である。第2回転体83は、円形状の外周面に設けられた四つの開口部831を有している。各開口部831は、平面状の第1壁832と、曲面状の第2壁833とによって形成されている。
【0093】
第1係合体84は、第1回転体82に係合する。第1係合体84は、第1回転体82に対して係合した状態と、第1回転体82に対して係合しない状態と、に切り替わる。第1係合体84は、連結部86の第1端部に取り付けられている。第1端部は、紙幣収納装置5の左側の端部である。第1係合体84は、取付部841と、レバー部842と、爪843と、クランク部844と、を有している。
【0094】
取付部841は、連結部86が取り付けられる部分である。連結部86は、棒状の部材である。連結部86は、図5に示すように、紙幣収納装置5の下部において左右方向に伸びる。連結部86は、その中心軸を中心に回動するように、筐体50に支持されている。
【0095】
取付部841は、連結部86の第1端部が挿入される孔8411を有している。連結部86の第1端部には、ピン861が固定されている。ピン861は、連結部86の中心軸に直交する方向に貫通している。取付部841には、ピン861を保持する保持溝8412が形成されている。保持溝8412は、ピン861の径よりも大きい幅を有している(図9の上図のθ1を参照)。第1係合体84は、θ1の角度に相当する分だけ、連結部86に対し相対的に回動することができる。つまり、θ1は遊びであり、第1係合体84の取付部841は、連結部86に対して遊嵌状態で取り付けられている。
【0096】
取付部841にはまた、係止部8413が設けられている。係止部8413には、引張りばねによって構成される第1付勢部材845の一端部が係止される。第1付勢部材845は、第1係合体84を、図9の上図における時計回り方向に付勢する。この方向は、第1係合体84が、第1回転体82に係合する方向である。
【0097】
レバー部842の基端は、取付部841に固定されている。レバー部842は、連結部86の中心軸に対して略直交する方向に伸びている。連結部86が回動すると、レバー部842は、連結部86の中心軸を中心に揺動する。
【0098】
爪843は、レバー部842の先端に設けられている。レバー部842が揺動することに伴い、爪843は、図9の上図に実線で示すように第1回転体82の開口部821の中に進入した係合状態と、一点鎖線で示すように開口部821から退出した非係合状態と、に切り替わる。
【0099】
爪843は、係止面8431と、乗上面8432とを有している。係止面8431は、第1回転体82の径方向に広がる。係止面8431は、爪843が係合している状態では、第1回転体82の第1壁822に相対した向きで、当たる。これにより第1回転体82は、図9の上図における時計回り方向へ回転しようとしても回転できない。図9の上図における時計回り方向は、フィードローラ63の投出方向に対応する。
【0100】
乗上面8432は、第1回転体82の径方向に交差する方向に広がる。乗上面8432は、爪843が係合状態にある状態では、第1回転体82の第2壁823に斜めに傾いた向きで、当たる。第1回転体82が図9の反時計回り方向へ回転しようとしたときに、曲面状の第2壁823は、乗上面8432に擦れながら、第1係合体84を持ち上げて移動することができる。第1回転体82の反時計回り方向への回転は許容される。図9の上図における反時計回り方向は、フィードローラ63の投入方向に対応する。
【0101】
クランク部844は、取付部841に一体に設けられている。クランク部844は、連結部86に対して、径方向に位置がずれている。クランク部844には、アクチュエータ81のプランジャー811が接続される。回動可能な連結部86に取り付けられた取付部841、クランク部844、及び、進退するプランジャー811は、クランク機構を構成する。アクチュエータ81のプランジャー811が退避して短くなると、クランク部844を介して取付部841は、図9の上図における反時計回り方向へ回動する。この方向は、第1係合体84が、第1回転体82の係合から外れる方向である。アクチュエータ81のプランジャー811が進出して長くなると、クランク部844を介して取付部841は、図9の上図における時計回り方向へ回動する。この方向は、第1係合体84が、第1回転体82に係合する方向である。
【0102】
第2係合体85は、第2回転体83に係合する。第2係合体85は、第2回転体83に対して係合した状態と、第2回転体83に対して係合しない状態と、に切り替わる。第2係合体85は、連結部86の第2端部に取り付けられている。第2端部は、紙幣収納装置5の右側の端部である。第2係合体85は、取付部851と、レバー部852と、爪853と、を有している。
【0103】
取付部851は、連結部86が取り付けられる部分である。取付部851は、連結部86の第2端部が挿入される孔8511を有している。連結部86の第2端部にはピン861が貫通固定されている。取付部851には、ピン861を保持する保持溝8512が形成されている。保持溝8512は、ピン861の径と同じ大きさの幅を有している。第2係合体85は、連結部86に対し相対的に回動することはできない。つまり、第2係合体85の取付部851には、遊びを設けておらず、連結部86に対して嵌合状態で取り付けられている。
【0104】
取付部851にはまた、係止部8513が設けられている。係止部8513は、引張りばねによって構成される第2付勢部材854の一端部が係止される。第2付勢部材854は、第2係合体85を、図9の下図における反時計回り方向に付勢する。この方向は、第2係合体85が、第2回転体83に係合する方向である。
【0105】
レバー部852の基端は、取付部851に固定されている。レバー部852は、連結部86の中心軸に対して略直交する方向に伸びている。連結部86が回動すると、レバー部852は、連結部86の中心軸を中心に揺動する。第2係合体85のレバー部852と、第1係合体84のレバー部842とは、図8に示すように、連結部86に対する周方向の角度θ3が、互いに同じ角度である。但し、前述したように、第1係合体84の取付部841は遊びθ1を有しているため、第1係合体84と第2係合体85との相対角度は、θ1分だけ変化できる。
【0106】
爪853は、レバー部852の先端に設けられている。爪853は、係止面8531と、乗上面8532とを有している。爪853が係合している状態では、第2回転体83も、フィードローラ63の投出方向に対応する方向、具体的には図9の下図における反時計回り方向への回転が阻止される。一方、第2回転体83が、フィードローラ63の投入方向に対応する方向、具体的には図9の下図における時計回り方向への回転することは、許容される。
【0107】
次に、ロック機構8の動作について図10を参照しながら説明する。前述したように、紙幣収納装置5が紙幣処理装置1に取り付けられている状態においては、アクチュエータ81は、紙幣処理装置1からの給電を受ける。アクチュエータ81のプランジャー811が退避して短くなる。第1係合体84が回動することによって、第1係合体84と第1回転体82との係合が外れる。また、第1係合体84の回動に伴い、連結部86が中心軸を中心に回動するから、第2係合体85も回動する。第2係合体85と第2回転体83との係合も外れる(図10のP1参照)。この状態は、ロック機構8のアンロック状態である。図示を省略する駆動部が、第1接続部674及び第2接続部682のそれぞれに接続し、駆動部からの駆動力が、第1接続部674から、第1伝達部67を介してフィードローラ63へ伝達されることにより、第1収納部51に対する、紙幣の繰り出し、及び、収納が行われる。同様に、駆動部からの駆動力が、第2接続部682から、第2伝達部68を介してフィードローラ63へ伝達されることにより、第2収納部52に対する、紙幣の繰り出し、及び、収納が行われる。
【0108】
紙幣収納装置5が紙幣処理装置1から取り外されると、アクチュエータ81は、紙幣処理装置1からの給電が停止される。アクチュエータ81のプランジャー811が進出して長くなる。第1係合体84は前記とは逆方向に回動し、第1係合体84と第1回転体82とが係合する。また、第2係合体85も回動するから、第2係合体85と第2回転体83とが係合する(図10のP4参照)。この状態は、ロック機構8のロック状態である。第1回転体82が回転しないため、フィードローラ63は投出方向に回転しない。同様に、第2回転体83が回転しないため、フィードローラ63は投出方向に回転しない。紙幣収納装置5が紙幣処理装置1から取り外された状態において、紙幣が不正に繰り出されることが抑制される。一方、第1搬送機構61のフィードローラ63を手で投入方向に回転させる場合は、第1回転体82の回転が許容される。同様に、第2搬送機構62のフィードローラ63を手で投入方向に回転させる場合は、第2回転体83の回転が許容される。紙幣収納装置5が紙幣処理装置1から取り外された状態において、操作者は、紙幣を紙幣収納装置5へ送り込むことが可能である。操作者は、例えばエラー対応処理及びメンテナンス等をスムースに行うことができる。
【0109】
紙幣収納装置5のロック機構8は、一つのアクチュエータ81が、二つの搬送機構61及び62の両方をロックできる。ロック機構8の部品点数を少なくすることができる。また、ロック機構8は、電気駆動のアクチュエータ81を有し、アクチュエータ81への給電が停止されると、ロック機構8がロック状態となる。紙幣収納装置5が紙幣処理装置1から取り外された状態でロック機構8のロックを不正に解除することが抑制される。また、電気駆動のアクチュエータ81を用いることにより、複雑なリンク機構を省略することができ、ロック機構8の構成は簡略化される。
【0110】
また、アクチュエータ81は、紙幣処理装置1から給電されるため、紙幣収納装置5はバッテリが不要になる。紙幣収納装置5の構成が簡略になる。
【0111】
また、第1搬送機構61の第1接続部674と、第1回転体82とを一体にすると共に、第2搬送機構62の第2接続部682と、第2回転体83とを一体にすることにより、ロック機構8の部品点数を、さらに少なくできる。
【0112】
さらに、第1係合体84と第2係合体85とが、連結部86によって互いに連結されている。この構成により、第1係合体84の係合状態の切り替えと、第2係合体85の係合状態の切り替えとを、同期させることができる。
【0113】
ここで、第1収納部51及び第2収納部52を有する紙幣収納装置5において、第1収納部51用の第1搬送機構61と、第2収納部52用の第2搬送機構62とは、互いに独立している。第1搬送機構61の第1接続部674に一体に設けられた第1回転体82の回転位相と、第2搬送機構62の第2接続部682に一体に設けられた第2回転体83の回転位相とは、一致しているとは限らない。つまり、第1回転体82の開口部821の周方向位置と、第2回転体83の開口部831の周方向位置とは、紙幣収納装置5を紙幣処理装置1から取り外した際には、互いにずれていることもあり得る。
【0114】
ここで、図14に示すように、第1係合体840に、前述した遊びθ1を設けていない構成を考える。第1係合体840に遊びθ1を設けていないと、第1係合体840と第2係合体85との相対角度は固定される。
【0115】
アクチュエータ81への給電が停止すると、連結部86によって互いに連結された第1係合体840及び第2係合体85のそれぞれが回動をする。この際に、図14のP5に示すように、第2係合体85の爪が第2回転体83の外周面に当たったとする。この状態では、第2係合体85は第2回転体83に非係合になる。第1係合体840は、第2係合体85と同じ角度に固定されているため、第1係合体840も第1回転体82に非係合になってしまう。この場合、第1搬送機構61のフィードローラ63を手で回転させることができる。つまり、紙幣の繰り出しが可能になる。
【0116】
前記とは逆に、図14のP6に示すように、第1係合体840の爪が第1回転体82の外周面に当たったとする。この状態では、第1係合体840は第1回転体82に非係合になると共に、第2係合体85も第2回転体83に非係合になってしまう。この場合、第2搬送機構62のフィードローラ63を手で回転させることができる。
【0117】
これに対し、前記の構成のロック機構8は、第1係合体84の取付部841に遊びθ1を設けている。第1係合体84と第2係合体85との相対角度は、θ1分だけ変化できる。アクチュエータ81への給電停止に伴い、第1係合体840及び第2係合体85のそれぞれが回動をした際に、例えば図10のP2に示すように、第2係合体85が第2回転体83に係合しない状態であっても、第1係合体84は、第2係合体85に対する相対角度を変えることができるから、第1付勢部材845の付勢力を受けて第1回転体82に係合できる。従って、第1搬送機構61のフィードローラ63は投出方向への回転が禁止される。また、第2搬送機構62のフィードローラ63を投出方向へ手で回転させると、第2付勢部材854の付勢力を受けている第2係合体85が、そのタイミングで、第2回転体83に係合する。このため、第2搬送機構62のフィードローラ63も、投出方向への回転が禁止される。こうして、第1係合体84及び第2係合体85が連結部86によって互いに連結されていても、第1係合体84及び第2係合体85のそれぞれを、第1回転体82及び第2回転体83に、安定的に、係合させることができる。
【0118】
また、図10のP3に示すように、第1係合体84が第1回転体82に係合しない状態であっても、第2係合体85は、第1係合体84に対する相対角度を変えることができるから、第2付勢部材854の付勢力を受けて第2回転体83に係合できる。従って、第2搬送機構62のフィードローラ63は投出方向への回転が禁止される。また、第1搬送機構61のフィードローラ63を投出方向へ手で回転させると、第1付勢部材845の付勢力を受けている第1係合体84が、そのタイミングで、第1回転体82に係合する。このため、第1搬送機構61のフィードローラ63も、投出方向への回転が禁止される。こうして、第1係合体84及び第2係合体85のそれぞれを、第1回転体82及び第2回転体83に、安定的に、係合させることができる。
【0119】
紙幣収納装置5は、一つのアクチュエータ81によって、二つの搬送機構61及び62の両方をロックするように構成されているが、前述した遊びθ1を設けることによって、二つの搬送機構61及び62を安定的にロックすることができる。
【0120】
ここで、図9の上図に示すように、遊びの角度θ1は、第1係合体84又は第2係合体85の爪843又は853が、開口部821又は831から退出する角度θ2よりも小さいことが好ましい(つまり、θ1<θ2)。こうすることで、回転体82又は83に係合している状態の係合体84又は85が、回転体82又は83から外れてしまうことを抑制できる。ロック機構8は、第1搬送機構61及び第2搬送機構62それぞれのロック状態を安定して維持できる。
【0121】
図11は、第1係合体84の変形例を示している。第1係合体84は、取付部841に遊びθ1を設ける代わりに、弾性ブッシュ87を有している。弾性ブッシュ87は、取付部841と連結部86との間に介在している。弾性ブッシュ87がねじり方向に弾性変形をすることにより、第1係合体84は、所定角度分だけ、連結部86に対し相対的に回動できる。
【0122】
尚、前記の構成では、第1係合体84の取付部841に遊びθ1を設けているが、第2係合体85の取付部851に遊びを設けてもよい。また、第1係合体84の取付部841と、第2係合体85の取付部851との両方に、遊びを設けてもよい。
【0123】
また、前述した電気駆動のアクチュエータを有するロック機構は、一つの収納部を有する紙幣収納装置に適用することもできる。
【0124】
(検知センサの構成)
紙幣収納装置5は、収納部内に収納している紙幣の量が満量(つまりフル)及び満量近く(つまりニアフル)になったことを検知する検知センサ71を有している。検知センサ71は、例えば透過型の光学式センサによって構成される。光学式センサは、詳細な図示は省略するが、発光部と受光部とを有している。光学式センサは、発光部が発光した光を受光部が受光している状態と、発光部が発光した光を検知板72が遮ることによって受光部が受光していない状態とを検知する。図6及び図7に示すように、検知センサ71は、筐体50に取り付けられている。検知板72は、ステージ55に固定されている。前述したように、ステージ55は、収納部内に収納している紙幣の量に合わせて下降する。ステージ55は、フルの時には所定の位置になり、ニアフルの時には、所定の位置よりも上の位置になる。
【0125】
従来の紙幣収納装置は、検知センサを、フルの時のステージの位置に対応する位置と、ニアフルの時のステージの位置に対応する位置とのそれぞれに取り付けていた。検知センサは、二つ必要であった。第1収納部と第2収納部とを有する紙幣収納装置は、合計四つの検知センサが必要であった。検知センサの数が多くなってしまうという不都合が、従来の紙幣収納装置にはあった。
【0126】
これに対し、前記の紙幣収納装置5は、検知板72の構造を新しくすることによって、一つの透過型の光学式センサが、収納部のフル及びニアフルの両方を検知可能にしている。図12は、新しい検知板72を示している。検知板72は、上下方向に長い。検知板72は、遮光部721と、半遮光部722とを有している。遮光部721は、遮光率が100%又はほぼ100%であって、光を実質的に遮る部分である。半遮光部722は、遮光率が100%よりも低くかつ0%よりも高い。半遮光部722は、光が透過するものの、透過した光の強度が低下する。
【0127】
図12に例示するように、検知センサ71は、受光した光の強度に対応する電圧信号を、コントローラー15へ出力する。遮光部721は光を遮るため、遮光部721は、検知センサ71の光軸を遮る場合、検知センサ71の電圧信号は、ゼロ又は実質的にゼロである。検知板72が検知センサ71の光軸を遮らない場合、検知センサ71の電圧信号は、最大又は実質的に最大である。半遮光部722は透過した光の強度が低下するため、半遮光部722が、検知センサ71の光軸を遮る場合、検知センサ71の電圧信号は、ゼロと最大との間になる。
【0128】
遮光部721は、検知板72の上端部に設けられている。半遮光部722は、検知板72の上端部を除く部分に設けられている。半遮光部722は、遮光部721の下に設けられている。遮光部721と半遮光部722とは連続している。
【0129】
ステージ55が、収納部における上部に位置している間、検知板72は、検知センサ71の光軸を遮らない。検知センサ71の電圧信号は、最大である。ステージ55が下降すると、検知板72の半遮光部722が、検知センサ71の光軸を遮る。検知センサ71の電圧信号は、最大よりも下がるが、ゼロにはならない。コントローラー15は、収納部がニアフルであると判断できる。ステージ55がさらに下降すると、検知板72の遮光部721が、検知センサ71の光軸を遮る。検知センサ71の電圧信号は、ゼロになる。コントローラー15は、収納部がフルであると判断できる。
【0130】
収納部がニアフルの状態からステージ55が上昇すると、検知板72は、検知センサ71の光軸を遮らなくなる。検知センサ71の電圧信号は、中間状態から最大へと変化する。この電圧信号の変化によって、コントローラー15は、ステージ55が上昇したことを検知できる。収納部がフルの状態からステージ55がさらに下降したとすると、検知板72は、検知センサ71の光軸を遮らなくなるから、検知センサ71の電圧信号は、ゼロから最大へと変化する。この電圧信号の変化によって、コントローラー15は、ステージ55がさらに下降したことを検知できる。従って、この検知板72を用いると、コントローラー15は、収納部のフル状態及びニアフル状態を検知できるだけでなく、ニアフルよりもステージ55の位置が高い状態、及び、フルよりもステージ55の位置が低い状態を検知できる。
【0131】
また、コントローラー15は、図11に示す検知板72における半遮光部722を使って、検知センサのレベル調整を行うようにしてもよい。
【0132】
前述した検知センサの構成は、一つの収納部を有する紙幣収納装置に適用することもできる。
【0133】
さらに、検知板72において、遮光部721の位置と、半遮光部722との位置を入れ替えてもよい。
【0134】
(紙幣収納装置につながる搬送路のガイド構成)
図1及び図4に示すように、第4紙幣収納装置34の第2収納部52、及び、第5紙幣収納装置35の第2収納部52はそれぞれ、その通過口54が紙幣収納装置5の側面に開口している。通過口54は、第2下側搬送部43の第4分岐路432及び第5分岐路433に接続される。第4分岐路432及び第5分岐路433はそれぞれ、図13に示すように、水平方向に伸びる。第4分岐路432及び第5分岐路433はそれぞれ、二つの搬送ガイド434及び435によって構成されている。二つの搬送ガイド434及び435は、上側に位置しかつ、分岐路の上面を構成する上搬送ガイド434と、上搬送ガイド434の下側に位置しかつ、分岐路の下面を構成する下搬送ガイド435と、である。
【0135】
ここで、第2下側搬送部43と、紙幣収納装置5との接続部分において、紙幣のジャムが発生した場合を考える。当該箇所においてジャムが発生すると、前述したように、操作者は、金庫筐体131から紙幣収納装置を引き出し、ジャムが発生した紙幣収納装置を上向きに引き抜く。当該ジャム紙幣が、紙幣収納装置5の第2収納部52の、フィードローラ63とゲートローラ64との間に挟まっていると、フィードローラ63とゲートローラ64との間の強いグリップ力によって、ジャム紙幣は、紙幣収納装置5と共に、上に引き抜かれる。
【0136】
このときに、上搬送ガイド434は、図13に一点鎖線で示すように、上向きに回動する。より詳細に、上搬送ガイド434は、紙幣収納装置5に接続する側とは逆側の端部が、水平方向の軸を中心に回動するよう設けられている。上搬送ガイド434は、紙幣収納装置5との接続口が上向きに広がるように、回動する。紙幣収納装置5を上向きに引き抜く際に、上搬送ガイド434が回動することによって、下搬送ガイド435と上搬送ガイド434との間に挟まったジャム紙幣を、破かずに抜き取ることができる。
【符号の説明】
【0137】
1 紙幣処理装置(紙葉類処理装置)
5 紙幣収納装置(紙葉類収納装置)
50 筐体
51 第1収納部
52 第2収納部
61 第1搬送機構
62 第2搬送機構
63 フィードローラ(第1ローラ、第2ローラ)
67 第1伝達部
674 第1接続部
68 第2伝達部
682 第2接続部
8 ロック機構
81 アクチュエータ
82 第1回転体
821 開口部
83 第2回転体
831 開口部
84 第1係合体
843 爪
845 第1付勢部材
85 第2係合体
853 爪
854 第2付勢部材
86 連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14