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特許7402684透明な顔面シールド及び顔面シールド上の制御ボタンを有するフードを備える個人防護システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】透明な顔面シールド及び顔面シールド上の制御ボタンを有するフードを備える個人防護システム
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/12 20060101AFI20231214BHJP
   A41D 13/11 20060101ALI20231214BHJP
   A41D 13/002 20060101ALI20231214BHJP
   A42B 3/20 20060101ALI20231214BHJP
   A42B 3/30 20060101ALI20231214BHJP
   A62B 17/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A41D13/12 118
A41D13/11 G
A41D13/11 L
A41D13/002 105
A42B3/20
A42B3/30
A62B17/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019505335
(86)(22)【出願日】2017-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2017027857
(87)【国際公開番号】W WO2017184479
(87)【国際公開日】2017-10-26
【審査請求日】2020-04-13
(31)【優先権主張番号】62/324,118
(32)【優先日】2016-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506410062
【氏名又は名称】ストライカー・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(72)【発明者】
【氏名】ウルマー,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】ヴァンダーワウデ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】キッドマン,ビュー
(72)【発明者】
【氏名】ゴールデンバーグ,デイヴィッド
【審査官】横山 綾子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0375019(US,A1)
【文献】特表2003-524083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/11-13/12
A41D 13/002-13/005
A42B 3/00-3/32
A62B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの頭に装着されるように構成されたヘルメットと、
前記ヘルメットに取り付けられたファンモータと、
前記ファンモータの速度を制御するために前記ファンモータに接続される、少なくとも1つの制御部材と、
透明な顔面シールドを少なくとも備えるガーメントであって、前記ガーメントが前記ヘルメットに取り付けられる時に前記顔面シールドが前記ユーザーの顔の前に位置するように位置決めされた前記ヘルメットに離脱可能に取り付けられる、ガーメントと、
を備える個人防護システムであって、
前記ガーメントは、マークと、前記ヘルメットに取り付けられた前記ファンモータの操作を調整するためのデータを貯蔵するメモリと、を備え、
センサが前記ヘルメットに取り付けられており、前記センサは、前記ガーメントの前記マークが前記センサに隣接しているかどうかを監視し、前記センサに隣接する前記ガーメントの前記マークの存否を示すセンサ信号を出力するように、構成されており、
制御装置が、前記ファンモータの作動を選択的に可能にするために前記ファンモータに接続されると共に、前記センサ信号を受信するために前記センサに接続されており、前記制御装置は、前記センサ信号が前記ガーメントの前記マークが前記センサに隣接していることを示した時にのみ前記ファンモータの作動を可能にするように、構成され、
前記ガーメントの前記マークは、磁場に引き付けられ、前記ヘルメットに接続された磁石と対で機能する金属である、個人防護システム。
【請求項2】
前記ガーメントの前記マークは、前記顔面シールドに取り付けられている、請求項1に記載の個人防護システム。
【請求項3】
前記センサは、磁場の存在を監視するように構成されている、請求項1または2に記載の個人防護システム。
【請求項4】
前記センサは、ホール効果センサである、請求項3に記載の個人防護システム。
【請求項5】
前記ファンモータに接続される少なくとも一つの前記制御部材は、ボタンである、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の個人防護システム。
【請求項6】
ユーザーの頭に装着されるように構成され、電動装置を有する外科用ヘルメットと、
医療環境と着衣者との間に微生物バリアをもたらすために、前記外科用ヘルメットを少なくとも部分的に覆って配置されるように構成された外科用ガーメントであって、前記外科用ガーメントを前記外科用ヘルメットに取外し可能に連結するように構成された第1の固定特徴部と、前記ガーメントに取り付けられたメモリと、を備える、外科用ガーメントと、
を備える、外科衣システムであって、
前記外科用ヘルメットは、
外科手術中に前記外科用ヘルメットを着用する前記ユーザーの手技を促進するように構成された電動装置と、
前記電動装置に接続され、前記電動装置の特性を制御する制御部材と、
前記外科用ヘルメットに隣接して位置決めされる前記外科用ガーメントの存在を検出し、前記外科用ガーメントが前記外科用ヘルメットに連結された時に信号を生成するように構成されたセンサと、
前記センサ及び前記電動装置と通信する制御装置であって、前記センサからの前記信号に少なくとも部分的に基づき、前記電動装置の作動を調整するように構成されている、制御装置と、
を備え、
前記メモリは、前記外科用ヘルメットに取り付けられた前記電動装置の操作を調整するためのデータを貯蔵するメモリであり、
前記第1の固定特徴部は、磁場に引き付けられ、前記外科用ヘルメットに接続された磁石と対で機能する金属である、外科衣システム。
【請求項7】
前記外科用ガーメントは、透明シールドをさらに備え、
前記外科用ガーメントの前記第1の固定特徴部は、前記透明シールドに連結されている、請求項6に記載の外科衣システム。
【請求項8】
前記外科用ヘルメットに取外し可能に接続されたバッテリをさらに備え、
前記バッテリは、前記制御装置と通信しており、
前記制御装置は、前記センサからの前記信号に少なくとも部分的に基づき、前記バッテリから前記電動装置へのエネルギーの伝達を制御するように、構成されている、請求項6に記載の外科衣システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記センサからの前記信号が前記外科用ガーメントが前記外科用ヘルメットに隣接して位置決めされたことを示した時、前記バッテリから前記電動装置へのエネルギーの伝達を可能にするように構成されている、請求項8に記載の外科衣システム。
【請求項10】
前記センサは、磁場の存在を監視するように構成されている、請求項6に記載の外科衣システム。
【請求項11】
前記外科用ヘルメットの前記電動装置は、ファンアセンブリ、光源、通信ユニット、冷却ストリップ、又はビデオレコーダーを含む、請求項6に記載の外科衣システム。
【請求項12】
記ガーメントが前記ヘルメットを覆って配置された時に、前記メモリからデータを少なくとも読み取ることができるように前記ヘルメットに接続されたメモリインターフェイスと、をさらに備え、
前記メモリインターフェイスは、前記制御装置に接続され、
前記制御装置は、前記メモリインターフェイスから受信したデータに基づいて前記電動装置を作動させるように構成されている、請求項6に記載の外科衣システム。
【請求項13】
前記ガーメントはフィルタ媒体を含むシェルを備え、
前記ヘルメットに取り付けられた前記電動装置はファンモータであり、
前記メモリに貯蔵された前記データは、前記ガーメントの特性に対応する前記ファンモータの最低ファン速度を示す、請求項12に記載の外科衣システム。
【請求項14】
記ガーメントが前記ヘルメットを覆って配置された時に、前記ガーメントに取り付けられた前記メモリからデータを少なくとも読み取ることができるように前記ヘルメットに接続されたメモリインターフェイスと、をさらに備え、
前記メモリインターフェイスは、前記制御装置に接続され、
前記制御装置は、前記メモリインターフェイスから受信したデータに基づいて前記ファンモータを作動させるように構成されている、請求項1に記載の個人防護システム。
【請求項15】
前記ガーメントはフィルタ媒体を含むシェルを備え、
前記メモリに貯蔵された前記データは、前記ガーメントの特性に対応する前記ファンモータの最低ファン速度を示す、請求項14に記載の個人防護システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、個人防護システムに関する。さらに詳細には、本発明の個人防護システムは、ヘルメット及び取外し可能なフードを備えている。フードは、システムの操作を制御するように作動されるボタンを有している。
【背景技術】
【0002】
医療及び外科手術中に、医療従事者は、個人防護システムとして知られるアセンブリを着衣することがある。この種のアセンブリは、ヘルメットを備えている。防護ガーメントが、少なくとも着衣者の頭を覆うために、ヘルメットを覆って配置される。頭の下にわずかしか延在しないガーメントは、フードと呼ばれることがある。腰まで又は腰の下まで延在するガーメントは、ガウン又はトーガと呼ばれている。ガーメントは、その長さに関わらず、透明な顔面シールドを備えている。ガーメントを形成する布が医療従事者と周囲環境との間にバリアをもたらすようになっている。顔面シールドは、医療従事者が手術が行われている箇所を見ることを可能にするこのバリアの透明部分である。
【0003】
バリアは、患者及び医療従事者の両方に利得をもたらす。バリアは、手術中に生じ得る患者からの流体又は固形片に医療従事者が接触する可能性を実質的に排除する。また、医療従事者は、だれでも、微視的及び近微視的な壊死皮膚細胞、汗の滴、及び唾液を必然的に放出する。個人防護システムによって設けられるバリアは、手術を行うために露出される患者の通常隠蔽されている組織上にこの材料が付着する可能性を実質的に排除する。患者の内部組織がこの材料に晒される程度を制限する結果として、該材料が組織に感染を引き起こす可能性を同じように低減させることになる。
【0004】
もし医療従事者が単に頭を覆ってガーメントを着衣したなら、該従事者の呼吸の必然的な結果として、二酸化炭素及び水蒸気がガーメント内に不可避的に蓄積されるだろう。誰であっても、特に手術を行う医療従事者は、二酸化炭素への過剰な露出の悪影響に晒されることを望んでいない。もし水蒸気がガーメント内に蓄積されたなら、該水蒸気は、顔面シールドの内面に凝結することになる。これらの水滴の生成によって、顔面シールドを介する可視性が低下する可能性がある。
【0005】
二酸化炭素及び水蒸気が個人防護システムのガーメント内に蓄積されるという望ましくない結果を避けるために、ファンが個人防護システムのヘルメットに取り付けられている。ファンは、新鮮な空気をガーメント内の空間、具体的には、システムの着衣者の頭の周りの空間内に吸込むようになっている。この空気は、二酸化炭素及び水蒸気を含む空気をシステムの着衣者の頭の周りから強制的に排出させる。このようなシステムの例が、特許文献1,2に記載されている。これらの文献のいずれも参照することによって、ここに含まれるものとする。これらの個人防護システムは、いずれも、システムの着衣者の周りにバリアをもたらし、ガーメント内の二酸化炭素及び水蒸気の望ましくない蓄積を防ぐようになっている。
【0006】
個人防護システムは、少なくとも1つ又はそれ以上の制御ボタン又はスイッチを備えている。少なくとも、殆どの個人防護システムは、システムの着衣者によって押される制御ボタンを備え、これによって、着衣者は、ファンの速度を制御することが可能になる。これは、望ましいことである。何故なら、着衣者は、通常、ファンがフード内の環境が確実に快適となるような十分高い速度で作動するように、ファンを設定することを望むからである。同時に、着衣者は、ファンによって生じる騒音が進行中の手術に集中する能力を著しく妨げるほど高い速度で作動するるようにファンを設定することを望まない。さらに、補助機器が個人防護システムのヘルメットに取り付けられることがある。この補助機器として、外方に向けられる光源が挙げられる。着衣者は、一部の手術中にこの光源が進行中の手術の領域における組織を照明するために有用であることを経験している。この光源が有用である1つの理由は、組織の色を観察し、組織の種類及び/又は健康状態を決定することによって、施術者を支援することができることである。個人防護システムのヘルメットに取り付けられることがある他の形式の補助ユニットは、マイクロフォンを備えるユニットである。これらのユニットのいくつかは、無線送受信機である。これらのユニットによって、個人防護システムの着衣者は、手術が行われている手術室内外における他の関係者と通信することが可能になる。これは、有用である。何故なら、個人防護システムを着用した時、着衣者を覆うフードの存在によって、聞き取りやすくするために大声で話すことが必要な場合があるからである。マイクロフォンを備える代替ユニットとして、増幅器及び拡声器を備えるユニットが挙げられる。この種のユニットによれば、ユニットの着衣者は、隣接する環境に対してフードを通して発話することができる。この種のユニットは、個人防護システムの着衣者が通常の音声によって会話しても、該着衣者の頭の周りに延在するフードを介して確実に聴き取られることを可能にする他の手段をもたらすことができる。
【0007】
これらの機器の各々は、典型的には、個人防護システムの着衣者が該機器の操作状態を制御することができるように、1つ又は複数のボタンを備えている。前述したように、ファンは、該ファンの速度を制御するための少なくとも1つの制御ボタンを備えている。もしヘルメットが光源を備えているなら、該光源のオン/オフ状態を制御するボタンが設けられる。もしヘルメットが会話を無線波として伝えるか又は単に増幅して伝えるアセンブリを備えているなら、典型的には、このアセンブリのオン/オフ状態を制御するボタンが設けられる。
【0008】
また、特許文献3に開示されるように、いくつかの個人防御ユニットのヘルメットは、冷却モジュールを備えている。これらの文献は、参照することによって、ここに含まれるものとする。これらの冷却手段は、典型的には、1つ又は複数のペルチエ式冷却モジュールからなっている。この種のヘルメットは、着用された時、冷却モジュールの放熱部分が、着衣者の皮膚にもし接触しなくても隣接するように設計されている。モジュールは、作動されると、着衣者の熱エネルギーを該着衣者から奪うことになる。これによって、着衣者の体温を着衣者が快適と感じる範囲内に容易に維持することができる。個人防御システムがこれらの1つ又は複数の冷却モジュールを備える時、システムは、典型的には、モジュールが着衣者から熱を奪う速度を着衣者がカスタム設定することを可能にする1つ又は複数のボタンを備える。
【0009】
現在の一実施策では、個人防御システムと一体の1つ又は複数のボタンは、システムヘルメットに取り付けられている。いったん個人防御システムを着衣したなら、ボタンは、ガーメントのフード部分によって覆われることになる。参照することによってここに含まれる特許文献4は、制御ボタンがヘルメットの外面に取り付けられた個人防御システムを開示している。さらに具体的には、これらのボタンは、ヘルメット着衣者の耳の上かつ耳のいくらか後ろにおいてヘルメットに取り付けられている。着衣者がこれらのボタンの1つを押すことを望む時、着衣者は、手を無菌領域外の耳の上方の位置に移動させねばならない。(無菌領域は、概して、着衣者の腰と首との間の前部の空間である)。もし着衣者が光源のような懸垂した機器の近傍に位置していたなら、手をボタンに移動させる時に、その手が不注意によって光源に接触しないように注意を払わねばならない。この種の接触が生じた場合、着衣者の手は、仮に手袋を嵌めていても、無菌と見なされない。その結果、着衣者が再び手袋を着用するので、手術が中断されることになる。
【0010】
ボタンを押すために手をそのように位置付けねばならないことによって、さらなる悪条件が生じることになる。何故なら、これらのボタンは、耳に隣接して位置しているので、ヘルメットの着衣者の視線から外れるからである。これは、ボタンを押すために手を正確に位置付けるために、着衣者が視覚的な手がかりに頼れないことを意味している。実際、この種のシステムが用いられる時、外科医によっては、無菌領域外にいる巡回看護婦によって制御ボタンを押してもらうこともある。これは、個人防護システムの操作状態を調整するために適切な手の配置に集中しなければならない外科医を助けることになる。
【0011】
また、これらの視覚的な手がかりの欠如によって、外科医は、所望する制御ボタンを自信を持って押すことが困難になることもある。この戸惑が生じる可能性によって、個人防護システムのヘルメットに取り付けられる傾向にある制御ボタンの数が制限されることになる。ボタンの数が制限されると、システムの着衣者にもたらされる制御選択肢の数が制限される。
【0012】
参照することによってここに含まれる前述の特許文献2は、ボタンが顎バーの底部分に取り付けられる個人防護システムを開示している。顎バーは、シェルから下方に延在するU字状構造を有している。ヘルメットは、典型的には、装着された時、顎バーが顔の両側の外方及び前方に離間した位置から下方に延在するように、設計されている。顎バーは、少なくとも半剛性のビームを備えている。このビームは、着衣者の顎の前方及びいくらか下方に位置している。顎バーの主目的は、顔面シールドを構造的に支持することにある。さらに具体的には、顎バーは、顔面シールドが個人防護システムを着衣するユーザーの顔に対して内方にずれるのを防ぐためのヘルメットの構造要素である。多くの個人防護システムは、ガーメントをヘルメットに一時的に保持する固定要素が顔面シールドに取り付けられるように、設計されている。これらの個人防護システムの多くは、顎バーと一体の固定要素がガーメントの顔面シールドに取り付けられた相補的な固定要素に係合するように、設計されている。
【0013】
制御ボタンが顎バーに取り付けられた時、多くの場合、ボタンは、着衣者の顎の下方に位置するバーのウエブ部分内に位置する。ボタンを押すことを望む着衣者は、バーに対して顔を持ち上げ、ボタンを覆うガーメントの部分を押すことによって、ボタンを押すことになる。制御ボタンをこのように位置決めする利点は、ボタンを押すことを望む着衣者が明らかに無菌領域外にある位置に手を移動させずにすむことにある。さらに、手がこのプロセス中に着衣者の顔の実質的に前にあるので、該手が着衣者の視界内にある。これによって、少なくとも部分的に視界に頼って、手を迅速かつ正確に位置決めし、作動のための目標とするボタンを押すことができる。
【0014】
比較的アクセスしやすいことを考慮すると、顎バーに取り付けられた制御ボタンを有する個人防護システムは、先行するシステムよりも一般的に使いやすい代替例である。にもかかわらず、一部の外科手術では、著しい量の流体が患者から着衣者に向かって放出されてしまうことがある。これらの流体は、血液及び他の流体によって汚染された灌注液を含んでいる。小さい組織粒子が患者から放出されることもある。この材料が放出された時、システムが意図されるように機能した場合、流体は、システムの着衣者の皮膚又は衣類に代わってガーメントに付着する。顎バーに取り付けられたボタンを押すことを望む着衣者は、流体が付着したガーメントの部分を押さねばならないことにある。ガーメントに対するこのような親指又は他の指の押込みによっても流体又は他の汚染物がガーメントを浸透しないことを確実にするには、事実上、従来から市販されている一部のガーメントよりも透過性の小さい材料からガーメントを作製する必要がある。透過性の劣るこの材料は、従来から市販されているガーメントよりも呼吸に適していない。この通気性の低下は、時間の経過と共に、個人防護システムの着衣者に対して不快感をもたらすことがある。さらに、この材料は、従来技術によるガーメントを形成する材料よりも高価になる。ガーメントをこの高価な材料から作製することによって、ガーメントのコストが高くなる。
【0015】
さらに、いくつかの個人防護システムは、ユーザーがバッテリパックをヘルメットに接続するやいなや、ファンが作動されるように構成されてる。これは、ガーメントがヘルメット及び頭を覆って配置されていなくても生じる。その結果として、ファンによる不必要な騒音が生じることになる。また、ファンの操作が有用な目的を果たしていなくても、システムバッテリに貯蔵された電荷の消耗が生じることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】米国特許第6,481,019号明細書/国際特許出願公開第2001/052675号パンフレット
【文献】米国特許第7,735,156号明細書/国際特許出願公開第2007/011646号パンフレット
【文献】米国仮特許出願第62/221,266号明細書(米国特許出願公開第___________号明細書)/国際特許出願第PCT/US2016/052491号パンフレット(国際特許出願公開第2017/053232号パンフレット)
【文献】米国特許第6,418,019号明細書/国際特許出願公開第2001/011646号パンフレット
【発明の概要】
【0017】
本発明は、新規の有用な個人防護システムに関する。本発明の防護システムは、医療又は外科状況下において着衣者と周囲環境との間に無菌バリアをもたらすために用いることができる形式のものである。本発明の個人防護システムは、システムの操作状態を制御するための1つ又は複数のボタンを備えている。このシステムのボタンは、システムの着衣者によって容易にアクセス可能となるように位置決めされ、かつボタンの押下によって該ボタン上の材料がシステムによって形成されたバリア内に押し込まれないことが明らかな場所に配置されている。
【0018】
本発明の個人防護システムは、ガーメント及びヘルメットを備えている。ガーメントは、少なくともヘルメット及び少なくともヘルメットの着用者の頭を覆うようになっている。ヘルメット内に電気的に作動する構成要素が配置されている。典型的には、これらの構成要素は、少なくともガーメント内の環境を調整するようになっている。ヘルメットは、透明な顔面シールドを備えている。顔面シールドは、透明なプラスチックから形成されている。
【0019】
本発明は、顔面シールドに取り付けられた少なくとも1つの制御ボタンをさらに備えている。顔面シールドに配置された1つ又は複数の導電体が、各ボタンから延在している。これらの導電体は、顔面シールドに取り付けられた接点に向かって延在している。ヘルメットは、顔面シールド接点に対して相補的な接点を備えている。ヘルメット接点は、ヘルメットに取り付けられた制御装置に電気的に接続されている。
【0020】
この個人防護システムを用いるユーザーは、最初にヘルメットを被ることによってシステムの使用の準備を整える。ガーメントがヘルメットを覆って配置される。ガーメントがヘルメットを覆って装着された結果として、顔面シールド接点がヘルメット接点に係合する。このようにして、各ボタンが制御装置に接続されることになる。
【0021】
着衣者は、電気的に作動する構成要素の操作状態を設定することを望んだ時、顔面シールドに取り付けられたボタンの適切な1つを押す。ボタンのこの押下が制御装置によって検知される。次いで、制御装置は、個人防護システムの操作状態を適切に調整することになる。
【0022】
ボタンは、プラスチックの層シート上に取り付けられている。従って、着衣者は、ボタンを押す時、その動作によってボタンに隣接する材料が顔面シールドによって形成されたバリアの一部内に押し込まれると感じることがない。
【0023】
本発明のいくつかの態様では、接点は、顔面シールドをヘルメットに保持し、及び/又は顔面シールドをヘルメットと位置合わせする構成要素と一体化されている。本発明のいくつかの態様では、相補的な顔面シールド接点及びヘルメット接点は、顔面シールドをヘルメットに物理的に保持するための係合も行う導電性構成要素である。本発明の他の態様では、顔面シールド接点は、固定機能及び/又は位置合わせ機能を行う顔面シールド特徴部に延在している。この種の特徴部は、顔面シールドの開口又はノッチとすることができる。ヘルメットは、顔面シールドの開口又はノッチに着座する相補的タブを有するように形成されている。ヘルメット接点は、このタブに隣接して配置されている。その結果、顔面シールドの開口又はノッチ内へのヘルメットタブの着座の結果として、ヘルメット接点は、顔面シールドと一体の相補的接点に係合することになる。
【0024】
本発明のいくつかの態様では、各ボタンは、顔面シールド上に形成された2つの導電体の幾何学的特徴部からなっている。これらの幾何学的特徴部は、互いに近接して配置されている。検出器が、ヘルメットと一体化されている。検出器は、端末構造を横切る信号の状態の変化を検知することができる。この変化は、幾何学的特徴部を横切る静電容量又は抵抗のような変数の状態の変化によるものであるとよい。個人防護システムの着衣者は、親指又はその他の指をこれらの幾何学的な特徴部の近傍に置くことによって、ボタンを作動させる。この作動は、静電容量又は抵抗のいずれかを変化させ、この変化が検出器によって検出される。この状態変化が生じたと検出器が決定したことに応じて、検出器は、端末構造が付随するボタンが押されたことを示す信号を制御装置に送信することになる。
【0025】
本発明は、ガーメントがシステムヘルメットを覆って装着された時にのみファンが作動されるように設計された個人防護システムにも関する。
【0026】
本発明は、請求項に詳細に指摘されている。本発明の前述の及びさらなる特徴並びに利得は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明を読むことによって理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の個人保護システムの斜視図である。
図2】本発明の個人防護システムのヘルメットの斜視図である。
図3】ヘルメットの断面図である。
図3A】ヘルメットの前部の拡大断面図である。
図4】ヘルメットの電気的に作動する構成要素のブロック図である。
図5】本発明のシステムと一体のガーメントの顔面シールドの内面の斜視図である。
図5A】顔面シールド上に配置された導電材料によって顔面シールド上に複数のボタンが形成された顔面シールドの内側の部分の拡大図である。
図6】顔面シールド及び顔面シールドに取り付けられた構成要素の分解図である。
図7】ヘルメットに離脱可能に固定された顔面シールドを示す断面図である。
図8】布シェルが示されない本発明の代替的な個人防護システムの斜視図である。
図9図8のシステムのヘルメットの斜視図である。
図10図9のヘルメットと一体の接点を示す図である。
図11図8のシステムのガーメントの顔面シールドの内面を示す図である。
図11A図11の拡大部分を示す図である。
図12図8のシステムのフードへの顔面シールドの離脱可能な取付けを示す断面図である。
図13】本発明の代替的な個人防護システムの電気的構成要素のブロック図である。
図14】メモリがガーメントに取り付けられた本発明の個人防護システムの構成要素のいくつかを図式的に示すブロック図である。
図15】ガーメントと一体のメモリに貯蔵されたデータのいくつかを示す図である。
図16】ガーメントメモリ内のデータに応じていかに制御装置がシステムの操作を調整するかを示すフローチャートである。
図17】本発明の個人防護システムにおけるガーメントの電気的に作動する構成要素とヘルメットの構成要素との間の接続を達成する代替的手段を示す図である。
図18】本発明の他の個人防護システムの特徴部を図式的に示すブロック図である。
図19】本発明の代替的な個人防護システムのヘルメットを示す図である。
図20図19のヘルメットと一体の電気的構成要素のブロック図である。
図21A.21B】ヘルメットに隣接する顔面シールドの存在を検出するための代替的センサを示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[I.基本システム]
本発明の個人防護システム30は、システムを着衣するユーザーの頭に被せられるヘルメット32を備えている。システム30は、ガーメント102も備えている。ガーメント102は、少なくともヘルメット32及びシステムを着衣するユーザーの頭を覆って延在している。ガーメント102は、ユーザーのガーメントによって覆われた部分の周りに防護バリアを形成する。図3に示されるように、ヘルメット内にファン94が配置されている。ファン94は、ガーメント102内の環境をシステム30を着衣するユーザーにとって快適な状態に維持するために、ガーメント102内に空気を引き込むようになっている。
【0029】
図2,3に示されるように、ヘルメット32は、ヘッドバンド34を備えている。名前によって暗示されるように、ヘッドバンド34は、システム30を着衣するユーザーの頭に装着するように設計されている。シェル36が、ヘッドバンド34の上方に配置され、該ヘッドバンドに取り付けられている。シェル36は、個人防護システム30を着衣するユーザーの頭部に適合するように形作られている。シェル36は、リム38を形成するように形作られている。リム38は、シェル36の底部である。リム38は、概して、ヘッドバンド34の高さ又はその上方に位置している。リム38は、システム30を着衣するユーザーの頭の周りに周方向に延在している。図示されるシェル36は、円弧状に形作られたウエブ40を備えている。ウエブ40は、シェルの一部であり、ヘルメット32を被ったユーザーの頭の頂部を超えて延在している。シェル36は、ウエブ40がリム38の互いに向きあった前部分と後部分との間に延在するように、形成されている。シェル36は、リム38から前方に突出する複数のパイロン42を有するように、さらに形成されている。本発明の図示される態様では、3つのパイロン42が設けられている。1つのパイロン42は、リム38の前面の中心から前方に延在している。残りの2つのパイロン42は、中心に位置するパイロン42の両側に位置している。
【0030】
シェル36の多くの部分は、空所を画定するように形成されている。1つの空所は、ウエブ40内に形成された中心空所52である。この中心空洞52は、シェルの前部というよりもむしろ後部の近くに配置されている。シェル36は、ウエブ40がシェル36の頂部に空所52に通じる開口50を有するように、さらに形成されている。シェル36の第2の空所は、前方ダクト54である。前方ダクト54は、中心空所52からシェルリム38の底縁に形成された放出開口56に延在している。放出開口56は、シェル36のパイロン42直下の部分に位置している。
【0031】
シェル36のさらなる空所は、後方ダクト58である、後方ダクト58は、シェル36の後部の中心空所52から後方に延在している。1つ又は複数のノズル62が、シェルの後部に取り付けられている。ノズル62は、シェルリム38から下方にかつシェル36の下方に位置するヘッドバンド34の区域の下方に延在している。後方ダクト58は、ノズル62まで延在している。
【0032】
複数の磁石64が、シェル35に取り付けられている(2つの磁石が図示されている)。1つの磁石64が、各パイロン42に取り付けられている。各磁石62は、基部65及びヘッド66を有するように形成されている、ヘッド66は、基部65よりも大きい直径を有している。図3Aに示されるように、各磁石64は、関連するパイロンに該磁石の基部がパイロン内に埋設されるように取り付けられている。ヘッド66は、パイロン42の外面の前方に延在するように、基部の前方に位置している。磁石64は、磁気的及び電気的に導体の材料から形成されている。本発明の一態様では、磁石64は、ニッケル-銅メッキされたネオジム鉄ボロンから形成されている。
【0033】
ファン94が、シェルの中心空所52内に配置されている。空所52内に配置されたモータ92が、ファン94を回転させるようになっている。ファン94は、作動した時に開口50を通して空気を吸込み、該空気をダクト54、58を通して外方に送り出すように、設計されている。前方ダクト54を通って送り出された空気は、開口56を通して放出される。後方ダクト58を通って送り出された空気は、1つ又は複数のノズル62を通して放出される。
【0034】
図4は、ヘルメット32の電気的構成要素をブロック図で示している。これらの構成要素は、3つの磁石64を含んでいる。導電体82(1つに部番が付されている)が、各磁石64から検出器85に延在している。検出器85は、導電体から検出器に印加される信号の特性を監視する。具体的には、検出器85は、ガーメント102と一体の(後述の)ボタン120,134の1つが押された結果として、導電体82を横切る信号の特性がいつ変化したかを決定する。本発明の一態様では、検出器85は、静電容量の変化の結果としての信号の変化を監視する。具体的には、検出器85は、磁石64a,64b間の信号の特性の変化によって示される静電容量の変化及び磁石64b,64c間の信号の特性の変化によって示される静電容量の変化を監視する。本発明の一態様では、オランダのEindhoven のNXP Semiconductorから市販されているタッチ/近接センサ「PCF8883」が、検出器85として用いられている。
【0035】
検出器85によって出力された信号は、制御装置88に印加される。制御装置88は、バッテリ86からモータ92に通電信号を選択的に印加するように構成されている。さらに具体的には、検出器85によって出力された信号に応じて、制御装置88は、バッテリ86からモータ92に送られる通電信号の特徴を設定する。これによって、空気ファン94は、空気がシステム30を着衣するユーザーによって望まれる割合でガーメントを通って流れる状態が得られるように、作動することになる。
【0036】
バッテリ86は、多くの場合、個人防護システム30を着衣するユーザーの腰の周りに装着されることを理解されたい。図示されず、本発明の一部でもないが、ケーブルがバッテリ86をヘルメット32に接続している。また、図示されず、本発明の一部でもないが、回路基板がシェル36内に配置され、検出器85及び制御装置88は、この回路基板に取り付けられている。
【0037】
図1に戻ると、ガーメント102は、シェル104を備えることを理解されたい。図1において、シェル104の外形は、システム30の他の構成要素が見えるように示されている。シェル104は、ウイルスバリアとして機能することができる柔軟布から形成されている。本発明のいくつかの態様では、シェル104、さらには、ガーメント102の全体は、ヘルメット32並びにシステムを着衣するユーザーの頭部及び肩の上方の部分を覆うことのみを目的として、形作られている。本発明のこれらの態様では、ガーメント102は、フードと呼ばれる、本発明の他の態様では、シェル104は、袖を有するように形成され、少なくとも腰まで延在している。本発明のこれらの態様では、ガーメント102は、トーガと呼ばれる。図示されないが、ガーメントは、通常、シェルが一般的にヘルメットのウエブ40を覆う箇所にフィルタが配置されるように、形成されている。フィルタは、多くの場合、不織布ポリプロピレンである材料から形成されている。
【0038】
着衣者の頭に適合するように形作られたシェルの部分は、開口106を有するように形成されている。柔軟な透明の顔面シールド110が、開口106を覆って固定されている。本発明のいくつかの態様では、顔面シールド110は、ポリカーボネートから形成されている。1つのこのようなポリカーボネートは、Sabic によってLEXANの商標の下で市販されている。顔面シールドは、シート状構造を有し、典型的には、1mm以下の厚みを有している。顔面シールド110は、その外周が開口106を囲むシェル104の内面に重なるように、開口に固定されている。図1において、開口は、顔面シールドの底周辺部分及び右周辺部分の上の破線によって表されている。高粘着ゴム接着剤を用いて、顔面シールド110をシェルに固定するようになっている。
【0039】
図5,5A,6に示されるように、顔面シールド110は、中心開口114及び2つの側開口116が顔面シールドの上端の下方に位置するように、形成されている。ガーメント102は、顔面シールド開口114を中心磁石64bと真っ直ぐに並ぶように配置し、次いで、顔面シールドをヘルメット32のリム38の周りに曲げた時、側開口116の各々が側磁石64a,64cの1つと真っ直ぐに並ぶように、形成されている。
【0040】
手で作動可能な2つのボタン120,134が顔面シールド110上に形成されている。ボタン120,134は、顔面シールドの片側に位置している。ボタン120,134は、顔面シールド110の内面に形成された導電トレースからなっている。導電トレースは、黒鉛基又は銀基インクから形成され、1mm以下、さらに好ましくは、0.5mm以下の厚みを有しているとよい。ボタン120,134は、顔面シールド110がシェル104に取り付けられる箇所の内方に位置している。ボタン120は、顔面シールド110の内面に形成された導電性の円形ディスク122を備えている。ボタン120は、ディスクを部分的に包囲する導電性のリング126も備えている。リング126は、ディスクの周りに少なくとも180°延在する円弧を画定している。ディスク122及びリング126は、協働して、親指又は他の指がボタン120が形成された顔面シールドの区域に接触した時、これらの構成要素を横切る信号の変化が生じるように形成されており、この信号の変化が検出器85によって検知可能になっている。
【0041】
本発明の前述の態様で述べたように、検出器85は、静電容量の変化を測定する。従って、本発明のこの態様では、検出器85は、ディスク122及びリング126を通る信号を印加する。検出器85は、この信号の特性の変化を監視する。本発明のこの態様では、親指又は他の指の存在が、ディスク122とリング126との間の誘電特性を変化させる。本発明のこれらの態様では、ディスク122は、10mmから20mmの間の直径を有しているとよい。リング126は、ディスク122の外周から1mmから5mm離間しているとよい。リングを形成する導電材料は、1mmから5mmの左右方向の幅を有しているとよい。
【0042】
ボタン134は、ディスク122と同様のディスク136を備えている。リング126と同様のリング142が、少なくとも部分的にディスク136を包囲している。従って、ボタン134は、ボタン120と同様に機能する。親指又は他の指がボタン134が形成された顔面シールド110の区域に置かれると、ディスク136及びリング142を横切る静電容量の変化が生じる。
【0043】
また、複数の導電体124,128,144が、顔面シールド110の内面に形成されている。導電体124,128,144及び(後述の)リング125,130,146は、ボタン120,134を形成する同一の導電トレースの一部である。導電体124は、ディスク122から延在している。この導電体は、顔面シールドの側部に沿って上方に延在している。顔面シールドの上端において、導電体124は、顔面シールドの中心に向かって延在している。導電体124は、顔面シールドの内側に形成された導電リング125で終端している。リング125は、開口116の1つを形成する顔面シールドの部分の周りに形成されている。リング126,142は、いずれも第2の導電体128に接続されている。導電体128は、導電体124の経路と本質的に平行の経路に沿ってシールドの内面に沿って延在している。導電体128は、顔面シールドの内面に形成されたリング130まで延在している。リング130は、開口114を画定する顔面シールドの部分の周りに延在している。第3の導電体144は、ディスク136から延在している。導電体144は、導電体124,128の経路と平行の経路に沿って延在している。導電体144は、リング130と同じようにリング146で終端している。リング146は、第2の開口116の周りに配置されている。
【0044】
また、3つの磁石148a,148b,148cが、顔面シールド110に取り付けられている。磁石148a,148b,148cは、磁石64と同一材料から形成されているとよく、かつ同一又は同様の形状を有しているとよい。各磁石148a,148b,148cの基部が、開口114又は116の1つに取り付けられている。磁石148は、各磁石のヘッドが顔面シールドの内面から内方に延在するように、顔面シールド110に取り付けられている。磁石148aは、リング125の1つと電気的に接触している。磁石148bは、リング130と電気的に接触している。磁石148cは、リング146と電気的に接触している。
【0045】
ユーザーは、最初、ヘルメット32を頭に被ることによって、本発明の個人防護システム30の使用のための準備を行う。必要に応じて、バッテリ86がヘルメットに接続される。次いで、ガーメント102がヘルメット32及び少なくともユーザーの頭を覆って配置される。ここでも、トーガ式態様のガーメント102の場合、このガーメントは、腕を覆って少なくとも腰まで延びることになる。ガーメントをユーザーに装着するプロセスの一部として、顔面シールドがシェルのリム36の前部の周りに曲げられる。ガーメント110は、ガーメント磁石148a,148b、148cをそれぞれ相補的なヘルメット磁石64a,64b,64cに対して押圧することによって、ヘルメットに離脱可能に固定される。
【0046】
磁石64a,64b,64c及び148a,148b,148cが互いに接触して配置され、かつこれらが磁性材料から作製されていることによって、互いに当接する各磁石対間に電気接続が生じる。図7は、1対の磁石、任意選択的に、磁石64c,148cの係合を示している。これは、ガーメント102がヘルメットに離脱可能に取り付けられた結果として、ボタン120,134から導電体124,128,144、磁石148,64、及び導電体82を介して、検出器85に至る電気接続が達成されたことを意味している。
【0047】
従って、ユーザーは、ボタン120,134を押すことによって、システム30の操作を制御することができる。本発明のこの態様では、ユーザーは、ボタン120に接触することによって、モータ/ファン速度を低下させ、ボタン134に接触することによって、モータ/ファン速度を増大させることができる。ユーザーは、ファン94の速度を増大させることを望んだ時、指をボタンの1つ、任意選択的に、ボタン120に向かって移動させる。ボタン120のディスク122及びリング126が形成された顔面シールド110の区域上の指の存在が、ディスク122とリング126との間の誘電率の特性を変化させる。これによって、ボタン120の静電容量が変化する。ここでも、検出器85は、ボタン120,134の各々を形成する導電性のディスク及びリングを横切る信号の特性の変化を連続的に監視している。ボタン120を形成する顔面シールド110の区域に指が置かれた結果として静電容量が変化した時、このボタンを形成するディスク122及びリング126を横切る信号の特性の変化が生じる。この信号変化が生じたことを検知したことに応じて、検出器85は、この信号が生じたことを示す信号を制御装置88に出力する。制御装置88は、この信号をユーザーがファン94の速度、実際には、モータ92の速度の増大を望んでいる表示として解釈する。これによって、制御装置88は、モータ、従って、ファン94をより高い回転数で回転させるために、モータ92に印加させる通電信号の特性を再設定することになる。
【0048】
本発明のこの態様では、ユーザーは、ボタン134が形成された顔面シールドの区域の近傍に指を置くことによって、ファン速度を低下させるようになっている。ボタン132のディスク136及びリング142を横切る静電容量の変化は、検出器85によって、モータ92の速度を低下させるべきという表示として解釈されることになる。
【0049】
本発明のシステム30を用いるユーザーは、システム状態の設定を望む時、適切なボタン120又は134を形成する顔面シールドの区域を押圧する。ユーザーは、ガーメントの布部分を押圧する必要がない。換言すれば、システム状態を変化させるために、ガーメントの非多孔性構成要素、すなわち、顔面シールド110に指を置くことになる。ユーザーは、システム状態を変化させるために、ボタンに指を押し込むことによって液体がガーメントの多孔性部分内に浸透することを心配する必要がない。この心配の排除によって、ユーザーは、ボタンを押し込む箇所を覆う体の一部に体液が付着している時にボタンを作動させねばならないという嫌気を同様に排除することができる。
【0050】
本発明の多くの態様では、信号検出器85が各ボタンを横切る信号を印加する結果として、ボタンを横切って100mW未満の電力消費が生じる。ボタンを横切る電流は、50mAmp未満である。その結果、ボタンを横切る信号が比較的低電力であることを考えると、典型的には、ボタン120,134又はボタンに向かって延在する導電体124,128,144のいずれかを覆う絶縁層を向ける必要がない。この絶縁層を設ける必要がないことによって得られる1つの利得は、この層を設けるためのコストが回避されることである。この絶縁層を設ける必要がないことによる他の利点は、この層が顔面シールドに追加的な視覚的不連続部を加えることである。顔面シールドは、理想的には、完全に透明であるべきであることを理解されたい。顔面シールドと一体の視覚的不連続部を最小限に抑えることによって、これらの不連続部が個人防護システムを着衣するユーザー又は個人防護システムを着衣するユーザーを見る他の関係者の注意散漫の程度を最小限に抑えることができる。
【0051】
[II.第1の代替システム]
図8は、本発明の代替システム178を示している。システム178は、ヘルメット180及びガーメント236を備えている。ここでも、システム178の他の構成要素が見えるように、ガーメント236のシェル238は、輪郭線によってのみ示されている。
【0052】
図9に示されるように、ヘルメット180は、ヘッドバンド182を備えている。シェル184は、ヘッドバンド182によって支持され、ヘッドバンド182の上方に位置している。前述のモータ92及びファン94からなるサブアセンブリが、シェル184内に配置されている。前方ベローズ186が、シェル184から前方に延在している。前方ベローズ186は、前方ノズル188まで延在している。前方ノズル188は、ヘッドバンド182の前部に取り付けられている。後方ベローズ218は、シェル184の後部から延在している。後方ベローズは、後方ノズル220まで延在している。後方ノズル220は、ヘッドバンド182の後部に取り付けられている。ヘルメット180を備えるシステムが作動すると、ファンは、空気をガーメントを通してシェル184の頂部内に吸い込むことになる。空気は、前方ベローズ186及び後方ベローズ218のそれぞれを通って放出される。前方ベローズ186を通って流れる空気は、システムを着衣するユーザーの顔の前に排出される。後方ベローズ218を通って流れる空気は、後方ノズル220を通って排出される。後方ノズル220は、ヘッドバンド182の下方に開くように位置決めされている。後方ノズル220から排出された空気は、システムを着衣するユーザーの首の後部に対して排出される。
【0053】
ヘルメット180の前方ノズル188は、ブロック185を備えている。ブロック185は、ヘッドバンド182に取り付けられるノズル188の一部であるか又はヘッドバンドと一体のヘルメット180の構成要素である。本発明の図示される態様では、ブロック185は、ヘッドバンド182の一部であるストラップ183に取り付けられている。
【0054】
また、前方ノズル188は、タブ216を有するように形成されている。タブ216は、ノズルの前縁から上方に突出している。図10,12に示されるように、ブロック190が、前方ノズル188の上面から外方に突出している。ブロック190は、タブ216の後面から後方に離間している。図10において、ブロックの下のタブ216の基部が断面で示されており、これによって、ブロック190及びタブの背後の関連する構成要素が見えている。ブロック190の前面は、3つの長孔192を有するように形成されている。接点198が、長孔192の各々内に配置されている。各接点198は、導電性の柔軟な金属帯片の形態にある。接点198は、外方に湾曲している。さらに詳細には、接点は、ブロック190の前方に延びるように形成されている。典型的には、ヘルメット180は、ガーメントがヘルメットを覆って配置されていない時、接点がタブ216の後面に当接するように、形成されている。図示されないが、本発明のいくつかの態様では、フレームからなるプレート及び一連のウエブがブロック190を覆って配置されている。フレームは、接点198を長孔192内に保持するように構成されている。
【0055】
ヘルメット180は、本発明の第1の実施形態に関して述べた検出器85及び制御装置88を備えている。図示されないが、本発明のこの態様では、導電体82と同様の導電体が各接点198を検出器85に接続していることを理解されたい。
【0056】
ヘルメット180は、ヘッドバンド182の前部から下方に延在する顎バー224を備えている。顎バー224は、ヘッドバンド182の両側から延在する2つのポスト226を備えている。ビーム228が、ポスト226の互いに向き合う自由端間に延在している。顎バー224は、ビーム228がシステム178を着衣するユーザーの顎の下及び顎のいくらか前方に位置するように、形成されている。ビーム228は、ポスト226の端から外方に湾曲している。2つの磁石234(1つが図示されている)が、顎バー224に取り付けられている。各磁石234は、顎バー224のビーム228の外端に隣接して位置している。
【0057】
顔面シールド240は、ガーメント236のシェル238に形成された(部番が付されていない)開口に取り付けられる。顔面シールド240は、図11に示されるように、前述のシールド110と同じ一般形状を有している。顔面シールド240は、ガーメント236のシェル238に形成された開口に取り付けられる。顔面シールド240は、顔面シールドの上端部の下方に矩形状の開口242が位置するように、さらに形成されている。開口242は、ヘルメット180と一体のタブ216を受け入れるように形作られている。2つの磁石246が、顔面シールド240の内面から内方に延在するように、顔面シールド240に取り付けられている。本発明のこの態様の構成要素は、ヘルメットタブ216が顔面シールド開口242内に着座し、顔面シールド240が顎バー224の周りに曲げられた時、顔面シールド磁石246の各々が磁石234の相補的な1つに当接しかつ係止するように、協働して形成されている。
【0058】
前述のボタン120,134は、顔面シールドの内面に形成されている。部番が付されていないが、ディスク122及びリング126がボタン120を形成し、ディスク136及びリング142がボタン134を形成している。導電体124に類似しており、略同一の形状を有する導電体252が、ディスク122から延在している。導電体128に類似しており、略同一の形状を有する導電体254が、リング126,142から延在している。導電体144に類似しており、略同一の形状を有する導電体256が、ディスク136から延在している。導電体252,254,256は、以下の点、すなわち、導電体252,254,256の各々が開口242の周辺を画定する顔面シールドの部分を覆って位置する終端部を有する点において、導電体124,128,144と異なっている。図11Aに示されるように、導電体252の終端部は、開口242の右側の上周辺部分を画定する顔面シールドの区域を覆って終端している。導電体254は、開口242の中心の上部分を画定する顔面シールドの区域を覆って終端している。導電体256の終端部は、開口242の左側の上周辺部分を画定する顔面シールドの区域を覆って終端している。
【0059】
システムのこの態様を形成する構成要素は、ヘルメットタブが顔面シールド開口242内に完全に着座した時、導電体252,254,256の各1つの終端部が接点198の各1つと真っ直ぐに並ぶように、協働して構成されている。
【0060】
システム178を用いるために、最初、ヘルメット180がユーザーの頭に被せられる。ガーメント236は、当初、ユーザーの顔の上方に配置される。さらに具体的には、ガーメントは、ガーメントが顔の方に向けられた時にヘルメットと一体のタブ216が顔面シールドの開口242内に着座するように、位置決めされる。顔面シールドが下方にさらに向けられ、ブロック190とタブ216との間の空間内に押し込まれると、その結果として、各導電体252,254,256の終端部が、ヘルメット180と一体の関連する接点198に物理的に接触することになる。図12は、1つの導電体、任意選択的に、導電体254がいかに関連する接点198に当接するかを示している。
【0061】
いったん顔面シールド240がタブ216を覆って着座したなら、ガーメントシェル238が、(システムが覆うことを意図する)ヘルメット180及びユーザーの生体構造の部分の周りに拡げられる。また、顔面シールド240は、ヘルメットの周りに曲げられる。さらに具体的には、顔面シールド240は、顔面シールドと一体の磁石246の各1つがヘルメット180と一体の相補的磁石236と離脱可能に係合するように曲げられる。磁石236,246がこのように係合した結果として、顔面シールド240は、ユーザーの頭の周りに左右方向に湾曲した形状を呈することになる。顔面シールドの形状をこのように湾曲させることによって、システムを着衣するユーザーの顔面シールド外の視野を増大させることができる。顔面シールドの下側部分の湾曲は、顔面シールドのこの区域と顎バー224と一体のビーム228との当接によって制限される。
【0062】
導電体252,254,256と接点198との係合によって、ボタン120,134と検出器85との間に電気接続が達成されることを理解されたい。電気的に、システムのこの態様は、システムの第1の態様と同じように機能する。もしユーザーがファン速度を制御することを望んだなら、ユーザーは、適切なボタン120又は134を押す。この動作によって生じた静電容量の変化に応じて、検出器85は、適切な信号を制御装置に送信する。次いで、制御装置88は、ボタンが押されたことに基づいてモータの速度を調整することになる。
【0063】
本発明のこのシステム178のさらなる利得は、2つの機能、すなわち、ヘルメットに対する顔面シールドの物理的な固定及び電気的な接続を果たすのに必要な構成要素をもたらす費用が削減されることにある。また、システム178は、ヘルメット180に対する顔面シールド240の芯出しを簡素化する。
【0064】
[II.第2の代替システム]
図13は、顔面シールドに取り付けられた3つの制御ボタン120,134,262,264と共に本発明の電気的構成要素を示している。図13において、ボタン120,134,262,264は、顔面シールドの両側に配置されている。図示されないが、ヘルメット及び顔面シールド240と一体のそれぞれの接点が、ボタンを検出器85aに接続している。本発明のこの態様では、ヘルメットは、ファンモータ92に加えて、光源266、通信ユニット268、及び冷却ストリップ272を有している。光源266は、通常、光のビームを顔面シールド240の外に放出するようにヘルメットに取り付けられている。通信ユニット268は、RF送受信機であるとよい。代替的に、通信ユニット268は、スピーカ付きの増幅器を備えていてもよい。いずれにしても、通信ユニットは、典型的には、ヘルメット取付け型のマイクロフォン267を備えている。このマイクロフォン267は、通常、顎バーに取り付けられている。冷却ストリップ272は、通常、個人防護システムの着衣者の皮膚から熱を逃がすことができる構成要素からなっている。このような1つのストリップは、米国仮特許出願第62/221,266号に開示されている。この文献の内容は、参照することによって、ここに含まれるものとする。本発明のこの態様における制御装置88aは、システムのこれらのサブアセンブリ92,266,268,272の各々の操作状態を調整するようになっている。
【0065】
本発明のこの態様では、ボタン120,134,262、264の各1つを用いて、システムの電動サブアセンブリ92,266,268,272の各1つの操作状態を調整するようになっている。任意選択的に、制御装置88aは、ボンタン120が押されたことを示す信号を受信した時、ファンモータ92の速度を増大させる。ファンモータ92が最高速度で回転している時にボタン120が押された時、制御装置88aは、モータ02が最低速度で回転するようにモータ92に印加される通電信号を再設定する。ボタン134の押下に基づき、制御装置88aは、光源266をオン/オフ操作する。ボタン262が押されたかどうかに基づき、制御装置は、通信ユニット268と一体の送受信機又は増幅器をオン/オフ操作する。ボタン264の押下に基づき、制御装置は、冷却ストリップ272の放熱能力を設定するために、該ストリップ272の能動構成要素を横切る電圧レベルを設定する。
【0066】
このように、本発明のシステムのボタンは、ファンモータ以外の個人防護システムの電気的能動構成要素を制御するために用いられてもよいことを理解されたい。同様に、本発明のいくつかの態様では、ヘルメットと一体の電動アセンブリの種類によっては、該アセンブリを制御するために、顔面シールド上に単一のボタンしか設けなくてもよいこともある。
【0067】
[IV.第3の代替システム]
図14は、ガーメント取付型メモリ292がいかに本発明の個人防護システム290に設けられるかを示している。図14は、システム290の電気的構成要素を示している。これらの構成要素は、本発明のこの代替的ヘルメット及びガーメントのみならず、前述のシステム30,178のヘルメット及びガーメントに取り付けられてもよいことを理解されたい。システム290は、(図示されない)ガーメントに固定される前述の顔面シールド110を備えている。単一のボタン120が、顔面シールド上に形成されている。
【0068】
顔面シールド110に、メモリー292も取り付けられている。メモリ292は、システム290の操作を調整するために有用なデータを貯蔵している。図15は、メモリ292に貯蔵されたデータの種類を示している。顔面シールドが関連するガーメントの種類を識別するデータが、領域302に含まれている。領域304は、最小ファン速度を表すデータを含んでいる。フラグ領域306は、いくつかの種類の電気的能動構成素をこの特定のヘルメットと共に用いることが適切であるかどうかを示すように設定されるフラグを含んでいる。例えば、いくつかのヘルメットが紫外光を放射する光アセンブリを備えることが知られている。一方、ガーメントのなかには、紫外光の透過が適切でない顔面シールドを備えるものがある。この種のガーメントでは、領域内のフラグの1つが、もしヘルメットが紫外線光源を含んでいたなら、このガーメントが該ヘルメットを覆って配置された場合に光源が作動されるべきではないことを示すように、設定されるとよい。
【0069】
メモリ292は、使用履歴領域308も備えている。使用履歴領域は、メモリが一体化されたガーメントがすでに使用されたことがあるかどうかを示すデータを含んでいる。使用履歴領域308は、単一ビットのフラグ領域であるとよい。ガーメントの製造時に、データは、メモリ領域の各々に実装される。使用履歴領域308内のデータは、ガーメントが使用されていないことを示すように、設定されている。
【0070】
メモリ292は、顔面シールド110の内面に接着によって固定された薄膜メモリラベルであるとよい。図14において、メモリ292を接点、任意選択的に、接点148aに接続する単一の導電体294が示されている。本発明のいくつかの態様では、メモリと一体の複数のピンを経てメモリ292に対する読取/書込を行う必要があることを理解されたい。本発明のこれらの態様では、各メモリピンが接点に接続されることを確実にするために、顔面シールドに十分な数の接点をもたらす必要がある。
【0071】
システム290のヘルメットは、電気接点として機能する前述の磁石64、検出器85、及び制御装置88を備えている。システム290は、ファンモータ92のみを有するものとして示されている。システム290は、他の電気的能動構成要素を有してもよいことを理解されたい。システム290のヘルメットは、メモリインターフェイス312も備えている。メモリインターフェイス312は、メモリ292からデータを読み取り、かつメモリ292にデータを書き込むように構成されている。メモリインターフェイス312は、制御装置88に接続されている。制御装置88からの指示に基づき、メモリリーダー88がメモリ内のデータを読み取り、これらのデータを制御装置に送信する。また、制御装置88からの指示に基づき、メモリリーダーがメモリ292にデータを書き込む。データの書込は、通常、使用履歴領域308へのフラッグの設定である。
【0072】
本発明のシステム290は、アラーム314も備えている。アラーム314は、典型的には、短い可聴破裂音を放出することができる装置である。制御装置88は、アラームを選択的に作動させるためにアラームに接続されている。
【0073】
システム290において、メモリ292をヘルメットと一体の相補的な磁石64に接続する構成要素は、磁石148a,148bである。
【0074】
本発明のシステム290は、本発明の個人防護システムの他の態様におけるのと同じように使用のための準備が行われる。ヘルメットが、ユーザーの頭を覆って装着される。ガーメントが、ヘルメット及び頭を覆って装着される。ガーメントが頭を覆って装着された結果として、ヘルメット及び顔面シールドと一体のそれぞれの接点が、ボタン120と検出器85との間に電気接続を達成する。これらの接点は、ガーメントと一体メモリ292とメモリインターフェイス312との間にも電気接続を達成する。
【0075】
図16は、制御装置88によって実行されるプロセスステップのフローチャートを示している。これらのプロセスステップは、システム290の使用の準備が整えられ、制御装置88が作動した後に生じる(制御装置の作動ステップは、図示されていない)。ステップ322は、制御装置88によってメモリ292内のデータを最初に読み込むことを示している。明示的に示されていないが、ステップ322の一部として、メモリ292が存在するかどうかを決定するために、最初、メモリインターフェイス312による尋問信号が出力される。もしメモリが検出されなかったなら、メモリリーダーは、この事実を示す通知を制御装置88に送信する。この通知を受信した制御装置88は、アラーム314を作動させる。アラーム314の作動は、ガーメントがメモリを有していないか又はメモリ292がメモリリーダー312に確実に接続されるようにガーメントがヘルメットに装着される必要があるかのいずれかを示す通知をもたらすことになる。
【0076】
メモリインターフェイスが、ステップ322においてメモリ292内のデータを十分に読み取り、これらのデータを制御装置88に送信したなら、ステップ324において、制御装置によるこれらのデータの解析が行われる。ステップ324において、ガーメントがヘルメットと共に用いられるのに適しているかどうかを決定するために、データが評価される。ステップ324において、ガーメント識別領域302内のデータに基づき、制御装置88は、ガーメントがヘルメットに適合しているかどうかを決定する。使用履歴領域308内のデータに基づき、制御装置88は、ガーメントがすでに使用されたものであるかどうかを決定する。もしこの評価試験が肯定されたなら、ガーメントは、もはや無菌ではなく、使用に適していないと見なされる。
【0077】
ステップ326は、ステップ324の評価に基づき、制御装置88がガーメントが使用に適していないと決定することを示している。ガーメントが使用に適しない理由として、シェル又はフィルタを形成する材料の性質によって、ファンがガーメント内に十分な空気を引き込むことができないこと、ガーメントの特徴がヘルメットの特徴と適合しないこと、又は使用履歴領域内のデータがガーメントがすでに使用されていることを示すことが挙げられる。理由とは無関係に、もしステップ326の一部として、ガーメントがヘルメットと共に用いられるべきではないと決定されたなら、ステップ330において、制御装置88は、アラーム314を作動させる。
【0078】
多くの場合、ステップ326の評価は、ガーメントがヘルメットとの使用に適合することを示すことが予期される。この場合、制御装置88は、プロセスを進め、ステップ332を実行する。
【0079】
本発明の多くの態様では、制御装置88は、ステップ330が実行された後もステップ332をさらに実行する。何故なら、本発明のこれらの態様では、システムは、ガーメントが使用に適さないという通知のみを与えるように構成されており、該ガーメントの使用を禁止するものではないからである。代替的に、システム290は、もしガーメントが使用に適しないなら、システムの操作を許容しないように構成されてもよい。本発明のこれらの態様では、制御装置88は、アラームが作動された後、どのようなさらなる操作も行わない。
【0080】
ステップ332では、制御装置88及びメモリインターフェイス312は、ガーメントが使用されると見なされるべきであることを示すデータをガーメントメモリ292に書き込む。本発明の記載される態様では、ステップ332において、メモリインターフェイス312は、メモリ292の使用履歴領域内に適切なフラッグを設定することによって、このプロセスを実行する。
【0081】
ステップ334において、制御装置88は、ヘルメットを特定のガーメントと共に用いるように設定する。本発明の記載される態様では、ステップ334は、ファンモータの最低速度の基本信号を最低ファン速度領域304においてに特定された速度に設定することによって、このプロセスを実行する。従って、もしガーメントが比較的多孔性のろ過材料から構成されていたなら、領域304内のデータは、最低ファン速度が比較的低いことを示すことになる。他のガーメントが、相対的に低多孔性のろ過材料から構成されることがある。システムがこのガーメントを用いて機能する場合、最低ファン速度は、より多孔性のろ過材料から構成されたガーメントがヘルメットに装着される時よりも高速度に設定されることになる。このガーメントに対して、領域304は、この事実を示すデータを含んでいる。
【0082】
本発明のいくつかの態様では、ステップ334の一部として,制御装置88がモータ92を作動させる。
【0083】
本発明のシステム290の1つの利得は、制御装置88及びアラーム314が、もしシステムをヘルメットを覆って装着された特定のガーメントと共に用いることが適していなかったなら、その通知をもたらすように構成されていることにある。
【0084】
システム290のさらなる利得は、ガーメントと一体のメモリに基づき、制御装置は、ガーメントと共に用いられるようにシステムを設定することにある。この制御は、ファンモータの最低速度の設定を含んでいる。代替的に、もし光源が可変強度の光源を放射することが可能なら、この制御は、光源が透過する顔面シールドの材料特性に基づく放射される光の最小、最大、及び/又は目標強度の設定を含むことができる。
【0085】
[V.代替接点]
本発明は、ボタンから延在する導電体が顔面シールドをヘルメットに離脱可能に保持する1つ又は複数の固定特徴部に延在するようになっている個人防護システムに制限されるものではない。典型的には、制限されるものではないが、導電体は、顔面シールドの以下の位置、すなわち、顔面シールドがヘルメットに固定された時に顔面シールドと一体の相補的接点に対して位置決めされる位置まで少なくとも延在していればよい。この設計の特徴によって、顔面シールドがヘルメットに取外し可能に取り付けられる結果として、1つ又は複数のボタンとヘルメットと一体の電気的構成要素との間に電気接続が達成されることが確実になる。
【0086】
顔面シールド導電体が固定特徴部で終端しない本発明の態様では、相補的ヘルメット接点は、顔面シールド固定特徴部と係合するヘルメット固定特徴部と一体でなくてもよいし、又は隣接していなくてもよいことを理解されたい。例えば、顔面シールド導電体が顔面シールド固定特徴部から離間した位置で終端する場合、ヘルメット接点は、バネ付勢接点又はポゴピン状接点とすることができる。これらの接点の各々は、顔面シールドが適所にある時、該接点の導電ピンが適切な顔面シールド導電体に当接するように位置決めされることになる。
【0087】
本発明の全ての態様において、必ずしも、顔面シールド固定特徴部は、顔面シールド導電体のための導電接点としても機能するようになっている必要がない。しかし、顔面シールド導電体のための導電接点として機能する顔面シールド固定特徴部は、多くの場合、本発明の好ましい構成をなすと考えられる。この目的から、顔面シールド固定特徴部と見なされる例として、相補的なヘルメット固定特徴部を受け入れるための開口を画定する顔面シールドの区域は、顔面シールド固定特徴部と考えられる。具体的には、図11Aの開口242を画定する顔面シールド240の区域は、本発明の目的から、顔面シールド固定特徴部と考えられることを理解されたい。
【0088】
導電性でもある固定特徴部は、磁石及び顔面シールドの区域を画定する開口に制限されるものではない。1つの代替的な二重機能固定アセンブリは、面ファスナー式固定アセンブリの2つの構成要素からなっており、この場合、このアセンブリの両方の構成要素がいずれも導電性である。他の二重機能アセンブリは、2対のコネクタからなる端末構成要素である。1つのコネクタは、磁石及び接点を備えている。第2のコネクタは、磁場に吸引される金属及び第2の接点からなっている。これらのコネクタは、磁石に対する固有のラッチング效果によって、接点同士の当接が生じるように構成されている。他の形式の導電性固定特徴部として、導電スナップが挙げられる。
【0089】
固定特徴部が磁気吸引に依存する本発明の態様では、ヘルメット及びガーメント顔面シールドの両方が、必ずしも、導電性を有すると共に磁場を放出する固定特徴部である必要がない。従って、本発明のいくつかの態様では、ヘルメット又は顔面シールドの一方のみが、(固定具及び導電体として機能する)導電磁石を備えている。顔面シールド又はヘルメットの他方は、相補的な固定具かつ導電接点として機能する前述のディスク149を備えている。
【0090】
本発明の接点、すなわち、信号を該接点とガーメントに取り付けられたボタン及び/又はメモリとの間に伝達させる接点は、信号を電子流の物理的伝達によって送信する構成要素に制限されるものではない。本発明の目的から、ヘルメット接点及びガーメント接点は、ガーメントに取り付けられた構成要素及びヘルメットに取り付けられた構成要素からの信号の電磁誘導伝送を容易にする構成要素と考えることもできる。
【0091】
1つのこのようなアセンブリが、図17に示されている。ここでは、主コイル354がヘルメットに取り付けられている。信号が、ヘルメットの一部でもある一定周波数のAC電圧源352から主コイルに印加される。主コイル354に隣接しているには、再生コイル358である。検出器360が、再生コイルを横切る信号の特性を監視するようになっている。検出器360は、再生コイル358を横切る信号の特定の変化を検知した時、この変化が検出されたことを示す信号を制御装置88に出力するように構成されている。
【0092】
本発明のこの態様では、二次コイル370は、顔面シールド110上に配置されている。二次コイル370は、ガーメントがヘルメットに固定された時、二次コイルがヘルメットの主コイル354及び再生コイル358の両方との間で信号を誘導的に交換するように、位置決めされている。導電体372が、二次コイルの両端をボタンに接続している。図示されないが、1つの導電体372がボタン120のディスク122に接続されるとよいことを理解されたい。第2の導電体が、ボタン120のリング126に接続されることになる。
【0093】
本発明の個人防護システムのこの態様が操作されている時、電圧源352は、AC信号を主コイル354を横切って印加する。コイル354,358,370の近接によって、コイル354を横切る信号は、コイル370を横切る信号を誘導する。従って、ボタン120を形成するディスク122及びリング126を横切る信号が生じることになる。
【0094】
ユーザーは、本発明の他の態様におけるボタン作動と同じように、ボタンが形成されている顔面シールドの区域に親指又は他の指を置くことによって、ボタン120を作動させる。この指の存在によって、ボタンを形成するディスク122及びリング126を横切る静電容量が変化する。その結果として、コイル370を横切る信号の特性が変化する。検出器360は、この変化の検知に応じて、ボタンが押されたことを示す信号を制御装置88に送信する。次いで、制御装置88が、ボタン120の作動に基づいて適切な電動アセンブリ、ここでは、ファン92の操作状態を再設定することになる。
【0095】
接点が誘導信号伝達を可能にするように設計されている本発明の態様では、顔面シールドに取り付けられるメモリは、RFIDタグであるとよい。この種のメモリが存在する時、顔面シールド接点は、顔面シールドに取り付けられたメモリと一体のアンテナである。ヘルメット接点は、タグアンテナによって誘導信号交換に関するヘルメットと一体のコイルである。
【0096】
[VI.オン/オフ制御システム]
図16のステップ334に関して前述したように、本発明の個人防護システムは、ガーメントがヘルメットに取り付けられた後でのみ、制御装置88がモータ92、従って、ファン94の作動を生じさせる信号を出力するように構成されているとよい。これによって、ヘルメットへのガーメントの配置前に作動するファンを備える個人防護システムに付随する欠点をなくすことができる。このように排除されるべき1つの欠点は、ファン94が有用な目的を果たさない時にファン84によって騒音が生じることである。ファン94の使用が必要でない時に回転するモータ92に付随する第2の欠点は、モータによるバッテリ86の電荷の消耗である。
【0097】
従って、図16に関して述べたプロセスにおいて、システムは、バッテリ86から引き出される異なる電流による2つの状態で操作されることを理解されたい。当初、システムが作動される時に、比較的低電流が引き出される。さらに具体的には、この時に引き出されるのは、制御装置88及び関連する入出力構成要素、すなわち、検出器85及びメモリインターフェイス312を作動させるのに必要な電流のみである。適切なガーメントがヘルメットを覆って装着された時にのみファンが作動される。システムがこの操作状態に移行した時により高い電流がバッテリ86から引き出されることを理解されたい。
【0098】
本発明のシステムの他の態様では、ガーメントがヘルメットに装着された時にのみファン94を作動させるためにモータ92が回転することを確実にするための異なるサブアセンブリが設けられてもよい。本発明のこのような1つの構成では、システムは、制御装置88が最初に作動した時にファンの作動をもたらす指令信号を出力しないように、構成されている。制御装置は、ボタン120又は134の1つが押されたことを示す信号を検出器85から受信した時にのみ、ファンを作動させるようになっている。
【0099】
図18は、本発明の代替システム390の構成要素を示している。システム390は、図4のシステムの変更例である。システム390は、単一のボタン120が設けられるように構成されている。第2のボタンに代わって、システム390は、導電体392が顔面シールド110上に配置されるように構成されている。導電体392が、磁石148b,148c間に延在している。本発明のこれらの態様では、検出器85は、これらの磁石を横切る開回路/閉回路の存在を検出するために磁石64b,64cを監視するように構成されている。従って、本発明のこれらの態様では、検出器85は、磁石64bを横切る信号を出力することになる。
【0100】
システム390のヘルメットが最初ユーザーの頭に装着され、かつ作動された時、検出器85及び制御装置88のみが作動する。開回路が磁石64b,64cを横切って存在しているので、検出器85は、これがシステム390の状態であることを示す信号を制御装置に出力する。従って、制御装置88は、ファンモータ92を通電する制御信号を出力しないことになる。
【0101】
ガーメントがヘルメットに装着されると、ガーメントの顔面シールドと一体の導電体392が磁石64b,64c間の接続を閉じることになる。検出器85が、これらの2つの磁石64b,64c間の回路の閉鎖を検知する。回路状態のこの変化の検出に応じて、検出器は、システムがこの状態にあることを示す信号を制御装置88に送信する。この信号が制御装置88によって受信された時にのみ、制御装置88は、ファンモータ92への通電信号の印加をもたらす指令信号を出力することになる。
【0102】
本発明のこの態様では、ヘルメットからのガーメントの取外しによって、磁石64b,64c間の回路が再び開放されることを理解されたい。この回路の再開放の検出に応じて、検出器は、システムがこの状態にあることを通知する信号を制御装置88に出力する。制御装置88は、システム390がガーメント離脱状態に戻ったことを示す通知を受信したことに応じて、ファンモータ92への通電信号の印加を終了させる。従って、本発明のシステムのこれらの構成のさらなる特徴は、ガーメントがヘルメットから外され、ファンモータ92の使用がもはや必要とされない時に、ファンが自動的に停止することにある。
【0103】
ガーメントの存否を検出する他の手段が、図19,20に示されている。図19は、前述のヘルメット32に基づくヘルメット32aの一部を示している。ヘルメット32aは、固定具としての磁石を有する代わりに、導電性であると共に磁場に吸引される固定具402a,402b,402cを有する点において、ヘルメット32と部分的に異なっている。固定具402bに隣接して、センサ404が配置されている。センサ404は、磁場の存否に基づいて状態が変化する信号を出力する。センサ404は、ホール效果センサとすることができる。本発明のいくつかの態様では、センサ404は、スイッチである。このスイッチの開閉状態は、磁場の存否の関数であることを理解されたい。センサ404は、シェル36の内側に取り付けられている。これが、図19においてセンサ404が想像線によって示されている理由である。
【0104】
センサ404によって出力された信号が、制御装置88に出力される。この信号は、図20に示されるように、制御装置に直接印加されるとよい。代替的に、信号は、検出器85に印加されてもよい。従って、本発明のこのこの態様の検出器は、この信号の受信時に、ガーメントがヘルメットに取り付けられたことを示す信号を制御装置に出力するように、構成されている。
【0105】
本発明のこれらの態様では、ガーメントと一体の相補的な固定要素は、前述の顔面シールド磁石148である。
【0106】
本発明のこの態様は、本発明の他の態様が使用の準備を行う時に用いたのと同じ基本ステップを用いて、使用の準備が行われる。本発明のこの態様によれば、ヘルメットの作動によって、検出器85及び制御装置88しか作動しない。ガーメントをヘルメット32aに離脱可能に取り付けるために、ガーメント顔面シールド110と一体の磁石148a,148b,148cが、それぞれ、ヘルメット32aの固定具402a,402b、402cに対して配置される。センサ404に隣接して配置された磁石148aによって生じた磁場が、センサの周りに流れる。次いで、センサ404が、この磁場が存在することを示す信号を出力する。ここで、もしセンサ404がスイッチであるなら、磁場の存在によって、スイッチが閉鎖又は開放されることになる。センサが出力するこの信号に応じて、制御装置88は、モータ92を作動させてファン94を回転させるために、モータ92への通電信号の印加を開始する。
【0107】
代替的に、ガーメントがヘルメットに装着されたかどうかを示す信号を出力するセンサは、図21Aのスイッチ404aであってもよい。このスイッチ404aは、ヘルメットへのガーメントの装着時又はヘルメットからのガーメントの取外し時に物理的に変位するようになっている。本発明のこの態様では、センサ404aは、バネ付勢されたピンを有するスイッチとすることができる。このスイッチは、ガーメントが顔面シールドに取り付けられた時にガーメントの一部がピンを変位させる位置において、ヘルメットに装着されている。典型的には、スイッチは、ガーメントがヘルメットを覆って装着された時、顔面シールド又は顔面シールドに取り付けられた構成要素のいずれかがピンに当接し、該ピンを変位させるように、ヘルメットに取り付けられる。ピンのこの変位によって、スイッチの状態が変化する。制御装置は、このスイッチに接続されている。従って、制御装置88は、スイッチの状態がガーメントがヘルメットを覆って装着されたかどうかに関する指示として機能することを認識するように、設定されている。このスイッチ状態の情報に基づき、制御装置は、ファンモータ92への通電信号の印加を調整することになり。
【0108】
従って、本発明の前述の態様では、センサ404aのスイッチを押すガーメントの部分は、センサに隣接するガーメントの存在を示すガーメントマークとして機能することを理解されたい。図21Aにおいて、これは、顔面シールド110の区域110aによって図式的に示されている。
【0109】
本発明の個人防護のいくつかの態様では、ガーメントがヘルメットに装着されたかどうかを示す情報に基づき、制御装置は、個人防護システムと一体の他の電動アセンブリが作動されるかどうかを調整する。従って、制御装置は、適切なガーメントがヘルメットの装着されたかどうかに基づき、光アセンブリ266、通信ユニット268,又は冷却ストリップ272の1つ又は複数の作動を禁止することができる。
【0110】
[VII.代替的実施形態]
上記の説明は、本発明の特定の態様に向けられている。本発明の種々の実施形態の個々の特徴部は、本発明の代替的実施形態を構成するように互いに組み合わされてもよいことを理解されたい。
【0111】
同様に、本発明の各実施形態の全ての特徴が、記載された実施形態の各構成に必ずしも含まれなくてもよいことを理解されたい。例えば、ガーメントに取り付けられたマークが存在するかどうかをヘルメットのセンサが監視する本発明の態様は、顔面シールドに取り付けられた制御ボタンを必ずしも備えなくてもよいことを理解されたい。本発明のこれらの態様では、電動アセンブリを制御するように作動される1つ又は複数の制御部材は、ヘルメットに取り付けられる1つ又は複数のボタン、スイッチ、又は電位差計であってもよい。
【0112】
本発明の特定の特徴部は、ここに記載されたものと異なっていてもよい。
【0113】
例えば、このシステムの顔面シールドに取り付けられる制御ボタンは、記載されたものと異なっていてもよい。例えば、本発明のいくつかの態様では、ボタン及びヘルメットと一体の相補的構成要素は、親指又は他の指をボタンに置く結果として生じるボタン抵抗の変化を検出するように設定されてもよい。ボタンが抵抗の変化に鋭敏な本発明の態様では、ボタンを形成する導電材料を顔面シールドの外面に付着させることが望ましい。本発明の他の態様では、他の理由から、ボタンの導電性特徴部のみならず顔面シールド導電体自体も顔面シールドの外面に配置されてもよい。
【0114】
さらに、本発明のいくつかの態様では、ボタンは、移動する構成要素を備えていてもよい。典型的には、この種のボタンは、少なくとも1つの移動する構成要素がボタンを作動させるためにボタンの他の構成要素に対して物理的に変位するように、設計されている。この種の1つのボタンは、薄膜式のボタン又はスイッチである。この種のボタンとして、柔軟薄膜が挙げられる。この薄膜の柔軟性によって、該薄膜に関連するボタンの回路が閉鎖されることになる。
【0115】
本発明の全ての態様において、必ずしも、ボタンは、顔面シールドの片側又は両側に隣接して配置される必要がない。これらのボタンは、顔面シールドの上端及び/又は底の近くに配置されてもよい。
【0116】
これらの形態に関わらず、本発明のボタンは、手袋をした指の押下時に作動されるべきであることを理解されたい。何故なら、医療又は外科環境において、本発明のシステムを着衣するユーザーは、通常、手に手袋を嵌めるからである。
【0117】
また、本発明のボタンは、1つ又は複数の剥離式レンズを備えるガーメントに取り付けられてもよい。剥離式レンズは、顔面シールドの露出した外面に接着によって固定された透明プラスチックの層である。このレンズが顔面シールドの視野を妨げる材料によって覆われる場合、このレンズが除去される。これによって、ガーメントを着衣するユーザーは、少なくとも短時間にわたって、顔面シールドを覆う材料によって妨げられない顔面シールドの視野を有することができる。この除去可能なシールドによって、ボタンが覆われ又は露出されることになる。
【0118】
さらに、本発明のいくつかの態様では、ガーメントがヘルメットを覆って装着された時、ヘルメットと一体の電気接点がボタンと一体の相補的接点と接触するように構成要素を位置決めすることが望ましい。本発明のこれらの態様では、顔面シールドの電気接点は、ボタンと一体に形成されている。本発明のこの態様の利得は、ボタンから離間した顔面シールド接点まで延在する導電体を顔面シールドに設ける必要がないことにある。
【0119】
個人防護システムに取り付けられる代替的ユニットは、ビデオ及び/又はオーディオレコーダーである。ボタンは、このシステムを作動させることができる。
【0120】
また、本発明のいくつかの態様では、顔面シールドは、相補的なヘルメット固定特徴部に係合する固定特徴部を備えていなくてもよい。
【0121】
本発明のいくつかの態様では、ボタン及び/又はボタンに延在する顔面シールド導電体を覆って絶縁層を配置することが望ましいことがある。
【0122】
ガーメントの存否に基づく信号を出力するセンサが、他の形態をとってもよいことも理解されたい。図21Bは、光学的認識センサである代替センサ404bを示している。このセンサは、(図21Bにおいて顔面シールド110の一部の上のバー410として示される)顔面シールド又は顔面シールドに取り付けられた視覚的に感知可能なマーク410を走査する。このマーク410は、バーコードであってもよいし、又は彩色されたタイルのパターンであってもよい。適切なマークの存否に基づき、センサは、顔面シールドがヘルメットに取り付けられたかどうかを示す信号を生成する。この信号の状態に基づき、制御装置88は、個人防護システムと一体の電動アセンブリの1つ又は複数を選択的に作動させることになる。
【0123】
本発明のいくつかの態様において前述されたように、NOVRAM又はRFIDタグのようなメモリ装置が顔面シールドに取り付けられてもよい。本発明のこれらの態様では、メモリからデータを読み取るメモリインターフェイスは、取り付けられた顔面シールドの存否を検出するセンサとして機能する。さらに具体的には、メモリインターフェイスによって出力された書込要求の結果として、メモリインターフェイスがデータを受信しない限り、制御装置は、個人防護システムが顔面シールドがヘルメットに取り付けられていない状態にあると解釈する。書込要求に応じて、メモリインターフェイスがメモリからデータを受信した時、制御装置は、顔面シールドがヘルメットに取り付けられた状態にあるとみなすことになる。システムがこの状態にある時にのみ、ヘルメットは、システムの電動構成要素の1つ又は複数を作動させることになる。
【0124】
また、本発明の個人防護システムは、概して、医療用又は外科用手術中に医療施術者と患者との間にバリアをもたらすことが意図されているが、その使用は、そのように制限されるものではない。個人防護がユーザーと周囲環境との間にバリアを設けることが望ましい他の試みに用いられてもよいことも、本発明の範囲内にある。本発明のシステムを用いることが望ましい1つの代替的な試みとして、ユーザーとユーザーが働く環境内の危険材料との間にバリアをもたらすことが望ましい使用例が挙げられる。
【0125】
さらに、顔面シールド上にボタン及び導電トレースを形成する導電材料の形態は、導電トラックに制限されるものではない。本発明のいくつかの態様では、これらの導電性構成要素は、顔面シールドに塗布された導電インクから形成されてもよい。代替的に、これらの導電性構成要素は、顔面シールドに塗布される導電層から形成されてもよい。いったん顔面シールドに塗布されたなら、これらの導電層は、個々の導電性構成要素を形成するために選択的にエッチングされることになる。
【0126】
さらに、本発明の個人防護システムの独創的な特徴部は、前述のシステムの主要な態様に関して例示された完全な形態のヘルメット及び頭を覆うガーメントを含まない個人防護システム内に組み込まれてもよい。例えば、本発明の最小の個人防護システムは、ファン及びモータが取り付けられる頭頂装着シェルを備えないヘルメットからなっていてもよい。ガーメントは、このヘルメットに取り付けられる顔面シールドのみからなっているとよい。システムのこの態様では、前述のアセンブリは、顔面シールドがヘッドバンドに取り付けられるかどうかに応じて、ヘッドバンドに取り付けられた電動アセンブリの使用を禁止又は許容するために用いられるとよい。このヘッドバンドに取り付けられる電動アセンブリの例として、光源266、通信ユニット268、及び/又は冷却ストリップ272が挙げられる。本発明のこれらの態様では、1つ又は複数の電動アセンブリの操作を調整するためのボタンは、顔面シールドに取り付けられてもよいし、又は取り付けられなくてもよい。ボタンが顔面シールドに取り付けられた時、これらのボタンは、必要な電気接続を遮断可能にもたらすために、1つ又は複数の前述のアセンブリを通してヘッドバンドに接続された制御装置に接続されることになる。このように、本発明の目的から、ヘルメットは、電動アセンブリが取り付けられる(ユーザーの頭に装着されるように設計された)物品であると理解されたい。従って、本発明の1つの最小のヘルメットとして、冷却ストリップが取り付けられたヘッドバンドを備えるヘルメットが挙げられる。
【0127】
従って、添付の請求項の目的は、このような修正及び変更の全てを本発明の真の精神及び範囲内に包含されるものとして含むことである。
図1
図2
図3
図3A
図4
図5
図5A
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図11A
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21A
図21B