(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】キャビテーションが起こる媒体中の対象領域の位置特定方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A61B17/00
(21)【出願番号】P 2019510970
(86)(22)【出願日】2017-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2017071497
(87)【国際公開番号】W WO2018037130
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-06-26
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-15
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591100596
【氏名又は名称】アンスティチュ ナショナル ドゥ ラ サンテ エ ドゥ ラ ルシェルシュ メディカル
(73)【特許権者】
【識別番号】504217063
【氏名又は名称】サントル レオン ベラール
(73)【特許権者】
【識別番号】523165352
【氏名又は名称】ユニヴェルスィテ クラウド ベルナール リヨン 1
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン,シリル
(72)【発明者】
【氏名】メスタ,ジャン-ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ラフォン,マクシム
(72)【発明者】
【氏名】梅村 晋一郎
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】安井 寿儀
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-507320(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビテーションが起こる媒体(M)中の対象領域(R)の位置特定方法であって、前記方法は:
-対象領域(R)内にキャビテーションを作り出し、キャビテーションが音響信号を発生させること、
-少なくとも3つの離れた位置の各々で、キャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号(C)を検出すること、
-キャビテーション信号(C)のペア少なくとも2つに対して、キャビテーション信号(C)の各ペアの、キャビテーション信号(C)間の遅延を決定すること、
-遅延および
前記少なくとも3つの離れた位置
の各々に基づいて対象領域(R)の位置特定を計算すること、
からなるステップを含み、
遅延を決定するステップは、キャビテーション信号(C)のペアごとに:
-キャビテーション信号(C)のうち一方を他方に対して時間ピッチによって徐々にずらすこと、
-各時間ピッチで、キャビテーション信号(C)を比較すること、
-最大値でキャビテーション信号(C)が重なり合う時間ピッチとして、最大相関関係時間ピッチを特定すること、
-最大相関関係時間ピッチまでの時間ピッチの合計として遅延を計算すること、を含み、
対象領域(R)の位置特定を計算するステップが:
-遅延を距離に変換すること、
-対象領域を含む空間の幾つかの点に対して、各点が決定座標(x,y)を有し、
3よりも大きいまたは等しい整数nは位置の数であり、
【数24】
は位置iと音響源(キャビテーションクラウド)との間の距離であり、
【数25】
は遅延を距離に変換して決定された、位置iと音響源との間の距離と、
位置1と音響源との間の距離との間の距離差である、費用関数であって、
費用関数
【数26】
を最小化すること、
を含む、方法。
【請求項2】
キャビテーションが起こる媒体(M)中の対象領域(R)の位置特定方法であって、前記方法は:
-対象領域(R)内にキャビテーションを作り出し、キャビテーションが音響信号を発生させること、
-少なくとも3つの離れた位置の各々で、キャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号(C)を検出すること、
-キャビテーション信号(C)のペア少なくとも2つに対して、キャビテーション信号(C)の各ペアの、キャビテーション信号(C)間の遅延を決定すること、
-遅延および
前記少なくとも3つの離れた位置
の各々に基づいて対象領域(R)の位置特定を計算すること、
からなるステップを含み、
遅延を決定するステップは、キャビテーション信号(C)のペアごとに:
-キャビテーション信号(C)のうち一方を他方に対して時間ピッチによって徐々にずらすこと、
-各時間ピッチで、キャビテーション信号(C)を比較すること、
-最大値でキャビテーション信号(C)が重なり合う時間ピッチとして、最大相関関係時間ピッチを特定すること、
-最大相関関係時間ピッチまでの時間ピッチの合計として遅延を計算すること、を含み、
対象領域(R)の位置特定を計算するステップが、下記の方程式(2)によって定義される双曲線解法を解くこと、を含み:
【数27】
ただし、3よりも大きいまたは等しい整数nは位置の数であり、
【数28】
はiという番号が付けられた位置と、探索されて音響源(キャビテーションクラウド)の位置に対応する座標(x,y)を有する点との間の距離であり、
【数29】
であり、
双曲線解法を解くことは、:
-遅延を距離に変換して決定された、位置iと音響源との間の距離と、
位置1と音響源との間の距離との間の距離差は
【数30】
であり、
方程式(2)は(3)に対応し:
【数31】
-方程式(3)に対してi=1の方程式(2)を引くと、
【数32】
という結果を得、
ただし、
【数33】
であり、
-n=3のr
1について方程式(4)を解き、それは:
【数34】
であること、
-r
1の二次方程式を得るために、i=1の方程式(2)に方程式(5)を挿入すること、
-xおよびyの解を作り出すために、得られたr
1の二次方程式の正根を方程式(5)に戻すこと、を含む方法。
【請求項3】
キャビテーション信号(C)を検出するステップが、
少なくとも3つの水中聴音器(11)
それぞれが互いに離れて配置されること、
水中聴音器(11)を対象領域(R)を含むエリア(V)の方に向けること、
を含む、請求項1~2のいずれか記載の方法。
【請求項4】
キャビテーションの音響信号が少なくとも1つの特定周波数を有し、
遅延を決定するステップの前に特定周波数周辺の帯域幅で各キャビテーション信号(C)をフィルタリングすることからなるステップを含み、
前記帯域幅が好ましくは特定周波数の25%~75%、より好ましくは特定周波数の30%~60%である、請求項1~3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
キャビテーションを作り出すステップが焦点(P)で交差する第一(D1)および第二(D2)方向に沿って少なくとも第一および第二超音波ビームを放出することを含み、
第一および第二超音波ビームが焦点(P)周辺の焦点エリア(V)にキャビテーションを発生させるように適合される、請求項1~4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
キャビテーション信号(C)を検出するステップが水中聴音器(11)を焦点エリア(V)の方に向けることを含む、請求項3に従属する場合の請求項5記載の方法。
【請求項7】
第一および第二超音波ビームが照射周波数f
eを有し、キャビテーションの音響信号の特定周波数が0.4×f
e~0.6×f
eである、請求項4に従属する場合の請求項5および6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
第一および第二超音波ビームが照射周波数f
eを有し、キャビテーションの音響信号の特定周波数が1.2×f
e~2.2×f
eである、請求項4に従属する場合の請求項5および6のいずれか記載の方法。
【請求項9】
キャビテーションが起こる媒体(M)中の対象領域(R)の位置特定システム(1)であって、:
-対象領域(R)内にキャビテーションを作り出し、キャビテーションが音響信号を発生させるように構成された、キャビテーション装置(5)、
-それぞれ離れた位置に配置され、キャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号(C)を検出するように構成された、少なくとも3つのセンサー(11)、
-キャビテーション信号(C)のペア少なくとも2つに対して、キャビテーション信号(C)の各ペアの、キャビテーション信号(C)間の遅延を決定し、遅延および
前記それぞれ離れた位置に基づいて対象領域(R)の位置特定を計算する、ように構成された処理装置、を含み、
処理装置が、
システムが遅延を決定するため、キャビテーション信号(C)のペアごとに、
-キャビテーション信号(C)のうち一方を他方に対して時間ピッチによって徐々にずらし、
-各時間ピッチで、キャビテーション信号(C)を比較し、
-最大値でキャビテーション信号(C)が重なり合う時間ピッチとして、最大相関関係時間ピッチを特定し、
-最大相関関係時間ピッチまでの時間ピッチの合計として遅延を計算する、
ように構成され、
対象領域(R)の位置特定を計算するため、処理装置が、
-遅延を距離に変換し、
-対象領域を含む空間の幾つかの点に対して、各点が決定座標(x,y)を有し、
3よりも大きいまたは等しい整数nは位置の数であり、
【数24】
は位置iと音響源(キャビテーションクラウド)との間の距離であり、
【数25】
は遅延を距離に変換して決定された、位置iと音響源との間の距離と、
位置1と音響源との間の距離との間の距離差である、費用関数であって、
費用関数
【数26】
を最小化する、ように構成されたシステム(1)
【請求項10】
キャビテーションが起こる媒体(M)中の対象領域(R)の位置特定システム(1)であって、:
-対象領域(R)内にキャビテーションを作り出し、キャビテーションが音響信号を発生させるように構成された、キャビテーション装置(5)、
-それぞれ離れた位置に配置され、キャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号(C)を検出するように構成された、少なくとも3つのセンサー(11)、
-キャビテーション信号(C)のペア少なくとも2つに対して、キャビテーション信号(C)の各ペアの、キャビテーション信号(C)間の遅延を決定し、遅延および
前記それぞれ離れた位置に基づいて対象領域(R)の位置特定を計算する、ように構成された処理装置、を含み、
処理装置が、
システムが遅延を決定するため、キャビテーション信号(C)のペアごとに、
-キャビテーション信号(C)のうち一方を他方に対して時間ピッチによって徐々にずらし、
-各時間ピッチで、キャビテーション信号(C)を比較し、
-最大値でキャビテーション信号(C)が重なり合う時間ピッチとして、最大相関関係時間ピッチを特定し、
-最大相関関係時間ピッチまでの時間ピッチの合計として遅延を計算する、
ように構成され、
対象領域(R)の位置特定を計算するため、処理装置が、
下記の方程式(2)によって定義される双曲線解法を解くように構成され、
【数27】
ただし、3よりも大きいまたは等しい整数nは位置の数であり、
【数28】
はiという番号が付けられた位置と、探索されて音響源(キャビテーションクラウド)の位置に対応する座標(x,y)を有する点との間の距離であり、
【数29】
であり、
双曲線解法を解くことは、:
-遅延を距離に変換して決定された、位置iと音響源との間の距離と、
位置1と音響源との間の距離との間の距離差は
【数30】
であり、
方程式(2)は(3)に対応し:
【数31】
-方程式(3)に対してi=1の方程式(2)を引くと、
【数32】
という結果を得、
ただし、
【数33】
であり、
-n=3のr
1について方程式(4)を解き、それは:
【数34】
であること、
-r
1の二次方程式を得るために、i=1の方程式(2)に方程式(5)を挿入すること、
-xおよびyの解を作り出すために、得られたr
1の二次方程式の正根を方程式(5)に戻すこと、を含む
システム(1)。
【請求項11】
センサーが対象領域(R)を含むエリア(V)の方に向けられた水中聴音器(11)である、請求項9および10のいずれか記載のシステム(1)。
【請求項12】
キャビテーションの音響信号が少なくとも1つの特定周波数を有し、
遅延を決定する前に特定周波数周辺の帯域幅で各キャビテーション信号(C)をフィルタリングするように処理装置が構成され、
前記帯域幅が好ましくは特定周波数の25%~75%、より好ましくは特定周波数の30%~60%である、請求項9~11のいずれか記載のシステム(1)。
【請求項13】
キャビテーション装置(5)が、焦点で交差する第一(D1)および第二(D2)方向に沿って第一および第二超音波ビームを放出するように構成された少なくとも第一(6)および第二(7)超音波トランスデューサを含み、
前記第一および第二超音波ビームが焦点(P)周辺の焦点エリア(V)にキャビテーションを発生させるように適合されている、請求項9~12のいずれか記載のシステム(1)。
【請求項14】
水中聴音器(11)がエリア(V)の方に向けられている、請求項11に従属する場合の請求項13記載のシステム(1)。
【請求項15】
少なくとも2つの水中聴音器(11a、11b)がそれぞれ第一(6)および第二(7)超音波トランスデューサに取り付けられている、請求項14記載のシステム(1)。
【請求項16】
第一(6)および第二(7)超音波トランスデューサが照射周波数f
eを有する第一および第二超音波ビームを放出するように制御され、キャビテーションの音響信号の特定周波数が0.4×f
e~0.6×f
eである、請求項12に従属する場合の請求項13~15のいずれか記載のシステム(1)。
【請求項17】
第一(6)および第二(7)超音波トランスデューサが照射周波数f
eを有する第一および第二超音波ビームを放出するように制御され、キャビテーションの音響信号の特定周波数が1.2×f
e~2.2×f
eである、請求項12に従属する場合の請求項13~15のいずれか記載のシステム(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビテーションが起こる媒体中の対象領域の位置特定方法およびシステムに関する。
【0002】
キャビテーションとは、媒体中のガスおよび/または蒸気気泡の形成および/または移動のことを指し示す。これらの気泡は、動的に振動および/または崩壊することがあり、それによって非常に位置が特定された衝撃波、温度の規則的な上昇または任意の他の機械的および/または化学的な効果が作り出される。とりわけ、音響キャビテーションは、超音波(US)で始まる確率過程であり、それは、幅広く研究されてきた(CoussiosおよびRoy、2008年;Leighton、1994年)。2つのタイプのキャビテーションが共存することができる:安定型(ガス気泡の振動)および慣性型(より強い圧力による気泡の激しい崩壊)。気泡クラウドは、興味深い音響特性を示す。気泡ガスが励起音波に出会う時、両方のキャビテーション型は、散乱波からの音響シグネチャによって特徴付けられることができる。
【0003】
キャビテーションは、高密度焦点式超音波での脳腫瘍の熱剥離のような一部の治療にとって望ましくない副作用として考えられることがある。だが、キャビテーションは、例として脳での治療用物質の送達および化学療法剤の増強のための組織びらん(組織破砕)または血液脳関門の開口を含む、キャビテーションに基づく治療のための診療所での特定の応用も見いだす。とりわけ、キャビテーション関連の技術によって得られる抗腫瘍効果は、有望である(Mitragotri、2005年;Rosenthalら、2004年;Umemuraら、1997年)。
【0004】
キャビテーションが有害作用または治療メカニズムのどちらとして考えられるかにかかわらず、そのようなキャビテーション技術の臨床移転への道には、特にキャビテーション現象の、適切な監視が必要である。臨床応用に関連して、キャビテーション活動の完全な特徴付けには、キャビテーション位置特定も含まれる。この分野では、無相関エリア内のクラウドの場所を突き止めるため、従来の超音波スキャナ(GyongyおよびCoussios、2010年)または超高速エコー撮像(Prieurら、2015年)でのビーム形成がさまざまな方法に使用されている。また、気泡によって作られた高エコー領域を視覚化することによって、キャビテーションの存在の定性的評価を行うことができる(Lafondら、2016年)。
【0005】
しかしながら、これらの方法は、制約を伴う。特に、エコー撮像装置の広帯域周波数では、安定したキャビテーションの位置特定および特徴付けができない。キャビテーションの強度は、強くなければならないなので、重要な後処理の時間が必要であり、それによってリアルタイムでのモダリティが妨げられる。最後に、そのような機器の費用は、臨床装置の開発にとっては法外に高い。
【0006】
本発明は、先に述べた問題を解決することを目指す。
【0007】
このために、第一の態様によると、本発明は、キャビテーションが起こる媒体中の対象領域の位置特定方法を提供し、その方法は:
-対象領域内にキャビテーションを作り出し、そのキャビテーションが音響信号を発生させ、
-少なくとも3つの離れた位置の各々で、キャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号を検出し、
-キャビテーション信号のペア少なくとも2つに対して、キャビテーション信号の各ペアの、キャビテーション信号間の遅延を割り出し、
-遅延および位置に基づいて対象領域の位置特定を計算する、
ということからなるステップを含み、
【0008】
遅延を割り出すステップは、キャビテーション信号のペアごとに下記を行うことを含む:
-キャビテーション信号のうち一方を他方に対して時間ピッチによって徐々にずらし、
-各時間ピッチで、キャビテーション信号を比較し、
-最大値でキャビテーション信号が重なり合う時間ピッチとして、最大相関関係時間ピッチを特定し、
-最大相関関係時間ピッチまでの時間ピッチの合計として遅延を計算する。
【0009】
これ故に、本発明は、単純で速く信頼性の高いやり方でキャビテーションの位置が特定されることを可能にする、キャビテーション信号の延長包絡線を利用する。効率が向上するのに加えて、その方法では、少ない数の機器だけが必要であり、それにより費用効果が非常に高くなる。
【0010】
その方法は、完全に受動的なので、臨床システムに直接組み込むことができる。計算された位置を点として示して、特定の目標エリアの正確な到達を判断するための条件付き監視をより容易にすることができる。キャビテーション関連の治療に関連して、このように、キャビテーション応用の信頼性レベルを上昇させ、臨床解釈の信用をより高めることが期待される。
【0011】
一部の対策によると、その方法は、キャビテーションに基づく治療の有効性を最適化するため、キャビテーション特徴付けのための特徴付けツールとして使用することができる。また、その方法は、容易にリアルタイム制御ループで実施することができる。
【0012】
対象領域の位置特定を計算するステップは、下記を含んでいてもよい:
-遅延を距離に変換し、
-各点が決定座標(x,y)を有する、対象領域を含む空間の幾つかの点に対して、費用関数
【数1】
を最小化する、
ただし、3よりも大きいまたは等しい整数nは、位置の数であり、
【数2】
は、位置iと点(x,y)との間の距離であり、
【数3】
は、遅延を距離に変換して割り出された受容体の位置iと1との間の距離である。
【0013】
あるいは、対象領域の位置特定を計算するステップは、下記の方程式(2)によって定義される双曲線解法を解くことを含んでいてもよく:
【数4】
ただし、3よりも大きいまたは等しい整数nは、位置の数であり、
【数5】
は、iという番号が付けられた位置と、探索されて音響源(キャビテーションクラウド)の位置に対応する座標(x,y)を有する点との間の距離であり、
【数6】
双曲線解法を解くことは、下記を含む:
-位置iと1との間の測定された遅延は、
【数7】
であり、方程式(2)は、下記に対応し:
【数8】
-方程式(3)に対して方程式(2)を引くと、
【数9】
ただし、
【数10】
-n=3のr
1について方程式(4)を解き、それは:
【数11】
-i=1の方程式(2)に方程式(5)を挿入して、r
1の二次方程式を得て、
-置換した正根を方程式(5)に戻して、xおよびyの解を作り出す。キャビテーション信号を検出するステップは、少なくとも3つの水中聴音器をそれぞれの離れた位置に備え、水中聴音器を対象領域を含むエリアの方に向けることを含んでいてもよい。
【0014】
キャビテーションの音響信号は、少なくとも1つの特定周波数を有してもよい。その方法は、遅延を割り出すステップの前に、特定周波数周辺の帯域幅で各キャビテーション信号をフィルタリングし、その帯域幅は、好ましくは特定周波数の25%~75%、より好ましくは特定周波数の30%~60%である、ということからなるステップを含んでいてもよい。これらの対策は、対象の周波数、特に下記から明白になるように低調波周波数周辺に低減させるべきキャビテーション信号の処理を可能にする。キャビテーションの振動している気泡の固有の特徴にそのように焦点を合わせることで、水/ガス気泡の界面によって形成された音響ミラーの画像を検出するというよりもむしろ、キャビテーションの音響源を実際に検出することが可能になる。特定周波数、特に1/2低調波周辺の生信号をそのようにフィルタリングすることは、方法の正確さに大きな改善をもたらす。高調波信号と広帯域ノイズとの間に好適な比率をもたらすために、周波数帯域幅がさらに調整される。
【0015】
キャビテーションを作り出すステップは、焦点で交差する第一および第二方向に沿って少なくとも第一および第二超音波ビームを放出することを含んでいてもよく、その第一および第二超音波ビームは、焦点周辺の焦点エリアにキャビテーションを発生させるように適合されている。
【0016】
キャビテーション信号を検出するステップで水中聴音器が実装されている時には、キャビテーション信号を検出するステップは、水中聴音器を焦点エリアの方に向けることを含んでいてもよい。
【0017】
各キャビテーション信号をフィルタリングすることからなるステップをその方法が含んでいる時には、第一および第二超音波ビームは、照射周波数feを有してもよく、キャビテーションの音響信号の特定周波数は、0.4×fe~0.6×feであってもよい。
【0018】
各キャビテーション信号をフィルタリングすることからなるステップをその方法が含んでいる時には、第一および第二超音波ビームは、照射周波数feを有し、キャビテーションの音響信号の特定周波数は、1.2×fe~2.2×feである。
【0019】
そのため、第二の態様によると、本発明は、キャビテーションが起こる媒体中の対象領域の位置特定システムを提供し、そのシステムは、下記を含む:
-対象領域内にキャビテーションを作り出してそのキャビテーションが音響信号を発生させるように構成された、キャビテーション装置、
-それぞれ離れた位置に配置され、キャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号を検出するように構成された、少なくとも3つのセンサー、
-下記を行うように構成された処理装置:
-キャビテーション信号のペア少なくとも2つに対して、キャビテーション信号の各ペアの、キャビテーション信号間の遅延を割り出し、
-遅延および位置に基づいて対象領域の位置特定を計算する、
遅延を割り出すため、キャビテーション信号のペアごとに、処理装置が下記を行うように構成されてもよい:
-キャビテーション信号のうち一方を他方に対して時間ピッチによって徐々にずらし、
-各時間ピッチで、キャビテーション信号を比較し、
-最大値でキャビテーション信号が重なり合う時間ピッチとして、最大相関関係時間ピッチを特定し、
-最大相関関係時間ピッチまでの時間ピッチの合計として遅延を計算する。
【0020】
センサーは、対象領域を含むエリアの方に向けられた水中聴音器であってもよい。そのため、使用する水中聴音器は、それらのうち1つを遅延割り出しのために二度使用することで3つだけでもよいので、システムは、構造が単純である。
【0021】
キャビテーションの音響信号は、少なくとも1つの特定周波数を有してもよく、処理装置は、遅延を割り出す前に、特定周波数周辺の帯域幅で各キャビテーション信号をフィルタリングするように構成されてもよく、その帯域幅は、好ましくは特定周波数の25%~75%、より好ましくは特定周波数の30%~60%である。
【0022】
キャビテーション装置は、焦点で交差する第一および第二方向に沿って第一および第二超音波ビームを放出するように構成された少なくとも第一および第二超音波トランスデューサを含んでいてもよく、その第一および第二超音波ビームは、焦点周辺の焦点エリアにキャビテーションを発生させるように適合されている。
【0023】
センサーが水中聴音器である時には、水中聴音器は、焦点エリアの方に向けられてもよい。
【0024】
少なくとも2つの水中聴音器がそれぞれ第一および第二超音波トランスデューサに取り付けられてもよい。このようにして、有効な音響信号のエネルギーの量を最大化することができる。
【0025】
処理装置が各キャビテーション信号をフィルタリングするように構成されている時には、第一および第二超音波トランスデューサは、照射周波数feを有する第一および第二超音波ビームを放出するように制御されてもよく、キャビテーションの音響信号の特定周波数は、0.4×fe~0.6×feであってもよい。
【0026】
処理装置が各キャビテーション信号をフィルタリングするように構成されている時には、第一および第二超音波トランスデューサは、照射周波数feを有する第一および第二超音波ビームを放出するように制御され、キャビテーションの音響信号の特定周波数は、1.2×fe~2.2×feである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の他の目的および効果は、非限定的な例として挙げられた本発明の特定の態様の下記の開示内容から明らかになり、その開示は、同封の図面を参照しながら行われ、その中で:
【
図1】-
図1は、本発明の態様による、キャビテーションが起こる媒体中の対象領域の位置特定システムの模式図であり、そのシステムは、対象領域内にキャビテーションを作り出するように構成されたキャビテーション装置を含み、3つの水中聴音器は、それぞれ離れた位置に配置されてキャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号を検出するように構成され、
【
図3】-
図3は、キャビテーションが媒体中の対象領域の位置特定方法を例示し、その方法は、
図1のシステムを実装し、キャビテーション信号のペアのキャビテーション信号間の遅延および水中聴音器の位置に基づいて対象領域の位置特定を計算することを含み、
【
図4】-
図4は、カメラによって取得された写真上で位置を特定された対象領域と8つのキャビテーション実験でその方法によって位置を特定された対象領域との間の比較を提供し、その方法は、キャビテーション信号をフィルタリングすることを伴って又は伴わずに実施され、
【
図5】-
図5は、位置特定の差異を表したものであり、
【
図6】-
図6は、本発明による方法が関与する実験のシミュレーションで、音響源によって放出された合成キャビテーション信号を表したものであり、
【
図7】-
図7は、シミュレーションで実装された構成を表したものであり、そこでは水中聴音器が十字で表され、音響源がドットで表されており、
【
図8】-
図8は、遅延に基づく対象領域の位置特定を計算するために実施された2つの計算方法の、計算された点と音響源との間の平均距離についての性能を表したものであり、左には、双曲線解法を実施する計算方法での20箇所の音響源の位置特定例を、右には、費用関数の最小化を実施する方法(CF)および双曲線解法の双曲線解法を実施する方法(GPS)によって1~40箇所の音響源に対して行われたシミュレーションからの期待される正確さを、例示しており、
【
図9】-
図9は、シミュレーションを行うための実験設定を表したものであり、高速度カメラが発生源位置特定平面と直交する観測平面を有するように配置され、センサーネットワーク変位が2つの矢印によって表されており、
【
図10】-
図10は、センサー間の角度を増やしながらシミュレーションされた位置特定において期待される正確さを表したものであり、左には、発生源が20箇所ある構成および矢印で表された実験設定に対するセンサー位置の変化を、右には、位置特定の正確さの統計的配分を、例示しており、
【
図11】-
図11は、センサー間の角度を減らしながらシミュレーションされた位置特定において期待される正確さを表したものであり、左には、発生源が20箇所ある構成および矢印で表された実験設定に対するセンサー位置の変化を、右には、位置特定の正確さの統計的配分を、例示しており、
【
図12】-
図12は、実験設定の高速度カメラによって取得された、発生したキャビテーションクラウドの画像であり、
【
図13】-
図13は、実験条件を模倣したシミュレーションからの、期待される結果を表したものであり、
【
図14】-
図14は、水中での音響源の相対変位の追跡を表したものであり、
【
図15】-
図15は、鶏胸部の中での音響源の相対変位の追跡を表したものであり、
【
図16】-
図16は、水中(左)および鶏胸部の中(右)での平均位置特定誤差を表したものである。
【0028】
図では、同じ参照番号は、同じまたは類似の要素のことを指している。
【0029】
図1および2は、キャビテーションが起こる媒体M中の対象領域Rの位置特定システム1を表す。システム1は、対象領域Rの位置特定方法を実施するのに使用され、その方法は、具体的には超音波キャビテーションに基づく治療に適用される。
【0030】
システム1は、対象領域Rにキャビテーションを作り出すように構成されたキャビテーション装置5を含む。例示された態様では、それに限定はされないが、キャビテーション装置5は、文書WO 2013/132060に開示されているタイプの共焦点超音波技術を実施する。
【0031】
キャビテーション装置5は:
-第一方向D1に沿って第一超音波ビームを放出するように構成され、第一音響焦点P1に焦点を合わせた、第一超音波トランスデューサ6および
-第二方向D2に沿って第二超音波ビームを放出するように構成され、第二音響焦点P2に焦点を合わせた、第二超音波トランスデューサ7
を含む。
【0032】
第一6および第二7超音波トランスデューサは、100 kHz~10 MHz、好ましくは0.5MHz~2 MHzを含む照射周波数で超音波ビームを発生させるように各々が適合されているトランスデューサであってもよい。下記の説明で詳述する非限定的な例では、第一6および第二7超音波トランスデューサは、直径50 mm、曲率半径50 mmの集束トランスジューサである。
【0033】
第一6および第二7超音波トランスデューサは、第一6および第二7超音波トランスデューサの各々がフレーム8および他の超音波トランスデューサ6、7に対して移動することを可能にする移動装置を介して、フレーム8に取り付けられる。
【0034】
さらに、キャビテーション装置5は、第一6および第二7超音波トランスデューサならびに移動装置に接続された、制御ユニットを含む。とりわけ、第一P1および第二P2音響焦点が重畳する焦点Pで、30 °~150 °、特に60 °~120 °、例として90 °を含む角度αで第一D1および第二D2方向が交差するように、恐らくは好適な通信インターフェースを介してユーザーによって操縦される移動装置を制御ユニットが制御してもよい。制御ユニットは、対象領域Rを含む焦点P周辺の焦点エリアVに、第一および第二超音波ビームがキャビテーションを発生させるように、第一6および第二7超音波トランスデューサも制御してもよい。とりわけ、第一6および第二7超音波ビームは、照射周波数として1 MHz~1.2 MHzで放出されてもよい。非限定的な例では、照射周波数は、1.1 MHzである。
【0035】
本発明は、キャビテーションを発生させるため、2つの交差する超音波ビームに基づいて共焦点超音波技術を実施する、キャビテーション装置5と関係して開示される。しかしながら、他の態様では、キャビテーション装置5は、共焦点超音波技術を実施するため、複数の第一超音波トランスデューサ6および/または複数の第二超音波トランスデューサ7を有してもよい。超音波技術を異なるように使用して、例として超音波トランスデューサを1つだけ実装して、焦点エリアVにキャビテーションを作り出してもよい。例として、1つ以上の超音波ビームを使用して、微小気泡を含有する多孔質媒体を活性化させてもよい。さらに、本発明は、超音波技術に限定されず、任意の他の種類の技術を実施して対象領域Rにキャビテーションを作り出してもよい。
【0036】
システム1は、キャビテーション装置5によって発生するキャビテーションが起こる対象領域Rの位置特定のために特別に設計された位置特定装置10も含む。キャビテーションの位置特定は、キャビテーションによって発生する音響信号の検出に基づいている。音響信号は、キャビテーション活動の性質および強度を示し、1または数個の特定周波数によって特徴付けられ、その中には、照射周波数feの低調波、特に1/2低調波、すなわち第一6および第二7超音波トランスデューサの照射周波数feの0.4~0.6倍の周波数がある。とりわけ、1/2低調波の特定周波数は、500 kHz~600 kHzであってもよい。非限定的な例では、1/2低調波の特定周波数は、550 kHzである。例えば、照射周波数feの超調波、特に照射周波数feの1.2~2.2倍の超調波、例として照射周波数feの1.5倍または照射周波数feの二倍といった、音響信号の他の特定周波数を使用してもよい。
【0037】
位置特定装置10は、キャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号Cを検出するように構成されたセンサーとして、3つの水中聴音器11を含む。水中聴音器11は、キャビテーション信号Cのペア少なくとも2つを含む位置特定情報を提供することができるように、それぞれ離れた位置に配置される。各水中聴音器11が受け取る音響信号の量を、そしてそれによって位置特定の信頼性を、最大化するため、水中聴音器11は、対象領域Rを含むエリア、すなわち例示された態様では焦点エリアVの方に向けられる。とりわけ、第一11aおよび第二11b水中聴音器は、それぞれ第一6および第二7超音波トランスデューサに取り付けられる。第三水中聴音器11cは、第一11aと第二11b水中聴音器との間のフレーム8に取り付けられる。
【0038】
他の態様では、各々がキャビテーションの音響信号を表すキャビテーション信号Cを検出してキャビテーション信号のペアを2つ以上提供するように構成された、3つ以上のセンサーの任意の他の装置を位置特定装置10が含んでいてもよい。とりわけ、
図11に示すもう一つの態様では、水中聴音器11が可動アーム20に取り付けられている。
【0039】
キャビテーションの位置特定を可能にするため、位置特定装置10は、さらに、キャビテーション信号を処理するために恐らくはキャビテーション装置5の制御ユニットに接続された、処理装置を有する。
【0040】
これから、
図3に関係して、キャビテーション信号の処理について開示する。
【0041】
ノイズを取り除きながら音響信号から十分な情報を取り出すことによって位置特定の正確さを向上させるため、処理装置がキャビテーションの音響信号の特定周波数周辺の帯域幅で各キャビテーション信号Cをフィルタリングしてもよい。キャビテーションの音響信号の特定周波数は、照射周波数feの低調波の間、特に550 kHzの1/2低調波周辺を選んでもよい。帯域幅は、特定周波数の25%~75%、好ましくは特定周波数の30%~60%であってもよい。550 kHzの1/2低調波のケースでは、帯域幅は、100 kHz~300 kHz、特におよそ200 kHzであってもよい。あるいは、キャビテーションの音響信号の特定周波数は、照射周波数fe7の低調波の間を選んでもよい。第一および第二超音波ビームが照射周波数feを有し、キャビテーションの音響信号の特定周波数が1.4×fe~1.6×feである、請求項3に従属する場合の請求項4および5のいずれか記載の方法。
【0042】
キャビテーション信号Cのペア2つ、すなわち第一11aおよび第三11c水中聴音器のキャビテーション信号C1、C3を含む第一ペアならびに第二11bおよび第三11c水中聴音器のキャビテーション信号C2、C3を含む第二ペアに対して、処理装置は、キャビテーション信号の各ペアのキャビテーション信号間の遅延を割り出す。
【0043】
遅延は、相関関係最大値の検出によって割り出される。とりわけ、キャビテーション信号C1、C3の第一ペアに対して、処理装置は、時間ピッチによって第三水中聴音器11cに対して第一水中聴音器11aのキャビテーション信号を徐々にずらすように構成されている。各時間ピッチで、処理装置は、第一11aおよび第三11c水中聴音器のキャビテーション信号C1、C3を比較する。それから、第一11aおよび第三11c水中聴音器のキャビテーション信号C1、C3が最大値で重なり合う、すなわち差の積分が最小化される、時間ピッチが最大相関関係時間ピッチとして特定される。それから、処理装置は、遅延を得るため、最大相関関係時間ピッチまでの時間ピッチを合計してもよい。
【0044】
キャビテーション信号の各ペアのキャビテーション信号間の遅延を割り出すステップは、
図3と関係してまたはキャビテーション信号全体について前に開示されているように、いずれかの選定された帯域幅で、各キャビテーション信号の延長包絡線に対して行われてもよい。あるいは、キャビテーション信号の各ペアのキャビテーション信号間の遅延を割り出すこのステップは、各キャビテーション信号の球形形状に対して行われてもよい。それから、それらのそれぞれの形状を定義するため、恐らくは選定された帯域幅で、キャビテーション信号を適宜に前処理してもよい。
【0045】
対象領域Rの位置特定を可能にする十分な位置特定情報を得るため、キャビテーション信号C2、C3の第二ペアに対して同じ相関関係最大値の検出が行われる。
【0046】
対象領域Rの位置特定を計算するステップは、2つ計算方法のいずれか1つによって行うことができる。
【0047】
計算方法は、下記を含む:
-遅延を距離に変換し、
-各点が決定座標(x,y)を有する、対象領域を含む空間の幾つかの点に対して、費用関数
【数12】
を最小化する、
ただし、3よりも大きいまたは等しい整数nは、位置の数であり、
【数13】
は、iという番号が付けられたセンサーの位置と点(x,y)との間の距離であり、
【数14】
は、遅延を距離に変換して割り出された
位置iと音響源との間の距離と、位置1と音響源との間の距離との間の距離差である。
【0048】
あるいは、もう一つの計算方法は、双曲線解法を解くことを含む。そのような方法は、Y. T. ChanおよびK. C. Ho、「A simple and efficient estimator for hyperbolic location」、IEEE Trans. Signal Process.、42巻、8号、p.1905~1915、1994年8月に開示されている。
【0049】
3つのセンサーの空間内の任意分布のケースでは、下記の方程式(2)を直接書き出すことができる:
【数15】
ただし、3よりも大きいまたは等しい整数nは、位置の数であり、
【数16】
は、iという番号が付けられたセンサーの位置と、探索されて音響源(キャビテーションクラウド)の位置に対応する座標(x,y)を有する点との間の距離であり、
【数17】
位置iと1との間の測定された遅延は、
【数18】
なので、それから
【数19】
であり、方程式(2)は、下記に対応し:
【数20】
方程式(3)に対して方程式(2)を引いた結果として下記の方程式(4)になる:
【数21】
ただし、
【数22】
n=3のr
1について方程式(4)を解くことができ、それは:
【数23】
【0050】
i=1の方程式(2)に方程式(5)を挿入すると、r1の二次方程式を得ることが可能になる。それから、置換した正根を方程式(5)に戻して、xおよびyの解を作り出すことができる。二次方程式の解の曖昧さは、対象領域を制限することによって解決することができる。
【0051】
実施例1
実験の非限定的な例で、先に記載したキャビテーション5および位置特定10装置で、キャビテーションが起こる媒体M中の対象領域Rの位置特定システム1および方法が実施される。
【0052】
高速度カメラ観測に向けて、キャビテーション位置特定の信頼性の推定が行われる。
【0053】
物質および方法
キャビテーション装置5
直径50mm、曲率半径50 mm、1.1 MHzで駆動する、2つの集束トランスジューサ6、7が90 °の角度αでそれらのそれぞれの音響焦点P1、P2に一致するやり方で取り付けられている。一対のトランスジューサ6、7のインピーダンスは、増幅器の出力に一致するように50 Ωに調整される。システム1は、媒体Mとして部分的に脱気された水(4 mg/L)で満たされたタンク15の中に設置されている。デジタル波形発生器により1.4 Vrmsの電圧で、単一2750サイクルパルスが発生する。それから、信号は、1 kWのRF電力増幅器1140LA(E&I、ロチェスター、ニューヨーク州)で増幅される。焦点Pでの陰圧は、13MPaであると推定される。超音波照射時に、記録オシロスコープおよび高速度カメラの両方にトリガー信号が送られる。前に開示されているように、3つの社内製のPVDF水中聴音器11は、キャビテーション装置5に取り付けられ、焦点領域Vに向きを合わせて置かれる(
図1および2)。水中聴音器11によって検出されたキャビテーション信号Cは、100 MHzのサンプリング周波数で記録オシロスコープを使用してトリガー信号で記録される。その一方で、キャビテーション活動は、後に記載するように高速度カメラで観測される。
【0054】
高速度カメラ観測
高速度カメラは、3つの水中聴音器11の平面に対して垂直に設置される。赤いレーザーがカメラの方に向けられ、ニードル型水中聴音器を使用して見いだすことができる焦点エリアVをレーザービームが通り抜ける。それから、水中聴音器11の縁をはっきりと観測するため、カメラの焦点が調整される。1 cm×1.2 cmのエリアが観測される。速度記録が32 kfpsに設定され、102枚の画像が記録される。キャビテーションが起こることが期待される焦点に超音波トランスデューサ6、7によって放出された音響ビームが到達した時から焦点エリアVを観測するために、トリガー信号に対する33 μsの遅延が適用される。3.2 msの記録期間(画像102枚/32 kfps)は、焦点エリアV内の2.5 msの音響信号の存在を観測することを可能にする(2750サイクル/1.1 MHz)。その一方で、先に記載したように、水中聴音器11によって検出されたキャビテーション信号Cが記録される。処理された画像から、対象領域Rとしてのクラウドの位置が盲目的なやり方(水中聴音器によって位置を特定された発生源の位置が分からないまま)で、3つの独立演算子によって推定される。
【0055】
キャビテーションクラウドの音響学的位置特定
前に開示された方法は、位置が分かっている3つの水中聴音器11で得られた遅延に基づくキャビテーションクラウドRの場所の三角測量である。キャビテーション信号Cは、Matlabソフトウェア(MathWorks、ネイティック、マサチューセッツ州)にインポートされる。水中聴音器11のキャビテーション信号C間の遅延は、前に解説されているように、記録されたキャビテーション信号C間の相関関係を最大化する遅延を見いだすことによって計算される。クラウドRの計算された位置特定は、最後にカメラからの画像に重畳される。ここで計算された位置は、視覚的に推定されたクラウドRの位置と比較される。平均誤差が計算される。低調波周波数(550 kHz)周辺の200 kHzの広帯域だけを維持した後、これらの作業が繰り返される。
【0056】
結果
図4は、重畳位置が位置特定技術で計算された、8つの独立したキャビテーション事象の60枚目の画像を示す。
図4で、四角い円は、焦点の推定位置を表し、破線の円および実線の円は、それぞれ全および低減周波数帯域幅のための方法によって割り出されたキャビテーションクラウドの位置特定である。
【0057】
全周波数帯域幅のケースでは、キャビテーションクラウドの位置は、3.1±1.8 mmの差異で計算される。550 kHz低調波周辺の200 kHz周波数帯だけのデータを処理することによって、正確さが1.4±0.8 mmに改善する。円は、相関関係の広がりに対応する空間的距離を表す(最大値の2/3)。サイズは、キャビテーション活動の強度と相関しない。
【0058】
図5は、平均差異だけでなく観測された差異も示す。円および十字は、それぞれ個別のおよび全部の平均値を示す。前のように、破線は、全帯域幅であり、実線は、フィルタリングされたキャビテーション信号である。平均差異は、計算されたキャビテーション位置特定に定誤差がないことを示している。
【0059】
水中聴音器11間の遅延に基づく方法で行われた位置特定は、優れた正確さを示した。全周波数帯域幅または550 kHz低調波周辺の200 kHz帯だけを使用して相関関係を計算することによって、測定された位置の正確さは、それぞれ3.1±1.8 mmおよび1.4±0.8 mmだった。狭められた帯域幅の使用は、提案された方法に実質的な改善を提供する。また、計算された位置が常にキャビテーションクラウドの内側または非常に近い、ということが画像に見てとれる。
【0060】
実施例2
実験のもう一つの非限定的な例は、本発明の位置特定方法を実施して行われる。
【0061】
シミュレーション
この数値実験では、3つのセンサーおよび任意の数の音響源が体積内の選ばれた場所に設置される。音響源は、好適なカメラで測定された時のキャビテーションクラウドの広がりによって画定されるエリア内に、ランダムなやり方で設置される。各音響源の合成キャビテーション信号は、高調波(1オクターブにつき3 dB低下)、低調波および超調波を対応する高調波の40 dB下で加えることによって作られる。それから、これらのピークの1つ1つが各音響源に対して6 dBの範囲内でランダムに調整される。慣性キャビテーションをシミュレーションするため、-30 dBのランダムホワイトノイズが最後に加えられる。それから、各音響源のキャビテーション信号が各センサーに伝搬する。この時点で、測定ノイズを提示するため、もう一つのランダムノイズが含まれる。
図6は、センサーのうち1つによって取得された信号例の周波数成分を示す。
図7は、センサーおよび音響源の位置決めを例示する。
【0062】
位置特定方法の選択
一辺が5mmの立方体の中でランダムに分布した1~40個の合成キャビテーション源に対して、シミュレーションが実行される。測定された遅延からの場所の計算は、同じ気泡分布に対して2つの計算方法で並行して処理される。
図8は、計算された点と発生源との間の平均距離について、両方の計算方法の位置特定性能を示す。平均の正確さは、費用関数の最小化および双曲線解法に基づく計算方法で、それぞれ5 mmおよび4 mmである。しかしながら、費用関数に基づく計算方法での正確さには、より高い変動性がある。その上、計算時間は、費用関数だと50 ms周辺であるのに対して双曲線解法だと0.5 msである(非最適化、Matlabで実行、Intel i5、2.4 GHz(2コア)、4 GB RAMの市販のノートパソコンで)。この差は、主に、双曲線解法が陽解法である、という事実によって解説される。これによって、信頼性および計算時間の両方の点で、双曲線解法がより優れた選択となる。
【0063】
実験設定
図9に示すように、方法を実験的に検証するため、3つのセンサー、特に水中聴音器11のアンテナが可動アーム20に取り付けられ、集束トランスジューサが含まれている脱気水タンク(酸素2 mg/L)の中に設置されている。トランスデューサは、よく画定されたキャビテーションクラウドが再現可能なやり方で作られる1 MHzで、50サイクル、15 MPaオーダーのピーク圧力で、単一パルスを発生させる。高速度カメラは、位置特定平面と直交する平面を撮像するため向きを合わせて置かれ、超音波パルスと同期化されている。その結果生じた画像は、各パルスのキャビテーションクラウドの正確な形成を確認するのに使用される。キャビテーション信号は、デジタルオシロスコープを通じて100 MHzサンプリング周波数で記録される。アンテナをキャビテーションクラウド下の数カ所の場所に移動させながら、取得が行われる。1.5超調波周辺でのフィルタリングおよび信号包絡線の抽出の後で、音響源の相対変位が正確に検出されているかどうかを評価するため、キャビテーション信号が位置特定アルゴリズムによって処理される。水中および鶏胸部の中の両方で実験が繰り返される。この最後のケースでは、1.5超調波の出現は、キャビテーションの存在を表す。
【0064】
構成最適化
双曲線解法の方法を使用して、トランスデューサの位置の影響が簡潔に数値的に評価される。
図10および
図11は、受容体間の角度をそれぞれ増やしまたは減らしながら、期待される正確さを示す。驚いたことに、正確さは、分離角を減らした時には許容範囲のままだが、角度を増やした時には悪くなる。
【0065】
驚いたことに、より広い分離角が必ずしもより優れているとは限らない。これは、焦点領域内の発生源間の干渉の数が多いので、放出された信号は、全ての方向で同一であるわけではない、という事実によって解説することができる。このように、互いに空間的に近い2つの水中聴音器は、情報の内容も近い信号を取得する。このように相関関係が正確であることが可能であり、その結果として遅延の推定が正確になる。反対に、互いに遠く離れた2つのセンサーは、相関性の低い信号を受け取る可能性がある。これは、相関関係最大値割り出しの不正確さを誘発することがあり、その結果としてこのように遅延の評価が不正確になる。
【0066】
結果
キャビテーション観測
図12に示すように、キャビテーション事象は、位置特定平面と直交する平面で観測される。取得された画像から、キャビテーションクラウドのサイズは、位置特定平面で2.5 mm、直交方向に7.2 mmである、と測定された。
【0067】
シミュレーション
測定されたキャビテーションクラウドのサイズによって、位置特定平面の両方向に2.5 mm、直交方向に7.2 mmの発生源の広がりに対して、位置特定処理がシミュレーションされる。
図13は、実験条件を模倣したシミュレーションからの期待される正確さを示す。この期待される正確さは、位置特定平面での発生源の空間的広がりに対応する、2 mm~3 mmであろう。
【0068】
実験検証
図14および
図15は、発生源をアンテナに対して相対的に変位させながらの、キャビテーションクラウド(それぞれ水および鶏胸部の中)の位置特定を示す。キャビテーションクラウドが水の実験結果の目盛り上に表示されている。たとえ比較的重大な誤差が鶏胸部の中での位置特定に現れたとしても、受容体アンテナに対して相対的なキャビテーションクラウドの移動を追跡することは、それでも可能である。これは、その方法が受容体ネットワークに対して相対的なキャビテーションクラウドの位置を正確に特定することができる、ということを証明している。