(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】単独のおよびプログラム死受容体1(PD-1)抗体と組み合わされた抗TIGIT抗体の安定な製剤、ならびにその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20231214BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231214BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231214BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231214BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231214BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231214BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
A61K39/395 U ZNA
A61K39/395 N
A61K47/18
A61K47/26
A61K9/08
A61P35/00
A61P31/00
A61P43/00 121
C07K16/28
(21)【出願番号】P 2019559836
(86)(22)【出願日】2018-05-01
(86)【国際出願番号】 US2018030516
(87)【国際公開番号】W WO2018204405
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-04-08
(32)【優先日】2017-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522242018
【氏名又は名称】メルク・シャープ・アンド・ドーム・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100219265
【氏名又は名称】鈴木 崇大
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】デ,アルナブ
(72)【発明者】
【氏名】ナラシンハン,チャクラヴァルティ・ナチュ
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/048824(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/028656(WO,A1)
【文献】特表2016-525117(JP,A)
【文献】International Journal of Pharmaceutics,185,1999年,129-188
【文献】薬剤学,2014年,Vol. 74, No. 1,p. 12-18
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61K 47/26
A61K 47/18
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)10mg/mlから200mg/mlの抗TIGIT抗
体;
(ii)8mMから12mMのL-ヒスチジンバッファー;
(iii)6%から8%重量/体積(w/v)のスクロース;
(iv)0.01%から0.10%(w/v)のポリソルベート80;および
(v)1mMから20mMのL-メチオニン
を含み、
抗TIGIT抗
体が、配列番号111のCDRL1、配列番号112のCDRL2および配列番号113のCDRL3を含む3つの軽鎖CDR、ならびに配列番号108のCDRH1、配列番号154のCDRH2および配列番号110のCDHR3を含む3つの重鎖CDRを含み、
製剤のpHが5.3から6.2の間である、製剤。
【請求項2】
抗TIGIT抗
体が、配列番号148に示すアミノ酸配列を含む重鎖可変領域および配列番号152に示すアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む、請求項1の製剤。
【請求項3】
抗TIGIT抗体が、(i)配列番号291に示すアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインおよび配列番号293に示すアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメイン;または(ii)配列番号292に示すアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG4定常ドメインおよび配列番号293に示すアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインを含む、請求項2の製剤。
【請求項4】
10mMのL-ヒスチジンバッファーを含む、請求項1~3のいずれかの製剤。
【請求項5】
15mMのL-メチオニンを含む、請求項4の製剤。
【請求項6】
ポリソルベート80を0.02% w/vの重量比で含む、請求項4または5の製剤。
【請求項7】
10mg/mlから100mg/mlの抗TIGIT抗
体を含む、請求項1~6のいずれかの製剤。
【請求項8】
抗TIGIT抗
体の濃度が、10mg/ml、12.5mg/ml、25mg/ml、50mg/ml、75mg/mlまたは100mg/mlである、請求項7の製剤。
【請求項9】
25mg/mLの抗TIGIT抗体、
10mMのL-ヒスチジンバッファー、
7% w/vのスクロース、
0.02%のポリソルベート80および
15mMのL-メチオニン
を含む、請求項1~8のいずれかの製剤。
【請求項10】
50mg/mLの抗TIGIT抗体、
10mMのL-ヒスチジンバッファー、
7% w/vのスクロース、
0.02%のポリソルベート80および
15mMのL-メチオニン
を含む、請求項1~8のいずれかの製剤。
【請求項11】
10mg/mLの抗TIGIT抗体、
10mMのL-ヒスチジンバッファー、
7% w/vのスクロース、
0.02%のポリソルベート80および
15mMのL-メチオニン
を含む、請求項1~8のいずれかの製剤。
【請求項12】
12.5mg/mLの抗TIGIT抗体、
10mMのL-ヒスチジンバッファー、
7% w/vのスクロース、
0.02%のポリソルベート80および
15mMのL-メチオニン
を含む、請求項1~8のいずれかの製剤。
【請求項13】
製剤のpHが5.8~6.0である、請求項12の製剤。
【請求項14】
10mg/mlから200mg/mlの抗PD1抗
体をさらに含み、
抗ヒトPD-1抗
体が、配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2および配列番号3のCDRL3を含む3つの軽鎖CDRならびに配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2および配列番号8のCDRH3を含む3つの重鎖CDRを含む、請求項1~13のいずれか1項の製剤。
【請求項15】
抗ヒトPD-1抗
体が、配列番号4に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域および配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む、請求項14の製剤。
【請求項16】
ペンブロリズマブである抗ヒトPD-1抗体を含む、請求項14または15の製剤。
【請求項17】
抗TIGIT抗体に対する抗PD1抗体の比が1:1である、請求項14~16のいずれかの製剤。
【請求項18】
10mg/mlの抗PD1抗体、
10mg/mlの抗TIGIT抗体、
10mMのL-ヒスチジンバッファー、
7% w/vのスクロース、
0.02% w/vのポリソルベート80および
15mMのL-メチオニン
を含む、請求項14~17のいずれかの製剤。
【請求項19】
抗PD1抗
体の濃度が、10mg/ml、12.5mg/ml、25mg/ml、50mg/ml、75mg/mlまたは100mg/mlである、請求項14~17のいずれかの製剤。
【請求項20】
キレーターをさらに含む、請求項1~19のいずれかの製剤。
【請求項21】
キレーターがDTPAである、請求項20の製剤。
【請求項22】
ガラスバイアルまたは注入デバイス中に含有される、請求項1~21のいずれかの製剤。
【請求項23】
液体製剤である、少なくとも-70℃未満まで凍結されている、または凍結乾燥製剤からの再構成溶液である、請求項1~22のいずれかの製剤。
【請求項24】
5℃で12ヶ月後に:
(i)サイズ排除クロマトグラフィーにより決定される抗TIGIT抗体の%モノマーが≧95%であり;
(ii)還元CE-SDSにより測定される抗TIGIT抗体の%重鎖および軽鎖が≧90%であり;
(iii)還元CE-SDSにより測定される抗TIGIT抗体の%重鎖および軽鎖が≧95%であり;
(iv)非還元CE-SDSにより測定される抗TIGIT抗体の%インタクトIgGが≧90%であり;および/または
(v)非還元CE-SDSにより測定される抗TIGIT抗体の%インタクトIgGが≧95%である、請求項1~23のいずれかの製剤。
【請求項25】
請求項1~24のいずれか一項の製剤を含む、その必要があるヒト患者におけるがんまたは慢性感染症を処置するための医薬組成物。
【請求項26】
がんを処置するためまたは慢性感染症を処置するための薬物の調製のための、請求項1~24のいずれかの製剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療抗体の製剤および様々な障害の処置におけるその使用に関する。1つの態様において、本発明は、IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(TIGIT)に結合する抗体またはその抗原結合性断片を含む製剤に関する。別の態様において、かかる製剤は、抗ヒトプログラム死受容体1(PD-1)抗体またはその抗原結合性断片をさらに含む。また、様々ながんおよび慢性感染症を本発明の製剤で処置する方法も提供される。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年5月2日に出願されたU.S.S.N62/500,278の利益を主張するものであり、その内容は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0003】
電子的に提出される配列表の参照
本出願の配列表は、ファイル名が「24453WOPCT-SEQTXT-01MAY2018.TXT」、作成日が2018年5月1日およびサイズが227KbであるASCII形式の配列表として、EFS-Web経由で電子的に提出される。EFS-Web経由で提出される本配列表は明細書の一部であり、参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【背景技術】
【0004】
ヒトにおける使用のための抗体医薬は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列が、または可変ドメイン内のそれらのフレームワーク配列がいくらか異なったものであり得るが、典型的にはCDR配列が最も劇的に異なる。同じタンパク質、同じポリペプチドあるいは潜在的に同じエピトープに結合する抗体であっても、完全に異なるCDR配列を含み得る。ヒトにおける使用のための治療抗体はまた、ヒト生殖細胞系列抗体配列から、または例えばヒト化抗体などにおいて非ヒト(例として齧歯類)生殖細胞系列抗体配列から得ることもでき、このことは潜在的なCDR配列のなおさらなる多様性につながる。これらの配列の相違は、溶液中での異なる安定性および溶液パラメータへの異なる応答性をもたらす。加えて、アミノ酸配列の小さな変化または1もしく複数個のアミノ酸残基の変化は、劇的に異なった抗体安定性および配列特異的分解経路への感受性をもたらすことができる。結果として、現在、抗体安定性の最適化に必要な溶液の条件を予測することは可能ではない。各抗体は、最適な溶液配合を決定するために個々に試験されなければならない。Bhambhani et al.(2012) J.Pharm.Sci. 101:1120。
【0005】
抗体はまた、例えば他の治療タンパク質、例えばホルモンおよびサイトカインなどと比べて相対的に高分子量のタンパク質(約150,000Da)でもある。結果として、所望の薬剤モル濃度を達成するために相対的に多い重量の抗体医薬を投薬することがしばしば必要とされる。加えて、自己投与が可能になることから、皮下に抗体医薬を投与することが時に望ましい。自己投与は、例として静脈内への投与のための医療機関来診に関連した時間および費用を回避する。皮下への送達は、単回注射において実際に注射部位に送達することができる溶液の量により制限され、これは一般に約1から1.5mlである。皮下への自己投与は、注射前に患者が薬剤を再懸濁する必要をなくすため、典型的には凍結乾燥形態よりむしろ薬剤の液体溶液製剤を充填したプレフィルドシリンジまたはオートインジェクターを用いて達成される。抗体医薬は効力および一貫した投薬量を確実にするために保存中に安定でなければならないため、選ばれた製剤がどのようなものであっても望ましい特性、例えば高濃度、透明性および許容可能な粘度などを支持すること、ならびにまた、これらの特性および薬剤の効力を典型的な保存条件下で許容可能な長期の保存期間にわたって維持することが重大な意味を持つ。
【0006】
TIGIT(IgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)は、主として活性化されたT細胞およびNK細胞上で発現する免疫調節性受容体である。TIGITは、VSIG9;VSTM3;およびWUCAMとしても知られる。その構造は、1つの細胞外免疫グロブリンドメイン、I型膜貫通領域および2つのITIMモチーフを示す。TIGITは、T細胞上の正の免疫調節性受容体(CD226)および負の免疫調節性受容体(TIGIT)ならびにAPC上に発現するリガンド(CD155およびCD112)からなる共刺激ネットワークの一部を形成する。
【0007】
TIGITの構造における重要な特徴は、その細胞質側末端ドメイン中の免疫受容体チロシンベース阻害モチーフ(ITIM)の存在である。PD-1およびTIGITと同様に、TIGITの細胞質領域内のITIMドメインは、チロシンホスファターゼ、例えばSHP-1およびSHP-2などを、ならびにその後の、T細胞受容体(TCR)サブユニット上の免疫受容体チロシンベース活性化モチーフ(ITAM)内のチロシン残基の脱リン酸化をリクルートすると予測されている。したがって、腫瘍細胞またはTAMSが発現する受容体-リガンドCD155およびCD112によるTIGITの連結は、TCRシグナル伝達の抑制およびT細胞活性化に寄与し得て、これは有効な抗腫瘍免疫を開始するために必須である。それゆえに、TIGITに特異的なアンタゴニスト抗体は、CD155およびCD112誘導性のT細胞応答抑制を阻害し、抗腫瘍免疫を増強することができた。
【0008】
医薬的使用のための、例として様々ながんおよび感染性疾患を処置するための抗TIGIT抗体の安定な製剤への、同様に抗ヒトPD-1抗体と合剤化(co-formulated)された抗TIGIT抗体の安定な製剤へのニーズが存在する。好ましくは、かかる製剤は長期の保存期間を呈し、保存および輸送時に安定であり、好ましくは、自己投与のための薬剤の保存に典型的な条件下、すなわちシリンジ中での冷蔵庫温度で数ヶ月から数年にわたって安定性を呈し、このことは対応する医薬品の長期の保存期間をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【文献】Bhambhani et al.(2012) J.Pharm.Sci. 101:1120
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
1つの態様において、本発明は、(i)抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片;(ii)バッファー、(iii)非還元糖;(iv)非イオン性界面活性剤;および(v)抗酸化剤を含む、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の製剤を包含する。ある実施形態において、製剤は、抗PD-1抗体、例としてペンブロリズマブまたはニボルマブをさらに含む。別の実施形態において、製剤は、キレーターを含む。
【0011】
本発明のある実施形態において、製剤は、(i)約10mg/mlから約200mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片;(ii)約5mMから約20mMのバッファー;(iii)約6%から約8%重量/体積(w/v)の非還元糖;(iv)約0.01%から約0.10%(w/v)の非イオン性界面活性剤;および(v)約1mMから約20mMの抗酸化剤を含む。ある実施形態において、製剤は、抗PD-1抗体、例としてペンブロリズマブまたはニボルマブをさらに含む。別の実施形態において、製剤はキレーターをさらに含む。1つの実施形態において、製剤のpHは4.5~6.5の間である。特定の実施形態において、製剤のpHは約pH5.5から約pH6.2である。さらなる実施形態において、製剤のpHは約pH5.6から約pH6.0である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.7である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.8である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.9である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.0である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.1である。別の実施形態において、製剤のpHは約6.2である。
【0012】
製剤の1つの実施形態において、バッファーはL-ヒスチジンバッファーまたは酢酸ナトリウムであり、非還元糖はスクロースであり、非イオン性界面活性剤はポリソルベート80であり、抗酸化剤はメチオニンまたは薬学的に許容されるその塩である。1つの実施形態において、抗酸化剤はL-メチオニンである。別の実施形態において、抗酸化剤はL-メチオニンの薬学的に許容される塩、例えばメチオニンHClなどである。
【0013】
別の実施形態において、製剤は、(i)約10mg/mlから約200mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片;(ii)約5mMから約20mMのL-ヒスチジンバッファーまたは約5mMから約20mMの酢酸ナトリウムバッファー;(iii)約6%から約8% w/vのスクロース;(iv)約0.01%から約0.10%(w/v)のポリソルベート80;および(v)約1mMから約20mMのL-メチオニンを含む。別の実施形態において、製剤は抗PD-1抗体、例としてペンブロリズマブまたはニボルマブをさらに含む。ある実施形態において、製剤はキレーターをさらに含む。1つの実施形態において、キレーターは約1μMから約50μMの量で存在する。1つの実施形態において、キレーターはDTPAである。別の実施形態において、キレーターはEDTAである。1つの実施形態において、バッファーはL-ヒスチジンバッファーである。1つの実施形態において、製剤は約8mMから約12mMのL-ヒスチジンバッファーを含む。別の実施形態において、製剤は約5mMから約10mMのL-メチオニンを含む。さらなる実施形態において、製剤はポリソルベート80を約0.02%(w/v)の重量比で含む。1つの実施形態において、抗TIGIT製剤はスクロースを約7%(w/v)の重量比で含む。これらの実施形態のいずれかにおいて、メチオニンはL-メチオニンである。
【0014】
製剤の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約10mg/mlから約100mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約10mg/ml、12.5mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、50mg/ml、75mg/mlまたは100mg/mlである。1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約20mg/mlである。1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約25mg/mlである。1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約50mg/mlである。1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約75mg/mlである。1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約100mg/mlである。
【0015】
1つの態様において、約20mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む製剤が提供される。
【0016】
1つの態様において、約25mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む製剤が提供される。
【0017】
1つの態様において、約50mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む製剤が提供される。
【0018】
1つの態様において、約75mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む製剤が提供される。
【0019】
1つの態様において、約100mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む製剤が提供される。
【0020】
上の製剤のいずれかの1つの態様において、製剤のpHは約5.4から約6.2である。別の態様において、製剤のpHは約5.5~6.2である。別の実施形態において、製剤のpHは約5.8~6.1である。別の実施形態において、pHは約5.8である。1つの実施形態において、pHは5.9である。別の実施形態において、pHは6.0である。さらなる実施形態において、pHは6.1である。
【0021】
上の製剤のいずれかの1つの態様において、製剤は抗PD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。1つの実施形態において、抗PD1抗体はペンブロリズマブである。別の態様において、抗PD1抗体はニボルマブである。
【0022】
別の態様において、製剤はキレーターをさらに含み得る。1つの実施形態において、キレーターはDTPAである。1つの実施形態において、キレーターはEDTAである。1つの態様において、キレーターは約1μMから約50μMの量で存在する。1つの実施形態において、製剤は約5μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約10μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約15μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約20μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約25μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約30μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約35μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約40μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約45μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、製剤は約50μMのキレーターを含む。1つの実施形態において、キレート剤は、上述の量のいずれかで存在するDTPAである。別の実施形態において、キレート剤は、上述の量のいずれかで存在するEDTAである。
【0023】
1つの実施形態において、製剤はガラスバイアルの中に含有される。別の実施形態において、製剤は注入デバイスの中に含有される。別の実施形態において、製剤は液体製剤である。1つの態様において、製剤は少なくとも-70℃未満まで凍結されている。別の実施形態において、製剤は凍結乾燥製剤からの再構成溶液である。
【0024】
ある種の実施形態において、製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも3ヶ月間、好ましくは6ヶ月間、より好ましくは1年間、なおより好ましくは2年までの間を通して安定である。製剤の1つの実施形態において、5℃で12ヶ月後、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定される抗TIGIT抗体の%モノマーは≧90%である。製剤の別の実施形態において、5℃で12ヶ月後、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定される抗TIGIT抗体の%モノマーは≧95%である。製剤の別の実施形態において、5℃で12ヶ月後、還元CE-SDSにより決定される抗TIGIT抗体の%重鎖および軽鎖は≧90%である。製剤の別の実施形態において、5℃で12ヶ月後、還元CE-SDSにより決定される抗TIGIT抗体の%重鎖および軽鎖は≧95%である。製剤の別の実施形態において、5℃で12ヶ月後、非還元CE-SDSにより決定される抗TIGIT抗体の%インタクトIgGは≧90%である。製剤の別の実施形態において、5℃で12ヶ月後、非還元CE-SDSにより決定される抗TIGIT抗体の%インタクトIgGは≧95%である。
【0025】
上記製剤のいずれかの1つの態様において、製剤は、3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含み、ここで軽鎖CDRは配列番号111またはそのバリアントのCDRL1、配列番号112またはそのバリアントのCDRL2、配列番号113またはそのバリアントのCDRL3を含み、重鎖CDRは配列番号108またはそのバリアントのCDRH1、配列番号154またはそのバリアントのCDRH2および配列番号110またはそのバリアントのCDHR3を含む。上記製剤のいずれかの1つの態様において、製剤は、3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含み、ここで軽鎖CDRは配列番号111のCDRL1、配列番号112のCDRL2、配列番号113のCDRL3を含み、重鎖CDRは配列番号108のCDRH1、配列番号154のCDRH2および配列番号110のCDHR3を含む。別の態様において、製剤は、配列番号148またはそのバリアントを含む重鎖可変領域および配列番号152またはそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含む。別の態様において、製剤は、配列番号148を含む重鎖可変領域および配列番号152を含む軽鎖可変領域を含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含む。1つの態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号291またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインおよび配列番号293またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。1つの態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号291のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインおよび配列番号293のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。別の態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号292のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG4定常ドメインおよび配列番号293のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。別の態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号292またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG4定常ドメインおよび配列番号293またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。
【0026】
1つの態様において、本発明は、(i)抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片;(ii)抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片、(ii)バッファー、(iii)非還元糖;(iv)非イオン性界面活性剤;および(v)抗酸化剤を含む、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片および抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片の合剤(co-formulation)を提供する。ある実施形態において、合剤はキレーターをさらに含む。1つの実施形態において、キレーターはEDTAである。別の実施形態において、キレーターはDTPAである。合剤の1つの実施形態において、抗TIGIT抗体に対する抗ヒトPD-1抗体の比は、1:2である。合剤の1つの実施形態において、抗TIGIT抗体に対する抗ヒトPD-1抗体の比は、1:1である。合剤の1つの実施形態において、抗TIGIT抗体に対する抗ヒトPD-1抗体の比は、2:1である。
【0027】
本発明のある実施形態において、合剤は、(i)約1mg/mlから約200mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片;(ii)約1mg/mlから約200mg/mlの抗ヒトPD-1抗体 (iii)約5mMから約20mMのバッファー;(iv)約6%から約8%重量/体積(w/v)の非還元糖;(v)約0.01%から約0.10%(w/v)の非イオン性界面活性剤;および(vi)約1mMから約20mMの抗酸化剤を含む。ある実施形態において、合剤はキレーターをさらに含む。1つの実施形態において、キレーターは、約1μMから約50μMの量で存在する。1つの実施形態において、キレーターはDTPAである。別の実施形態において、キレーターはEDTAである。
【0028】
合剤の1つの実施形態において、抗TIGIT抗体に対する抗ヒトPD-1抗体の比は、1:2である。合剤の1つの実施形態において、抗TIGIT抗体に対する抗ヒトPD-1抗体の比は、1:1である。合剤の1つの実施形態において、抗TIGIT抗体に対する抗ヒトPD-1抗体の比は、2:1である。1つの実施形態において、合剤のpHは4.5~6.5の間である。特定の実施形態において、製剤のpHは約pH5.5から約pH6.2である。さらなる実施形態において、製剤のpHは約pH5.8~6.0である。
【0029】
合剤の1つの実施形態において、バッファーはL-ヒスチジンバッファーまたは酢酸ナトリウムバッファーであり、非還元糖はスクロースであり、非イオン性界面活性剤はポリソルベート80であり、抗酸化剤はL-メチオニンである。別の実施形態において、合剤は、(i)約1mg/mlから約100mg/mlの抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片;(ii)約1mg/mlから約100mg/mlの抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片;(iii)約5mMから約20mMのL-ヒスチジンまたは約5mMから約20mMの酢酸ナトリウムバッファー;(iv)約6%から約8% w/vのスクロース;(v)約0.01%から約0.10%(w/v)のポリソルベート80;および(vi)約1mMから約20mMのL-メチオニンを含む。ある実施形態において、合剤はキレーターを含んでもよい。1つの実施形態において、キレーターは約1μMから約50μMの量で存在する。1つの実施形態において、キレーターはDTPAである。別の実施形態において、キレーターはEDTAである。合剤の1つの実施形態において、バッファーはL-ヒスチジンバッファーである。1つの実施形態において、合剤は約8mMから約12mMのL-ヒスチジンバッファーを含む。別の実施形態において、合剤は約5mMから約10mMのL-メチオニンを含む。さらなる実施形態において、合剤はポリソルベート80を約0.02% w/vの重量比で含む。1つの実施形態において、合剤はスクロースを約7%(w/v)の重量比で含む。
【0030】
合剤の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約1mg/mlから約100mg/mlである。合剤の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約10mg/mlから約100mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約10mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約12.5mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約20mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約25mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約50mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約75mg/mlである。別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の濃度は、約または100mg/mlである。
【0031】
合剤のいくつかの実施形態において、抗ヒトPD-1抗体の濃度は、約1mg/mlから約100mg/mlである。合剤の1つの実施形態において、抗ヒトPD-1抗体の濃度は、約10mg/mlから約100mg/mlである。別の実施形態において、抗ヒトPD-1抗体の濃度は、20mg/mlである。別の実施形態において、抗ヒトPD-1抗体の濃度は、25mg/mlである。
【0032】
1つの実施形態において、合剤は、約20mg/mlの抗PD1抗体、約20mg/mlの抗TIGIT抗体、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む。
【0033】
1つの実施形態において、合剤は、約25mg/mlの抗PD1抗体、約25mg/mlの抗TIGIT抗体、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む。
【0034】
1つの実施形態において、合剤は、約50mg/mlの抗PD1抗体、約50mg/mlの抗TIGIT抗体、10mMのL-ヒスチジンバッファー、約7% w/vのスクロース、約0.02% w/vのポリソルベート80および約10mMのL-メチオニンを含む。
【0035】
上記製剤のいずれかの1つの態様において、製剤は、3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含み、ここで軽鎖CDRは配列番号111またはそのバリアントのCDRL1、配列番号112またはそのバリアントのCDRL2、配列番号113またはそのバリアントのCDRL3を含み、重鎖CDRは配列番号108またはそのバリアントのCDRH1、配列番号154またはそのバリアントのCDRH2および配列番号110またはそのバリアントのCDHR3を含む。上記製剤のいずれかの1つの態様において、製剤は、3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含み、ここで軽鎖CDRは配列番号111のCDRL1、配列番号112のCDRL2、配列番号113のCDRL3を含み、重鎖CDRは配列番号108のCDRH1、配列番号154のCDRH2および配列番号110のCDHR3を含む。別の態様において、製剤は、配列番号148またはそのバリアントを含む重鎖可変領域および配列番号152またはそのバリアントを含む軽鎖可変領域を含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含む。別の態様において、製剤は、配列番号148を含む重鎖可変領域および配列番号152を含む軽鎖可変領域を含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含む。1つの態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号291またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインおよび配列番号293またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。1つの態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号291のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインおよび配列番号293のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。別の態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号292またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG4定常ドメインおよび配列番号293またはそのバリアントのアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。別の態様において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号292のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG4定常ドメインおよび配列番号293のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む。
【0036】
上記製剤のいずれかの1つの態様において、抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片は3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含み、ここで軽鎖CDRは配列番号1またはそのバリアントのCDRL1、配列番号2またはそのバリアントのCDRL2、配列番号3またはそのバリアントのCDRL3を含み、重鎖CDRは配列番号6またはそのバリアントのCDRH1、配列番号7またはそのバリアントのCDRH2および配列番号8またはそのバリアントのCDHR3を含む。上記製剤のいずれかの1つの態様において、抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片は3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含み、ここで軽鎖CDRは配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2、配列番号3のCDRL3を含み、重鎖CDRは配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2および配列番号8のCDHR3を含む。別の態様において、製剤は、配列番号4またはそのバリアントを含む軽鎖可変領域および配列番号9またはそのバリアントを含む重鎖可変領域を含む抗ヒトPD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。別の態様において、製剤は、配列番号4を含む軽鎖可変領域および配列番号9を含む重鎖可変領域を含む抗ヒトPD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。別の態様において、製剤は、配列番号5を含む軽鎖および配列番号10を含む重鎖を含む抗ヒトPD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。別の態様において、製剤は、配列番号5またはそのバリアントを含む軽鎖および配列番号10またはそのバリアントを含む重鎖を含む抗ヒトPD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。上記製剤のいずれかの1つの態様において、抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片はペンブロリズマブである。別の態様において、抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片はニボルマブである。
【0037】
上記合剤のいずれかの1つの態様において、製剤は、(i)3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片であって、軽鎖CDRが配列番号111のCDRL1、配列番号112のCDRL2、配列番号113のCDRL3を含み、重鎖CDRが配列番号108のCDRH1、配列番号154のCDRH2および配列番号110のCDHR3を含む、前記抗体またはその抗原結合性断片、ならびに(ii)3つの軽鎖CDRおよび3つの重鎖CDRを含む抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片であって、軽鎖CDRが配列番号1のCDRL1、配列番号2のCDRL2、配列番号3のCDRL3を含み、重鎖CDRが配列番号6のCDRH1、配列番号7のCDRH2および配列番号8のCDHR3を含む、前記抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0038】
上の合剤のいずれかの1つの態様において、製剤は、(i)配列番号148を含む重鎖可変領域および配列番号152を含む軽鎖可変領域を含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、ならびに(ii)配列番号4を含む軽鎖可変領域および配列番号9を含む重鎖可変領域を含む抗ヒトPD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0039】
上の合剤のいずれかの別の態様において、製剤は、(i)配列番号148を含む重鎖可変領域を含み、配列番号291のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインをさらに含み、配列番号152を含む軽鎖可変領域を含み、配列番号293のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、ならびに(ii)配列番号5を含む軽鎖および配列番号10を含む重鎖を含む抗ヒトPD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0040】
上の合剤のいずれかの別の態様において、製剤は、(i)配列番号148を含む重鎖可変領域を含み、配列番号292のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインをさらに含み、配列番号152を含む軽鎖可変領域を含み、配列番号293のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインをさらに含む抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、ならびに(ii)配列番号5を含む軽鎖および配列番号10を含む重鎖を含む抗ヒトPD1抗体またはその抗原結合性断片を含む。
【0041】
上記製剤のいずれかの1つの実施形態において、製剤はガラスバイアルの中に含有される。別の実施形態において、製剤は注入デバイスの中に含有される。別の実施形態において、製剤は液体製剤である。1つの態様において、製剤は少なくとも-70℃未満まで凍結されている。別の実施形態において、製剤は凍結乾燥製剤からの再構成溶液である。
【0042】
本発明は、有効量の本明細書中に記載の抗TIGIT製剤または合剤を投与することを含む、その必要がある哺乳動物対象(例としてヒト)における慢性感染症またはがんを処置する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】
図1は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤のpH安定性を示す。
【
図2】
図2は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤のポリソルベート80濃度安定性を示す。
【
図3】
図3は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤のELISAによる力価の安定性データを示す。
【
図4】
図4は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤のUP-SECによるモノマー(%)の安定性データを示す。
【
図5】
図5は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤のUP-SECによる高分子量(HMW)種(%)の安定性データを示す。
【
図6】
図6は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤のUP-SECによる低分子量(LMW)種(%)の安定性データを示す。
【
図7】
図7は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤の還元CE-SDSによる純度 重鎖+軽鎖(%)の安定性データを示す。
【
図8】
図8は、様々な保存条件で9ヶ月にわたる製剤の非還元CE-SDSによる純度 インタクトIgG(%)の安定性データを示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
1つの態様において、本発明は、メチオニンを含む、抗TIGIT抗体およびその抗原結合性断片を含む製剤を提供する。また、メチオニンを含む、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片および抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片の合剤も提供される。各々の場合において、製剤および合剤はキレート剤を含んでもよい。
【0045】
I.定義および略語
本明細書および添付の特許請求の範囲の全体を通じて用いられるとき、次の略語が適用される:
API 医薬品有効成分
CDR 特に指示がないかぎり、Kabatナンバリングシステムを用いて定義される、免疫グロブリン可変領域中の相補性決定領域
CHO チャイニーズハムスター卵巣
CI 信頼区間
DTPA ジエチレントリアミン五酢酸
EC50 50%の効力または結合をもたらす濃度
ELISA 酵素結合免疫吸着アッセイ
FFPE ホルマリン固定パラフィン包埋
FR フレームワーク領域
HRP 西洋ワサビペルオキシダーゼ
HNSCC 頭頸部扁平上皮癌
IC50 50%の阻害をもたらす濃度
IgG 免疫グロブリンG
IHC 免疫組織化学または免疫組織化学的
mAb モノクローナル抗体
MES 2-(N-モルフォリノ)エタンスルホン酸
NCBI 国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)
NSCLC 非小細胞肺がん
PCR ポリメラーゼ連鎖反応
PD-1 プログラム死1(別名 プログラム細胞死-1およびプログラム死受容体1)
PD-L1 プログラム細胞死1リガンド1
PD-L2 プログラム細胞死1リガンド2
PS80 ポリソルベート80
TNBC トリプルネガティブ乳がん
VH 免疫グロブリン重鎖可変領域
VK 免疫グロブリンカッパ軽鎖可変領域
VL 免疫グロブリン軽鎖可変領域
v/v 体積あたり体積
WFI 注射用水
w/v 体積あたり重量
本発明がより容易に理解され得るように、ある種の技術用語および科学用語が下に具体的に定義される。本書類中のどこかで具体的に定義されないかぎり、本明細書中で用いられる全ての他の技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者により通例的に理解される意味を持つ。
【0046】
本明細書の全体を通じておよび添付の特許請求の範囲の中で用いられるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに他を指示しないかぎり、複数形の言及を包含する。
【0047】
「または」への言及は、文脈が指し示された可能なもののうちの1つを明らかに指示しないかぎり、いずれかまたは両方の可能なものを指し示す。いくつかの場合において、「および/または」は、いずれかまたは両方の可能なものを強調するために採用された。
【0048】
本明細書中で用いられる、がんを「処置する」または「処置すること」は、少なくとも1つの肯定的な治療効果、例えば、がん細胞の数の低減、腫瘍サイズの低減、末梢器官へのがん細胞の浸潤速度の低減、または腫瘍転移もしくは腫瘍増殖の速度の低減などを達成するために、本発明の製剤を、免疫状態もしくはがん状態を持つ対象またはがんもしくは病原体性感染症(例としてウイルス、細菌、真菌)と診断された対象に投与することを意味する。「処置」は、次のものの1または複数を包含し得る:抗腫瘍免疫応答を誘導/向上させること、病原体、毒素および/または自己抗原に対する免疫応答を刺激すること、ウイルス感染に対する免疫応答を刺激すること、1または複数の腫瘍マーカーの数を減少させること、腫瘍細胞の増殖または生存を阻害すること、1または複数のがん性病変または腫瘍を除去することまたはそのサイズを低減させること、1または複数の腫瘍マーカーのレベルを減少させること、寛解させること、がんの重症度または持続期間を低減させること、同様の未処置の患者における予想生存期間と比べて患者の生存期間を延ばすこと。
【0049】
「免疫状態」または「免疫障害」は、例として病理学的炎症、炎症性障害および自己免疫性の障害または疾患を包含する。「免疫状態」とはまた、感染症、持続性感染症および増殖性状態、例えばがん、腫瘍および血管新生などをいい、免疫系による根絶に抵抗する感染症、腫瘍およびがんを包含する。「がん状態」としては、例としてがん、がん細胞、腫瘍、血管新生、および前がん状態、例えば異形成などが挙げられる。
【0050】
がんにおける肯定的な治療効果は、いくつかの方法で測定することができる(W.A.Weber,J.Nucl.Med. 50:1S-10S(2009)を参照されたい)。例えば、腫瘍増殖阻害に関して、NCI標準によると、T/C≦42%が抗腫瘍活性の最小レベルである。T/C<10%は、高い抗腫瘍活性レベルと考えられ、ここでT/C(%)=処置された腫瘍体積の中央値/対照の腫瘍体積の中央値×100である。いくつかの実施形態において、本発明の製剤の投与により達成される処置は、無増悪生存期間(PFS)、無病生存期間(DFS)または全生存期間(OS)のいずれかである。PFSは、「腫瘍無増悪期間(Time to Tumor Progression)」とも呼ばれ、がんが増殖しない処置中および処置後の期間を指し示し、患者が完全奏功または部分奏功を経験した時間、同様に患者が安定疾患を経験した時間を包含する。DFSとは、患者が無病のままである処置中および処置後の期間をいう。OSとは、ナイーブまたは未処置の個体または患者と比べた平均余命の延長をいう。本発明の製剤、処置方法および使用のある実施形態は、あらゆる患者における肯定的な治療効果の達成に有効でないこともあるが、当該技術分野で知られている任意の統計的検定、例えばStudentのt検定、chi2検定、MannおよびWhitneyによるU検定、Kruskal-Wallis検定(H-検定)、Jonckheere-Terpstra検定ならびにWilcoxon検定などにより決定される統計的に有意な数の対象においては、そうであろう。
【0051】
用語「患者」(あるいは本明細書中で「対象」または「個体」と呼ばれる)とは、本発明の製剤で処置されることが可能な哺乳動物(例としてラット、マウス、イヌ、ネコ、ウサギ)をいい、最も好ましくはヒトである。いくつかの実施形態において、患者は、成人の患者である。他の実施形態において、患者は、小児の患者である。
【0052】
用語「抗体」とは、所望の生物学的活性を呈する任意の形態の抗体をいう。それゆえに、これは最も広い意味で用いられ、具体的には、限定されるものではないが、モノクローナル抗体(完全長のモノクローナル抗体を包含する)、ポリクローナル抗体、ヒト化抗体、完全ヒト抗体およびキメラ抗体に及ぶ。「親抗体」は、意図される使用のための抗体の改変に先立って、例えばヒト治療抗体としての使用のための抗体のヒト化などに先立って、免疫系の抗原への曝露により得られる抗体である。
【0053】
一般的に、基本的な抗体構造単位はテトラマーを含む。各テトラマーは2つの同一のポリペプチド鎖ペアを包含し、各ペアは1つの「軽」鎖(約25kDa)および1つの「重」鎖(約50~70kDa)を持つ。各鎖のアミノ末端部分は、主として抗原認識に関与する約100から110個以上のアミノ酸からなる可変領域を包含する。各軽鎖/重鎖ペアの可変領域は、抗体結合部位を形成する。それゆえに、一般的に、インタクトな抗体は2つの結合部位を持つ。重鎖のカルボキシ末端部分は、主としてエフェクター機能に関与する定常領域を規定し得る。典型的に、ヒトの軽鎖は、カッパ軽鎖およびラムダ軽鎖に分類される。さらに、ヒト重鎖は典型的にミュー、デルタ、ガンマ、アルファまたはイプシロンに分類され、それぞれ抗体のアイソタイプをIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEと規定する。軽鎖および重鎖内で、可変領域および定常領域は約12個以上のアミノ酸からなる「J」領域により連結され、重鎖はまた約10個以上のアミノ酸からなる「D」領域も包含する。全般的に、Fundamental Immunology Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed. Raven Press,N.Y.(1989)を参照されたい。
【0054】
典型的に、重鎖および軽鎖両方の可変ドメインは、相補性決定領域(CDR)とも呼ばれる3つの高頻度可変領域を含み、これらは比較的保存されたフレームワーク領域(FR)内に位置する。CDRは通常フレームワーク領域と並んでおり、特異的なエピトープへの結合を可能にする。一般的に、N末端からC末端までに、軽鎖および重鎖両方の可変ドメインは、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、一般に、Sequences of Proteins of Immunological Interest,Kabat,et al.;National Institutes of Health,Bethesda,Md.;5th ed.;NIH Publ.No.91-3242(1991);Kabat(1978) Adv.Prot.Chem.32:1-75;Kabat,et al.,(1977) J.Biol.Chem.252:6609-6616;Chothia,et al.,(1987) J.Mol.Biol.196:901-917またはChothia,et al.,(1989) Nature 342:878-883の定義に従う。
【0055】
特定の標的タンパク質「に特異的に結合する」抗体は、他のタンパク質と比べてその標的への優先的な結合を呈する抗体であるが、この特異性は絶対的な結合特異性を必要としない。抗体は、その結合が試料中の標的タンパク質の存在を、例として望まれない結果、例えば偽陽性などを生じることなく決定するならば、その意図された標的に「特異的」であると考えられる。本発明において有用な抗体またはその結合性断片は、非標的タンパク質とのアフィニティーよりも少なくとも2倍強い、好ましくは少なくとも10倍強い、より好ましくは少なくとも20倍強い、および最も好ましくは少なくとも100倍強いアフィニティーを有して、標的タンパク質に結合する。本明細書中で用いられるとき、所与のアミノ酸配列、例として成熟ヒトTIGITまたはヒトPD-1のアミノ酸配列を含むポリペプチドに結合するがその配列を欠いたタンパク質に結合しない場合、抗体は、その配列を含むポリペプチドに特異的に結合するといわれる。
【0056】
「キメラ抗体」とは、重鎖および/または軽鎖のある部分は特定の種(例としてヒト)に由来する抗体または特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であるが、鎖(複数可)の残部は別の種(例としてマウス)に由来する抗体または別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である抗体をいい、同様に、それらが所望の生物学的活性を呈するかぎり、かかる抗体の断片をもいう。
【0057】
本明細書中で用いられる「合剤化される(co-formulated)」または「合剤(co-formulation)」または「合剤(coformulation)」または「合剤化される(coformulated)」とは、個々に製剤化、保存され、次いで投与前に混合されるか別々に投与されるのではなく、単一のバイアルまたは容器(例えば注入デバイス)中で一緒に製剤化され、配合物(combined product)として保存される、少なくとも2つの異なる抗体またはその抗原結合性断片をいう。1つの実施形態において、合剤は2つの異なる抗体またはその抗原結合性断片を含有する。
【0058】
用語「薬学的有効量」または「有効量」は、それによって疾患または状態を処置するために十分な治療組成物または製剤が患者に導入される量を意味する。当業者は、このレベルが患者の特質、例えば年齢、体重などに応じて変動し得ることを認識する。
【0059】
用語「約」とは、物質もしくは組成物の量(例としてmMまたはM)、製剤構成成分のパーセンテージ(v/vまたはw/v)、溶液/製剤のpH、または方法中のステップを特徴付けるパラメータの値などを修飾するとき、例えば、物質または組成物の調製、特性評価および/または使用に関与する典型的な測定、操作およびサンプリング手法を通じて;これらの手法における器差を通じて;組成物を作製もしくは使用するためまたは手法を実施するために採用される成分の製造、供給源または純度の差を通じてなどで生じ得る数量の変動をいう。ある種の実施形態において、「約」は、±0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%または10%の変動を意味することができる。
【0060】
本明細書中で用いられるとき、「x %(w/v)」はx g/100mlと等しい(例えば5% w/vは50mg/mlと等しい)。
【0061】
本発明の製剤は、再構成時にまたは液体形態で生物学的に活性がある抗体およびその断片を包含する。
【0062】
用語「がん」、「がん性の」または「悪性」とは、典型的に未制御の細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理的状態をいう、または記載する。がんの例としては、限定されるものではないが、癌腫、リンパ腫、白血病、芽腫および肉腫が挙げられる。かかるがんのより特定の例としては、扁平上皮癌、骨髄腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、神経膠腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、胃腸(消化管)がん、腎臓がん、卵巣がん、肝臓がん、リンパ芽球性白血病、リンパ性白血病、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がん、前立腺がん、甲状腺がん、メラノーマ、軟骨肉腫、神経芽細胞腫、膵臓がん、多形神経膠芽腫、子宮頸がん、脳がん、胃がん、膀胱がん、肝がん、乳がん、結腸癌腫および頭頸部がんが挙げられる。
【0063】
「Chothia」は、Al-Lazikani et al.,JMB 273:927-948(1997)中に記載される抗体ナンバリングシステムを意味する。
【0064】
本明細書中で用いられる「Kabat」は、Elvin A.Kabat((1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)により開発された免疫グロブリンのアラインメントおよびナンバリングシステムを意味する。
【0065】
「増殖阻害剤」とは、本明細書中で用いられるとき、インビトロまたはインビボのいずれかにおいて、細胞、特に本明細書中で同定される遺伝子のいずれかを過剰発現するがん細胞の増殖を阻害する化合物または組成物をいう。それゆえに、増殖阻害剤は、S期においてかかる遺伝子を過剰発現する細胞のパーセンテージを顕著に低減するものである。増殖阻害剤の例としては、細胞周期の進行を(S期以外のところで)遮断する剤、例えばG1停止およびM期停止を誘導する剤などが挙げられる。古典的なM期ブロッカーとしては、ビンカ類(ビンクリスチンおよびビンブラスチン)、タキサン類およびトポII阻害剤、例えばドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシンおよびエトポシドなどが挙げられる。G1を停止させる剤はまたS期停止にまで波及し、例えば、DNAアルキル化剤、例えばダカルバジン、メクロレタミンおよびシスプラチンなどがある。さらなる情報は、The Molecular Basis of Cancer、MendelsohnおよびIsrael編の1章に、Murakamiらによる“Cell cycle regulation, oncogens, and antineoplastic drugs”というタイトルで見出すことができる(WB Saunders:フィラデルフィア、1995年)。
【0066】
用語「TIGIT結合性断片」、「その抗原結合性断片」、「その結合性断片」または「その断片」は、抗原(ヒトTIGIT)に結合してその活性を阻害する(例としてヒトTIGITのその天然のリガンドへの結合を遮断する)というその生物学的活性をなお実質的に保持した抗体の断片または誘導体を包含する。それゆえ、用語「抗体断片」またはTIGIT結合性断片とは、完全長抗体の部分、一般にその抗原結合性領域または可変領域をいう。TIGIT抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’) 2およびFv断片が挙げられる。典型的に、結合性断片または誘導体は、そのTIGIT阻害活性の少なくとも10%を保持する。所望の生物学的効果を発揮するために十分なアフィニティーを有する任意の結合性断片が有用であるが、いくつかの実施形態において、結合性断片または誘導体はそのTIGIT阻害活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%(またはそれより多い)を保持する。いくつかの実施形態において、抗原結合性断片は、その抗原に、無関係の抗原とのアフィニティーよりも少なくとも2倍強い、好ましくは少なくとも10倍強い、より好ましくは少なくとも20倍強い、最も好ましくは少なくとも100倍強いアフィニティーを有して結合する。1つの実施形態において、抗体は、例としてスキャチャード解析により決定されるアフィニティーが約109リットル/molよりも強い。Munsen et al.(1980) Analyt.Biochem. 107:220-239。また、TIGIT結合性断片はその生物活性を実質的に変えない保存的アミノ酸置換を持つバリアントを包含することができることも意図される。
【0067】
用語「PD-1結合性断片」、「その抗原結合性断片」、「その結合性断片」または「その断片」は、抗原(ヒトPD-1)に結合してその活性を阻害する(例としてヒトPD-1のPDL1およびPDL2への結合を遮断する)というその生物学的活性をなお実質的に保持した抗体の断片または誘導体を包含する。それゆえ、用語「抗体断片」またはPD-1結合性断片とは、完全長抗体の部分、一般にその抗原結合性領域または可変領域をいう。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、F(ab’) 2およびFv断片が挙げられる。典型的に、結合性断片または誘導体は、そのPD-1阻害活性の少なくとも10%を保持する。所望の生物学的効果を発揮するために十分なアフィニティーを有する任意の結合性断片が有用であるが、いくつかの実施形態において、結合性断片または誘導体はそのPD-1阻害活性の少なくとも25%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、99%または100%(またはそれより多い)を保持する。いくつかの実施形態において、抗原結合性断片は、その抗原に、無関係の抗原とのアフィニティーよりも少なくとも2倍強い、好ましくは少なくとも10倍強い、より好ましくは少なくとも20倍強い、最も好ましくは少なくとも100倍強いアフィニティーを有して結合する。1つの実施形態において、抗体は、例としてスキャチャード解析により決定されるアフィニティーが約109リットル/molよりも強い。Munsen et al.(1980) Analyt.Biochem. 107:220-239。また、PD-1結合性断片はその生物活性を実質的に変えない保存的アミノ酸置換を持つバリアントを包含することができることも意図される。
【0068】
「ヒト抗体」とは、ヒト免疫グロブリンタンパク質配列のみを含む抗体をいう。ヒト抗体は、マウス、マウス細胞またはマウス細胞に由来するハイブリドーマ中で産生された場合はマウスの糖鎖を含有し得る。同様に、「マウス抗体」または「ラット抗体」とは、それぞれマウスまたはラットの免疫グロブリン配列のみを含む抗体をいう。
【0069】
「ヒト化抗体」とは、非ヒト(例としてマウス)抗体からの、同様にヒト抗体からの配列を含有する抗体の形態をいう。かかる抗体は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小限の配列を含有する。一般的に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで非ヒト免疫グロブリンのそれに相当する高頻度可変ループの全てまたは実質的に全て、およびFR領域の全てまたは実質的に全ては、ヒト免疫グロブリン配列のそれである。ヒト化抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも部分を、典型的にヒト免疫グロブリンのそれを含んでもよい。齧歯類抗体のヒト化形態は、一般に、親の齧歯類抗体と同じCDR配列を含むが、ヒト化抗体のアフィニティーを向上させるため、安定性を向上させるため、または他の理由のためにある種のアミノ酸置換が包含され得る。
【0070】
本発明の抗体はまた、変化したエフェクター機能を提供するためにFc領域が改変(またはブロック)された抗体を包含する。例として、米国特許第5,624,821号;WO2003/086310;WO2005/120571;WO2006/0057702;Presta (2006) Adv.Drug Delivery Rev. 58:640-656を参照されたい。かかる改変は、免疫系の様々な反応を亢進または抑制するために用いることができ、診断および治療において潜在的な有益効果を有する。Fc領域の変化としては、アミノ酸の変更(置換、欠失および挿入)、グリコシル化または脱グリコシル化、および複数のFcを加えることが挙げられる。Fcへの変更はまた、治療抗体における抗体半減期を変えることもでき、より長い半減期は投薬をより低頻度にし、同時に利便性を向上させ、材料の使用を減らす。Presta (2005) J. Allergy Clin. Immunol.116:731 at 734-35を参照されたい。
【0071】
「完全ヒト抗体」とは、ヒト免疫のグロブリンタンパク質配列のみを含む抗体をいう。完全ヒト抗体は、マウス、マウス細胞またはマウス細胞に由来するハイブリドーマ中で産生された場合はマウスの糖鎖を含有し得る。同様に、「マウス抗体」とは、マウスの免疫グロブリン配列のみを含む抗体をいう。完全ヒト抗体は、ヒトにおいて、ヒト免疫グロブリン生殖細胞系列配列を持つトランスジェニック動物において、ファージディスプレイまたは他の分子生物学的方法によって作成され得る。
【0072】
「高頻度可変領域」とは、抗原結合に関与する抗体のアミノ酸残基をいう。高頻度可変領域は、「相補性決定領域」もしくは「CDR」からのアミノ酸残基(例としてKabatナンバリングシステム(Kabat et al.(1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed. Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.)により測定される軽鎖可変ドメイン中の残基24~34(CDRL1)、50~56(CDRL2)および89~97(CDRL3)ならびに重鎖可変ドメイン中の残基31~35(CDRH1)、50~65(CDRH2)および95~102(CDRH3))ならびに/または「高頻度可変ループ」からのアミノ酸残基(すなわち軽鎖可変ドメイン中の残基26~32(L1)、50~52(L2)および91~96(L3)ならびに重鎖可変ドメイン中の26~32(H1)、53~55(H2)および96~101(H3)(Chothia and Lesk (1987) J.Mol.Biol. 196:901-917)を含む。本明細書中で用いられるとき、用語「フレームワーク」または「FR」の残基とは、本明細書中でCDR残基として規定される高頻度可変領域残基以外のそれらの可変ドメイン残基をいう。CDRおよびFRの残基は、Kabatの標準的な配列定義に従って決定される。Kabat et al.(1987) Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda Md。
【0073】
「保存的改変バリアント」または「保存的置換」とは、当業者に知られているアミノ酸の置換をいい、一般に、ポリペプチドの必須領域においてさえも得られる分子の生物学的活性を変えることなくなされ得る。かかる例示的な置換は、好ましくは、次の表1中に記載されるものに従ってなされる。
【0074】
【0075】
加えて、当業者は、一般的に、ポリペプチドの非必須領域における単一のアミノ酸置換は生物学的活性を実質的に変えないことを認識する。例としてWatson et al.(1987) Molecular Biology of the Gene,The Benjamin/Cummings Pub.Co.,p.224(4th Ed.)を参照されたい。
【0076】
本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて用いられる句「から本質的になる(consists essentially of)」またはバリエーション、例えば「から本質的になる(consist essentially of)」または「から本質的になること(consisting essentially of)」などは、任意の列挙された要素または要素の群を含めること、および定められた投薬レジメン、方法または組成物の基本的なまたは新規の特性を実質的に変化させない、列挙された要素と性質が類似したまたは異なる他の要素を含めてもよいことを指し示す。限定されない例として、列挙されたアミノ酸配列から本質的になる結合性化合物は、結合性化合物の特性に実質的に影響しない1または複数のアミノ酸をも包含し得て、これは1または複数のアミノ酸残基の置換を包含する。
【0077】
「を含むこと(comprising)」またはバリエーション、例えば「を含む(comprise)」、「を含む(comprises)」または「を含む(comprised of)」などは、明示的な言語または必然的な暗示のために文脈が他のものを必要としないかぎり、本明細書および特許請求の範囲の全体を通じて包含的な意味で、すなわち、述べられた特徴の存在を特定するが本発明の実施形態のいずれかの作用または有用性を実質的に高め得るさらなる特徴の存在または追加を排除せずに用いられる。
【0078】
「単離された抗体」および「単離された抗体断片」とは精製状態をいい、かかる文脈において、指名された分子が他の生物学的分子、例えば核酸、タンパク質、脂質、炭水化物または他の物質、例えば細胞デブリおよび増殖培地などを実質的に含まないことを意味する。一般に、用語「単離された」は、本明細書中に記載される結合性化合物の実験的または治療的な使用を実質的に妨げる量で存在しないかぎり、かかる物質の完全な不存在、または水、バッファーもしくは塩の不存在を指すことは意図されない。
【0079】
本明細書中で用いられる「モノクローナル抗体」または「mAb」または「Mab」とは、実質的に均一な抗体の集団をいい、すなわちその集団を構成する抗体分子のアミノ酸配列は、少量存在し得る潜在的な自然発生変異以外は同一である。対照的に、従来の(ポリクローナル)抗体調製物は、典型的に、それらの可変ドメイン、とりわけそれらのCDRの中に異なるアミノ酸配列を持つ数多くの異なる抗体を包含し、これらはしばしば異なるエピトープに対して特異的である。修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるものとしての抗体の特質を指し示し、何かしらの特定の方法による抗体産生が必要であると解釈されるものではない。例えば、本発明に従って用いられるモノクローナル抗体は、Kohler et al.(1975) Nature 256:495により最初に記載されたハイブリドーマ法により作製され得て、または組換えDNA法により作製され得る(例として米国特許No.4,816,567を参照されたい)。「モノクローナル抗体」はまた、ファージ抗体ライブラリーから、例えばClackson et al.(1991) Nature 352:624-628およびMarks et al.(1991) J.Mol.Biol. 222:581-597中に記載される技術を用いて単離され得る。Presta(2005) J.Allergy Clin.Immunol. 116:731も参照されたい。
【0080】
がんと診断されたまたはがんを持つ疑いのある対象に適用される「腫瘍」とは、任意のサイズの悪性または潜在的に悪性の新生物または組織塊をいい、原発性腫瘍および二次性新生物を包含する。固形腫瘍は、通常は嚢胞または液体の領域を含有しない組織の異常増殖物または塊である。異なるタイプの固形腫瘍が、それらを形成する細胞のタイプによって命名されている。固形腫瘍の例は、肉腫、癌腫およびリンパ腫である。白血病(血液のがん)は、一般に固形腫瘍を形成しない(National Cancer Institute,Dictionary of Cancer Terms)。
【0081】
用語「腫瘍サイズ」とは、腫瘍の長さおよび幅として測定することができる腫瘍の全体サイズをいう。腫瘍サイズは、当該技術分野で知られている種々の方法により、例として、対象から摘出した時に腫瘍(複数可)の寸法を例としてキャリパーを用いて測定することにより、または体内にある間にイメージング技術、例として骨スキャン、超音波、CTまたはMRIスキャンを用いることなどによって、決定され得る。
【0082】
本明細書中で用いられる「可変領域」または「V領域」は、異なる抗体間で配列が可変であるIgG鎖のセグメントを意味する。これは、軽鎖中のKabat残基109および重鎖中の113に及ぶ。
【0083】
用語「バッファー」は、本発明の製剤の溶液pHを許容可能な範囲内で維持する剤、または本発明の凍結乾燥製剤の場合は凍結乾燥前に許容可能な溶液pHを与える剤を包含する。
【0084】
用語「凍結乾燥」、「凍結乾燥された(lyophilized)」および「凍結乾燥された(freeze-dried)」とは、乾燥される材料を最初に凍結し、次いで氷または凍結した溶媒を真空環境中で昇華により取り除くプロセスをいう。保存の際の凍結乾燥品の安定性を高めるため、添加剤が予備凍結乾燥製剤(pre-lyophilized formulation)の中に包含され得る。
【0085】
用語「医薬製剤」とは、活性成分が有効であることを可能にするような形態であって、製剤が投与される対象にとって毒性である付加的な構成成分を含有しない調合剤をいう。用語「製剤」および「医薬製剤」は全体を通じて交換可能に用いられる。
【0086】
「薬学的に許容される」とは、採用された有効用量の活性成分を提供するために対象に適度に投与することができ、かつ「一般に安全と認められる」、例として生理学的に耐容できて、ヒトに投与されたときにアレルギー反応または同様の不都合な反応、例えば急性胃蠕動などを典型的に生じない添加剤(媒体、添加物)および組成物をいう。別の実施形態において、この用語は、連邦政府もしくは州政府の規制当局により承認された、または米国薬局方もしくは動物、より詳細にはヒトにおける使用のために一般に認知されている別の薬局方に収載された分子実体および組成物をいう。
【0087】
「再構成」製剤は、タンパク質が再構成製剤中に分散するよう、凍結乾燥タンパク質製剤を希釈剤中に溶解することにより調製されたものである。再構成製剤は投与、例として非経口投与に適しており、皮下投与に適していてもよい。
【0088】
「再構成時間」は、凍結乾燥製剤が溶液と再水和して粒子のない清澄な溶液になるために必要とされる時間である。
【0089】
「安定な」製剤は、保存の際にその中のタンパク質がその物理的安定性および/または化学的安定性および/または生物学的活性を本質的に保持するものである。タンパク質の安定性を測定するための様々な分析技術が当該技術分野において利用可能であり、Peptide and Protein Drug Delivery,247-301,Vincent Lee Ed.,Marcel Dekker,Inc.,New York,N.Y.,Pubs.(1991)およびJones,A. Adv.Drug Delivery Rev. 10:29-90(1993)中にレビューされている。安定性は、選択された温度で選択された期間、測定することができる。例えば、1つの実施形態において、安定な製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも12ヶ月間、顕著な変化が観察されない製剤である。別の実施形態において、安定な製剤は、冷蔵温度(2~8℃)で少なくとも18ヶ月間、顕著な変化が観察されない製剤である。別の実施形態において、安定な製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも3ヶ月間、顕著な変化が観察されない製剤である。別の実施形態において、安定な製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも6ヶ月間、顕著な変化が観察されない製剤である。別の実施形態において、安定な製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも12ヶ月間、顕著な変化が観察されない製剤である。別の実施形態において、安定な製剤は、室温(23~27℃)で少なくとも18ヶ月間、顕著な変化が観察されない製剤である。抗体製剤のための安定性の判断基準は次のとおりである。典型的に、SEC-HPLCにより測定される抗体モノマーの10%以下、好ましくは5%以下しか分解されていない。典型的に、製剤は、視覚分析によると無色、または透明からわずかに乳白色である。典型的に、製剤の濃度、pHおよび浸透圧は+/-10%以下しか変化しない。力価は、典型的に、対照または参照の60~140%、好ましくは80~120%の範囲内である。典型的に、抗体のクリッピング、すなわち例えばHP-SECにより決定される%低分子量種が10%以下、好ましくは5%以下しか観察されない。典型的に、抗体の凝集、すなわち例えばHP-SECにより決定される%高分子量種が10%以下、好ましくは5%以下しか観察されない。
【0090】
抗体は、色および/もしくは清澄性の視覚試験での、またはUV光散乱、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)および動的光散乱により測定される凝集、沈殿および/または変性が顕著な増加を示さないならば、医薬製剤において「その物理的安定性を保持している」。タンパク質構造の変化は、タンパク質3次構造を決定する蛍光分光法により、およびタンパク質2次構造を決定するFTIR分光法により評価することができる。
【0091】
抗体は、顕著な化学的変化を示さないならば、医薬製剤において「その化学的安定性を保持している」。化学的安定性は、タンパク質形態の化学的変化を検出および定量することにより査定することができる。タンパク質の化学構造をしばしば変える分解プロセスとしては、加水分解またはクリッピング(例えばサイズ排除クロマトグラフィーおよびSDS-PAGEなどの方法により評価される)、酸化(例えば質量分析またはMALDI/TOF/MSを伴うペプチドマッピングなどの方法により評価される)、脱アミド化(例えばイオン交換クロマトグラフィー、キャピラリー等電点電気泳動、ペプチドマッピング、イソアスパラギン酸測定などの方法により評価される)および異性化(イソアスパラギン酸含量を測定すること、ペプチドマッピングなどにより評価される)が挙げられる。
【0092】
抗体は、所与の時点における抗体の生物学的活性が、医薬製剤が調製された時点で呈された生物学的活性の予め決められた範囲内であれば、医薬製剤において「その生物学的安定性を保持している」。抗体の生物学的活性は、例えば抗原結合アッセイにより決定することができる。
【0093】
用語「等張」は、対象の製剤がヒト血液と本質的に同じ浸透圧を持つことを意味する。等張性製剤の浸透圧は、一般に約270~328mOsmである。わずかに低張な圧は250~269であり、わずかに高張な圧は328~350mOsmである。浸透圧は、例えば蒸気圧または氷凍結型の浸透圧計を用いて測定することができる。
【0094】
II.本発明の製剤および合剤
1つの態様において、本発明は、ヒトTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を医薬品有効成分として含む、生物学的製剤を提供する。かかる製剤中にメチオニンを含ませることは、抗TIGIT抗体のFc領域中のメチオニン残基、および配列番号110のCDRH3を含む抗TIGIT抗体の例においてはトリプトファン(tryoptophan)の酸化を低減させる。かかる製剤はキレーター、例えばDTPAなどをさらに含み得て、これは酸化をさらに低減させることができる。
【0095】
1つの態様において、本発明はまた、抗TIGIT抗体と抗PD-1抗体との合剤を提供する。ペンブロリズマブの主要な分解経路は、過酸化物ストレスの際の重鎖CDR3中のメチオニン105(Met105)(例として配列番号10のM105)の酸化、ならびに光に曝露されたときのMet105およびFcメチオニン残基の酸化を包含していた。ペンブロリズマブは、試験された分解レベルのための最大のストレス条件下でその生物活性を維持した。しかしながら、表面プラスモン共鳴(SPR)により、過酸化物ストレスを受けた試料について、PD-1に対するアフィニティーの低減が観察された。抗体の露出したメチオニン残基またはCDR中のメチオニン残基は、酸化を通じて抗体の生物学的活性に影響を与える可能性がある。メチオニンの添加は、ペンブロリズマブ重鎖CDR内のMet105の酸化を低減させることが可能である。
【0096】
抗PD-1抗体およびその抗原結合性断片
1つの態様において、本発明は、医薬品有効成分(PD-1 API)としてのヒトPD-1に特異的に結合する抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片(例としてヒトまたはヒト化抗PD-1抗体)と合剤化された抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を含む安定な生物学的製剤、同様に本発明の製剤を用いるための方法を提供する。任意の抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片を、本発明の合剤および方法において用いることができる。特定の実施形態において、PD-1 APIは、ペンブロリズマブおよびニボルマブから選択される抗PD-1抗体である。具体的な実施形態において、抗PD-1抗体はペンブロリズマブである。代替的実施形態において、抗PD-1抗体はニボルマブである。表2は、例示的な抗ヒトPD-1抗体であるペンブロリズマブおよびニボルマブのアミノ酸配列を提供する。本発明の合剤および方法において有用な代替的PD-1抗体および抗原結合性断片は、表3中に示される。
【0097】
いくつかの実施形態において、本発明の合剤における使用のための抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片は、CDRL1、CDRL2およびCDRL3の3つの軽鎖CDRならびに/またはCDRH1、CDRH2およびCDRH3の3つの重鎖CDRを含む。
【0098】
本発明の1つの実施形態において、CDRL1は配列番号1または配列番号1のバリアントであり、CDRL2は配列番号2または配列番号2のバリアントであり、CDRL3は配列番号3または配列番号3のバリアントである。
【0099】
1つの実施形態において、CDRH1は配列番号6または配列番号6のバリアントであり、CDRH2は配列番号7または配列番号7のバリアントであり、CDRH3は配列番号8または配列番号8のバリアントである。
【0100】
1つの実施形態において、3つの軽鎖CDRは配列番号1、配列番号2および配列番号3であり、3つの重鎖CDRは配列番号6、配列番号7および配列番号8である。
【0101】
本発明の代替的実施形態において、CDRL1は配列番号11または配列番号11のバリアントであり、CDRL2は配列番号12または配列番号12のバリアントであり、CDRL3は配列番号13または配列番号13のバリアントである。
【0102】
1つの実施形態において、CDRH1は配列番号16または配列番号16のバリアントであり、CDRH2は配列番号17または配列番号17のバリアントであり、CDRH3は配列番号18または配列番号18のバリアントである。
【0103】
1つの実施形態において、3つの軽鎖CDRは配列番号1、配列番号2および配列番号3であり、3つの重鎖CDRは配列番号6、配列番号7および配列番号8である。
【0104】
代替的実施形態において、3つの軽鎖CDRは配列番号11、配列番号12および配列番号13であり、3つの重鎖CDRは配列番号16、配列番号17および配列番号18である。
【0105】
本発明のさらなる実施形態において、CDRL1は配列番号21または配列番号21のバリアントであり、CDRL2は配列番号22または配列番号22のバリアントであり、CDRL3は配列番号23または配列番号23のバリアントである。
【0106】
なお別の実施形態において、CDRH1は配列番号24または配列番号24のバリアントであり、CDRH2は配列番号25または配列番号25のバリアントであり、CDRH3は配列番号26または配列番号26のバリアントである。
【0107】
別の実施形態において、3つの軽鎖CDRは配列番号21、配列番号22および配列番号23であり、3つの重鎖CDRは配列番号24、配列番号25および配列番号26である。
【0108】
本発明のいくつかの抗ヒトPD-1抗体および抗原結合性断片は、軽鎖可変領域および重鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態において、軽鎖可変領域は配列番号4または配列番号4のバリアントを含み、重鎖可変領域は配列番号9または配列番号9のバリアントを含む。さらなる実施形態において、軽鎖可変領域は配列番号14または配列番号14のバリアントを含み、重鎖可変領域は配列番号19または配列番号19のバリアントを含む。さらなる実施形態において、重鎖可変領域は配列番号27または配列番号27のバリアントを含み、軽鎖可変領域は配列番号28もしくは配列番号28のバリアント、配列番号29もしくは配列番号29のバリアント、または配列番号30もしくは配列番号30のバリアントを含む。かかる実施形態において、バリアントの軽鎖または重鎖可変領域配列は、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換を除いて参照配列と同一である。いくつかの実施形態において、フレームワーク領域の中(すなわちCDRの外側)にある。いくつかの実施形態において、1、2、3、4または5個のアミノ酸置換は保存的置換である。
【0109】
本発明の合剤の1つの実施形態において、抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性断片は、配列番号4を含むまたはこれからなる軽鎖可変領域および配列番号9を含むまたはこれからなる重鎖可変領域を含む。さらなる実施形態において、抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性断片は、配列番号14を含むまたはこれからなる軽鎖可変領域および配列番号19を含むまたはこれからなる重鎖可変領域を含む。本発明の製剤の1つの実施形態において、抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性断片は、配列番号28を含むまたはこれからなる軽鎖可変領域および配列番号27を含むまたはこれからなる重鎖可変領域を含む。さらなる実施形態において、抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性断片は、配列番号29を含むまたはこれからなる軽鎖可変領域および配列番号27を含むまたはこれからなる重鎖可変領域を含む。別の実施形態において、抗体または抗原結合性断片は、配列番号30を含むまたはこれからなる軽鎖可変領域および配列番号27を含むまたはこれからなる重鎖可変領域を含む。
【0110】
別の実施形態において、本発明の合剤は、上記のVLドメインまたはVHドメインのうちの1つと少なくとも95%、90%、85%、80%、75%または50%の配列相同性を有するVLドメインおよび/またはVHドメインを持ち、PD-1への特異的結合を呈する抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性タンパク質を含む。別の実施形態において、本発明の合剤の抗ヒトPD-1抗体または抗原結合性タンパク質は、1、2、3、4もしくは5個まで、またはそれより多くのアミノ酸置換を持つVLおよびVHドメインを含み、PD-1への特異的結合を呈する。
【0111】
上の実施形態のいずれかにおいて、PD-1 APIは、ヒトPD-1に特異的に結合する完全長の抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片であり得る。ある種の実施形態において、PD-1 APIは、IgM、IgG、IgD、IgAおよびIgEを包含する免疫グロブリンの任意の分類から選択される完全長の抗PD-1抗体である。好ましくは、抗体はIgG抗体である。IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を包含するIgGの任意のアイソタイプを用いることができる。異なる定常ドメインが本明細書中で提供されるVLおよびVH領域に付加され得る。例えば、本発明の抗体(または断片)の特定の用途がエフェクター機能の変化を求めることであったなら、IgG1以外の重鎖定常ドメインが用いられ得る。IgG1抗体は長い半減期ならびに例えば補体活性化および抗体依存性細胞傷害などのエフェクター機能を提供するが、かかる活性は抗体のあらゆる使用のためには望ましくないこともある。かかる例においては、例えばIgG4定常ドメインが用いられ得る。
【0112】
本発明の実施形態において、PD-1 APIは、配列番号5に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる軽鎖および配列番号10に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる重鎖を含む抗PD-1抗体である。代替的実施形態において、PD-1 APIは、配列番号15に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる軽鎖および配列番号20に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる重鎖を含む抗PD-1抗体である。さらなる実施形態において、PD-1 APIは、配列番号32に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる軽鎖および配列番号31に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる重鎖を含む抗PD-1抗体である。付加的な実施形態において、PD-1 APIは、配列番号33に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる軽鎖および配列番号31に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる重鎖を含む抗PD-1抗体である。なお付加的な実施形態において、PD-1 APIは、配列番号34に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる軽鎖および配列番号31に記載のアミノ酸残基の配列を含むまたはこれからなる重鎖を含む抗PD-1抗体である。本発明のいくつかの合剤において、PD-1 APIは、ペンブロリズマブまたはペンブロリズマブのバイオシミラーである。本発明のいくつかの合剤において、PD-1 APIはニボルマブまたはニボルマブのバイオシミラーである。
【0113】
通常、本発明の抗PD-1抗体および抗原結合性断片ならびに抗TIGIT抗体および抗原結合性断片のアミノ酸配列バリアントは、参照抗体または抗原結合性断片(例として重鎖、軽鎖、VH、VLまたはヒト化配列)のアミノ酸配列と少なくとも75%、より好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95、98または99%のアミノ酸配列同一性を持つアミノ酸配列を持つ。配列に関する同一性または相同性は、本明細書中では、配列を並べ、最大パーセント配列同一性を達成するために必要ならばギャップを導入し、配列同一性の一部としてあらゆる保存的置換を考慮しなかった後の、抗PD-1の残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基のパーセンテージとして定義される。抗体配列のN末端、C末端または内部の伸長、欠失または挿入のいずれも配列同一性または相同性に影響を与えるものと解釈されるものではない。
【0114】
配列同一性とは、2つのポリペプチドのアミノ酸が、2つの配列を最適に並べたときに対応する位置で同じである度合をいう。配列同一性は、BLASTアルゴリズムを用いて決定することができ、ここで、このアルゴリズムのパラメーターは、それぞれの参照配列の全長にわたって、それぞれの配列間に最大マッチを与えるように選択される。次の参考文献は、配列解析のためにしばしば用いられるBLASTアルゴリズムに関する:BLAST ALGORITHMS:Altschul,S.F.,et al.,(1990) J.Mol.Biol. 215:403-410;Gish,W.,et al.,(1993) Nature Genet. 3:266-272;Madden,T.L.,et al.,(1996) Meth.Enzymol. 266:131-141;Altschul,S.F.,et al.,(1997) Nucleic Acids Res. 25:3389-3402;Zhang,J.,et al.,(1997) Genome Res. 7:649-656;Wootton,J.C.,et al.,(1993) Comput.Chem. 17:149-163;Hancock,J.M. et al.,(1994) Comput.Appl.Biosci. 10:67-70;ALIGNMENT SCORING SYSTEMS:Dayhoff,M.O.,et al.,“A model of evolutionary change in proteins.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978) vol.5,suppl.3. M.O.Dayhoff(ed.),pp.345-352,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Schwartz,R.M.,et al.,“Matrices for detecting distant relationships.” in Atlas of Protein Sequence and Structure,(1978) vol.5,suppl.3.”M.O.Dayhoff(ed.),pp.353-358,Natl.Biomed.Res.Found.,Washington,DC;Altschul,S.F.,(1991) J.Mol.Biol. 219:555-565;States,D.J.,et al.,(1991) Methods 3:66-70;Henikoff,S.,et al.,(1992) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915-10919;Altschul,S.F.,et al.,(1993) J.Mol.Evol. 36:290-300;ALIGNMENT STATISTICS:Karlin,S.,et al.,(1990) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87:2264-2268;Karlin,S.,et al.,(1993) Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5877;Dembo,A.,et al.,(1994) Ann.Prob. 22:2022-2039;およびAltschul,S.F.“Evaluating the statistical significance of multiple distinct local alignments.” in Theoretical and Computational Methods in Genome Research(S.Suhai,ed.),(1997) pp.1-14,Plenum,New York。
【0115】
同じく、軽鎖のいずれの分類も、本明細書中の組成物および方法において用いることができる。具体的には、カッパ、ラムダまたはそれらのバリアントは、本発明の組成物および方法において有用である。
【0116】
【0117】
表3.本発明の合剤、方法および使用において有用であるさらなるPD-1抗体および抗原結合性断片
【表3】
【0118】
本発明の合剤のいくつかの実施形態において、PD-1 API(すなわち抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片)は、約25mg/mLから約100mg/mLの濃度で存在する。代替的実施形態において、APIは、約10mg/mL、約25mg/mL、約50mg/mL、約75mg/mLまたは約100mg/mLの濃度で存在する。
【0119】
抗TIGIT抗体およびその抗原結合性断片
1つの態様において、本発明は、医薬品有効成分(TIGIT API)としてのヒトTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片(例としてヒトまたはヒト化抗TIGIT抗体)を含む生物学的製剤、同様に本発明の製剤を用いるための方法を提供する。
【0120】
別の態様において、本発明はまた、(i)ヒトTIGITに特異的に結合する抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片(例としてヒトまたはヒト化抗TIGIT抗体)、および(ii)ヒトPD-1に特異的に結合する抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片を含む生物学的合剤を提供する。任意の抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片を、合剤を包含する本発明の製剤および方法において用いることができる。例示的な抗TIGIT抗体の配列は、下で表4および5の中に記載される。
【0121】
【0122】
いくつかの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、CDRL1、CDRL2およびCDRL3の3つの軽鎖CDRならびに/またはCDRH1、CDRH2およびCDRH3の3つの重鎖CDRを含む。
【0123】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号35を含むCDRH1、配列番号36を含むCDRH2、配列番号:37、103、104、105、106、107または160のいずれかを含むCDRH3、配列番号38を含むCDRL1、配列番号:39、89、90、91、92、93、94、95、96、97または69のいずれかを含むCDRL2、および配列番号:40、98、99、100、101、102または162のいずれかを含むCDRL3を含む。
【0124】
別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号81を含むCDRH1、配列番号82を含むCDRH2、配列番号83を含むCDRH3、配列番号84を含むCDRL1、配列番号85を含むCDRL2、および配列番号86を含むCDRL3を含む。
【0125】
別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号108を含むCDRH1、配列番号:109、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、154、155または167のいずれかを含むCDRH2、配列番号:110、173、174、175、176、177、178、179、180、181、182、183、184、185、186または187のいずれかを含むCDRH3、配列番号111を含むCDRL1、配列番号:112、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、142または168のいずれかを含むCDRL2、および配列番号113のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0126】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号35を含むCDRH1、配列番号36を含むCDRH2、配列番号37を含むCDRH3、配列番号38を含むCDRL1、配列番号39を含むCDRL2、および配列番号40のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0127】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号108を含むCDRH1、配列番号109、154または145のいずれか1つを含むCDRH2、配列番号110を含むCDRH3、配列番号111を含むCDRL1、配列番号112を含むCDRL2、および配列番号113のアミノ酸配列を含むCDRL3を含む。
【0128】
別の実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号108のアミノ酸配列を含むCDRH1、配列番号154を含むCDRH2、配列番号110を含むCDRH3、配列番号111を含むCDRL1、配列番号112を含むCDRL2、および配列番号113を含むCDRL3を含む。
【0129】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、可変重鎖領域および可変軽鎖可変領域を含む。1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号41を含む可変重鎖領域および配列番号42を含む可変軽鎖領域を含む。
【0130】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号87を含む可変重鎖領域および配列番号88を含む可変軽鎖領域を含む。
【0131】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号114を含む可変重鎖領域および配列番号115を含む可変軽鎖領域を含む。
【0132】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号:43~58、65~75および87のいずれかを含む可変重鎖領域ならびに配列番号:59~64、76~80および88のいずれか1つを含む可変軽鎖領域を含む。
【0133】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号:144~149のいずれかを含む可変重鎖領域および配列番号:150~153のいずれかを含む可変軽鎖領域を含む。
【0134】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号148を含む可変重鎖領域を含む可変重鎖領域および配列番号152を含む可変軽鎖領域を含む。
【0135】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号147を含む可変重鎖領域および配列番号150を含む可変軽鎖領域を含む。
【0136】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号148を含む可変重鎖領域および配列番号153を含む可変軽鎖領域を含む。
【0137】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号163を含む可変重鎖領域および配列番号165を含む可変軽鎖領域を含む。
【0138】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号169を含む可変重鎖領域および配列番号171を含む可変軽鎖領域を含む。
【0139】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号164を含む可変重鎖領域および配列番号166を含む可変軽鎖領域を含む。
【0140】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号170を含む可変重鎖領域および配列番号172を含む可変軽鎖領域を含む。
【0141】
【0142】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体または抗原結合性断片は、配列番号188を含むCDRH1、配列番号189を含むCDRH2、配列番号:190、220、221または222のいずれかを含むCDRH3、配列番号191を含むCDRL1、配列番号192を含むCDRL2、および配列番号:193、232、233、234、235、236または237のいずれかを含むCDRL3を含む。
【0143】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号204を含むCDRH1、配列番号:205、256、257、258、259、260、261、262または263のいずれかを含むCDRH2、配列番号206を含むCDRH3、配列番号207を含むCDRL1、配列番号208を含むCDRL2、および配列番号209を含むCDRL3を含む。
【0144】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、可変重鎖領域および可変軽鎖可変領域を含む。1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号194を含む可変重鎖領域および配列番号195を含む可変軽鎖領域を含む。
【0145】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号196を含む可変重鎖領域および配列番号200を含む可変軽鎖領域を含む。
【0146】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号210を含む可変重鎖領域および配列番号211を含む可変軽鎖領域を含む。
【0147】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号212を含む可変重鎖領域および配列番号216を含む可変軽鎖領域を含む。
【0148】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号:197、198、199、223、224、225、226、227、228、229、230および231のいずれかを含む可変重鎖領域、ならびに配列番号:201、202、203、238、239、240、241、242、243、244、245、246、247、248、249、250、251、252、253、254および255のいずれかを含む可変軽鎖領域を含む。
【0149】
1つの実施形態において、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号:213、214、215、264、265、266、267、268、269、270、271、272、273、274、275、276、277、278、279、280、281、282、283、284、285および286のいずれかを含む可変重鎖領域、ならびに配列番号:217、218および219のいずれかを含む可変軽鎖領域を含む。
【0150】
本明細書中に記載される製剤において用いられ得るさらなる抗TIGIT抗体としては、例えばPCT国際出願No.WO2016/106302;WO2016/011264;およびWO2009/126688中に開示されているものが挙げられる。
【0151】
【0152】
上述の実施形態のいずれかにおいて、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、上記の可変重鎖のいずれかおよび任意のヒト重鎖定常ドメインを含む抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片はIgGアイソタイプであり、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4のヒト重鎖定常ドメインを含む。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト重鎖IgG1定常ドメイン(配列番号291)またはそのバリアントを含み、ここでバリアントは20個までの改変アミノ酸置換を含む。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号291のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG1定常ドメインを含む抗体である。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、フコシル化されていないヒト重鎖IgG1定常ドメインを含む。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、ヒト重鎖IgG4定常ドメインまたはそのバリアントを含み、ここでバリアントは20個までの改変アミノ酸置換を含む。別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、228位(EUナンバリングスキームを用いる)のアミノ酸がSerからProに置換されているヒト重鎖IgG4定常ドメインを含む。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号292のアミノ酸配列を含むヒト重鎖IgG4定常ドメインを含む。
【0153】
上述の実施形態のいずれかにおいて、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片は、上記の可変軽鎖のいずれかおよびヒト軽鎖定常ドメインを含むことができる。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトカッパ軽鎖定常ドメインまたはそのバリアントを含み、ここでバリアントは20個までの改変アミノ酸置換を含む。別の実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、ヒトラムダ軽鎖定常ドメインまたはそのバリアントを含み、ここでバリアントは20個までの改変アミノ酸置換を含む。1つの実施形態において、本発明の抗体またはその抗原結合性断片は、配列番号293のアミノ酸配列を含むヒトカッパ軽鎖定常ドメインを含む。
【0154】
製剤
本発明の製剤は、抗体凝集物(高分子量種)および微粒子、高分子量種および低分子量種の形成を最小限にし、メチオニン残基の酸化を最小限にし、抗体が生物学的活性を長い時間保持することを確保する。
【0155】
1つの態様において、本発明は、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片の様々な製剤を包含する。例えば、本発明は、(i)抗CTLA4抗体またはその抗原結合性断片、(ii)バッファー(例としてL-ヒスチジンまたは酢酸塩)、(iii)非還元糖(例としてスクロース);(iv)非イオン性界面活性剤(例としてポリソルベート80);および(v)抗酸化剤(例としてL-メチオニン)を含む製剤を包含する。1つの実施形態において、製剤は抗PD1抗体をさらに含む。1つの実施形態において、製剤はキレーターをさらに含む。1つの実施形態において、キレーターは、約1μMから約50μMの量で存在する。1つの実施形態において、キレーターはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)である。別の実施形態において、キレーターはEDTAである。
【0156】
別の態様において、本発明はまた、抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片および抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片の様々な合剤を包含する。1つの実施形態において、製剤は、(i)抗TIGIT抗体またはその抗原結合性断片、(ii)抗ヒトPD-1抗体またはその抗原結合性断片、(iii)バッファー(例としてL-ヒスチジンまたは酢酸塩)、(iv)非還元糖(例としてスクロース)、(v)非イオン性界面活性剤(例としてポリソルベート80)、および(vi)抗酸化剤(例としてL-メチオニン)を含む。1つの実施形態において、製剤はキレーターをさらに含む。1つの実施形態において、キレーターは、約1μMから約50μMの量で存在する。1つの実施形態において、キレーターはジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)である。別の実施形態において、キレーターはEDTAである。
【0157】
本発明の医薬製剤は、バッファーを包含し得る。
【0158】
本発明の医薬製剤および方法において有用であるバッファーとしては、コハク酸塩(コハク酸ナトリウムまたはコハク酸カリウム)、L-ヒスチジン、リン酸塩(リン酸ナトリウムまたはリン酸カリウム)、Tris(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、ジエタノールアミン、クエン酸塩(クエン酸ナトリウム)、酢酸塩(酢酸ナトリウム)などが挙げられる。本発明のある実施形態において、バッファーは、製剤中に約1~20mM(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20mM)の濃度で存在する。本発明の具体的な実施形態において、バッファーは、ヒスチジン、例としてL-ヒスチジンバッファーである。
【0159】
本発明のバッファーのpHは、約4.5から約6.5まで;約5.0~6.2;約5.5~6.0の範囲内であり、好ましくはpHは約5.8である。例示的な製剤にたどり着く際、ヒスチジン、およびpH範囲が5.0~6.0の酢酸塩バッファーが適性を調査された。pH値の範囲が、例えば「pH5.5から6.0の間のpH」などと挙げられるとき、範囲は、挙げられた値を包含することが意図される。例えば、約5.0から約6.0までの範囲は、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9および6.0を包含する。凍結乾燥製剤の場合、特に指示がない限り、pHは、本発明の凍結乾燥製剤の再構成後のpHを指す。pHは、典型的に、25℃で、標準的なガラスバルブのpHメーターを用いて測定される。本明細書中で用いられるとき、「pH Xのヒスチジンバッファー」を含む溶液とは、pH Xであってヒスチジンバッファーを含む溶液を指し、すなわちpHは溶液のpHを指すことが意図される。
【0160】
本発明のある実施形態において、抗TIGIT製剤ならびに抗TIGITおよび抗ヒトPD-1の合剤は、非還元糖を含む。本明細書中で用いられるとき、「非還元糖」は、遊離のアルデヒド基または遊離のケトン基を含有しないまたは含有するように変換することができないため、還元剤として作用することができない糖である。非還元糖の例としては、限定されるものではないが、二糖、例えばスクロースおよびトレハロースなどが挙げられる。本発明のある実施形態において、非還元糖は約1~10%(w/v)(1、2、3、4、5、6、7、8、9または10%)の量で存在する。別の実施形態において、非還元糖は約6%から約8%(w/v)(6、7または8%)の量で存在する。さらなる実施形態において、非還元糖は約6%(w/v)の量で存在する。さらなる実施形態において、非還元糖は約7%(w/v)の量で存在する。さらなる実施形態において、非還元糖は約8%(w/v)の量で存在する。1つの実施形態において、非還元糖はスクロース、トレハロースまたはラフィノースである。別の実施形態において、非還元糖はスクロースである。さらなる実施形態において、スクロースは6~8% w/vで存在する。1つの実施形態において、スクロースは約6%(w/v)で存在する。1つの実施形態において、スクロースは約7%(w/v)で存在する。1つの実施形態において、スクロースは約8%(w/v)で存在する。
【0161】
本発明の製剤はまた、界面活性剤を含む。本明細書中で用いられるとき、界面活性剤は、自然状態で両親媒性である表面活性剤(surface active agent)である。界面活性剤は、安定性を与えるため、凝集を低減させるおよび/もしくは防ぐため、または処理状態、例えば精製、ろ過、凍結乾燥、輸送、保存および送達などの際のタンパク質のダメージを防ぐおよび/もしくは抑制するため、本明細書中の製剤に加えられ得る。本発明において、界面活性剤は、活性成分(複数可)にさらなる安定性を与えるために有用であり得る。
【0162】
合剤を包含する本発明の製剤において有用であり得る非イオン性界面活性剤としては、限定されるものではないが、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート、商品名Tween(登録商標)の下で販売されている(Uniquema Americas LLC,Wilmington,DE))、これはポリソルベート-20(ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート)、ポリソルベート-40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート-60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート)およびポリソルベート-80(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)を包含する;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、例えばBrij(登録商標)58(Uniquema Americas LLC,Wilmington,DE)およびBrij(登録商標)35など;ポロキサマー(例としてポロキサマー188);Triton(登録商標)X-100(Union Carbide Corp.,Houston,TX)およびTriton(登録商標)X-114;NP40;スパン20、スパン40、スパン60、スパン65、スパン80およびスパン85;エチレンおよびプロピレングリコールのコポリマー(例として非イオン性界面活性剤のpluronic(登録商標)シリーズ、例えばpluronic(登録商標)F68、pluronic(登録商標)10R5、pluronic(登録商標)F108、pluronic(登録商標)F127、pluronic(登録商標)F38、pluronic(登録商標)L44、pluronic(登録商標)L62など(BASF Corp.,Ludwigshafen,Germany);ならびにドデシル硫酸ナトリウム(SDS)が挙げられる。1つの実施形態において、非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート80またはポリソルベート20である。1つの実施形態において、非イオン性界面活性剤はポリソルベート20である。別の実施形態において、非イオン性界面活性剤はポリソルベート80である。
【0163】
本発明の製剤の中に包含される非イオン性界面活性剤の量は、所望の機能を発揮するために十分な量、すなわち医薬品有効成分(すなわち抗TIGIT抗体もしくはその抗原結合性断片、または抗TIGIT抗体もしくはその抗原結合性断片および抗ヒトPD-1抗体もしくはその抗原結合性断片の両方)を製剤中で安定化するために必要な最少量である。非イオン性界面活性剤の全てのパーセンテージは、w/v %として挙げられる。典型的に、界面活性剤は、約0.008%から約0.1% w/vの濃度で存在する。本発明のこの態様のいくつかの実施形態において、界面活性剤は、製剤中に、約0.01%から約0.1%;約0.01%から約0.09%;約0.01%から約0.08%;約0.01%から約0.07%;約0.01%から約0.06%;約0.01%から約0.05%;約0.01%から約0.04%;約0.01%から約0.03%、約0.01%から約0.02%、約0.015%から約0.04%;約0.015%から約0.03%、約0.015%から約0.02%、約0.02%から約0.04%、約0.02%から約0.035%、または約0.02%から約0.03%の量で存在する。具体的な実施形態において、界面活性剤は約0.02%の量で存在する。代替的実施形態において、界面活性剤は、約0.01%、約0.015%、約0.025%、約0.03%、約0.035%または約0.04%の量で存在する。
【0164】
本発明の例示的な実施形態において、界面活性剤は、ポリソルベート20およびポリソルベート80よりなる群から選択される非イオン性界面活性剤である。好ましい実施形態において、界面活性剤はポリソルベート80である。
【0165】
具体的な実施形態において、合剤を包含する本発明の製剤は、約0.01%から約0.04% w/vのポリソルベート80を含む。さらなる実施形態において、本明細書中に記載される製剤は、ポリソルベート80を約0.008% w/v、約0.01% w/vの量で含む。1つの実施形態において、ポリソルベート80の量は約0.015 w/v%である。別の実施形態において、ポリソルベート80の量は約0.02% w/vである。さらなる実施形態において、ポリソルベート80の量は約0.025% w/vである。別の実施形態において、ポリソルベート80の量は約0.03% w/vである。さらなる実施形態において、ポリソルベート80の量は約0.035% w/vである。別の実施形態において、ポリソルベート80の量は約0.04% w/vである。さらなる実施形態において、ポリソルベート80の量は約0.045% w/vである。特定の実施形態において、本発明の製剤は約0.02% w/vのポリソルベート80を含む。
【0166】
合剤を包含する本発明の製剤はまた、メチオニンまたは薬学的に許容されるその塩を抗酸化剤として含む。1つの実施形態において、メチオニンはL-メチオニンである。別の実施形態において、メチオニンはL-メチオニンの薬学的に許容される塩、例えばメチオニンHClなどである。本発明のある実施形態において、メチオニンは製剤中に約1~20mM(1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20mM)の濃度で存在する。別の実施形態において、メチオニンは約5mMから約10mM(5、6、7、8、9および10mM)存在する。別の実施形態において、メチオニンは約10mM存在する。
【0167】
合剤を包含する本発明の製剤はまた、キレート剤をさらに含み得る。本発明のある実施形態において、キレート剤は、製剤中に約5~30μM(例として5、10、15、20、25または30μM)の濃度で存在する。1つの実施形態において、キレート剤はDTPAである。別の実施形態において、キレート剤はEDTAである。別の実施形態において、キレート剤(chelating agen)はEDTAである。
【0168】
凍結乾燥医薬組成物
治療タンパク質の凍結乾燥製剤は、いくつかの利点を提供する。凍結乾燥製剤は、一般的に、溶液製剤よりも良好な化学的安定性を供与し、それゆえに半減期の増加を供与する。凍結乾燥製剤はまた、臨床的要因、例えば投与経路または投薬量などに応じて異なる濃度で再構成され得る。例えば、凍結乾燥製剤は、皮下投与のために必要ならば高濃度(すなわち少量)で、または静脈内に投与するならば低濃度で再構成され得る。高濃度はまた、特定の対象のために高い投薬量が必要とされる場合に、とりわけ注射量を最小限にしなければならない皮下に投与する場合に必要なことがある。1つのかかる凍結乾燥抗体製剤は米国特許第6,267,958号に開示され、この文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。別の治療タンパク質の凍結乾燥製剤は米国特許第7,247,707号に開示され、この文献は参照によりその全体が本明細書中に組み込まれる。
【0169】
典型的に、凍結乾燥製剤は、医薬品(DP、例示的な実施形態においてヒト化抗PD-1抗体ペンブロリズマブまたはその抗原結合性断片)を高濃度で再構成することを予想して、すなわち少量の水で再構成することを予想して調製される。DPをより低い濃度へと希釈するため、続いて水または等張バッファーでの希釈をその後に容易に用いることができる。典型的に、添加剤は、本発明の凍結乾燥製剤中に、例として皮下投与のための高DP濃度での再構成時におおよそ等張の製剤をもたらすレベルで包含される。より低いDP濃度を与えるためのより多い量の水での再構成は、再構成溶液の張性を必然的に低減させるが、かかる低減は非皮下投与、例として静脈内投与においてほとんど重要ではないであろう。より低いDP濃度での等張性が望まれる場合、凍結乾燥粉末が標準的な少量の水で再構成され、次いで等張性希釈剤、例えば0.9%塩化ナトリウムなどでさらに希釈され得る。
【0170】
本発明の凍結乾燥製剤は、予備凍結乾燥溶液(pre-lyophilization solution)の凍結乾燥(lyophilization)(凍結乾燥(freeze-drying))により形成される。凍結乾燥(freeze-drying)は、製剤を凍結させ、続いて1次乾燥に適した温度で水を昇華させることによって達成される。この条件下で、品温は、製剤の共融点または崩壊温度未満である。典型的に、1次乾燥のための棚温度は、典型的に約50から250mTorrまでの範囲である好適な圧力で、約-30から25℃までの範囲である(1次乾燥中に製品は凍ったままであることを前提とする)。製剤、試料を保持する容器(例としてガラスバイアル)のサイズおよびタイプ、ならびに液体の体積は、乾燥に必要とされる時間を規定し、これは2、3時間から数日(例として40~60時間)に及ぶことがある。2次乾燥段階は、主に容器のタイプおよびサイズ、ならびに採用されるタンパク質のタイプに応じて、約0~40℃で行われ得る。2次乾燥時間は、製品中の所望の残存水分含量レベルにより規定され、典型的に少なくとも約5時間かかる。典型的に、凍結乾燥製剤の水分含量は、約5%未満、好ましくは約3%未満である。圧力は1次乾燥ステップの際に採用されたものと同じであり得る。凍結乾燥(freeze-drying)条件は、製剤およびバイアルサイズに応じて変動することがある。
【0171】
いくつかの例において、移動ステップを避けるため、タンパク質の再構成が行われる容器の中でタンパク質製剤を凍結乾燥することが望ましいものであり得る。この例における容器は、例えば3、5、10、20、50または100ccのバイアルであり得る。
【0172】
本発明の凍結乾燥製剤は、投与前に再構成される。タンパク質は、約10、15、20、25、30、40、50、60、75、80、90もしくは100mg/mLの濃度で、またはより高い濃度、例えば150mg/mL、200mg/mL、250mg/mLもしくは300mg/mL、最大で約500mg/mLなどで再構成され得る。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約10~300mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約20~250mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約150~250mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約180~220mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約50~150mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約100mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約75mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約50mg/mlである。1つの実施形態において、再構成後のタンパク質濃度は、約25mg/mlである。高いタンパク質濃度は、再構成製剤の皮下送達が意図される場合にとりわけ有用である。しかしながら、他の投与経路、例えば静脈内投与などの場合、より低いタンパク質濃度が望まれることもある(例として約5~50mg/mL)。
【0173】
再構成は一般に、完全な水和を確実にするために約25℃の温度で行われるが、所望ならば他の温度を採用してもよい。再構成に必要とされる時間は、例として希釈剤のタイプ、添加剤(複数可)およびタンパク質の量に依存する。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝溶液(例としてリン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水溶液、リンガー液またはブドウ糖溶液が挙げられる。
【0174】
液体医薬組成物
液体抗体製剤は、精製プロセスの最終ステップとして、液体形態である薬剤物質(例として抗ヒト化PD-1)(例として水性医薬製剤中のペンブロリズマブ)を取り、それを所望のバッファーへとバッファー交換することにより作製することができる。この実施形態において、凍結乾燥ステップはない。最終バッファー中の薬剤物質は、所望の濃度まで濃縮される。添加剤、例えばスクロースおよびポリソルベート80などが薬剤物質に加えられ、これは適切なバッファーを用いて最終タンパク質濃度まで希釈される。製剤化された最終の薬剤物質は0.22μmフィルターを用いてろ過され、最終容器(例としてガラスバイアル)の中に充填される。
【0175】
III.使用方法
本発明はまた、対象におけるがんを処置する方法であって、有効量の本発明の製剤のいずれか;すなわち本明細書中に記載されるいずれかの製剤を対象に投与することを含む前記方法に関する。この方法のいくつかの具体的な実施形態において、製剤は、静脈内投与を通じて対象に投与される。他の実施形態において、製剤は、皮下投与により対象に投与される。1つの実施形態において、本発明は、本発明のいずれかの製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者におけるがんを処置する方法を含む。
【0176】
本発明の方法のいずれかにおいて、がんは、メラノーマ、肺がん、頭頸部がん、膀胱がん、乳がん、胃腸がん、多発性骨髄腫、肝細胞がん、リンパ腫、腎臓がん、中皮腫、卵巣がん、食道がん、肛門がん、胆道がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、甲状腺がん、唾液腺がん(salivary cancer)、前立腺がん(例としてホルモン不応性前立腺癌)、膵臓がん、結腸がん、食道がん、肝臓がん、甲状腺がん、神経膠芽腫、神経膠腫および他の新生物性悪性腫瘍よりなる群から選択することができる。
【0177】
いくつかの実施形態において、非小細胞肺がん中の肺がん。
【0178】
代替的実施形態において、肺がんは、小細胞肺がんである。
【0179】
いくつかの実施形態において、リンパ腫は、ホジキンリンパ腫である。
【0180】
他の実施形態において、リンパ腫は、非ホジキンリンパ腫である。特定の実施形態において、リンパ腫は、縦隔大細胞型B細胞リンパ腫である。
【0181】
いくつかの実施形態において、乳がんは、トリプルネガティブ乳がんである。
【0182】
さらなる実施形態において、乳がんは、ER+/HER2-乳がんである。
【0183】
いくつかの実施形態において、膀胱がんは、尿路上皮がんである。
【0184】
いくつかの実施形態において、頭頸部がんは、鼻咽頭がんである。いくつかの実施形態において、がんは、甲状腺がんである。他の実施形態において、がんは、唾液腺がんである。他の実施形態において、がんは頭頸部の扁平上皮癌である。
【0185】
1つの実施形態において、本発明は、本発明の製剤を患者に投与することを含む、ヒト患者における転移性非小細胞肺がん(NSCLC)を処置する方法を含む。具体的な実施形態において、患者は、PD-L1高発現[(腫瘍比率スコア(TPS)≧50%)]の腫瘍を持ち、以前に白金含有化学療法で処置されていない。他の実施形態において、患者は、PD-L1を発現した(TPS≧1%)腫瘍を持ち、以前に白金含有化学療法で処置されている。なお他の実施形態において、患者は、PD-L1を発現した(TPS≧1%)腫瘍を持ち、以前に白金含有化学療法で処置されていない。具体的な実施形態において、患者は、白金含有化学療法を受けた際またはその後に疾患が進行した。ある種の実施形態において、PD-L1 TPSは、FDAの承認を受けた試験により決定される。ある種の実施形態において、患者の腫瘍はEGFRまたはALKのゲノム異常を持たない。ある種の実施形態において、患者の腫瘍はEGFRまたはALKのゲノム異常を持ち、抗PD-1抗体またはその抗原結合性断片を受ける前にEGFRまたはALK異常(複数可)のための処置を受けた際またはその後に疾患が進行した。
【0186】
いくつかの実施形態において、がんは、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する転移性結腸直腸がんである。
【0187】
いくつかの実施形態において、がんは、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する転移性結腸直腸がんである。
【0188】
いくつかの実施形態において、がんは、高レベルのマイクロサテライト不安定性(MSI-H)を有する固形腫瘍である。
【0189】
いくつかの実施形態において、がんは、高い変異負荷(mutational burden)を有する固形腫瘍である。
【0190】
いくつかの実施形態において、がんは、メラノーマ、非小細胞肺がん、再発または難治性の古典的ホジキンリンパ腫、頭頸部扁平上皮癌、尿路上皮がん、食道がん、胃がんおよび肝細胞がんよりなる群から選択される。
【0191】
上の処置方法の他の実施形態において、がんは、血液悪性腫瘍である。ある実施形態において、血液悪性腫瘍は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、EBV陽性DLBCL、原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫、T細胞/組織球豊富型大細胞型B細胞リンパ腫、濾胞性リンパ腫、ホジキンリンパ腫(HL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、多発性骨髄腫(MM)、骨髄細胞白血病-1タンパク質(Mcl-1)、骨髄異形成症候群(MDS)、非ホジキンリンパ腫(NHL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)である。
【0192】
生検または外科材料中の腫瘍浸潤リンパ球の存在と関係した無病生存期間および全生存期間の改善を実証する悪性腫瘍、例としてメラノーマ、結腸直腸がん、肝臓がん、腎臓がん、胃/食道がん、乳がん、膵臓がんおよび卵巣がんは、本明細書中に記載される方法および処置の範囲に含まれる。かかるがんのサブタイプは、Tリンパ球による免疫制御を受けやすいことが知られている。加えて、本明細書中に記載される抗体を用いて増殖が阻害され得る不応性または再発性の悪性腫瘍も包含される。
【0193】
本明細書中に記載される製剤での処置から利益を得ることができるさらなるがんとしては、例えばカポジ肉腫、肝臓がん、鼻咽頭がん、リンパ腫、子宮頸がん、外陰部がん、肛門がん、陰茎がんおよび口腔がんの原因として関係することが知られているウイルスの持続性感染、例えばヒト免疫不全ウイルス、A型、B型およびC型肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒトパピローマウイルスなどの持続性感染に関連したものが挙げられる。
【0194】
製剤はまた、感染症および感染性疾患を予防または処置するために用いることもできる。それゆえに、本発明は、有効量の本発明の製剤を対象に投与することを含む、哺乳動物対象における慢性感染症を処置するための方法を提供する。この方法のいくつかの具体的な実施形態において、製剤は、静脈内投与を通じて対象に投与される。他の実施形態において、製剤は、皮下投与により対象に投与される。
【0195】
これらの剤は、病原体、毒素および自己抗原への免疫応答を刺激するために、単独で、またはワクチンと組み合わせて用いることができる。抗体またはその抗原結合性断片は、限定されるものではないが、ヒト免疫不全ウイルス、A型、B型およびC型肝炎ウイルス、エプスタイン・バーウイルス、ヒトサイトメガロウイルス、ヒトパピローマウイルスおよびヘルペスウイルスといった、ヒトに対して感染性であるウイルスへの免疫応答を刺激するために用いることができる。アンタゴニスト抗PD-1抗体または抗体断片は、細菌または真菌の寄生生物および他の病原体の感染への免疫応答を刺激するために用いることができる。B型およびC型肝炎ウイルスならびにHIVのウイルス感染症は、慢性ウイルス感染症と考えられるものの中にある。
【0196】
本発明の製剤は、1または複数の「付加的治療剤」と組み合わせて患者に投与され得る。付加的治療剤は、生物療法剤(限定されるものではないがVEGF、EGFR、Her2/neu、VEGF受容体、他の増殖因子受容体、CD20、CD40、CD-40L、OX-40、4-1BBおよびICOSに対する抗体が挙げられる)、免疫原性剤(例えば、減弱されたがん細胞、腫瘍抗原、腫瘍由来抗原または核酸をパルスした抗原提示細胞、例えば樹状細胞など、免疫刺激性サイトカイン(例えば、IL-2、IFNα2、GM-CSF)、および、例えば限定されるものではないがGM-CSFなどの免疫刺激性サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトした細胞)であり得る。
【0197】
上述のように、本発明の方法のいくつかの実施形態において、方法は、付加的治療剤を投与することをさらに含む。特定の実施形態において、付加的治療剤は、抗LAG3抗体またはその抗原結合性断片、抗GITR抗体またはその抗原結合性断片、抗CTL4抗体またはその抗原結合性断片、抗CD27抗体またはその抗原結合性断片である。1つの実施形態において、付加的治療剤は、IL-12を発現するニューカッスル病ウイルスベクターである。さらなる実施形態において、付加的治療剤はジナシクリブである。なおさらなる実施形態において、付加的治療剤は、STINGアゴニストである。
【0198】
好適な投与経路としては、例えば、筋肉内、皮下、同様に髄腔内、直接的脳室内、静脈内、腹腔内といった非経口送達が挙げられ得る。薬剤は、種々の慣用的方法、例えば腹腔内、非経口、動脈内または静脈内注入などで投与することができる。溶液量を制限しなければならない投与様式(例として皮下投与)は、高濃度での再構成を可能にするために凍結乾燥製剤を必要とする。
【0199】
付加的治療剤の投薬量の選択は、その物の血清または組織代謝回転速度、症候のレベル、その物の免疫原性、および処置される個体中の標的細胞、組織または器官のアクセス性といったいくつかの因子に依存する。付加的治療剤の投薬量は、許容されるレベルの副作用を提供する量であるべきである。したがって、各々の付加的治療剤(例として生物療法剤または化学療法剤)の投薬量および投薬頻度は、各別の治療剤、処置されるがんの重症度および患者特質に部分的に依存する。抗体、サイトカインおよび低分子の適切な用量選択におけるガイダンスが利用可能である。例として、Wawrzynczak(1996) Antibody Therapy,Bios Scientific Pub.Ltd,Oxfordshire,UK;Kresina(ed.)(1991) Monoclonal Antibodies,Cytokines and Arthritis,Marcel Dekker,New York,NY;Bach(ed.)(1993) Monoclonal Antibodies and Peptide Therapy in Autoimmune Diseases,Marcel Dekker,New York,NY;Baert et al.(2003) New Engl.J.Med. 348:601-608;Milgrom et al.(1999) New Engl.J.Med. 341:1966-1973;Slamon et al.(2001) New Engl.J.Med. 344:783-792;Beniaminovitz et al.(2000) New Engl.J.Med. 342:613-619;Ghosh et al.(2003) New Engl.J.Med. 348:24-32;Lipsky et al.(2000) New Engl.J.Med. 343:1594-1602;Physicians’ Desk Reference 2003(Physicians’ Desk Reference,57th Ed);Medical Economics Company;ISBN:1563634457;57th edition(November 2002)を参照されたい。適切な投薬レジメンの決定は、臨床医によって、例として当該技術分野において処置に影響することが知られているもしくは影響すると思われている、または処置に影響すると予測されるパラメーターまたは因子を用いて行われ得て、これは、例えば患者の病歴(例として前治療)、処置されるがんのタイプおよびステージ、ならびに組み合わせ治療における1または複数の治療剤への応答のバイオマーカーに依存する。
【0200】
付加的治療剤のための薬学的に許容される担体または添加剤の選択を容易にするために、様々な参考文献が利用可能である。例として、Remington’s Pharmaceutical Sciences and U.S. Pharmacopeia:National Formulary,Mack Publishing Company,Easton,PA(1984);Hardman et al.(2001) Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics,McGraw-Hill,New York,NY;Gennaro(2000) Remington:The Science and Practice of Pharmacy,Lippincott,Williams,and Wilkins,New York,NY;Avis et al.(eds.)(1993) Pharmaceutical Dosage Forms:Parenteral Medications,Marcel Dekker,NY;Lieberman,et al.(eds.)(1990) Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Marcel Dekker,NY;Lieberman et al.(eds.)(1990) Pharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Marcel Dekker,NY;Weiner and Kotkoskie(2000) Excipient Toxicity and Safety,Marcel Dekker,Inc.,New York,NYを参照されたい。
【0201】
医薬抗体製剤は、連続的注入により、または例として1日、週に1~7回、1週間、2週間、3週間、毎月、隔月などの間隔での投薬により投与することができる。好ましい投薬プロトコールは、著しい望ましくない副作用を回避した最大投薬量または投薬頻度を伴うものである。1週間の総投薬量は、一般に、少なくとも0.05μg/kg、0.2μg/kg、0.5μg/kg、1μg/kg、10μg/kg、100μg/kg、0.2mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、10mg/kg、25mg/kg、50mg/kg体重またはそれより多い。例として、Yang et al.(2003) New Engl.J.Med. 349:427-434;Herold et al.(2002) New Engl.J.Med. 346:1692-1698;Liu et al.(1999) J.Neurol.Neurosurg.Psych. 67:451-456;Portielji et al.(20003) Cancer Immunol.Immunother. 52:133-144を参照されたい。低分子治療薬、例としてペプチド模倣薬、天然物または有機化合物の所望の用量は、抗体またはポリペプチドに関して、モル/kgベースでほぼ同じである。
【0202】
本発明の実施形態はまた、(a)治療(例としてヒトの身体の治療);(b)薬;(c)抗腫瘍免疫応答の誘導もしくは向上 (d)患者における1もしくは複数の腫瘍マーカーの数を減少させること;(e)腫瘍もしくは血液がんの増殖を停止もしくは遅延させること;(f)PD-1関連疾患もしくは抗TIGIT関連疾患の進行を停止もしくは遅延させること;(g)進行がんを停止もしくは遅延させること;(h)PD-1関連疾患もしくは抗TIGIT疾患の安定化;(i)腫瘍細胞の増殖もしくは生存を阻害すること;(j)1もしくは複数のがん性病変もしくは腫瘍を除去することもしくはそのサイズを低減させること;(k)PD-1関連疾患もしくは抗TIGIT疾患の進行、発症もしくは重症度を低減させること;(l)PD-1関連疾患もしくは抗TIGIT関連疾患、例えばがんなどの臨床症候の重症度もしくは持続期間を低減させること (m)同様の未処置の患者における予想生存期間と比べて患者の生存期間を延ばすこと n)がん性状態もしくは他のPD-1関連もしくは抗TIGIT関連疾患の完全寛解もしくは部分寛解を誘導すること、o)がんの処置、またはp)慢性感染症の処置について、(i)これらにおける使用のための、(ii)これらのための薬物もしくは組成物としての使用のための、または(iii)これらのための薬物の調製における使用のための、本明細書中に記載される1または複数の生物学的製剤を包含する。
【0203】
一般的方法
分子生物学における標準的方法は、Sambrook,Fritsch and Maniatis(1982&1989 2nd Edition,2001 3rd Edition) Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Sambrook and Russell(2001) Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993) Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CA)に記載されている。標準的な方法はまた、Ausbel,et al.(2001) Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1-4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NY中にも出ており、これは細菌細胞およびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、複合糖質およびタンパク質の発現(Vol.3)およびバイオインフォマティクス(Vol.4)を記載している。
【0204】
免疫沈降、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を包含するタンパク質精製方法は、記載されている(Coligan,et al.(2000) Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York)。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾および融合タンパク質の生産、タンパク質のグリコシル化は、記載されている(例としてColigan,et al.(2000) Current Protocols in Protein Science,Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubel,et al.(2001) Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY,pp.16.0.5-16.22.17;Sigma-Aldrich,Co.(2001) Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45-89;Amersham Pharmacia Biotech(2001) BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384-391を参照されたい)。ポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の生産、精製および断片化は、記載されている(Coligan,et al.(2001) Current Protocols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Harlow and Lane(1999) Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;上のHarlow and Lane)。リガンド/受容体相互作用の特性評価のための標準的技術は、利用可能である(例としてColigan,et al.(2001) Current Protocols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New Yorkを参照されたい)。
【0205】
モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体およびヒト化抗体は、調製することができる(例としてSheperd and Dean(eds.) (2000) Monoclonal Antibodies,Oxford Univ.Press,New York,NY;Kontermann and Dubel(eds.) (2001) Antibody Engineering,Springer-Verlag,New York;Harlow and Lane(1988) Antibodies A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,pp.139-243;Carpenter,et al.(2000) J.Immunol. 165:6205;He,et al.(1998) J.Immunol. 160:1029;Tang et al.(1999) J.Biol.Chem. 274:27371-27378;Baca et al.(1997) J.Biol.Chem. 272:10678-10684;Chothia et al.(1989) Nature 342:877-883;Foote and Winter(1992) J.Mol.Biol. 224:487-499;U.S.Pat.No.6,329,511を参照されたい)。
【0206】
ヒト化の代替法は、ファージ上にディスプレイされたヒト抗体ライブラリーまたはトランスジェニックマウスにおけるヒト抗体ライブラリーを用いることである(Vaughan et al.(1996) Nature Biotechnol. 14:309-314;Barbas(1995) Nature Medicine 1:837-839;Mendez et al.(1997) Nature Genetics 15:146-156;Hoogenboom and Chames(2000) Immunol.Today 21:371-377;Barbas et al.(2001) Phage Display:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New York;Kay et al.(1996) Phage Display of Peptides and Proteins:A Laboratory Manual,Academic Press,San Diego,CA;de Bruin et al.(1999) Nature Biotechnol. 17:397-399)。
【0207】
抗原の精製は、抗体作製に必要ではない。動物に目的抗原を有する細胞を免疫することができる。脾臓細胞を次いで免疫動物から単離し、脾臓細胞をミエローマ細胞株と融合することでハイブリドーマを生産することができる(例としてMeyaard et al.(1997) Immunity 7:283-290;Wright et al.(2000) Immunity 13:233-242;上のPreston et al.;Kaithamana et al.(1999) J.Immunol. 163:5157-5164を参照されたい)。
【0208】
抗体は、例として低分子薬、酵素、リポソーム、ポリエチレングリコール(PEG)とコンジュゲートさせることができる。抗体は、治療剤、診断剤、キットまたは他の目的のために有用であり、例として色素、放射性同位体、酵素、または金属、例として金コロイドと結合した抗体を包含する(例としてLe Doussal et al.(1991) J.Immunol. 146:169-175;Gibellini et al.(1998) J.Immunol. 160:3891-3898;Hsing and Bishop(1999) J.Immunol. 162:2804-2811;Everts et al.(2002) J.Immunol. 168:883-889を参照されたい)。
【0209】
蛍光活性化細胞分取(FACS)を包含するフローサイトメトリー法は、利用可能である(例としてOwens,et al.(1994) Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan (2001) Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley-Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003) Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJを参照されたい)。例として診断剤としての使用のための、核酸プライマーおよびプローブを包含する核酸、ポリペプチドならびに抗体の修飾に適した蛍光試薬は、利用可能である(Molecular Probesy(2003) Catalogue,Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma-Aldrich(2003) Catalogue,St.Louis,MO)。
【0210】
免疫系の組織学の標準的方法は、記載されている(例としてMuller-Harmelink(ed.) (1986) Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiatt,et al.(2000) Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louis,et al.(2002) Basic Histology:Text and Atlas,McGraw-Hill,New York,NYを参照されたい)。
【0211】
例として抗原性断片、リーダー配列、タンパク質フォールディング、機能ドメイン、グリコシル化部位および配列アラインメントを決定するためのソフトウェアパッケージおよびデータベースは、利用可能である(例としてGenBank,Vector NTI(登録商標) Suite(Informax,Inc.,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menne,et al.(2000) Bioinformatics 16:741-742;Menne,et al.(2000) Bioinformatics Applications Note 16:741-742;Wren,et al.(2002) Comput.Methods Programs Biomed. 68:177-181;von Heijne(1983) Eur.J.Biochem. 133:17-21;von Heijne(1986) Nucleic Acids Res. 14:4683-4690を参照されたい)。
【0212】
分析方法
製品の安定性を評価するのに適した分析方法としては、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、動的光散乱試験(DLS)、示差走査型熱量計(DSC)、iso-asp定量、力価、340nmにおけるUV、UV分光法およびFTIRが挙げられる。SEC(J.Pharm.Scien.,83:1645-1650,(1994);Pharm.Res.,11:485(1994);J.Pharm.Bio.Anal.,15:1928(1997);J.Pharm.Bio.Anal.,14:1133-1140(1986))は、製品中のパーセントモノマーを測定し、可溶性凝集物の量の情報を与える。DSC(Pharm.Res.,15:200(1998);Pharm.Res.,9:109(1982))は、タンパク質変性温度およびガラス転移温度の情報を与える。DLS(American Lab.,November(1991))は、平均拡散係数を測定し、可溶性および不溶性の凝集物の量の情報を与える。340nmにおけるUVは、340nmでの散乱光強度を測定し、可溶性および不溶性の凝集物の量についての情報を与える。UV分光法は、278nmにおける吸光度を測定し、タンパク質濃度の情報を与える。FTIR(Eur.J.Pharm.Biopharm.,45:231(1998);Pharm.Res.,12:1250(1995);J.Pharm.Scien.,85:1290(1996);J.Pharm.Scien.,87:1069(1998))は、アミドI領域におけるIRスペクトルを測定し、タンパク質2次構造の情報を与える。
【0213】
試料中のiso-asp含量は、Isoquant Isoaspartate Detection System(Promega)を用いて測定される。このキットは、標的タンパク質中のイソアスパラギン酸残基の存在を特異的に検出するため、酵素タンパク質イソアスパルチルメチルトランスフェラーゼ(PIMT)を用いる。PIMTは、S-アデノシル-L-メチオニンからアルファ-カルボキシル位のイソアスパラギン酸へのメチル基の転移を触媒し、このプロセスの中でS-アデノシル-L-ホモシステイン(SAH)を生成する。これは比較的低分子であり、通常、単離され、キット中に備えられたSAH HPLC標準物質を用いて逆相HPLCにより定量することができる
抗体の力価または生物学的同一性は、その抗原に結合する能力により測定することができる。抗体のその抗原への特異的結合は、当業者に知られている任意の方法、例えばイムノアッセイ、例えばELISA(酵素結合免疫吸着アッセイ)などにより定量することができる。
【0214】
本明細書中で言及される全ての刊行物は、本発明に関連して用いられ得る方法論および材料を記載し開示する目的のために、参照により組み込まれる。
【0215】
付随する図面を参照して本明細書中の発明の異なる実施形態を記載していることから、本発明はまさにそれらの実施形態に限定されないこと、ならびにそれらにおける様々な変更および改変が、当業者によって、添付の特許請求の範囲中に規定される本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく実行され得ることが理解されるものである。
【実施例】
【0216】
実施例1
抗TIGIT製剤バッファーのスクリーニング
ハイスループットの製剤開発試験を、次のCDR:配列番号108のHCDR1、配列番号154のHCDR2、配列番号110のHCDR3、配列番号111のLCDR1、配列番号112のLCDR2および配列番号113のLCDR3を各々持つ3つの抗TIGIT抗体について実施し、(1)生物物理学的/生化学的傾向;(2)予備製剤(pH、塩およびバッファー)条件、および(3)プラットフォーム製剤との適合性にわたって評価した。試料を、より大きな凝集物のサロゲートとしての濁度(A350)のUV/可視光分光分析、高分子量種の形成を検出するためのサイズ排除クロマトグラフィー(UP-SEC)、分子表面の電荷分布に対するストレスの効果を測定するためのキャピラリー等電点電気泳動(cIEF)、重鎖または軽鎖のタンパク質分解切断を検出するための還元性ドデシル硫酸ナトリウムキャピラリー電気泳動(CE-SDS)、視認できない凝集物を検出するための視認閾値以下粒子分析(sub-visible particle analysis)によって分析した。
【0217】
ハイスループット製剤スクリーニングは、3つのバッファー種:5.0から6.2までの範囲のpH値を有する酢酸塩バッファー、5.6から6.8までの範囲のpH値を有するクエン酸塩バッファーおよび5.0から6.8までの範囲のpH値を有するL-ヒスチジンバッファーを選択して製剤化された1mg/mLの抗TIGIT抗体を含んでいた。それゆえに、5.0から6.8までの範囲のpH値および0~150mM NaClのイオン強度を調べた。試料に50℃で10日間ストレスを負荷し、示差走査蛍光(DSF)を用いて熱安定性を、サイズ排除クロマトグラフィー(UP-SEC)を用いてコロイド安定性を、Guava(視認閾値以下特性評価アッセイに基づくフローサイトメトリー)を用いて凝集性向を、濁度(A350測定)を、電荷バリアントプロファイル(cIEF)を、およびCaliperを用いて断片化プロファイルを分析した。
【0218】
試験から得られた結果に基づくと、タンパク質に最大の安定性を付与した製剤は、pH範囲が5.6から6.2の10mM L-ヒスチジンであった。pH範囲が5.6から6.2の10mM L-ヒスチジンは、UP-SECによりモニターされた凝集が最も少なく、-1.63から-1.85%の間の範囲のΔSECメインを有していた(他のバッファーおよびpH条件における-2.0から-5.0%までの範囲のSECメインと比べたもの)(データは示されない)。cIEFプロファイルは、メインおよび塩基性種の相対的ピーク面積の減少および酸性バリアントの相対的ピーク面積の増加が50℃で10日後の試料で際立っていたことを示した(-9.0から-11.3%の間の範囲のcIEFメイン)(データは示されない)。高温への曝露の際の塩基性バリアントの減少および酸性バリアントの増加は、mAbの場合、通例的に起こることである。塩の添加は、試験された組成物の全体にわたってタンパク質の安定性を低減させた。
【0219】
実施例2
抗TIGIT製剤のpH範囲の試験
この試験において、次のCDR:配列番号108のHCDR1、配列番号154のHCDR2、配列番号110のHCDR3、配列番号111のLCDR1、配列番号112のLCDR2および配列番号113のLCDR3を持つ抗TIGIT抗体を、10mM L-ヒスチジンバッファー中50mg/mLの濃度で試験した。7%(w/v)スクロースを製剤に加えて分子のバルク安定性を向上させた(安定剤および非イオン性張性調整物質として)。抗TIGIT抗体を、pH5.5、pH6.0およびpH6.5の10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース中で製剤化した。かかる製剤の安定性を次のように評価した。
【0220】
(1)分子の安定性を、光から保護された、加速された熱および保存安定性条件下(5℃、25℃および40℃で6ヶ月までの間)でモニターした。
【0221】
(2)凍結融解ストレスおよび撹拌ストレスへの安定性試験も実行した。
【0222】
(3)撹拌試験は、様々な濃度のポリソルベート80(PS-80)を含有する製剤中で実行し、製剤中のPS-80の濃度を査定した。
【0223】
(4)光ストレス試験を実行し、製剤中のL-メチオニンの必要性を評価した。
【0224】
材料と方法
熱安定性試験(3ヶ月)
50mg/mL 抗TIGIT抗体を、pH5.5、pH6.0またはpH6.5の10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/mLポリソルベート80中で製剤化した。得られた製剤を滅菌ろ過し、2Rバイアル中に充填し、クロロブチル栓で栓をして、シール付きアルミニウムキャップで蓋をした。安定性試験は、5℃(環境湿度)、25℃(60%相対湿度)および40℃/(75%相対湿度)で実施した。試料を、UP-SEC、HP-IEX、cIEF(選択試料)、MFI、CE-SDS(非還元「NR」および還元「R」)、還元ペプチドマッピングを用いて分析した(MFIおよび還元ペプチドマッピングは選択時点で実施した)。
【0225】
10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/ml PS-80、pH6.0中で製剤化された25mg/mlの抗TIGIT抗体について、1ヶ月の熱安定性試験を設定した。得られた製剤を滅菌ろ過し、2Rバイアル中に充填し、クロロブチル栓で栓をして、アルミニウムシールで蓋をした。安定性試験は、5℃(環境湿度)、25℃(60%相対湿度)および40℃/(75%相対湿度)で1ヶ月間実施した。試料を、UP-SEC、cIEFおよびCE-SDS(NRおよびR)を用いて分析した。
【0226】
撹拌安定性試験
50mg/mL 抗TIGIT抗体を、様々なポリソルベート80濃度(0、0.1および0.2mg/mL)を有する10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、pH6.0中で製剤化した。得られた製剤を滅菌ろ過し、2Rバイアル中に充填し(1.2mLの充填量)、クロロブチル栓で栓をして、シール付きアルミニウムキャップで蓋をした。試料を、18~22℃で7日までの間、水平位置において300RPMで撹拌した。試料を、UP-SEC、MFIおよびCE-SDS(NRおよびR)を用いて分析した。
【0227】
凍結融解安定性
50mg/mL 抗TIGIT抗体を、10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/mLポリソルベート80、pH6.0中で製剤化した。得られた製剤を滅菌ろ過し、2Rバイアル中に充填し、クロロブチル栓で栓をして、シール付きアルミニウムキャップで蓋をした。試料を、-80℃から18~22℃(凍結条件で少なくとも24時間、および完全に融解するまで室温)での5回の凍結融解サイクルに供した。試料を、UP-SEC、MFIおよびCE-SDS(NRおよびR)を用いて分析した。
【0228】
光ストレス安定性試験
初期の開発試験は、露出したトリプトファン残基、同様に光ストレス下で酸化されやすいいくつかのメチオニンの存在を指し示した。試験は、ICH光ストレス条件の可視光(CWF、0.1×ICH、0.2×ICH、0.5×ICH、1×ICH)下で、L-メチオニンを含むおよび含まない製剤(製剤1:10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/mLポリソルベート80、pH6.0および製剤2:10mM L-ヒスチジンバッファー、10mM L-メチオニン、7%スクロース、0.2mg/mLポリソルベート80、pH6.0)において設定した。試料を、UP-SEC、cIEF、CE-SDS(NRおよびR)および還元ペプチドマッピングを用いて分析した。
【0229】
結果
熱安定性の結果
50mg/ml製剤:試験された全ての安定性指示アッセイについて、5℃では、3ヶ月後、全てのpH値において顕著な変化は観察されなかった(データは示されない)。25℃および40℃では、pH5.5およびpH6.0は同様の安定性を示し、これらの条件はpH6.5より安定であった(データは示されない)。25℃および40℃でのUP‐SEC、CE‐SDS(NR)およびcIEFアッセイのpH6.5での分解速度は、pH5.5およびpH6.0で見られるものよりも相対的に大きく、ベンチマーク分子と比べたときも相対的に大きかった。したがって、5.5から6.0のpH範囲(8.7のpI)は好適であると考えられた。3ヶ月後、全ての温度およびpH値において、酸化、脱アミド化または異性化は抗TIGIT抗体について観察されなかった。
【0230】
25mg/ml製剤:試験された全てのアッセイについて、25℃および40℃で分解が観察された。分解速度は、50mg/ml条件と同様であることが見出された(上を参照されたい)。
【0231】
撹拌安定性試験
ポリソルベート80を含有しない製剤は、7日終了時に視認できる粒子を示した。視認閾値以下粒子分析は、10μm以上の粒子が0.2mg/mLポリソルベート80濃度を含有する製剤において有意に低減したことを示した。試料間の有意差は、他のアッセイを用いては見られなかった。
【0232】
凍結融解安定性
試験したアッセイの全てにおいて、5回の凍結融解サイクル後、分子の安定性に変化は見られなかった。
【0233】
光ストレス安定性試験
UP-SEC、cIEF、CE-SDS(NRおよびR)で試験したとき、両製剤の試料を0.5×ICH以上の光ストレスに曝露した場合に分解が観察された。0.5×ICH未満の条件設定では、両製剤とも顕著な分解を示さなかった。0.5×以上の光ストレス条件下での還元ペプチドマッピングのデータは、トリプトファンおよびメチオニン残基の酸化を示した。製剤中の10mM L-メチオニンは、メチオニン残基の酸化レベルを低減させたが、トリプトファンの酸化レベルには影響しなかった。
【0234】
結論
前述のことに基づくと、10mM L-ヒスチジンバッファー、10mM L-メチオニン、7%スクロース、0.2mg/mLポリソルベート80 pH5.5~6.0は、冷凍条件下で保存期間を支持するための安定性を付与するのに適切であると考えられる。
【0235】
実施例3
さらなるpHの試験
IgG1骨格上に次のCDR:配列番号108のHCDR1、配列番号154のHCDR2、配列番号110のHCDR3、配列番号111のLCDR1、配列番号112のLCDR2および配列番号113のLCDR3を持つ抗TIGIT抗体を、異なるpH(5.0から6.5までの範囲)を有する6つの10mM ヒスチジンバッファー中で製剤化した。異なる製剤の熱安定性を、2~8℃、25℃および40℃で8週間にわたって試験した。
【表7】
【0236】
異なるpH(5.0~6.5)のヒスチジンバッファーを、10mM L-ヒスチジンバッファーを10mM L-ヒスチジン-HClバッファー中に滴定することにより調製した。抗TIGIT抗体を、4℃および4500rpm~5000rpm(各ラウンドで105~260分)の条件下で遠心分離装置を用いた4から5ラウンドの限外ろ過を通じて、pHが異なる6つの異なるヒスチジンバッファーにバッファー交換した。バッファー交換後、特定量のスクロースおよびポリソルベート80ストック溶液(1%、w/w)を異なるpHの溶液に加えて標的量に到達させ、適当量の対応するヒスチジンバッファーを同様に加えて抗体濃度を約50mg/mlに調整した。
【0237】
製剤を次いで、0.22μmメンブレンフィルターで無菌的にろ過した。3mLの各試料を、T0、4週間(4W)および8週間(8W)の熱安定性試験のために6mLガラスバイアルの中に無菌的に充填した。1mLの各試料を2週間(2W)の熱安定性試験のために6mLガラスバイアルの中に無菌的に充填した。充填したバイアルに栓をし、充填直後にクリンプオーバーシールした。上の全てのステップは、バイオセーフティフードの中で実施した。これらのバイアルをカバー付きボックスの中に入れ、熱安定性試験のために異なる温度条件で保存した。
【0238】
結果および考察
全ての試料の外観は、全ての条件で4週間以内に同じままであった。しかしながら、8週間後、2~8℃および25℃の試料はわずかな黄色味を示し、40℃の試料はより深い黄色味を示した。試験期間中、全ての試料はわずかに乳白色であって、視認できる粒子を含まなかった。試験中、全ての試料のタンパク質濃度に相当な変化は見られなかった。
【0239】
試料のコロイド安定性を、モノマーのパーセンテージ、高分子量種(HMW)および遅く溶出するピーク(LMW種)のパーセンテージである純度についてのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって査定した。分析は、TSKGel G3000SWXLサイズ排除クロマトグラフィーカラム(300×7.8mm、5μm)を有するAgilent 1260 Infinityシステムを用いて実施した。移動相は50mM PB、300mM NaCl、pH7.0±0.2であり、流速は1.0mL/分に設定した。試料を注入用に10mg/mLに希釈し、UV検出器を用いて280nmで検出した。
【0240】
UPSECデータは下の表中に記載される。
【表8】
【0241】
上の表中に示されるように、SECメインピーク%は、全ての試料において2~8℃で安定であったが、25℃および40℃では顕著なメインピーク%の減少が観察された。メインピーク%の減少速度は、25℃よりも40℃の試料において速かった。40℃で8週間では、HMW%はpH6.2および6.5の試料においてより大きかったが、LMW%はpH5.0および5.3の試料でより大きかった。
【0242】
製剤の化学的安定性を評価するため、キャピラリー等電点電気泳動(cIEF)を実施して、化学的安定性を評価し、経時的な電荷バリアントプロファイルの変化をモニターした。簡潔には、20μL(2.0mg/mL)の参照標準物質または試料を、0.5μLのpI 5.85マーカー、0.5μLのpI 9.77マーカー、1μLのPharmalyte 3-10、0.5μLのPharmalyte 5-8、0.5μLのPharmalyte 8-10.5、35μLの1%メチルセルロース、37.5μLの8M尿素と混合した。精製水を加えて100μLの最終容量とした。混合物を次いで、フルオロカーボンコーティングされた全カラム検出キャピラリーを備えたiCE-3キャピラリー等電点電気泳動分析装置で分析した。フォーカシングは、(1)1.5kVで1分間、および(2)3kVで8分間の2つのステップによって行った。実験中、オートサンプラートレイを5℃で維持した。
【0243】
酸性バリアント、%メインピークおよび%塩基性バリアントのレベルを評価するためのcIEFデータは下の表中にある。
【表9】
【0244】
上の表中に見られるように、2~8℃では、cIEFメインピーク%、酸性ピーク%および塩基性ピーク%は比較的安定であって、全ての試料において同等であった。
【0245】
2~8℃では、cIEFメイン塩基性ピーク%も増加し;pH5.0および5.3のバッファー試料における増加は、他の試料におけるものよりも大きかった。25℃では、メインピーク%、酸性ピーク%および塩基性ピーク%は最初の2週間以内は安定であったが、4週間後にわずかに変化し、メインピーク%は減少したが酸性ピーク%は対応して増加した。異なる製剤における変化速度は同等であった。40℃では、メインピーク%の顕著な減少および酸性ピーク%の注目すべき増加が全ての製剤において2週間後であっても見出されたが、変化の程度は各製剤において同様であった。塩基性ピーク%も増加し;pH5.0および5.3のバッファー試料における増加は、他の試料におけるものよりも大きかった。
【0246】
製剤の純度を評価するため、非還元Caliper分析を行った。簡潔には、購入した試料バッファーを1に対して20の体積比で10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)溶液と混合し、100mMのN-エチルマレイミド溶液を20に対して0.7の体積比で混合溶液に加えた(試料変性溶液と呼ぶ)。標準物質または試料を最初に1mg/mLに希釈し、2μLの希釈した標準物質または試料を7μLの試料変性溶液と混合した。混合物を70℃で10分間インキュベートした。35μLの精製水をインキュベートした溶液に加え、42μLの混合溶液を分析のために96ウェルプレートに移した。サンプルプレートを、HT Antibody Analysis 200アッセイを用いて、LabChip GX II HTで分析した。
【0247】
%純度を評価するための非還元Caliper分析データは下の表中に示される。
【表10】
【0248】
上の表中に示されるように、2~8℃で8週間では、各製剤におけるCaliper_非還元純度は比較的安定であった。25℃で8週間では、各製剤における純度はわずかに減少した。40℃では、純度は、特に試料がpH5.0および5.3のバッファー中にある場合に顕著に低下し、この減少は他のそれよりも大いに速かった。試験中、分子サイズは安定であった(データは示されない)。
【0249】
製剤の純度をさらに評価するため、還元Caliper分析も行った。簡潔には、購入した試料バッファーを1に対して20の体積比で10% SDS溶液と混合し、1Mジチオスレイトール溶液を20に対して0.7の体積比で混合溶液に加えた(試料変性溶液と呼ぶ)。標準物質または試料を最初に1mg/mLに希釈し、2μLの希釈した標準物質または試料を7μLの試料変性溶液と混合した。混合物を70℃で10分間インキュベートした。35μLの精製水をインキュベートした溶液に加え、42μLの混合溶液を分析のために96ウェルプレートに移した。サンプルプレートを、HT Antibody Analysis 200アッセイを用いて、LabChip GX II HTで分析した。
【0250】
%純度を評価するための還元Caliper分析データは下の表中に示される。
【表11】
【0251】
上に見られるように、2~8℃および25℃で8週間では、各製剤におけるCaliper_還元純度は比較的安定であった。40℃では、全ての製剤においてCaliper_R純度の明らかな低下が見出された。pH5.0バッファー中の試料の純度が最も大きく減少し、その後にpH5.3バッファー中の試料が続いた。pH5.6、5.9および6.2のバッファー中での減少速度は同等であったがより遅かった。pH6.5バッファー中の試料の純度が最も遅く減少した。純度の低下は、おそらく重鎖(HC)%の減少のためであり、試験中、軽鎖(LC)%は安定であった。抗体の軽鎖および重鎖のサイズは、8週間にわたって全試料において安定であった。
【0252】
実施例4
メチオニンを含まない抗TIGIT製剤
次のCDR:配列番号108のHCDR1、配列番号154のHCDR2、配列番号110のHCDR3、配列番号111のLCDR1、配列番号112のLCDR2および配列番号113のLCDR3を持つ抗TIGIT抗体を、pH範囲が5.0~6.5である10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/mL PS-80中、50mg/mLの濃度で試験した。分子の安定性を、光から保護された、加速された熱および保存安定性条件下でモニターした。熱安定性に加えて、凍結融解安定性、撹拌安定性、光ストレス安定性の試験も実行した。UP-SEC、cIEF、CE-SDS、MFIおよび還元ペプチドマッピングを包含して安定性を試験した。
【0253】
結果
熱安定性試験(8週間)
試験された全ての安定性指示アッセイについて、抗TIGIT抗体は、5℃では試験された全ての傾向について安定であった。UP-SEC、Caliper CE-SDS、cIEF、MFIを用いて観察された分解速度は、25℃よりも40℃で大きかった。25℃および40℃では、次の結果が目立った。
【0254】
UP-SEC:5.0から6.5までの全てのpH値について、モノマー%の低下が観察された。より低いpH値(5.0および5.3)では、メインピークの低下は主として%低分子量(LMW)種の増加によるものであったが、pH6.5での%モノマーの低下は主として%高分子量(HMW)種の増加によるものであった。%モノマーの低下は、pH6.5で8週間の加速安定性の後に最も大きかった(データは示されない)。
【0255】
cIEF:25℃および40℃で5.0~6.5までの全てのpH値について、cIEFメインピークの低下が観察された。より高いpH値(6.3~6.5)では、メインピークの低下は主に酸性バリアントの増加によるものであったが、pH5.0および5.3では、メインピークの低下は酸性バリアントおよび塩基性バリアントの両方の増加によるものであった(データは示されない)。
【0256】
CE-SDS(Caliper):断片化種の存在による非還元CE-SDSのメインピーク低下が主に40℃で観察された。より低いpH値(5.0および5.3)の製剤は、残りのpH値のものよりも相対的に大きい断片化速度を示した。
【0257】
還元CE-SDS(Caliper)分析は、5℃および25℃で8週間では、各製剤における純度は比較的安定であることを明らかにした。40℃では、全ての製剤において純度の明らかな低下が見出された。pH5.0バッファー中の試料の純度が最も大きく減少し、その後にpH5.3バッファー中の試料が続いた。
【0258】
MFI:40℃で全ての製剤について、視認できない粒子の増加が観察された。pH6.3および6.5は、残りのバッファーと比較して、視認できない粒子の増加が最も大きかった。
【0259】
還元ペプチドマッピング:確認された傾向のなかで、M254のみが、開始時試料と比較して40℃で8週間後に酸化の相対的な増加を示した。
【0260】
結論:10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/mL PS-80、pH5.6~6.3は、抗TIGIT抗体の保存安定性を8週間にわたって適切に支持した。
【0261】
撹拌安定性試験
50mg/mLの抗TIGIT製剤(10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、pH5.8、ならびに0、0.1、0.2および0.3mg/mL PS-80のいずれか)を18~22℃で7日までの間、100RPMで穏やかに撹拌した場合、可溶性凝集物、荷電バリアント、断片化または視認できない粒子に変化は観察されなかった。
【0262】
凍結融解安定性
50mg/mLの抗TIGIT抗体(10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/mL PS-80、pH5.8中のもの)を5回の凍結/融解サイクル(-80℃で2時間凍結し、室温で1時間融解)に供した場合、可溶性凝集物、荷電バリアント、断片化または視認できない粒子に変化は観察されなかった。
【0263】
光ストレス安定性試験
50mg/ml製剤を、48時間、可視光ストレス(5000lx)下に供した。これらの条件下、約0.2×ICH条件(12Hの光曝露)下では、可溶性凝集物、荷電バリアント、視認できない粒子、pH、濃度、断片化および酸化にごくわずかな変化があった。約1×(48H露光)条件下では、可溶性凝集物、酸性バリアント、断片化、視認できない粒子およびメチオニン酸化が増加した。
【0264】
結論
これらの試験に基づくと、10mM L-ヒスチジンバッファー、7%スクロース、0.2mg/mL PS-80 pH5.3~6.3は、抗TIGIT抗体の安定性を支持することができた。重度の光ストレスに曝露するとメチオニン酸化が観察された。実施例2中で述べたように、10mM L-メチオニンの添加は、メチオニン残基の酸化を低減させる。
【0265】
実施例5
ポリソルベート80のスクリーニング
次のCDR:配列番号108のHCDR1、配列番号154のHCDR2、配列番号110のHCDR3、配列番号111のLCDR1、配列番号112のLCDR2および配列番号113のLCDR3を持つ抗TIGIT抗体を、異なるPS-80濃度(下に示される)を有するpH5.8、10mM L-ヒスチジンバッファーの4つの製剤へと製剤化した。異なる製剤におけるタンパク質安定性を、撹拌を伴うまたは伴わない条件で、20℃で7日の期間にわたって試験した。
【表12】
【0266】
製剤は、実験室スケールのTFFバッファー交換システムを用いて、pH5.8の10mM L-ヒスチジンバッファーで製剤化した。異なるポリソルベート80含量を有する製剤化タンパク質を次いで、0.22μmメンブレンフィルターで無菌的にろ過した。2mLの各試料を次いで、6mLガラスバイアルの中に無菌的に充填した。充填したバイアルに栓をし、充填直後にクリンプオーバーシールした。試料を撹拌群と非撹拌群に分けた。撹拌群においては、これらのバイアルをカバー付きボックスに移し、次いでサーモスタットシェーカーに入れ、100rpm、20℃で7日までの間、撹拌した。非撹拌群においては、これらのバイアルをカバー付きボックスに移し、サーモスタットシェーカーに入れたが、シェーカーを7日までの間、20℃で静置した。
【0267】
撹拌を伴うまたは伴わない異なる製剤における抗体安定性を、3日および7日後に試験した。
【0268】
高分子量種(HMWまたは凝集物)、%モノマーおよびLMW(低分子量種)のレベルを評価するためのUPSECデータは下の表中にある。
【表13】
【0269】
見られるように、ポリソルベート80含量は、撹拌を伴う条件においても伴わない条件においても、SEC純度に対する顕著な影響を生じなかった。ポリソルベート80含量は、7日間までの撹拌を伴う条件においても伴わない条件においても、pI、cIEFアッセイにおけるメインピーク、酸性ピークおよび塩基性ピークのパーセンテージに顕著に影響を与えなかった。
【表14】
【0270】
下の表中に示されるように、ポリソルベート80含量は、7日間までの撹拌を伴っても伴わなくても、Caliper_非還元純度に顕著な影響を与えなかった。
【表15】
【0271】
還元Caliper分析も行った。PS-80含量は、7日間の撹拌を伴っても伴わなくても、Caliper_還元純度に顕著な影響を与えなかった。
【表16】
【0272】
視認できない粒子を測定するため、約1500μLの各試料をガラスバイアル容器から取り出し、ユーザマニュアルに従ってマイクロフローイメージング(MFI)によって試験した。1~2μm、2~5μm、5~10μm、10~25μmおよび>25μmを包含する異なる粒径範囲の粒子の濃度が報告された(下を参照されたい)。ポリソルベート80含量は、7日間までの撹拌を伴っても伴わなくても、粒子濃度に顕著な影響を与えなかった。
【表17】
【0273】
実施例6
キレーターの添加
この試験では、20uMまたは50uMのDTPAの存在下または不存在下での、10mM L-ヒスチジンバッファー(pH=5.8)、0.02%(w/v)ポリソルベート80、10mM L-メチオニン(「L-Met」)、7% w/vスクロース中の次のCDR:配列番号108のHCDR1、配列番号154のHCDR2、配列番号110のHCDR3、配列番号111のLCDR1、配列番号112のLCDR2および配列番号113のLCDR3を持つ抗TIGIT抗体の安定性を比較した。
【0274】
3つの製剤をバイアルの中に充填し、5℃(環境湿度)、25℃(60%相対湿度)および40℃(75%相対湿度)で18週間、光から保護して安定性について実施した。
【表18】
【0275】
試料のコロイド安定性を、純度についてのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって査定し、ここでモノマーのパーセンテージ、同様に高分子量種(HMW)および遅く溶出するピーク(LMW種)のパーセンテージを決定した。%HMW(凝集物)、%モノマーおよび%LMWのレベルを評価するためのUPSECデータは下の表中にある。
【表19】
【0276】
上の表中に示されるように、5℃、25℃および40℃では、3つ全ての製剤が18週時点までの間、%HMWピークおよび%LMWピークの増加(ならびに結果としての%モノマーピークの減少)の傾向を示した。25℃では、両製剤は同様の傾向を示したが、40℃と比べて変化は小さかった。5℃では、実質的な変化は観察されなかった。製剤1は、製剤2(20uM DTPA)および製剤3(50uM DTPA)と比べて、%HMWおよび%LMWのより大きな増加を示す。加えて、製剤1は、製剤2および3と比べて、%モノマーのより大きな減少を示した。同様の結果がHP-IEX分析で見られた(データは示されない)。
【0277】
DTPAが製剤を酸化ストレスから保護することができるかを評価するため、3つの製剤をバイアルの中に充填し、光(0.5×ICHおよび1×ICH)に曝露した。下の表中に見られるように、製剤1は、製剤2(20uM DTPA)および製剤3(50uM DTPA)と比べて、M254、M430およびW104(酸化されやすいメチオニンおよびトリプトファン)の%酸化のより大きな増加を示す。それゆえに、DTPAは、抗TIGIT抗体製剤の安定性をさらに改善することができる。
【表20】
【表21】
【0278】
実施例7
抗TIGIT抗体製剤の長期安定性
この例は、L-ヒスチジンバッファー、L-メチオニン、スクロース、ポリソルベート80および注射用水中で次のように製剤化された抗TIGIT抗体についての長期安定性データを記載するものである。
【表22】
【0279】
溶液を、エラストマーの栓およびアルミニウムシールを有するUSPタイプ1ガラスバイアルの中に充填した。バイアルを次いで3つの異なる保存条件:5℃(環境湿度)、25℃(60%相対湿度)および40℃(75%相対湿度)でインキュベートした。データは、全ての保存条件について0時、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月に、ならびに9ヶ月(5℃および25℃の保存条件)、12ヶ月(5℃および25℃の保存条件)、18ヶ月(5℃の保存条件)、24ヶ月(5℃の保存条件)および36ヶ月(5℃の保存条件)に収集する。
【0280】
結果
結果は、5℃で18ヶ月間の推奨長期条件で保存した場合の抗TIGIT抗体の全体的な物理的および化学的安定性を実証する。測定可能な力価喪失は観察されず、推奨保存条件下での純度は規格内であった。結果は次の表中に記載される。
【表23】
【表24】
【表25】
【0281】
タンパク質濃度
全ての時点および条件についてのタンパク質濃度の安定性データは、保存時間または条件に応じた注目すべき変化を何ら呈さず、全ての結果は45~55mg/mlの許容基準内であった。
【0282】
pH
5℃、25℃および40℃の条件について、pHに顕著な変化はなかった。
図1は、時点0から9ヶ月までのpHデータを示す。
【0283】
ポリソルベート80
5℃の推奨保存条件でのポリソルベート80含量は、9ヶ月および18ヶ月で0.13mg/mlにわずかに減少した(18ヶ月のデータは示されない)。ポリソルベート80の減少傾向は、25℃(加速)および40℃(ストレス負荷)で観察された。40℃ではポリソルベート80濃度は6ヶ月で0.06mg/mlに減少し、25℃ではポリソルベート80濃度は9ヶ月で0.07mg/mlに減少した。9ヶ月までのポリソルベート80濃度データが
図2中に記載される。
【0284】
ELISAによる結合力価
得られたELISAの結果には、いずれの時点または条件においても明らかな傾向はなかった。9ヶ月までの力価データが
図3中に記載される。
【0285】
UP-SECによる純度
UP-SECによる純度のデータは、9ヶ月まで、%モノマーについて
図4、%高分子量種について
図5、%低分子量種について
図6中に図示される。
【0286】
5℃の推奨保存条件では、18ヶ月間の安定性にわたって、%モノマーがわずかに減少し、対応して%高分子量種がわずかに増加する。開始時から18ヶ月までの%低分子量種は、0.4%に等しい定量限界未満(<QL)である。25℃の条件では、%モノマーは開始時から12ヶ月まで減少し、対応して%高分子量種は増加した。9ヶ月および12ヶ月で、%低分子量種はQLを上回って報告された。
【0287】
40℃のストレス負荷条件では、%モノマーは98.7%から93.8%に減少し、対応して高分子量種は1.33%から2.63%に、低分子量種は<QLから3.53%に増加した。この結果は、保存条件の性質を考えると予想外ではなかった。
【0288】
還元および非還元のCD-SDS
図7および8は、還元および非還元CD-SDSによって決定された9ヶ月までの純度データを示す。5℃の長期保存条件では、還元CE-SDS(%重鎖および軽鎖)または非還元CE-SDS(%インタクトIgG)において注目すべき傾向はなく、結果は≧90.0%のGMP医薬品許容基準内であった。加速された25℃条件では、非還元条件について減少傾向が観察された。還元CE-SDS条件についても減少傾向が観察された。還元および非還元CE-SDSの両方について、9ヶ月時点までの全ての結果はGMP許容基準内であった。40℃のストレス負荷条件では、6ヶ月において、還元および非還元CE-SDSの両方の結果は、GMP医薬品のために設定された≧90.0%の許容基準未満であった。非還元CE-SDSの結果は、3ヶ月で規格から外れて88.9%の結果となり、次いで6ヶ月でさらに79.6%に減少した。還元CE-SDSについては、%重鎖および%軽鎖が3ヶ月で94.2%から6ヶ月で87.7%に減少した。この減少は、条件の性質を考慮すると、40℃では予想外ではなかった。
【0289】
HP-IEXによる電荷バリアント
5℃(長期保存)では、%酸性バリアントが21.46%の開始時から22.49%の9ヶ月までわずかに増加し、対応して総メインが68.8%から9ヶ月で67.1%にわずかに減少する。%塩基性バリアントは、9ヶ月でわずかに増加し始め、6ヶ月で10.15%から9ヶ月で10.38%に増加する。25℃(加速)では、総メインは開始時点の68.8%から9ヶ月で47.6%に減少した。総メインの減少と共に、対応した酸性バリアントの21.46%から39.86%への増加が観察され、塩基性バリアントの9.70%から11.51%へのわずかな増加が観察された。40℃(ストレス負荷)では、6ヶ月で10.1%への総メインの相当な減少があり、対応して酸性バリアントの80.02%への、および塩基性バリアントの9.95%への相当な増加を伴った。
【0290】
微粒子状物質
微粒子状物質は、mHIACにより測定した。5℃条件での結果は、開始時から9ヶ月まで、≧10μmの粒子について容器あたり≦6000個および≧25μmの粒子について容器あたり≦600個という許容基準を十分に下回った。25℃では、≧10μmの粒子の、開始時点での容器あたり13個の粒子から9ヶ月で容器あたり460個の粒子への増加が報告された。≧25μmの微粒子については粒子が減少し、9ヶ月で容器あたり3個の粒子という結果であった。25℃についての全ての時点のデータは、≧10μmおよび≧25μm両方の分析について許容基準内であった。40℃条件でのデータは、9ヶ月で容器あたり8258個の粒子という、≧10μmの粒子の劇的な増加を示した。この結果は容器あたり≦600個の粒子という許容基準から外れていた。≧25μmの粒子の結果は、9ヶ月の安定性時点で容器あたり124個の粒子に増加し、これは≧25μmの許容基準(容器あたり≦600個の粒子)を満たす。
【0291】
濁度
濁度は、350nmでの分光光度計の吸光度から決定した。長期保存条件の5℃では、9ヶ月時点まで注目すべき変化はなかった。25℃条件では、3ヶ月で結果が0.163AUとわずかに増加し、9ヶ月まで結果が0.196AUと増加し続ける。40℃では、1ヶ月で0.188AUで始まり、その後、9ヶ月で0.453AUに大きく増加する、より著しい増加がある。
【0292】
結論
データに基づくと、18ヶ月の試験日において、pH、タンパク質濃度、外観および視認できる粒子(データは示されない)ならびに力価および微粒子状物質(データは示されない)についての安定性試験の過程にわたって、5℃の保存条件で大きな変化または傾向は観察されなかった。呈色のわずかな増加およびPS-80含量の0.13mg/mlへの減少を除いて、5℃でのいずれの安定性試験についても注目すべき変化または傾向は観察されなかった。
【0293】
5℃の長期安定性についてのデータに基づくと、L-ヒスチジンバッファー、スクロース、ポリソルベート80およびL-メチオニンを含有する抗TIGIT製剤は、予想保存期間が30ヶ月である。キレーターをさらに含む製剤は、観察されたポリソルベート80の分解を低減させることが予想される。
【0294】
実施例8
抗TIGIT抗体および抗PD-1抗体の合剤
単一の製剤中の2つの抗体の合剤は患者にとってより好都合であり、2つの抗体を一緒に投薬することのコンプライアンスを向上させる。単一の製剤中の2つの抗体の合剤は患者にとってより好都合であり、2つの抗体を一緒に投薬することのコンプライアンスを向上させる。IgG1骨格上に次のCDR:配列番号108のHCDR1、配列番号154のHCDR2、配列番号110のHCDR3、配列番号111のLCDR1、配列番号112のLCDR2および配列番号113のLCDR3を持つ抗TIGIT抗体をペンブロリズマブと合剤化した。タンパク質-タンパク質相互作用(下に示される)に基づくと、合剤(下に示される)はpH5.0~6.0にわたって安定であることが見出された。したがって、pH5.0、5.5および6.0の合剤(P1T1)を選び、2つの対照(PD1抗体および抗TIGIT抗体)と一緒に、5℃、25℃および40℃でのさらなる熱安定性について評定した。
【表26】
【0295】
製剤を、次のような液体製剤として調製した。
【表27】
【0296】
各製剤を、2Rバイアル中に1mL充填した。安定性を、目視検査、タンパク質濃度、マイクロフローイメージング(Microwflow Imaging)(MFI)(微粒子の評価)、混合モードのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(凝集の評価)、IEX(電荷バリアントの評価)およびUP-SEC(凝集の評価)により測定する。熱安定性プロトコールは次のとおりである。
【表28】
【0297】
コロイドおよび熱安定性を指し示すタンパク質-タンパク質相互作用を、異なる合剤について測定した。プラスの拡散相互作用パラメーター(KD)値、KD>0により指し示される反発的なタンパク質-タンパク質相互作用は、凝集性向が低い安定な製剤を指し示す。合剤のKdは、反発的かつ安定性のタンパク質-タンパク質相互作用を指し示すプラスのKD値を持つことが見出され、このことは凝集物がより少ない性向および安定な合剤を指し示す。
【0298】
プラスの拡散相互作用パラメーター(KD)つまりKD>0に基づくと、抗体は合剤化されたとき、単独の抗体製剤と同様に、一緒に合剤化されたときに良好に挙動すると予想される。
【配列表】