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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】エラーアンプおよび電源回路
(51)【国際特許分類】
   G05F 1/56 20060101AFI20231214BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G05F1/56 310F
H02M3/155 P
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020022611
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021128530
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】村木 太郎
【審査官】井上 弘亘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/117026(WO,A1)
【文献】特開2010-136572(JP,A)
【文献】特開2010-231498(JP,A)
【文献】特開2009-100497(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
H02M 3/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートが第1入力端子に接続される第1トランジスタおよびゲートが第2入力端子に接続される第2トランジスタを含む入力差動対と、
前記入力差動対と接続されるテイル電流源と、
負荷回路と、
前記第1トランジスタと前記負荷回路の間に設けられた第3トランジスタと、
前記第2トランジスタと前記負荷回路の間に設けられた第4トランジスタと、
前記第3トランジスタのゲートに、時間とともに徐変するソフトスタート電圧を供給する第1電圧源と、
前記第4トランジスタのゲートに一定のバイアス電圧を供給する第2電圧源と、
を備えることを特徴とするエラーアンプ。
【請求項2】
前記バイアス電圧は、前記ソフトスタート電圧の遷移後の電圧レベルと等しいことを特徴とする請求項1に記載のエラーアンプ。
【請求項3】
前記第1電圧源は、
キャパシタと、
前記キャパシタと並列に設けられるスイッチと、
前記キャパシタと接続される第1電流源と、
を含み、前記キャパシタの電圧が前記ソフトスタート電圧であることを特徴とする請求項1または2に記載のエラーアンプ。
【請求項4】
前記第2電圧源は、前記第1電流源と同じ構成を有する第2電流源を含むことを特徴とする請求項3に記載のエラーアンプ。
【請求項5】
前記第1トランジスタから前記第4トランジスタはNMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエラーアンプ。
【請求項6】
前記負荷回路は、PMOSトランジスタで構成されるカレントミラー回路であることを特徴とする請求項5に記載のエラーアンプ。
【請求項7】
前記第1トランジスタから前記第4トランジスタはPMOSトランジスタであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のエラーアンプ。
【請求項8】
一端が入力ラインに接続され、他端が出力ラインに接続された出力トランジスタと、
前記第1入力端子および前記第2入力端子の一方に基準電圧を受け、前記第1入力端子および前記第2入力端子の他方に前記出力ラインの電圧に応じたフィードバック信号を受け、出力端子が前記出力トランジスタの制御端子に接続される請求項1から7のいずれかに記載のエラーアンプと、
を備えることを特徴とする電源回路。
【請求項9】
スイッチングトランジスタを含むDC/DCコンバータ主回路と、
前記第1入力端子および前記第2入力端子の一方に基準電圧を受け、前記第1入力端子および前記第2入力端子の他方に前記DC/DCコンバータ主回路の出力電圧に応じたフィードバック信号を受ける請求項1から7のいずれかに記載のエラーアンプと、
前記エラーアンプの出力に応じたデューティ比を有するパルス信号を生成するパルス変調器と、
前記パルス信号に応じて前記スイッチングトランジスタを駆動するドライバと、
を備えることを特徴とする電源回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源回路に関する。
【背景技術】
【0002】
リニアレギュレータやDC/DCコンバータ(スイッチング電源)などの電源回路は、突入電流を防止し、また出力電圧のオーバーシュートを抑制するために、ソフトスタート機能を有する。
【0003】
図1は、ソフトスタート機能を有する従来の電源回路1R(従来例1)を示す回路図である。電源回路1Rは、主回路10、出力キャパシタC1、抵抗R1,R2、エラーアンプ20、ソフトスタート回路30を備える。
【0004】
主回路10は、リニアレギュレータあるいはスイッチングレギュレータ(DC/DCコンバータ)の主要部を含む。主回路10は、出力電圧VOUTが、エラー信号VERRに応じて変化するように構成される。
【0005】
電源回路1Rの出力ラインには、出力キャパシタC1が接続される。エラーアンプ20には、電源回路1Rの出力電圧VOUT応じたフィードバック電圧VFBが入力される。たとえばフィードバック電圧VFBは、出力電圧VOUTを抵抗R1,R2によって分圧した電圧である。
【0006】
エラーアンプ20は、フィードバック電圧VFBと基準電圧VREFの誤差を増幅し、エラー信号VERRを生成する。主回路10、抵抗R1,R2、エラーアンプ20を含むフィードバックループによって、フィードバック電圧VFBが基準電圧VREFと一致するようにフィードバックがかかり、出力電圧VOUTが安定化される。
【0007】
基準電圧VREFは、ソフトスタート回路30によって生成される。ソフトスタート回路30は、バンドギャップリファレンス回路などにより生成されるバンドギャップ電圧VBGRが入力される。定常状態において、基準電圧VREFは、バンドギャップ電圧VBGRと等しい。ソフトスタート回路30は、シャットダウン信号SDをトリガーとして、基準電圧VREFを0VからVBGRに向かって時間とともに徐々に上昇させる。
【0008】
図2は、図1のソフトスタート回路30の動作波形図である。時刻tにシャットダウン信号SDがハイとなると、基準電圧VREFがリセットされ、その後、一定の傾きで上昇していく。そして時刻tに基準電圧VREFが、バンドギャップ電圧VBGRに達すると、それ以降、一定レベルに維持される。
【0009】
図3は、ソフトスタート機能を有する電源回路1S(従来例2)を示す回路図である。電源回路1Sは、主回路10、出力キャパシタC1、抵抗R1,R2、ソフトスタート回路40、エラーアンプ50を備える。
【0010】
図3の主回路10は、リニアレギュレータのそれであり、出力トランジスタ12を含む。ソフトスタート回路40は、シャットダウン信号SDをトリガーとして、ソフトスタート電圧VSSを0Vから時間とともに徐々に上昇させる。エラーアンプ50は、3入力で構成され、ひとつの非反転入力端子(+)と、2つの反転入力端子(-)を有する。非反転入力端子には、フィードバック信号VFBが入力され、2つの反転入力端子には、バンドギャップ電圧VBGRと、ソフトスタート電圧VSSが入力される。エラーアンプ50の出力電圧VERRは、ソフトスタート電圧VSSとバンドギャップ電圧VBGRのうち低い一方と、フィードバック電圧VFBとの誤差に応じている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2018-133915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者は、図1の電源回路1Rや図3の電源回路1Sについて検討した結果、以下の課題を認識するに至った。
【0013】
(従来例1の課題)
図4は、図1のソフトスタート回路30の構成例を示す回路図である。ソフトスタート回路30は、キャパシタC2、電流源CS1、リセットスイッチSW1、クランプ回路32を備える。
【0014】
リセットスイッチSW1がオンすると、キャパシタC2が放電され、キャパシタC2に生ずる基準電圧VREFが0Vにリセットされ、リセットスイッチSW1がオフすると、キャパシタC2は、電流源CS1によって充電され、基準電圧VREFが時間とともに徐々に増大する。クランプ回路32は、シャントレギュレータであり、キャパシタC2に発生する電圧VREFがバンドギャップ電圧VBGRに近づくように、トランジスタ33に流れる電流を調節する。
【0015】
図4のソフトスタート回路30を採用する場合、2個の差動アンプ(エラーアンプ)20、34が必要となるため、回路面積が大きくなるという問題がある。また、エラーアンプ34が入力オフセット電圧を有していると、入力オフセット電圧によって、出力電圧VOUTがばらつくという問題がある。
【0016】
(従来例2の課題)
図5は、図3のソフトスタート回路40およびエラーアンプ50の回路図である。エラーアンプ50の差動入力段は、3個のPMOSトランジスタMP1~MP3を有する。2個の反転入力端子に対応する2個のPMOSトランジスタMP2,MP3のゲートには、バンドギャップ電圧VBGRとソフトスタート電圧VSSが入力される。ソフトスタート電圧VSSがバンドギャップ電圧VBGRより低い領域では、PMOSトランジスタMP3に支配的に電流が流れ、トランジスタMP2は無視できる。ソフトスタート電圧VSSがバンドギャップ電圧VBGRに近い領域では、PMOSトランジスタMP2,MP3の両方に電流が流れる。ソフトスタート電圧VSSがバンドギャップ電圧VBGRより高い領域では、PMOSトランジスタMP2に支配的に電流が流れ、トランジスタMP3は無視できる。
【0017】
このエラーアンプ50は、2個のトランジスタMP2,MP3の動作の切り替わり点の設計が難しいという問題がある。また、ソフトスタート電圧VSSは0Vから上昇していくため、差動入力トランジスタをNMOSトランジスタで構成することができない。
【0018】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ソフトスタート機能付きの電源回路およびそれに利用可能なエラーアンプの提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明のある態様は、エラーアンプに関する。エラーアンプは、ゲートが第1入力端子に接続される第1トランジスタおよびゲートが第2入力端子に接続される第2トランジスタを含む入力差動対と、入力差動対と接続されるテイル電流源と、負荷回路と、第1トランジスタと負荷回路の間に設けられた第3トランジスタと、第2トランジスタと負荷回路の間に設けられた第4トランジスタと、第3トランジスタのゲートに、時間とともに徐変するソフトスタート電圧を供給する第1電圧源と、第4トランジスタのゲートにバイアス電圧を供給する第2電圧源と、を備える。
【0020】
この構成によれば、オフセットの影響を受けずに、ソフトスタート制御が可能となる。また差動アンプを1個で構成できるため、回路面積を小さくできる。
【0021】
バイアス電圧は、ソフトスタート電圧の遷移後の電圧レベルと等しくてもよい。これにより、ソフトスタート動作の完了後において、第3トランジスタと第4トランジスタの影響をキャンセルできる。
【0022】
第1電圧源は、キャパシタと、キャパシタと並列に設けられるスイッチと、キャパシタと接続される第1電流源と、を含み、キャパシタの電圧がソフトスタート電圧であってもよい。
【0023】
第2電圧源は、第1電流源と同じ構成を有する第2電流源を含んでもよい。これにより、バイアス電圧を、ソフトスタート電圧の遷移後の電圧レベルと揃えることができる。
【0024】
第1トランジスタから第4トランジスタはNMOSトランジスタであってもよい。NMOSトランジスタを利用できるため、PMOSトランジスタを用いた場合に比べて、回路を小さくできる。
【0025】
負荷回路は、PMOSトランジスタで構成されるカレントミラー回路であってもよい。負荷回路は、抵抗負荷であってもよい。
【0026】
第1トランジスタから第4トランジスタはPMOSトランジスタであってもよい。
【0027】
本発明の別の態様は、電源回路に関する。電源回路は、一端が入力ラインに接続され、他端が出力ラインに接続された出力トランジスタと、基準電圧と、出力ラインの電圧に応じたフィードバック信号と、を受け、出力端子が出力トランジスタの制御端子に接続される上述のエラーアンプと、を備えてもよい。
【0028】
本発明の別の態様も、電源回路に関する。電源回路は、スイッチングトランジスタを含むDC/DCコンバータ主回路と、基準電圧と、DC/DCコンバータ主回路の出力電圧に応じたフィードバック信号と、を受ける上述のエラーアンプと、エラーアンプの出力に応じたデューティ比を有するパルス信号を生成するパルス変調器と、パルス信号に応じてスイッチングトランジスタを駆動するドライバと、を備えてもよい。
【0029】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0030】
本発明のある態様によれば、ソフトスタート機能を有するエラーアンプを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】ソフトスタート機能を有する従来の電源回路(従来例1)を示す回路図である。
図2図1のソフトスタート回路の動作波形図である。
図3】ソフトスタート機能を有する電源回路(従来例2)を示す回路図である。
図4図1のソフトスタート回路の構成例を示す回路図である。
図5図3のソフトスタート回路およびエラーアンプの回路図である。
図6】実施の形態に係るエラーアンプを備える電源回路の回路図である。
図7図6の電源回路の動作波形図である。
図8図8(a)、(b)は、エラーアンプの構成例の回路図である。
図9】変形例1に係るエラーアンプの回路図である。
図10】変形例2に係るエラーアンプの回路図である。
図11】変形例6に係る電源回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0033】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0034】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0035】
図6は、実施の形態に係るエラーアンプ100を備える電源回路200の回路図である。電源回路200は、主回路210、出力キャパシタC1、フィードバック抵抗R1,R2およびソフトスタート機能付きのエラーアンプ100を備える。
【0036】
本実施の形態において電源回路200はリニアレギュレータであり、主回路210は、PチャンネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である出力トランジスタ212を含む。出力トランジスタ212のソースは入力ライン202と接続され、ドレインは出力ライン204と接続される。出力ライン204には、平滑化用のキャパシタが接続される。出力ライン204に生ずる出力電圧VOUTは、フィードバック抵抗R1,R2によって分圧され、分圧後のフィードバック電圧VFBは、エラーアンプ100の入力端子INP(+)にフィードバックされる。
【0037】
エラーアンプ100は、入力端子INP,INN、シャットダウン端子SD、出力端子OUTを備える。入力端子INPは、非反転入力端子(+)であり、フィードバック電圧VFBが入力される。入力端子INNは反転入力端子(-)であり、バンドギャップ電圧VBGRなどの基準電圧が入力される。エラーアンプ100の出力端子OUTは、出力トランジスタ212のゲートと接続され、ゲートにはエラーアンプ100の出力電圧VERRが供給される。
【0038】
エラーアンプ100のシャットダウン端子SDには、シャットダウン信号SDが入力される。
【0039】
エラーアンプ100は、入力差動対102、テイル電流源104、負荷回路106、第3トランジスタMN3、第4トランジスタMN4、第1電圧源110、第2電圧源112を備える。
【0040】
入力差動対102は、NチャンネルMOSFETである第1トランジスタMN1および第2トランジスタMN2を含む。第1トランジスタMN1、第2トランジスタMN2のゲートは、入力端子INN,INPと接続される。テイル電流源104は、第1トランジスタMN1、第2トランジスタMN2のソースと接続される。
【0041】
負荷回路106は、カレントミラー回路であり、ゲート同士が接続されたPチャンネルMOSFETであるトランジスタMP5,MP6を含む。
【0042】
第3トランジスタMN3は、NチャンネルMOSFETであり、第1トランジスタMN1と負荷回路106の第5トランジスタMP5の間に設けられる。第4トランジスタMN4はNチャンネルMOSFETであり、第2トランジスタMN2と負荷回路106の第6トランジスタMP6の間に設けられる。第3トランジスタMN3のドレインが、エラーアンプ100の出力端子OUTと接続される。
【0043】
第1電圧源110は、第3トランジスタMN3のゲートに、時間とともに徐変するソフトスタート電圧VSSを供給する。ソフトスタート電圧VSSは、シャットダウン信号SDのアサートに応答して、初期化され、その後、時間とともに変化する。本実施の形態では、ソフトスタート電圧VSSは時間とともに上昇していく。
【0044】
第2電圧源112は、第4トランジスタMPNのゲートにバイアス電圧VBIASを供給する。バイアス電圧VBIASは、ソフトスタート電圧VSSの遷移後の電圧レベルと等しく設計するとよい。つまり、バイアス電圧VBIASは、ソフトスタート電圧VSSの最大電圧と等しい電圧レベルを有する。
【0045】
以上がエラーアンプ100およびそれを備える電源回路200の構成である。続いてその動作を説明する。図7は、図6の電源回路200の動作波形図である。
【0046】
時刻tより前は、通常状態TNORMである。通常期間TNORMでは、ソフトスタート電圧VSSは、バイアス電圧VBIASと等しくなっており、トランジスタMN3,MN4はバランスしている。したがって、入力差動対102の影響が支配的であり、2つの入力端子INP,INNの電圧VBGR,VFBが等しくなるようにフィードバックがかかる。その結果、電源回路200の出力電圧VOUTは、目標レベル(VBGR×(R1+R2)/R2)に安定化される。
【0047】
時刻tに、シャットダウン信号SDがアサートされると、リセットスイッチSW1がターンオンし、ソフトスタート電圧VSSが0Vにリセットされる。ソフトスタート電圧VSSが0Vとなると、第3トランジスタMN3がオフとなる。そうすると、エラーアンプ100の出力であるエラー電圧VERRが瞬時に上昇し、出力トランジスタ212がオフとなり、出力電圧VOUT(フィードバック電圧VFB)が0Vに低下する。シャットダウン信号SDがアサートされるシャットダウン期間TSDの間、テイル電流源104が生成するテイル電流Iは、第2トランジスタMN2および第4トランジスタMN4側に流れる。
【0048】
その後、時刻t1にシャットダウン信号SDがネゲートされると、リセットスイッチSW1がオフとなり、キャパシタC11が第1電流源CS1が生成する定電流Icによって充電され、ソフトスタート電圧VSSが一定の傾きで増大する。ソフトスタート電圧VSSが徐変する期間を、ソフトスタート期間TSSと称する。
【0049】
ソフトスタート期間TSSにおいて、第3トランジスタMN3のゲートソース間電圧が時間とともに増大していき、第3トランジスタMN3に流れる電流が時間とともに増大していく。その結果、第3トランジスタMN3のドレイン電圧であるエラー電圧VERRは時間ともに低下していく。これにより出力トランジスタ212が徐々にオンとなり、出力電圧VOUT(フィードバック電圧VFB)が徐々に上昇する。
【0050】
時刻tに、ソフトスタート期間TSSが終了すると、ソフトスタート電圧VSSとバイアス電圧VBIASが等しくなり、通常状態TNORMとなる。通常状態TNORMでは、上述したように入力差動対102の影響が支配的であり、2つの入力端子INP,INNの電圧VBGR,VFBが等しくなるようにフィードバックがかかる。その結果、電源回路200の出力電圧VOUTは、目標レベル(VBGR×(R1+R2)/R2)に安定化される。
【0051】
以上が電源回路200の動作である。続いてその利点を従来例1,2との対比にもとづいて説明する。
【0052】
従来例1(図1図4)と比較する。従来例1においてエラーアンプ34がオフセット電圧を有する場合、その影響で、ソフトスタート完了後の通常期間における基準電圧VREFがバンドギャップ電圧VBGRと等しくならず、出力電圧VOUTの目標レベルが、オフセット電圧VOFSの影響を受ける。
REF=VBGR+VOFS
【0053】
これに対して、本実施の形態によれば、ソフトスタート電圧VSSの生成にエラーアンプを利用しないため、オフセットの影響を低減できる。
【0054】
また、従来例1では、2個の差動アンプ(エラーアンプ)20,34が必要であり、回路面積が大きいのに対して、本実施の形態では、エラーアンプが1個でよいため、回路面積を小さくできる。
【0055】
従来例2(図3図5)と比較する。従来例2では、図5に示すように、並列に接続された2個のトランジスタMP2,MP3の電流バランスによって、ソフトスタート期間と通常期間が切り替えられる。言い換えると、それらの切り替わりの設計が非常に難しい。
【0056】
これに対して、本実施の形態のエラーアンプ100では、ソフトスタート電圧VSSとバイアス電圧VBIASのバランスで、ソフトスタート期間と通常期間が決まるため、設計が非常に容易である。
【0057】
加えて従来例2では、差動対をPMOSトランジスタで構成する必要があるが、本実施の形態では、素子サイズが相対的に小さいNMOSトランジスタで構成できる。これにより、回路面積を小さくできるという利点もある。
【0058】
続いてエラーアンプ100の具体的な構成例を説明する。図8(a)、(b)は、エラーアンプ100の構成例の回路図である。
【0059】
たとえば第1電圧源110は、キャパシタC11、第1電流源CS1、リセットスイッチSW1を含む。キャパシタC11の一端の電位は固定され、他端には、第1電流源CS1が接続される。リセットスイッチSW1は、キャパシタC11と並列に接続される。リセットスイッチSW1の制御端子(ゲート)にはシャットダウン信号SDが入力され、シャットダウン信号SDのアサートに応答して、リセットスイッチSW1がオンとなり、ソフトスタート電圧VSSが0Vにリセットされる。その後、リセットスイッチSW1がオフとなると、キャパシタC11が第1電流源CS1によって充電され、ソフトスタート電圧VSSは一定の傾きで時間とともに緩やかに増大していく。なお第1電圧源110の構成は、図8(a)のそれには限定されない。
【0060】
上述のように、ソフトスタート電圧VSSの遷移後の電圧レベルは、バイアス電圧VBIASと等しいことが好ましい。そのために第2電圧源112は、第1電流源CS1と同じ構成を有する第2電流源CS2を含む。図8(b)に示すように、第1電流源CS1と第2電流源CS2は、ゲート同士が接続されたトランジスタMP7,MP8のペアで構成してもよい。
【0061】
なお、第3トランジスタMN3と第4トランジスタMN4は、通常期間においてフルオン状態とみなせるため、2つのトランジスタMN3,MN4の電流バランスに、それらのゲート電圧が与える影響はそれほど大きくない。したがって、バイアス電圧VBIASと、ソフトスタート電圧VSSの遷移後の電圧レベルには、ある程度の誤差が許容される。
【0062】
続いて変形例を説明する。
【0063】
(変形例1)
図9は、変形例1に係るエラーアンプ100Aの回路図である。第4トランジスタMN4のゲートには、バイアス電圧VBIASが供給される。ソフトスタート電圧VSSを生成する第1電圧源110Aは、クランプ回路114を含む。クランプ回路114は、ソフトスタート電圧VSSがバイアス電圧VBIASを超えないようにクランプする。クランプ回路114の構成は特に限定されない。
【0064】
この構成によっても、通常期間における第3トランジスタMN3と第4トランジスタMN4の電流バランスをとることができる。
【0065】
(変形例2)
図10は、変形例2に係るエラーアンプ100Cの回路図である。このエラーアンプ100Cは、図6のエラーアンプ100のNMOSトランジスタ(MN1,MN2,MN3,MN4)をPMOSトランジスタ(MP1,MP2,MP3,MP4)に置換し、PMOSトランジスタ(MP5,MP6)をNMOSトランジスタ(MN5,MN6)に置換し、天地反転した構成を有する。第1電圧源110Cは、時間とともに低下するソフトスタート電圧VSSを生成してもよい。
【0066】
図10において、トランジスタMP3,MP4をNMOSトランジスタで構成してもよい。
【0067】
(変形例3)
実施の形態や変形例2では、第3トランジスタMN3あるいは第4トランジスタMP4のドレインを、エラーアンプ100の出力としたが、その限りでなく、エラーアンプ100は、出力段や増幅段を含んでもよい。
【0068】
(変形例4)
実施の形態では、エラーアンプをMOSFETで構成したが、その一部あるいは全部をバイポーラトランジスタで構成してもよい。
【0069】
(変形例5)
負荷回路106は、カスコードカレントミラー回路であってもよいし、抵抗負荷であってもよい。
【0070】
(変形例6)
実施の形態ではリニアレギュレータを説明したが、その限りでなく、電源回路200はDC/DCコンバータなどのスイッチング電源であってもよい。図11は、変形例6に係る電源回路200Bの回路図である。主回路210は、降圧コンバータのトポロジーを有し、スイッチングトランジスタ(ハイサイドトランジスタ)MH、同期整流トランジスタ(ローサイドトランジスタ)ML、インダクタL1、パルス変調器214およびドライバ216を含む。この実施例では、バンドギャップ電圧VBGRがエラーアンプ100の非反転入力端子に、フィードバック電圧VFBがエラーアンプ100の反転入力端子に入力される。
【0071】
パルス変調器214は、エラーアンプ100が生成するエラー電圧VERRに応じたデューティサイクル(あるいは周波数、オン時間、オフ時間)を有するパルス信号Spを生成する。ドライバ216は、パルス信号SpにもとづいてハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタMLを駆動する。
【0072】
(変形例7)
実施の形態では、エラーアンプを電源回路に用いる場合を説明したがその限りでなく、ソフトスタート制御が必要とされる様々な用途におけるオペアンプとして用いることができる。
【0073】
実施の形態にもとづき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎないことはいうまでもなく、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0074】
100 エラーアンプ
102 入力差動対
104 テイル電流源
106 負荷回路
MN1 第1トランジスタ
MN2 第2トランジスタ
MN3 第3トランジスタ
MN4 第4トランジスタ
MP5 第5トランジスタ
MP6 第6トランジスタ
110 第1電圧源
C11 キャパシタ
SW1 リセットスイッチ
CS1 第1電流源
112 第2電圧源
CS2 第2電流源
200 電源回路
210 主回路
212 出力トランジスタ
214 パルス変調器
216 ドライバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11