(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】基板収納容器
(51)【国際特許分類】
H01L 21/673 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
H01L21/68 T
(21)【出願番号】P 2020033082
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大貫 和正
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-154747(JP,A)
【文献】実開平03-116040(JP,U)
【文献】特開2009-094445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0065571(US,A1)
【文献】特開2012-190928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/673
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を収納する容器本体と、
前記容器本体の開口を閉鎖する蓋体と、
前記容器本体と前記蓋体との間をシールするシール部材と、
前記容器本体に取り付けた前記蓋体を保持するためのロック機構と、を備える基板収納容器において、
前記容器本体の側壁部に設けられた貫通穴と、
前記ロック機構の操作部に設けられ、前記ロック機構のロック操作に伴い前記貫通穴を閉塞する一方、ロック解除操作に伴い前記貫通穴を開放する開閉手段と、を備
え、
前記操作部は、前記蓋体の周縁部に回動可能に設けられ、
前記ロック機構は、前記操作部に設けられた係合爪と、この係合爪を係止可能に前記容器本体の側壁部に設けられた係止部と、を有し、
前記係止部が、前記側壁部において前記貫通穴を挟んで一対、設けられ、
前記操作部が、前記一対の係止部に対応する一対の係合爪と、この一対の係合爪同士を連繋する梁部と、を有し、
前記開閉手段は、前記梁部から前記貫通穴に向かって突出する凸栓部を有し、
前記操作部は、前記凸栓部が前記貫通穴を閉塞するロック位置と、前記貫通穴を開放するロック解除位置との間を回動するように構成されている、
ことを特徴とする基板収納容器。
【請求項2】
前記開閉手段は、前記操作部がロック位置からロック解除位置に向かって操作されるとき、ロック解除位置よりも手前で、前記梁部の撓みによって前記凸栓部が前記貫通穴から離れるように構成されている、
ことを特徴とする
請求項1に記載の基板収納容器。
【請求項3】
前記容器本体の開口の周縁部には、開口面積が広がるようにリム部が屈曲形成され、
前記ロック解除位置にある操作部の係合爪および凸栓部がいずれも、前記容器本体の開口方向に見て前記リム部よりも外方に位置している、
ことを特徴とする
請求項2に記載の基板収納容器。
【請求項4】
前記貫通穴の断面が円形状であり、
前記凸栓部が、前記貫通穴の断面よりも大きな半径の球面を有する、
ことを特徴とする
請求項1から3までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項5】
前記容器本体には、収納された基板と前記貫通穴との間に位置するように部品が配設されている、ことを特徴とする
請求項1から4までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項6】
前記容器本体には、収納された基板と前記貫通穴との間に位置するように壁部が設けられている、ことを特徴とする
請求項1から4までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項7】
前記操作部には、その回動の軸線に近づくように前記梁部から延出する延出部が設けられ、この延出部に前記凸栓部が設けられている、
ことを特徴とする
請求項1から6までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【請求項8】
前記操作部には、その回動の軸線から遠ざかるように前記梁部から延出する延出部が設けられ、この延出部に前記凸栓部が設けられている、
ことを特徴とする
請求項1から6までのいずれか1項に記載の基板収納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェーハやフォトマスクガラス等の基板を収納する容器に関し、特に容器内外の気圧差を調整するための構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の基板収納容器は、容器本体と、容器本体の開口を閉鎖する蓋体と、この蓋体を容器本体に取り付けた状態で保持するためのロック機構と、を備えている。
また、蓋体が取り付けられた容器本体内を概ね気密状態とし、内部に収納した基板を空気中の微小なパーティクルによる汚染から保護するために、容器本体の開口周縁部と蓋体の周縁部との間をシールするパッキン等のシール部材が設けられている。
【0003】
ところが、そうしてシール部材で気密性を高めると、例えば航空機での輸送中に容器内外に生じる気圧差によって基板収納容器の内部が減圧された状態になった場合に、蓋体が容器本体に密着して開き難くなるという問題があった。
これに対して例えば特許文献1には、容器本体に取り付けた蓋体を保持するための施錠機構を備える場合に、この施錠機構の解錠操作に連動してシール部材を部分的に変形させ、隙間を形成することによって気圧差を解消する構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記従来技術のように本来、容器を密封するためのシール部材の一部を、解錠操作のたびに変形させるのは如何にも無理があり、その部分においてシール部材の形状が復元し難くなって、シール性の低下を招くおそれがある。また、そうして変形を繰り返す部分の耐久性が損なわれるおそれもある。
【0006】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、容器を密封するためのシール部材の一部分を変形させることなく、容器内外の気圧差をより確実に解消して、蓋体の開閉が容易な基板収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明に係る1つの態様は、基板を収納する容器本体と、前記容器本体の開口を閉鎖する蓋体と、前記容器本体と前記蓋体との間をシールするシール部材と、前記容器本体に取り付けた前記蓋体を保持するためのロック機構と、を備える基板収納容器において、前記容器本体の側壁部に設けられた貫通穴と、前記ロック機構の操作部に設けられ、前記ロック機構のロック操作に伴い前記貫通穴を閉塞する一方、ロック解除操作に伴い前記貫通穴を開放する開閉手段と、を有するものである。
(2)上記(1)の態様において、前記操作部は、前記蓋体の周縁部に回動可能に設けられ、前記ロック機構は、前記操作部に設けられた係合爪と、この係合爪を係止可能に前記容器本体の側壁部に設けられた係止部と、を有し、前記係止部が、前記側壁部において前記貫通穴を挟んで一対、設けられ、前記操作部が、前記一対の係止部に対応する一対の係合爪と、この一対の係合爪同士を連繋する梁部と、を有し、前記開閉手段は、前記梁部から前記貫通穴に向かって突出する凸栓部を有し、前記操作部は、前記凸栓部が前記貫通穴を閉塞するロック位置と、前記貫通穴を開放するロック解除位置との間を回動するように構成されてもよい。
(3)上記(2)の態様において、前記開閉手段は、前記操作部がロック位置からロック解除位置に向かって操作されるとき、ロック解除位置よりも手前で、前記梁部の撓みによって前記凸栓部が前記貫通穴から離れるように構成されてもよい。
(4)上記(3)の態様において、前記容器本体の開口の周縁部には、開口面積が広がるようにリム部が屈曲形成され、前記ロック解除位置にある操作部の係合爪および凸栓部がいずれも、前記容器本体の開口方向に見て前記リム部よりも外方に位置してもよい。
(5)上記(2)~(4)のいずれかの態様において、前記貫通穴の断面が円形状であり、前記凸栓部が、前記貫通穴の断面よりも大きな半径の球面を有してもよい。
(6)上記(2)~(5)のいずれかの態様において、前記容器本体には、収納された基板と前記貫通穴との間に位置するように部品が配設されてもよい。
(7)上記(2)~(5)のいずれかの態様において、前記容器本体には、収納された基板と前記貫通穴との間に位置するように壁部が設けられてもよい。
(8)上記(2)~(7)のいずれかの態様において、前記操作部には、その回動の軸線に近づくように前記梁部から延出する延出部が設けられ、この延出部に前記凸栓部が設けられてもよい。
(9)上記(2)~(7)のいずれかの態様において、前記操作部には、その回動の軸線から遠ざかるように前記梁部から延出する延出部が設けられ、この延出部に前記凸栓部が設けられてもよい。
(10)上記(1)の態様において、前記操作部は、前記蓋体の周縁部に回動可能に設けられ、前記ロック機構は、前記操作部に設けられた係合爪と、この係合爪を係止可能に前記容器本体の側壁部に設けられた係止部と、を有し、前記係止部が、前記側壁部において前記貫通穴を挟んで一対、設けられ、前記操作部が、前記一対の係止部に対応する一対の係合爪と、この一対の係合爪同士を連繋する梁部と、を有し、前記開閉手段は、前記貫通穴に開閉可能に配設されたバルブを有し、前記操作部は、前記バルブを押圧して閉状態とするロック位置と、バルブから離れる方向に回動して開状態に切り替えるロック解除位置との間で回動するように構成されてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の基板収納容器によれば、例えば蓋体を取り外すために、ロック機構の操作部をロック解除操作すると、これに伴い開閉手段によって貫通穴が開放され、速やかに容器内外の気圧差が解消される。これにより、蓋体を容易に開閉できるようになる。その際に、容器を密封するためのシール部材を部分的に変形させることがないので、その復元性や耐久性が損なわれず、シール性の低下を招くおそれもない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係る実施形態の基板収納容器を示す斜視図である。
【
図2】蓋体を取り外した基板収納容器の斜視図である。
【
図3】ロック機構の構造を示す
図1のiii-iii線における断面図であって、ロック解除位置にある操作部を実線で、また、ロック位置にある操作部を仮想線で、それぞれ示す。
【
図4】ロック解除位置にある操作部の構造を拡大して示す部分断面斜視図である。
【
図5】開閉機構の動作を説明するための
図1のv-v線における断面図であって、(a)(b)はロック位置にあるときを、(c)はロック解除位置の手前にあるときを、それぞれ示す。
【
図6】操作部がロック解除位置にあるときの
図5相当図である。
【
図7】凸栓部を別体とした他の実施形態に係る
図5(a)相当図である。
【
図8】貫通穴にバルブを配設した他の実施形態に係る
図5(a)、
図6相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0011】
図1は、本発明に係る実施形態の基板収納容器1を示す斜視図である。
基板収納容器1は、図示しない基板をカセット30(
図2参照)を介して収納する容器本体10と、この容器本体10の上部に取り付けられる蓋体20と、を備えている。そして、蓋体20を取り外して
図2に示すように、一例として容器本体10は上方に開口する四角形の箱状体であり、四隅にそれぞれ柱状部11が形成されて剛性を高めている。
【0012】
図2に表れているように容器本体10の内部には、相対する側壁部31間に基板を一定間隔で収納可能なカセット30が配設されていて、その上部が容器本体10の開口12から上方に飛び出している。この飛び出している部分を取り囲むように上方から蓋体20が取り付けられて、容器本体10の開口12を閉鎖する。なお、図示は省略するが、蓋体20の内面には基板の動きを規制するためのリテーナが配設されている。
【0013】
また、そのように蓋体20の取り付けられる開口12の周縁部には、ほぼ全周にわたって蓋体20の周縁部と嵌め合わされるリム部13が設けられている。すなわち、
図3に拡大して断面で示すように、容器本体10の開口12の周縁部は、開口面積が大きくなるように斜め外方に傾斜した後に、ほぼ水平に外方に延びてから上方に立ち上がるリム部13が屈曲形成されている。
【0014】
一方、蓋体20は、四隅が丸く湾曲した略矩形とされ、その周縁部には容器本体10のリム部13と同様にしてリム部21が屈曲形成されている。そして、それら両方のリム部13,21のそれぞれの内周側に相対的に小さな凸部13a,21aが環状に形成されることで、それぞれの全周にわたって断面略U字状のパッキン嵌合溝13b,21bが形成されている。
【0015】
図3に表れているように蓋体20を容器本体10に取り付けたとき、この容器本体10のリム部13が蓋体20のリム部21の奥に入り込む一方、容器本体10の凸部13aは蓋体20の凸部21aと突き合わされる。そして、容器本体10のパッキン嵌合溝13bと蓋体20のパッキン嵌合溝21bとが一体になって環状の空間を形成し、ここにパッキン40が嵌め込まれる。
【0016】
パッキン40は環状のシール部材であり、本実施形態では蓋体20の外形状に対応した矩形枠状とされている。また、パッキン40の材料としては、ポリエステル系のエラストマー、ポリオレフィン系のエラストマー、フッ素系のエラストマー、ウレタン系のエラストマー、スチレン系のエラストマーなどからなる熱可塑性のエラストマー、フッ素ゴム、エチレンプロピレンゴム、シリコーン系のゴムなどの弾性材を用いることができる。
【0017】
なお、本実施形態の容器本体10及び蓋体20の材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、液晶ポリマーなどの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0018】
本実施形態の基板収納容器1には、前記のように容器本体10に取り付けた蓋体20を保持するためのロック機構50が設けられている。すなわち、まず、容器本体10の4つの側面部のうち、カセット30の側壁部31に近接する側壁部14は、
図2に表れているように、上下の中間部においてカセット30の側壁部31の形状に対応する円弧面とされている。
【0019】
そして、その側壁部14における上側の部分には矩形断面の凹部14aが形成されて、蓋体20の周縁部に設けられた操作部51が挿し入れられるようになっている。すなわち、
図1、3に表れているように、蓋体20の周縁部には周方向の軸線の周りに回動可能な操作部51が設けられ、この操作部51に係合爪52が設けられている。一方、容器本体10には前記凹部14a内に係止部53が設けられている。
【0020】
図2にも表れているように係止部53は、凹部14aにおいて水平方向に並んで一対、設けられており、それぞれが凹部14aから外方に向かって延びる矩形断面の筒形状を有する。
図3に表れているように係止部53は、その下壁53aが外方に向かってやや下向きに傾斜するとともに、この下壁53aから下方に向かって延びる補強リブ54が設けられて、所要の剛性を確保している。
【0021】
そして、前記一対の係止部53によってそれぞれ係止されるように、蓋体20の操作部51にも係合爪52が一対、設けられている。詳しくは、
図1に表れているように操作部51は、蓋体20の周縁部から下方に延びる4つの縦部材と、それらの下端部同士を連繋する横部材とからなり、それらが組み合わさって一対の係合爪52と、その間を連繋する梁部55とが一体に形成されている。
【0022】
前記係合爪52は、上方に開放したコ字状であり、その上端部に形成された薄肉のヒンジ部によって蓋体20の周縁部に連繋されている。一方、それぞれの係合爪52の下側の部分は相対的に厚肉に形成されており、容器本体10側の係止部53の下側に入りこんで、その下壁53aに係止される。これにより、
図3には仮想線で示すように係合爪52が係止部53によって係止された状態になる。
【0023】
この状態、即ちロック位置にある操作部51において一対の係合爪52の間の梁部55を掴んで外側に引っ張ることで、
図3に矢印で示すように操作部51をその上端の軸線の周りに回動させて、係止部53による係合爪52の係止状態を解除することができる。なお、
図3には、そのようにしてロック解除位置に移動させた操作部51を実線で示している。
【0024】
本実施形態の特徴的な構成として前記操作部51には、
図4に拡大して断面で示すように、梁部55から容器本体10の側壁部14に向かって突出する凸栓部56を設けている。これにより、以下に詳細に説明するように、容器内外の気圧差を解消するために、容器本体10の側壁部14に設けられた貫通穴15を開閉する開閉手段が構成される。
【0025】
すなわち、まず、上述したように本実施形態では、容器本体10と蓋体20との間にパッキン40を配設してシールすることで、基板の収納される容器内を概ね気密状態に維持している。こうして密封性が高くなると、例えば航空機での輸送中に、内外に生じる気圧差によって基板収納容器1の内部が減圧された状態になったとき、蓋体20が容器本体10に密着して開き難くなるという問題が起こり得る。
【0026】
そこで、本実施形態の基板収納容器1では、容器本体10の側壁部14に空気の流通する貫通穴15を設けるとともに、蓋体20のロック機構50の操作部51に凸栓部56を設けている。これにより、蓋体20を取り外す際に、操作部51をロック位置からロック解除位置に操作するだけで、貫通穴15が開放されて、速やかに容器内外の気圧差が解消される。
【0027】
一例として
図1、2に示すように本実施形態では、容器本体10の側壁部14において一対の係止部53の中間に、断面円形状の貫通穴15が設けられている。なお、貫通穴15の容器内への開口部は、近接するカセット30(部品)の側壁部31に臨んでおり、言い換えると、カセット30に収納された基板と貫通穴15との間に側壁部31が位置している。
【0028】
また、
図5(a)~(c)に表れているように貫通穴15は、容器本体10の側壁部14の外面から外方に突出する円筒部16内に形成され、その円筒部16の外端面において貫通穴15が容器外へ開口している。この容器外への開口部においては、貫通穴15の断面積が容器外へ向かって徐々に大きくなるテーパ面15aが形成され、ここに前記操作部51の凸栓部56が密着して、貫通穴15を閉塞するようになっている。
【0029】
すなわち、
図4、
図5(a)~(c)に表れているように一例として凸栓部56は、貫通穴15の外側開口部のテーパ面15aに対応して、その最大の半径よりも大きな半径を有する半球状に形成されている。また、この実施形態では凸栓部56は、梁部55の略中央から上方に(操作部51の回動軸線に近づくように)延びる延出部55aに形成され、ここから貫通穴15に向かって膨出するように延出部55aと一体に梁部55に形成されている。
【0030】
このように大きめの半球状の凸栓部56を貫通穴15のテーパ面15aに押し付けることで、両者の中心位置が完全に合っていなくても、貫通穴15を気密に閉塞することができる。しかも、テーパ面15aに押し付けられたときに凸栓部56それ自体が弾性変形するとともに、延出部55a及び梁部55も弾性変形することによって、貫通穴15のテーパ面15aに対する凸栓部56の位置ずれが吸収されることになる。
【0031】
以下、前記ロック機構50の操作部51の操作に伴い凸栓部56が貫通穴15を開閉する動作について、前記
図3の他、
図5(a)~(c)及び
図6を参照して説明する。なお、
図5(a)(b)はロック位置にある操作部51を示し、
図5(c)はロック解除位置に向かって操作され、ロック解除位置よりも手前にある操作部51を示す。そして、
図6はロック解除位置にある操作部51を示す。
【0032】
まず、操作部51がロック位置にあるとき、前記したように係合爪52が係止部53に係止されているとともに、
図5(a)のように凸栓部56が貫通穴15のテーパ面15aに密着している。この状態で梁部55を掴んで引っ張ると、操作部51の係合爪52が容器本体10の係止部53に係止されたまま、梁部55が撓むことによって、
図5(b)に示すように凸栓部56が外方に(貫通穴15から遠ざかるように)変位する。
【0033】
但し、
図5(b)に示す状態では凸栓部56はテーパ面15aに接触したままであり、貫通穴15の閉塞状態が維持される。これは、梁部55が外側(図の右側)に引っ張られても、その上方に延出する延出部55aの外側への変位量はやや小さくなるからで、梁部55の捩じれもあって凸栓部56の変位が大きくなり難いからである。このため、操作部51が間違って引っ張られたとしても、すぐには貫通穴15は開放されない。
【0034】
そして、さらに梁部55が引っ張られ、その撓みが大きくなると、
図5(c)に示すように凸栓部56がテーパ面15aから離れて、貫通穴15が開放される。つまり、操作部51をロック位置からロック解除位置に向かって操作すると、そのロック解除位置よりも手前で操作部51の凸栓部56が貫通穴15を開放するようになる。これにより、容器内外が連通されて、気圧差が解消される。
【0035】
そうして凸栓部56がテーパ面15aから離れるタイミングの前後で係止部53による係合爪52の係止状態が緩み、凸栓部56がテーパ面15aから離れた直後に、係合爪52も係止部53から離れて(即ち、係止状態が解除されて)、
図3に実線で示すように操作部51がロック解除位置に移動する。これにより、容器本体10から蓋体20を取り外せるようになる。
【0036】
また、そのロック解除位置においては
図6に示すように、凸栓部56が貫通穴15から遠ざかり、上下方向に見ると、容器本体10の周縁部のリム部13よりも外方に位置している。よって、蓋体20を容器本体10から取り外すために上方に持ち上げるときに、この蓋体20の周縁部に設けられた操作部51の凸栓部56が、容器本体10のリム部13にぶつかり難くなる。
【0037】
以上、説明したように本実施形態の基板収納容器1では、蓋体20の周縁部にロック機構50の操作部51が設けられている場合に、容器本体10の側壁部14に貫通穴15を設ける一方、この貫通穴15に対応して前記操作部51に凸栓部56を設けたので、蓋体20を取り外すために、操作部51をロック解除操作するだけで貫通穴15が開放される。これにより速やかに容器内外の気圧差を解消できる。
【0038】
すなわち、従来技術(特開2012-190928号公報)のように容器を密封するためのパッキン40の一部分を変形させるのではなく、貫通穴15の開放によって、より確実に容器内外の気圧差を解消することができ、蓋体20を容易に開閉できるようになる。また、本来、密封するためのパッキン40の一部だけを変形させることがないので、その変形部分の復元性や耐久性が損なわれず、シール性の低下を招くおそれもない。
【0039】
また、本実施形態では、前記のようにロック解除操作するときに梁部55などが撓み、操作部51がロック解除位置に至るよりも手前で、凸栓部56が貫通穴15から離れるように構成しているので、蓋体20を取り外すためにロック機構50を解除するだけで、容器内外の気圧差をより確実に解消でき、そのままのワンアクションで蓋体20を取り外すことが可能になる。
【0040】
しかも、そうしてロック解除操作した操作部51の凸栓部56は、上下方向に見ると、容器本体10の周縁部のリム部13よりも外方に位置するから、蓋体20を容器本体10から取り外すために上方に持ち上げるときに、凸栓部56がリム部13にぶつかり難い。このことによっても蓋体20の取り外しを容易に行える。
【0041】
さらに、本実施形態においては前記貫通穴15の開口部にテーパ面15aが形成されている一方、凸栓部56はテーパ面15aよりも大きな半径の半球状として、梁部55の延出部55aに形成しているので、この凸栓部56をテーパ面15aに押し付けることで、多少の位置ずれは吸収して、貫通穴15を気密に閉塞することができる。
【0042】
よって、操作部51が間違って引っ張られたとしても、すぐには貫通穴15は開放されない。しかも、前記貫通穴15の容器内への開口部と基板との間には、この基板を収納するカセット30の側壁部31が位置しているので、仮に貫通穴15が開放されてしまい、容器外から空気が流れ込んだとしても、この空気の流れは側壁部31によって遮られることになり、空気中の微小なパーティクルによる汚染から保護することができる。
【0043】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0044】
例えば上述した実施形態では、ロック機構50の操作部51において梁部55の中間から上方に延びる延出部55aを設け、ここに凸栓部56を形成しているが、これに限ることなく、反対に梁部55から下方へ延びる延出部を設け、ここに凸栓部56を形成してもよい。また、延出部は設けずに梁部55の中間に凸栓部56を形成してもよい。
【0045】
また、前記の梁部55、延出部55a及び凸栓部56は上述の実施形態では一体に形成されているが、これにも限定されず、例えば凸栓部56を別体として、後から梁部55に取り付けるようにしてもよい。すなわち、一例を
図7(a)に示すように、凸栓部56を梁部55にネジ留めしてもよいし、
図7(b)に示すように凸栓部56に設けた係合突起56aを梁部55の係止穴55bに嵌め入れて、固定することもできる。この場合、凸栓部56の材質を梁部55など操作部51と異ならせてもよい。
【0046】
さらに、上述の実施形態では、側壁部14の貫通穴15の容器内への開口部を、近接するカセット30の側壁部31に臨ませて、貫通穴15からの空気の流れが直接、基板に当たらないようにしているが、これにも限定されず、カセット30の側壁部31を利用するのではなく、基板と貫通穴15の開口との間に位置するように、容器本体10に壁部を設けてもよい。
【0047】
さらにまた、上述の実施形態では、容器本体10の側壁部14に設けた貫通穴15を、凸栓部56で開閉する構造としたが、これに限ることなく、一例を
図8に示すように貫通穴15にバルブ57を配設してもよい。すなわち、
図8(a)に示すように操作部51がロック位置にあるときには、その梁部55がバルブ57を押圧して閉状態とする。一方、
図8(b)に示すように梁部55がバルブ57から離れる方向に操作部51が回動し、ロック解除位置に達すれば、バルブ57は開状態に切り替えられる。
【符号の説明】
【0048】
1 基板収納容器
10 容器本体、12 開口、13 リム部、14 側壁部、15 貫通穴
20 蓋体
30 カセット、31 側壁部(部品)
40 パッキン(シール部材)
50 ロック機構、51 操作部、52 係合爪、53 係止部、55 梁部、
56 凸栓部(開閉手段)、57 バルブ(開閉手段)