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特許7402718単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ
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  • 特許-単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナ
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20231214BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20231214BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 130
H02M7/48 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020040867
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021145402
(43)【公開日】2021-09-24
【審査請求日】2022-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【弁理士】
【氏名又は名称】小淵 景太
(72)【発明者】
【氏名】田村 亨
(72)【発明者】
【氏名】川本 哲裕
(72)【発明者】
【氏名】服部 将之
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068527(JP,A)
【文献】特許第6539006(JP,B1)
【文献】特開2019-201503(JP,A)
【文献】特開2018-068014(JP,A)
【文献】特開2017-093020(JP,A)
【文献】特開2016-100973(JP,A)
【文献】特許第6644943(JP,B1)
【文献】系統連系規程(電気技術規程系統連系編) JEAC9701-2019,第8版,日本,一般社団法人 日本電気協会,2019年04月25日,pp.63-67,74-77,92,93,108,109
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、
能動方式により単独運転を検出する単独運転能動検出部と、
前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出部と、
前記検出部が検出した検出値が第1条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する第1判定部と、
前記検出値が第2条件に一致したか否かを判定し、一致したときから待機時間経過後に、前記単独運転能動検出部による検出を開始させる第2判定部と、
を備えていることを特徴とする単独運転検出装置。
【請求項2】
前記第1条件は、前記検出値が第1範囲に収まらない状態が第1時間以上継続したことであり、
前記第2条件は、前記検出値が第2範囲に収まらない状態が第2時間以上継続したことであり、
前記第2範囲は、前記第1範囲より内側にある
請求項1に記載の単独運転検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を前記検出値として検出する、
請求項1または2に記載の単独運転検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記検出値とは異なる第2の検出値をさらに検出し、
前記第1判定部は、前記検出値が前記第1条件に一致し、かつ、前記第2の検出値が第3条件に一致した場合にのみ、単独運転状態であると判断し、
前記第2判定部は、前記検出値が前記第2条件に一致し、かつ、前記第2の検出値が第4条件に一致した場合にのみ、待機時間経過後に、前記単独運転能動検出部による検出を開始させる、
請求項1ないし3のいずれかに記載の単独運転検出装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記検出値とは異なる第2の検出値をさらに検出し、
前記第2判定部は、前記検出値が前記第2条件に一致したか否かを判定する代わりに、前記第2の検出値が第4条件に一致したか否かを判定する、
請求項1ないし3のいずれかに記載の単独運転検出装置。
【請求項6】
前記単独運転能動検出部は、検出を開始してから検出時間が経過した場合に、検出を終了する、
請求項1ないし5のいずれかに記載の単独運転検出装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の単独運転検出装置を備えている、
ことを特徴とするパワーコンディショナ。
【請求項8】
パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、
前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した検出値が第1条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する第1判定工程と、
前記検出値が第2条件に一致したか否かを判定する第2判定工程と、
前記第2判定工程で一致したと判定した場合、一致したときから待機時間経過後に、能動方式により単独運転の検出を開始する単独運転能動検出工程と、
を備えていることを特徴とする単独運転検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナに関する。
【背景技術】
【0002】
分散形電源を電力系統に接続する場合、パワーコンディショナは、単独運転を防止するための単独運転検出装置を備えている必要がある。単独運転とは、分散形電源が接続された配電系統が電力系統から切り離された場合に、分散形電源が配電系統の負荷に電力の供給を継続することである。単独運転検出装置は、単独運転を検出した場合、分散形電源を配電系統から切り離して、分散形電源から負荷への電力の供給を停止させる。単独運転の検出方法には受動方式と能動方式とがあり、様々な検出方法が開発されている。
【0003】
系統連系規程(JEAC 9701-2016)では、単独運転の能動方式の検出方法として、周波数シフト方式、スリップモード周波数シフト方式、無効電力変動方式、およびQCモード周波数シフト方式などが認められている。これらの方式は、従来型能動的方式と呼ばれている。系統連系規程では、従来型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、1秒以内にパワーコンディショナを配電系統から切り離すように定められている。また、系統連系規程では、従来型能動的方式より検出を高速化させた方式として、ステップ注入付き周波数フィードバック方式が認められている。当該方式は、新型能動的方式と呼ばれている。新型能動的方式の単独運転検出装置は、停電が発生して単独運転状態になった場合、一般的に、0.1秒以内にパワーコンディショナを配電系統から切り離すように設定されている。これらの各方式は、配電系統に積極的に無効電力を注入し、検出された周波数の変化に応じて単独運転を検出する。したがって、配電系統に多数の分散形電源が接続されている場合、配電系統には大量の無効電力が注入される。また、無効電力の注入量は、周波数偏差に応じて増加される。したがって、系統擾乱時に各分散形電源が無効電力の注入量を増加させることで、系統電圧が振動し、電圧フリッカ現象が発生する場合がある。
【0004】
電圧フリッカ現象の発生を抑制するための対策として、無効電力の注入量を抑制可能な単独運転検出装置が開発されている。例えば、特許文献1には、単独運転の可能性が低い場合に無効電力の注入量を抑制する単独運転検出装置が開示されている。また、特許文献2には、遅れ位相の無効電力と進み位相の無効電力とを交互に注入し、系統周波数の移動平均値の変化量の絶対値を積算した積算値に基づいて単独運転を検出することで、無効電力の注入量を低減しつつ、単独運転の誤検出や検出遅延を防止できる単独運転検出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-93020号公報
【文献】特開2019-92328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1、2に開示された単独運転検出装置は、注入量を抑制しているが、無効電力の注入を行っている。したがって、これらの単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを、配電系統に新たに接続した場合、配電系統に注入される無効電力は増加する。よって、すでに単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナが多数接続されている配電系統に、このようなパワーコンディショナを接続した場合でも、電圧フリッカ現象を誘発することになる。
【0007】
本発明は上記した事情のもとで考え出されたものであって、電圧フリッカ現象を誘発することを抑制可能な単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを提供することをその目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面によって提供される単独運転検出装置は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出装置であって、能動方式により単独運転を検出する単独運転能動検出部と、前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出部と、前記検出部が検出した検出値が第1条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する第1判定部と、前記検出値が第2条件に一致したか否かを判定し、一致した場合、待機時間経過後に、前記単独運転能動検出部による検出を開始させる第2判定部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
なお、「電気的な特性」には、電圧、電流、電力(有効電力、無効電力)、および周波数などが含まれる。また、所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数なども含まれる。また、「検出部が検出した検出値」には、電圧、電流、電力、および周波数などの大きさだけでなく、偏差(基準からの変化量)および変化率なども含まれる。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1条件は、前記検出値が第1範囲に収まらない状態が第1時間以上継続したことであり、前記第2条件は、前記検出値が第2範囲に収まらない状態が第2時間以上継続したことであり、前記第2範囲は、前記第1範囲より内側にある。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出部は、前記パワーコンディショナの出力電圧の周波数を前記検出値として検出する。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出部は、前記検出値とは異なる第2の検出値をさらに検出し、前記第1判定部は、前記検出値が前記第1条件に一致し、かつ、前記第2の検出値が第3条件に一致した場合にのみ、単独運転状態であると判断し、前記第2判定部は、前記検出値が前記第2条件に一致し、かつ、前記第2の検出値が第4条件に一致した場合にのみ、待機時間経過後に、前記単独運転能動検出部による検出を開始させる。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記検出部は、前記検出値とは異なる第2の検出値をさらに検出し、前記第2判定部は、前記検出値が前記第2条件に一致したか否かを判定する代わりに、前記第2の検出値が第4条件に一致したか否かを判定する。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記単独運転能動検出部は、検出を開始してから検出時間が経過した場合に、検出を終了する。
【0016】
本発明の第2の側面によって提供されるパワーコンディショナは、本発明の第1の側面によって提供される単独運転検出装置を備えている。
【0017】
本発明の第3の側面によって提供される単独運転検出方法は、パワーコンディショナの単独運転を検出する単独運転検出方法であって、前記パワーコンディショナの出力に関する電気的な特性を検出する検出工程と、前記検出工程で検出した検出値が第1条件に一致したか否かを判定し、一致した場合に、単独運転状態であると判断する第1判定工程と、前記検出値が第2条件に一致したか否かを判定する第2判定工程と、前記第2判定工程で一致したと判定した場合、待機時間経過後に、能動方式により単独運転の検出を開始する単独運転能動検出工程とを備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、第1判定部は、検出値が第1条件に一致した場合に、単独運転状態であると判断する。また、第2判定部は、検出値が第2条件に一致した場合、待機時間経過後に、単独運転能動検出部による検出を開始させる。本発明に係る単独運転検出装置は、第1判定部および第2判定部での判定のためには無効電力を注入しない。また、単独運転能動検出部が無効電力を注入して単独運転を検出する場合でも、単独運転能動検出部は、第2判定部での判定で検出値が第2条件に一致した場合にのみ、待機時間が経過した後に無効電力の注入を開始する。したがって、無効電力の注入のタイミングを、配電系統に接続されている従来の単独運転検出装置による無効電力の注入量の増加期間からずらすことができる。これにより、本発明に係る単独運転検出装置は、電圧フリッカ現象を誘発することを抑制できる。また、単独運転能動検出部が無効電力を注入することなく単独運転を検出する場合、本発明に係る単独運転検出装置は、無効電力を一切注入しないので、電圧フリッカ現象を誘発しない。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
図2】単独運転検出装置が行う第1検出処理を説明するためのフローチャートである。
図3】単独運転検出装置が行う第2検出処理を説明するためのフローチャートである。
図4】パワーコンディショナの出力電圧の周波数の変化を示すタイムチャートであり、(a)は従来型電源および新型電源が接続された配電系統が停電状態になった場合を示し、(b)は従来型電源のみが接続された配電系統が停電状態になった場合を示している。
図5】パワーコンディショナの出力電圧の周波数の変化を示すタイムチャートであり、(a)は従来型電源および新型電源がどちらも接続されていない配電系統が停電状態になった場合を示し、(b)は系統擾乱が発生した場合を示している。
図6】第2実施形態に係る単独運転検出装置の内部構成を示すブロック図である。
図7】第3実施形態に係る単独運転検出装置の内部構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
【0023】
図1は、第1実施形態に係る単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナを説明するためのブロック図であり、配電系統の全体構成を示している。
【0024】
パワーコンディショナ1は、直流電源Aが出力する直流電力を交流電力に変換して、接続している配電系統Cに出力する。パワーコンディショナ1および直流電源Aを合わせたものが分散形電源である。配電系統Cは、高圧配電系統であり、負荷L、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている。負荷Lは、電力の供給を受ける需要家である。従来型電源B1は、従来型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。新型電源B2は、新型能動的方式の単独運転検出装置を有するパワーコンディショナを備えた分散形電源である。配電系統C(および変圧器を介して配電系統Cに接続された低圧配電系統)には、負荷L、従来型電源B1、および新型電源B2がそれぞれ複数ずつ接続されているが、図1においては、代表して1個ずつ記載している。配電系統Cは、遮断器を介して電力系統に接続されている。電力系統で事故が発生した場合などに、電力系統側に設けられた保護装置によって遮断器が開放されて、配電系統Cが電力系統から切り離される(停電状態)。これにより、電力系統から切り離された配電系統Cに接続しているパワーコンディショナ1が単独運転状態になる。
【0025】
直流電源Aは、直流電力を出力するものであり、例えば太陽電池を備えている。太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換することで、直流電力を生成する。直流電源Aは、生成した直流電力を、パワーコンディショナ1に出力する。なお、直流電源Aは、太陽電池により直流電力を生成するものに限定されない。例えば、直流電源Aは、燃料電池または蓄電池などであってもよいし、ディーゼルエンジン発電機または風力タービン発電機などにより生成された交流電力を直流電力に変換して出力する装置であってもよい。
【0026】
パワーコンディショナ1は、インバータ装置2、単独運転検出装置3、連系用遮断器4、および電圧センサ5を備えている。パワーコンディショナ1は、連系用遮断器4を介して、配電系統Cに接続している。
【0027】
インバータ装置2は、直流電源Aから入力される直流電力を交流電力に変換して出力する。インバータ装置2は、例えば、図示しないインバータ回路、フィルタ回路、および制御回路を備えている。インバータ回路は、制御回路から入力されるPWM信号に基づいてスイッチング素子(図示しない)のオンとオフとを切り替えることで直流電力を交流電力に変換する。フィルタ回路は、スイッチングによる高周波成分を除去する。制御回路は、インバータ回路を制御する。制御回路は、インバータ装置2の出力電流を制御するPWM信号を生成して、インバータ回路に出力する。また、制御回路は、インバータ装置2が出力する無効電力も制御する。制御回路は、単独運転検出装置3から後述するゲートブロック信号を入力された場合、PWM信号の生成を停止する。この場合、インバータ回路はスイッチングを停止するので、インバータ装置2は、電力変換動作を停止する。
【0028】
連系用遮断器4は、パワーコンディショナ1と配電系統Cとの接続を遮断する。連系用遮断器4は通常時は閉路されており、パワーコンディショナ1は配電系統Cに接続している。しかし、単独運転検出装置3から後述する開放指令が入力された場合、連系用遮断器4は開放され、パワーコンディショナ1が配電系統Cから切り離される。これにより、パワーコンディショナ1の単独運転状態が回避される。
【0029】
電圧センサ5は、パワーコンディショナ1の出力電圧を検出し、検出した電圧信号を単独運転検出装置3に入力する。なお、電圧センサ5は、インバータ装置2の制御用と兼用であってもよい。この場合、電圧センサ5は、検出した電圧信号をインバータ装置2の制御回路にも入力する。
【0030】
単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の単独運転を検出する。単独運転検出装置3は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて単独運転を検出し、単独運転を検出した場合、パワーコンディショナ1を停止させて、配電系統Cから切り離す。単独運転検出装置3は、周波数検出部31、第1判定部32、第2判定部33、待機部34、計時部35、単独運転能動検出部36、OR回路37、および停止処理部38を備えている。
【0031】
周波数検出部31は、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fを検出する。周波数検出部31は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、周波数fを検出する。周波数検出部31は、例えばゼロクロス点間カウント方式により周波数を検出する。ゼロクロス点間カウント方式は、交流電圧の瞬時値がゼロレベルを交差する点(ゼロクロス点)間の時間を計測し、計測された時間の逆数から周波数を検出する方法である。なお、周波数検出部31の周波数検出方法は限定されない。例えば、周波数検出部31は、乗算式PLL(Phase Locked Loop)を用いて周波数を検出してもよい。周波数検出部31は、検出した周波数fを、第1判定部32、第2判定部33、および単独運転能動検出部36に出力する。周波数検出部31が本発明の「検出部」に相当し、周波数fが本発明の「検出値」に相当する。
【0032】
第1判定部32は、周波数検出部31から入力される周波数fに基づいて判定を行う。第1判定部32は、周波数fがあらかじめ設定された第1条件に一致したか否かを判定する。第1条件は、単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。単独運転が発生した場合、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、注入する無効電力を増加させて配電系統Cの電圧の周波数を変化させ、周波数がしきい値を超えた場合に単独運転を検出する。第1条件は、このときの周波数の変化に基づいて設定されている。
【0033】
本実施形態では、第1条件は、周波数fが第1範囲に収まらない状態が第1時間T1以上継続したことである。第1範囲は、パワーコンディショナ1の出力電圧の通常時の周波数f0を中心とした範囲であり、f1(>f0)以下、f1’(<f0)以上の範囲である。例えば、周波数f0が60Hzの場合、f1=61Hzであり、f1’=59Hzである。なお、f1およびf1’は限定されない。第1範囲は、単独運転が発生して、従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置による無効電力の注入によって変化した周波数が収まらない範囲であり、かつ、単独運転以外の系統擾乱によって変化した周波数が超えない範囲が設定される。第1範囲は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。第1時間T1は、周波数fが瞬間的に上昇して第1範囲を超えた場合などに、単独運転を誤検出してしまうことを防止するために設定されている。本実施形態では、第1時間T1は、事故時運転継続要件(FRT要件)に応じて、例えば0.3秒とされている。なお、第1時間T1は限定されない。
【0034】
本実施形態では、第1判定部32は、周波数fがf1より大きい状態、または、周波数fがf1’より小さい状態が第1時間T1以上継続した場合に、第1条件に一致したと判定する。第1判定部32は、周波数fが第1条件に一致したと判定した場合、単独運転状態であると判断し、例えばハイレベル信号である第1検出信号をOR回路37に出力する。なお、第1条件は限定されず、単独運転が発生したと断定できる条件であればよい。
【0035】
第2判定部33は、周波数検出部31から入力される周波数fに基づいて判定を行う。第2判定部33は、周波数fがあらかじめ設定された第2条件に一致したか否かを判定する。第2条件は、単独運転の可能性があると判断できる条件が設定されている。配電系統Cおよび下流側の配電系統に従来型電源B1および新型電源B2が接続されていない場合や、接続数が少ない場合などに、単独運転であるにもかかわらず、周波数fが第1条件に一致しない場合がある。第2条件は、この場合に単独運転を検出できないことを防止するために設けられている。
【0036】
本実施形態では、第2条件は、周波数fが第2範囲に収まらない状態が第2時間T2以上継続したことである。第2範囲は、パワーコンディショナ1の出力電圧の通常時の周波数f0を中心とした範囲であり、f2(>f0)以下、f2’(<f0)以上の範囲である。第2範囲は、第1範囲より内側にある。例えば、周波数f0が60Hzの場合、f2=60.1Hzであり、f2’=59.9Hzである。なお、f2およびf2’は限定されない。第2範囲は、単独運転の可能性がないと断定できる周波数の範囲が設定される。第2範囲は、実験、シミュレーション結果、または、現地における調査結果などに基づいて適宜設定される。第2時間T2は、周波数fが瞬間的に上昇して第2範囲を超えた場合などに、単独運転の可能性があると誤判定してしまうことを防止するために設定されている。本実施形態では、第2時間T2は、第2条件に一致した場合に直ちにパワーコンディショナ1を停止するのではないので、第1時間T1より短い、例えば0.03秒とされている。なお、第2時間T2は限定されない。第2時間T2は、第2範囲を広く設定した場合、小さくできるが、第2範囲を狭くした場合、第2条件に一致する頻度を抑制するためには、大きくした方がよい。第2時間T2は、第2範囲に応じて適宜設定される。
【0037】
本実施形態では、第2判定部33は、周波数fがf2より大きい状態、または、周波数fがf2’より小さい状態が第2時間T2以上継続した場合に、第2条件に一致したと判定する。第2判定部33は、周波数fが第2条件に一致したと判定した場合、一致信号を待機部34に出力する。なお、第2条件は限定されず、単独運転の可能性があると判断できる条件であればよい。
【0038】
待機部34は、従来型電源B1および新型電源B2が単独運転の検出を終了するまで待機するための時間を計時する。待機部34は、第2判定部33から一致信号を入力されたときに、計時を開始する。そして、待機部34は、あらかじめ設定された待機時間T3が経過したときに、計時部35および単独運転能動検出部36に、検出開始信号を出力する。新型電源B2は単独運転発生から0.1秒以内に単独運転を検出し、従来型電源B1は単独運転発生から1秒以内に単独運転を検出するので、本実施形態では、待機時間T3は、例えば1秒とされている。なお、待機時間T3は限定されない。
【0039】
単独運転能動検出部36は、従来型能動的方式の単独運転検出装置と同様の機能を有し、無効電力を注入して単独運転を検出する。具体的には、単独運転能動検出部36は、インバータ装置2の制御回路に無効電力の目標値を設定することで、インバータ装置2に無効電力を注入させる。そして、単独運転能動検出部36は、周波数検出部31から入力される周波数fに基づいて単独運転を検出する。なお、単独運転能動検出部36による単独運転の検出方法は限定されない。単独運転能動検出部36は、待機部34から検出開始信号を入力されたときに無効電力の注入を開始して単独運転の検出を開始する。単独運転能動検出部36は、単独運転を検出した場合、例えばハイレベル信号である第2検出信号をOR回路37に出力し、無効電力の注入を終了して単独運転の検出を終了する。第2検出信号は、計時部35にも入力される。また、単独運転能動検出部36は、計時部35から検出終了信号を入力された場合も、無効電力の注入を終了して単独運転の検出を終了する。
【0040】
計時部35は、単独運転能動検出部36によって単独運転を検出する時間を計時する。計時部35は、待機部34から検出開始信号を入力されたときに、計時を開始する。そして、計時部35は、あらかじめ設定された検出時間T4が経過したときに、計時を終了し、単独運転能動検出部36に検出終了信号を出力する。単独運転能動検出部36は、従来型能動的方式で単独運転を検出するので、検出開始から1秒以内に単独運転を検出する。したがって、本実施形態では、検出時間T4は、例えば1秒とされている。なお、検出時間T4は限定されない。また、計時部35は、単独運転能動検出部36から第2検出信号を入力された場合にも、計時を終了する。
【0041】
OR回路37は、第1判定部32から第1検出信号を入力された場合、または、単独運転能動検出部36から第2検出信号を入力された場合に、停止処理部38に単独運転検出信号を出力する。
【0042】
停止処理部38は、OR回路37から単独運転検出信号を入力された場合に、パワーコンディショナ1の停止処理を行う。具体的には、停止処理部38は、インバータ装置2にゲートブロック信号を出力して、インバータ装置2の電力変換動作を停止させる。また、停止処理部38は、連系用遮断器4に開放指令を出力して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離させる。
【0043】
系統連系規程では、高圧配電系統に接続されたパワーコンディショナは、単独運転状態になった場合に3秒以内に切り離されるように定められている。第2時間T2および待機時間T3は、単独運転能動検出部36が単独運転の検出にかかる時間、および、停止処理部38からの開放指令により連系用遮断器4が開放されるまでの時間なども踏まえて、適宜設定される。
【0044】
待機部34が待機時間T3を計時して待機している間、および、単独運転能動検出部36が単独運転を検出している間も、単独運転が発生する可能性があるので、第1判定部32および第2判定部33による各判定は、常時行われている。
【0045】
なお、単独運転検出装置3は、アナログ回路として実現してもよいし、ディジタル回路として実現してもよい。また、各部が行う処理をプログラムで設計し、当該プログラムを実行させることでコンピュータを単独運転検出装置3として機能させてもよい。また、当該プログラムを記録媒体に記録しておき、コンピュータに読み取らせるようにしてもよい。
【0046】
図2は、単独運転検出装置3が行う第1検出処理を説明するためのフローチャートである。第1検出処理は、第1条件に基づいて単独運転を検出する処理である。第1検出処理は、パワーコンディショナ1が配電系統Cに接続している状態で、インバータ装置2が電力変換動作を開始したときに実行される。
【0047】
まず、周波数検出部31によって検出された周波数fが第1範囲に収まっている(f1’≦f≦f1)か否かが判別される(S1)。第1範囲に収まっている場合(S1:YES)、ステップS1に戻って、ステップS1の判別が繰り返される。一方、第1範囲に収まっていない場合(S1:NO)、計時が開始される(S2)。
【0048】
次に、計時された時間が第1時間T1以上になったか否かが判別される(S3)。第1時間T1以上になっていない場合(S3:NO)、周波数fが第1範囲に収まっている(f1’≦f≦f1)か否かが判別される(S4)。第1範囲に収まっていない場合(S4:NO)、ステップS3に戻って、ステップS3およびステップS4の判別が繰り返される。
【0049】
ステップS4において、周波数fが第1範囲に収まった場合(S4:YES)、ステップS1に戻って、ステップS1の判別が繰り返される。なお、この場合、計時は終了されて、計時された時間はゼロにクリアされる。また、ステップS3において、第1時間T1以上になった場合(S3:YES)、周波数fが第1範囲に収まらない状態が第1時間T1以上継続して第1条件に一致したと判定される。この場合、単独運転状態であると判断され、停止処理が行われて(S5)、第1検出処理は終了する。停止処理では、ゲートブロック信号がインバータ装置2に出力され、開放指令が連系用遮断器4に出力される。
【0050】
なお、図2のフローチャートに示す処理は一例であって、単独運転検出装置3が行う第1検出処理は上述したものに限定されない。
【0051】
図3は、単独運転検出装置3が行う第2検出処理を説明するためのフローチャートである。第2検出処理は、第2条件に基づいて単独運転を検出する処理である。第2検出処理は、パワーコンディショナ1が配電系統Cに接続している状態で、インバータ装置2が電力変換動作を開始したときに実行される。
【0052】
まず、周波数検出部31によって検出された周波数fが第2範囲に収まっている(f2’≦f≦f2)か否かが判別される(S11)。第2範囲に収まっている場合(S11:YES)、ステップS11に戻って、ステップS11の判別が繰り返される。一方、第2範囲に収まっていない場合(S11:NO)、計時が開始される(S12)。
【0053】
次に、計時された時間が第2時間T2以上になったか否かが判別される(S13)。第2時間T2以上になっていない場合(S13:NO)、周波数fが第2範囲に収まっている(f2’≦f≦f2)か否かが判別される(S14)。第2範囲に収まっていない場合(S14:NO)、ステップS13に戻って、ステップS13およびステップS14の判別が繰り返される。
【0054】
ステップS14において、周波数fが第2範囲に収まった場合(S14:YES)、ステップS11に戻って、ステップS11の判別が繰り返される。なお、この場合、計時は終了されて、計時された時間はゼロにクリアされる。また、ステップS13において、第2時間T2以上になった場合(S13:YES)、周波数fが第2範囲に収まらない状態が第2時間T2以上継続して第2条件に一致したと判定される。この場合、単独運転の可能性があると判断され、待機のための計時が開始される(S15)。
【0055】
次に、計時された時間が待機時間T3以上になったか否かが判別される(S16)。待機時間T3以上になっていない場合(S16:NO)、ステップS16に戻って、ステップS16の判別が繰り返される。ステップS16において、待機時間T3以上になった場合(S16:YES)、待機時間T3が経過したとして、単独運転能動検出部36による単独運転の検出が開始され(S17)、検出のための計時が開始される(S18)。
【0056】
次に、単独運転能動検出部36によって単独運転が検出されたか否かが判別される(S19)。検出されていない場合(S19:NO)、計時された時間が検出時間T4以上になったか否かが判別される(S20)。検出時間T4以上になっていない場合(S20:NO)、ステップS19に戻って、ステップS19およびステップS20の判別が繰り返される。
【0057】
ステップS20において、検出時間T4以上になった場合(S20:YES)、単独運転能動検出部36による単独運転の検出が終了される(S21)。この場合、単独運転ではなかったと判断され、ステップS11に戻って、ステップS11の判別が繰り返される。また、この場合、計時は終了されて、計時された時間はゼロにクリアされる。また、ステップS19において、単独運転が検出された場合(S19:YES)、停止処理が行われて(S22)、第2検出処理は終了する。当該停止処理は、図2のステップS5における停止処理と同様である。
【0058】
なお、実際には、ステップS13において第2時間T2以上になった場合(S13:YES)、ステップS15以降の処理が行われ、同時に、ステップS11に戻って、ステップS11~S14の処理も継続される。なお、図3のフローチャートに示す処理は一例であって、単独運転検出装置3が行う第2検出処理は上述したものに限定されない。
【0059】
図4は、図1に示す配電系統Cが停電状態になって、パワーコンディショナ1が単独運転状態になったときの、出力電圧の周波数fの変化を示すタイムチャートである。横軸は、停電発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。また、縦軸は周波数を示している。なお、本明細書で参照する波形図やタイムチャートの縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化され、あるいは誇張もしくは強調されている。
【0060】
図4(a)は、配電系統Cに、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている場合(図1参照)を示している。なお、配電系統Cに、従来型電源B1が接続されておらず、新型電源B2だけが接続されている場合も同様である。
【0061】
停電が発生すると配電系統Cの系統周波数が若干変化する。新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇または下降させる。図4(a)では、系統周波数が上昇した場合を示している。なお、図4(b)および図5でも、系統周波数が上昇する場合を示す。新型電源B2は、停電から0.1秒以内に単独運転を検出して、配電系統Cから切り離されるので、停電発生から0.1秒までの間に、系統周波数は上昇して、第1範囲の上限周波数であるf1を超えている。パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fは系統周波数に一致するので、図4(a)に示すように、周波数fは上昇している。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1および新型電源B2の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。
【0062】
図4(a)に破線で示すように、周波数fがさらに上昇した場合や、下降することなく維持された場合、周波数fがf1を超えた状態(第1範囲に収まらない状態)が継続される。この状態が第1時間T1以上継続された場合、単独運転検出装置3は、周波数fが第1条件に一致したとして、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。
【0063】
一方、図4(a)に実線で示すように、周波数fが下降して、f1を超えた状態が第1時間T1以上継続されなかった場合、単独運転検出装置3は、第1条件に基づく単独運転の検出ができない。また、図4(a)に一点鎖線で示すように、周波数fが、f1に達する前に下降した場合も、同様である。これらの場合でも、周波数fがf2を超えた状態(第2範囲に収まらない状態)が第2時間T2以上継続されているので、周波数fが第2条件に一致したとして、単独運転の可能性があると判断される。この場合、第2条件に一致したと判定されてから待機時間T3が経過したときに、単独運転能動検出部36による単独運転の検出が開始されている。このとき、単独運転能動検出部36が無効電力を注入するので、周波数fが上昇している。そして、単独運転能動検出部36は、検出開始から検出時間T4が経過するまでに、単独運転を検出する。これにより、単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。なお、待機時間T3の待機中に、周波数fがf2を下回った場合(図4(a)一点鎖線参照)でも、単独運転能動検出部36による単独運転の検出は行われている。
【0064】
図4(b)は、配電系統Cに、新型電源B2が接続されておらず、従来型電源B1だけが接続されている場合を示している。
【0065】
図4(b)の場合、新型電源B2が接続されていないので、停電が発生すると、従来型電源B1が、系統周波数の変化をとらえて無効電力を注入し、系統周波数を上昇させる。従来型電源B1は、停電から1秒以内に単独運転を検出して、配電系統Cから切り離されるので、図4(b)に示すように、停電発生から1秒までの間に、周波数fは上昇して、第1範囲の上限周波数であるf1を超えている。その後の周波数fの変化は、配電系統Cに接続された従来型電源B1の数および容量、ならびに、負荷Lの数および大きさなどによって異なる。
【0066】
図4(b)に破線で示すように、周波数fがさらに上昇した場合や、下降することなく維持された場合、周波数fがf1を超えた状態(第1範囲に収まらない状態)が継続される。この状態が第1時間T1以上継続された場合、単独運転検出装置3は、周波数fが第1条件に一致したとして、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。
【0067】
一方、図4(b)に実線で示すように、周波数fが下降して、f1を超えた状態が第1時間T1以上継続されなかった場合、単独運転検出装置3は、第1条件に基づく単独運転の検出ができない。また、図4(b)に一点鎖線で示すように、周波数fが、f1に達する前に下降した場合も、同様である。これらの場合でも、周波数fがf2を超えた状態(第2範囲に収まらない状態)が第2時間T2以上継続されているので、周波数fが第2条件に一致したとして、単独運転の可能性があると判断される。この場合、第2条件に一致したと判定されてから待機時間T3が経過したときに、単独運転能動検出部36による単独運転の検出が開始されている。このとき、単独運転能動検出部36が無効電力を注入するので、周波数fが上昇している。そして、単独運転能動検出部36は、検出開始から検出時間T4が経過するまでに、単独運転を検出する。これにより、単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。なお、待機時間T3の待機中に、周波数fがf2を下回った場合(図4(b)一点鎖線参照)でも、単独運転能動検出部36による単独運転の検出は行われている。
【0068】
図5(a)は、配電系統Cが停電状態になって、パワーコンディショナ1が単独運転状態になったときの、出力電圧の周波数fの変化を示すタイムチャートであり、配電系統Cに、従来型電源B1および新型電源B2がいずれも接続されていない場合を示している。横軸は、停電発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。また、縦軸は周波数を示している。
【0069】
図5(a)の場合、従来型電源B1および新型電源B2がいずれも接続されていないが、停電が発生すると配電系統Cの系統周波数が若干変化する。パワーコンディショナ1の出力電力と配電系統の負荷容量が大きく異なっている状態で停電が発生した場合などには、無効電力が注入されなくても、系統周波数が大きく変化する。図5(a)に破線で示すように、周波数fがf1を超えて(第1範囲に収まらない状態)、その状態が第1時間T1以上継続された場合、単独運転検出装置3は、周波数fが第1条件に一致したとして、単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。
【0070】
一方、図5(a)に実線および一点鎖線で示すように、周波数fがf1に達しない場合でも、周波数fがf2を超えた状態(第2範囲に収まらない状態)が第2時間T2以上継続されているので、周波数fが第2条件に一致したとして、単独運転の可能性があると判断される。この場合、第2条件に一致したと判定されてから待機時間T3が経過したときに、単独運転能動検出部36による単独運転の検出が開始されている。このとき、単独運転能動検出部36が無効電力を注入するので、周波数fが上昇している。そして、単独運転能動検出部36は、検出開始から検出時間T4が経過するまでに、単独運転を検出する。これにより、単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離す。なお、待機時間T3の待機中に、周波数fがf2を下回った場合(図5(a)一点鎖線参照)でも、単独運転能動検出部36による単独運転の検出は行われている。
【0071】
図4(a),(b)および図5(a)に示すように、配電系統Cに従来型電源B1および新型電源B2が接続されているか否かにかかわらず、単独運転検出装置3は、3秒以内に単独運転を検出して、パワーコンディショナ1を配電系統Cから切り離すことができる。
【0072】
図5(b)は、配電系統Cが停電状態になっていないが、系統擾乱が発生したときの、出力電圧の周波数fの変化を示すタイムチャートである。横軸は、系統擾乱の発生を0秒とし、その後の経過時間を示している。また、縦軸は周波数を示している。図5(b)は、配電系統Cに、従来型電源B1および新型電源B2が接続されている場合(図1参照)を示している。なお、配電系統Cに、従来型電源B1だけが接続されている場合、新型電源B2だけが接続されている場合、および、従来型電源B1および新型電源B2がいずれも接続されていない場合も同様である。
【0073】
系統擾乱が発生した場合も配電系統Cの系統周波数が若干変化する。従来型電源B1および新型電源B2は、その周波数変化をとらえて無効電力を注入するが、停電していないので、周波数fは上昇しない。したがって、周波数fがf1を瞬間的に超えることがあったとしても、周波数fがf1を超えた状態が第1時間T1以上継続されることはない。しかし、図5(b)に示すように、周波数fがf2を超えた状態(第2範囲に収まらない状態)が第2時間T2以上継続することはあり、周波数fが第2条件に一致したとして、単独運転の可能性があると判断される。この場合、第2条件に一致したと判定されてから待機時間T3が経過したときに、単独運転能動検出部36による単独運転の検出が開始される。このとき、単独運転能動検出部36が無効電力を注入するが、停電していないので、周波数fが上昇しない。そして、単独運転が検出されることなく、検出開始から検出時間T4が経過したときに、単独運転能動検出部36による単独運転の検出が終了される。つまり、単独運転検出装置3は、単独運転を検出しない。なお、待機時間T3の待機中に、周波数fがf2を下回った場合(図5(b)参照)でも、単独運転能動検出部36による単独運転の検出は行われている。
【0074】
一方、周波数fがf2を超えてもその状態が第2時間T2以上継続しない場合、および、周波数fがf2を超えない場合、配電系統Cに接続された従来型電源B1および新型電源B2は単独運転を検出しておらず、単独運転の可能性がないと判断され、単独運転能動検出部36による単独運転の検出は行われない。これらの場合も、単独運転検出装置3は、単独運転を検出しない。
【0075】
次に、本実施形態に係る単独運転検出装置3の作用効果について説明する。
【0076】
本実施形態によると、単独運転検出装置3は、第1判定部32によって、単独運転が発生したと断定できる第1条件に周波数fが一致したと判定された場合に、単独運転状態であると判断する。また、単独運転検出装置3は、第2判定部33によって、単独運転の可能性があると判断できる第2条件に周波数fが一致したと判定された場合に、待機時間T3の経過後に、単独運転能動検出部36による検出を開始させる。単独運転検出装置3は、第1判定部32および第2判定部33での判定のためには無効電力の注入が必要でないので、常時の無効電力の注入を行わない。単独運転能動検出部36は無効電力を注入するが、無効電力の注入開始のタイミングが、第2判定部33での判定で周波数fが第2条件に一致した後、さらに待機時間T3が経過した後になる。したがって、無効電力の注入開始のタイミングが、従来型電源B1および新型電源B2による無効電力の注入量の増加期間からずれている。これにより、単独運転検出装置3は、電圧フリッカ現象を誘発することを抑制できる。したがって、単独運転検出装置3を備えるパワーコンディショナ1が、配電系統Cに多数追加されても、電圧フリッカ現象は発生しにくい。
【0077】
また、本実施形態によると、単独運転検出装置3は、第1判定部32による判定で単独運転を検出できなかった場合でも、第2判定部33による判定と、単独運転能動検出部36による検出で、単独運転を検出する。したがって、単独運転検出装置3は、単独運転の未検出を抑制できる。
【0078】
また、本実施形態によると、単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fに基づいて、単独運転を検出する。従来型電源B1および新型電源B2の単独運転検出装置は、単独運転を検出するために、周波数偏差に応じた無効電力を注入することで系統周波数をより変化させる。したがって、単独運転検出装置3は、適切に単独運転を検出できる。
【0079】
また、本実施形態によると、第1条件は、周波数fが第1範囲に収まらない状態が第1時間T1以上継続したことである。第1範囲は、単独運転が発生した場合に周波数fが収まらない範囲であり、かつ、単独運転以外の系統擾乱が発生した場合には周波数fが超えない範囲として設定される。また、第1時間T1は、単独運転の誤検出を防止できるように設定される。したがって、周波数fが第1条件に一致した場合、単独運転が発生したと断定できる。これにより、単独運転検出装置3は、第1判定部32によって、単独運転を適切に検出できる。また、第2条件は、周波数fが第2範囲に収まらない状態が第2時間T2以上継続したことである。第2範囲は、単独運転の可能性がないと断定できる周波数の範囲が設定される。また、第2時間T2は、単独運転の可能性の誤判定を防止できるように設定される。したがって、周波数fが第2条件に一致した場合、単独運転の可能性があると判断できる。単独運転検出装置3は、第2判定部33によって単独運転の可能性があると判断された場合、単独運転能動検出部36によって単独運転を検出する。これにより、第1判定部32によって単独運転を検出できなかった場合でも、単独運転を適切に検出できる。
【0080】
また、本実施形態によると、単独運転能動検出部36は、無効電力の注入を開始してから検出時間T4が経過した場合、または、単独運転を検出した場合に、無効電力の注入を終了する。したがって、単独運転能動検出部36は、不必要な無効電力を注入しない。これにより、単独運転検出装置3は、電圧フリッカ現象を誘発することを抑制できる。
【0081】
なお、本実施形態においては、単独運転検出装置3は、周波数検出部31が検出した、パワーコンディショナ1の出力電圧の周波数fに基づいて、単独運転を検出する場合について説明したが、これに限られない。単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1の出力電流または出力電力の周波数を用いてもよい。また、単独運転検出装置3は、パワーコンディショナ1が出力する電圧、電流、および電力(有効電力、無効電力)などの電気的な特性に基づいて、単独運転を検出してもよい。また、3次、5次、7次などの所定の高調波成分の電圧、電流、電力、および周波数などに基づいて、単独運転を検出してもよい。また、第1判定部32および第2判定部33で用いる検出値は、電圧、電流、電力、および周波数などの大きさを検出した検出値に限定されず、偏差(基準からの変化量)および変化率などであってもよい。第1判定部32に設定される第1条件、および、第2判定部33に設定される第2条件は、それぞれ、用いる検出値に応じて、適宜設定される。例えば、用いる検出値によっては、第2範囲が第1範囲より外側にある場合もある。
【0082】
また、本実施形態においては、単独運転能動検出部36が、従来型能動的方式の単独運転検出装置と同様の機能を有し、無効電力を注入して単独運転を検出する場合について説明したが、これに限られない。単独運転能動検出部36は、新型能動的方式の単独運転検出装置と同様の機能を有してもよいし、また、その他の方式により単独運転を検出してもよい。単独運転能動検出部36に入力される検出値は、単独運転能動検出部36が採用する方式により異なる。また、単独運転能動検出部36は、無効電力を注入することなく単独運転を検出してもよい。この場合、単独運転検出装置3は、無効電力を一切注入しないので、電圧フリッカ現象を誘発しない。
【0083】
〔第2実施形態〕
図6は、第2実施形態に係る単独運転検出装置の内部構成を示すブロック図である。同図において、第1実施形態に係る単独運転検出装置3(図1参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0084】
本実施形態に係る単独運転検出装置3aは、第1判定部32および第2判定部33が、それぞれ2種類の検出値を用いて判定を行う点で単独運転検出装置3と異なる。
【0085】
単独運転検出装置3aは、電圧検出部39をさらに備えている。電圧検出部39は、パワーコンディショナ1の出力電圧の電圧実効値vを検出する。電圧検出部39は、電圧センサ5から入力される電圧信号に基づいて、電圧実効値vを検出する。電圧検出部39は、検出した電圧実効値vを、第1判定部32および第2判定部33に出力する。本実施形態では、電圧検出部39も本発明の「検出部」に相当し、電圧実効値vが本発明の「第2の検出値」に相当する。なお、電圧検出部39は、電圧の最大値または平均値などを検出してもよい。
【0086】
第2実施形態に係る第1判定部32は、周波数検出部31から入力される周波数f、および、電圧検出部39から入力される電圧実効値vに基づいて判定を行う。第1判定部32には、周波数fに対する第1条件と、電圧実効値vに対する第3条件とが設定されている。第3条件は、電圧実効値vに基づいて単独運転が発生したと断定できる条件が設定されている。第1判定部32は、周波数fが第1条件に一致し、かつ、電圧実効値vが第3条件に一致したと判定した場合に、単独運転状態であると判断し、第1検出信号をOR回路37に出力する。
【0087】
第2実施形態に係る第2判定部33は、周波数検出部31から入力される周波数f、および、電圧検出部39から入力される電圧実効値vに基づいて判定を行う。第2判定部33には、周波数fに対する第2条件と、電圧実効値vに対する第4条件とが設定されている。第4条件は、電圧実効値vに基づいて単独運転の可能性があると判断できる条件が設定されている。第2判定部33は、周波数fが第2条件に一致し、かつ、電圧実効値vが第4条件に一致したと判定した場合に、単独運転の可能性があると判断し、一致信号を待機部34に出力する。
【0088】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態によると、第1判定部32は、周波数fが第1条件に一致し、かつ、電圧実効値vが第3条件に一致したと判定した場合に、単独運転状態であると判断する。したがって、単独運転検出装置3aは、第1判定部32によって、誤検出を抑制して単独運転を検出できる。また、本実施形態によると、第2判定部33は、周波数fが第2条件に一致し、かつ、電圧実効値vが第4条件に一致したと判定した場合に、単独運転の可能性があると判断する。したがって、単独運転検出装置3aは、第2判定部33によって、誤判断を抑制して単独運転の可能性を判断できる。
【0089】
なお、第1判定部32は、周波数fが第1条件に一致したか、または、電圧実効値vが第3条件に一致したと判定した場合に、単独運転状態であると判断してもよい。また、第2判定部33は、周波数fが第2条件に一致したか、または、電圧実効値vが第4条件に一致したと判定した場合に、単独運転の可能性を判断してもよい。
【0090】
また、第1判定部32が周波数fおよび電圧実効値vに基づいて判定を行い、第2判定部33が周波数fのみに基づいて判定を行ってもよい。また、第2判定部33が周波数fおよび電圧実効値vに基づいて判定を行い、第1判定部32が周波数fのみに基づいて判定を行ってもよい。
【0091】
また、第1判定部32および第2判定部33が判定に用いる検出値は、周波数fおよび電圧実効値vの組み合わせに限定されない。また、第1判定部32および第2判定部33は、3種類以上の検出値に基づいて判定を行ってもよい。つまり、第1判定部32および第2判定部33は、それぞれ、いずれの検出値を何種類用いて判定してもよい。
【0092】
〔第3実施形態〕
図7は、第3実施形態に係る単独運転検出装置の内部構成を示すブロック図である。同図において、第1実施形態に係る単独運転検出装置3(図1参照)と同一または類似の要素には同一の符号を付して、重複する説明を省略する。
【0093】
本実施形態に係る単独運転検出装置3bは、第1判定部32と第2判定部33とが、それぞれ異なる検出値を用いて判定を行う点で単独運転検出装置3と異なる。
【0094】
単独運転検出装置3bは、電圧検出部39をさらに備えている。電圧検出部39は、第2実施形態に係る電圧検出部39と同様のものである。電圧検出部39は、検出した電圧実効値vを、第2判定部33に出力する。一方、周波数検出部31は、検出した周波数fを、第2判定部33には出力しない。本実施形態では、電圧検出部39も本発明の「検出部」に相当し、電圧実効値vが本発明の「第2の検出値」に相当する。
【0095】
第3実施形態に係る第2判定部33は、電圧検出部39から入力される電圧実効値vに基づいて判定を行う。第2判定部33には、周波数fに対する第2条件に代えて、電圧実効値vに対する第4条件が設定されている。第4条件は、電圧実効値vに基づいて単独運転の可能性があると判断できる条件が設定されている。第2判定部33は、電圧実効値vが第4条件に一致したと判定した場合に、単独運転の可能性があると判断し、一致信号を待機部34に出力する。
【0096】
本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、本実施形態によると、第1判定部32と第2判定部33とでは、それぞれ異なる検出値を用いて判定を行う。したがって、それぞれの判定に適した検出値を用いて判定を行うことができる。
【0097】
なお、第1判定部32が電圧実効値vに基づいて判定を行い、第2判定部33が周波数fに基づいて判定を行ってもよい。また、第1判定部32および第2判定部33が判定に用いる検出値は、周波数fおよび電圧実効値vに限定されない。第1判定部32および第2判定部33は、それぞれ、いずれの検出値を用いて判定してもよい。
【0098】
本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナは、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る単独運転検出装置、単独運転検出方法、および、単独運転検出装置を備えたパワーコンディショナの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0099】
1:パワーコンディショナ、3,3a,3b:単独運転検出装置、31:周波数検出部、32:第1判定部、33:第2判定部、36:単独運転能動検出部、39:電圧検出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7