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特許7402719画像処理装置、コンピュータプログラム、および異常推定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】画像処理装置、コンピュータプログラム、および異常推定システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231214BHJP
   G08G 1/04 20060101ALI20231214BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231214BHJP
【FI】
G08G1/16 F
G08G1/04 D
G06T7/00 660B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020048023
(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公開番号】P2021149443
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2022-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶田 基貴
(72)【発明者】
【氏名】原田 久光
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-294753(JP,A)
【文献】特開2019-148865(JP,A)
【文献】特開2019-087150(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/16
G08G 1/04
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の運転者が写り込んだ画像に対応する画像情報を受け付ける受付部と、
前記画像情報に基づいて前記運転者の姿勢が異常であるかを推定する処理部と、
を備えており、
前記処理部は、
前記画像情報に規定された骨格モデルを適用することにより前記画像に写り込んだ前記運転者の頭部に対応する矩形を設定し、
前記移動体の前後方向に対応する方向における前記矩形の幅に基づいて前記頭部の中心座標を仮定し、
前記中心座標と前記運転者の目に対応する特徴点を結ぶ直線が前記移動体の前後方向に対応する方向に対してなす角度に基づいて、前記移動体のヨー方向またはピッチ方向に対応する方向への前記頭部の第一回転角を特定し、
前記第一回転角が閾値を上回る場合、前記姿勢が異常であると推定する、
画像処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記ヨー方向に対応する方向への前記第一回転角が前記閾値を上回る場合、前記運転者がよそ見姿勢をとっていると推定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記ピッチ方向に対応する方向への前記第一回転角が前記閾値を上回る場合、前記運転者がうつむき姿勢またはえび反り姿勢をとっていると推定する、
請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記処理部は、
前記画像に写り込んだ前記頭部における複数の特徴点を結ぶ直線の傾きに基づいて前記移動体のロール方向に対応する方向への前記頭部の第二回転角を特定し、
前記第二回転角が前記閾値を上回る場合、前記運転者が首のみ横倒れ姿勢をとっていると推定する、
請求項1からのいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数の特徴点は、前記運転者の両目に対応している、
請求項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記移動体に搭載されるように構成されている、
請求項1からのいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記画像処理装置に、
移動体の運転者が写り込んだ画像に対応する画像情報を受け付けさせ、
前記画像情報に規定された骨格モデルを適用することにより前記画像に写り込んだ前記運転者の頭部に対応する矩形を設定させ、
前記移動体の前後方向に対応する方向における前記矩形の幅に基づいて前記頭部の中心座標を仮定させ、
前記中心座標と前記運転者の目に対応する特徴点を結ぶ直線が前記移動体の前後方向に対応する方向に対してなす角度に基づいて、前記移動体のヨー方向またはピッチ方向に対応する方向への前記頭部の第一回転角を特定させ、
前記第一回転角が閾値を上回る場合、前記運転者の姿勢が異常であると推定させる、
コンピュータプログラム。
【請求項8】
移動体の運転者が写り込んだ画像に対応する画像情報を出力する撮像装置と、
前記画像情報に基づいて前記運転者の姿勢が異常であるかを推定する画像処理装置と、
前記画像処理装置により前記姿勢が異常であるとの推定結果に基づいて、前記移動体に搭載された被制御装置の動作を制御する制御装置と、
を備えており、
前記画像処理装置は、
前記画像情報に規定された骨格モデルを適用することにより前記画像に写り込んだ前記運転者の頭部に対応する矩形を設定し、
前記移動体の前後方向に対応する方向における前記矩形の幅に基づいて前記頭部の中心座標を仮定し、
前記中心座標と前記運転者の目に対応する特徴点を結ぶ直線が前記移動体の前後方向に対応する方向に対してなす角度に基づいて、前記移動体のヨー方向またはピッチ方向に対応する方向への前記頭部の第一回転角を特定し、
前記第一回転角が閾値を上回る場合、前記姿勢が異常であると推定する、
異常推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の運転者が写り込んだ画像を処理する画像処理装置に関連する。本発明は、当該画像処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。本発明は、前記画像に基づいて前記運転者の姿勢が異常であるかを推定する異常推定システムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、移動体の一例としての車両の運転者の姿勢の異常を検知する技術を開示している。姿勢の異常は、当該車両に搭載された撮像装置により取得された当該運転者が写り込んだ画像に基づいて推定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-105872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、撮像装置により取得された画像に基づいてなされる移動体の運転者の姿勢異常の推定の確からしさを高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、画像処理装置であって、
移動体の運転者が写り込んだ画像に対応する画像情報を受け付ける受付部と、
前記画像情報に基づいて前記運転者の姿勢が異常であるかを推定する処理部と、
を備えており、
前記処理部は、
前記画像情報に規定された骨格モデルを適用することにより前記画像に写り込んだ前記運転者の頭部を特定し、
前記画像に写り込んだ前記頭部の規定された方向への回転角が閾値を上回る場合、前記姿勢が異常であると推定する。
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、画像処理装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記画像処理装置に、
移動体の運転者が写り込んだ画像に対応する画像情報を受け付けさせ、
前記画像情報に規定された骨格モデルを適用することにより前記画像に写り込んだ前記運転者の頭部を特定させ、
前記画像に写り込んだ前記頭部の規定された方向への回転角が閾値を上回る場合、前記運転者の姿勢が異常であると推定させる。
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、異常推定システムであって、
移動体の運転者が写り込んだ画像に対応する画像情報を出力する撮像装置と、
前記画像情報に基づいて前記運転者の姿勢が異常であるかを推定する画像処理装置と、
前記画像処理装置により前記姿勢が異常であるとの推定結果に基づいて、前記移動体に搭載された被制御装置の動作を制御する制御装置と、
を備えており、
前記画像処理装置は、
前記画像情報に規定された骨格モデルを適用することにより前記画像に写り込んだ前記運転者の頭部を特定し、
前記画像に写り込んだ前記頭部の規定された方向への回転角が閾値を上回る場合、前記姿勢が異常であると推定する。
【0008】
上記の各態様に係る構成によれば、画像に写り込んだ運転者に骨格モデルを適用することによって特定される頭部の情報を効率的に利用し、運転者の姿勢が異常であるかの推定の確からしさを高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る異常推定システムの機能構成を例示している。
図2図1の異常推定システムが搭載されうる車両を例示している。
図3図1の画像処理装置により実行される処理の流れを例示している。
図4図1の撮像装置により取得されうる画像を例示している。
図5図4の画像に骨格モデルが適用された状態を例示している。
図6図3の姿勢推定処理の流れの一例を示している。
図7図4の画像に骨格モデルが適用された状態を例示している。
図8】車両のヨー方向への頭部の回転角を特定する手法を例示している。
図9図3の姿勢推定処理の流れの別例を示している。
図10】「えび反り姿勢」を説明するための図である。
図11】「うつむき姿勢」を説明するための図である。
図12】車両のピッチ方向への頭部の回転角を特定する手法を例示している。
図13図3の姿勢推定処理の流れの別例を示している。
図14】左方への「首のみ横倒れ姿勢」を説明するための図である。
図15】右方への「首のみ横倒れ姿勢」を説明するための図である。
図16】車両のロール方向への頭部の回転角を特定する手法を例示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。図1は、一実施形態に係る異常推定システム10の機能構成を例示している。異常推定システム10は、図2に例示される車両20の運転者30が写り込んだ画像に基づいて、運転者30の姿勢が異常であるかを推定するシステムである。車両20は、移動体の一例である。
【0011】
姿勢の異常は、運転者30の異常を検知するために推定される。本明細書において用いられる「運転者の異常」という語は、予め予測することが困難な体調の急変を意味する。
【0012】
添付の図面において、矢印Fは、運転者30から見た前方向を表している。矢印Bは、運転者30から見た後方向を表している。矢印Lは、運転者30から見た左方向を表している。矢印Rは、運転者30から見た右方向を表している。矢印Uは、運転者30から見た上方向を表している。矢印Dは、運転者30から見た下方向を表している。
【0013】
図1に例示されるように、異常推定システム10は、撮像装置11を含んでいる。撮像装置11は、車両20における適宜の箇所に配置される。図2に例示される車両20の車室21内に配置されたシート22に着座した運転者30が、撮像装置11による撮像に供される。
【0014】
図1に例示されるように、撮像装置11は、取得された画像に対応する画像情報Iを出力するように構成されている。画像情報Iは、アナログデータの形態でもよいし、デジタルデータの形態でもよい。
【0015】
異常推定システム10は、画像処理装置12を含んでいる。画像処理装置12は、受付部121と処理部122を備えている。受付部121は、撮像装置11から画像情報Iを受け付けるように構成されている。画像情報Iがアナログデータの形態である場合、受付部121は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を含みうる。処理部122は、デジタルデータの形態である画像情報Iを処理の対象とする。
【0016】
処理部122は、画像情報Iに基づいて運転者30の姿勢が異常であるかを推定する処理を実行するように構成されている。当該処理の詳細については後述する。
【0017】
画像処理装置12は、出力部123を備えている。処理部122は、運転者30の姿勢が異常であると推定された場合、出力部123を通じて制御情報Cを出力するように構成されている。制御情報Cは、デジタルデータの形態でもよいし、アナログデータの形態でもよい。制御情報Cがアナログデータの形態である場合、出力部123は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を含みうる。
【0018】
異常推定システム10は、制御装置13を含んでいる。制御装置13は、車両20に搭載されている。制御装置13は、画像処理装置12から出力された制御情報Cに基づいて、車両20に搭載された被制御装置40の動作を制御するように構成されている。
【0019】
具体的には、制御装置13は、運転者30の姿勢が異常であると推定された場合に、車両20の運転支援を有効にするように構成されている。本明細書において用いられる「運転支援」という語は、運転操作(ハンドル操作、加速、減速など)、走行環境の監視、および運転操作のバックアップの少なくとも一つを少なくとも部分的に行なう制御処理を意味する。すなわち、衝突被害軽減ブレーキ機能やレーンキープアシスト機能のような部分的な運転支援から完全自動運転動作までを含む意味である。
【0020】
例えば、制御装置13は、画像処理装置12から出力された制御情報Cに基づいて、車両20を減速させ、路肩に停車させるために必要な動作を、被制御装置40に行なわせる。被制御装置40の例としては、車両20の駆動系を構成する装置、灯具、運転支援動作が有効であることを車両20や他車両の乗員や歩行者に報知する装置などが挙げられる。
【0021】
次に、図3から図5を参照しつつ、画像処理装置12の処理部122により実行される運転者30の姿勢を推定する処理について詳細に説明する。図3は、当該処理の流れを例示している。
【0022】
処理部122は、受付部121を通じて撮像装置11から画像情報Iを受け付ける(STEP1)。図4は、撮像装置11により取得された運転者30が写り込んだ画像IMを例示している。画像情報Iは、画像IMに対応している。
【0023】
続いて、処理部122は、骨格モデルを適用する処理を行なう(図3のSTEP2)。本明細書で用いられる「骨格モデルを適用する処理」という語は、撮像装置により取得された画像に写り込んだ運転者において当該骨格モデルにおいて規定された複数の特徴点を検出し、当該複数の特徴点同士を当該骨格モデルにおいて規定された複数の骨格線で接続することを意味する。
【0024】
図5は、撮像装置11により取得された画像IMに写り込んだ運転者30に骨格モデルMが適用された例を示している。本例においては、骨格モデルMは、頭特徴点H、首特徴点NK、左肩特徴点LS、および右肩特徴点RSを含んでいる。
【0025】
頭特徴点Hは、モデル人体の頭の中心に対応する点である。首特徴点NKは、モデル人体の首に対応する点である。左肩特徴点LSは、モデル人体の左肩に対応する点である。右肩特徴点RSは、モデル人体の右肩に対応する点である。頭特徴点Hと首特徴点NKは、骨格線により接続されている。首特徴点NKは、左肩特徴点LSおよび右肩特徴点RSの各々と骨格線により接続されている。
【0026】
処理部122は、画像IMに写り込んだ運転者30において、頭特徴点H、首特徴点NK、左肩特徴点LS、および右肩特徴点RSの各々に対応する点を検出し、検出された複数の点同士を、上記の各骨格線で接続する。この処理を遂行するためのアルゴリズムは周知であるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
図1に例示されるように、画像処理装置12は、記憶部124を備えている。処理部122は、各特徴点の画像IMにおける位置を、正常時における運転者30の姿勢を表すものとして記憶部124に記憶する。具体的には、各特徴点に対応する画像IM中の画素の位置が、記憶部124に保存される。
【0028】
続いて、処理部122は、運転者30の姿勢が異常であるかを推定する姿勢推定処理を実行する(図3のSTEP3)。姿勢推定処理の詳細については、後述する。
【0029】
姿勢推定処理の結果、運転者30の姿勢が異常でないと推定されると(STEP4においてNO)、処理はSTEP1に戻り、次の画像情報Iが受け付けられる。画像情報Iの受け付けが繰り返される周期は、撮像装置11のフレームレートに対応しうる。
【0030】
姿勢推定処理の結果、運転者30の姿勢が異常であると判断されると(STEP4においてYES)、処理部122は、出力部123から制御情報Cを出力する(STEP5)。制御情報Cは、制御装置13へ送信される。制御情報Cは、同じ動作を被制御装置40に行なわせるものであってもよいし、推定された異常姿勢の種別に応じて異なる動作を被制御装置40に行なわせるものであってもよい。
【0031】
次に、図6から8を参照しつつ、処理部122により実行される姿勢推定処理(図3におけるSTEP3)の一例について説明する。図6は、処理の流れの一例を示している。
【0032】
本例においては、運転者30が「よそ見姿勢」をとっているかが推定される。本明細書で用いられる「よそ見姿勢」という語は、運転者30が車両20の進行方向を見ていない姿勢が継続している状態を意味する。
【0033】
本例においては、処理部122は、撮像装置11により取得された画像IMに写り込んだ運転者30の頭部31の車両20のヨー方向への回転角が閾値を上回る場合に、運転者30が「よそ見姿勢」をとっていると推定する。
【0034】
本明細書で用いられる「ヨー方向」という語は、車両20の上下方向に延びる軸を中心とする回転方向を意味する。「ヨー方向」に関しては、運転者30の頭上から見て反時計回り方向を「左ヨー方向」と定義し、運転者30の頭上から見て時計回り方向を「右ヨー方向」と定義する。
【0035】
車両20のヨー方向への頭部31の回転角を検出するために、処理部122は、撮像装置11により取得された画像IMに写り込んだ運転者30の頭部31の中心座標を仮定する処理を行なう(STEP11)。図7図8を参照しつつ、当該処理の詳細について説明する。
【0036】
図7は、図4および図5に例示された画像IMのうち、運転者30の頭部31が写り込んでいる部分を拡大して示している。本例においては、骨格モデルMを適用する処理により、頭特徴点Hに加えて、左目特徴点LYもまた検出されうる。左目特徴点LYは、モデル人体の左目に対応する点である。また、骨格モデルMを適用する処理により、画像IMにおいて運転者30の頭部31が位置する領域を推定する矩形の枠FMが設定される。
【0037】
図8は、設定された枠FMを用いて頭部31の中心座標CTを仮定する手法を説明するための図である。同図においては、頭部31を上方から見た状態が模式的に示されている。本例においては、車両20の左右方向における頭部31の幅、および車両20の前後方向における頭部31の幅は、図7に示される画像IM中に設定された枠FMの幅Wと同一であるとみなされる。この前提下において、頭部31の中心座標CTは、頭特徴点Hから車両20の後方へ(W/2)だけ離れた点として仮定される。処理部122は、距離(W/2)に対応する画素数を、記憶部124に保存する。
【0038】
このとき、中心座標CTと左目特徴点LYを結ぶ直線が中心座標CTと頭特徴点Hを結ぶ直線に対してなす角度θY0は、車両20の左右方向における頭特徴点Hと左目特徴点LYの間の距離dHLと上記の(W/2)のアークタンジェントを求めることにより特定されうる。この角度θY0は、運転者30が正常姿勢をとっている場合(車両20の進行方向を見ている場合)の初期角度として、記憶部124に保存される。
【0039】
運転者30が「よそ見姿勢」をとると、頭部31は、車両20のヨー方向へ回転する。このとき、中心座標CTと左目特徴点LYを結ぶ直線が中心座標CTと頭特徴点Hを結ぶ直線(車両20の前後方向)に対してなす角度θY1は、初期角度θY0から変化する。その変化量(θY1-θY0)は、車両20のヨー方向への頭部31の回転角θYとみなされうる。したがって、その変化量(θY1-θY0)の絶対値が閾値を上回る場合に、運転者30が「よそ見姿勢」をとっていると推定されうる。閾値は、一般的な運転者30が「よそ見姿勢」をとる場合に生じうる回転角θYとして、統計的に定められうる。
【0040】
上記の原理に基づき、処理部122は、STEP11で特定された中心座標CTを用いて、車両20のヨー方向への頭部31の回転角θYを特定する処理を行なう(図6のSTEP12)。具体的には、図7に例示されるように、車両20の左右方向における取得された画像IMに写り込んだ運転者30の頭特徴点Hと左目特徴点LYの間の距離dHLを特定する。距離dHLは、画素数として特定される。続いて、処理部122は、記憶部124に保存されている距離(W/2)と距離dHLのアークタンジェントを求めることにより、上記の角度θY1を特定する。
【0041】
さらに、処理部122は、特定された角度θY1と初期角度θY0の差分値をとることにより、車両20のヨー方向への頭部31の回転角θYを特定する。差分値が正の値ととる場合、頭部31は左ヨー方向に回転していると判断されうる。差分値が負の値をとる場合、頭部31は右ヨー方向に回転していると判断されうる。
【0042】
続いて、処理部122は、STEP12で特定された回転角θYの絶対値が記憶部124に保存されている閾値を上回っているかを判断する(STEP13)。
【0043】
回転角θYの絶対値が閾値を上回っていると判断された場合(STEP13においてYES)、処理部122は、運転者30が「よそ見姿勢」をとっていると推定する(STEP14)。処理は、図3のSTEP4におけるYESの判断に反映される。
【0044】
他方、回転角θYの絶対値が閾値を上回っていないと判断された場合(STEP13においてNO)、処理部122は、運転者30が「よそ見姿勢」をとっていないと推定する(STEP15)。処理は、図3のSTEP4におけるNOの判断に反映される。
【0045】
上記のような構成によれば、画像IMに写り込んだ運転者30に骨格モデルMを適用することによって特定される頭部31の情報を効率的に利用し、運転者30が「よそ見姿勢」をとっているかの推定の確からしさを高めることができる。
【0046】
車両20のヨー方向への頭部31の回転角θYを特定可能であれば、左目特徴点LYに代えて、頭部31に含まれる適宜の特徴点が用いられうる。そのような特徴点の例としては、車両20の左右方向における顔の中央部から離れた位置において検出されうる右目特徴点、左耳特徴点、右耳特徴点などが挙げられる。
【0047】
次に、図7、および図9から12を参照しつつ、処理部122により実行される姿勢推定処理(図3におけるSTEP3)の別例について説明する。図9は、処理の流れの一例を示している。
【0048】
本例においては、処理部122は、撮像装置11により取得された画像IMに写り込んだ運転者30の頭部31の車両20のピッチ方向への回転角が閾値を上回る場合に、運転者30が「えび反り姿勢」または「うつむき姿勢」をとっていると推定する。
【0049】
本明細書で用いられる「ピッチ方向」という語は、車両20の左右方向に延びる軸を中心とする回転方向を意味する。「ピッチ方向」に関しては、運転者30の左方から見て反時計回り方向を「下ピッチ方向」と定義し、運転者30の左方から見て時計回り方向を「上ピッチ方向」と定義する。
【0050】
「えび反り姿勢」は、国土交通省により定義されている複数種の「姿勢崩れパターン」の一つである。「えび反り姿勢」は、運転者の上半身が反り上がり、顔が上を向いている姿勢が継続している状態として定義されている。
【0051】
図10は、「えび反り姿勢」を例示している。「えび反り姿勢」は、運転者の顔の上ピッチ方向への回転角θPUが閾値を上回った状態として定義される。回転角θPUの閾値は、例えば25°である。
【0052】
「うつむき姿勢」は、国土交通省により定義されている複数種の「姿勢崩れパターン」の一つである。「うつむき姿勢」は、運転者の顔が下を向いている姿勢が継続している状態として定義されている。
【0053】
図11は、「うつむき姿勢」を例示している。「うつむき姿勢」は、運転者の顔の下ピッチ方向への回転角θPDが閾値を上回った状態として定義される。回転角θPDの閾値は、例えば20°である。
【0054】
車両20のピッチ方向への頭部31の回転角を検出するために、処理部122は、撮像装置11により取得された画像IMに写り込んだ運転者30の頭部31の中心座標を仮定する処理を行なう(図9のSTEP21)。図7図12を参照しつつ、当該処理の詳細について説明する。
【0055】
図7に例示されるように、本例においては、骨格モデルMを適用する処理により、頭特徴点Hに加えて、鼻特徴点NSもまた検出されうる。鼻特徴点NSは、モデル人体の鼻に対応する点である。また、骨格モデルMを適用する処理により、画像IMにおいて運転者30の頭部31が位置する領域を推定する矩形の枠FMが設定される。
【0056】
図12は、設定された枠FMを用いて頭部31の中心座標CTを仮定する手法を説明するための図である。同図においては、頭部31を左方から見た状態が模式的に示されている。本例においては、車両20の上下方向における頭部31の幅、および車両20の前後方向における頭部31の幅は、図7に示される画像IM中に設定された枠FMの幅Wと同一であるとみなされる。この前提下において、頭部31の中心座標CTは、頭特徴点Hから車両20の後方へ(W/2)だけ離れた点として仮定される。処理部122は、距離(W/2)に対応する画素数を、記憶部124に保存する。
【0057】
このとき、中心座標CTと鼻特徴点NSを結ぶ直線が中心座標CTと頭特徴点Hを結ぶ直線に対してなす角度θP0は、車両20の左右方向における頭特徴点Hと鼻特徴点NSの間の距離dHNと上記の(W/2)のアークタンジェントを求めることにより特定されうる。この角度θP0は、運転者30が正常姿勢をとっている場合の初期角度として、記憶部124に保存される。
【0058】
運転者30が「えび反り姿勢」または「うつむき姿勢」をとると、頭部31は、車両20のピッチ方向へ回転する。このとき、中心座標CTと鼻特徴点NSを結ぶ直線が中心座標CTと頭特徴点Hを結ぶ直線(車両20の前後方向)に対してなす角度θP1は、初期角度θP0から変化する。その変化量(θP1-θP0)は、車両20のピッチ方向への頭部31の回転角θPとみなされうる。したがって、その変化量(θP1-θP0)の絶対値が閾値を上回る場合に、運転者30が「えび反り姿勢」または「うつむき姿勢」をとっていると推定されうる。閾値は、国土交通省による定義に基づいて、適宜に定められうる。
【0059】
上記の原理に基づき、処理部122は、STEP21で特定された中心座標CTを用いて、車両20のピッチ方向への頭部31の回転角θPを特定する処理を行なう(図9のSTEP22)。具体的には、図7に例示されるように、車両20の上下方向における取得された画像IMに写り込んだ運転者30の頭特徴点Hと鼻特徴点NSの間の距離dHNを特定する。距離dHNは、画素数として特定される。続いて、処理部122は、記憶部124に保存されている距離(W/2)と距離dHNのアークタンジェントを求めることにより、上記の角度θP1を特定する。
【0060】
さらに、処理部122は、特定された角度θP1と初期角度θP0の差分値をとることにより、車両20のピッチ方向への頭部31の回転角θPを特定する。差分値が正の値ととる場合、頭部31は下ピッチ方向に回転していると判断されうる。差分値が負の値をとる場合、頭部31は上ピッチ方向に回転していると判断されうる。
【0061】
続いて、処理部122は、STEP22で特定された回転角θPの絶対値が記憶部124に保存されている閾値を上回っているかを判断する(STEP23)。
【0062】
回転角θPの絶対値が閾値を上回っていると判断された場合(STEP23においてYES)、処理部122は、運転者30が「えび反り姿勢」または「うつむき姿勢」をとっていると推定する(STEP24)。具体的には、回転角θPが正の値をとる場合に運転者30が「うつむき姿勢」をとっていると判断され、回転角θPが負の値をとる場合に運転者30が「えび反り姿勢」をとっていると判断される。処理は、図3のSTEP4におけるYESの判断に反映される。
【0063】
他方、回転角θPの絶対値が閾値を上回っていないと判断された場合(STEP23においてNO)、処理部122は、運転者30が「えび反り姿勢」または「うつむき姿勢」をとっていないと推定する(STEP25)。処理は、図3のSTEP4におけるNOの判断に反映される。
【0064】
上記のような構成によれば、画像IMに写り込んだ運転者30に骨格モデルMを適用することによって特定される頭部31の情報を効率的に利用し、運転者30が「えび反り姿勢」または「うつむき姿勢」をとっているかの推定の確からしさを高めることができる。
【0065】
車両20のピッチ方向への頭部31の回転角θPを特定可能であれば、鼻特徴点NSに代えて、頭部31に含まれる適宜の特徴点が用いられうる。そのような特徴点の例としては、顔の表面において検出されうる左目特徴点、右目特徴点、口特徴点、顔特徴点などが挙げられる。
【0066】
次に、図13から16を参照しつつ、処理部122により実行される姿勢推定処理(図3におけるSTEP3)の別例について説明する。図13は、処理の流れの一例を示している。
【0067】
本例においては、処理部122は、撮像装置11により取得された画像IMに写り込んだ運転者30の頭部31の車両20のロール方向への回転角が閾値を上回る場合に、運転者30が「首のみ横倒れ姿勢」をとっていると推定する。
【0068】
本明細書で用いられる「ロール方向」という語は、車両20の前後方向に延びる軸を中心とする回転方向を意味する。「ロール方向」に関しては、運転者30から見て反時計回り方向を「左ロール方向」と定義し、運転者30から見て時計回り方向を「右ロール方向」と定義する。
【0069】
「首のみ横倒れ姿勢」は、国土交通省により定義されている複数種の「姿勢崩れパターン」の一つである。「首のみ横倒れ姿勢」は、運転者の頭が左方または右方へ傾いている姿勢が継続している状態として定義されている。
【0070】
図14は、左方への「首のみ横倒れ姿勢」を例示している。左方への「首のみ横倒れ姿勢」は、運転者の顔の左ロール方向への回転角θRLが閾値を上回った状態として定義される。回転角θRLの閾値は、例えば30°である。
【0071】
図15は、右方への「首のみ横倒れ姿勢」を例示している。右方への「首のみ横倒れ姿勢」は、運転者の顔の右ロール方向への回転角θRRが閾値を上回った状態として定義される。回転角θRRの閾値は、例えば30°である。
【0072】
図16は、車両20のロール方向への回転角θRを特定する手法の一例を示している。本例においては、骨格モデルMの適用により検出された左目特徴点LYと右目特徴点RYが利用される。左目特徴点LYと右目特徴点RYを結ぶ直線の車両20の左右方向に対応する方向からの傾き角は、上記の回転角θRとみなされうる。したがって、車両20の左右方向における左目特徴点LYと右目特徴点RYの間の距離dLRと、車両20の上下方向における左目特徴点LYと右目特徴点RYの間の距離dUDを取得し、距離dLRと距離dUDのアークタンジェントを求めることにより、回転角θRが特定されうる。
【0073】
運転者30が「首のみ横倒れ姿勢」をとると、回転角θRの絶対値が増大する。したがって、回転角θRの絶対値が閾値を上回る場合に、運転者30が「首のみ横倒れ姿勢」をとっていると推定されうる。閾値は、国土交通省による定義に基づいて、適宜に定められうる。
【0074】
上記の原理に基づき、処理部122は、車両20のロール方向への頭部31の回転角θRを特定する処理を行なう(図13のSTEP31)。具体的には、車両20の上下方向における取得された画像IMに写り込んだ運転者30の左目特徴点LYと右目特徴点RYについて、上記の距離dLRと距離dUDを特定する。続いて、処理部122は、距離dLRと距離dUDのアークタンジェントを求めることにより、回転角θRを特定する。
【0075】
回転角θRが正の値ととる場合、頭部31は左ロール方向に回転していると判断されうる。回転角θRが負の値をとる場合、頭部31は右ロール方向に回転していると判断されうる。
【0076】
続いて、処理部122は、STEP31で特定された回転角θPの絶対値が記憶部124に保存されている閾値を上回っているかを判断する(STEP32)。
【0077】
回転角θRの絶対値が閾値を上回っていると判断された場合(STEP32においてYES)、処理部122は、運転者30が「首のみ横倒れ姿勢」をとっていると推定する(STEP33)。具体的には、回転角θRが正の値をとる場合に運転者30が左方への「首のみ横倒れ姿勢」をとっていると判断され、回転角θRが負の値をとる場合に運転者30が右方への「首のみ横倒れ姿勢」をとっていると判断される。処理は、図3のSTEP4におけるYESの判断に反映される。
【0078】
他方、回転角θRの絶対値が閾値を上回っていないと判断された場合(STEP32においてNO)、処理部122は、運転者30が「首のみ横倒れ姿勢」をとっていないと推定する(STEP34)。処理は、図3のSTEP4におけるNOの判断に反映される。
【0079】
上記のような構成によれば、画像IMに写り込んだ運転者30に骨格モデルMを適用することによって特定される頭部31の情報を効率的に利用し、運転者30が「首のみ横倒れ姿勢」をとっているかの推定の確からしさを高めることができる。
【0080】
車両20のロール方向への頭部31の回転角θRを特定可能であれば、左目特徴点LYと右目特徴点RYの組合せに代えて、頭部31に含まれる適宜の特徴点の組合せが用いられうる。そのような組合せの例としては、左耳特徴点と右耳特徴点、左目特徴点と右耳特徴点、左目特徴点と左耳特徴点、左目特徴点と鼻特徴点などが挙げられる。
【0081】
これまで説明した各機能を有する処理部122は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。プロセッサは、ROM上に記憶されたコンピュータプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0082】
処理部122は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。処理部122は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0083】
記憶部124は、半導体メモリやハードディスク装置により実現されうる。記憶部124は、上記の汎用メモリや記憶素子により実現されてもよい。
【0084】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0085】
上記の実施形態においては、運転者30がとりうる異常姿勢として「よそ見姿勢」、「えび反り姿勢」、「うつむき姿勢」、および「首のみ横倒れ姿勢」を例示した。しかしながら、骨格モデルMを適用することにより得られる特徴点に基づいて画像IMに写り込んだ運転者30の頭部31を特定可能であり、当該特徴点の位置や移動方向と車両20における規定された方向への頭部31の回転角の関係を見出すことができれば、当該関係に基づいて、適宜の異常姿勢を推定できる。
【0086】
画像処理装置12は、車両20に搭載されてもよいし、車両20と周知の無線通信ネットワークを介して通信可能な外部装置として提供されてもよい。この場合、撮像装置11から出力された画像情報Iが、無線通信ネットワークを介して画像処理装置12に送信される。処理部122による姿勢推定処理の結果として出力されうる制御情報Cは、周知の無線通信ネットワークを介して制御装置13へ送信される。
【0087】
異常推定システム10は、車両20以外の移動体にも適用されうる。他の移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。
【符号の説明】
【0088】
10:異常推定システム、11:撮像装置、12:画像処理装置、121:受付部、122:処理部、13:制御装置、20:車両、30:運転者、31:頭部、40:被制御装置、FM:矩形の枠、H:頭特徴点、I:画像情報、IM:画像、LY:左目特徴点、NS:鼻特徴点、RY:右目特徴点、W:矩形の枠の幅、θP、ピッチ方向への回転角、θR:ロール方向への回転角、θY:ヨー方向への回転角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16