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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ステアリング装置、および作業機械
(51)【国際特許分類】
   B62D 1/12 20060101AFI20231214BHJP
   B62D 12/00 20060101ALI20231214BHJP
   E02F 9/02 20060101ALI20231214BHJP
   G05G 5/03 20080401ALI20231214BHJP
   G05G 9/047 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B62D1/12
B62D12/00
E02F9/02
G05G5/03 A
G05G9/047
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020055999
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021154834
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】寺西 雄一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 唯太
(72)【発明者】
【氏名】磯村 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖也
【審査官】瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-26230(JP,A)
【文献】国際公開第2017/209058(WO,A1)
【文献】特開2017-35959(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 1/12,12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体の動作を伝達する動作伝達機構と、
前記車体に設置されている支持部と、
前記支持部に対して動作可能に支持されており、前記動作伝達機構に接続され、前記車体の動作が入力される可動部と、
操作を受け付けて前記可動部に対して動作する操作部材と、
前記可動部の前記支持部に対する移動を調整する付勢機構と、
を備えた、作業機械。
【請求項2】
前記可動部は、
前記支持部に回動可能に支持されたベース部材と、
前記動作伝達機構と前記ベース部材に接続され、前記車体の動作を前記ベース部材に伝達する伝達部と、を有し、
前記ベース部材と前記操作部材に介在し、前記操作部材を前記ベース部材に対して所定位置に付勢する付勢部材を更に備えた、
請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記付勢機構は、前記支持部または前記車体と前記ベース部材との間に配置され、前記ベース部材を回動可能な方向のいずれか一方に付勢する、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記付勢機構は、前記支持部または前記車体と前記伝達部との間に配置されている、
請求項2に記載の作業機械。
【請求項5】
前記付勢機構は、
前記支持部と前記可動部に接続されたバネ部材を有する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
前記車体は、
第1フレームと、
前記第1フレームに対して回動する第2フレームと、を有し、
前記動作伝達機構は、前記第1フレームに対する前記第2フレームの回動動作を前記可動部に伝達する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
前記第1フレームに対する前記第2フレームの回動角度を検出する検出部を更に備え、
前記動作伝達機構は、
電動モータと、
前記電動モータの出力軸を前記可動部に伝達するモータ駆動伝達部と、を有し、
前記検出部の検出値に基づいて、前記電動モータを駆動する制御部を更に備えた、
請求項6に記載の作業機械。
【請求項8】
車体に対して設置可能な支持部と、
前記支持部に対して動作可能に支持されており、前記車体の動作を伝達する動作伝達機構に接続され、前記車体の動作が入力される可動部と、
操作を受け付けて前記可動部に対して動作する操作部材と、
前記可動部の前記支持部に対する移動を調整する付勢機構と、
を備えた、ステアリング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステアリング装置、および作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
アーティキュレート式の作業機械として、フロントフレームとリアフレームに亘って配置された油圧アクチュエータに供給する油の流量を制御することによって、ステアリング角が変更される構成が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に示す作業機械では、支持部に回転可能に支持されているベース部材に対する所定位置からのジョイスティックレバーの操作角度に基づいて、油圧アクチュエータに供給される油の流量が変化し、ステアリング角が変更される。ステアリング角の変更は伝達機構を介してベース部材に伝達され、ベース部材もステアリング角の変更に対応して回転する。ベース部材の回転によって、ベース部材に対してジョイスティックレバーが所定位置に戻ると、ステアリング角の変更が停止され、停止されたステアリング角が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-026230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の構成では、伝達機構に設けられているギアやインタミシャフトなどでバックラッシュが発生し、ベース部材が回転方向に動作できる状態となる場合がある。この場合、オペレータがジョイスティックレバーを操作するとベース部材もともに回転することになり、ガタが発生して操作フィーリングが悪くなる。
【0006】
本開示は、操作フィーリングを向上することが可能な作業機械およびステアリング装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の開示にかかる作業機械は、車体と、動作伝達機構と、支持部と、可動部と、操作部材と、付勢機構と、を有する。動作伝達機構は、車体の動作を伝達する。支持部は、車体に対して設置されている。可動部は、支持部に対して動作可能に支持されており、動作伝達機構に接続され、車体の動作が入力される。操作部材は、操作を受け付けて可動部に対して動作する。付勢機構は、可動部の支持部に対する移動を調整する
第2の開示にかかるステアリング装置は、支持部と、可動部と、操作部材と、付勢機構と、を備える。支持部は、車体に対して設置可能である。可動部は、支持部に対して動作可能に支持されており、車体の動作を伝達する動作伝達機構に接続され、車体の動作が入力される。操作部材は、操作を受け付けて可動部に対して動作する。付勢機構は、可動部の支持部に対する移動を調整する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、操作フィーリングを向上することが可能な作業機械およびステアリング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明にかかる実施の形態1のホイールローダを示す側面図。
図2図1のキャブ近傍を示す側面図。
図3図1のステアリングシステムを示す構成図。
図4】レバー角度とベースプレート角度の差分に対するバネ部材の反力を示す図。
図5A】車体フレーム角度とベース角度の対応関係の例を示す図。
図5B】車体フレーム角度とベース角度の対応関係の例を示す図。
図6図3のコントローラの入出力と演算を示すブロック図。
図7A図7のマップを示す図。
図7B図7のマップを示す図。
図7C図7のマップを示す図。
図8A図1のホイールローダの制御動作を説明するための図。
図8B図1のホイールローダの制御動作を説明するための図。
図8C図1のホイールローダの制御動作を説明するための図。
図8D図1のホイールローダの制御動作を説明するための図。
図8E図1のホイールローダの制御動作を説明するための図。
図8F図1のホイールローダの制御動作を説明するための図。
図9図1のホイールローダの制御動作を示すフロー図。
図10】本発明にかかる実施の形態2におけるホイールローダのステアリングシステムを示す構成図。
図11図10のコントローラの入出力と演算を示すブロック図。
図12A図11のマップの一例を示す図。
図12B図11のマップの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる作業車両の一例としてのホイールローダについて図面を参照しながら以下に説明する。
【0011】
(実施の形態1)
以下に、本発明にかかる実施の形態1のホイールローダ1について説明する。
【0012】
<構成>
(ホイールローダの構成の概要)
図1は、本実施の形態のホイールローダ1の構成を示す模式図である。本実施の形態のホイールローダ1は、車体フレーム2(車体の一例)と、作業機3と、一対のフロントタイヤ4、キャブ5、エンジンルーム6、一対のリアタイヤ7、ステアリングシステム8、ステアリングシリンダ9a、9b(図3参照)、伝達機構10(動作伝達機構の一例)(図3参照)と、を備えている。
【0013】
なお、以下の説明において、「前」、「後」、「右」、「左」、「上」、及び「下」とは運転席から前方を見た状態を基準とする方向を示す。また、「車幅方向」と「左右方向」は同義である。図1では、前後方向をXで示し、前方向を示すときはXf、後方向を示すときはXbで示す。また、後述する図面において、左右方向をYで示し、右方向を示すときはYr、左方向を示すときはYlで示す。
【0014】
ホイールローダ1は、作業機3を用いて土砂積み込み作業などを行う。
【0015】
車体フレーム2は、いわゆるアーティキュレート式であり、フロントフレーム11とリアフレーム12と、連結軸部13と、を有している。フロントフレーム11は、リアフレーム12の前方に配置されている。フロントフレーム11は、第2フレームの一例に対応し、リアフレーム12は、第1フレームの一例に対応する。連結軸部13は、車幅方向の中央に設けられており、フロントフレーム11とリアフレーム12を互いに揺動可能に連結する。一対のフロントタイヤ4は、フロントフレーム11の左右に取り付けられている。また、一対のリアタイヤ7は、リアフレーム12の左右に取り付けられている。
【0016】
作業機3は、図示しない作業機ポンプからの作動油によって駆動される。作業機3は、ブーム14と、バケット15と、リフトシリンダ16と、バケットシリンダ17と、を有する。ブーム14は、フロントフレーム11に装着されている。バケット15は、ブーム14の先端に取り付けられている。
【0017】
リフトシリンダ16およびバケットシリンダ17は、油圧シリンダである。リフトシリンダ16の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、リフトシリンダ16の他端はブーム14に取り付けられている。リフトシリンダ16の伸縮により、ブーム14が上下に揺動する。バケットシリンダ17の一端はフロントフレーム11に取り付けられており、バケットシリンダ17の他端はベルクランク18を介してバケット15に取り付けられている。バケットシリンダ17が伸縮することによって、バケット15が上下に揺動する。
【0018】
キャブ5は、リアフレーム12上に載置されており、内部には、ステアリング操作のためのジョイスティックレバー41(後述する図2参照)、作業機3を操作するためのレバー、各種の表示装置等が配置されている。エンジンルーム6は、キャブ5の後側であってリアフレーム12上に配置されており、エンジンが収納されている。
【0019】
図2は、キャブ5の部分側面図である。キャブ5には、運転席19が設けられており、運転席19の側方にコンソールボックス20が配置されている。コンソールボックス20の上側にはアームレスト20aが配置されている。コンソールボックス20の前先端部から上方に向かってジョイスティックレバー41が配置されている。ジョイスティックレバー41は、操作部材の一例に対応する。
【0020】
図3は、ステアリングシステム8を示す構成図である。ステアリングシステム8は、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する油の流量を変更することによって、フロントフレーム11のリアフレーム12に対する車体フレーム角度を変更し、ホイールローダ1の進行方向を変更する。
【0021】
一対のステアリングシリンダ9a、9bは、油圧によって駆動される。一対のステアリングシリンダ9a、9bは、連結軸部13を挟んで車幅方向の左右側に並んで配置されている。ステアリングシリンダ9aは、連結軸部13の左側に配置されている。ステアリングシリンダ9bは、連結軸部13の右側に配置されている。ステアリングシリンダ9a、9bは、それぞれの一端がフロントフレーム11に取り付けられており、それぞれの他端が、リアフレーム12に取り付けられている。
【0022】
後述するステアリングシステム8からの油圧によりステアリングシリンダ9aが伸長し、ステアリングシリンダ9bが収縮すると、実際の車体フレーム角度θs_realが変化し車両は右に曲がる。また、ステアリングシステム8からの油圧によりステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長すると、実際の車体フレーム角度θs_realが変化し車両は左に曲がる。なお、本実施の形態では、フロントフレーム11とリアフレーム12が前後方向に沿って配置されている場合の実際の車体フレーム角度θs_realをゼロとし、右側を正の値、左側を負の値とする。
【0023】
(伝達機構10)
伝達機構10は、フロントフレーム11のリアフレーム12に対する車体フレーム角度θs_realについての情報をステアリングシステム8のステアリング装置22に伝達する。本実施の形態1の伝達機構10は、機械的に車体フレーム角度θs_realの情報をステアリング装置22に伝達する。
【0024】
伝達機構10は、機械的に、車体フレーム2に接続されており、後述するステアリングシステム8の可動部40と接続されている。伝達機構10は、車体フレーム角度θs_realの情報を、可動部40の伝達部45に伝達する。伝達機構10は、ギア、ユニバーサルジョイント若しくはインタミシャフト等を含む1つまたは複数の構成要素10aを有している。これらの構成部10aにおいて、バックラッシュが発生する。
【0025】
(ステアリングシステム8)
ステアリングシステム8は、調整機構21と、ステアリング装置22と、コントローラ23と、車速センサ24と、を備える。調整機構21は、ステアリングシリンダ9a、9bの駆動出力を調整する。ステアリング装置22は、ジョイスティックレバー41等を有し、オペレータによってホイールローダ1のステアリングの回動指示角度が入力される。コントローラ23は、ステアリング装置22に入力されたステアリングの回動指示角度に基づいて、調整機構21にステアリングシリンダ9a、9bの駆動出力を調整する指示を行う。車速センサ24は、ホイールローダ1の車速Vを検出して検出信号としてコントローラ23に送信する。
【0026】
なお、図3では、電気に基づいた信号の伝達について点線で示し、油圧に基づいた伝達について実線で示す。また、センサによる検出については二点鎖線で示す。
【0027】
(調整機構21)
調整機構21は、ステアリングシリンダ9a、9bに供給する油の流量を調整する。調整機構21は、油圧バルブ31と、メインポンプ32と、電磁パイロットバルブ33と、パイロットポンプ34と、を有する。
【0028】
油圧バルブ31は、入力されるパイロット圧に応じてステアリングシリンダ9a、9bに供給される油の流量を調整する流量調整弁である。油圧バルブ31には、例えばスプール弁が用いられる。メインポンプ32は、ステアリングシリンダ9a、9bを作動する作動油を油圧バルブ31に供給する。
【0029】
油圧バルブ31は、左ステアリング位置、中立位置、および右ステアリング位置に移動可能な弁体(図示せず)を有する。油圧バルブ31において弁体が左ステアリング位置に配置されている場合、ステアリングシリンダ9aが収縮し、ステアリングシリンダ9bが伸長して、実際の車体フレーム角度θs_realが小さくなり車体は左に曲がる。
【0030】
油圧バルブ31において弁体が右ステアリング位置に配置されている場合、ステアリングシリンダ9bが収縮し、ステアリングシリンダ9aが伸長して、実際の車体フレーム角度θs_realが大きくなり車体は右に曲がる。油圧バルブ31において弁体が中立位置に配置されている場合は、実際の車体フレーム角度θs_realは変化しない。
【0031】
電磁パイロットバルブ33は、コントローラ23からの指令に応じて油圧バルブ31に供給するパイロット油圧の流量または圧力を調整する流量調整弁である。パイロットポンプ34は、油圧バルブ31を作動させる作動油を電磁パイロットバルブ33に供給する。電磁パイロットバルブ33は、例えばスプールバルブ等であって、コントローラ23からの指令に従って制御される。
【0032】
電磁パイロットバルブ33は、左パイロット位置、中立位置、および右パイロット位置に移動可能な弁体(図示せず)を有する。電磁パイロットバルブ33において弁体が左パイロット位置に配置されている場合、油圧バルブ31は左ステアリング位置の状態をとる。電磁パイロットバルブ33において弁体が右パイロット位置に配置されている場合、油圧バルブ31は右ステアリング位置の状態をとる。電磁パイロットバルブ33において弁体が中立位置に配置されている場合、油圧バルブ31は中立位置の状態をとる。
【0033】
以上のように、コントローラ23からの指令に応じて電磁パイロットバルブ33からのパイロット圧またはパイロット流量が制御されることにより、油圧バルブ31が制御されてステアリングシリンダ9a、9bが制御される。
【0034】
(ステアリング装置22)
ステアリング装置22は、図3に示すように、ジョイスティックレバー41と、支持部42と、可動部40と、付勢部材44と、レバー角度センサ46と、車体フレーム角度センサ47と、付勢機構50と、を有する。
【0035】
(支持部42)
支持部42は、コンソールボックス20のフレーム20fに固定されている。支持部42は、コンソールボックス20のフレームの一部であってもよい。なお、支持部42は、コンソールボックス20に限らなくてもよく、車体フレーム2に対して固定可能である方が好ましい。また、支持部42が車体フレーム2に対して固定されるとは、支持部42が車体フレーム2に対して直接固定されるだけではなく、別の部材(本実施の形態の例のようにコンソールボックス20)を介して間接的に固定されていてもよい。また、支持部42が車体フレーム2に対して固定されるとは、オペレータが別の部材を操作したときのみ固定される構造であってもよい。
【0036】
(可動部40)
可動部40は、伝達機構10に接続され、車体フレーム2の動作が伝達機構10を介して入力されて支持部42に対して動作する。
【0037】
可動部40は、ベース部材43と、伝達部45と、を有する。
【0038】
ベース部材43は、支持部42に回動可能に支持されている。ベース部材43は、例えば、図3に示すように軸43aを有し、軸43aが回動可能に支持部42に支持されている。これによりベース部材43は、軸43aを中心に支持部42に対して回動することが可能である。また、支持部42が軸を有し、ベース部材43に貫通孔が形成され、支持部42の軸がベース部材43の貫通孔を挿通するような構成によっても、ベース部材43が支持部42に対して回動可能に構成することができる。
【0039】
伝達部45は、ベース部材43に接続されている。伝達部45には、伝達機構10が接続される。伝達部45には、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回動角度である実際の車体フレーム角度θs_realの情報が機械的に入力される。伝達部45は、入力された情報をベース部材43に伝達する。伝達部45は、ベース部材43の回動とともに回動または移動する。例えば、伝達部45が、ベース部材43とともに回動するジョイントを有し、伝達機構10がジョイントを有し、ジョイント同士が結合してユニバーサルジョイントを構成することにより、車体フレーム角度θs_realの情報を伝達機構10から伝達部45を介してベース部材43に伝えることができる。
【0040】
ジョイスティックレバー41は、ベース部材43または支持部42に対して回動可能に配置されている。ジョイスティックレバー41は、例えば、その基端部に貫通孔が形成され、軸43aが貫通孔に挿入されることにより、ベース部材43に対して回動可能に構成される。また、支持部42が軸を有し、その軸がジョイスティックレバー41の基端部の貫通孔を挿通することにより、支持部42に対してジョイスティックレバー41を回動可能に構成することができる。
【0041】
(付勢部材44)
付勢部材44は、バネ部材であって、ジョイスティックレバー41とベース部材43に介在している。付勢部材44は、ジョイスティックレバー41をベース部材43に対してベース基準位置43b(所定位置の一例)に付勢する。ジョイスティックレバー41は、ベース基準位置43bから右方向に回動させた場合およびベース基準位置43bから左方向に回動させた場合の双方に対して反力を付与する。オペレータがジョイスティックレバー41を把持していない状態では、ジョイスティックレバー41は左右の回動方向からの付勢力によってベース基準位置43bに位置する。
【0042】
(規制部48)
ベース部材43には、ジョイスティックレバー41の操作範囲を規制する規制部48が設けられている。
【0043】
規制部48は、当接部481、482を有している。当接部481、482は、ジョイスティックレバー41のベース部材43に対する回動範囲を所定角度範囲内に規制する。ジョイスティックレバー41の長手方向がベース基準位置43bに配置されている状態をジョイスティックレバー41のベース部材43に対する回動角度がゼロとし、ジョイスティックレバー41をベース部材43に対して右方向に回動させた場合をプラスであらわし、ジョイスティックレバー41をベース部材43に対して左方向に回動させた場合をマイナスであらわす。ジョイスティックレバー41のベース部材43に対する実際の相対角度θr_realが図3に示されている。
【0044】
ジョイスティックレバー41をベース部材43に対して右方向Yrに回動し、ベース部材43に対するジョイスティックレバー41の実際の相対角度θr_realがθ1(正の値)に達するとベース部材43の当接部481にジョイスティックレバー41が当接し、それ以上ジョイスティックレバー41を右側に回動できなくなる。また、ジョイスティックレバー41をベース部材43に対して左方向に回動し、θr_realがθ1´(負の値)に達するとベース部材43の当接部482にジョイスティックレバー41が当接し、それ以上ジョイスティックレバー41を右側に回動できなくなる。すなわち、θ1´~θ1の角度の範囲内でジョイスティックレバー41はベース部材43に対して回動可能に設定されている。この所定角度θ1´とθ1は、キャッチアップ角度に対応する。また、この所定角度θ1、θ1´は例えば10度、-10度に設定されている。所定角度θ1の絶対値と所定角度θ1´の絶対値は同じ値であっても良いし、異なっていてもよい。
【0045】
また、ジョイスティックレバー41は、ベース部材43に加えて支持部42によっても規制される。支持部42は、ジョイスティックレバー41が当接する規制部49を有し、規制部49は、右側当接部分491および左側当接部分492を持つ。支持部42は、支持基準位置42bに対してθ2´(負の値)~θ2(正の値)の所定角度の範囲内でベース部材43を規制する。所定角度θ2´、θ2の値は例えば、-20度、20度に設定される。所定角度θ2´と所定角度θ2は同じ値であっても良いし、異なっていても良い。
【0046】
図4は、ベース部材43に対するジョイスティックレバー41の実際の相対角度θr_realに対して付与される反力を示す図である。図4では、横軸にベース部材43に対するジョイスティックレバー41の実際の相対角度θr_realが示されており、縦軸に反力が示されている。横軸(相対角度)の正の値が、ベース部材43に対してジョイスティックレバー41を右回転させた場合を示し、横軸(相対角度)の負の値が、ベース部材に対してジョイスティックレバーを左回転させた場合を示す。縦軸(反力)の正の値が、左回転向きに反力を付与する場合を示し、縦軸(反力)の負の値が、右回転向きに反力を付与する場合を示す。
【0047】
実際の相対角度θr_realが0°~θ1または0°~θ1´までの間は、付勢部材44のバネ特性によって反力が付与される。初期反力、すなわち、ジョイスティックレバー41がベース基準位置43bから操作する際には、F1以上の反力を付与する。実際の相対角度θr_realの絶対値が大きくなるに従ってジョイスティックレバー41の操作に対して付与される反力も大きくなっている。実際の相対角度θr_realがθ1またはθ1´に達すると反力が直線的に増加している。これは、ジョイスティックレバー41がベース部材43の当接部481、482に当接するためである。
【0048】
(レバー角度センサ46)
レバー角度センサ46は、例えばポテンショメータによって構成されており、支持部42に対するジョイスティックレバー41の実際のレバー角度θi_realをレバー角度の検出値θi_detectとして検出する。
【0049】
ここで、支持部42に対するジョイスティックレバー41の支持基準位置42bが図3に示されている。ジョイスティックレバー41の長手方向が支持基準位置42bに維持されている状態では、実際の車体フレーム角度θs_realは0°となるように調整機構21によって制御され、リアフレーム12に対してフロントフレーム11が前後方向に沿って配置される状態となる。そして、ジョイスティックレバー41が支持基準位置42bに配置されている状態をジョイスティックレバー41の支持部42に対する回動角度がゼロとし、ジョイスティックレバー41を支持部42に対して右方向に回動させた場合をプラスであらわし、ジョイスティックレバー41を支持部42に対して左方向に回動させた場合をマイナスであらわす。ジョイスティックレバー41の支持基準位置42bからの実際のレバー角度θi_realに対応した実際の車体フレーム角度θs_realになるようにコントローラ23による制御が行われる。なお、ベース部材43の支持部42に対する実際のベース角度をθb_realとする。実際のベース角度θb_realは、ベース部材43のベース基準位置43bの支持基準位置42bからの回動角度に相当する。また、ベース基準位置43bが支持基準位置42bに配置されている状態をベース部材43の支持部42に対する回動角度がゼロの状態とし、ベース部材43を支持部42に対して右方向に回動させた場合をプラスで示し、ベース部材43を支持部42に対して左方向に回動させた場合をマイナスで示す。
【0050】
(車体フレーム角度センサ47)
車体フレーム角度センサ47は、実際の車体フレーム角度θs_realを車体フレーム角度の検出値θs_detectとして検出する。車体フレーム角度センサ47は、ステアリングシリンダ9a、9bの間に配置されている連結軸部13の近傍または伝達機構10またはベース部材43の軸43aに配置されている。車体フレーム角度センサ47は、例えばポテンショメータによって構成されており、検出された車体フレーム角度の検出値θs_detectは検出信号としてコントローラ23に送られる。
【0051】
なお、ステアリングシリンダ9a、9bの各々に、シリンダのストロークを検出するシリンダストロークセンサを設け、これらシリンダストロークセンサの検出値がコントローラ23に送られ、車体フレーム角度の検出値θs_detectが検出されてもよい。
【0052】
また、伝達機構10によって、車体フレーム角度θs_realと、支持部42に対するベース部材の回動角度であるベース角度θb_realとは対応する位置関係になるため、車体フレーム角度センサ47がベース部材43の軸43aに設けられてもよい。支持部42に対するベース部材43の回動角度を検出することで、車体フレーム角度を検出することができるためである。
【0053】
図5Aおよび図5Bに車体フレーム角度θs_realとベース角度θb_realの対応関係の例を示す。図5Aおよび図5Bの例では、車体フレーム角度θs_realが±40°をとることに対してベース角度θb_realは±20°の幅をとることができる。
【0054】
図5Aでは、ベース角度θb_realは、車体フレーム角度θs_realと比例関係を有しており、車体フレーム角度θs_realが増加するとベース角度θb_realも増加する。
【0055】
図5Bでは、グラフは曲線であり、車体フレーム角度θs_realの絶対値が小さい場合は、車体フレーム角度θs_realの変化の際のベース角度θb_realの変化が大きく、車体フレーム角度θs_realの絶対値が大きくなると、車体フレーム角度θs_realの変化の際のベース角度θb_realの変化が小さくなる。
【0056】
また、ジョイスティックレバー41と支持部42の間、またはジョイスティックレバー41とベース部材43の間にダンパ、フリクション、またはダンパとフリクションの双方が設けられた構成でもよい。
【0057】
(付勢機構50)
付勢機構50は、可動部40の支持部42に対する移動を調整する。付勢機構50は、与圧機構であって、フロントフレーム11の動きによらないガタ的な移動を抑制する。ガタ的な移動とは、伝達機構10においてバックラッシュが発生した場合に、可動部40のベース部材43がフロントフレーム11の動きによらずにジョイスティックレバー41の操作とともに回転方向に動作することである。
【0058】
本実施の形態では、付勢機構50は、ベース部材43を回動方向のいずれか一方に向かって付勢する。図3に示すように、付勢機構50は、1つまたは複数のバネ部材50aを有している。バネ部材50aの一端は、支持部42に接続されており、他端はベース部材43に接続されている。図3では、バネ部材50aは、例えばベース部材43を左回転方向に引き付けることによって、ベース部材43を付勢している。これに限らず、バネ部材50aが、ベース部材43を右回転方向に押すことによって、ベース部材43を付勢してもよい。バネ部材50aの位置は、限られるものではなく、ベース部材43を右回転方向および左回転方向のいずれか一方に付勢できさえすればよい。
【0059】
付勢機構50によるベース部材43の付勢力は、付勢部材44の付勢力よりも大きく設定されている。例えば、伝達機構10にバックラッシュが発生し、ベース部材43が回転方向に動作可能な状態となっている場合、ジョイスティックレバー41の操作に伴う付勢部材44の付勢力によってベース部材43が回動するとガタが発生することになる。そのため、付勢機構50によるベース部材43の付勢力を、付勢部材44の付勢力よりも大きく設定することにより、ジョイスティックレバー41の操作に伴う付勢部材44の付勢力ではベース部材43が回動しないため、ガタの発生を抑制することができる。
【0060】
(コントローラ23)
図6は、コントローラ23の入出力と演算を示すブロック図である。
コントローラ23は、プロセッサと、記憶装置を含む。プロセッサは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。或いは、プロセッサは、CPUと異なるプロセッサであってもよい。プロセッサは、プログラムに従ってホイールローダ1の制御のための処理を実行する。記憶装置は、ROM(Read Only Memory)のような不揮発性メモリおよびRAM(Random Access Memory)のような揮発性メモリを含む。記憶装置は、ハードディスク、あるいはSSD(Solid State Drive)などの補助記憶装置を含んでいてもよい。記憶装置は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置は、ホイールローダを制御するためのプログラムおよびデータを記憶している。
【0061】
コントローラ23には、レバー角度センサ46の検出値θi_detectと、車体フレーム角度センサ47の検出値θs_detectと、車速センサ24によって検出された車速V_detectが入力される。コントローラ23は、これらの値に基づいて電磁パイロットバルブ制御電流出力iを出力し、電磁パイロットバルブ33を制御する。
【0062】
コントローラ23は、入力された検出値および記憶装置に記憶されているデータを利用しながらプログラムを実行することにより、以下の各部の機能を有する。
【0063】
コントローラ23は、目標角度算出部91と、実ステアリング角度算出部92と、パルス・車速換算部93と、差分算出部94と、出力算出部95と、を有する。
【0064】
コントローラ23には、レバー角度センサ46からレバー角度の検出値θi_detectが入力され、目標角度算出部91は、マップM1を用いて目標角度θtargetを算出する。また、コントローラ23には、車体フレーム角度センサ47からステアリング角度の検出値θs_detectが入力され、実ステアリング角度算出部92は、マップM2を用いて実ステアリング角度θactualを算出する。コントローラ23には、車速センサ24から車速の検出値V_detectが入力される。パルス・車速変換部93は、入力されたパルスから車速へ変換し、車速信号Vを算出する。
【0065】
差分算出部94は、目標角度θtargetと実ステアリング角度θactualの差分θdiffを算出する。そして、出力算出部95は、差分diffと車速信号VからマップM3を用いて電磁パイロットバルブ制御電流出力iを算出し、電磁パイロットバルブ33に出力する。なお、マップM1~M3は、コントローラ23の記憶装置に記憶されている。
【0066】
図7Aは、マップM1の一例を示す図である。図7Bは、マップM2の一例を示す図である。図7Cは、マップM3の一例を示す図である。
【0067】
図7Aに示すマップM1の一例は、レバー角度の検出値θi_detectと目標角度θtargetの関係のグラフを示す。この例では、レバー角度の検出値θi_detectと目標角度θtargetは比例関係を有している。このマップM1を用いて、コントローラ23は、レバー角度の検出値θi_detectから目標角度θtargetを算出する。なお、目標角度θtargetは、車体フレーム角度の目標とする角度を示す。また、図7AのマップM1では、θtarget=2×θi_detectとなっているが、これに限られるものではない。
【0068】
図7Bに示すマップM2の一例は、ステアリング角度の検出値θs_detectと実ステアリング角度θactualの関係のグラフを示す。この例では、ステアリング角度の検出値θs_detectと実ステアリング角度θactualは比例関係を有している。このマップM2を用いて、コントローラ23は、ステアリング角度の検出値θs_detectから実ステアリング角度θactualを算出する。なお、実ステアリング角度θactualは、車体フレーム角度の実際の角度を示す。また、図7BのマップM2では、θactual=1×θs_detectとなっており、θactualの値とθs_detectの値は等しくなっているが、これに限られるものではない。
【0069】
図7CのマップM3の一例は、偏差角度θdiffに対する電磁パイロットバルブ制御電流出力iの値を示す曲線の一例を表す。
【0070】
コントローラ23は、差分角度θdiffに対する電磁パイロットバルブ制御電流出力iの値を示す曲線を、複数の車速について記憶している。図7Cに示すマップM3の一例では、例えば、車速10km/hのときの曲線C1(実線)と、車速20km/hのときの曲線C2(点線)と、車速30km/hのときの曲線C3(一点鎖線)が設定されている。車速が速いほうが電磁パイロットバルブ制御電流出力iの値が小さくなる。これにより、車速が速くなると、実際の車体フレーム角度θs_realの変化する速度(角速度ともいえる)が小さくなり、高速安定性を向上させることができる。また、車速が遅くなると、実際の車体フレーム角度θs_realの変化する速度(角速度ともいえる)が大きくなり、低速における操作性を向上させることができる。なお、車速VがC1、C2、C3の間の場合、補間計算によって、電磁パイロットバルブ制御電流出力iが決定される。
【0071】
コントローラ23は、図7Cに基づいて電流を電磁パイロットバルブ33へ送信する。
【0072】
なお、図3では省略しているが、コントローラ23は、メインポンプ32およびパイロットポンプ34等の制御を行ってもよい。
【0073】
また、コントローラ23と、車体フレーム角度センサ47、レバー角度センサ46、車速センサ24、および電磁パイロットバルブ33との間の信号の送受信については、各々が無線で行われてもよいし有線で行われてもよい。
【0074】
また、マップM1~M3は、入力に対して出力が一意に決まれば、線形であっても非線形であってもよい。
【0075】
<動作>
以下に、本実施の形態のホイールローダ1の制御動作について説明する。図8A図8Fは、ステアリング装置22の操作と車体フレーム2の状態を示す図である。図9は、本実施の形態のホイールローダ1の動作を示すフロー図である。
【0076】
図8Aに示すように、ベース部材43のベース基準位置43bが支持部42の支持基準位置42bに一致し、ジョイスティックレバー41の長手方向も支持基準位置42bに一致している状態(初期位置ともいう)の場合、ジョイスティックレバー41による実際のレバー角度θi_realはゼロである。
【0077】
このとき、電磁パイロットバルブ33は中立位置の状態となっている。この場合、油圧バルブ31も中立位置となっている。このため、左右のステアリングシリンダ9a、9bの油の供給または排出が行われておらず、実際の車体フレーム角度θs_realはゼロに維持される。このように、実際の車体フレーム角度θs_realもゼロであるため、ベース部材43も初期位置に位置している。
【0078】
そして、オペレータがジョイスティックレバー41を支持基準位置42bから右側に回転させるために操作力Finを加える。操作力Finが付勢部材44の初期付勢力F1を越えると、図8Bに示すように、ジョイスティックレバー41が右方向に回転して実際のレバー角度θi_realが増大する。なお、右方向に移動させるに従って、ベース部材43との相対角度θr_realが増大するため、図4に示すように、付勢部材44によって付与される反力は大きくなる。
【0079】
レバー角度センサ46は、ステップS10において、オペレータによって操作されたジョイスティックレバー41の実際のレバー角度θi_realをレバー角度の検出値θi_detectとして検出する。
【0080】
次に、ステップS20において、車体フレーム角度センサ47は、実際の車体フレーム角度θs_realを車体フレーム角度の検出値θs_detectとして検出する。
【0081】
このとき、左右のステアリングシリンダ9a、9bの反応の遅れのために、実際の車体フレーム角度θs_realはゼロの状態である。このため、車体フレーム角度センサ47による検出値である車体フレーム角度の検出値θs_detectはゼロとなっている。実際の車体フレーム角度θs_realがほぼゼロであるため、ベース部材43も回動していない。そのため、図8Bに示すように、ジョイスティックレバー41を右方向に回動した状態では、ジョイスティックレバー41は、ベース部材43のベース基準位置43bに対して右方向に回動した状態となっている。また、付勢部材44によって、ジョイスティックレバー41は、ベース基準位置43b(図8Bの状態では支持基準位置42bともいえる)に戻るように付勢されている。
【0082】
次に、ステップS30において、コントローラ23が、検出されたレバー角度の検出値θi_detectを図7Aに示すマップM1を用いて目標角度θtargetに変換する。また、コントローラ23は、車体フレーム角の検出値θs_detectを図7Bに示すマップM2を用いて実ステアリング角度θactualに変換する。さらに、コントローラ23は、上記目標角度θtargetと実ステアリング角度θactualの差分を演算し、差分角度θdiffを得る。
【0083】
次に、ステップS40において、コントローラ23は、車速センサ24による検出信号V_detectから換算を行い、車速Vを得る。
【0084】
次に、ステップS50において、コントローラ23は、差分角度θdiffと、車速Vとを用いて、記憶している図7Cに示すマップM3から電磁パイロットバルブ制御電流出力iを決定し、電磁パイロットバルブ33に指令を行う。
【0085】
ジョイスティックレバー41を右回転させたため、電磁パイロットバルブ33は右パイロット位置をとり、電磁パイロットバルブ33によって制御されたパイロット圧が油圧バルブ31に供給される。パイロット圧の供給により、油圧バルブ31は右ステアリング位置をとり、ステアリングシリンダ9aを伸長させ、ステアリングシリンダ9bを収縮させるようにステアリングシリンダ9a、9bにメイン油圧が供給される。
【0086】
これにより実際の車体フレーム角度θs_realが除々に増大し、フロントフレーム11がリアフレーム12に対して右方向に向けられる。
【0087】
この実際の車体フレーム角度θs_realの変化は、伝達機構10を介してベース部材43の角度に反映される。
【0088】
すなわち、図8Cに示すように、車体フレーム角度θs_realに対応した位置にベース部材43の角度も回動する。このように、ベース部材43がジョイスティックレバー41の回動位置に向かって回動すると、図8Cに示すように、実際のレバー角度θi_realと実際のベース角度θb_realとの偏差角度θr_realが小さくなるため、付勢部材44による付勢力は小さくなる。
【0089】
図8Dに示すように、オペレータがジョイスティックレバー41を所定の実際のレバー角度θi_real=θaで停止させると、実際の車体フレーム角度θs_realは除々に増大しているため、差分角度θdiffは小さくなる。
【0090】
そして、図8Eに示すように、実際の車体フレーム角度θs_realが動いてベース角度θb_realがθaとなると、差分角度θdiffがゼロになる。このとき、電磁パイロットバルブ33は中立位置をとり、油圧バルブ31も中立位置となる。このため、左右のステアリングシリンダ9a、9bへの油の供給または排出が行われておらず、実際の車体フレーム角度θs_realは回転角θaを図5Aに従って変換したθcに維持される。また、図8Eに示すように、ベース部材43もθa分、右方向に回動し、ジョイスティックレバー41が、ベース部材43のベース基準位置43bに位置する。
【0091】
次に、オペレータがジョイスティックレバー41を右側位置(θi_real=θa)から支持基準位置42b(θi_real=ゼロ)に向けて戻す。図8Fに示すように、ジョイスティックレバー41が支持基準位置42bに位置するようにジョイスティックレバー41が左回転される。
【0092】
なお、ジョイスティックレバー41を支持部42に対して支持基準位置42bに戻す前(図8Eに示す状態)は、ジョイスティックレバー41とベース部材43の位置関係は、図8Aと同様の位置関係となっている。そのため、ジョイスティックレバー41を動かす際には、動き出しの反力は初期位置からの動き出しと同じ反力となっている。すなわち、本実施の形態では、ベース部材43が実際の車体フレーム角度θs_realに対応した位置に回動するため、ジョイスティックレバー41の位置にかかわらず電磁パイロットバルブ33の状態(中間位置、右パイロット位置、左パイロット位置)に対応して、操作に対して付与される反力が決められる。
【0093】
このとき、左右のステアリングシリンダ9a、9bの反応の遅れのために、実際の車体フレーム角度θs_realはθcの状態である。また、ベース部材43は、実際の車体フレーム角度θs_realと同様に実際のベース角度θb_realはθaであるため、付勢部材44は、図8Eの状態になるようにベース部材43に対してジョイスティックレバー41を付勢している。
【0094】
上記のように実際の車体フレーム角度θs_realがθcの状態であるため、差分角度θdiffはゼロから減少してマイナスになる。すると、電磁パイロットバルブ33は、左パイロット位置をとり、油圧バルブ31にパイロット圧が供給され、油圧バルブ31が左ステアリング位置をとる。これにより、ステアリングシリンダ9bが伸長し、ステアリングシリンダ9aが収縮するように油圧が供給される。
【0095】
この油圧の供給により実際の車体フレーム角度θs_realが回転角θcから除々に減少する。この実際の車体フレーム角度θs_realの変化は、伝達機構10を介してベース部材43に反映され、実際の車体フレーム角度θs_realの変化と同様に、ベース部材43も回動する。
【0096】
そして、実際の車体フレーム角度θs_realがゼロになると、実際のレバー角度θi_real(=0)との差分がゼロとなる。このとき、電磁パイロットバルブ33は中立位置をとり、油圧バルブ31も中立位置となっている。このため、左右のステアリングシリンダ9a、9bへの油の供給または排出が行われておらず、実際の車体フレーム角度θs_realもゼロに戻って維持される。これによって、フロントフレーム11はリアフレーム12に対して前後方向に沿った向きに戻される。
【0097】
また、実際の車体フレーム角度θs_realの減少とともに、実際のベース角度θb_realもゼロになるようにベース部材43は回動し、図8Aに示すような初期位置(θb_real=0)に戻る。
【0098】
なお、ジョイスティックレバー41を左側に回転させた場合は、上記と同様であるため省略する。
【0099】
(実施の形態2)
次に、本発明にかかる実施の形態2におけるホイールローダ1´について説明する。本実施の形態2のホイールローダは、実施の形態1のホイールローダ1と伝達機構の構成が異なっている。そのため、本相違点を中心に説明する。
【0100】
図10は、本実施の形態2のステアリングシステム8および伝達機構10´の構成を示す図である。
【0101】
本実施の形態2の伝達機構10´は、車体フレーム角度θs_realの情報を電気的な手段を介してベース部材43に伝達する。
【0102】
本実施の形態2の伝達機構10´は、電動モータ61と、出力ギア62(モータ駆動伝達部の一例)と、を有している。電動モータ61は、コントローラ23´からの指令に基づいて駆動される。出力ギア62は、電動モータ61の出力軸に固定されており、伝達部45のギアと噛み合っている。例えば、出力ギア62と伝達部45のギアの間でバックラッシュが発生する場合がある。
【0103】
図11は、本実施の形態2のコントローラ23´の構成を示すブロック図である。図11に示すコントローラ23´には、実施の形態1のコントローラ23と比較して、ベース角度算出部96と、指令電流換算部97が更に設けられている。ベース角度算出部96は、マップM4を用いて、車体フレーム角度センサ47の検出値θs_detecからベース部材43の目標角度θb_targetを算出する。
【0104】
図12Aおよび図12Bは、マップM4の一例を示す図である。
図12Aおよび図12BのマップM4の一例は、ステアリング角度の検出値θs_detectとベース部材43の目標角度θb_targetの対応関係の例を示す。図12A図12BのマップM4は、図5A図5Bの横軸の車体フレーム角度θs_realをステアリング角度の検出値θs_detectに代え、縦軸のベース角度θb_realをベース部材43の目標角度θb_targetに代えたものである。
【0105】
指令電流換算部97は、ベース角度算出部96によって算出された目標角度θb_targetを電動モータ61への指令電流値imに換算し、電動モータ51に送信する。電動モータ51は、指令電流値imに基づいてベース部材43を回動し、ベース部材43の実際のベース角度θb_realが目標角度θb_targetになる。
【0106】
このように、コントローラ23´は、ベース部材43のベース角度θb_realがマップM4に基づいて算出したベース部材43の目標角度θb_targetになるように、電動モータ61に指令電流値imを送信する。なお、コントローラ23´から電動モータ51への指令は有線であっても無線であってもよい。
【0107】
<特徴など>
(1)
本実施の形態1、2のホイールローダは、車体フレーム2と、伝達機構10と、支持部42と、可動部40と、ジョイスティックレバー41と、付勢機構50と、を有する。伝達機構10、10´は、車体フレーム2の動作を伝達する。支持部42は、車体フレーム2に対して固定される。可動部40は、支持部42に対して動作可能に支持されており、伝達機構10、10´に接続され、車体フレーム2の動作が入力される。ジョイスティックレバー41は、操作を受け付けて可動部40に対して動作する。付勢機構50は、可動部40の支持部42に対する移動を調整する。
【0108】
このように付勢機構50によって可動部40の移動を調整することによって、伝達機構10、10´においてバックラッシュが発生していたとしても、ジョイスティックレバー41の操作とともに可動部40が移動することを防ぐことができる。そのため、オペレータがジョイスティックレバー41を操作する際のガタの発生を抑制することができる。
なお、支持部42は、車体フレーム2に対して固定されている方が好ましいが、少なくとも車体フレーム2に設置されていればよい。
【0109】
(2)
本実施の形態1のホイールローダ1では、可動部40は、ベース部材43と、伝達部45と、を有する。ベース部材43は、支持部42に回動可能に支持されている。伝達部45は、伝達機構10とベース部材43に接続され、車体フレーム2の動作をベース部材43に伝達する。ホイールローダ1は、付勢部材44を更に備える。付勢部材44は、ベース部材43とジョイスティックレバー41に介在し、ジョイスティックレバー41をベース部材43に対してベース基準位置43bに付勢する。
【0110】
このようなベース部材43と伝達部45のいずれか一方の支持部42に対する移動を調整することによって、伝達機構10においてバックラッシュが発生していたとしてもジョイスティックレバー41の操作とともにベース部材43が移動することが防ぐことができる。
【0111】
(3)
本実施の形態1、2のホイールローダ1では、付勢機構50は、支持部42とベース部材43との間に配置され、ベース部材43を回動可能な方向のいずれか一方に付勢する。
【0112】
このようにベース部材43を回動方向のいずれか一方に付勢することによって、伝達機構10においてバックラッシュが発生していたとしてもジョイスティックレバー41の操作とともにベース部材43が移動することが防ぐことができる。
【0113】
(4)
本実施の形態1、2のホイールローダ1では、付勢機構50は、支持部42と可動部40に接続されたバネ部材50aを有する。
【0114】
このようなバネ部材50aで可動部40を付勢することによって、伝達機構10においてバックラッシュが発生していたとしてもジョイスティックレバー41の操作とともにベース部材43が移動することが防ぐことができる。
【0115】
(5)
本実施の形態1、2のホイールローダ1では、車体フレーム2は、リアフレーム12とフロントフレーム11と、を有する。フロントフレーム11は、リアフレーム12に対して回動する。伝達機構10、10´は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回動動作を可動部40に伝達する。
【0116】
これにより、アーティキュレート式のホイールローダ1において、操作フィーリングを向上することができる。
【0117】
(6)
実施の形態2のホイールローダ1は、車体フレーム角度センサ47を更に備える。車体フレーム角度センサ47は、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回動角度を検出する。伝達機構10´は、電動モータ61と、出力ギア62と、を有する。出力ギア62は、電動モータ61の出力を可動部40に伝達する。ホイールローダ1は、コントローラ23´を更に備える。コントローラ23´は、車体フレーム角度センサ47の検出値θs_detectに基づいて、電動モータ61を駆動する。
【0118】
これにより、アーティキュレート式のホイールローダ1において、リアフレーム12に対するフロントフレーム11の回動角度を、電動モータ61を介して可動部40に伝達することができる。
【0119】
(7)
本実施の形態1、2のステアリング装置22は、支持部42と、可動部40と、ジョイスティックレバー41と、付勢機構50と、を備える。支持部42は、車体フレーム2に対して固定可能である。可動部40は、支持部42に対して動作可能に支持されており、車体フレーム2の動作を伝達する伝達機構10、10´に接続され、車体フレーム2の動作が入力される。ジョイスティックレバー41は、操作を受け付けて可動部40に対して動作する。付勢機構50は、可動部40の支持部42に対する移動を調整する。
【0120】
このように付勢機構50によって可動部40の移動を調整することによって、伝達機構10、10´においてバックラッシュが発生していたとしてもジョイスティックレバー41の操作とともに可動部40が移動することが防ぐことができる。そのため、オペレータがジョイスティックレバー41を操作する際のガタの発生を抑制することができる。
なお、支持部42は、車体フレーム2に対して固定可能な方が好ましいが、少なくとも車体フレーム2に設置可能であればよい。
【0121】
[他の実施形態]
以上、本開示の一実施の形態について説明したが、本開示は上記実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0122】
(A)
上記実施の形態1、2では、付勢機構50のバネ部材50aは支持部42とベース部材43の間に設けられているが、これに限らなくてもよく、伝達部45と支持部42または車体フレーム2の間に設けられていてもよい。バネ部材50aの一端は伝達部45に固定されている。バネ部材50aの他端は、支持部42または車体フレーム2に対して固定されていればよく、支持部42または車体フレーム2に直接固定されているだけでなく、別の部材を介して間接的に固定されていてもよい。
【0123】
(B)
上記実施の形態1、2では、支持部42に対するジョイスティックレバー41の回動角を検出するレバー角度センサ46が設けられているが、レバー角度センサ46の代わりに、ベース部材43に対するジョイスティックレバー41の角度を検出するレバー・車体フレーム差分角度センサ146が設けられていてもよい。
【0124】
ベース部材43に対するジョイスティックレバー41の実際の相対角度θr_realは、支持部42に対するジョイスティックレバー41の実際のレバー角度θi_realと、支持部42に対するベース部材43の実際のベース角度θb_realの差分に相当する。そして、ベース部材43の実際のベース角度θb_realは、伝達機構10によって車体フレーム角度θs_realに対応している。
【0125】
このため、ベース部材43に対するジョイスティックレバー41の角度から差分角度θdiffを算出して、電磁パイロットバルブ制御電流出力iを決定し、電磁パイロットバルブ33に指令を行うことができる。
【0126】
(C)
上記実施の形態1、2のホイールローダ1には、車体フレーム角度θs_realを検出する車体フレーム角度センサ47が設けられているが、車体フレーム角度センサ47の代わりにベース部材43の回動角度を検出するベース部材角度センサが設けられていてもよい。
【0127】
(D)
上記実施の形態1、2では、電磁パイロットバルブ33から入力されるパイロット圧に応じて油圧バルブ31からステアリングシリンダ9a、9bに供給される油の供給量が制御されるように構成されていたが、油圧バルブ31を介さずに電磁パイロットバルブ33からの油が直接ステアリングシリンダ9a、9bに供給される構成であってもよい。すなわち、電磁パイロットバルブ33に代えて電磁メインバルブが用いられてもよい。
【0128】
(E)
上記実施の形態1、2では、ベース部材角度およびレバー角度の範囲(角度スケール)は、車体フレーム角度の範囲(角度スケール)よりも狭くなっているが、車体フレーム角度の範囲と同じまたは車体フレーム角度の範囲よりも大きくても良い。ただし、ベースプレート角度およびレバー角度の範囲(角度スケール)は、車体フレーム角度の範囲(角度スケール)よりも狭いほうが、オペレータの操作範囲が狭くなるため操作しやすくなり好ましい。
【0129】
(F)
上記実施の形態1、2では、作業車両の一例としてホイールローダ1を用いて説明したが、アーティキュレート式のダンプトラック、モータグレーダ等であってもよい。
【0130】
(G)
上記実施の形態1、2では、ジョイスティックレバー41のみ記載していたが、ステアリングホイールが設けられていてもよい。ステアリングホイールの回動による信号はコントローラ23に入力され、その回動に基づいて電磁パイロットバルブ33が操作される。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本発明の作業機械およびステアリング装置は、操作フィーリングを向上することが可能な効果を有し、ホイールローダ等として有用である。
【符号の説明】
【0132】
1 :ホイールローダ
2 :車体フレーム
10 :伝達機構
40 :可動部
41 :ジョイスティックレバー
50 :付勢機構
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9
図10
図11
図12A
図12B