(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】防災システム及びプログラムの更新方法
(51)【国際特許分類】
G06F 8/65 20180101AFI20231214BHJP
G08B 29/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G06F8/65
G08B29/00 Z
(21)【出願番号】P 2020056235
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 和之
(72)【発明者】
【氏名】狩山 則之
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 建弥
【審査官】多賀 実
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-192275(JP,A)
【文献】特開2002-298258(JP,A)
【文献】特開2020-009004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 8/65-8/658
G08B 17/00
G08B 23/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
防災の対象領域を区分して得られる複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための同種の装置を複数備える防災システムであって、
前記複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置のプログラムの更新を完了した後、他の装置のプログラムの更新を行う更新手段を備える
防災システム。
【請求項2】
前記対象領域の防災のための複数の同種の装置を、前記複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置が他の装置と異なるグループに属すように、グループ分けするための情報であるグループ分け情報を記憶する記憶手段
を備え、
前記更新手段は、前記グループ分け情報に基づき特定される複数のグループのうちの一のグループに属する装置のプログラムの更新を完了した後、他のグループに属する装置のプログラムの更新を行う
請求項1に記載の防災システム。
【請求項3】
前記更新手段によりプログラムの更新が正常に行われたか否かを確認する確認手段を備え、
前記更新手段は、前記複数の部分領域の各々に関し、当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置のプログラムの更新が正常に行われたことが前記確認手段により確認された場合に限り、他の装置のプログラムの更新を行う
請求項1又は2に記載の防災システム。
【請求項4】
防災の対象領域を区分して得られる複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための同種の装置を複数備える防災システムにおいて、前記複数の部分領域の各々に関し、
当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置のプログラムの更新を行うステップと、
当該一の装置のプログラムの更新が完了した後、他の装置のプログラムの更新を行うステップと
を備える防災システムのプログラムの更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防災システムのプログラム更新のための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、防災システムが備える装置の中には、プロセッサとメモリを備え、メモリに記憶されたプログラム(ソフトウェア)に従うデータ処理をプロセッサが実行することで各種機能を実現するものが増えてきている。そのような装置が用いるプログラムは、例えばバグの修正や新しい機能の追加等のために、更新を要する場合がある。
【0003】
通常、装置のプログラムが更新される間は、その装置のプロセッサは更新中のプログラムに従った処理を実行できない。従って、防災システムが備える装置がプログラムの更新を行う間は、その装置がカバーする監視領域の防災機能が低下する、という問題がある。
【0004】
プログラムの更新中の機能停止に伴う不都合を軽減するための技術として、例えば特許文献1には、車両に実装されるプログラムを、車両乗員が指定する期間に更新させるとともに、プログラムの更新処理を中断及び再開できるようにするプログラム更新装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、防災システムが備える装置がプログラムを利用する場合、そのプログラムの更新中は防災システムの防災機能が低下する。
【0007】
ところで、防災システムには、防災の対象領域を区分して得られる複数の部分領域の各々のために処理を行う同種の装置を備えるものがある。例えば、広範囲を対象領域とする火災検知システムは、対象領域を区分して得られる複数の部分領域の各々に配置された同種の火災検知器を備え、それらの火災検知器が各部分領域において火災の発生を検知する。
【0008】
防災システムが同種の装置を複数備える場合、それらの装置のプログラムは同時期に更新が必要となる。従って、特段の工夫をしなければ、複数の同種の装置が一斉にプログラムの更新を行い、その間、監視の対象領域の全域において防災機能が低下してしまう。
【0009】
このような事情に鑑みて、本発明は、同種の装置を複数備える防災システムにおいて、それらの装置のプログラムの更新に伴う防災機能の低下を軽減する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明は、防災の対象領域を区分して得られる複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための同種の装置を複数備える防災システムであって、前記複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置のプログラムの更新を完了した後、他の装置のプログラムの更新を行う更新手段を備える防災システムを第1の態様として提供する。
【0011】
第1の態様に係る防災システムによれば、各部分領域において、或る装置がプログラムの更新のために機能を停止しても他の装置が機能を維持するため、防災機能の低下が軽減される。
【0012】
第1の態様に係る防災システムにおいて、前記対象領域の防災のための複数の同種の装置を、前記複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置が他の装置と異なるグループに属すように、グループ分けするための情報であるグループ分け情報を記憶する記憶手段を備え、前記更新手段は、前記グループ分け情報に基づき特定される複数のグループのうちの一のグループに属する装置のプログラムの更新を完了した後、他のグループに属する装置のプログラムの更新を行う、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0013】
第2の態様に係る防災システムによれば、グループ単位でプログラムの更新が行われるため、更新のための処理が簡素化される。
【0014】
第1又は第2の態様に係る防災システムにおいて、前記更新手段によりプログラムの更新が正常に行われたか否かを確認する確認手段を備え、前記更新手段は、前記複数の部分領域の各々に関し、当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置のプログラムの更新が正常に行われたことが前記確認手段により確認された場合に限り、他の装置のプログラムの更新を行う、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0015】
第3の態様に係る防災システムによれば、例えば1つの装置においてプログラムの更新が失敗した場合や、更新後のプログラムが正常に動作しないような場合、他の装置における同様の不都合の発生が防止される。
【0016】
また、本発明は、防災の対象領域を区分して得られる複数の部分領域の各々に関し当該部分領域の防災のための同種の装置を複数備える防災システムにおいて、前記複数の部分領域の各々に関し、当該部分領域の防災のための複数の同種の装置のうちの一の装置のプログラムの更新を行うステップと、当該一の装置のプログラムの更新が完了した後、他の装置のプログラムの更新を行うステップとを備える防災システムのプログラムの更新方法を第4の態様として提供する。
【0017】
第4の態様に係るプログラムの更新方法によれば、各部分領域において、或る装置がプログラムの更新のために機能を停止しても他の装置が機能を維持するため、防災機能の低下が軽減される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、プログラムの更新に伴う防災機能の低下が軽減される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態に係る防災システムの全体構成を示した図。
【
図2】一実施形態に係る防災受信盤の機能構成を示した図。
【
図3】一実施形態に係る防災受信盤に記憶されているグループ分けテーブルの構成を例示した図。
【
図4】一実施形態に係る防災受信盤が火災検知器のプログラムの更新のために行う処理のフローを示した図。
【
図5】一変形例に係る防災システムの全体構成を示した図。
【
図6】一変形例に係る防災受信盤に記憶されているグループ分けテーブルの構成を例示した図。
【
図7】一変形例に係る防災受信盤が表示するプログラム更新指示画面を例示した図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施形態]
以下、本発明の一実施形態に係る防災システム1を説明する。
図1は、防災システム1の全体構成を示した図である。本実施形態において、防災システム1はトンネルTにおける火災を検知するためのシステムである。なお、
図1はトンネルTを上から見た場合の図であり、左右方向に車両が走行する。
【0021】
防災システム1は、防災受信盤10と、トンネルTの壁面に概ね等間隔で整列配置された複数の火災検知器、すなわち、火災検知器11(1)、火災検知器11(2)、火災検知器11(3)、・・・、火災検知器11(n+1)を備える。以下、これら複数の火災検知器を区別しない場合、「火災検知器11」と総称する。複数の火災検知器11の各々は防災受信盤10に通信接続されている。なお、それらの通信接続は有線接続であっても無線接続であってもよい。
【0022】
防災受信盤10は、複数の火災検知器11の各々が火災を検知した場合に出力する火災検知信号を受信する。防災受信盤10は、いずれかの火災検知器11から火災検知信号を受信すると、火災発生を、表示及び警告音の発音によりトンネルT内の人々に報知するとともに、ネットワークを介して上位のシステム(
図1において図示略)に通知する。
【0023】
防災システム1の監視の対象領域はトンネルT内の全域である。そして、トンネルT内の対象領域は、n個の部分領域、すなわち、部分領域A(1)、部分領域A(2)、・・・、部分領域A(n)に区分される。以下、これらの部分領域を区別しない場合、「部分領域A」と総称する。
【0024】
防災システム1が備える複数の火災検知器11は、車両の走行方向における、複数の部分領域Aのうち隣り合う2つの部分領域Aの境界位置、すなわち、部分領域A(1)と部分領域A(2)の境界位置、部分領域A(2)と部分領域A(3)の境界位置、等に順次配置されている。より具体的には、
図1に示すように、部分領域A(1)の出入口側に火災検知器11(1)、部分領域A(1)と部分領域A(2)の境界位置に火災検知器11(2)、・・・、部分領域A(n-1)と部分領域A(n)の境界位置に火災検知器11(n)、そして、部分領域A(n)の出入口側に火災検知器11(n+1)が配置されている。
【0025】
火災検知器11の各々は、自装置から見て右側約90度の領域を監視可能な右側火災検知器と、自装置から見て左側約90度の領域を監視可能な左側火災検知器が統合された装置である。一つの火災検知器11が備える右側火災検知器と左側火災検知器は、電源、制御ユニット、通信ユニット等を共用しているが、各々の監視対象の領域における火災の検知は個別に独立して行われる。なお、本願において火災検知器が対象の領域を監視するとは、火災検知器が対象の領域内の火災を検知することを意味する。
【0026】
図1に示すように、火災検知器11(i)(ただし、iは1≦i≦(n+1)のいずれかの自然数、以下同様)が備える右側火災検知器を右側火災検知器111(i)と呼び、火災検知器11(i)が備える左側火災検知器を左側火災検知器112(i)と呼ぶ。また、右側火災検知器111(1)、右側火災検知器111(2)、・・・、右側火災検知器111(n+1)を区別しない場合、これらの右側火災検知器を「右側火災検知器111」と総称する。同様に、左側火災検知器112(1)、左側火災検知器112(2)、・・・、左側火災検知器112(n+1)を区別しない場合、これらの左側火災検知器を「左側火災検知器112」と総称する。
【0027】
互いに隣り合う右側火災検知器111と左側火災検知器112は同じ部分領域Aを監視する。例えば、部分領域A(1)は、左側火災検知器112(1)と右側火災検知器111(2)により監視される。このように、1つの部分領域Aを左側火災検知器112と右側火災検知器111の2つで監視する理由は、それらの一方が故障した場合でも火災を検知可能とするためである。すなわち、防災システム1においては、同じ部分領域Aを監視する左側火災検知器112と右側火災検知器111の少なくとも一方が火災を検知した場合、その部分領域Aに火災が発生していると判定する。
【0028】
なお、火災検知器11(1)の右側火災検知器111(1)はトンネルTの内側を監視できないため、例えば遮光板で覆う等の処置により機能が無効化されている。同様に、火災検知器11(n+1)の左側火災検知器112もトンネルTの内側を監視できないため、機能が無効化されている。
【0029】
右側火災検知器111及び左側火災検知器112は、例えば赤外線3波長式炎検知器であり、感応する光の周波数特性が異なる3種の赤外線センサの出力信号に基づき火災を検知する。ただし、右側火災検知器111及び左側火災検知器112が火災を検知する方式は赤外線3波長式に限られず、他の方式が採用されてもよい。右側火災検知器111及び左側火災検知器112は、火災を検知した場合、防災受信盤10に対し火災検知信号を出力する。
【0030】
火災検知器11はプロセッサとメモリを備え、メモリが記憶するプログラム(例えば、ファームウェアと通称されるプログラム)に従い、プロセッサが赤外線センサの制御のための処理、火災の検知のための判定処理、火災を検知した場合に火災検知信号を送信するための処理等を行う。
【0031】
火災検知器11のメモリに記憶されているプログラムは、バグの修正、機能の改善や新しい機能の追加等の目的で、更新が必要となる場合がある。本実施形態においては、防災受信盤10が定期的にインターネット上の所定のサイトにアクセスし、火災検知器11の更新プログラムの有無を確認し、更新プログラムがある場合には、そのサイトから更新プログラムをダウンロードした後、複数の火災検知器11の各々に対し更新プログラムを送信するとともに、その更新プログラムの実行を火災検知器11に指示する。火災検知器11は防災受信盤10からの指示に従い、防災受信盤10から受信した更新プログラムを実行する。その結果、火災検知器11のメモリに記憶されているプログラムが更新される。
【0032】
防災受信盤10はプロセッサ及びメモリを備え、メモリが記憶するプログラムに従いプロセッサがデータ処理を行うことで、各種の機能を備える装置の役割を果たす。防災システム1が備える防災受信盤10は、プロセッサが本実施形態に係るプログラムに従うデータ処理を実行することによって、
図2に示す構成部を備える装置として機能する。以下に
図2に示す構成部(機能構成部)を説明する。
【0033】
記憶手段101は、プログラム等の各種データを記憶する。更新プログラム取得手段102は、インターネットを介して火災検知器11の更新プログラムを所定のサイトからダウンロードして取得する。更新プログラム取得手段102が取得した更新プログラムは記憶手段101に記憶される。
【0034】
更新手段103は、火災検知器11のプログラムの更新を行う。具体的には、更新手段103は、更新プログラム取得手段102が取得し記憶手段101に記憶されている更新プログラムを火災検知器11の各々に送信し、火災検知器11に更新プログラムの実行を指示する。火災検知器11は、更新手段103の指示に従い、更新プログラムを実行する。
【0035】
本実施形態において、更新プログラムは自己診断プログラムを含んでいる。更新手段103は、プログラムの更新を火災検知器11に指示する際、自己診断の実行を指示する場合と、自己診断の実行を指示しない場合がある。火災検知器11のプロセッサは、更新プログラムに従い、火災検知器11のメモリに記憶されているプログラムを更新する。そして、更新手段103から自己診断の実行の指示を受けている場合、火災検知器11のプロセッサは、プログラムを更新した後、自己診断プログラムに従い、火災検知器11が正常に動作するか否かを診断し、正常に動作する場合は正常信号を、また、正常に動作しない場合は異常信号を、防災受信盤10に送信する。一方、更新手段103から自己診断の実行の指示を受けていない場合、火災検知器11のプロセッサは、プログラムを更新した後、完了信号を防災受信盤10に送信する。
【0036】
確認手段104は、更新手段103によりプログラムの更新が正常に行われたか否かを確認する。具体的には、確認手段104は、更新手段103により火災検知器11に対しプログラムの更新とともに自己診断の指示が行われた場合、その指示から所定時間内に火災検知器11から正常信号が送信されてきた場合、その火災検知器11における更新手段103の指示に従ったプログラムの更新が正常に行われたと判定し、それ以外の場合、その火災検知器11における更新手段103の指示に従ったプログラムの更新が正常に行われなかった、と判定する。また、確認手段104は、更新手段103により火災検知器11に対し自己診断の指示が行われなかった場合、プログラムの更新の指示から所定時間内に火災検知器11から完了信号が送信されてきた場合、その火災検知器11における更新手段103の指示に従ったプログラムの更新が正常に行われたと判定し、それ以外の場合、その火災検知器11における更新手段103の指示に従ったプログラムの更新が正常に行われなかった、と判定する。
【0037】
通知手段105は、火災検知器11のプログラムの更新が正常に完了したか否かを表示及び音により防災システム1の管理者に通知する。
【0038】
記憶手段101には、
図3に示すグループ分けテーブル(グループ分け情報の一例)が記憶されている。グループ分けテーブルは、複数の部分領域Aの各々に関し、その部分領域Aを監視する2つの火災検知器11のうちの一方と他方が異なるグループに属するように、複数の火災検知器11を複数のグループにグループ分けするための情報を格納するテーブルである。本実施形態において、グループの数は2つであり、第1グループ(グループIDが1のグループ)には、装置ID(ただし、装置IDは、火災検知器11(i)のiを意味する)が奇数の火災検知器11が振り分けられ、第2グループ(グループIDが2のグループ)には、装置IDが偶数の火災検知器11が振り分けられている。
【0039】
この場合、例えば、部分領域A(1)は火災検知器11(1)と火災検知器11(2)により監視されるが、火災検知器11(1)と火災検知器11(2)は異なるグループに属している。同様に、部分領域A(2)は火災検知器11(2)と火災検知器11(3)により監視されるが、火災検知器11(2)と火災検知器11(3)は異なるグループに属している。その他も同様である。
【0040】
図4は、防災受信盤10が火災検知器11のプログラムの更新のために行う処理のフローを示した図である。防災受信盤10は、更新プログラム取得手段102が更新プログラムを取得し、更新プログラムが記憶手段101に記憶されると、
図4のフローに従う処理を行う。以下に、
図4のフローに従い防災受信盤10が行う処理を説明する。
【0041】
更新手段103は、グループ分けテーブル(
図3)を参照し、第1グループに属する火災検知器11の中から装置IDが一番小さい火災検知器11、すなわち、火災検知器11(1)のプログラムを更新する(ステップS101)。具体的には、更新手段103は、火災検知器11(1)に更新プログラムを送信し、更新プログラムの実行を火災検知器11(1)に指示する。その際、更新手段103は自己診断の指示も行う。
【0042】
更新手段103の指示に従い、火災検知器11(1)はプログラムの更新と自己診断を行い、プログラムの更新後に自己診断で正常な動作を確認した場合は正常信号を防災受信盤10に送信する一方、自己診断で正常な動作が確認できなかった場合は異常信号を防災受信盤10に送信する。
【0043】
確認手段104は更新手段103から火災検知器11(1)に対する更新プログラムの送信が行われた後、所定時間内に火災検知器11(1)から正常信号が受信されたか否かに基づき、火災検知器11(1)におけるプログラムの更新が正常に行われたか否かを判定する(ステップS102)。
【0044】
ステップS102の判定において、プログラムの更新が正常に行われなかった、と判定した場合(ステップS102;No)、更新手段103は、火災検知器11(1)に対し、プログラムの更新のロールバック、すなわち、更新したプログラムを更新前のプログラムに戻す処理を指示する(ステップS103)。この場合、火災検知器11(1)はロールバックの指示に従い、更新したプログラムを更新前のプログラムに戻す。
【0045】
続いて、通知手段105は火災検知器11(1)におけるプログラムの更新が失敗したことを、ディスプレイによる文字等の表示と、スピーカによる発音とにより通知する(ステップS104)。防災システム1の管理者は、通知手段105による通知により、おそらく更新プログラムに問題があるためにプログラムの更新が失敗したことを知ることができる。その後、防災受信盤10は一連の処理を終了する。
【0046】
ステップS102の判定において、プログラムの更新が正常に行われた、と判定した場合(ステップS102;Yes)、更新手段103は、第1グループに属する火災検知器11のうち、プログラムの更新が行われていない火災検知器11、すなわち、火災検知器11(1)以外の火災検知器11の全てを一斉に更新する(ステップS105)。具体的には、更新手段103は、火災検知器11(3)、火災検知器11(5)、火災検知器11(7)・・・の各々に更新プログラムを送信し、更新プログラムの実行をそれらの火災検知器11に指示する。その際、更新手段103は自己診断の指示は行わない。
【0047】
続いて、確認手段104は、ステップS106において更新手段103から火災検知器11に対する更新プログラムの送信が行われた後、所定時間内にそれらの火災検知器11の全てから完了信号が受信されたか否かに基づき、それらの火災検知器11におけるプログラムの更新が正常に行われたか否かを判定する(ステップS106)。
【0048】
ステップS106の判定において、いずれかの火災検知器11におけるプログラムの更新が正常に行われなかった、と判定した場合(ステップS106;No)、通知手段105は、プログラムの更新が失敗したことを、プログラムの更新が正常に行われなかった火災検知器11の装置IDとともにディスプレイに表示する。また、通知手段105は、プログラムの更新が失敗したことを、スピーカによる発音により通知する(ステップS107)。防災システム1の管理者は、通知手段105による通知により、何らかの理由によりプログラムの更新に失敗した火災検知器11を知ることができる。その後、防災受信盤10は一連の処理を終了する。
【0049】
ステップS106の判定において、全ての火災検知器11におけるプログラムの更新が正常に行われた、と判定した場合(ステップS106;Yes)、更新手段103は、第2グループに属する全ての火災検知器11を一斉に更新する(ステップS108)。具体的には、更新手段103は、火災検知器11(2)、火災検知器11(4)、火災検知器11(6)・・・の各々に更新プログラムを送信し、更新プログラムの実行をそれらの火災検知器11に指示する。その際、更新手段103は自己診断の指示は行わない。
【0050】
続いて、確認手段104は、ステップS108において更新手段103から火災検知器11に対する更新プログラムの送信が行われた後、所定時間内にそれらの火災検知器11の全てから完了信号が受信されたか否かに基づき、それらの火災検知器11におけるプログラムの更新が正常に行われたか否かを判定する(ステップS109)。
【0051】
ステップS109の判定において、いずれかの火災検知器11におけるプログラムの更新が正常に行われなかった、と判定した場合(ステップS109;No)、通知手段105は、プログラムの更新が失敗したことを、プログラムの更新が正常に行われなかった火災検知器11の装置IDとともにディスプレイに表示する。また、通知手段105は、プログラムの更新が失敗したことを、スピーカによる発音により通知する(ステップS107)。防災システム1の管理者は、通知手段105による通知により、何らかの理由によりプログラムの更新に失敗した火災検知器11を知ることができる。その後、防災受信盤10は一連の処理を終了する。
【0052】
ステップS109の判定において、全ての火災検知器11におけるプログラムの更新が正常に行われた、と判定した場合(ステップS109;Yes)、通知手段105は、全ての火災検知器11においてプログラムの更新が成功したことを、ディスプレイによる文字等の表示と、スピーカによる発音とにより通知する(ステップS110)。防災システム1の管理者は、通知手段105による通知により、プログラムの更新が無事終了したことを知ることができる。その後、防災受信盤10は一連の処理を終了する。
【0053】
上述した防災システム1及び防災システム1が実行するプログラムの更新方法によれば、第1グループに属する火災検知器11のプログラムが更新される間、第2グループに属する火災検知器11が対象領域の監視を継続し、また、第2グループに属する火災検知器11のプログラムが更新される間、第1グループに属する火災検知器11が対象領域の監視を継続できるため、例えば、全ての火災検知器11のプログラムを一斉に更新する場合と比較し、防災機能の低下が低減される。
【0054】
[変形例]
上述の実施形態は本発明の一具体例であって、本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下に示す2以上の変形例が適宜組み合わされてもよい。
【0055】
(1)上述した実施形態においては、防災システム1は火災を検知するシステムであるものとしたが、対象領域を区分して得られる複数の部分領域の各々に関し、その部分領域の防災のための同種の装置であって、各々が自装置に記憶しているプログラムに従い動作する装置を複数備える防災システムであれば、その目的は火災の検知に限られない。例えば、トンネル内に車両の走行方向において概ね等間隔で配置され、電子制御を伴う消火栓を複数備える防災システムに本発明が適用されてもよい。この例の場合、複数の同種の装置は消火栓(又は消火栓の制御装置)となる。
【0056】
(2)上述した実施形態においては、1つの部分領域Aの全てを2つの火災検知器11が監視するものとしたが、必ずしも1つの部分領域Aの全てに関し、複数の同種の装置が防災のための処理を行わなくてもよい。例えば、
図5は、本変形例に係る防災システム2の全体構成を示した図である。防災システム2は、トンネルT内に概ね等間隔で配置されている複数の同種の煙検知器、すなわち煙検知器12(1)、煙検知器12(2)、煙検知器12(3)、・・・を備える。以下、これらの煙検知器を互いに区別しない場合、「煙検知器12」と総称する。
【0057】
図5(a)は装置IDが奇数の煙検知器12の各々の監視領域を斜線で示した図であり、
図5(b)は装置IDが偶数の煙検知器12の各々の監視領域を斜線で示した図である。これらの図が示すように、各部分領域Aは、1つの煙検知器12によってその全部が監視され、他の2つの煙検知器12によってその一部が監視される。たとえば、煙検知器12(2)は部分領域A(2)の全部を監視し、煙検知器12(1)と煙検知器12(3)はそれぞれ、部分領域A(2)の一部を監視する。このような構成においても、例えば装置IDが奇数の煙検知器12を第1グループに、また、装置IDが偶数の煙検知器12を第2グループに割り振って、一方のグループに属する煙検知器12のプログラムの更新が正常に完了した後、他方のグループに属する煙検知器12のプログラムの更新を行えば、各部分領域Aの少なくとも一部は常時、いずれかの煙検知器12の監視下にあるため、全ての煙検知器12のプログラムを一斉に更新する場合と比較し、防災機能の低下が抑制される。
【0058】
(3)上述した実施形態においては、複数の火災検知器11は2つのグループに区分されるが、或る部分領域Aを監視する2つの火災検知器11のうちの一方が他方と異なるグループに属すようにグループ分けが行われる限り、グループの数は2以上のいずれであってもよい。例えば、
図6のグループ分けテーブルのデータが示すように、装置IDを3で除した場合の余りが1のものを第1グループ、余りが2のものを第2グループ、余りが0のものを第3グループに割り振ってもよい。
【0059】
(4)上述した実施形態において防災受信盤10が行うものとした、火災検知器11のプログラムの更新のための処理の少なくとも一部が、防災受信盤10とは異なる装置において行われてもよい。例えば、火災検知器11の各々と防災受信盤10がネットワークを介してサーバ装置と通信可能である場合、サーバ装置が更新プログラム取得手段102、更新手段103、確認手段104、通知手段105を備え、サーバ装置の通知手段105がプログラムの更新の結果を防災受信盤10に通知してもよい。
【0060】
(5)上述した実施形態において、防災受信盤10は人手を介さずに自動的に火災検知器11のプログラムを更新するための処理を実行するものとしたが、防災システム1の管理者等の人手による指示に応じて、防災受信盤10が火災検知器11のプログラムを更新するための処理を実行してもよい。
【0061】
図7は、この変形例に係る防災受信盤10がタッチスクリーンに表示する画面(以下、「プログラム更新指示画面」という)を例示した図である。プログラム更新指示画面には、火災検知器11の装置IDと、火災検知器11の監視対象の部分領域AのID(部分領域A(i)のi)と、火災検知器11のプログラムの更新の要否とを示すリストが表示される。ユーザは、そのリストから、一斉にプログラムの更新を行いたい火災検知器11を選択し、「更新」ボタンをタッチすることで、選択した火災検知器11のプログラムの更新を防災受信盤10に指示することができる。
【0062】
ユーザが選択した火災検知器11に、いずれかの部分領域Aを監視する2つの火災検知器11の両方が含まれる場合、
図7(b)に示すように、プログラム更新指示画面には警告メッセージが表示される。ユーザは、警告メッセージを見て、火災検知器11の選択をやり直す場合には「キャンセル」ボタンをタッチし、火災検知器11の選択をやり直すことができる。
【符号の説明】
【0063】
1…防災システム、2…防災システム、10…防災受信盤、11…火災検知器、12…煙検知器、101…記憶手段、102…更新プログラム取得手段、103…更新手段、104…確認手段、105…通知手段、111…右側火災検知器、112…左側火災検知器。