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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/02 20060101AFI20231214BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20231214BHJP
   B41J 29/13 20060101ALI20231214BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20231214BHJP
   B41J 29/377 20060101ALI20231214BHJP
   H05K 7/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B41J2/02
B41J2/01 301
B41J29/13
B41J29/00 C
B41J29/377 103
H05K7/00 M
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020089037
(22)【出願日】2020-05-21
(65)【公開番号】P2021183388
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】有馬 崇博
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 明
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-045749(JP,A)
【文献】特開平04-061771(JP,A)
【文献】特開2013-151106(JP,A)
【文献】特開平09-277648(JP,A)
【文献】特開平07-076096(JP,A)
【文献】実開平06-086379(JP,U)
【文献】特開2002-023890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 29/00-29/377
B41J 29/377
H05K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印字を行うための印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する機器および前記機器および前記印字ヘッドを制御する機能を有する電気機器を内蔵する本体と、外部機器と前記電気機器との間をケーブルで接続するための入出力接続ボックスとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記電気機器の前記外部機器との接続側の端部に第1コネクタを備え、
前記入出力接続ボックスは、
前記ケーブルの端部には前記第1コネクタと着脱する第2コネクタを設け、
前記本体の外側に取付けられるベースと、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの着脱作業を可能にする開口部を有しており前記ベースに取付けられている固定カバーと、
前記ケーブルを貫通させ前記開口部を塞ぐように前記固定カバーに取外し可能に取付けられる移動カバーと、を備え、
前記ベースと前記本体の外面との間に放熱のための放熱空間を形成している、ことを特徴とする、インクジェット記録装置。
【請求項2】
印字を行うための印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する機器および前記機器および前記印字ヘッドを制御する機能を有する電気機器を内蔵する本体と、外部機器と前記電気機器との間をケーブルで接続するための入出力接続ボックスとを備えたインクジェット記録装置であって、
前記電気機器の前記外部機器との接続側の端部に第1コネクタを備え、
前記入出力接続ボックスは、
前記ケーブルの端部には前記第1コネクタと着脱する第2コネクタを設け、
前記本体の外側に取付けられるベースと、
前記第1コネクタと前記第2コネクタとの着脱作業を可能にする開口部を有しており前記ベースに取付けられている固定カバーと、
前記ケーブルを貫通させ前記開口部を塞ぐように前記固定カバーに取外し可能に取付けられる移動カバーと、を備え
前記移動カバーを前記固定カバーに保持するための保持構造を備え、
前記保持構造は、前記固定カバーの下方部に設けた凹部と、前記凹部と係合する凸部を前記移動カバーの下端部に設けた構造であることを特徴とする、インクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記固定カバーは一定の幅を有し前記ベースを取囲む周辺カバー部を有しており、前記ベース、前記固定カバーおよび前記移動カバーにより収容空間を形成したことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット記録装置において、前記収容空間は、少なくとも前記着脱作業を容易にするために設けた前記ケーブルの余裕部分を収納する容積を有することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記ベースと前記固定カバーとは一体化構造にしたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記電気機器は、コンピュータを含む制御基板と、前記制御基板と前記外部機器との間での入出力を制御する入出力基板とを備えており、前記入出力基板の端部に前記第1コネクタを設けていることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記ケーブルとして、ワイヤハーネスを用いたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項8】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記固定カバーと前記移動カバーとの取付けにネジを用いたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項9】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記固定カバーと前記移動カバーとの間に、ガスケットを介在させたことを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項10】
請求項1または2に記載のインクジェット記録装置において、前記第1コネクタは雌型のコネクタであり、前記第2コネクタはオス型のコネクタであることを特徴とするインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の運用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加圧供給されたインクを吐出しインク粒子として噴出するノズルと、そのインク粒子に印字内容に対応して帯電させる帯電電極と、帯電電極で帯電されたインク粒子を偏向する偏向電極と、印字に使用されないインクを回収するガターとを備えた「印字ヘッド」により、被印字物に印字記録を行うインクジェット記録装置は、よく知られている。このようなインクジェット記録装置は、例えば、WO2015/114814A1公報(特許文献1)に詳しく開示されている。
【0003】
この種のインクジェット記録装置は、生産ラインを流れる製品に文字や図などの情報を印字記録する用途などに広く採用されている。しかし、インクジェット記録装置が設置される環境は様々であり、粉塵や水分が多い環境に設置される場合も多い。そのため、装置の「本体」と称する筐体内に、インクの収容、インクの供給や回収等を行う「機械機器」と共に、装置全体を駆動制御するコンピュータ、電源などの「電気機器」を格納している。インクジェット記録装置の駆動に必要な電力を供給する電源は外部から電源コードを用いて供給されるので、電力を本体に取り込む部分の防塵や防水が必要である。
【0004】
そのような電源コードに関し、本体との接続部の防水・防塵性能を高めるように工夫されたインクジェット記録装置が、特開2007-223254号公報(特許文献2)に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2015/114814A1公報
【文献】特開2007-223254号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2には、本体の外壁の開口部に設けられたインレットコネクタと、このインレットコネクタの周囲に装置外壁と対抗して設けられ電源コードを固定する電源コードを固定する電源コード固定部を有するベースと、このベースと対向して設けられベースの電源コード固定部との間に電源コードを挟む固定部を有するカバーとを備えた構成が開示されている。この構成により、電源コードの本体への引込口の防水・防塵性能を確保し、電源コードの付替え作業を迅速に行うことができる。
【0007】
しかし、この特許文献2では、電源コードの防水・防塵を対象としており、インクジェット記録装置を駆動する際に必要となる各種センサや駆動機器などの「外部機器」に関する記載はない。一般に、生産ラインに使用するインクジェット記録装置では、コンベア上の製品が印字開始位置に搬送されたタイミングを検出して印字を開始する。そのため、その印字タイミングを検出するために印字センサが設置されている。この印字センサの検出信号は、本体内の電気機器(コンピュータ)に入力され、電気機器の制御により印字が開始される。また、印字は製品の搬送速度に対応して行う必要があるため、エンコーダなどの速度センサが設置されている。速度センサにより検出された速度は、電気機器(コンピュータ)に入力され、電気機器はこの速度に応じて印字ヘッドの印字動作を行なうように制御している。さらに、生産ラインにカメラを設置し、カメラの画像信号を本体内の電気機器(コンピュータ)に入力し、印字が正常に行われているかどうかを監視することも行われる。このように、装置本体の外部に設置される外部機器(各種センサ等)と、本体内の電気機器との間での電気信号のやり取り(入出力)が行われている。このような外部機器と本体内の電気機器との間における電気信号の入出力は、劣悪な環境であっても正常に動作することが求められるので、防水・防塵のための対応が必要である。
【0008】
一方、使用中のインクジェット記録装置に何らかの異常が生じた場合、生産ラインへの影響を少なくするために、できるだけ早く予備のインクジェット記録装置(予備機)に交換する必要がある。予備機への交換には、各外部機器と使用中のインクジェット記録装置の電気機器との間の電気的接続の切離しが必要となる。また、この切離し後に、外部機器と予備機の電気機器とを接続する作業および防水・防塵用のカバーなどを固定する作業(取付け作業)が必要である。このような予備機への交換に伴う作業は、生産ラインの停止時間を短くするためにできるだけ迅速に行う必要がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、防水・防塵性能を確保しつつ外部機器と本体内の電気機器との間の着脱を簡単にかつ迅速に行うことができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の運用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、その一例を挙げると、印字を行うための印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する機器および前記機器および前記印字ヘッドを制御する機能を有する電気機器を内蔵する本体と、外部機器と前記電気機器との間をケーブルで接続するための入出力接続ボックスとを備えたインクジェット記録装置であって、前記電気機器の前記外部機器との接続側の端部に第1コネクタを備え、前記入出力接続ボックスは、前記ケーブルの端部には前記第1コネクタと着脱する第2コネクタを設け、前記本体の外側に取付けられるベースと、前記第1コネクタと前記第2コネクタとの着脱作業を可能にする開口部を有しており前記ベースに取付けられている固定カバーと、前記ケーブルを貫通させ前記開口部を塞ぐように前記固定カバーに取外し可能に取付けられる移動カバーと、を備えているインクジェット記録装置である。
【0011】
また、本発明の他の例を挙げるならば、印字を行うための印字ヘッドと、前記印字ヘッドにインクを供給する機器と、前記機器および前記印字ヘッドを制御する機能を有する電気機器とを内蔵する本体と、前記電気機器は外部機器との接続を行うための第1コネクタを備え、外部機器と前記電気機器との間をケーブルで接続するための入出力接続ボックスは、前記ケーブルの端部に第2コネクタを有し、前記第1コネクタと前記第2コネクタの着脱作業を可能にするための開口部を有する固定カバーと、前記ケーブルを貫通させ前記開口部を塞ぐように前記固定カバーに取外し可能に取付けられる移動カバーとを備えており、前記着脱作業は、前記固定カバーから前記移動カバーを取外した状態で行うようにしたインクジェット記録装置の運用方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本体と外部機器との間の接続部における防水・防塵性能を確保するとともに、外部機器と本体内の電気機器との間における接続および切離し作業を簡単にかつ迅速に行うことができるインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の運用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例におけるインクジェット記録装置の使用状態を示す斜視図である。
図2】実施例におけるインクジェット記録装置の本体外観を示す斜視図である。
図3】実施例における本体の断面図である。
図4】実施例における入出力接続ボックスの構成を示した図である。
図5】実施例における本体の入出力接続ボックスの部品構成を示す分解斜視図である。
図6】実施例における移動カバーの構成を示す斜視図である。
図7】実施例において、移動カバーを本体から外して仮置きした状態の本体外観を示す斜視図である。
図8】実施例において、移動カバーを本体から外して仮置きした状態の入出力接続ボックス部を示す断面図である。
図9】実施例において、移動カバーを本体から外した状態の本体外観を示す斜視図である。
図10】実施例において、移動カバーを本体から外した状態の入出力接続ボックス部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を、図1図10を用いて説明する。なお、本発明は、以下に示す実施例に限定されるものではない。また、説明に使用する各図面において、共通する各装置・機器には、同一の符号(番号)を用いており、既に説明した各装置・機器については、後の図の説明では省略する場合がある。
【0015】
最初に、本発明の実施例におけるインクジェット記録装置の使用状態について図1を用いて説明する。図1に示すように、インクジェット記録装置600は、本体1と、印字ヘッド2と、導管3などで構成される。
【0016】
本体1の筐体内には、印字ヘッド2に供給するインクを収容するインク容器をはじめ、インク供給用、インク回収用の経路、それらの経路途中に設けたポンプおよび電磁弁、などの機器や機材を格納している。その他にも溶剤の供給や、インクを補充するための機械基部も格納している。更に、本体1には、印字ヘッド2における印字制御、および本体内のポンプや電磁弁などを制御するための電気機器(記憶したプログラムにしたがい装置全体の制御を実行するコンピュータ等を含む)を格納している。また、本体1の前面には、電気機器に対し装置の稼働に関する指示を行うため、あるいは稼動状態を表示する等を行うために操作表示部4が設けられている。なお、操作表示部4は、通常タッチパネル式のものが用いられるが、これに限るものではない。操作機能および表示機能を有するものであれば良い。作業員は、この操作表示部4を操作して、電気機器(コンピュータ)に印字に関する指示を与える。電気機器は、その指示に基づく制御を実行し、操作表示部4の画面に稼動状況などの必要な内容を表示する。
【0017】
印字ヘッド2は、本体1内のインク容器(図示せず)から供給経路、供給経路の途中に設けた電磁弁、ポンプなどにより所定圧力に調整されたインクの供給を受けて、インク粒子を発生させるノズルを有している。また、印字ヘッド2は、そのノズルから噴出したインク粒子に対して印字文字に対応する電荷を帯電させる帯電電極、その帯電されたインク粒子を電荷量に応じて偏向させる偏向電極、印字に使用しなかったインクを回収するガターなどを備えている。印字ヘッド2の偏向電極を通過したインク粒子は、印字対象物19A(印字前)に着弾するように飛翔し、印字対象物への印字を実行する。この印字ヘッド2におけるインク粒子の発生、帯電量などは、本体1内の電気機器(コンピュータなどを含む)により制御される。ここでは、印字ヘッド2の具体的な構成および動作の説明は省略する。
【0018】
導管3は、本体1と印字ヘッド2とを接続するために設けられており、インクの供給や回収などを行う経路や、印字ヘッド2を制御するためのケーブル(電線)などを通している。
【0019】
図1において、コンベア18により搬送される印字対象物19Aは、印字センサ5により検出される。また、印字後の印字対象物19Bは、カメラ9により撮像される。これらのセンサ等からの検出信号や画像信号は、ケーブルにより、本体1の背面に固定されている入出力接続ボックス12を経由して、本体1内の電気機器(図1では図示せず)に入力される。また、電気機器から外部機器に対し制御信号を出力する。例えば、カメラ9に対して制御信号を出力し、撮像するエリアや撮像画像の大きさなどを変更する。このような外部機器と電気機器との電気的な接続のために入出力接続ボックス12が用いられている。入出力接続ボックス12の具体的な構成については、後述する。なお、この実施例ではケーブルとしてワイヤハーネスを用いている。すなわち、印字センサ5はワイヤハーネス6により電気機器と接続され、エンコーダ7はワイヤハーネス8により電気機器と接続され、カメラ9はワイヤハーネス10により電気機器と接続される。なお、これ以外の外部機器についての説明は省略する。
【0020】
この図1に示す構成において、印字センサ5は、コンベア18上を搬送された印字対象物19Aが所定位置に搬送されたことを検出すると、検出信号を出力する。この検出信号は、電気機器に入力(入出力制御部を介してコンピュータに入力)される。これにより、電気機器(コンピュータ)は印字開始タイミングを把握することができる。また、エンコーダ7により搬送速度が検出され、同様に電気機器に入力される。電気機器は、それらの検出信号を用いて、印字ヘッド2のインク粒子の噴出開始タイミングや噴出速度などを適切に調整した印字制御信号を印字ヘッド2に出力する。これにより、印字ヘッド2は、適切なタイミングで適切な速度でインク粒子を発生させ、印字対象物19Aへの印字動作を実行することができる。印字後の印字対象物19Bは、カメラ9により撮像され、この画像信号が電気機器に送信される。電気機器は、この画像信号を画像処理し、適切な印字が行われているかどうかを判断する。判断の結果、印字が正常に行われていない場合には、操作表示部4に印字状態不良を表示する。また、生の画像を表示することもできる。これにより、操作員は、正常な印字が行われているか、そうでないかを把握することができる。
【0021】
次に、図2により、外部機器(印字センサ5、エンコーダ7、カメラ9、など)と本体1内の電気機器との間を接続するために設けた入出力接続ボックス12と、ワイヤハーネスの接続部の構造について説明する。図2は、インクジェット記録装置の本体背面の外観を示す斜視図である。
【0022】
図2において、本体1の背面26には入出力接続ボックス12が設けられている。入出力接続ボックス12は、ワイヤハーネス(ケーブル)を使用して外部機器に駆動電力や制御信号を出力したり、外部機器からの電気信号を入力する場合の電気的接続の中継的な役割を有する接続ボックスである。なお、入出力接続ボックス12は、この例では本体1の背面に設置しているが、本体1の側面に設置しても良い。
【0023】
入出力接続ボックス12は、本体1の外側の背面26に取付けるベース22と、このベース22に取り付けられる固定カバー21とを有する。この固定カバー21は、ベース22を取囲むように取付けられ、一定の幅を有する側面部(周辺カバー部21C)を有しており、かつその中央部には取付けや取外し作業を行うことができる大きさを有する開口部を有している。さらに、入出力接続ボックス12は、固定カバー21の開口部を覆うように固定カバーに取り外しが可能に取付けられる移動カバー23を有する。移動カバー23は、ケーブル(ワイヤハーネス)を貫通させる構造になっており、この例では貫通部にケーブルグランド25が組付けられている。ケーブルグランドにより、外部とのより完全なシールができる。移動カバー23を固定カバー21から取外した状態で、作業員は固定カバー21の開口部から手を差し入れ、ケーブル(この例では、ワイヤハーネス)の端に接続しているコネクタと電気機器側のコネクタ(接続端子)との間の着脱作業を行うことができる。すなわち、固定カバー21の中央部に開口部を設けているのは、着脱作業(電気的な接続や、接続を開放する作業)を行うためである。その作業後に、移動カバー23を固定カバー21に取付ければ、ケーブルと電気機器との接続部分(コネクタにより接続している部分)は外部から遮断されるので防水・防塵を実現できる。そのため、移動カバー23は、固定カバー21に設けた開口部全体を覆う大きさを有するものとなっている。固定カバー21と移動カバーの取付けには、ネジ24を用いており、容易に取外しと取付けが可能である。なお、21Aは、固定カバー21に設けた凹部(穴)である。23Aは、移動カバー23の下端に設けた係止用の凸部である。この移動カバー23の凸部23Aは、固定カバー21の凹部21Aに挿入することができるようになっている。これは、後述するように、コネクタの脱着(コネクタの挿入および引抜き)作業を行う際に、一時的に移動カバー23を固定カバー21に係止・保持するために利用する。
【0024】
次に、図3図5を用いて、入出力接続ボックス12および本体内の概略構成について説明する。図3は、本体1および入出力接続ボックス12の断面図を示している。図4は、図3に示す入出力接続ボックス12の部分を拡大した図である。図5は、入出力接続ボックスの部品構成を示す分解斜視図である。なお、これらの図では、外部機器と電気機器との接続部分を除き、各機器の具体的な接続は省略した。
【0025】
図3において、本体1の下部には、インク容器31と、流路ボード32と、複数のポンプ33と、複数の電磁弁34とが配置されている。本体1の上方部には、電気機器が配置されている。すなわち、この例では、電気機器として、コンピュータ機能を有する制御基板35と、制御基板35と外部機器との間での入出力を制御する入出力基板37と、各機器や基板等に電力を供給するための電源36とが配置されている。入出力基板37には接続端子であるコネクタが配備される。なお、この図では、制御基板35と入出力基板37との間の接続や、電源36から各機器への電力供給のための接続などは省略している。
【0026】
インク容器31内に収納されたインクは、流路ボード32内の流路と、その流路途中に接続されるポンプ33および電磁弁34とにより、インク供給経路、インク回収経路などが構成されている。コンピュータを含む制御基板35により、インク供給やインク回収の起動・停止が制御される。すなわち、制御基板35のコンピュータ機能により、ポンプ33、電磁弁34を駆動制御し、インク供給やインク回収を制御する。なお、この制御基板35に搭載されたコンピュータは、外部機器から、入出力接続ボックス12、入出力基板37を介して入力される電気信号や画像信号を使用して、印字ヘッド2を制御する。入出力基板37の外側の端部には第1のコネクタ(この実施例では、メス型コネクタ)が設けられる。他方、ワイヤハーネス(6,8,10,13,14)の端部には、そのコネクタと接続する第2のコネクタ(この実施例では、オス型コネクタ)を設けている。
【0027】
図3および図4において、入出力接続ボックス12におけるワイヤハーネスは、一端が図示しない各外部機器と接続されている。そして、ワイヤハーネスの他端には、入出力基板37のコネクタ44(接続端子)と接続するためのコネクタ45が設けられている。コネクタ44に、入出力接続ボックス12を貫通したワイヤハーネスの他端に設けたコネクタ45を挿入することにより、外部機器と本体内部の電気機器との間でコネクタによる電気的な接続を行うことができる。また、反対に、接続端子であるコネクタ44からコネクタ45を引抜くことにより、電気的な接続を開放すること(切離すこと)ができる。このようなコネクタの挿抜により着脱が行われる。なお、第1コネクタ44をオス型コネクタにし、第2コネクタ45をメス型コネクタにしても良い。
【0028】
図4に示すように、ベース22は、本体1の外側の背面26にネジ42により固定されている。また、固定カバー21は、このベース22に、ネジ41により固定されている。この固定により、防水・防塵が実現できる。ベース22には、コネクタを挿入することが可能なように小さな穴部22Aが設けられている。この穴部22Aの周囲は、防水・防塵の機能を高めるために、ガスケット53を用いている。また、ベース22の下方側には、本体の背面26との間で離間した放熱空間47を形成し、発生した熱を効率よく放熱できるようにしている。
【0029】
なお、この例では、ベース22と固定カバー21とを別体として、それらをネジ41で固定したが、ベース22と固定カバー21とを一体とした一体化構造にしても良い。その場合、ネジ41による固定作業は不要となり、構造は簡単になる。しかし、この例では、ベースと固定カバーとは一旦固定したら、その後取外す必要があまりないことに鑑み、ベース22と固定カバー21とを別体構造にし、それらをネジ41で固定する構造とした。
【0030】
図4および図5に示すように、固定カバー21は、周辺部が一定の幅を有する周辺カバー部21Cを有し、中央部にはコネクタの脱着作業を行うことができる大きさの開口部21Bを有する。取付け終了時には固定カバー21に移動カバー23を取付けるので、開口部21Bの大きさは、移動カバー23の外形より小さい。固定カバー21には周辺カバー部21Cを設けており、固定カバー21に移動カバー23を取付けた状態では、ベース、固定カバー、移動カバーで構成される一定の容積を有する収容空間43が形成される。この収容空間43にワイヤハーネス(ケーブル)の端部の余裕部分を収容することができる。すなわち、ケーブル端部と電気機器との接続や開放作業を行う際には、作業性を高めるためにケーブル端部に一定の長さの余裕部分が必要である。しかし、固定カバー21に移動カバー23を取付けた段階では、この作業性向上のために設けたケーブルの余裕部分をどのように収納するかが問題となる。そのため、この実施例では、固定カバー21の周辺部を覆うように所定幅の周辺カバー部21Cを設け、収容空間43を形成し、ケーブルの余裕部分をその収容空間43内に収納している。また、ベース22と固定カバー21とは、ネジ41により固定している。このような構成により、固定カバーに移動カバーを取付けることにより、防水・防塵を実現することができる。また、ベース22と固定カバー21の間にも、防水・防塵のためにガスケット52が用いられており、これにより防水・防塵をより高めることができる。
【0031】
図4および図5に示すように、ネジ41は移動カバー23の外部に露出しているので、移動カバー23を固定カバー21から取外すこと、移動カバー23を固定カバー21に取付けることは容易である。すなわち、稼動していたインクジェット記録装置を予備機であるインクジェット記録装置に交換する場合、外部機器と本体との間の切離しや取付けに際して、このベース22および固定カバー21は取外す必要はなく、ネジ24により移動カバー23の取付け、取外しを行うことで脱着作業を行うことができる。つまり、移動カバー23を固定カバー21から取外している状態において、固定カバー21の開口部21Bから手を突っ込んで電気的接続や開放(コネクタの脱着作業)を実施する。この例では、移動カバー23と固定カバー間にもガスケット51が設けられている。また、移動カバー23には、ワイヤハーネスの自由な移動を抑制し、コネクタ接続を容易にするために、ケーブルグランド25を設けている。図5に示すように、この実施例におけるケーブルグランド25は、コネクタ本体25Aと、キャップ25Bと、ゴムブッシング25Cと、ナット25Dで構成されている。
【0032】
次に、図6により、移動カバー23の構成について説明する。図6は移動カバー23の具体的な構成を示す斜視図であり、(a)は固定カバー21の外側面を、(b)は固定カバー21の内側面を示している。
【0033】
図6において、移動カバー23には、貫通している各ワイヤハーネスが自由に移動しないように固定するためにケーブルグランド25を設けている。この移動カバー23は、固定カバー21に取付け、取外しが可能なように、ネジ24を使って固定する。なお、25Dは,内側のナットである。また、27は、ワッシャである。また、図6から明らかなように、移動カバー23の下端部に係止用の凸部23Aを設けており、固定カバー21に設けた凹部21Aと係合し、移動カバー23を固定カバー21に係止・保持を可能にしている。このような構成は、塵埃や水分のシール機能を果たすとともに、外部機器を稼働中のインクジェット記録装置の電気機器と外部機器との接続を開放する作業や、予備機と外部機器とを接続する作業を行う際に、移動カバーが作業の邪魔にならないようにする効果を奏する。
【0034】
次に、図7図10を用いて、入出力接続ボックス12による外部機器と電気機器との間における脱着作業と、予備機への切替え動作について説明する。図7は、移動カバーを本体から外して移動カバーを保持(仮置き)した状態の本体外観を示す斜視図である。図8は、移動カバーを本体から外して保持(仮置き)した状態の入出力接続ボックス部を示す断面図である。図9は、移動カバーを本体から外した状態の本体外観を示す斜視図である。図10は、移動カバーを本体から外した状態の入出力接続ボックス部を示す断面図である。
【0035】
まず、図7図8により、移動カバー23を取外し、外部機器と入出力基板37との電気的な接続を開放する場合の手順について説明する。移動カバー23の取外しは、ネジ24を外す(締付けと逆方向に回す)ことで実現できる。移動カバー23を固定カバー21から取外した場合に、ネジ24が移動カバー23から抜落ちないようにワッシャ27を設けている。固定していたネジ24を全て外すことにより、移動カバー23は本体側と切離され移動可能となる。移動カバー23にはケーブルグランド25が設けられているので、移動カバー23はワイヤハーネス6,8,10,13,14により支えられた状態になる。この状態で、コネクタの脱着を行う。すなわち、この図7の例では、ワイヤハーネス6,8の端部の電線6A,8Aに接続されたコネクタ62を引抜き、入出力基板37の端部のコネクタ61との切離しを行い、電気的接続を開放する。同様に、ワイヤハーネス10の端部の電線10Aに接続されたコネクタ45を引抜き、入出力基板37の端部のコネクタ44との切離しを行う。また、ワイヤハーネス13,14の端部の電線13A,14Aに接続されたコネクタ64を引抜き、入出力基板37の端部のコネクタ63との切離しを行う。
【0036】
ここで、脱着作業において、移動カバー23が可撓性のあるワイヤハーネスに支えられている状態のままにすると、作業がやりにくい。そのため、この実施例では、固定カバー21の下方に設けた凹部21Aに、移動カバー23の下端部に設けた係止機能が付いた凸部23Aを差し込むことにより、移動カバー23を、固定カバー21に係止・保持ができるようにしている。移動カバー23を固定カバー21に係止・保持したことにより、作業の邪魔になる移動カバー23の無用な動きを防止することができる。すなわち、各コネクタ62,45,64と、それらに対応する各コネクタ61,44,63との脱着作業はやりやすくなる。このように、コネクタの脱着は、移動カバーを固定カバー21に保持した状態で行う。
【0037】
なお、この実施例では、移動カバーに凸部を、固定カバー21にそれと篏合する凹部を設けて、移動カバー23を保持するようにしたが、この保持構造はこれに限らない。例えば、固定カバー21の下端部に移動カバー23の下端の幅方向より若干大きい幅を有する袋状の部品を設けておけば、移動カバー23をその袋状の部品内に入れて保持することができる。また、移動カバー23に磁石を設け、この磁石による吸引力を利用して移動カバー23を固定カバー21や本体の背面26に吸着・保持するようにしても良い。
【0038】
さて、コネクタの切離しにより、移動カバー23、ワイヤハーネスおよびコネクタは、固定カバー21から完全に切離すことができる。つまり、図9および図10に示すように、ワイヤハーネスおよび移動カバーの部分は、本体1と完全に切離された状態になる。
【0039】
次に、稼動中であったインクジェット記録装置(第1インクジェット記録装置)を予備機であるインクジェット記録装置(第2インクジェット記録装置)に交換する場合について説明する。まず、第1インクジェット記録装置から移動カバー23を取外す。次に、本体内の電気機器のコネクト部品からワイヤハーネス側のコネクト部品を全て引抜く。これにより移動カバー23は、本体側と切離される。この状態は、図9図10に示すような状態である。
【0040】
次に、第1インクジェット記録装置を生産ラインから撤去し、第2インクジェット記録装置を生産ラインの所定位置(第1インクジェット記録装置が設置されていた位置)に設置する。続いて、第2インクジェット記録装置の固定カバー21の凹部21Aに、移動カバー23の凸部23Aを差込み、移動カバー23を予備機の固定カバーに保持する。その後、この第2インクジェット記録装置の電気機器の端部のコネクタ(接続端子)に、ワイヤハーネスの端部に設けたコネクタを挿入する(差し込む)。すなわち、ワイヤハーネス端部に設けた各コネクタ62,45,63を、本体側の対応するコネクタ61,44,63に挿入する。これにより、各ワイヤハーネスと入出力基板37との電気的な接続は完了する。その後、移動カバー23を、ネジ24により第2インクジェット記録装置の固定カバー21に取付ける。これにより、第2インクジェット記録装置への交換作業は終了する。
【0041】
以上説明したように、本発明の実施例によれば、本体と外部機器との間の接続部における防水・防塵性能を確保するとともに、外部機器と本体内の電気機器との間の接続および切離し作業(着脱作業)を簡単にかつ迅速に行うことができる。
【0042】
なお、本発明は、上述した実施例に限らず、本発明の技術思想や趣旨から逸脱しない範囲内において、その構成を変更した変形例を含む。また、上述した実施例は本発明の理解を容易にするために詳細に記載したものであり、本発明は説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…本体、2…印字ヘッド、3…導管、4…操作表示部、5…印字センサ、6…ワイヤハーネス、6A…電線、7…エンコーダ、8…ワイヤハーネス、8A…電線、9…カメラ、10…ワイヤハーネス、10A…電線、12…入出力接続ボックス、13…ワイヤハーネス、13A…電線、14…ワイヤハーネス、14A…電線、18…コンベア、19A…印字対象物、19B…印字対象物、21…固定カバー、21A…凹部、21B…開口部、21C…周辺カバー部、22…ベース、22A…穴部、23…移動カバー、23A…凸部、24…ネジ、25…ケーブルグランド、25A…コネクタ本体、25B…キャップ、25C…ゴムブッシング、25D…ナット、26…背面、27…ワッシャ、31…インク容器、32…流路ボード、33…ポンプ、34…電磁弁、35…制御基板、36…電源、37…入出力基板、41…ネジ、42…ネジ、43…収容空間、44…コネクタ、45…コネクタ、47…放熱空間、51…ガスケット、52…ガスケット、53…ガスケット、61…コネクタ、62…コネクタ、63…コネクタ、64…コネクタ、600…インクジェット記録装置
図1
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図7
図8
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図10