(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】静電センサ、制御装置、およびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20231214BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20231214BHJP
G06F 3/0354 20130101ALI20231214BHJP
【FI】
G06F3/041 500
G06F3/044 120
G06F3/0354 450
(21)【出願番号】P 2020098572
(22)【出願日】2020-06-05
【審査請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 貴夫
(72)【発明者】
【氏名】土屋 勝洋
【審査官】田川 泰宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-106162(JP,A)
【文献】特開2015-090633(JP,A)
【文献】特開2013-025503(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0021274(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
G06F 3/0354
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
隣接する第一検出領域と第二検出領域を有する被操作体と当該
第一検出領域と当該第二検出領域の各々に対応付けられた領域を有する電極との間の静電容量を検出する検出装置と、
前記静電容量が第一閾値を上回るかに基づいて、前記
第一検出領域と前記第二検出領域の各々に対して操作がなされたかを判断する制御装置と、
を備えており、
前記制御装置は、前記
第一検出領域
と前記第二検出領域の一方に
対して操作がなされたと判断された場合、前記第一閾値よりも高い第二閾値に基づいて、
前記第一検出領域と前記第二検出領域
の他方に対して操作がなされたかを判断する、
静電センサ。
【請求項2】
前記制御装置は、前記第一閾値を上回った前記静電容量の変化に
追随するように前記第二閾値を変化させる、
請求項1に記載の静電センサ。
【請求項3】
移動体に搭載されるように構成されている、
請求項1または2に記載の静電センサ。
【請求項4】
隣接する第一検出領域と第二検出領域を有する被操作体を備えた静電センサの動作を制御する制御装置であって、
前記被操作体と前記
第一検出領域と前記第二検出領域の各々に対応付けられた領域を有する電極との間の静電容量に対応する検出情報を受け付ける受付部と、
前記検出情報が示す前記静電容量が第一閾値を上回るかに基づいて、前記
第一検出領域と前記第二検出領域の各々に対して操作がなされたかを判断する処理部と、
を備えており、
前記処理部は、前記
第一検出領域
と前記第二検出領域の一方に
対して操作がなされたと判断された場合、前記第一閾値よりも高い第二閾値に基づいて、
前記第一検出領域と前記第二検出領域
の他方に対して操作がなされたかを判断する、
制御装置。
【請求項5】
隣接する第一検出領域と第二検出領域を有する被操作体を備えた静電センサの動作を制御する制御装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記制御装置に
前記被操作体と前記
第一検出領域と前記第二検出領域の各々に対応付けられた領域を有する電極との間の静電容量に対応する検出情報を受け付けさせ、
前記検出情報が示す前記静電容量が第一閾値を上回るかに基づいて、前記
第一検出領域と前記第二検出領域の各々に対して操作がなされたかを判断させ、
前記
第一検出領域
と前記第二検出領域の一方に
対して操作がなされたと判断された場合、前記第一閾値よりも高い第二閾値に基づいて、
前記第一検出領域と前記第二検出領域
の他方に対して操作がなされたかを判断させる、
コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の検出領域を有する被操作体を備えた静電センサに関連する。本発明は、当該静電センサの動作を制御する制御装置、および当該制御装置により実行可能なコンピュータプログラムにも関連する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、静電センサを開示している。当該静電センサにおいては、電極により生成される電界内に位置する被操作体にユーザの指などが近づくことによって疑似的なコンデンサが形成され、電極と被操作体の間の静電容量が増加する。この静電容量の増加が検出されることにより、ユーザによる被操作体への操作がなされたかが判別される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、複数の検出領域を有する被操作体を備えた静電センサの操作性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための一態様は、静電センサであって、
複数の検出領域を有する被操作体と当該複数の検出領域の各々に対応付けられた領域を有する電極との間の静電容量を検出する検出装置と、
前記静電容量が第一閾値を上回るかに基づいて、前記複数の検出領域の各々に対して操作がなされたかを判断する制御装置と、
を備えており、
前記制御装置は、前記複数の検出領域の一つについて前記静電容量が前記第一閾値を上回った場合、前記第一閾値よりも高い第二閾値に基づいて、他の検出領域に対して操作がなされたかを判断する。
【0006】
上記の目的を達成するための一態様は、複数の検出領域を有する被操作体を備えた静電センサの動作を制御する制御装置であって、
前記被操作体と前記複数の検出領域の各々に対応付けられた領域を有する電極との間の静電容量に対応する検出情報を受け付ける受付部と、
前記検出情報が示す前記静電容量が第一閾値を上回るかに基づいて、前記複数の検出領域の各々に対して操作がなされたかを判断する処理部と、
を備えており、
前記処理部は、前記複数の検出領域の一つについて前記静電容量が前記第一閾値を上回った場合、前記第一閾値よりも高い第二閾値に基づいて、他の検出領域に対して操作がなされたかを判断する。
【0007】
上記の目的を達成するための一態様は、複数の検出領域を有する被操作体を備えた静電センサの動作を制御する制御装置の処理部により実行可能なコンピュータプログラムであって、
実行されることにより、前記制御装置に
前記被操作体と前記複数の検出領域の各々に対応付けられた領域を有する電極との間の静電容量に対応する検出情報を受け付けさせ、
前記検出情報が示す前記静電容量が第一閾値を上回るかに基づいて、前記複数の検出領域の各々に対して操作がなされたかを判断させ、
前記複数の検出領域の一つについて前記静電容量が前記第一閾値を上回った場合、前記第一閾値よりも高い第二閾値に基づいて、他の検出領域に対して操作がなされたかを判断させる。
【0008】
上記のような構成によれば、被操作体に設けられた複数の検出領域の一つについて検出された静電容量が第一閾値を上回ることによって当該検出領域に対して操作がなされたと判断されると、その他の検出領域に対して操作がなされたかの判断が第一閾値よりも高い第二閾値に基づくので、操作がなされたと判断されにくくなる。これにより、ある検出領域に対して操作がなされているときに意図せずユーザの身体の一部が他の検出領域に接触または接近した場合、当該接触または接近が当該他の検出領域に対する操作として検出される事態の発生を抑制できる。したがって、複数の検出領域を有する被操作体を備えた静電センサの操作性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態に係る静電センサの機能構成を例示している。
【
図2】
図1の静電センサが搭載される車両を例示している。
【
図3】
図1の制御装置により実行される処理の流れの一例を示している。
【
図4】
図1の静電センサの動作の一例を示している。
【
図5】
図1の静電センサの動作の別例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0010】
添付の図面を参照しつつ、実施形態の例について以下詳細に説明する。
図1は、一実施形態に係る静電センサ10の機能構成を例示している。
【0011】
図2に例示されるように、静電センサ10は、車両20に搭載されるように構成されている。例えば、静電センサ10は、車両20の車室内におけるステアリングホイール21やセンタクラスタ22に設置されうる。静電センサ10は、車両20の乗員による操作を受け付け、当該操作に基づいて車両20に搭載されている被制御装置を遠隔操作するように構成されている。被制御装置の例としては、空調装置、照明装置、映像音響設備、パワーウインドウ装置、シート装置などが挙げられる。車両20は、移動体の一例である。
【0012】
図1に例示されるように、静電センサ10は、被操作体11を備えている。被操作体11は、車両20の乗員の指30による操作を受け付けるように構成されている。
【0013】
被操作体11は、その表面に第一検出領域111と第二検出領域112を有している。第一検出領域111と第二検出領域112の各々は、被制御装置40における特定の機能を有効にするための指30による操作を受け付け可能な領域である。これらの領域は、当該表面に溝や段差が形成されることによって構造的に区画されるのではなく、当該表面に色が異なる部分、マーク、操作に影響の小さい凹凸などの少なくとも一つが便宜的に施されることによって、各領域の位置を乗員に認知させている。本例においては、第一検出領域111と第二検出領域112は、隣接している。
【0014】
静電センサ10は、第一電極121と第二電極122を備えている。第一電極121は、被操作体11の第一検出領域111に対応付けられた領域を有している。第二電極122は、被操作体11の第二検出領域112に対応付けられた領域を有している。
【0015】
静電センサ10は、検出装置13を備えている。検出装置13は、被操作体11と第一電極121との間の静電容量を検出するように構成されている。検出装置13は、被操作体11と第二電極122との間の静電容量を検出するように構成されている。
【0016】
具体的には、検出装置13は、充放電回路を備えている。充放電回路は、充電動作と放電動作を行ないうる。充電動作時の充放電回路は、不図示の電源から供給される電流を第一電極121と第二電極122へ供給する。放電動作時の充放電回路は、各電極から電流を放出させる。各電極に供給された電流により、被操作体11の周囲に電界が発生する。指30がこの電界に近づくと、特定の電極との間に疑似的なコンデンサが形成される。これにより、当該特定の電極と被操作体11の間の静電容量が増加する。静電容量が増加すると、放電動作時に当該特定の電極から放出される電流が増加する。
【0017】
すなわち、検出装置13は、被操作体11と各電極の間の静電容量を検出することにより、被操作体11におけるいずれの箇所に指30が接近または接触したかを検出できる。検出装置13は、被操作体11におけるいずれの箇所に指30が接近または接触したかを示す検出情報Sを出力するように構成されている。検出情報Sは、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。
【0018】
静電センサ10は、制御装置14を備えている。制御装置14は、受付部141、処理部142、および出力部143を備えている。
【0019】
受付部141は、検出装置13から出力された検出情報Sを受け付けるインターフェースとして構成されている。検出情報Sがアナログデータの形態である場合、受付部141は、A/Dコンバータを含む適宜の変換回路を含むように構成される。
【0020】
前述のように、検出情報Sは、被操作体11におけるいずれの箇所に指30が接近または接触したかを示しうる。処理部142は、検出情報Sに基づいて、被操作体11における第一検出領域111または第二検出領域112に指30が接触または接近したことを判断するように構成されている。
【0021】
出力部143は、被制御装置40の動作を制御する制御情報Cを出力するインターフェースとして構成されている。処理部142は、指30の接触または接近が検出された被操作体11上の位置に基づいて、出力部143から制御情報Cを出力するように構成されている。制御情報Cは、アナログデータの形態であってもよいし、デジタルデータの形態であってもよい。制御情報Cがアナログデータの形態である場合、出力部143は、D/Aコンバータを含む適宜の変換回路を含むように構成される。
【0022】
例えば、検出情報Sに基づいて第一検出領域111に指30が接触または接近したことが検出されると、処理部142は、被制御装置40の一機能を有効にする制御情報Cを出力部143から出力する。検出情報Sに基づいて第二検出領域112に指30が接触または接近したことが検出されると、処理部142は、被制御装置40の別機能または別の被制御装置40の一機能を有効にする制御情報Cを出力部143から出力する。
【0023】
図3を参照しつつ、制御装置14の処理部142によって実行されるより具体的な処理の流れについて説明する。
【0024】
処理部142は、検出装置13により検出された被操作体11との間の静電容量が第一閾値Th1を上回る電極に対応付けられた検出領域があるかを判断する(STEP1)。該当する検出領域が見つかるまで当該判断が繰り返される(STEP1においてNO)。
【0025】
被操作体11との間の静電容量が第一閾値Th1を上回る電極に対応付けられた検出領域があると判断されると(STEP1においてYES)、処理部142は、当該検出領域に指30による操作がなされたと判断する(STEP2)。前述の通り、処理部142は、当該操作に対応付けられた制御情報Cを、出力部143から被制御装置40へ出力する。
【0026】
処理部142は、第一閾値Th1を第二閾値Th2に変更する(STEP3)。第一閾値Th1は、第二閾値Th2よりも高い。第一閾値Th1と第二閾値Th2の関係は、適宜に定められうる。例えば、第一閾値Th1に所定の値を加えた値あるいは乗じた値が、第二閾値Th2とされうる。STEP3の処理は、STEP2の処理と同時に行なわれてもよいし、STEP2の処理に先立って行われてもよい。
【0027】
続いて、処理部142は、検出装置13により検出された被操作体11との間の静電容量が第二閾値Th2を上回る電極に対応付けられた他の検出領域があるかを判断する(STEP4)。
【0028】
被操作体11との間の静電容量が第二閾値Th2を上回る電極に対応付けられた他の検出領域があると判断されると(STEP4においてYES)、処理部142は、当該他の検出領域に指30による操作がなされたと判断する(STEP5)。前述の通り、処理部142は、当該操作に対応付けられた制御情報Cを、出力部143から被制御装置40へ出力する。
【0029】
続いて、処理部142は、検出装置13により検出された被操作体11との間の静電容量が第一閾値Th1を上回る電極に対応付けられた検出領域があるかを判断する(STEP6)。
【0030】
被操作体11との間の静電容量が第一閾値Th1を上回る電極に対応付けられた検出領域があると判断されると(STEP6においてYES)、処理部142は、被操作体11に対して指30による何らかの操作が継続中であると判断する。処理部142は、処理をSTEP4に戻す。
【0031】
被操作体11との間の静電容量が第一閾値Th1を上回る電極に対応付けられた検出領域がないと判断されると(STEP6においてNO)、処理部142は、被操作体11に対する指30による操作が終了したと判断する。処理部142は、静電容量に係る閾値を第一閾値Th1に変更し(STEP7)、処理をSTEP1へ戻す。
【0032】
被操作体11との間の静電容量が第二閾値Th2を上回る電極に対応付けられた他の検出領域がないと判断されると(STEP4においてNO)、処理部142は、処理をSTEP6へ進める。
【0033】
図4は、上記のように構成された静電センサ10の動作の一例を示している。実線は、検出装置13により検出された被操作体11と第一電極121の間の静電容量を表している。以降の説明においては、単に「第一検出領域111における静電容量」と称する。破線は、検出装置13により検出された被操作体11と第二電極122の間の静電容量を表している。以降の説明においては、単に「第二検出領域112における静電容量」と称する。一点鎖線は、制御装置14により設定される静電容量の閾値を表している。初期状態において、静電容量は第一閾値Th1に設定されている。
【0034】
初期状態において、第一検出領域111における静電容量と第二検出領域112における静電容量は、ともに第一閾値Th1を下回っている(
図3のSTEP1においてNO)。第一検出領域111における静電容量は、時点t1において上昇を開始し、時点t2において第一閾値Th1を上回っている(
図3のSTEP1においてYES)。したがって、処理部142は、第一検出領域111に対して指30による操作がなされたと判断し(
図3のSTEP2)、静電容量の閾値を第一閾値Th1よりも高い第二閾値Th2に変更する(
図3のSTEP3)。
【0035】
その後、第二検出領域112における静電容量は、時点t3において上昇を開始し、時点t4において第一閾値Th1を上回っている。このような現象は、第一検出領域111を操作している指30が意図せず隣接する第二検出領域112に接触または接近することによって生じうる。しかしながら、第二検出領域112における静電容量は、変更後の第二閾値Th2未満であるので、処理部142は、第二検出領域112に対して指30による操作がなされたと判断しない(
図3のSTEP4においてNO)。
【0036】
他方、時点t4の第一検出領域111における静電容量は、第一閾値Th1よりも高い第二閾値Th2を上回っているので(STEP6においてYES)、処理部142は、処理をSTEP4に戻す。
【0037】
その後、第一検出領域111における静電容量は下降を開始し、時点t5において第一閾値Th1を下回っている。処理部142は、第一検出領域111に対する操作が終了したと判断する。他方、第二検出領域112における静電容量が第一閾値Th1を上回るので(
図3のSTEP6においてYES)、処理部142は、処理をSTEP4に戻す。なお、第一検出領域111における静電容量が第一閾値Th1を下回っても、第二検出領域における静電容量が第一閾値Th1を上回る場合(STEP6においてYES)、処理部142は、第一検出領域111に対する操作が終了したとは判断しない構成も採用されうる。
【0038】
その後、時点t6において第二検出領域112における静電容量が第二閾値Th2を上回っている(
図3のSTEP4においてYES)。したがって、処理部142は、第二検出領域112に対して意図的な操作がなされたと判断する(
図3のSTEP5)。
【0039】
その後、第二検出領域112における静電容量は下降を開始し、時点t7において第一閾値Th1を下回っている(
図3のSTEP6においてNO)。処理部142は、被操作体11に対する操作が終了したと判断し、静電容量の閾値を第一閾値Th1に変更する(
図3のSTEP7)。
【0040】
上記のような構成によれば、被操作体11に設けられた複数の検出領域の一つについて検出された静電容量が第一閾値Th1を上回ることによって当該検出領域に対して操作がなされたと判断されると、その他の検出領域に対して操作がなされたかの判断が第一閾値Th1よりも高い第二閾値Th2に基づくので、操作がなされたと判断されにくくなる。これにより、ある検出領域に対して操作がなされているときに意図せず乗員の身体の一部が他の検出領域に接触または接近した場合、当該接触または接近が当該他の検出領域に対する操作として検出される事態の発生を抑制できる。したがって、複数の検出領域を有する被操作体を備えた静電センサの操作性を高めることができる。
【0041】
他方、他の検出領域に対する操作の受け付けが禁止されるのではなく、他の検出領域について検出された静電容量が第二閾値Th2を上回れば、他の検出領域に対して操作がなされたと判断される。すなわち、意図せぬ接触または接近と、意図的な接触または接近とを明確に区別できる。したがって、第一閾値Th1よりも高い第二閾値Th2の値は、意図せぬ接触または接近によっては上回らず、意図的な接触または接近によって上回る程度の値として設定されることが好ましい。
【0042】
図5は、静電センサ10の動作の別例を示している。本例においては、制御装置14の処理部142は、静電容量に係る閾値を、初めに第一閾値Th1を上回った検出領域における静電容量に応じて変化させるように構成されている。具体的には、当該静電容量に1未満の値(例えば0.9)を乗じた値が、第二閾値Th2とされる。1未満の値は、上記の例と同様に、意図せぬ接触または接近によっては上回らず、意図的な接触または接近によって上回る程度の値として設定されうる。
【0043】
図5に例示される第一検出領域111における静電容量の経時変化と第二検出領域112における静電容量の経時変化は、
図4に例示されたものと同一である。しかしながら、
図4における時点t6よりも早い時点t6’において、第二検出領域112における静電容量が第二閾値Th2を上回り、第二検出領域112に対する操作がなされたと判断される。このような構成によれば、初めに操作を受け付けた検出領域の静電容量に追随して第二閾値Th2が変化するので、当該検出領域に対する操作の終了がより早期に第二閾値Th2に反映され、他の検出領域に対して次の操作がなされたとの判断が可能となる時期を早めることができる。
【0044】
これまで説明した各機能を有する処理部142は、汎用メモリと協働して動作する汎用マイクロプロセッサにより実現されうる。汎用マイクロプロセッサとしては、CPU、MPU、GPUが例示されうる。汎用メモリとしては、ROMやRAMが例示されうる。この場合、ROMには、上述した処理を実行するコンピュータプログラムが記憶されうる。ROMは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。汎用マイクロプロセッサは、ROM上に記憶されたプログラムの少なくとも一部を指定してRAM上に展開し、RAMと協働して上述した処理を実行する。上記のコンピュータプログラムは、汎用メモリにプリインストールされてもよいし、通信ネットワークを介して外部サーバからダウンロードされて汎用メモリにインストールされてもよい。この場合、外部サーバは、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。
【0045】
処理部142は、マイクロコントローラ、ASIC、FPGAなどの上記のコンピュータプログラムを実行可能な専用集積回路によって実現されてもよい。この場合、当該専用集積回路に含まれる記憶素子に上記のコンピュータプログラムがプリインストールされる。当該記憶素子は、コンピュータプログラムを記憶している記憶媒体の一例である。処理部142は、汎用マイクロプロセッサと専用集積回路の組合せによっても実現されうる。
【0046】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【0047】
上記の実施形態においては、被操作体11は、二つの検出領域を有している。しかしながら、検出領域の数は三つ以上でもよい。各検出領域の被操作体11における位置、形状、大きさ、受け付け可能な操作の種別は、動作を制御される被制御装置40の機能に応じて適宜に定められうる。
【0048】
上記の実施形態においては、検出された静電容量の絶対値が第一閾値Th1との比較に供され、被操作体11の検出領域に対して操作がなされたかが判断されている。しかしながら、被操作体11の状態に応じて常時変化しうる基準静電容量からの変化量に基づいて検出領域に対する操作がなされたかが判断されてもよい。この場合、当該変化量について規定された第一閾値Th1が使用される。
【0049】
上記の実施形態においては、被操作体11と乗員の指30の間の静電容量が検出されている。被操作体11に対する操作の入力に伴う静電容量の変化が検出できるのであれば、操作の入力は他の身体部位において行われてもよいし、身体部位と被操作体11の間に衣料品や道具が介在してもよい。
【0050】
静電センサ10は、車両20以外の移動体にも搭載されうる。移動体の例としては、鉄道、航空機、船舶などが挙げられる。当該移動体は、運転者を必要としなくてもよい。静電センサ10は、ユーザによる携帯が可能なモバイル装置に搭載されてもよい。モバイル装置もまた、移動体の一例である。このような移動体に静電センサ10が設けられる場合、移動体の動きや振動に起因して、ユーザの身体の一部が意図せぬ検出領域に接触または接近しやすい。したがって、上記のような構成を有する静電センサ10の有用性がさらに高まる。
【0051】
静電センサ10は、移動体に搭載されることを要しない。被操作体11への操作を通じて被制御装置40の動作の制御が可能であれば、据置型の機器、住宅や施設などの建造物など、任意の用途への適用が可能である。
【符号の説明】
【0052】
10:静電センサ、11:被操作体、111:第一検出領域、112:第二検出領域、121:第一電極、122:第二電極、13:検出装置、14:制御装置、141:受付部、142:処理部、20:車両、40:被制御装置、S:検出情報、Th1:第一閾値、Th2:第二閾値