(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】熱交換システム制御方法及び熱交換システム
(51)【国際特許分類】
F01N 5/02 20060101AFI20231214BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20231214BHJP
F01N 13/00 20100101ALI20231214BHJP
F01N 13/08 20100101ALI20231214BHJP
F02M 26/23 20160101ALI20231214BHJP
F02M 26/06 20160101ALI20231214BHJP
【FI】
F01N5/02 G
F01N3/24 L
F01N13/00 A
F01N13/08 B
F02M26/23
F02M26/06 301
F02M26/06 311
F02M26/06 321
(21)【出願番号】P 2020105513
(22)【出願日】2020-06-18
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 駿祐
(72)【発明者】
【氏名】永井 宏幸
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-154717(JP,A)
【文献】特開2009-138615(JP,A)
【文献】特開平06-173667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
F01N 3/24
F01N 13/00
F01N 13/08
F02M 26/23
F02M 26/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の上流に設けられ、排気ガスと前記エンジンを冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記排気通路に接続され、前記熱交換器をバイパスするバイパス通路と、
前記熱交換器を通過する排気ガスの流量及び前記バイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構と、
を備える熱交換システムを制御する熱交換システム制御方法において、
前記触媒の温度をライトオフ温度以上に保ちつつ、前記バルブ機構の開度を制御
し、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度以上であって前記熱交換器による熱交換が行われているときに、前記冷却液の温度が上昇した場合には、前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすように前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項2】
エンジンの排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の上流に設けられ、排気ガスと前記エンジンを冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記排気通路に接続され、前記熱交換器をバイパスするバイパス通路と、
前記熱交換器を通過する排気ガスの流量及び前記バイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構と、
を備える熱交換システムを制御する熱交換システム制御方法において、
前記触媒の温度をライトオフ温度以上に保ちつつ、前記バルブ機構の開度を制御し、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度以上であって前記熱交換器による熱交換が行われているときに、前記エンジンからの排気ガスの流量が増加した場合には、前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすように前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項3】
エンジンの排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の上流に設けられ、排気ガスと前記エンジンを冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記排気通路に接続され、前記熱交換器をバイパスするバイパス通路と、
前記熱交換器を通過する排気ガスの流量及び前記バイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構と、
を備える熱交換システムを制御する熱交換システム制御方法において、
前記触媒の温度をライトオフ温度以上に保ちつつ、前記バルブ機構の開度を制御し、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度以上であって前記熱交換器による熱交換が行われているときに、前記冷却液の流量が減少した場合には、前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすように前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項4】
請求項1
から3のいずれか1項に記載の熱交換システム制御方法において、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度未満の場合には、排気ガスが前記熱交換器を通過しないよう前記バルブ機構を制御して前記熱交換器による熱交換が行われないようにすることを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項5】
請求項1
から4のいずれか1項に記載の熱交換システム制御方法において、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度以上であって前記熱交換器による熱交換が行われているときに、前記熱交換器の入口側における排気ガスの温度が上昇した場合には、前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすように前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項6】
請求項1から
5のいずれか1つに記載の熱交換システム制御方法において、
前記バルブ機構は、
前記バイパス通路に設けられ、前記バイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御する第1バルブと、
前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を制御する第2バルブと、を備えることを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれか1つに記載の熱交換システム制御方法において、
前記熱交換器は、EGRクーラとしても機能することを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項8】
請求項1から
7のいずれか1つに記載の熱交換システム制御方法において、
前記熱交換システムは、
前記触媒の温度を検出する第1温度センサと、
前記熱交換器の入口側の温度を検出する第2温度センサと、をさらに備え、
検出した前記熱交換器の入口側の温度と前記触媒の温度とに基づいて、前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の熱交換システム制御方法において、
前記熱交換器の入口側の温度と前記触媒の温度を、前記エンジンの回転速度及び負荷から推定し、
推定した前記熱交換器の入口側の温度と前記触媒の温度とに基づいて、前記バルブ機構の開度を制御することを特徴とする熱交換システム制御方法。
【請求項10】
エンジンの排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の上流に設けられ、排気ガスと前記エンジンを冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記排気通路に接続され、前記熱交換器をバイパスするバイパス通路と、
前記熱交換器を通過する排気ガスの流量及び前記バイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構と、
前記バルブ機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記触媒の温度をライトオフ温度以上に保ちつつ、前記バルブ機構を制御
し、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度以上であって前記熱交換器による熱交換が行われているときに、前記冷却液の温度が上昇した場合には、前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすように前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム。
【請求項11】
エンジンの排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の上流に設けられ、排気ガスと前記エンジンを冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記排気通路に接続され、前記熱交換器をバイパスするバイパス通路と、
前記熱交換器を通過する排気ガスの流量及び前記バイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構と、
前記バルブ機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記触媒の温度をライトオフ温度以上に保ちつつ、前記バルブ機構を制御し、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度以上であって前記熱交換器による熱交換が行われているときに、前記エンジンからの排気ガスの流量が増加した場合には、前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすように前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム。
【請求項12】
エンジンの排気通路と、
前記排気通路に設けられ、前記エンジンからの排気ガスを浄化する触媒と、
前記排気通路における前記触媒の上流に設けられ、排気ガスと前記エンジンを冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、
前記排気通路に接続され、前記熱交換器をバイパスするバイパス通路と、
前記熱交換器を通過する排気ガスの流量及び前記バイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構と、
前記バルブ機構を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記触媒の温度をライトオフ温度以上に保ちつつ、前記バルブ機構を制御し、
前記触媒の温度が前記ライトオフ温度以上であって前記熱交換器による熱交換が行われているときに、前記冷却液の流量が減少した場合には、前記熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすように前記バルブ機構を制御することを特徴とする熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関に用いる熱交換システム及び熱交換システムの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、触媒の上流にエンジンからの排気ガスの排熱を回収することができる熱交換器(冷却装置)を備えた熱交換システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、触媒を暖機したのち、熱交換器によって排熱回収を行うことが記載されている。しかしながら、特許文献1には、熱交換器によって排熱回収を行っているときに、触媒の温度が低下してしまった場合の制御について記載されていない。このため、特許文献1に記載された熱交換システムでは、排熱回収時に排気要求を確実に満たすことができなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、熱交換システムにおいて、排熱回収中に、触媒の浄化性能を低下させることなく排気要求を確実に満たすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、熱交換システム制御方法は、エンジンの排気通路と、排気通路に設けられ、エンジンからの排気ガスを浄化する触媒と、排気通路における触媒の上流に設けられ、排気ガスとエンジンを冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器と、排気通路に接続され、熱交換器をバイパスするバイパス通路と、熱交換器を通過する排気ガスの流量及びバイパス通路を通過する排気ガスの流量を制御するバルブと、を備える熱交換システムを制御する。熱交換システム制御方法は、触媒の温度をライトオフ温度以上に保ちつつ、バルブの開度を制御し、触媒の温度がライトオフ温度以上であって熱交換器による熱交換が行われているときに、冷却液の温度が上昇した場合には、熱交換器を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
この態様では、排熱回収中に、触媒の浄化性能を低下させることなく排気要求を確実に満たすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換システムを示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る熱交換システムの変形例を示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る熱交換システム制御方法における制御の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る熱交換システム制御方法における制御の流れを示すタイムチャートである。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る熱交換システム制御方法における制御の流れを示すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る熱交換システム制御方法における制御の流れを示すタイムチャートである。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る熱交換システム制御方法における制御の流れを示すタイムチャートである。
【
図8】
図8は、本実施形態の熱交換システムをEGRシステムを備えたエンジンに適用した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係る熱交換システム100を示す概略図である。熱交換システム100は、エンジン10の排気通路11と、排気通路11に設けられた触媒12と、排気通路11における触媒12の上流に設けられた熱交換器13と、排気通路11に接続され、熱交換器13をバイパスするバイパス通路14と、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構としてのバルブ20と、を備える。
【0011】
本実施形態におけるエンジン10は、例えば、シリーズハイブリッド車両の駆動源として用いられる。エンジン10で発生する出力は、図示しない発電機を駆動するために使用され、発電機で発電した電力は図示しないバッテリに充電される。なお、これに限らず、エンジン10は、駆動用動力源として用いられるものでもよい。また、エンジン10は、ガソリンエンジンに限らず、ディーゼルエンジンであってもよい。
【0012】
触媒12は、エンジン10からの排気ガスを浄化する。触媒12は、NOx吸蔵還元触媒、酸化触媒、及び三元触媒のいずれか、又はこれらの組み合わせによって構成される。本実施形態では、排気通路11におけるエンジン10の近くにサブ触媒16が設けられているが、サブ触媒16は必ずしも設けなくてもよい。
【0013】
熱交換器13は、排気通路11におけるサブ触媒16の下流側であって触媒12の上流側に設けられる。熱交換器13は、排気ガスが通過する排気ガス流路(図示せず)と、エンジン10を冷却する冷却液が通過する冷却流路(図示せず)とが隣り合う構成となっており、排気ガス流路を流れる排気ガスと冷却流路の冷却液との間で熱交換を行う。なお、冷却液とは、エンジン10を冷却する液状の冷媒(クーラント液、水など)を意味する。冷却通路とエンジン内部の通路とは、接続通路10a,10bによって接続される。冷却液は、これらの通路を循環するように流れる。
【0014】
バイパス通路14は、一端(上流端)が排気通路11におけるサブ触媒16の下流であって熱交換器13の上流から分岐するように接続され、他端(下流端)が排気通路11における熱交換器13の下流であって触媒12の上流において排気通路11に合流するように接続される。これにより、バイパス通路14は、熱交換器13をバイパスする流路を形成する。なお、以下では、排気通路11におけるバイパス通路14と平行な流路を形成する部分を「熱交換通路15」という。
【0015】
バイパス通路14の下流端と排気通路11との合流部分には、熱交換器13を通過する排気ガスの流量及びバイパス通路14を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ20が設けられる。バルブ20は、例えば、開度を変化させることで、熱交換通路15及びバイパス通路14の開口面積を同時に調整する三方弁によって構成される。以下では、バルブ20が熱交換通路15を閉じる方向を閉方向と言い、バルブ20が熱交換通路15を開く方向を開方向と言う。なお、バルブ20が開方向に移動すると、バイパス通路14は閉じられる。また、バルブ20が熱交換通路15を閉じた状態をバルブ20の開度が0(ゼロ)度とし、バルブ20がバイパス通路14を閉じた状態をバルブ20の開度が90度とする。
【0016】
本実施形態では、バルブ機構として1つのバルブ20を例に説明するが、バルブ機構は、
図2に示すように、バイパス通路14を開閉する第1バルブ20aと、熱交換通路15を開閉する第2バルブ20bと、を備えた構成としてもよい。この構成では、一方のバルブの開度を増大させた場合に、他方のバルブの開度を減少させることで、バルブ20と同様の機能を果たすことができる。
【0017】
熱交換システム100は、バルブ20の作動を制御する制御部としてのコントローラ30をさらに備える。本実施形態のコントローラ30は、バルブ20に加え、エンジン10の吸気量を制御するスロットルバルブ17等、エンジン10の作動も制御するように構成される。熱交換システム100の制御を行うコントローラとエンジン10の制御を行うコントローラとを別々に設けてもよい。
【0018】
コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出インターフェース、これらを接続するバス等を含んだマイクロコンピュータで構成される。コントローラ30を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。コントローラ30は、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することで熱交換システム100の制御を行う。
【0019】
熱交換システム100は、触媒12の温度を検出する第1温度センサ21と、後述する排熱回収部Eの入口における排気ガス温度を検出する第2温度センサ22と、熱交換器13の入口側における冷却液の温度を検出する第3温度センサ23と、をさらに備える。第2温度センサ22は、排気通路11におけるサブ触媒16の下流であってバイパス通路14と熱交換通路15との分岐部より上流に設けられる。第3温度センサ23は、接続通路10aにおける熱交換器13との接続部近傍に設けられる。これらの温度センサ21,22,23によって検出された温度は、コントローラ30に入力される。
【0020】
熱交換システム100は、熱交換器13において排気ガスと冷却液との熱交換を行なうことにより、排気ガスの熱(排熱)を冷却液に回収する。排熱を回収する目的は、例えば、エンジン10の暖機を行うため冷却液の温度上昇を促進させることである。なお、以下では、熱交換システム100における排熱回収にかかる構成を排熱回収部Eという。排熱回収部Eは、熱交換器13、バイパス通路14、熱交換通路15、及びバルブ20を含む。排熱回収部Eの入口は、排気通路11におけるサブ触媒16の下流であってバイパス通路14と熱交換通路15の分岐部より上流とし、排熱回収部Eの出口は、バイパス通路14と熱交換通路15の合流部より下流であって、触媒12の上流とする。
【0021】
次に、
図3に示すフローチャートを参照しながら、熱交換システム100における排熱回収時のバルブ20の具体的な制御について説明する。コントローラ30は、例えば、エンジン10の暖機要求があった場合など、熱交換器13による排熱回収が要求された場合に、あらかじめ記憶されたプログラムに基づいて、
図3に示す制御を実行する。なお、以下では、排熱回収がエンジン10の暖機を目的として行われた場合を例に説明する。
【0022】
ステップS1では、触媒12の温度Tcが所定温度T1以上であるか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、第1温度センサ21によって検出された触媒12の温度が、所定温度T1以上か否かを判定する。所定温度T1は、具体的には、触媒12のライトオフ温度(触媒12の活性温度)以上の値に設定される。つまり、ステップS1では、触媒12の温度Tcがライトオフ温度に到達しているか否かを判定する。
【0023】
ステップS1において、触媒12の温度Tcが所定温度T1以上であると判定された場合には、ステップS2に進む。これに対して、触媒12の温度Tcが所定温度T1未満であると判定された場合には、ステップS12に進み、触媒12を優先的に加熱する。具体的には、ステップS12に進み、バルブ20を熱交換通路15を閉じるように制御する。熱交換通路15が閉じられた後は、再びステップS1の判定を繰り返す。
【0024】
ステップS2では、カウンタ値nを0にする。
【0025】
ステップS3では、バルブ20の開度Dの目標開度D1を演算する。ここで、目標開度D1の演算方法について説明する。
【0026】
まず、エンジン10の排気ガスから熱交換器13によって回収可能な熱量Cを、以下の式(1)により求める。
【0027】
C = Qg・c/(Tein-Tc) ・・・(1)
ここで、Qg:排熱回収部Eの入口の排気ガス流量、c:排気比熱、Tein:排熱回収部Eの入口の排気ガス温度、Tc:触媒12の温度である。排気ガス流量Qgは、エンジン10の動作点などに基づいて演算できる。
【0028】
次に、コントローラ30にあらかじめ記憶されたマップに基づいて、上記式(1)で演算された熱量Cと、予め求められた触媒12をライトオフ温度以上に維持できるバイパス通路14を流れる排気ガスの流量に基づいて、熱交換通路15に流す排気ガスの流量Qhを演算する。さらに、コントローラ30にあらかじめ記憶されたマップから、熱交換通路15に流量Qhの排気ガスを流すためのバルブ20の開度Dを演算する。コントローラ30は、このようにして演算された開度Dを目標開度D1とする。
【0029】
ステップS4では、n=n+1を演算する。具体的には、コントローラ30は、カウンタ値nに1を加えて、新たなカウンタ値nとする。
【0030】
ステップS5では、熱交換器13の入口側の冷却液温度Tw(以下では、単に「冷却液温度Tw」ともいう。)が所定温度T2より大きいか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、第3温度センサ23によって検出された熱交換器13の入口側の冷却液温度Twが、所定温度T2より大きいか否かを判定する。所定温度T2は、具体的には、エンジン10の暖機が完了したと推定できる冷却液温度に設定される。つまり、ステップS5では、エンジン10の暖機が完了したか否かを判定する。
【0031】
ステップS5において、冷却液温度Twが所定温度T2より大きいと判定された場合には、ステップS13に進む。冷却液温度Twが所定温度T2より大きい場合、つまり、暖機が完了した場合には、熱交換器13によって排熱を回収する必要がなくなる。そこで、ステップS13において、コントローラ30は、バルブ20を熱交換通路15を閉じるように制御する。これにより、熱交換器13を通過する排気ガスの流れが遮断され、熱交換器13による排熱回収が行われなくなる。これに対し、冷却液温度Twが、所定温度T2以下であると判定された場合には、ステップS6に進む。
【0032】
ステップS6では、n時における排熱回収部Eの入口の排気ガス温度Teinが、(n-1)時における排熱回収部Eの入口の排気ガス温度Teinより大きいか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、第2温度センサ22によって今回(n時)検出された排気ガス温度Teinが、前回(n-1時)検出された排気ガス温度Teinより大きいか否か、つまり、排気ガス温度Teinが上昇しているか否かを判定する。
【0033】
ステップS6において、n時における排気ガス温度Teinが、(n-1)時における排気ガス温度Teinより大きいと判定された場合には、ステップS14に進む。n時における排気ガス温度Teinが、(n-1)時における排気ガス温度Teinより大きいと判定された場合には、排気ガス温度Teinが上昇しているため、排熱回収可能な熱量が増加していることになる。また、この状態では、触媒12がライトオフ温度に到達しているため、触媒12をさらに加熱する必要がない。そこで、コントローラ30は、排気ガス温度Teinが上昇した分の熱量を、熱交換器13によって回収させるため、ステップS14において、バルブ20の開度を所定量増加させる。これにより、熱交換器13を通過する排気ガスの流量が増加し、熱交換器13による排熱回収が促進されるので、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短縮することができる。
【0034】
これに対し、n時における排気ガス温度Teinが、(n-1)時における排気ガス温度Tein以下であると判定された場合には、排気ガス温度Teinが一定あるいは下降している状態にある。このときに、バルブ20の開度を増加してしまうと、バイパス通路14を流れる排気ガス流量が低下する。この結果、触媒12をライトオフ温度に維持するための熱量を確保できなくなるおそれがある。そこで、n時における排気ガス温度Teinが、(n-1)時における排気ガス温度Tein以下であると判定された場合には、バルブ20の開度を増加せず、ステップS7に進む。
【0035】
ステップS7では、n時における熱交換器13の入口側の冷却液温度Twが、(n-1)時における熱交換器13の入口側の冷却液温度Twより大きいか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、第3温度センサ23によって今回(n時)検出された熱交換器13の入口側の冷却液温度Twが、前回(n-1時)検出された冷却液温度Twより大きいか否か、つまり、冷却液温度Twが上昇しているか否かを判定する。
【0036】
ステップS7において、n時における冷却液温度Twが、(n-1)時における冷却液温度Twより大きいと判定された場合には、ステップS14に進む。n時における冷却液温度Twが、(n-1)時における冷却液温度Twより大きいと判定された場合には、冷却液温度Twが上昇し、熱交換器13における冷却液と排気ガスとの温度差が小さくなっているため排熱回収量が低下するおそれがある。そこで、コントローラ30は、排熱回収量の低下を抑制するため、ステップS14において、バルブ20の開度を所定量増加させる。これにより、熱交換器13を通過する排気ガスの流量が増加するので、熱交換器13による排熱回収の低下を抑制できる。なお、この場合、バイパス通路14を通過する排気ガスの流量が小さくなるが、冷却液温度Twが上昇したことによって熱交換器13を通過した排気ガスの温度低下は小さくなる。このため、熱交換器13を通過した排気ガスの熱量が上昇することになり、触媒12をライトオフ温度に保持する熱量を確保することが可能となる。
【0037】
これに対し、n時における排気ガス温度Teinが、(n-1)時における冷却液温度Tw以下であると判定された場合には、冷却液温度Twが一定あるいは下降している状態にある。さらに、この状態では、排気ガス温度Teinが一定あるいは下降している状態である(ステップS6のNO判定)ので、この状態でバルブ20の開度を増加してしまうと、バイパス通路14を流れる排気ガス流量が低下するため、触媒12をライトオフ温度に維持するための熱量を確保できなくなるおそれがある。そこで、n時における排気ガス温度Teinが、(n-1)時における排気ガス温度Tein以下であると判定された場合には、バルブ20の開度を増加せず、ステップS8に進む。
【0038】
ステップS8では、n時における排気ガス流量Qgが、(n-1)時における排気ガス流量Qgより大きいか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、エンジン10の動作点(エンジン回転速度Neやエンジン10の出力トルク)などに基づいて排気ガス流量Qgを演算し、今回(n時)演算した排気ガス流量Qgが、前回(n-1時)演算した排気ガス流量Qgより大きいか否か、つまり、排気ガス流量Qgが増加しているか否かを判定する。
【0039】
ステップS8において、n時における排気ガス流量Qgが、(n-1)時における排気ガス流量Qgより大きいと判定された場合には、ステップS14に進む。n時における排気ガス流量Qgが、(n-1)時における排気ガス流量Qgより大きいと判定された場合には、排気ガス流量Qgが増加しているため、排熱回収可能な熱量が増加していることになる。また、この状態では、触媒12がライトオフ温度に到達しているため、触媒12をさらに加熱する必要がない。そこで、コントローラ30は、排気ガス流量Qgが増加した分の熱量を、熱交換器13によって回収させるため、ステップS14において、バルブ20の開度を所定量増加させる。これにより、熱交換器13を通過する排気ガスの流量が増加し、熱交換器13による排熱回収が促進されるので、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短縮することができる。
【0040】
これに対し、n時における排気ガス流量Qgが、(n-1)時における排気ガス流量Qgであると判定された場合には、排気ガス流量Qgが一定あるいは下降している状態にある。さらに、この状態では、排気ガス温度Teinが一定あるいは下降している状態であり(ステップS6のNO判定)、冷却液温度Twが一定あるいは下降している状態にある(ステップS7のNO判定)ので、この状態でバルブ20の開度を増加させてしまうと、バイパス通路14を流れる排気ガス流量が低下し、触媒12をライトオフ温度に維持するための熱量を確保できなくなるおそれがある。そこで、n時における排気ガス流量Qgが、(n-1)時における排気ガス流量Qgであると判定された場合には、バルブ20の開度を増加せず、ステップS9に進む。
【0041】
ステップS9では、n時における熱交換器13の入口側の冷却液流量Qwが、(n-1)時における熱交換器13の入口側の冷却液流量Qwより小さいか否かを判定する。具体的には、コントローラ30は、冷却液を循環させるポンプの回転速度などに基づいて冷却液流量Qwを演算し、今回(n時)演算した冷却液流量Qwが、前回(n-1時)演算した冷却液流量Qwより小さいか否か、つまり、冷却液流量Qwが減少しているか否かを判定する。
【0042】
ステップS9において、n時における冷却液流量Qwが、(n-1)時における冷却液流量Qwより小さいと判定された場合には、ステップS14に進む。n時における冷却液流量Qwが、(n-1)時における冷却液流量Qwより小さいと判定された場合には、冷却液流量Qwが減少しているため、排熱回収量が低下するおそれがある。そこで、コントローラ30は、排熱回収量の低下を抑制するため、ステップS14において、バルブ20の開度を所定量増加させる。これにより、熱交換器13を通過する排気ガスの流量が増加するので、熱交換器13による排熱回収の低下を抑制できる。なお、この場合にも、バイパス通路14を通過する排気ガスの流量が小さくなるが、冷却液流量Qwが減少したことによって熱交換器13を通過した排気ガスの温度低下は小さくなる。このため、熱交換器13を通過した排気ガスの熱量が上昇することになり、触媒12をライトオフ温度に保持する熱量を確保することが可能となる。
【0043】
これに対し、n時における冷却液流量Qwが、(n-1)時における冷却液流量Qw以上であると判定された場合には、排熱回収量が低下するおそれがない。このため、バルブ20の開度を増加せず、ステップS10に進む。
【0044】
ステップS10では、バルブ20の開度を維持する。そして、ステップS11に進む。
【0045】
ステップS10及びステップS14の処理がなされた後は、ステップS11に進む。
【0046】
ステップS11では、触媒12の温度Tcが所定温度T1以上であるか否かを判定する。具体的な方法は、ステップS1と同様であるので説明を省略する。ステップS11で触媒12の温度Tcが所定温度T1以上であると判定された場合には、ステップS4に進む。以降は、冷却液温度Twが所定温度T2より大きくなるまで、つまり、暖機が完了するまで、ステップS4からステップS11、ステップS14の制御を繰り返す。
【0047】
これに対して、ステップS11で触媒12の温度Tcが所定温度T1未満であると判定された場合には、ステップS15に進む。具体的には、ステップS15に進み、バルブ20を熱交換通路15を閉じるように制御する。これにより、熱交換器13を通過する排気ガスの流れが遮断され、触媒12が優先的に加熱される。そして、再びステップS1から判定を行う。
【0048】
このように、本実施形態では、エンジン10の暖機等の排熱回収要求があるとき、触媒12の温度Tcが所定温度T1未満である場合にはバルブ20を熱交換通路15を閉じるように制御し、触媒12を優先的に加熱する。これにより、触媒12の温度をライトオフ温度まで早く到達させることができるので、より早く排気要求を満たすことができる。
【0049】
これに加え、本実施形態では、排気ガス温度Tein、排気ガス流量Qg、冷却液温度Tw、冷却液流量Qwの変化(ステップS6からステップS9の判定)に基づいてバルブ20の開度を制御しているので、排気要求を満たしつつ排熱回収量を増やすことができる。これにより、排気要求を満たしつつ排熱回収完了までの時間(例えば、エンジン10の暖機時間)を短くすることができる。
【0050】
なお、ステップS7からステップS9の判定は、必ずしもすべて実行する必要はない。また、これらの順序を入れ替えることも可能である。
【0051】
また、ステップS14において、バルブ20の開度を一定の開度ずつ増加させてもよいし、n時と(n-1)時との差分に基づいて、開度の大きさを変化させるようにしてもよい。さらに、各測定値や外気温などのパラメータの大きさに基づいて開度の大きさを変化させるようにしてもよい。
【0052】
次に、
図4から
図7に示すタイムチャートを参照しながら、熱交換システム100における制御について具体的に説明する。
【0053】
まず、
図4を参照して、排気ガス温度Teinが排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)まで上昇を続けている場合の制御について説明する。なお、
図4に示す実施例では、排気ガスの流量Qg及び冷却液流量Qwが一定になっている。また、
図4から
図7に示す実施例では、排気ガス流量の変化として、バイパス通路14及び熱交換通路15の流量の変化を示している。排気ガスの流量Qgの流量の変化は、これらを合計したものに相当する。
【0054】
時刻t1において、エンジン10が始動すると、排熱回収部Eの入口の排気ガス温度Teinが上昇を開始する。このとき、バルブ20の開度は0(ゼロ)であるので、排気ガスは、略全量がバイパス通路14を通って触媒12に導かれる。これにより、触媒温度Tcも上昇する。また、エンジン10が始動することにより、冷却液を循環させるポンプが駆動され、冷却液流量Qwが増加する。
【0055】
触媒温度Tcが上昇し、時刻t2において所定温度T1以上になると、コントローラ30は、上述のようにしてバルブ20の目標開度D1を演算する。時刻t2では、冷却液温度Twが所定温度T2に到達していないため、コントローラ30は、開度が目標開度D1となるようにバルブ20を制御する。これにより、排気ガスが熱交換通路15に流入し、熱交換器13によって冷却液が加熱されることで、冷却液温度Twが上昇する。
【0056】
また、その後も排気ガス温度Teinが上昇を続けているため、コントローラ30は、上記ステップS6における判定に基づいて、バルブ20の開度を所定開度ずつ大きくする。
【0057】
このようにバルブ20の開度が大きくなるにつれて、熱交換通路15を通過する排気ガスの流量が増加するとともに、バイパス通路14を通過する排気ガスの流量が減少する。
【0058】
冷却液温度Twが上昇し、時刻t3において所定温度T2より大きくなると、コントローラ30は、排熱回収要求を満足した(エンジン10の暖機が完了した)と判断して、バルブ20の開度を再び0(ゼロ)にする。これにより、排気ガスは、略全量がバイパス通路14を通って触媒12に導かれるようになる。
【0059】
なお、この場合にも、触媒温度Tcが所定温度T1未満に低下すると、コントローラ30は、バルブ20を閉じるように制御し、触媒12の加熱を優先させる。
【0060】
図4に示す実施例では、排気ガス温度Teinが上昇を続けている間、熱交換通路15を通過する排気ガスの流量を増加させて、熱交換を促進させるので、本実施形態の制御を行わない場合に比べ、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短くすることができる。
【0061】
次に、
図5を参照して、排気ガス温度Teinが排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)前に一定となった場合の制御について説明する。なお、
図5に示す実施例では、排気ガスの流量Qg及び冷却液流量Qwが一定になっている。
【0062】
図5の実施例における時刻t1、時刻t2、及び時刻t3での制御は、
図4に示す実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0063】
図5の実施例においては、時刻t2後、時刻t11において排気ガス温度Teinが一定になる。このとき、排気ガス温度Teinの上昇が停止するため、この事象(ステップS6のYES判定)に起因するバルブ20の開度の増加はなくなる。しかしながら、時刻t11では、冷却液温度Twが所定温度T2に到達しておらず、上昇を続けているため、コントローラ30は、上記ステップS7における判定に基づいて、バルブ20の開度を所定開度ずつ大きくする。
【0064】
冷却液温度Twが上昇し、時刻t3において所定温度T2より大きくなると、コントローラ30は、排熱回収要求を満足した(エンジン10の暖機が完了した)と判断して、バルブ20の開度を再び0(ゼロ)にする。これにより、排気ガスは、略全量がバイパス通路14を通って触媒12に導かれるようになる。
【0065】
なお、この場合にも、触媒温度Tcが所定温度T1未満に低下すると、コントローラ30は、バルブ20を閉じるように制御し、触媒12の加熱を優先させる。
【0066】
図5に示す実施例では、
図4に示す実施例の効果に加え、冷却液温度Twが上昇を続けている間、熱交換通路15を通過する排気ガスの流量を増加させて、熱交換を促進させるので、本実施形態の制御を行わない場合に比べ、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短くすることができる。
【0067】
次に、
図6を参照して、排気ガス温度Teinが排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)前に一定になった後、排気ガス流量Qgが排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)前に増加した場合の制御について説明する。
図6に示す実施例では、冷却液流量Qwが一定である。なお、
図6に示す実施例は、説明のため
図3のステップS7による判定を行っていないものとする。
【0068】
図6の実施例における時刻t1、時刻t2、時刻t3、及び時刻t11での制御は、
図4および
図5に示す実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0069】
時刻t21において、エンジン回転速度Neが上昇すると、排気ガス流量Qgが増加する。排気ガス流量Qgが増加すると、コントローラ30は、上記ステップS8における判定に基づいて、バルブ20の開度を所定開度ずつ大きくする。
【0070】
これにより、熱交換通路15を通過する排気ガスの流量がさらに増加する。そして、時刻t3において所定温度T2より大きくなると、コントローラ30は、排熱回収要求を満足した(エンジン10の暖機が完了した)と判断して、バルブ20の開度を再び0(ゼロ)にする。これにより、排気ガスは、略全量がバイパス通路14を通って触媒12に導かれるようになる。
【0071】
図6に示す実施例では、
図4に示す実施例の効果に加え、排気ガス流量Qgが増加したときに、熱交換通路15を通過する排気ガスの流量を増加させて、熱交換を促進させるので、本実施形態の制御を行わない場合に比べ、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短くすることができる。
【0072】
次に、
図7を参照して、冷却液流量Qwが排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)前に減少している場合の制御について説明する。
図7に示す実施例では、冷却液流量Qwが一定であり、排気ガス温度Teinが暖機完了前に一定になっている。なお、
図7に示す実施例は、説明のため
図3のステップS7による判定を行っていないものとする。
【0073】
図7の実施例における時刻t1、時刻t2、時刻t3、及び時刻t11での制御は、
図4および
図5に示す実施例と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
時刻t31において、例えば、エンジン10の負荷が上昇しエンジン回転速度Neが低下すると、それに伴ってポンプの回転速度が低下する。これにより、冷却液流量Qwが低下するため、コントローラ30は、上記ステップS9における判定に基づいて、バルブ20の開度を所定開度ずつ大きくする。
【0075】
これにより、熱交換通路15を通過する排気ガスの流量が増加する。そして、時刻t3において所定温度T2より大きくなると、コントローラ30は、排熱回収要求を満足した(エンジン10の暖機が完了した)と判断して、バルブ20の開度を再び0(ゼロ)にする。これにより、排気ガスは、略全量がバイパス通路14を通って触媒12に導かれるようになる。
【0076】
図7に示す実施例では、
図4に示す実施例の効果に加え、冷却液流量Qwが低下したときに、熱交換通路15を通過する排気ガスの流量を増加させて、熱交換を促進させるので、本実施形態の制御を行わない場合に比べ、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短くすることができる。
【0077】
以上のように、本実施形態の熱交換システム100では、エンジン10の暖機等、排熱回収が必要な場合には、まず、触媒12の温度(触媒温度Tc)を所定温度T1以上になるように制御する。そして、排熱回収部Eによる排熱回収を行っているときも、触媒12の温度(触媒温度Tc)を所定温度T1未満になると、排熱回収を中断して触媒12の加熱を優先させる。
【0078】
これにより、排気要求を確実に満たしつつ、排気ガスと冷却液との間で熱交換を行うことができる。さらに、排熱回収部Eによる排熱回収を最大限行うようにしても、触媒12の浄化性能を低下させることなく排気要求を確実に満たすことができる。
【0079】
また、本実施形態では、排気ガス温度Tein、排気ガス流量Qg、冷却液温度Tw、冷却液流量Qwの変化(
図3のステップS6からステップS9の判定)に基づいてバルブ20の開度を制御しているので、排気要求を満たしつつ排熱回収量を最大限増やすことができる。これにより、排気要求を満たしつつ排熱回収完了までの時間(例えば、エンジン10の暖機時間)を短くすることができる。
【0080】
上記熱交換システム100は、例えば、
図8に示すようなEGRシステムを備えたエンジンに適用してもよい。
図8に示すEGRシステムは、熱交換器13の出口側から吸気通路に排気の一部を還流させる排気還流通路41と、排気還流通路41を通過する排気の流量を調節する排気還流弁42と、を備えた、いわゆる低圧EGRシステムである。熱交換システム100は、
図8に示すような低圧EGRシステムに限らず、高圧EGRシステムにも適用することができる。
【0081】
また、熱交換システム100をEGRシステムに適用した場合には、熱交換器13をEGRクーラとして機能させるようにしてもよい。
【0082】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0083】
熱交換システム100は、エンジン10の排気通路11と、排気通路11に設けられ、エンジン10からの排気ガスを浄化する触媒12と、排気通路11における触媒12の上流に設けられ、排気ガスとエンジン10を冷却するための冷却液との間で熱交換を行う熱交換器13と、排気通路11に接続され、熱交換器13をバイパスするバイパス通路14と、熱交換器13を通過する排気ガスの流量及びバイパス通路14を通過する排気ガスの流量を制御するバルブ機構(バルブ20)と、を備える。
【0084】
熱交換システム100を制御する熱交換システム制御方法では、触媒12の温度をライトオフ温度(所定温度T1)以上に保ちつつ、バルブ機構(バルブ20)の開度を制御する。
【0085】
この構成では、触媒12の温度をライトオフ温度(所定温度T1)以上に保って、排熱回収を行うようにバルブ機構(バルブ20)の開度を制御しているので、排気要求を確実に満たしつつ、排気ガスと冷却液との間で熱交換を行うことができる。さらに、排熱回収を最大限行うようにしても、触媒12の浄化性能を低下させることなく排気要求を確実に満たすことができる。
【0086】
熱交換システム制御方法は、触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)未満の場合には、排気ガスが熱交換器13を通過しないようバルブ機構(バルブ20)を制御して熱交換器13による熱交換が行われないようにする。
【0087】
触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)に未満である場合に、熱交換器13側に排気ガスを流してしまうと、その分、触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)に達するまでの時間が長くなる。そこで、触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)未満の場合には、排気ガスが熱交換器13を通過しないようバルブ機構(バルブ20)を制御することで、触媒12を優先的に加熱する。これにより、触媒12の浄化性能を低下させることなく排気要求を確実に満たすことができる。また、排熱回収中に触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)未満に低下してしまった場合にも、排気ガスが熱交換器13を通過しないようバルブ機構(バルブ20)を制御することで、触媒12を優先的に加熱する。これにより、触媒12の浄化性能を低下させることを防止できる。
【0088】
熱交換システム制御方法は、触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)以上であって熱交換器13による熱交換が行われているときに、熱交換器13の入口側における排気ガス温度Teinが上昇した場合には、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構(バルブ20)を制御する。
【0089】
排気ガス温度Teinが上昇した場合には、排熱回収可能な熱量が増加していることになる。そこで、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構(バルブ20)を制御することで、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増加させる。これにより、熱交換器13による排熱回収が促進されるので、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短縮することができる。
【0090】
熱交換システム制御方法は、触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)以上であって熱交換器13による熱交換が行われているときに、冷却液温度Twが上昇した場合には、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構の入口側における排気ガスを制御する。
【0091】
冷却液温度Twが上昇した場合には、排熱回収量が低下するおそれがある。そこで、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構(バルブ20)を制御することで、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増加させる。これにより、熱交換器13による排熱回収が促進されるので、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短縮することができる。
【0092】
熱交換システム制御方法は、触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)以上であって熱交換器13による熱交換が行われているときに、エンジン10からの排気ガス流量Qgが増加した場合には、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構(バルブ20)を制御する。
【0093】
エンジン10からの排気ガス流量Qgが増加した場合には、排熱回収可能な熱量が増加していることになる。そこで、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構(バルブ20)を制御することで、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増加させる。これにより、熱交換器13による排熱回収が促進されるので、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短縮することができる。
【0094】
熱交換システム制御方法は、触媒12の温度がライトオフ温度(所定温度T1)以上であって熱交換器13による熱交換が行われているときに、冷却液流量Qwが減少した場合には、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構(バルブ20)を制御する。
【0095】
冷却液流量Qwが減少した場合には、冷却液流量Qwが低下し排熱回収量が低下するおそれがある。熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増やすようにバルブ機構(バルブ20)を制御することで、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を増加させる。これにより、熱交換器13による排熱回収が促進されるので、排熱回収完了(エンジン10の暖機完了)までの時間を短縮することができる。
【0096】
バルブ機構は、バイパス通路14に設けられ、バイパス通路14を通過する排気ガスの流量を制御する第1バルブ20aと、熱交換器13を通過する排気ガスの流量を制御する第2バルブ20bと、を備える。
【0097】
バルブ機構を2つのバルブ(第1バルブ20a、第2バルブ20b)で構成することにより、より細かな制御を行うことができる。
【0098】
熱交換器13は、EGRクーラとしても機能する。
【0099】
熱交換システム100をEGRシステムを搭載したエンジンに適用した場合には、熱交換器13をEGRクーラとしても機能させることで、別途EGRクーラを設ける必要がない。これにより、コストの上昇を抑制できる。
【0100】
熱交換システム100は、触媒12の温度を検出する第1温度センサ21と、熱交換器13の入口側の温度を検出する第2温度センサ22と、をさらに備える。この構成における熱交換システム制御方法は、検出した熱交換器13の入口側の温度と触媒12の温度とに基づいて、バルブ機構(バルブ20)を制御する。
【0101】
この構成では、温度センサを用いて温度を検出することにより、制御の精度を向上させることができる。
【0102】
熱交換システム制御方法は、熱交換器13の入口側の温度と触媒12の温度を、エンジン10の回転速度Ne及び負荷から推定し、推定した熱交換器13の入口側の温度と触媒12の温度とに基づいて、バルブ機構(バルブ20)を制御する。
【0103】
この構成では、温度センサを用いていないので、コストを低減することができる。
【0104】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0105】
100 熱交換システム
10 エンジン
11 排気通路
12 触媒
13 熱交換器
14 バイパス通路
15 熱交換通路
20 バルブ(バルブ機構)
20a 第1バルブ(バルブ機構)
20b 第2バルブ(バルブ機構)
21 第1温度センサ
22 第2温度センサ
23 第3温度センサ
30 コントローラ
E 排熱回収部