(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】水準器
(51)【国際特許分類】
G01C 9/28 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
G01C9/28
(21)【出願番号】P 2020107242
(22)【出願日】2020-06-22
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】512078627
【氏名又は名称】梶木 幹雄
(74)【代理人】
【識別番号】100142136
【氏名又は名称】深澤 潔
(72)【発明者】
【氏名】梶木 幹雄
【審査官】仲野 一秀
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1421810(KR,B1)
【文献】特開平7-151544(JP,A)
【文献】特開2005-88213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 9/24-9/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線を有する気泡管と、
該気泡管が配設された設置面が配された気泡管ホルダーと、
水準面が配され、前記気泡管の前記中心軸線一端側の前記気泡管ホルダーが前記水準面に対して前記設置面の垂線方向に湾曲可能に接続された測定ベースと、
前記気泡管の前記中心軸線他端側にて前記気泡管ホルダーと前記水準面とが離間した状態で前記気泡管ホルダーに螺着されるとともに、先端が前記測定ベースに当接された校正ネジと、
前記気泡管ホルダーと前記校正ネジとの螺着位置から前記測定ベースの反対方向に離間した位置にて、前記気泡管ホルダーに対する前記校正ネジの先端を中心とする振れを規制するホルダー部と、
前記校正ネジと同軸上に配されて前記気泡管ホルダーを前記水準面に向けて押圧する第一弾性部と、
前記校正ネジが挿通される当接部が前記ホルダー部に配され、前記校正ネジを前記当接部の内壁に押圧する第二弾性部と、
を備える水準器。
【請求項2】
前記校正ネジの先端が嵌入される凹部が前記測定ベースに配されている請求項1に記載の水準器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水準器に関する。
【背景技術】
【0002】
水準器の気泡管の表面には、気泡の移動範囲に応じて気泡管の中心軸線方向に離間した目盛りが配されている。そして、当該目盛りに対する気泡端の位置から測定面の傾斜にともなう気泡の移動量を目視等により読み取り、水平面に対する傾斜量を計測している。
【0003】
測定の際には、水準器の筐体内に配設した気泡管の姿勢を修正して気泡が気泡管内の中心に位置するように予め調整する必要がある。例えば、皿形気泡管18を搭載する台と水準面17との間に圧縮バネ22を介在させて、台の上方から圧縮バネ22に挿通された校正ネジ21によって台を押圧し、かつ、圧縮バネ22の付勢力を台の下方より受ける状態とした水準器13が提案されている(特許文献1参照)。この水準器13によれば、校正ネジ21を回して圧縮バネ22の弾性力を変化させることによって、水準面17と台との距離を変えて皿形気泡管18の水準面17に対する傾きを調整している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧縮バネ22によって台の下方より付勢力を付与するとともに、台の上方から校正ネジ21を回して押圧する構造では、圧縮バネ22が台などの荷重も受けるので、校正ネジ21の回転を規制していても測定場所への水準器の移動時や測定場所に設置する際の衝撃などの環境変化によって圧縮バネ22が変形してしまい、水準面17に対する台の位置が予め調整した状態からずれてしまうことがある。高精度の測定を行う場合には、このようなずれも許容できるものではない。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みて成されたものであり、気泡管の水準面に対する傾きを調整した後の変動をより好適に抑制することができる水準器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を採用する。
本発明に係る水準器は中心軸線を有する気泡管と、該気泡管が配設された設置面が配された気泡管ホルダーと、水準面が配され、前記気泡管の前記中心軸線一端側の前記気泡管ホルダーが前記水準面に対して前記設置面の垂線方向に湾曲可能に接続された測定ベースと、前記気泡管の前記中心軸線他端側にて前記気泡管ホルダーと前記水準面とが離間した状態で前記気泡管ホルダーに螺着されるとともに、先端が前記測定ベースに当接された校正ネジと、前記気泡管ホルダーと前記校正ネジとの螺着位置から前記測定ベースの反対方向に離間した位置にて、前記気泡管ホルダーに対する前記校正ネジの先端を中心とする振れを規制するホルダー部と、前記校正ネジと同軸上に配されて前記気泡管ホルダーを前記水準面に向けて押圧する第一弾性部と、前記校正ネジが挿通される当接部が前記ホルダー部に配され、前記校正ネジを前記当接部の内壁に押圧する第二弾性部と、を備える。
【0008】
また、本発明に係る水準器は、さらに前記校正ネジの先端が嵌入される凹部が前記測定ベースに配されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、気泡管の水準面に対する傾きを調整した後の変動を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る水準器の概要を示す斜視図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る水準器の構成を示す分解図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係る水準器の概要を示す斜視図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に係る水準器の構成を示す分解図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係る水準器の一部の構成を示す拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る実施形態の
ベースとなる水準器について、
図1及び
図2を参照して説明する。
この水準器10は、中心軸線C1を有して長手方向に延びる気泡管11と、気泡管11が配設された設置面12Aが配された気泡管ホルダー12と、水準面13Aが配された測定ベース13と、気泡管ホルダー12と螺着された校正ネジ15と、校正ネジ15が挿通されたホルダー部16と、校正ネジ15が挿通されたバネ部(第一弾性部)17と、を備える。
【0013】
気泡管11には液体内部に気泡18が配され、表面には中心軸線C1方向に複数の目盛20が付されている。気泡管ホルダー12は板状に形成され、気泡管11の中心軸線C1一端側の端部が測定ベース13と接続された板ヒンジ21と接続されている。そのため、気泡管ホルダー12は板ヒンジ21を中心に水準面13Aに対して設置面12Aの垂線C2方向に湾曲可能となっている。気泡管11の中心軸線C1他端側の気泡管ホルダー12には不図示の雌ネジ溝が配されて板厚方向に貫通する螺孔12Bが配されている。
【0014】
測定ベース13の水準面13Aには校正ネジ15の先端が嵌入される凹部13Bが形成されている。ここで、校正ネジ15の先端を凹部13Bに嵌入させやすくするため、校正ネジ15の先端には雄ネジ溝15Aが配されていないのが好ましい。一方、少なくとも気泡管ホルダー12と螺着される校正ネジ15の部分には雄ネジ溝15Aが配されている。
【0015】
ホルダー部16は、校正ネジ15が挿通される孔部22Aが配された本体部22と、本体部22を支えて測定ベース13に立設された一対の脚部23A,23Bと、を備えている。本体部22は、垂線C2方向から気泡管ホルダー12を見たときに、一対の脚部23A,23B間に挿通された状態で気泡管11の他端側の気泡管ホルダー12を覆うように形成されている。孔部22Aは、ホルダー部16が測定ベース13に立設された状態で孔部22Aと気泡管ホルダー12の螺孔12Bと凹部13Bの少なくとも一部とが仮想線C上に配されるように、本体部22に形成されている。
【0016】
バネ部17は、バネ部17の一端が設置面12Aに他端が本体部22にそれぞれ当接して圧縮された状態で一対の脚部23A,23B間に配され、本体部22の孔部22Aに校正ネジ15が挿入された状態で、校正ネジ15が挿通されている。
【0017】
この水準器10の気泡管ホルダー12の設置面12Aが測定ベース13の水準面13Aに対して平行になるよう調整する方法について、水準器10の作用とともに説明する。
【0018】
まず、組み立てられた水準器10を不図示の水平面上に載置する。そして、気泡18が気泡管11の中心位置に配されるように校正ネジ15を回転する。この際、凹部13Bに校正ネジ15の先端が嵌入されているので、校正ネジ15は回転しても仮想線Cに対してネジ軸C3の振れが規制される。一方、校正ネジ15が挿入されたバネ部17は、一端が設置面12Aに他端が本体部22にそれぞれ当接して圧縮されているので、校正ネジ15の回転に伴い伸縮する。この伸縮に伴い、バネ部17の気泡管ホルダー12に対する押圧力が変動し、測定ベース13に対して気泡管ホルダー12が板ヒンジ21を中心に設置面12Aの垂線C2方向に湾曲する。これにともない、気泡管11が傾斜して、気泡18が気泡管11内を中心軸線C1方向に移動する。こうして目盛20の中心部分に気泡18が移動した時点で校正ネジ15の回転を停止して調整を終了する。
【0019】
ここで、校正ネジ15の雄ネジ溝15Aと気泡管ホルダー12の螺孔12Bの雌ネジ溝とが螺合されているため、通常、この螺合部分にわずかな隙間が生じてしまう。しかし、本実施形態に係る水準器10によれば、バネ部17が気泡管ホルダー12などの荷重を受けることなくホルダー部16と気泡管ホルダー12とをネジ軸C3方向に離間する方向に押圧されている。そのため、雄ネジ溝15Aと雌ネジ溝との間に隙間があってもその大きさは変動しない。よって、水準器10を移動しても気泡管ホルダー12に対する校正ネジ15の移動が規制されるので、調整後に不図示の測定場所に水準器10を設置する前後で、調整状態を変わらないようにすることができる。
【0020】
次に、本発明に係る第
1の実施形態について
図3から
図5を参照して説明する。
なお、上述した
水準器10と同様の構成要素には同一符号を付すとともに説明を省略する。
本実施形態と
水準器10との異なる点は、本実施形態に係る水準器30のホルダー部31が、校正ネジ15をネジ軸C3方向と直交する側に押圧する板バネ(第二弾性部材)32を備えているとした点である。
【0021】
このホルダー部31の本体部33は、孔部22Aの代わりに校正ネジ15が挿通可能な大きさにて仮想線Cに沿って溝部(当接部)33Aが配されている。板バネ32は、溝部33Aから一部露出する校正ネジ15の表面に当接して校正ネジ15を本体部33に押圧する状態で一対の取付ボルト35A,35Bにて本体部33に設置されている。
【0022】
この水準器30の気泡管ホルダー12の設置面12Aを測定ベース13の水準面13Aに対して平行になるよう調整する際には、第1の実施形態と同様の方法にて行う。この際、校正ネジ15が孔部22Aではなく溝部33Aに挿通された状態で板バネ32によって溝部33Aの側面に押圧されている。そのため、一対の取付ボルト35A,35Bの締め付け力を変化させると板バネ32の弾性力が変化して、校正ネジ15と溝部33Aの内壁との摩擦力が変化する。
【0023】
そのため、水準器30によれば、例えば、
図5の左側の図に示すように、取付ボルト35Bを固定した状態で取付ボルト35Aを緩めて摩擦力を小さくすることによって、校正ネジ15の回転を容易にすることができ、調整しやすくすることができる。また、調整しないときには、
図5の右側の図に示すように取付ボルト35Aを締め付けることによって摩擦力を大きくして校正ネジ15の移動を規制することができ、校正ネジ15の仮想線Cに対するネジ軸C3の振れをより好適に抑制することができる。
【0024】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、測定ベース13の水準面13Aには校正ネジ15の先端が嵌入される溝部33Aが形成されているとしているが、溝である必要はなく、穴であっても構わない。
【符号の説明】
【0025】
10,30 水準器
11 気泡管
12 気泡管ホルダー
12A 設置面
13 測定ベース
13A 水準面
13B 凹部
15 校正ネジ
16,31 ホルダー部
17 バネ部(第一弾性部)
32 板バネ(第二弾性部)
33A 溝部(当接部)
C1 中心軸線