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特許7402763コンクリート敷均し装置及びコンクリート舗装体の製造方法
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  • 特許-コンクリート敷均し装置及びコンクリート舗装体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】コンクリート敷均し装置及びコンクリート舗装体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   E01C 19/48 20060101AFI20231214BHJP
   E01C 7/14 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
E01C19/48 A
E01C7/14
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020123276
(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公開番号】P2022019439
(43)【公開日】2022-01-27
【審査請求日】2023-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390002185
【氏名又は名称】大成ロテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】越村 聡介
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 拓也
(72)【発明者】
【氏名】藤澤 智徳
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光希
(72)【発明者】
【氏名】橋本 理
(72)【発明者】
【氏名】渡部 孝彦
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3028816(JP,U)
【文献】実開平05-038007(JP,U)
【文献】特開2009-035900(JP,A)
【文献】特開2019-120080(JP,A)
【文献】特開2015-129393(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0051839(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/48
E01C 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な台車と、
前記台車に高さ調節可能に固定され、高周波バイブレータによって振動する第1スクリードと、
前記台車に高さ調節可能に固定され、前記高周波バイブレータよりも振動周波数の低い低周波バイブレータによって振動する第2スクリードと、を備え、
前記第1スクリードは、前記第2スクリードよりも前記台車の進行方向の前方に配置されているコンクリート敷均し装置。
【請求項2】
前記第2スクリードの底面は、前記第1スクリードの底面よりも低い位置にある請求項1に記載のコンクリート敷均し装置。
【請求項3】
前記第2スクリードの底面は、前記台車の進行方向断面が下向きに凸となる円弧状である請求項1又は請求項2に記載のコンクリート敷均し装置。
【請求項4】
コンクリート材を打設する打設ステップと、
前記コンクリート材に沿って請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載のコンクリート敷均し装置を前進させる敷均しステップと、を含み、
前記敷均しステップは、前記第1スクリード及び前記第2スクリードをこの順番でコンクリート材の表面に接触させながら通過させる
コンクリート舗装体の製造方法。
【請求項5】
前記コンクリート材は、硬化前の超高強度繊維補強コンクリートである請求項4に記載のコンクリート舗装体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート材の敷均しを行うコンクリート敷均し装置及びコンクリート舗装体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリードと呼ばれる平面状の均し板をバイブレータで振動させて、コンクリート材(硬化前のコンクリート、フレッシュコンクリート)の表面を平滑に敷き均す装置が知られている。また、厚いコンクリート舗装体を施工するために、振動するスクリードとは別に棒状のバイブレータを備えてコンクリート材の密度の均一化を図る装置も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開平5-38007号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、鋼製の橋桁上に超高強度繊維補強コンクリート舗装体を敷設して橋桁を補強する場合がある。しかし、従来のスクリードによって、超高強度繊維補強コンクリートのような粘着性の高い特殊コンクリート材の敷均しを行うと、施工後のコンクリート舗装体の表面にスクリードの引きずり跡等が残り、表面が荒れた状態となってしまうという問題があった。この表面の荒れは、コンクリート材と密着するスクリード底面が進行方向に長い場合に生じやすい。表面の荒れを抑えるためにスクリード底面を進行方向に短くすると、敷均しが不十分となりコンクリート舗装体の品質が低下してしまう。また、品質維持のために敷均しを繰り返して行えば、施工生産性の低下を招くことになる。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、粘着性の高い特殊コンクリート材であっても容易にかつ品質を確保しながら施工することができるコンクリート敷均し装置及びコンクリート舗装体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる課題を解決するために、本発明に係るコンクリート敷均し装置は、移動可能な台車と、前記台車に高さ調節可能に固定され、高周波バイブレータによって振動する第1スクリードと、前記台車に高さ調節可能に固定され、前記高周波バイブレータよりも振動周波数の低い低周波バイブレータによって振動する第2スクリードと、を備え、前記第1スクリードは、前記第2スクリードよりも前記台車の進行方向の前方に配置されている。
【0006】
この構成によれば、コンクリート敷均し装置は、高周波で振動する第1スクリードが台車の進行方向の前方に、低周波で振動する第2スクリードが台車の進行方向の後方に配置されていることで、コンクリート舗装体の表面の荒れを抑えることができる。第1スクリードと第2スクリードとは、独立して高さを調節することができるため、コンクリート材の性質やスクリード底面の形状に合わせて、第1スクリードの底面と第2スクリードの底面とで高さを一致させて、又は高さの差を設けて敷均しを行うことができる。そして、第1スクリード及び第2スクリードを1台の装置に集約しているため、品質を確保しながら施工生産性の向上を図ることができる。
【0007】
本発明に係るコンクリート敷均し装置は、前記第2スクリードの底面は、前記第1スクリードの底面よりも低い位置にあるのが好ましい。
この構成によれば、第1スクリードによって敷均しが行われたコンクリート材を第2スクリードの底面と確実に接触させることができる。
【0008】
本発明に係るコンクリート敷均し装置は、前記第2スクリードの底面は、前記台車の進行方向断面が下向きに凸となる円弧状であるのが好ましい。
この構成によれば、粘着性の高い特殊コンクリート材を第2スクリード下方に滑らかに取り込むことができ、また、第2スクリードが通過した後のコンクリート材が第2スクリードから離れやすく、表面の荒れをさらに抑えることができる。
【0009】
また、本発明に係るコンクリート舗装体の製造方法は、コンクリート材を打設する打設ステップと、前記コンクリート材に沿って本発明に係るコンクリート敷均し装置を前進させる敷均しステップと、を含み、前記敷均しステップは、前記第1スクリード及び前記第2スクリードをこの順番でコンクリート材の表面に接触させながら通過させる。
この構成によれば、高周波で振動する第1スクリード及び低周波で振動する第2スクリードをこの順番でコンクリート材の表面に接触しながら通過させることができるため、コンクリート舗装体の品質を確保しながら表面を平滑に仕上げることができる。また、打設ステップにおいて打設されたコンクリート材に沿って、本発明に係るコンクリート敷均し装置を前進させる敷均しステップにより、容易に敷均しを行うことができ、施工生産性の向上を図ることができる。
【0010】
本発明に係るコンクリート舗装体の製造方法は、前記コンクリート材は、硬化前の超高強度繊維補強コンクリートであることが好ましい。
本発明に係るコンクリート舗装体の製造方法によれば、従来の装置では困難であった超高強度繊維補強コンクリートであっても、品質を確保しながら容易に敷均しを行うことができ、コンクリート舗装体の表面を平滑に仕上げることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、超高強度繊維補強コンクリートのような粘着性の高い特殊コンクリート材を施工する場合においても、品質を確保しながら容易に敷均しを行うことができ、施工生産性を向上させると共にコンクリート舗装体の表面を平滑に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るコンクリート敷均し装置全体の側面図である。
図2】実施形態に係るコンクリート敷均し装置全体の上面図である。
図3】実施形態に係るコンクリート敷均し装置の第1スクリード及び第2スクリード付近を拡大した断面図である。
図4】実施形態に係るコンクリート敷均し装置の第1スクリード及び第2スクリード付近の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。図1に示すように、コンクリート敷均し装置100は、移動可能な台車1と、高周波バイブレータ15によって振動する第1スクリード10と、低周波バイブレータ25によって振動する第2スクリード20とを備えている。第1スクリード10は、固定装置16を介して、高さ調節可能に台車1に固定されている。第2スクリード20は、固定装置26を介して、高さ調節可能に台車1に固定されている。そして、第1スクリード10は、第2スクリード20よりも台車の進行方向D1において前方に配置されている。
【0014】
台車1は、車輪4によって進行方向D1に前進又は後退することができる。車輪4は、図2に示すように、台車1がコンクリート材の型枠F1を跨いで移動できるように配置されている。台車1上に設置されている発電機2は、台車1の移動やバイブレータの動作のための電力を供給する。また、台車1の後部には、作業者が乗ることができる作業台3が設けられている。作業台3上の作業者は、例えば、敷均し後のコンクリートに養生シートを掛ける等のコンクリート養生作業を行うことができる。台車1は、自身を移動させるためのモータ等の動力を備えてもよく、外部からけん引されて移動してもよい。動力装置等については図示を省略している。なお、台車1は車輪4を備えなくても、クローラやそり等、水平方向に移動可能な手段を備えていればよい。
【0015】
硬化前のコンクリート材30は、型枠F1の内側の進行方向D1前方に、図示しない打設装置によって打設される。そして、コンクリート材30は、図3に示すように、橋桁B1上で第1スクリード10及び第2スクリード20により敷き均される。
【0016】
第1スクリード10は、高周波バイブレータ15によって振動し、前方に打設された硬化前のコンクリート材30の流動性を高めて下方に取り込みながら、第1段階の敷均しを行う部材である。
第1スクリード10の底面11は平面状であり、図3に示すように、進行方向D1断面は直線状である。第1スクリード10は、例えば、長方形角パイプを使用することができる。角パイプは、1つの側面を底面11とし、隣り合う側面を底面11と一体の前板12とすることができるため好ましい。前板12が高周波バイブレータ15によって底面11と共に振動することで、コンクリート材30の流動性をさらに高めて下方に滑らかに取り込むことができる。コンクリート敷均し装置100では、長方形角パイプの短辺側面を底面11とし、長辺側面を前板12としている。一例として、短辺の長さL1は50mmから100mm程度であり、65mmから85mm程度が好ましい。また、長辺の長さL2は100mmから300mmであり、150mmから250mm程度が好ましい。なお、短辺側面を前板12、長辺側面を底面11としてもよい。
【0017】
第2スクリード20は、低周波バイブレータ25によって振動し、第1段階の敷均し後のコンクリート材31に対し、最終段階である第2段階の敷均しを行う部材である。
第2スクリード20の底面21は、図3に示すように、進行方向D1断面が下向きに凸となる円弧状である。この底面21の形状により、コンクリート材31は下方に取り込まれやすく、第2スクリード20が通過した後は底面21から離れやすい。このため、第2スクリード20は、コンクリート舗装体表面の荒れをさらに抑えることができる。
第2スクリード20は、丸パイプを半割りしたものに、丸パイプの直径幅の板を接合したものを使用することができる。この場合、第2スクリード20は、図3に示すように、台車1の進行方向D1断面が半円形状となる。一例として、半径R1は50mmから200mmであり、80mmから120mm程度が好ましい。また、第2スクリード20の上面が平面であることで、低周波バイブレータ25を設置しやすい。
【0018】
第1スクリード10と第2スクリード20とは、高さ調節装置16、26により独立して高さを調節することができる。このため、第2スクリード20の底面21は、例えば第1スクリード10の底面11よりも低い位置にすることができる。図3に示す例では、第2スクリード20の底面21の最低点P1は第1スクリード10の底面11の最低点よりも5mm程度低い位置にある。このため、コンクリート材31が第2スクリード20の底面21と確実に接触し、第2スクリード20は、低周波バイブレータ25の振動をコンクリート材の隅々まで行き渡らせることができる。一例として、第2スクリード20の底面21の最低点P1は、第1スクリード10の底面11の最低点よりも1mmから10mm低い位置であり、3mmから6mm低い位置にするのが好ましい。なお、第2スクリード20の底面21の前方の最高点P2は、コンクリート材31を下方に取り込むために、第1スクリード10の底面11の最低点よりも高い位置にある。
【0019】
高周波バイブレータ15は、図4に示すように、第1スクリード10の上面に、水平方向D2に互いに間隔を開けて設置されている。複数のバイブレータが水平方向D2に並んでいるため、水平方向における第1スクリード10の振動の強弱のばらつきを抑えることができる。高周波バイブレータ15の台数及び設置間隔は、高周波バイブレータ15の出力や第1スクリード10の水平方向の長さによって変更することができる。高周波バイブレータ15の周波数は、例えば170Hzから270Hzである。
【0020】
低周波バイブレータ25は、図4に示すように、第2スクリード20の上面に、水平方向D2に互いに間隔を開けて設置されている。複数のバイブレータが水平方向D2に並んでいるため、水平方向における第2スクリード20の振動の強弱のばらつきを抑えることができる。低周波バイブレータ25の台数及び設置間隔は、低周波バイブレータ25の出力や第2スクリード20の水平方向の長さによって変更することができる。低周波バイブレータ25の周波数は、例えば20Hzから70Hzである。
【0021】
本発明に係るコンクリート敷均し装置100は、スクリードの進行方向長さを従来のものより短くすることで、スクリードの引きずり跡の発生を抑えることができる。そして、高周波で振動する第1スクリード10及び低周波で振動する第2スクリード20の2つのスクリードを1台の装置に集約して備えることにより、施工生産性を向上させると共に、敷均しの品質を確保しながらコンクリート舗装体の表面を平滑に仕上げることができる。
【0022】
次に、本発明に係るコンクリート舗装体の製造方法を説明する。本発明に係るコンクリート舗装体の製造方法は、コンクリート材30を打設する打設ステップと、打設したコンクリート材30に沿ってコンクリート敷均し装置100を前進させる敷均しステップと、を含む。そして、敷均しステップは、第1スクリード10及び第2スクリード20をこの順番でコンクリート材の表面に接触させながら通過させる。
【0023】
打設ステップは、型枠F1の内側の台車1の進行方向D1の前方に、例えばコンクリートポンプ車により、硬化前のコンクリート材30を打設するステップである。
次に行う敷均しステップは、打設した硬化前のコンクリート材30に沿って、コンクリート敷均し装置100を前進させるステップである。コンクリート敷均し装置100を前進させると、第1スクリード10とコンクリート材30の表面とが接触し、コンクリート材30は、高周波バイブレータ15の振動によって流動性が高まって、第1スクリード10の下方に取り込まれる。そして、高周波で振動する第1スクリード10の底面11によって、第1段階の敷均しが行われて、コンクリート材31となる。
【0024】
コンクリート敷均し装置100をさらに前進させると、コンクリート材31は、第2スクリード20の下方に取り込まれ、低周波で振動する第2スクリード20により、最終段階である第2段階の敷均しが行われて、コンクリート舗装体32となる。このように、本発明に係るコンクリート舗装体の製造方法は、第1スクリード10及び第2スクリード20が集約されたコンクリート敷均し装置100を前進させる敷均しステップによって、第1スクリード10及び第2スクリード20をこの順番でコンクリート材の表面に接触させながら通過させることができる。このため、表面を平滑に仕上げると共に品質を確保しながら容易に敷均しを行うことができる。
【0025】
第1スクリード10が前板12を備えていれば、第1スクリード10は、コンクリート材30をさらに滑らかに下方に取り込むことができる。また、第2スクリード20の底面21の進行方向D1断面が下向きに凸となる円弧状であれば、表面の荒れをさらに抑えることができる。そして、第2スクリード20の底面21の最低部P1が、第1スクリード10の底面11の最低部よりも低い適切な位置となるように調節することで、第2スクリード20とコンクリート材の表面との接触面の面積を最適にして、さらに敷均しの品質を高めることができる。
【0026】
また、本発明に係るコンクリート舗装体の製造方法は、高周波バイブレータ15で振動する第1スクリード10によってコンクリート材30の流動性を高めて取り込んで、低周波バイブレータ25で振動する第2スクリード20によって表面を平滑に仕上げることができる。このため、粘着性の高い超高強度繊維補強コンクリートにも適している。
【0027】
なお、第1スクリード10の底面11を平面状とし、第2スクリード20の底面21を進行方向D1断面が下向きに凸となる円弧状としているが、例えば、第1スクリード10及び第2スクリード20の両方の底面を平面状にしてもよく、両方の底面を進行方向D1断面が下向きに凸となる円弧状としてもよい。さらに、スクリードの底面は様々な形状とすることが可能である。
また、第1スクリード10が前板12を備える場合、図3では、前板12は進行方向D1に垂直であり底面11とのなす角が90度であるが、例えば前板12と底面11とのなす角が20度から50度であるように前板12を傾けてもよい。
【符号の説明】
【0028】
台車 1
発電機 2
作業台 3
車輪 4
第1スクリード 10
第2スクリード 20
高周波バイブレータ 15
低周波バイブレータ 25
コンクリート材 30
コンクリート舗装体 32
進行方向 D1
図1
図2
図3
図4