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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液体口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20231214BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20231214BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A61K8/86
A61Q11/00
A61K8/24
A61K8/365
A61K8/49
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020125170
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021546
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2021-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】一町 千華
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-231973(JP,A)
【文献】特開平10-120539(JP,A)
【文献】特開2019-099502(JP,A)
【文献】特開2019-099503(JP,A)
【文献】国際公開第2016/104536(WO,A1)
【文献】特開2012-012303(JP,A)
【文献】特開平11-255629(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(C):
(A)カチオン性殺菌剤 0.01質量%以上1質量%以下
(B)ピロリン酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の酸又はその塩 酸換算量で0.01質量%以上0.15質量%以下
(C)エチレンオキサイドの平均付加モル数が20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油から選ばれる1種又は2種のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油 0.15質量%以上1.5質量%以下
を含有し、アニオン界面活性剤を実質的に含有せず、
成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))が0.15以上1以下であり、かつ成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))が0.2以上15以下である液体口腔用組成物。
【請求項2】
多価金属又は多価金属含有化合物の含有量が、金属原子換算量で0.1質量%以下である請求項1に記載の液体口腔用組成物。
【請求項3】
成分(A)が、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、及びクロルヘキシジンから選ばれる1種又は2種以上である請求項1又は2に記載の液体口腔用組成物。
【請求項4】
水(D)の含有量が、60質量%以上99.9質量%以下である請求項1~のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【請求項5】
さらに、香料(E)を0.01質量%以上1質量%以下含有する請求項1~のいずれか1項に記載の液体口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
洗口液やデンタルリンス、マウススプレー等の液体口腔用組成物は、口腔内に含漱した後に吐き出すという、簡便な方法により適用する利便性の高い組成物であるため、利用者は益々増大傾向にある。このような液体口腔用組成物においても、う蝕予防等の観点から塩化セチルピリジニウムや塩化ベンゼトニウム等のカチオン性殺菌剤が用いられており、その殺菌効果を有効に発揮させるべく、種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、カチオン性殺菌剤とともに、ポリリン酸又はその塩とポリグリセリン脂肪酸エステルとを含有する液体口腔用組成物が開示されており、また特許文献2には、塩化セチルピリジニウムに、クエン酸や酒石酸を特定量で配合した液体口腔用組成物が開示されており、いずれも殺菌剤の歯面への吸着性を高めて殺菌力の増強を図っている。
さらに特許文献3には、カチオン性殺菌剤と、グリセロリン酸カルシウム及び縮合リン酸とを特定の質量比で含有する液体口腔用組成物が開示されており、殺菌効果の持続性を高める試みがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-117574号公報
【文献】特開2016-108302号公報
【文献】特開2017-66036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした液体口腔用組成物に香料や薬効成分等の油溶性成分を配合するには、可溶化能に優れる界面活性剤、特にノニオン界面活性剤を用いて組成物の安定性を確保するのが望ましいものの、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油とカチオン性殺菌剤とが共存すると、カチオン性殺菌剤の歯面への吸着性が著しく阻害されるおそれがある。また、カチオン性殺菌剤由来の苦味や渋味が発現したり、或いは刺激感やきしみ感が増強したりするおそれもある。
しかしながら、上記いずれの特許文献においても、こうした点について何らの検討もなされておらず、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を配合する処方設計において、その自由度を高めるには、依然として改善の余地がある。
【0006】
すなわち、本発明は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油の共存下であっても、カチオン性殺菌剤の優れた吸着性を確保しつつ、良好な使用感をもたらすことのできる液体口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、種々検討したところ、カチオン性殺菌剤、特定の酸又はその塩、及びポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を特定の含有量かつ質量比で含有することにより、カチオン性殺菌剤の歯面への高い吸着性と良好な使用感とを兼ね備えた液体口腔用組成物が得られることを見出した。
【0008】
したがって、本発明は、次の成分(A)~(C):
(A)カチオン性殺菌剤 0.01質量%以上1質量%以下
(B)ピロリン酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の酸又はその塩 酸換算量で0.01質量%以上0.15質量%以下
(C)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油
を含有し、かつ成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))が0.2以上30以下である液体口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の液体口腔用組成物によれば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が存在しながらも、カチオン性殺菌剤の歯面への優れた吸着性を発現できるだけでなく、渋味や苦味のような異味が生じることなく、また刺激感やきしみ感のような不快感を伴うことなく、良好な使用感をも実感することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、良好な使用感とは、本発明の液体口腔用組成物を口腔内に適用した際、渋味や苦味、塩味のような異味をもたらすことがなく、また刺激感やきしみ感のような不快感を伴うことのない感触を意味する。
【0011】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(A)として、カチオン性殺菌剤を0.01質量%以上1質量%以下含有する。かかる成分(A)は、むし歯、歯周病、口臭等の原因となる菌に対して殺菌効果を発揮する成分であり、口腔組織表面、例えば歯牙表面、口腔粘膜(歯ぐきを含む)等に吸着して、その効果の増強を図ることができる。
【0012】
成分(A)としては、具体的には、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、及びクロルヘキシジンから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なかでも、成分(C)の共存下において、充分な殺菌力を発揮する観点から、塩化セチルピリジニウム、又は塩化ベンゼトニウムが好ましく、塩化セチルピリジニウムがより好ましい。
【0013】
成分(A)の含有量は、歯面への優れた吸着性を確保しつつ、充分な殺菌作用をもたらす観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、0.01質量%以上であって、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.03質量%以上である。また、成分(A)の含有量は、渋味や苦味、刺激感の発現を抑制して良好な使用感を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、1質量%以下であって、好ましくは0.09質量%以下であり、より好ましくは0.07質量%以下である。そして、成分(A)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、0.01質量%以上1質量%以下であって、好ましくは0.02~0.09質量%であり、より好ましくは0.03~0.07質量%である。
【0014】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(B)として、ピロリン酸、クエン酸、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上の酸又はその塩を酸換算量で0.01質量%以上0.15質量%以下含有する。かかる成分(B)をこのような量で含有することにより、成分(C)の共存下であっても、成分(A)の歯面への優れた吸着性を確保しつつ、異味の発現や不快感の発現を有効に回避することができる。成分(B)の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が挙げられ、ナトリウム塩が好ましい。
かかる成分(B)のなかでも、成分(A)の歯面への吸着性と良好な使用感とを有効に両立させる観点から、ピロリン酸又はその塩とクエン酸又はその塩とを含有することが好ましい。
【0015】
成分(B)の含有量は、成分(A)の歯面への優れた吸着性を確保しつつ、異味の発現を有効に抑制する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、酸換算量で0.01質量%以上であって、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.04質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、刺激感やきしみ感、塩味の発現を有効に回避して良好な使用感を確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、酸換算量で0.15質量%以下であって、好ましくは0.13質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、また、使用感を向上させる観点から、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.09質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、酸換算量で0.01質量%以上0.15質量%以下であって、好ましくは0.02~0.13質量%であり、より好ましくは0.04~0.1質量%であり、また、使用感を向上させる観点から、好ましくは0.02~0.1質量%であり、より好ましくは0.04~0.09質量%以下である。
【0016】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(C)として、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油を含有する。かかる成分(C)を含有することにより、成分(A)を安定に液体口腔用組成物中へ含有させることができ、またその他の成分として、薬効成分等の油溶性成分の含有を検討する上で、処方設計の自由度を高めることもできる。
【0017】
成分(C)としては、具体的には、例えば、エチレンオキサイドの平均付加モル数が100のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が80のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。なかでも、エチレンオキサイドの平均付加モル数が20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、エチレンオキサイドの平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が60のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がより好ましく、エチレンオキサイドの平均付加モル数が20のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、及びエチレンオキサイドの平均付加モル数が40のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がさらに好ましい。
【0018】
成分(C)の含有量は、成分(A)の歯面への優れた吸着性を有効に確保する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.05質量%以上であり、より好ましくは0.1質量%以上であり、さらに好ましくは0.15質量%以上である。また、成分(C)の含有量は、異味の発現や不快感の発現を有効に抑制する観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.2質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下であり、好ましくは0.9質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下である。そして、成分(C)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.05~1.5質量%であり、より好ましくは0.1~1.2質量%であり、さらに好ましくは0.15~1質量%であり、さらに好ましくは0.15~0.9質量%であり、さらに好ましくは0.15~0.7質量%であり、さらに好ましくは0.15~0.5質量%であり、さらに好ましくは0.15~0.3質量%である。
【0019】
本発明の液体口腔用組成物において、成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))は、0.2以上30以下である。これにより、成分(C)の共存下であっても、成分(A)の歯面への優れた吸着性を確保しつつ、異味の発現をも有効に抑制することができる。
【0020】
成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))は、0.2以上であって、好ましくは1以上であり、より好ましくは2以上であり、さらに好ましくは3以上である。また成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))は、30以下であって、好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下であり、さらに好ましくは11以下であり、さらに好ましくは7以下である。そして、成分(C)の含有量と成分(A)の含有量との質量比((C)/(A))は、0.2以上30以下であって、好ましくは1~20であり、より好ましくは2~15であり、さらに好ましくは3~11であり、さらに好ましくは3~7である。
【0021】
本発明の液体口腔用組成物において、成分(B)の含有量と成分(C)の含有量との質量比((B)/(C))は、異味の発現や不快感の発現を有効に抑制する観点から、好ましくは0.001以上であり、より好ましくは0.01以上であり、より好ましくは0.06以上であり、より好ましくは0.08以上であり、さらに好ましくは0.12以上であり、好ましくは1以下であり、より好ましくは0.5以下であり、さらに好ましくは0.4以下である。
【0022】
本発明の液体口腔用組成物は、水(D)を含有するのが好ましい。これにより、含有成分の可溶化又は分散化を促進して、成分(A)の歯面への吸着性を有効に高めつつ、良好な使用感をもたらすことができる。
【0023】
成分(D)の含有量は、水の含有量を充分に増大させつつ、含有成分の良好な可溶化又は分散化を図る観点から、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは65質量%以上であり、さらに好ましくは70質量%以上であり、好ましくは99.9質量%以下であり、より好ましくは99.7質量%以下であり、さらに好ましくは99.5質量%以下である。
【0024】
本発明の液体口腔用組成物は、さらに香料(E)を含有することができる。本発明の液体口腔用組成物であれば、可溶化能に優れる成分(C)を含有していることもあり、かかる成分(E)を含有させても液体口腔用組成物の安定性を有効に確保することができる。
【0025】
成分(E)としては、具体的には、例えば、メントール、プレゴール、カルボン、アネトール、シネオール、サリチル酸メチル、シンナミックアルデヒド、オイゲノール、3-1-メントキシプロパン-1,2-ジオール、チモール、シトロネリルアセテート、リナロール、リナリルアセテート、ゲラニオール、ゲラニルアセテート、シトロネロール、リモネン、メントン、メンチルアセテート、N-置換-パラメンタン-3-カルボキサミド、ピネン、オクチルアルデヒド、シトラール、プレゴン、カルビルアセテート、ジヒドロカルビルアセテート、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、カンファー、ラクトン、エチルアセテート、エチルブチレート、アリルシクロヘキシルプロピオネート、メチルアンスラニレート、エチルメチルフェニルグリシデート、バニリン、ウンデカラクトン、ヘキサナール、ブチルアセテート、イソアミルアセテート、ヘキセノール、ジメチルサルファイド、シクロテン、フルフラール、トリメチルピラジン、エチルラクテート、メチルラクテート、エチルチオアセテート等の単品香料成分;ストロベリーフレーバー、アップルフレーバー、バナナフレーバー、パイナップルフレーバー、グレープフレーバー、マンゴーフレーバー、バターフレーバー、ミルクフレーバー、フルーツミックスフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー等の調合香料成分が挙げられ、また、これらは、ペパーミント油、スペアミント油、シナモン油、アニス油、ユーカリ油、ウィンターグリーン油、カシア油、クローブ油、タイム油、セージ油、セージクラリー油、ナツメグ油、ファンネル油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、カルダモン油、コリアンダー油、バジル油、マンダリン油、ライム油、ラベンダー油、ローズマリー油、ジンジャ-油、グレープフルーツ油、ローレル油、カモミル油、キャラウェイ油、マジョラム油、ベイ油、レモングラス油、レモンバーム油、ピメントベリー油、パルマローザ油、オリバナム油、パインニードル油、ペチグレン油、ネロリ油、ローズ油、ジャスミン油等の天然香料成分であってもよく、及びこれら天然香料成分を加工処理した香料成分でもよい。
【0026】
成分(E)の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.08質量%以上であり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%以下であり、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0027】
本発明の液体口腔用組成物において、成分(A)の歯面への優れた吸着性の発現と、良好な使用感の付与との両立を有効に図る観点から、多価金属又は多価金属含有化合物の含有を制限するのが好ましい。かかる多価金属としては、例えばストロンチウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム、鉄、銅、亜鉛、及びマンガンから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。また、多価金属含有化合物としては、炭酸カルシウム等の水不溶性カルシウム化合物、リン酸水素カルシウム、不溶性メタリン酸カリウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸ジルコニウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、及び酸化亜鉛等から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0028】
かかる多価金属又は多価金属含有化合物の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、金属原子換算量で、好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.01質量%以下であり、さらに好ましくは0.001質量%以下であり、或いは本発明の液体口腔用組成物は、多価金属又は多価金属含有化合物を実質的に含有しないのが好ましい。
【0029】
本発明の液体口腔用組成物は、清涼感向上の観点から、エタノールを含有することもできる。エタノールの含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは0~20質量%である。
【0030】
本発明の液体口腔用組成物は、成分(A)の歯面への優れた吸着性の発現と、良好な使用感の付与との両立を有効に図る観点から、アニオン界面活性剤の含有を制限するのが好ましい。かかるアニオン界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸エステル塩、アシルグルタミン酸ナトリウムやアシルサルコシンナトリウム等のアシルアミノ酸塩、ラウリルメチルタウリンナトリウム等のN-メチル長鎖アシルタウリンナトリウム塩、アルキルリン酸ナトリウム等のアルキルリン酸塩、高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩、及びポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0031】
アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の液体口腔用組成物中に、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、さらに好ましくは0.03質量%以下であり、或いは本発明の液体口腔用組成物は、アニオン界面活性剤を実質的に含有しないのが好ましい。
【0032】
本発明の液体口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分の他、例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等の湿潤剤や甘味剤;顔料;色素等を含有することができる。
【0033】
本発明の液体口腔用組成物の25℃におけるpHは、成分(A)の殺菌効果を充分に発揮させつつ、良好な使用感を確保する観点から、好ましくは4~9であり、より好ましくは5~8であり、さらに好ましくは5.5~7である。
【実施例
【0034】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0035】
[実施例1~15、比較例1~7]
表1~2に記載の各成分を混合し、液体口腔用組成物を調製した。得られた液体口腔用組成物の25℃におけるpHは6.0±0.2であった。得られた液体口腔用組成物について、下記方法にしたがって各評価を行った。
結果を表1~2に示す。
【0036】
《成分(A)の吸着率》
歯牙のモデルとしてエナメル質の主成分であるハイドロキシアパタイト(Hap)粉末(太平化学産業;以下、Hapと略す)を用いた。1.0gのHapを表1~2に示す各液体口腔用組成物5mLを添加し、30秒間攪拌後、遠心分離(4000rpm、10分間)を行い、高速液体クロマトグラフィ(HPLC)を用い、絶対検量線法)にて上清中の殺菌剤濃度を定量し、以下の計算式により、吸着率を算出した。
吸着率[%]=[1-(上清中の殺菌剤濃度)/(各液体口腔用組成物中の殺菌剤濃度)]×100
【0037】
《使用感の評価》
各液体口腔用組成物10mLを専門パネラーが口に含み、30秒間含漱した後、使用感(渋味、苦味、塩味、刺激感、及びきしみ感の有無)について、下記基準にしたがって官能評価した。
なお、専門パネラーは5名とし、求めた平均値が2.0点以上の場合を合格と判断した。
【0038】
4点:渋味、苦味、塩味を感じず、刺激感及びきしみ感も全くなかった
3点:渋味、苦味、塩味を感じず、刺激感及びきしみ感もほとんどなかった
2点:渋味、苦味、塩味、刺激感、及びきしみ感の少なくともいずれかをわずかに感じた
1点:渋味、苦味、塩味、刺激感、及びきしみ感の少なくともいずれかを強く感じた
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】