(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電磁サスペンションおよび洗濯機、家電機器
(51)【国際特許分類】
H02K 33/02 20060101AFI20231214BHJP
H02K 41/02 20060101ALI20231214BHJP
D06F 37/22 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H02K33/02 A
H02K41/02 C
D06F37/22
(21)【出願番号】P 2020147383
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】青山 康明
(72)【発明者】
【氏名】法月 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】須藤 哲也
(72)【発明者】
【氏名】根本 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】菊地 聡
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-135703(JP,A)
【文献】特開2017-200336(JP,A)
【文献】特開2018-113810(JP,A)
【文献】特表2017-505715(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F21/00-25/00
37/00-37/42
39/12-39/14
H02K33/00-33/18
41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つ以上の永久磁石と前記永久磁石を保持する
長形の保持部材と前記保持部材に結合されたガイドとを有する可動子と、
磁性体からなるコアと巻線とを有する電機子とを備え、
前記可動子と前記電機子とが相対運動し、
前記ガイドは、前記永久磁石と前記コアとが対向する方向
に設けられ
、
前記保持部材の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられるとともに、前記ガイドと前記保持部材を連結する連結部材を一対備え、
前記連結部材は、長形の第1の腕部材と長形の第2の腕部材とが十字状に交差する十字形状を有し、
前記ガイドは、前記第1の腕部材の一方の端部と他方の端部とに固定され、
前記保持部材は、前記第2の腕部材に沿って固定されている
ことを特徴とする電磁サスぺンション装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記永久磁石は、平板状であり、前記永久磁石の前記コアに対抗する面に磁極を有している
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記永久磁石と前記コアが対向する方向から、前記永久磁石を挟み込ように、少なくとも2本の前記ガイドを有している
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記永久磁石と前記コアが対向する方向から、前記永久磁石を挟み込ように、少なくとも2本の前記ガイドを有し、前記保持部材と少なくとも2本の前記ガイドが可動部の両端部で結合されている
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において
、
前記連結部材の
前記第1の腕部材の断面形状は、十字形状である
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項6】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において
、
前記連結部材の
前記第1の腕部材の断面形状は、H字状形状である
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項7】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において
、
前記連結部材の
前記第1の腕部材の断面形状の外周部の一部が円弧形状である
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項8】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において
、
前記連結部材の
前記第1の腕部材の断面形状の外周部の一部または全部が曲率を有する形状である
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項9】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記ガイドの中心の横方向の位置が、前記永久磁石に対向する前記コアの領域(幅)Wmの範囲にある
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項10】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記コアの横方向の中央部に前記ガイドの中心を配置した
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項11】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記コアの外形が直方体形状であって、直方体形状の中心軸上に前記ガイドの中心を配置した
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項12】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記コアと前記ガイドとの間にブッシュを配置した
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項13】
請求項1に記載の電磁サスペンション装置において、
前記コアにおける前記可動子の進行方向の両端部にブッシュを設けた
ことを特徴とする電磁サスペンション装置。
【請求項14】
請求項1から請求項13のうちの何れか一項に記載の電磁サスペンション装置を搭載した洗濯機。
【請求項15】
請求項1または請求項13に記載の電磁サスペンション装置を搭載した家電機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁サスペンションおよび洗濯機、家電機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、直線運動する電機としてリニアモータやリニアアクチュエータ(以下、総称してリニアモータと称す)が知られている。リニアモータは、回転機を直線状に切り開いた構造を有しており、固定子と可動子の各々に構成された磁極の間に働く磁力によって、可動子に推力を発生させる。よって、モータ制御において固定子と可動子のギャップ長の変化は、磁束密度に影響するためにモータ特性を大きく左右する。
【0003】
また、リニアモータを電磁サスペンションとして制振装置へ応用する検討も進められている。
例えば、特許文献1には、洗濯機用のサスペンションとして、リニアモータを有する電磁サスペンションを適用する技術が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、磁力を用いた除振装置に関する技術が記載されている。
すなわち、特許文献2は、金属板をM字形状にして可動子の剛性を高めたリニアアクチュエータに関する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-77971号公報
【文献】特開2017-200336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電磁サスペンションを制振装置に用いる場合、振動によって電磁サスペンションには推進方向だけではなく、前後/左右/捻じれなどの応力が加わる。前後/左右/捻じれの応力によりリニアモータのギャップ長は均等ではなくなり、リニアモータの特性や制御性を悪化させ、所望の制振効果が得られないおそれがある。
【0007】
特許文献1は、可動子とバネとシャフトが振動方向と同じ軸上に配置してある。かつ可動子の機械強度を確保するために、可動子の断面形状を凹凸加工や、半円形状などの幾何学形状に工夫する技術が記載されている。しかし、振動によるギャップ長の変化の是正(対応策)に関する記述はない。
【0008】
また、特許文献2は、金属板をM字形状にして可動子の剛性を高めることで可動子の変形を抑制し、リニアアクチュエータの性能の低下を抑制できるが、可動子の形状が複雑になる。また、磁石の形状がM字形状もしくは平板形状の磁石が1極当たり多数枚必要になるため、磁石量の増加や、製作の難易度が高くなる生産性の課題があった。
【0009】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、剛性が高く制振ロバスト性の高い電磁サスペンションおよび洗濯機、家電機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するため、本発明の電磁サスぺンション装置は、少なくとも1つ以上の永久磁石と前記永久磁石を保持する長形の保持部材と前記保持部材に結合されたガイドとを有する可動子と、磁性体からなるコアと巻線とを有する電機子とを備え、前記可動子と前記電機子とが相対運動し、前記ガイドは、前記永久磁石と前記コアとが対向する方向に設けられ、前記保持部材の長手方向の一方の端部と他方の端部とに設けられるとともに、前記ガイドと前記保持部材を連結する連結部材を一対備え、前記連結部材は、長形の第1の腕部材と長形の第2の腕部材とが十字状に交差する十字形状を有し、前記ガイドは、前記第1の腕部材の一方の端部と他方の端部とに固定され、前記保持部材は、前記第2の腕部材に沿って固定されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、剛性が高く制振ロバスト性の高い電磁サスペンションおよび洗濯機、家電機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】第1実施形態の電磁サスペンションに用いるリニアモータの構成例を示す図。
【
図2】第1実施形態で可動子の側とした2次側の構成例を示す図。
【
図3A】
図1のリニアモータを模式的にXY断面で切断した図。
【
図3B】
図1のリニアモータを模式的にYZ断面で切断した図。
【
図6】第3実施形態のリニアモータの十字状の連結部材の左右方向と上下方向にそれぞれ2つのガイドを設けた構成例を示す図。
【
図7】第3実施形態のリニアモータの可動子の一例を示す図。
【
図8】リニアモータの可動子の中央部に撓みが生じた場合の各部の変形方向を示す図。
【
図9A】第4実施形態の連結部材に生じる撓みを抑制する一例のリニアモータを示す図。
【
図9B】リニアモータの可動子の上側を模式的に切断した図。
【
図10A】第4実施形態のリニアモータの可動子の上側を模式的に切断した図。
【
図10B】第4実施形態のリニアモータの可動子の一例を示す図。
【
図11A】第4実施形態の連結部材の断面を半円状にした場合のリニアモータの例を示す図。
【
図11B】第4実施形態のリニアモータの可動子の一例を示す図。
【
図12A】第5実施形態のリニアモータを模式的にXY断面で切断した図。
【
図12B】第5実施形態のコアの左右方向の中央部上の上下にガイドシャフトを配置した図。
【
図13A】第5実施形態のリニアモータガイドシャフトをコアの永久磁石1に近い側に埋め込んだ例を示す図。
【
図13B】第5実施形態のリニアモータの磁束の流れを模式的に示す図。
【
図14A】第6実施形態のリニアモータの1例を示す図。
【
図14B】第6実施形態のリニアモータを模式的にYZ断面で切断した図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明を実施するための実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
[第1実施形態]
〈第1実施形態の構成〉
本発明の第1実施形態について
図1~
図3を用いて説明する。
図1に、第1実施形態の電磁サスペンション100に用いるリニアモータ1の構成例を示す。
【0014】
第1実施形態のリニアモータ1は、サスペンション100として振動のストロークや周波数に応じて、磁束を変化させることで減衰力特性やばね特性を発生させる。つまり、リニアモータ1は、振動のストロークや周波数に応じて任意の推力を発生させる。
【0015】
リニアモータ1は、1次側の固定子1Fと2次側の可動子1Kとで構成されている。
1次側の固定子1Fは、鉄心のコア11と、筒状のボビン13とボビン13に巻かれる巻線12とで構成されている。1次側の固定子1Fは、電流により磁極が変化する電磁石を構成する。
2次側の可動子1Kは、平板状の永久磁石21と、永久磁石保持部材22と、連結部材23と、ガイドシャフト24とで構成されている。磁石の力は、磁石の表面積で決定される。永久磁石21は、平板状なので少ない磁石量で多くの磁束が発生させられる。そのため、磁石の利用効率がよい。
【0016】
永久磁石保持部材22は、磁界を形成する永久磁石21を周囲で保持する。
ガイドシャフト24は、永久磁石21の上方および下方に配置されている。
連結部材23は、上方のガイドシャフト24と下方のガイドシャフト24とをそれぞれ永久磁石保持部材22に連結する。上方のガイドシャフト24と下方のガイドシャフト24はそれぞれ一方側の永久磁石保持部材22と他方側の永久磁石保持部材22とに固定されている。ガイドシャフト24を設けることで、可動子1KのX軸周りおよびZ軸周りの強度(剛性)が高まる。
【0017】
ガイドシャフト24は、永久磁石21の上方および下方に少なくとも1つ以上設けるとよく、1つまたは3つ以上でもよい。
リニアモータ1の推力は、1次側の固定子の磁極と、2次側の可動子の磁極との吸引力と反発力とで実現されている。
第1実施形態では、2次側を可動、1次側を固定の場合の例を示したが、1次側と2次側が推力の発生方向(Z方向)に相対的に直線駆動するものであれば、どちらが可動側であっても、固定側であっても構わない。
【0018】
また、1次側のボビン13は絶縁や巻線12を巻く作業性の観点から設けられているが、ボビン13を設けなくても同様の推力が得られる。
図2に、第1実施形態で可動子1Kの側とした2次側の構成例を示す。
リニアモータ1は、少なくとも1つ以上の永久磁石21(
図2参照)に対向するように、コア11を配置している。
1次側の固定子のコア11に巻いた巻線12に電流を印加することで、コア11を通る磁界を発生させる。そして、1次側の磁極と2次側の磁極との吸引力と反発力とにより、2次側の可動子の永久磁石21に、Z方向の力(推力)を発生させる。
【0019】
図2に示すように、第1実施形態の可動子1Kは、永久磁石21を2個有している。各1個の永久磁石21の一方の磁極は、Y方向に向かってN極(磁極)となり、他方の磁極はY方向に向かってS極(磁極)となるように構成されている。
リニアモータ1の推力は、可動子1Kの永久磁石21と固定子1Fのコア11との対向する面積に応じて推力が変化する。そこで、推力を大きくするためには、可動子1Kの永久磁石21と、固定子1Fのコア11とが対向する面積を大きくするのが効果的である。
【0020】
これは、永久磁石21の磁極面(NまたはSの面)と、コア11の対向面積でリニアモータ内の推力に影響のある磁束量(=磁極面の磁束密度×対向面積)が決まるためである。永久磁石21の厚さ一定で、この対向面積を大きくすると、永久磁石21が扁平になる。そこで、面積に応じて永久磁石21を厚くすることで可動子1Kの強度が増し、撓みが発生しにくくなる。つまり、可動子1Kを構成する永久磁石21と永久磁石保持部材22とを厚くすることで高強度な可動子を構成できる。
【0021】
しかし、可動子1Kの永久磁石21が厚くなっても、永久磁石21と固定子1Fのコア11とが対向する面積は大きくならないため、推力の増加は相対的に小さい。これは、永久磁石21が厚くなることで、永久磁石21の有する磁気エネルギーは大きくなるが、厚くなった分、永久磁石21を挟み込んだコア11の間隔が増大し、磁気抵抗が増すことにより推力の増加分が相殺されてしまう。つまり、永久磁石21の厚みは推力にほぼ寄与しない。
【0022】
したがって、永久磁石21の厚みは、その他の制約条件(例えば、ネオジムなどの希土類磁石の場合、耐熱性や薄肉加工の制約がある)を考慮したうえで、できるだけ薄くすることで永久磁石21の使用量を削減できる。つまり、後記するように、可動子1Kの断面二次モーメントを大きくする手法を用いることで、平板状の永久磁石21の表面積を大きくとり、かつ、剛性の高いリニアモータ1を提供できる。同様の効果が得られれば、永久磁石21や永久磁石保持部材22の形状は平板状やH断面形状に限定されるものではない。
【0023】
図3A、
図3Bに、本発明のリニアモータ1の1例の構造例を示す。
図3Aに、
図1のリニアモータ1を模式的にXY断面で切断した図を示す。
図3Aの構成例ではコア11は、
図3Aの上下方向(Y方向)に2分割されている。各コア11はE字形状をしており、コア11を向かい合わせた形状をしている。それぞれのコア11の中央部に巻線12が巻回され、永久磁石21を上方と下方とから、挟み込むように配置される。巻線12で生じた磁束や、永久磁石21の磁束は、コア11の延在方向に沿って∞のように流れ、上側のコアから両脇のコアを経て下側のコアへループを構成する。
【0024】
また、可動子1Kの永久磁石保持部材22は、XY断面においてH字形状(
図3A参照)をしている。これにより、永久磁石保持部材22のY方向の長さを長くしてXY断面の断面2次モーメントを大きくしている。
XY断面のH字形状の永久磁石保持部材22のXY断面の中央部の薄いところに永久磁石21が配置されている。これにより、永久磁石21が薄く、また、コア11との対向面積を大きくできるように構成されている。
【0025】
そのため、可動子1Kの永久磁石保持部材22の剛性が低下せずに永久磁石21を薄くし、使用量を削減しつつ、推力を確保できる。
図3Bに、
図1のリニアモータ1を模式的にYZ断面で切断した図を示す。
永久磁石21は、永久磁石保持部材22に周囲を結合されている。そして、永久磁石保持部材22の長手方向の各端部に十字形状の連結部材23a、23bがそれぞれ結合されている。
【0026】
また、連結部材23aと連結部材23bの上部に円柱状のガイドシャフト24aが設置され、その下部に円柱状のガイドシャフト24bが、上下方向に2本設置されている。これにより、
図3Bに示すように、可動子1KのYZ断面は日の字形状になる。これにより、永久磁石保持部材22が下方向に撓んだ場合、上方向に撓んだ場合の変形を、十字状の連結部材23a、23bと円柱状のガイドシャフト24a、24bとで抑制できる。さらに、可動子1Kの進行方向の両端に連結部材23a、23bを連結することで、可動子1Kの進行方向断面の構造が閉じた形になり、さらに剛性が向上する。
【0027】
また、ガイドシャフト24は可動子1Kと固定子1Fとが相対的に移動できれば、円柱状の形状に限定されるものではない。さらに、ガイドシャフト24a、24bは、永久磁石保持部材22から、離れたY方向の位置(Y方向または-Y方向)に設置することにより、可動子1K全体の断面二次モーメントを大きくできる利点もある。また、コア11とガイドシャフト24の間に、摩耗や劣化を低減するためブッシュ(図示しない)を設置することも可能である。
【0028】
上記構成によれば、電磁サスペンション100の推進方向以外の応力によって発生する固定子1Fと可動子1Kのギャップ長の変化を抑制し、剛性が高く、制振ロバスト性の高い電磁サスペンション100を提供できる。
【0029】
[第2実施形態]
図4に、第2実施形態に係る洗濯機Wの斜視図を示す。
図5に、第2実施形態に係る洗濯機Wの縦断面図を示す。
本発明を実施するための第2実施形態について、
図4、
図5を参照しながら詳細に説明する。
【0030】
〈第2実施形態の構成〉
第2実施形態は、第1実施形態のリニアモータ1を搭載した電磁サスペンション100を搭載した洗濯機Wの構成例である。
【0031】
図4に示す洗濯機Wは、ドラム式の洗濯機であり、また、衣類を乾燥する機能も有している。洗濯機Wは、ベース310と、筐体320と、ドア330と、操作・表示パネル340と、排水ホースHとを、備えている。洗濯機Wの内部には、外槽370と、外槽370を支持する一対の電磁サスペンション100L,100Rとを備えている。電磁サスペンション100L,100Rは、それぞれ第1実施形態における電磁サスペンション100と同様に構成されている。
【0032】
洗濯機Wの筐体320は、左右の側板320a,320aと、前面カバー320bと、背面カバー320c(
図5参照)と、上面カバー320dとを、備えている。ベース310は、筐体320を支持するものである。前面カバー320bの中央付近には、衣類の出し入れを行うための円形の投入口h1(
図5参照)が形成されている。ドア330は、投入口h1に設けられる開閉可能な蓋である。
【0033】
洗濯機Wは、前述した構成の他に、洗濯槽350と、リフタ360とを備えている。リフタ360は、洗濯中・乾燥中に衣類を持ち上げて落下させるものであり、洗濯槽350の内周壁に設置されている。
洗濯槽350は、衣類を収容するものであり、有底円筒状を呈している。洗濯槽350は、外槽370に内包され、外槽370と同軸上に回転自在に軸支されている。洗濯槽350の周壁および底壁には、通水・通風のための貫通孔(図示せず)が多数設けられている。
図5に示すように、洗濯槽350の開口h2は、外槽370の開口h3とともに、閉状態のドア330に臨んでいる。
【0034】
なお、
図5に示す例において洗濯槽350の回転中心軸は、開口h2の側が高くなるように傾斜しているが、本発明はこれに限定されない。すなわち、洗濯槽350の回転中心軸は、水平方向または鉛直方向であってもよい。外槽370は、洗濯水の貯留等を行うものであり、有底円筒状を呈している。
図5に示すように、外槽370は、洗濯槽350を内包している。
【0035】
また、
図4に示したように、外槽370の左右には、電磁サスペンション100L,100Rが配置されている。また、外槽370の底壁の最下部には排水孔(図示せず)が設けられ、この排水孔に排水ホースHが接続されている。そして、排水ホースHに設けられた排水弁(図示せず)が閉弁された状態で外槽370に洗濯水が貯留され、また、排水弁が開弁されることで洗濯水が排出されるようになっている。
洗濯機Wは、洗濯槽350を回転させる駆動機構380と、洗濯槽350に温風を送り込む送風ユニット390と、を備えている。
【0036】
駆動機構380は、外槽370の底壁の外側に設置されている。駆動機構380が備えるモータの回転軸は、外槽370の底壁を貫通して、洗濯槽350の底壁に連結されている。
送風ユニット390は、洗濯槽350の上側に配置されている。送風ユニット390は、ヒータおよびファンを備えている。そして、ヒータで熱せられた空気が、ファンによって洗濯槽350に送り込まれる。これによって、水を含んだ衣類が、洗濯槽350内で徐々に乾燥する。
【0037】
上記構成の洗濯機Wは、第1実施形態のリニアモータ1を備えている。そして、リニアモータ1の可動子1Kの一端、または固定子1Fの一端は、振動を抑制する対象である制振対象物に結合される。
【0038】
そこで、
図4、
図5では可動子1Kの一端を制振対象物に結合している。上述の如く、制振対象物とは、電磁サスペンション100によって振動を抑制しようとする対象物であり、
図4、
図5の例において制振対象物は、洗濯槽350内の洗濯物の偏りにより振動する外槽370である。固定子1Fの一端は洗濯機Wの支持部材であるベース310に結合されている。当然ながら、電磁サスペンション100を上下逆さまに配置し、固定子1Fの一端を外槽370(
図4参照)に結合し、可動子1Kの一端をベース310に結合してもよい。
【0039】
洗濯機の外槽370がz軸方向(鉛直方向)に振動すると、それに伴って可動子1Kがz軸方向(鉛直方向)に沿って往復し、可動子1Kと固定子1Fとの相対的な位置関係が変化する。
【0040】
ここで、洗濯槽350内の洗濯物の偏りによる外槽370の振動、すなわち洗濯機Wの振動について簡単に説明する。洗い・すすぎ・乾燥時には、
図5に示す駆動機構380によって洗濯槽350が低速回転し、洗濯槽350の底に溜まった衣類をリフタ360によって持ち上げて落下させるタンブリング動作が繰り返される。また、脱水時には洗濯槽350が高速回転し、回転による遠心力で衣類の水分を外に押し出す遠心脱水が行われる。
【0041】
なお、従来の洗濯機では、洗い・すすぎ・乾燥時において、落下する衣類の反力で洗濯槽350の振動の振幅が大きくなることが多かった。また、従来の洗濯機では、脱水時において、衣類の位置の偏りに起因して、洗濯機Wで振動・騒音が発生することが多かった。このように、洗濯槽350における衣類の量や位置の偏り、含水率の他、洗い・すすぎ・乾燥・脱水等の諸条件によって、洗濯機Wの振動の仕方は時々刻々と変化する。その振動は外槽370に伝播する。
【0042】
第2実施形態の洗濯機Wによれば、振動の仕方が時々刻々と変化する外槽370を電磁サスペンション100としてのリニアモータ1で支持するので、振動の仕方に応じて制振特性を変えることができる。
【0043】
また、外槽370は様々な方向に振動するが、リニアモータ1は、十字状の連結部材23a、23bと円柱状のガイドシャフト24a、24bにより、XYZ軸方向に強度が高いので、洗濯機Wの耐久性および機械的信頼性が向上する。
したがって、剛性が高く、制振ロバスト性の高い洗濯機Wを提供できる。
【0044】
[第3実施形態]
〈第3実施形態の構成〉
図6に、第3実施形態のリニアモータ1Aの十字状の連結部材23の左右方向(X方向)と上下方向(Y方向)にそれぞれ2つのガイド24a、24bを設けた構成例を示す。
図7に、第3実施形態のリニアモータ1Aの可動子1K1の一例を示す。
第3実施形態のリニアモータ1Aは、永久磁石21および永久磁石保持部材22のリニアモータ1の中心からX方向の左右外側に2本のガイド24aを設け、永久磁石21および永久磁石保持部材22のリニアモータ1の中心からY方向の上下側に2本のガイド24bを設けたものである。
【0045】
その他の第1実施形態、第2実施形態と同様の符号を付与した部材の機能は同一であり、説明は省略する。
このように、可動子1K1の外周に複数本のガイド24a、24bを設けることで、多方向の応力に対して可動子1Kの変形を抑制できる。電磁サスペンション100に加わる応力はX方向またはY方向単独で発生することは少なく、応力はX方向および/ないしY方向(またはZ方向)の合成で生じ、可動子1K1(
図7参照)の変形はXYZそれぞれに発生する場合がある。
【0046】
このような場合に対して、可動子1K1の外周に複数本のガイド24a、24bを設けることで、多様な変形を抑制でき、剛性を高くすることが可能である。
また、電磁サスペンション100にはねじれ、各XYZ軸周りの回転力が生じる場合があるが、これらに対する変形も本第3実施形態の構成により抑制が可能である。
4本のガイド24a、24bは、可動子1K1の中心(Z軸)からほぼ等距離に配置されている。各ガイド24b、24bは変形が発生する軸周りから同等の位置に配置することで多方向からの振動や応力に対する変形をバランスよく抑制することが可能であり、制振ロバスト性が向上する利点がある。
【0047】
[第4実施形態]
〈第4実施形態の構成〉
図8に、リニアモータ1の可動子1K1の中央部に撓みが生じた場合の各部の変形方向を示す。
例えば、永久磁石21とコア11の吸引力や外部からの外力により可動子1Kの中央部に変形が発生したとすると、可動子1Kの両端の連結部材23は中央部に寄るようにリニアモータ1の内部側への変形(
図8の二点鎖線)が生じる。つまり、可動子1Kの中央部に外力が加わると、連結部材23にも曲げ応力が発生し、連結部材23の中央部が内部側に変形する撓みが生じる。
【0048】
図9Aに、第4実施形態の連結部材23Aに生じる撓みを抑制する一例のリニアモータ1Cを示す。
図9Aは第4実施形態の連結部材23Aの断面を十字状にした場合のリニアモータ1Cの例を示す。
図9Bは、可動子1K2の上側を模式的に切断した図であり、
図9Bはその可動子1K2のみの一例である。
【0049】
図9Aに示すように、連結部材23Aの断面を十字状にすることでX軸周りおよびZ軸周りの断面二次モーメントが増加する。そのため、
図9Aのリニアモータ1Cの場合は、X方向、Y方向の変形に対して剛性を特に高くすることができる。可動子1K2の中央の板状の部分に生じた撓みや、可動子1K2全体に生じるねじれなどを抑制することが可能となり、制振ロバスト性の高い電磁サスペンションが構成できる。
【0050】
図10Aに、第4実施形態の連結部材23Bの断面をH字状にした場合のリニアモータ1Dを示す。
図10Aはリニアモータ1Dの可動子1K3の上側を模式的に切り取った図であり、
図10Bはリニアモータ1Dの可動子1K3の一例である。
【0051】
図10Aに示すように、連結部材23Bの断面をH字状にすることで、XY方向やXZ方向、YZ方向など斜めの応力が働いた場合に、その変形抑制効果が大きい。
図11Aに、第4実施形態の連結部材23Cの断面を半円状にした場合のリニアモータ1Eの例を示す。
図11Aは可動子1K4の上側を模式的に切断した図であり、
図11Bはリニアモータ1Eの可動子1K4の一例を示す。
【0052】
図11Bに示すように、連結部材1K4の横断面を半円状にすることで、X方向、Y方向の変形や、XZ方向、YZ方向など斜め方向に対しても、X方向、Y方向と同程度の撓みや変形の抑制効果が得られる。そのため、電磁サスペンションにおけるある限定された方向の撓みや変形が大きいといった弱点を回避または抑制できる。
なお、連結部材1K4の横断面は、半円でなくても円弧状でも同様の効果が得られれば半円状に限定されるものではない。例えば、連結部材1K4の横断面形状の一部または全部に曲率をもった形状としてもよい。この構成によっても、X方向、Y方向の変形や、XZ方向、YZ方向など斜め方向に対しても、X方向、Y方向と同程度の撓みや変形の抑制効果が得られる。
【0053】
[第5実施形態]
〈第5実施形態の構成〉
本発明の第5実施形態について
図13を用いて説明する。
図12A、12Bに、第5実施形態のリニアモータ1Jの模式図を示す。
図12Aに、第5実施形態のリニアモータ1Jを模式的にXY断面で切断した図を示す。
図12Bに、第5実施形態のコア11の左右方向の中央部(1点鎖線)上の上下にガイドシャフト24cを配置した図を示す。
【0054】
第5実施形態のリニアモータ1Jは、磁束にできるだけ影響しない箇所にガイドシャフト24cを設けた構成である。
図12Aに示すリニアモータ1Jのコア11には、上側のコア11に生じる磁束の流れを矢印で示している。磁束はコア11の中央部(矢印α11)からコア11の脇の部分を流れ(矢印α12)、コア11の下部へ向かう(矢印α13)。
【0055】
ガイドシャフト24cを設置する場所は、磁束が分流する領域であり、謂わば川の中州のように磁束密度が減少する領域である。
図12A、
図12Bに示すように、コア11の中心線上の上下の磁束が分流する範囲であり、磁束密度が低下する領域に、ガイドシャフト24cを設ける。このガイドシャフト24cの配置により、磁束密度の低下や磁気回路への悪影響を低減できる。コア11の横方向の中央部にガイドシャフト24cの中心を配置することで、最も磁束密度の低下や磁気回路への悪影響の低減効果を高められる。
【0056】
図12Bに示すように、コア11の永久磁石21に対向する部分のX方向の領域Wmに、ガイドシャフト24のX方向の中心が入ることで、ガイドシャフト24を設けたことによる磁気回路への影響を小さくできる。
【0057】
図13A、13Bに、
図12A、12Bのガイドシャフト24cの配置を示す実施例の一例のリニアモータ1Gを示す。
図13Aに、リニアモータ1Gのガイドシャフト24cをコア11の永久磁石21に近い側に埋め込んだ例を示す。
図13Bに、リニアモータ1Gの磁束の流れを模式的に示す。
【0058】
図13Bに示すように、リニアモータ1Gの磁束の分流点では磁束密度が低下するため、コア11の扁平形状の永久磁石21に近い側にガイドシャフト24cを設けることが可能である。
これにより、リニアモータ1Gにガイドシャフト24cを設けても、リニアモータ1Gの高さ方向(Y方向)の寸法を大きくしないで済む利点がある。
また、
図13Bに示すように、コア11に焼き入れした筒状のブッシュ26を圧入し、ブッシュ26の内側にガイドシャフト24cを貫通させた構造になっている。これにより、ガイドシャフト24cなどの可動子1K5と、コア11などの固定子1F5との位置関係の精度が高まり、ガイドシャフト24cの位置がずれたことによる応力を抑制できる利点がある。これにより、リニアモータ1Gの制振ロバスト性が向上する。
【0059】
[第6実施形態]
〈第6実施形態の構成〉
図14A、
図14Bに、第6実施形態のリニアモータ1Hの模式図を示す。
図14Aに、第6実施形態のリニアモータ1Hの1例を示し、リニアモータ1Hを模式的にYZ断面で切断した図を示す。
図14Bに、第6実施形態のリニアモータ1Hを模式的にYZ断面で切断した図を示す。
【0060】
第6実施形態は、基本的な構成は第1実施形態乃至第6実施形態と同様であり、
図14Bに示すように、筒状のブッシュ26を1つのガイドシャフト24に対して、2つコア11に挿入している。なお、ブッシュ26は下記の所定の機能を果たせれば、筒状でなくともよい。
【0061】
第6実施形態のリニアモータ1Hは、ブッシュ26をコア11のZ軸方向の外側であるコア11の表面側の端部に配置する。これにより、2つのブッシュ26間のZ軸方向の距離をとることが可能になる。また、ガイドシャフト24がZ軸方向に円滑なスライド動作ができる。また、コア11によるガイドシャフト24の支持点間隔が広がり曲げや撓みの抑制効果が高まる。
【0062】
さらに、コア11のZ方向両端面はコア11が無くなることによる磁気抵抗の増加や端部の漏れ磁束によりコア11内部に磁束のアンバランスが生じる。一般に焼き入れ材は、少なからず磁性を有している場合が多い。そこで、ブッシュ26に焼き入れ材が用いられている。ブッシュ26をコア11のZ軸方向の外側(コア11の表面側)に配置することで、コア11内部に発生する磁束のアンバランスを抑制することが可能となる。したがって、リニアモータ1Hの性能を改善できる利点がある。
【0063】
[その他の実施形態]
1.前記実施形態では、洗濯機に電磁サスペンション100のリニアモータ1~1Hを適用した場合を説明したが、洗濯機以外の冷蔵庫、エアコン、ロボット掃除機等の洗濯機以外の任意の家電機器に適用してもよい。任意の家電機器に電磁サスペンション100のリニアモータ1~1Hを適用することで、第1~6実施形態で説明した効果が得られる。
【0064】
2.前記実施形態で説明した構成は、本発明の一例であり、特許請求の範囲で記載した範囲内でその他の様々な形態が可能である。
【符号の説明】
【0065】
1、1A、1B、1C、1D、1E、1F、1G、1H リニアモータ(電磁サスペンション装置)
1K 電機子(固定子)
11 コア
12 巻線
21 永久磁石
22 永久磁石保持部材(保持部材)
23 連結部材
24、24a、24b、24c ガイドシャフト(ガイド)
26 ブッシュ
100、100R、100L 電磁サスペンション(電磁サスペンション装置)
W 洗濯機(家電機器)
Wm 領域