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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】押出成形機及び成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/20 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B28B3/20 Z
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020172210
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063789
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 慧竜
(72)【発明者】
【氏名】田島 裕一
(72)【発明者】
【氏名】近藤 好正
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-119891(JP,A)
【文献】特開2013-193278(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/20-3/26,
B29C 48/00-48/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に口金を有し、他端が押出部の押出口に接続されるとともに、内部にスクリーンが配置される成形部を備える押出成形機であって、
前記成形部は、周方向に分割された複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を前記スクリーンと前記口金との間に有し、複数の前記第1ゾーンは個別に温度調整が可能である押出成形機。
【請求項2】
前記成形部は、前記スクリーンと前記口金との間に前記第1温度調節部材を2つ以上有し、2つ以上の前記第1温度調節部材の間に断熱部材が配置されている、請求項1に記載の押出成形機。
【請求項3】
前記第1ゾーンの数が4~24個である、請求項1又は2に記載の押出成形機。
【請求項4】
前記成形部は、前記口金を保持し且つ温度調節が可能な口金保持部材を更に有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の押出成形機。
【請求項5】
前記口金保持部材は、周方向に分割された複数の第2ゾーンを含み、複数の前記第2ゾーンは個別に温度調整が可能である、請求項4に記載の押出成形機。
【請求項6】
前記第2ゾーンの数が4~24個である、請求項5に記載の押出成形機。
【請求項7】
前記成形部は、前記他端と前記スクリーンとの間に拡径部を有し、前記拡径部に第2温度調節部材が配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の押出成形機。
【請求項8】
前記第2温度調節部材は、周方向に分割された複数の第3ゾーンを含み、複数の前記第3ゾーンは個別に温度調整が可能である、請求項7に記載の押出成形機。
【請求項9】
前記第3ゾーンの数が4~24個である、請求項8に記載の押出成形機。
【請求項10】
セラミックス成形体の製造に用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の押出成形機。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の押出成形機を用いて成形材料を押出成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を測定する温度分布測定工程と、
前記成形体を所定の長さに切断する切断工程と、
切断された前記成形体の寸法を計測する寸法計測工程と
を備える成形体の製造方法であって、
前記押出成形機における前記第1温度調節部材の前記第1ゾーンの温度と、前記温度分布測定工程における前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程における前記成形体の寸法との関係を予め求めておき、前記温度分布測定工程において測定された前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程において計測された前記成形体の寸法から前記関係に基づいて前記第1ゾーンの適正温度を算出し、前記成形工程において前記第1ゾーンを前記適正温度に制御する、成形体の製造方法。
【請求項12】
請求項5又は6に記載の押出成形機を用いて成形材料を押出成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を測定する温度分布測定工程と、
前記成形体を所定の長さに切断する切断工程と、
切断された前記成形体の寸法を計測する寸法計測工程と
を備える成形体の製造方法であって、
前記押出成形機における前記第1温度調節部材の前記第1ゾーン及び前記口金保持部材の前記第2ゾーンの温度と、前記温度分布測定工程における前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程における前記成形体の寸法との関係を予め求めておき、前記温度分布測定工程において測定された前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程において計測された前記成形体の寸法から前記関係に基づいて前記第1ゾーン及び前記第2ゾーンの適正温度を算出し、前記成形工程において前記第1ゾーン及び前記第2ゾーンを前記適正温度に制御する、成形体の製造方法。
【請求項13】
前記成形部が、前記第2ゾーンを含む前記口金保持部材を有する請求項8又は9に記載の押出成形機を用いて成形材料を押出成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を測定する温度分布測定工程と、
前記成形体を所定の長さに切断する切断工程と、
切断された前記成形体の寸法を計測する寸法計測工程と
を備える成形体の製造方法であって、
前記押出成形機における前記第1温度調節部材の前記第1ゾーン、前記口金保持部材の前記第2ゾーン及び前記第2温度調節部材の前記第3ゾーンの温度と、前記温度分布測定工程における前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程における前記成形体の寸法との関係を予め求めておき、前記温度分布測定工程において測定された前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程において計測された前記成形体の寸法から前記関係に基づいて前記第1ゾーン、前記第2ゾーン及び前記第3ゾーンの適正温度を算出し、前記成形工程において前記第1ゾーン、前記第2ゾーン及び前記第3ゾーンを前記適正温度に制御する、成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押出成形機及び成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種成形体を製造するために押出成形機が用いられている。例えば、自動車排ガス浄化用触媒担体、ディーゼル微粒子除去フィルタ(DPF)、ガソリン微粒子除去フィルタ(GPF)、燃焼装置用蓄熱体などに用いられるハニカム形状のセラミックス構造体の製造では、生産性の観点から、押出成形機を用いてハニカム形状のセラミックス成形体を製造することが主流となっている。
【0003】
ところでDPFやGPFなどの用途に用いられるセラミックス構造体は、寸法精度が低いと、熱応力などによって亀裂が入るなどの不具合が生じ易い。そのため、焼成前のセラミックス成形体に対しても高い寸法精度が要求されている。特に、セルが延びる方向に直交する断面がオーバル形状などの異形のハニカム成形体では、外周部の寸法精度が確保し難い。
【0004】
そこで、特許文献1には、口金の上流にバウディフレクタ装置を設け、口金を通過する成形材料の不均一な流れに起因する成形体の反りを抑制する技術が提案されている。バウディフレクタ装置は、成形材料の流れを機械的に制御することができるため、外周部の寸法精度が確保できる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2006-518294号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、成形材料の流れをバウディフレクタ装置で機械的に制御すると、成形部において、成形材料の流速が変化し易い上、成形材料が詰まる恐れもある。そのため、バウディフレクタ装置を用いたとしても、外周部の寸法精度を安定して確保することが難しい。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、外周部の寸法精度が高い成形体を製造することが可能な押出成形機を提供することを目的とする。
また、本発明は、外周部の寸法精度が高い成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、一端に口金を有し、他端が押出部の押出口に接続されるとともに、内部にスクリーンが配置される成形部を備える押出成形機について鋭意研究を行った結果、スクリーンと口金との間の領域における温度制御が成形体の外周部の寸法精度と密接に関係しているという知見を得た。そして、本発明者らは、当該領域において、周方向に分割された複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を設け、複数の第1ゾーンを個別に温度制御することにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、一端に口金を有し、他端が押出部の押出口に接続されるとともに、内部にスクリーンが配置される成形部を備える押出成形機であって、
前記成形部は、周方向に分割された複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を前記スクリーンと前記口金との間に有し、複数の前記第1ゾーンは個別に温度調整が可能である押出成形機である。
【0010】
また、本発明は、前記押出成形機を用いて成形材料を押出成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を測定する温度分布測定工程と、
前記成形体を所定の長さに切断する切断工程と、
切断された前記成形体の寸法を計測する寸法計測工程と
を備える成形体の製造方法であって、
前記押出成形機における前記第1温度調節部材の前記第1ゾーンの温度と、前記温度分布測定工程における前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程における前記成形体の寸法との関係を予め求めておき、前記温度分布測定工程において測定された前記成形体の温度分布及び前記寸法計測工程において計測された前記成形体の寸法から前記関係に基づいて前記第1ゾーンの適正温度を算出し、前記成形工程において前記第1ゾーンを前記適正温度に制御する、成形体の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、外周部の寸法精度が高い成形体を製造することが可能な押出成形機を提供することができる。
また、本発明によれば、外周部の寸法精度が高い成形体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態1に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図2】成形材料の押出方向に直交する第1温度調節部材の断面図である。
図3】本発明の実施形態2に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図4】本発明の実施形態3に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図5】実施例で用いた第1温度調節部材の第1ゾーンを説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図1に示されるように、本発明の実施形態1に係る押出成形機1は、押出部10と、押出部10に接続された成形部20とを備えている。
押出部10は、成形部20に成形材料を押出すことが可能な構造であれば特に限定されない。
成形部20は、一端に口金21を有し、他端が押出部10の押出口13に接続されるとともに、内部にスクリーン22が配置される。また、成形部20は、第1温度調節部材23をスクリーン22と口金21との間に有する。
【0015】
ここで、成形材料の押出方向に直交する第1温度調節部材23の断面図を図2に示す。
図2に示されるように、第1温度調節部材23は、周方向に分割された複数の第1ゾーン23aを含む。複数の第1ゾーン23aは個別に温度調整が可能なように構成されている。そのため、複数の第1ゾーン23aのそれぞれを異なる温度に制御することができる。なお、図2では、一例として、12個の第1ゾーン23aを有する形態を示している。
【0016】
上記のような構成を有する押出成形機1では、複数の第1ゾーン23aを個別に温度制御することにより、各第1ゾーン23a付近を流れる成形材料の流速を場所に応じて制御することができる。そのため、所望の形状の成形体、特に押出方向に直交する断面形状が異形の成形体の外周部の形状に押出成形し易くなり、外周部の寸法精度が高い成形体を製造することができる。
【0017】
複数の第1ゾーン23aの設定温度としては、作製する成形体の形状(特に、押出方向に直交する断面形状)や使用する成形材料の特性などによって異なるが、例えば、特定の位置の第1ゾーン23aの温度を高くすることで、当該位置付近の成形材料の流速が増大する傾向にある。そのため、押出方向に直交する断面形状が円形のものに比べて特定の位置が拡張したような異形の形状を有する成形体を押出成形する場合には、当該位置付近の第1ゾーン23aの温度を高くすることにより、所望の形状が得られ易くなる。
【0018】
以下、本発明の実施形態1に係る押出成形機1を構成する部材について詳細に説明する。
【0019】
(押出部10)
押出部10は、スクリュー11と、スクリュー11を収容可能なバレル12とを有していれば特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
スクリュー11は、スクリュー軸14と、スクリュー軸14に沿って螺旋状に形成された羽根部15とを有することが好ましい。
また、スクリュー11は、成形材料、特にセラミックス成形材料の混練性の観点から、同方向に回転する2軸スクリューであることが好ましく、かみ合い型の2軸スクリューであることがより好ましい。この場合、一対のスクリュー11は、バレル12の内部に平行に併設される。
【0020】
スクリュー11の根元部は、駆動装置16に接続されている。駆動装置16は、モータ及びギアボックス(図示しない)を含み、予め規定された押出圧力となるように回転数を制御してスクリュー11を回転させる。
押出部10の上流側には、押出部10内に成形材料を供給するための材料投入部17が設けられる。材料投入部17から供給された成形材料は、スクリュー11によって混練され、成形部20に供給される。
【0021】
(成形部20)
成形部20は、内部に空間を有するドラム24を含み、一端に口金21を有し、他端が押出部10の押出口13に接続されている。
ドラム24の形状は、特に限定されず、縮径部や拡径部を一部に有していてもよい。例えば、図1に示されるように、ドラム24は、押出口13側に拡径部25を有する。このような構造を有するドラム24は、1つの部材から構成されていてもよいが、複数の部材から構成されていてもよい。複数の部材からドラム24を構成する場合、拡径ドラムとストレートドラムとを組み合わせることによってドラム24を得ることができる。
【0022】
口金21の形状は、特に限定されず、製造する成形体の形状に応じて適宜設定することができる。例えば、ハニカム形状を有する成形体を製造する場合、ハニカム成形体の隔壁の厚さに対応するスリットを有する口金21が用いられる。
【0023】
口金21は、口金保持部材26aによって保持される。口金保持部材26aは、成形部20の一端に口金21が位置するように配置される。
口金保持部材26aとしては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0024】
ドラム24(成形部20)の内部に配置されるスクリーン22(濾過網)は、メッシュ状の素材で形成され、成形材料に混入した粗粒やその他夾雑物を除去し、口金21に供給される成形材料を安定させることができる。
【0025】
第1温度調節部材23は、上述したように周方向に分割された複数の第1ゾーン23aを含む。各第1ゾーン23aの加熱方法は、個別に温度調整が可能な方法であれば特に限定されない。例えば、各第1ゾーン23aの内部を流体が流通可能なように構成し、流体の温度を調整することで、各第1ゾーン23aの温度制御を行うことができる。また、各第1ゾーン23aに加熱素子などの加熱手段や冷却素子などの冷却手段を設けることで、各第1ゾーン23aの温度制御を行ってもよい。例えば、ボイラーなどを用いて加温した温水を各第1ゾーン23a内に流通させることにより、各第1ゾーン23aを加温することができる。また、チラーなどを用いて冷却した冷水を各第1ゾーン23a内に流通させることにより、各第1ゾーン23aを冷却することができる。
【0026】
周方向に分割された第1ゾーン23aの数は、製造する成形体の形状に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、好ましくは4~24個、より好ましくは8~20個、最も好ましくは10~16個である。このような範囲に第1ゾーン23aの数を設定することにより、様々な形状の成形物の寸法精度を高めることが可能になる。
【0027】
スクリーン22と口金21との間に配置される第1温度調節部材23の数は、特に限定されないが、2つ以上であってもよい。2つ以上の第1温度調節部材23を設けることにより、成形部20内を流れる成形材料の温度を細かく制御することが可能になるため、成形体の寸法精度をより一層向上させることができる。なお、第1温度調節部材23の数が多いほど、成形体の寸法精度を向上させる効果が高いと考えられるが、製造コストなどを考慮すると、第1温度調節部材23の数は5つ以下とするのが現実的である。
【0028】
スクリーン22と口金21との間に2つ以上の第1温度調節部材23を設ける場合、2つ以上の第1温度調節部材23の間に断熱部材を配置することが好ましい。
断熱部材としては、特に限定されないが、熱伝導率が0.5W/m・K以下であることが好ましい。このような熱伝導率を有する断熱部材であれば、各第1温度調節部材23の間の断熱効果を十分に確保することができる。なお、断熱部材の熱伝導率は、小さいほど断熱効果が高いため好ましいが、その下限は、入手可能な材料を考慮すると、0.02W/m・Kである。また、本明細書において「熱伝導率」とは、25℃で測定された熱伝導率を意味する。
【0029】
断熱部材の材質は、断熱性を有していれば特に限定されないが、断熱性樹脂から形成されていることが好ましい。
断熱性樹脂としては、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。断熱性樹脂の例としては、ポリアセタール樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂などの合成樹脂が挙げられる。
【0030】
(整流板30)
押出部10と成形部20との間には、必要に応じて整流板30が配置される。整流板30は、貫通孔を有し、成形材料の挙動を整える機能を有する。
貫通孔の数、位置及び形状については、特に限定されず、適宜設定することができる。
整流板30の材質は、特に限定されないが、鉄系、ステンレス系の材料などを用いることができる。
【0031】
なお、ドラム24(成形部20)の外周は、断熱シート(図示していない)で被覆されていてもよい。このような構成とすることにより、ドラム24内の温度を一定に保つことができるため、成形材料の押出方向に直交する断面における成形材料の温度分布の均一性を高め、成形体の寸法精度を向上させる効果が高くなる。
【0032】
上記のような構造を有する押出成形機1は、成形体の製造に用いることができる。その中でも、押出成形機1は、セラミックス成形材料を用いるセラミックス成形体、特にセラミックスハニカム成形体の製造に用いるのに適している。
【0033】
本発明の実施形態1に係る成形体の製造方法は、上記のような構造を有する押出成形機1を用いて行われる。
具体的には、本発明の実施形態1に係る成形体の製造方法は、押出成形機1を用いて成形材料を押出成形して成形体を得る成形工程と、成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を測定する温度分布測定工程と、成形体を所定の長さに切断する切断工程と、切断された成形体の寸法を計測する寸法計測工程とを備える。
【0034】
(成形工程)
成形工程は、押出成形機1を用いて成形材料を押出成形して成形体を得る工程である。この成形工程では、第1温度調節部材23の各第1ゾーン23aの温度が、温度分布測定工程において測定される成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測される寸法の結果を基に決定される。具体的には、押出成形機1における第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係を予め求めておき、温度分布測定工程において測定された成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測された成形体の寸法から当該関係に基づいて第1ゾーン23aの適正温度を算出し、成形工程において第1ゾーン23aを当該適正温度に制御する。
【0035】
押出成形機1における第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係は、成形体の製造を行うことによって蓄積した過去のデータを基に求めることができる。また、本発明の実施形態1に係る成形体の製造方法を連続して実施することで得られるデータを反映させることにより、リアルタイムで当該関係を最適なものとすることができる。
【0036】
押出成形機1における第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係は、成形体の材質や大きさ、押出成形機1の種類などの条件によって異なることがあるため、これらの条件を同一にした上で当該関係を求めることが好ましい。
当該関係を求めるために用いられる成形体の温度分布としては、特に限定されないが、成形工程で得られる直後の成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を用いることが好ましい。この温度分布は、赤外線サーモグラフィカメラ(日本アビオニクス株式会社製Thermo GEAR G120EX)を用いて測定することができる。
また、当該関係を求めるために用いられる成形体の寸法としては、特に限定されないが、押出方向に直交する方向に切断された成形体の切断面の径(例えば、成形体が円柱状である場合は、切断面の半径又は直径)を用いることが好ましく、測定された成形体の切断面の径の実測値から、予め規定された基準成形体の切断面の径の基準値を引いた値(ΔR)を用いることがより好ましい。これらを用いることにより、当該関係の相関性が得られ易くなる。
なお、本明細書において「基準成形体」とは、理想的な(目標とする)寸法を有する成形体のことを意味する。
【0037】
成形工程では、材料投入部17からバレル12の内部に成形材料が供給される。成形材料は、スクリュー11の回転によって剪断力を付与されながら混練され、バレル12の先端の押出口13側に搬送される。バレル12の押出口13から押出された成形材料は、整流板30の貫通孔を通過し、スクリーン22を通過して第1温度調節部材23で温度制御されながら口金21に供給される。そして、成形材料は口金21を通じて押出され、所望の形状の成形体が得られる。
【0038】
この成形体の製造方法に用いられる成形材料としては、特に限定されないが、例えば、セラミックス成形材料を用いることができる。セラミックス成形材料は、セラミックス原料を含む。セラミックス原料の例としては、コージェライト化原料、コージェライト、炭化珪素、珪素-炭化珪素系複合材料、ムライト、チタン酸アルミニウムなどが挙げられる。なお、コージェライト化原料とは、シリカが42~56質量%、アルミナが30~45質量%、マグネシアが12~16質量%の範囲に入る化学組成となるように配合されたセラミックス原料である。そして、コージェライト化原料は、焼成されてコージェライトになるものである。
セラミックス成形材料は、セラミックス原料に加えて、必要に応じて分散媒、有機バインダ、無機バインダ、造孔材、界面活性剤などを含む。これらの成分は、特に限定されず、当該技術分野において公知のものを用いることができる。
【0039】
(温度分布測定工程)
温度分布測定工程は、成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を測定する。
温度分布測定工程は、成形工程で得られる直後の成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を用いることが好ましい。この温度分布は、赤外線サーモグラフィカメラ(日本アビオニクス株式会社製Thermo GEAR G120EX)を用いて測定することができる。
【0040】
(切断工程)
切断工程は、押出成形によって得られた成形体を所定の長さに切断する工程である。
切断方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、一対のボビン間に掛けられた線材を用いることによって成形体の切断を行うことができる。
切断される成形体の長さは、特に限定されず、用途に応じて適切な長さに切断すればよい。
【0041】
切断された成形体の構造としては、特に限定されないが、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を備えるハニカム構造を有することが好ましい。
【0042】
ハニカム構造を有する成形体(以下、「ハニカム成形体」という)の形状としては、特に限定されないが、セルが延びる方向に直交する断面が円形、楕円形、卵形、角丸長方形の他、正方形、長方形、三角形、五角形、六角形、八角形などの多角柱状などであってよい。
また、ハニカム成形体のセル形状(セルが延びる方向に直交する断面におけるセル形状)としては、特に限定されないが、三角形、四角形、六角形、八角形、円形又はこれらの組合せにすることができる。
【0043】
(寸法計測工程)
寸法計測工程は、切断された成形体の寸法を計測する工程である。
切断された成形体の寸法を計測する方法としては、特に限定されず、当該技術分野において公知の方法を用いることができる。例えば、切断された成形体の寸法は、端面検査機やレーザ式外径寸法測定器などを用いて計測することができる。
ただし、寸法計測工程で用いられる計測方法は、第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度と、切断された成形体の寸法との関係を得るために用いられた成形体の寸法の計測方法と同じであることが好ましい。また、寸法計測工程で計測される切断された成形体の寸法としては、第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度と、切断された成形体の寸法との関係を得るために用いられた成形体の寸法と同じであることが好ましい。
寸法計測工程で計測される切断された成形体の寸法としては、特に限定されないが、切断された成形体の切断面の径(例えば、成形体が円柱状である場合は、切断面の半径又は直径)を用いることが好ましく、測定された成形体の切断面の径の実測値から、予め規定された基準成形体の切断面の径の基準値を引いた値(ΔR)を用いることがより好ましい。
【0044】
切断された成形体の寸法の計測は、切断された成形体の端面(切断面)又は側面で行うことができる。
また、切断された成形体の寸法の計測は、切断された成形体の端面又は側面の全体で行ってもよいが、切断された成形体の端面又は側面の一部で行うことが好ましい。
切断された成形体の端面又は側面の全体で寸法の計測を行う場合、切断された成形体の軸方向(押出成形方向)を鉛直方向にあわせて行う必要があることから、切断された成形体を90°回転させて寸法の計測を行わなければならず、計測に時間がかかってしまう。そのため、切断された成形体の軸方向(押出成形方向)を水平方向のままとし、上方から切断された成形体の端面又は側面の一部(例えば、上半分)で寸法の計測を行うことが好ましい。このような計測を行うことにより、計測の時間を短縮化することができる。この場合、基準となる形状との誤差が最小となるように、計測された形状の中心位置を補正する処理を行うことが好ましい。
【0045】
切断された成形体の端面で寸法を計測する場合、端面検査機を構成する撮像カメラで切断された成形体の端面画像を撮像する。得られた端面画像から切断された成形体の輪郭を画像解析によって検出し、切断された成形体の寸法(外径、半径)を算出すればよい。
切断された成形体の側面で寸法を計測する場合、レーザ式外径寸法測定器を構成するレーザ変位計から切断された成形体の側面にレーザを照射する。レーザ変位計から発振されたレーザは、切断された成形体の側面に到達して跳ね返る。この跳ね返ったレーザを受光素子で検出し、三角測距法の原理に基づいて切断された成形体の寸法を算出すればよい。
【0046】
上記のような工程を備える本発明の実施形態1に係る成形体の製造方法は、成形体の温度分布及び成形体の寸法の計測結果に基づいて成形工程における第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度を適切な温度に制御しているため、成形体の外周部の寸法精度を高めることができる。
【0047】
(実施形態2)
本発明の実施形態2に係る押出成形機は、口金保持部材が温度調節機能を有していることを除けば本発明の実施形態1に係る押出成形機1と同一である。よって、ここでは、この押出成形機1と共通する構成については説明を省略し、異なる構成のみについて説明する。
【0048】
図3は、本発明の実施形態2に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図3に示されるように、本発明の実施形態2に係る押出成形機2は、口金21を保持し且つ温度調節が可能な口金保持部材26bを有する。
本発明の実施形態1に係る押出成形機1では、第1温度調節部材23の複数の第1ゾーン23aを個別に温度制御することにより、成形材料の流速を場所に応じて制御し、外周部の寸法精度を高めている。しかしながら、第1温度調節部材23のみでは、成形体の外周部の寸法精度を十分に高めることができない場合がある。
そこで、本発明の実施形態2に係る押出成形機2では、第1温度調節部材23の下流に位置する口金保持部材26bにおいても温度制御を行うことで、成形体の外周部の寸法精度を安定して向上させることが可能となる。
【0049】
口金保持部材26bは、第1温度調節部材23の複数の第1ゾーン23aと同様に、周方向に分割された複数の第2ゾーンを含む。なお、成形材料の押出方向に直交する口金保持部材26bの断面図は、図2に示す第1温度調節部材23とほぼ同一であるため省略する。複数の第2ゾーンは個別に温度調整が可能なように構成されている。そのため、複数の第2ゾーンのそれぞれは、異なる温度に制御することができる。
【0050】
各第2ゾーンの加熱方法は、個別に温度調整が可能な方法であれば特に限定されない。例えば、各第2ゾーンの内部を流体が流通可能なように構成し、流体の温度を調整することで、各第2ゾーンの温度制御を行うことができる。また、各第2ゾーンに加熱素子などの加熱手段を設けることで、各第2ゾーンの温度制御を行ってもよい。
【0051】
周方向に分割された第2ゾーンの数は、製造する成形体の形状に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、好ましくは4~24個、より好ましくは8~20個、最も好ましくは10~16個である。このような範囲に第2ゾーンの数を設定することにより、様々な形状の成形物の外周部の寸法精度を高めることが可能になる。
また、口金保持部材26bの第2ゾーンの数は、第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの数と同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0052】
本発明の実施形態2に係る成形体の製造方法は、上記のような構造を有する押出成形機2を用いて行われる。
具体的には、本発明の実施形態2に係る成形体の製造方法では、成形工程において、第1温度調節部材23の各第1ゾーン23a及び口金保持部材26bの各第2ゾーンの温度が、温度分布測定工程において測定される成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測される寸法の結果を基に決定される。具体的には、押出成形機2における第1温度調節部材23の第1ゾーン23a及び口金保持部材26bの第2ゾーンの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係を予め求めておき、温度分布測定工程において測定された成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測された成形体の寸法から当該関係に基づいて第1ゾーン23a及び第2ゾーンの適正温度を算出し、成形工程において第1ゾーン23a及び第2ゾーンを当該適正温度に制御する。
【0053】
押出成形機2における第1温度調節部材23の第1ゾーン23a及び口金保持部材26bの第2ゾーンの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係は、成形体の製造を行うことによって蓄積した過去のデータを基に求めることができる。また、本発明の実施形態2に係る成形体の製造方法を連続して実施することで得られるデータを反映させることにより、リアルタイムで当該関係を最適なものとすることができる。
【0054】
押出成形機2における第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度及び口金保持部材26bの第2ゾーンの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係は、成形体の材質や大きさ、押出成形機2の種類などの条件によって異なることがあるため、これらの条件を同一にした上で当該関係を求めることが好ましい。
【0055】
(実施形態3)
本発明の実施形態3に係る押出成形機は、成形部20の拡径部25に第2温度調節部材が配置されることを除けば本発明の実施形態1に係る押出成形機1と同一である。よって、ここでは、この押出成形機1と共通する構成については説明を省略し、異なる構成のみについて説明する。
【0056】
図4は、本発明の実施形態3に係る押出成形機の概略構成を示す模式図である。
図4に示されるように、本発明の実施形態3に係る押出成形機3は、成形部20の他端とスクリーン22との間に拡径部25を有し、拡径部25に第2温度調節部材27が配置される。
本発明の実施形態1に係る押出成形機1では、第1温度調節部材23の複数の第1ゾーン23aを個別に温度制御することにより、成形材料の流速を場所に応じて制御し、外周部の寸法精度を高めている。しかしながら、第1温度調節部材23に到達する前の成形材料の温度分布の状態によっては、第1温度調節部材23のみでは所定の温度に制御できず、成形体の外周部の寸法精度を十分に高めることができない場合がある。
そこで、本発明の実施形態3に係る押出成形機3では、第1温度調節部材23の上流に位置する拡径部25の第2温度調節部材27によって予め温度制御を行うことで、第1温度調節部材23における温度制御を安定化させ、成形体の寸法精度を安定して向上させることが可能となる。
【0057】
第2温度調節部材27は、第1温度調節部材23の複数の第1ゾーン23aと同様に、周方向に分割された複数の第3ゾーンを含む。なお、成形材料の押出方向に直交する第2温度調節部材27の断面図は、図2に示す第1温度調節部材23とほぼ同一であるため省略する。複数の第3ゾーンは個別に温度調整が可能なように構成されている。そのため、複数の第3ゾーンのそれぞれは、異なる温度に制御することができる。
【0058】
各第3ゾーンの加熱方法は、個別に温度調整が可能な方法であれば特に限定されない。例えば、各第3ゾーンの内部を流体が流通可能なように構成し、流体の温度を調整することで、各第3ゾーンの温度制御を行うことができる。また、各第3ゾーンに加熱素子などの加熱手段を設けることで、各第3ゾーンの温度制御を行ってもよい。
【0059】
周方向に分割された第3ゾーンの数は、製造する成形体の形状に応じて適宜設定すればよく特に限定されないが、好ましくは4~24個、より好ましくは8~20個、最も好ましくは10~16個である。このような範囲に第3ゾーンの数を設定することにより、様々な形状の成形物の寸法精度を高めることが可能になる。
また、第2温度調節部材27の第3ゾーンの数は、第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの数と同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0060】
本発明の実施形態3に係る成形体の製造方法は、上記のような構造を有する押出成形機3を用いて行われる。
具体的には、本発明の実施形態3に係る成形体の製造方法では、成形工程において、第1温度調節部材23の各第1ゾーン23a及び第2温度調節部材27の各第3ゾーンの温度が、温度分布測定工程において測定される成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測される寸法の結果を基に決定される。具体的には、押出成形機3における第1温度調節部材23の第1ゾーン23a及び第2温度調節部材27の第3ゾーンの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係を予め求めておき、温度分布測定工程において測定された成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測された成形体の寸法から当該関係に基づいて第1ゾーン23a及び第3ゾーンの適正温度を算出し、成形工程において第1ゾーン23a及び第3ゾーンを当該適正温度に制御する。
【0061】
押出成形機3における第1温度調節部材23の第1ゾーン23a及び第2温度調節部材27の第3ゾーンの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係は、成形体の製造を行うことによって蓄積した過去のデータを基に求めることができる。また、本発明の実施形態3に係る成形体の製造方法を連続して実施することで得られるデータを反映させることにより、リアルタイムで当該関係を最適なものとすることができる。
【0062】
押出成形機3における第1温度調節部材23の第1ゾーン23aの温度及び第2温度調節部材27の第3ゾーンの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係は、成形体の材質や大きさ、押出成形機3の種類などの条件によって異なることがあるため、これらの条件を同一にした上で当該関係を求めることが好ましい。
【0063】
なお、上記では、本発明の実施形態1に係る押出成形機1と異なる構成について説明したが、この異なる構成は、本発明の実施形態2に係る押出成形機2に適用することも可能である。この場合も、上述した効果が得られることはいうまでもない。
この場合、本発明の実施形態3に係る成形体の製造方法では、成形工程において、第1温度調節部材23の各第1ゾーン23a、口金保持部材26bの各第2ゾーンの温度及び第2温度調節部材27の各第3ゾーンの温度が、温度分布測定工程において測定される成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測される寸法の結果を基に決定される。具体的には、押出成形機における第1温度調節部材23の第1ゾーン23a、口金保持部材26bの第2ゾーンの温度及び第2温度調節部材27の第3ゾーンの温度と、温度分布測定工程における成形体の温度分布及び寸法計測工程における成形体の寸法との関係を予め求めておき、温度分布測定工程において測定された成形体の温度分布及び寸法計測工程において計測された成形体の寸法から当該関係に基づいて第1ゾーン23a、第2ゾーン及び第3ゾーンの適正温度を算出し、成形工程において第1ゾーン23a、第2ゾーン及び第3ゾーンを当該適正温度に制御する。
【実施例
【0064】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0065】
(実施例1-1)
図1に示される押出成形機を作製した。第1温度調節部材には、図5に示されるような周方向に分割された12個の第1ゾーンを形成し、各第1ゾーンに加熱素子を設けることによって個別に温度制御を可能とした。なお、図5において、X及びZ方向は、押出方向に直交する方向であり、特にZ方向は鉛直方向である。また、押出方向に直交する断面が、短径150mm、長径200mmの楕円状となるセラミックスハニカム成形体を成形可能な口金を成形部の一端に設けた。
次に、この押出成形機において、第1温度調節部材の第1ゾーンのNo.2~5及び8~11を30℃、No.1、6~7及び12を35℃にそれぞれ設定した。そして、セラミックス原料としてコージェライトを含むセラミックス成形材料を用い、成形材料の供給量を300kg/h、スクリュー11の回転数を55rpmとして、セラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、下記の評価を行った。
【0066】
(実施例1-2)
図3に示される押出成形機を作製した。第1温度調節部材及び口金は、実施例1-1と同様の構造のものを用いた。また、口金保持部材には、第1温度調節部材の第1ゾーンと同様の周方向に分割された12個の第2ゾーンを形成し、各第2ゾーンに加熱素子を設けることによって個別に温度制御を可能とした。
次に、この押出成形機において、第1温度調節部材の第1ゾーン及び口金保持部材の第2ゾーンの各温度は、第1温度調節部材の第1ゾーンと同じに設定し、実施例1-1と同様の条件でセラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、下記の評価を行った。
【0067】
(比較例1)
第1温度調節部材を備えていない押出成形機を用い、実施例1-1と同様の条件でセラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、下記の評価を行った。
【0068】
(成形体の寸法精度)
口金から排出されたセラミックスハニカム成形体を所定の長さに切断し、その切断面(端面)の形状について端面検査機(株式会社キーエンス製LJ-V7300)を用いて測定した。具体的には、端面検査機を構成する撮像カメラでセラミックスハニカム成形体の端面画像を撮像した後、この端面画像を画像解析してセラミックスハニカム成形体の輪郭(断面形状)を得た。また、得られた断面形状について半径を測定し、基準半径からのずれ(差)を1°ごとに算出し、当該ずれの最大値を最大偏差として求めた。ここで、「基準半径」とは、基準となる所望の断面形状を有するセラミックスハニカム成形体の半径のことをいう。
【0069】
(成形体の温度分布)
口金から排出された直後のセラミックスハニカム成形体の押出方向に直交する断面の温度分布を赤外線サーモグラフィカメラ(日本アビオニクス株式会社製Thermo GEAR G120EX)を用いて測定した。
上記の各評価結果を表1に示す。なお、表1の断面形状において、点線は基準となる所望の断面形状を有するセラミックスハニカム成形体の断面形状を表し、実線は作製されたセラミックスハニカム成形体の断面形状を表す。
【0070】
【表1】
【0071】
表1に示されるように、複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を有する押出成形機を用いて押出成形を行った場合(実施例1-1及び1-2)、複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を有していない押出成形機を用いて押出成形を行った場合(比較例1)に比べて、セラミックスハニカム成形体の外周部の寸法精度が向上した。また、複数の第2ゾーンを含む口金保持部材を更に有する押出成形機を用いて押出成形を行った場合(実施例1-2)、セラミックスハニカム成形体の外周部の寸法精度がより一層向上した。
【0072】
(実施例2)
図1に示される押出成形機を作製した。第1温度調節部材には、図5に示されるような周方向に分割された12個の第1ゾーンを形成し、各第1ゾーンに加熱素子を設けることによって個別に温度制御を可能とした。また、押出方向に直交する断面が、短径170mm、長径220mmの角丸長方形となるセラミックスハニカム成形体を成形可能な口金を成形部の一端に設けた。
次に、この押出成形機において、第1温度調節部材の第1ゾーンのNo.3、4、9及び10を30℃、No.1、2、5~8、11及び12を35℃にそれぞれ設定した。そして、セラミックス原料としてコージェライトを含むセラミックス成形材料を用い、成形材料の供給量を300kg/h、スクリュー11の回転数を55rpmとして、セラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、評価を行った。
【0073】
(比較例2)
第1温度調節部材を備えていない押出成形機を用い、実施例2と同様の条件でセラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、評価を行った。
各評価結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示されるように、断面が角丸長方形のセラミックスハニカム成形体についても、複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を有する押出成形機を用いて押出成形を行った場合(実施例2)、複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を有していない押出成形機を用いて押出成形を行った場合(比較例2)に比べて、セラミックスハニカム成形体の外周部の寸法精度が向上した。
【0076】
(実施例3)
図1に示される押出成形機を作製した。第1温度調節部材には、図5に示されるような周方向に分割された12個の第1ゾーンを形成し、各第1ゾーンに加熱素子を設けることによって個別に温度制御を可能とした。また、押出方向に直交する断面が、短径150mm、長径200mmの左寄りの楕円状となるセラミックスハニカム成形体を成形可能な口金を成形部の一端に設けた。
次に、この押出成形機において、第1温度調節部材の第1ゾーンのNo.1及び12を35℃、No.2~11を温度制御なしに設定した。そして、セラミックス原料としてコージェライトを含むセラミックス成形材料を用い、成形材料の供給量を300kg/h、スクリュー11の回転数を55rpmとして、セラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、評価を行った。
【0077】
(比較例3)
第1温度調節部材を備えていない押出成形機を用い、実施例3と同様の条件でセラミックスハニカム成形体の押出成形を行い、評価を行った。
各評価結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3に示されるように、断面が左寄りの楕円状のセラミックスハニカム成形体についても、複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を有する押出成形機を用いて押出成形を行った場合(実施例3)、複数の第1ゾーンを含む第1温度調節部材を有していない押出成形機を用いて押出成形を行った場合(比較例3)に比べて、セラミックスハニカム成形体の外周部の寸法精度が向上した。
【0080】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、外周部の寸法精度が高い成形体を製造することが可能な押出成形機を提供することができる。また、本発明によれば、外周部の寸法精度が高い成形体の製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0081】
1,2,3 押出成形機
10 押出部
11 スクリュー
12 バレル
13 押出口
14 スクリュー軸
15 羽根部
16 駆動装置
17 材料投入部
20 成形部
21 口金
22 スクリーン
23 第1温度調節部材
23a 第1ゾーン
24 ドラム
25 拡径部
26a,26b 口金保持部材
27 第2温度調節部材
図1
図2
図3
図4
図5