(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】需要予測パラメータの最適化
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/012 20230101AFI20231214BHJP
【FI】
G06Q30/012
(21)【出願番号】P 2020506920
(86)(22)【出願日】2019-07-24
(86)【国際出願番号】 US2019043166
(87)【国際公開番号】W WO2020046497
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-02-02
(32)【優先日】2018-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502303739
【氏名又は名称】オラクル・インターナショナル・コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポペスク,カタリン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ブレント
(72)【発明者】
【氏名】メスクイータ,ローレンス・レオ
【審査官】原 忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-085645(JP,A)
【文献】特開2006-185230(JP,A)
【文献】特開2007-164276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のアイテムについての需要モデルのための需要予測パラメータを選択する方法であって、前記方法は、
1つ以上のプロセッサが、前記アイテムについての履歴販売データを各店舗ベースで受信するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、第1のアイテムについての複数の季節性曲線を受信するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、毎年の需要に対する各季節性曲線の相関を使用して前記季節性曲線の各々の反復性を判定し、前記反復性に基づいて第1の季節性曲線を保持するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、前記第1の季節性曲線の滑らかさを判定するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、前記第1の季節性曲線のまばらさを判定するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、判定された前記反復性、滑らかさ、およびまばらさに基づいて、前記第1の季節性曲線は信頼できると判定するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、複数の信頼できる季節性曲線を判定するために、前記複数の季節性曲線を受信するステップと、前記反復性を判定するステップと、前記滑らかさを判定するステップと、前記まばらさを判定するステップとを反復するステップと
を含み、
前記履歴販売データは、前記第1のアイテムについての複数の販促効果を含み、前記複数の販促効果は、前記第1のアイテムの複数のプールレベルにそれぞれ対応しており、前記方法は、さらに、
前記1つ以上のプロセッサが、各前記プールレベルについて、前記販促効果を使用する販促需要をシミュレーションするステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、各前記プールレベルについて、シミュレートされた前記販促需要と実際の販促需要とを比較することにより誤差メトリックを判定するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、最低の前記誤差メトリックを生じさせるプールレベルで生成された販促効果を、信頼できる販促効果として選択するステップと、
前記1つ以上のプロセッサが、前記需要モデルと前記信頼できる季節性曲線と
前記信頼できる販促効果とを使用して、前記第1のアイテムについての需要予測を判定するステップとを含み、前記需要予測は、前記第1のアイテムについてのさらなる販売データの予想を含み、前記方法はさらに、
前記1つ以上のプロセッサが、前記需要予測に基づいて複数の小売店への追加数量の前記第1のアイテムの出荷を生成するように構成された在庫管理システムへ、前記需要予測を電子的に送信するステップを含む、方法。
【請求項2】
前記季節性曲線の各々は、前記第1のアイテムに加えて他のアイテムについてのパラメータを含む集計季節性曲線である、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記季節性曲線の各々は、前記第1のアイテムの少なくとも2つの販売サイクルを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上のプロセッサが、前記需要予測に基づいて、前記第1のアイテムの製造量を増加させるステップをさらに含む、請求項
1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記1つ以上のプロセッサが、増加した前記製造量に応じて、増加した量の前記第1のアイテムを複数の異なる小売店へ出荷するステップをさらに含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記需要予測は、ベース需要と前記信頼できる季節性曲線と前記信頼できる販促効果とからなる、請求項
1~
5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の方法を
1つ以上のプロセッサに実行させるためのコンピュータ読取可能プログラム。
【請求項8】
小売アイテム需要予測システムであって、
1つ以上の販売時点システムに結合された1つ以上のプロセッサを含み、前記1つ以上のプロセッサは、小売アイテムについての履歴販売データを各店舗ベースで受信し、
前記1つ以上のプロセッサはさらに、
第1のアイテムについての複数の季節性曲線を受信し、
毎年の需要に対する各季節性曲線の相関を使用して前記季節性曲線の各々の反復性を判定し、前記反復性に基づいて第1の季節性曲線を保持し、
前記第1の季節性曲線の滑らかさを判定し、
前記第1の季節性曲線のまばらさを判定し、
判定された前記反復性、滑らかさ、およびまばらさに基づいて、前記第1の季節性曲線は信頼できると判定し、
複数の信頼できる季節性曲線を判定するために、前記複数の季節性曲線を受信することと、前記反復性を判定することと、前記滑らかさを判定することと、前記まばらさを判定することとを反復し、
前記履歴販売データは、前記第1のアイテムについての複数の販促効果を含み、前記複数の販促効果は、前記第1のアイテムの複数のプールレベルにそれぞれ対応しており、
前記1つ以上のプロセッサはさらに、
各前記プールレベルについて、前記販促効果を使用する販促需要をシミュレーションし、
各前記プールレベルについて、シミュレートされた前記販促需要と実際の販促需要とを比較することにより誤差メトリックを判定し、
最低の前記誤差メトリックを生じさせるプールレベルで生成された販促効果を、信頼できる販促効果として選択し、
需要モデルと前記信頼できる季節性曲線と
前記信頼できる販促効果とを使用して、前記第1のアイテムについての需要予測を判定し、
前記需要予測に基づいて複数の小売店への追加数量の前記第1のアイテムの出荷を生成するように構成された在庫管理システムへ、前記需要予測を電子的に送信する、小売アイテム需要予測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
分野
一実施形態は一般に、コンピュータシステムに向けられ、特に、小売アイテムの需要を予測するコンピュータシステムに向けられる。
【背景技術】
【0002】
背景情報
製品は典型的には、製造業者、販売業者、運送業者、小売業者などのネットワークを通して消費者へ届けられる。製品を消費者へともに届ける設備のそのようなネットワークは一般に、「サプライチェーン」ネットワークと呼ばれる。
【0003】
製品の供給業者(たとえば製造業者、ベンダー、小売業者など)は、絶えず変動する市場状況の存在下でサプライチェーンネットワークを通して製品の円滑で効率的な流れを提供するために、製品の需要を予測するタスクにしばしば直面する。需要を過大評価することは、過剰生産、および在庫保有に関連するコスト(たとえば保管コスト、旧式化など)の増加をもたらし得る。一方、需要を過小評価することは、収益損失をもたらし得る。
【0004】
また、小売業界では、小売業者は、自社の在庫または販促/値下げ計画をより良好に管理するために、将来の自社の需要を予想する必要がある。小売業者は、自社の販売を増加させるために多くのタイプの販促に従事する場合がある。正確な予測を生成するために、小売業者は、販促、価格、季節性、天候などといった、需要に影響を与え得るあらゆる要因/特徴を考慮しなければならない。
【0005】
一般に、販売予測システムは、小売アイテムについての販売数量の週ごとの予測を生成する際に、問題に遭遇する。所与の週における小売アイテムの販売は、季節的要因、その週にある小売アイテムに割引が適用されたか、および、その週が商品のライフサイクルにおけるどの時点に該当するかといった、多くの要因の影響を受ける。週ごとの販売数量の予測への1つの一般的なアプローチは、小売アイテムについての「原因需要モデル」を構築することを伴う。この需要モデルは、上に挙げたような要因の観点から週ごとの販売数量を説明する数学的モデルである。これらの要因は、需要モデルを形成する「需要変数」として知られている。
【0006】
需要モデルは、需要変数がどのように販売数量に影響を与えるかを数学的に特定する。たとえば、割引高が需要変数である場合、履歴データは、50%の値引が販売数量の4倍の増加をもたらしたこと(すなわち、価格弾力性に関連したこと)を示すかもしれない。この例では、需要変数は50%の値引であり、履歴販売データは販売の4倍の増加である。原因需要モデルが販売数量の予測に役立つには、販売数量(4倍の増加)に対する需要変数(50%の値引)の関係を判定することが必要である。この関係は、需要変数に関連する「需要パラメータ」と呼ばれる。
【0007】
この例では、需要パラメータは、ある特定の小売アイテムの販売は、25%値下げされるたびに2倍増加するであろうということを特定するように判定されるかもしれない。判定された需要パラメータを用いると、需要変数の将来の値を特定することによって販売数量を予測することが可能である。値引の例を続けると、小売業者は、自社が次のシーズンに数週間、40%の値引を行なう予定であることを知っているかもしれない。需要モデルはその場合、40%の値引を勘案してその数週間の販売数量を予測するであろう。
【0008】
需要パラメータは、小売アイテム自体についての、または類似する小売アイテムについての値引を含む履歴小売販売データ(「小売パネルデータ」として知られる)を調べることによって判定される。しかしながら、上述のように、いくつかの需要変数が小売アイテムの販売に影響を与える。これらのいくつかの需要変数は同時に該当する。たとえば、小売業者が夏の間、ある夏用アイテムについて50%の値引を行なったかもしれず、その場合、販売の4倍の増加は、夏の間の夏用小売アイテムについての季節的需要の増加に部分的に起因するかもしれない。販売に対するいくつかの需要変数の効果を分離するために、回帰が需要モデルに対して実行され、需要モデルを小売パネルデータに最良に適合させる需要パラメータの値を判定する。
【0009】
また、販売予測の品質は、入力データの品質に非常に依存する(すなわち、「ごみを入れればごみしか出てこない」)。多くの状況では、販売予測にとって必要であり利用可能である履歴データは適切であるとは言い難く、結果として生じる予測は益より害になり得る。いくつかの公知の高性能の予測解決策は例外駆動型ワークフローを提供し、その場合、そのような良くない予測が検出され、予測アナリストは、予測を見直して手動で調節するよう促される。あまり高性能でない解決策は良くない数字を把握せず、それは、過剰/過小在庫、間違った割当て、良くない計画などをもたらし得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
実施形態は、1つ以上のアイテムについての需要モデルのための需要予測パラメータを選択する。実施形態は、アイテムについての履歴販売データを各店舗ベースで受信し、第1のアイテムについての複数の季節性曲線を受信する。実施形態は、毎年の需要に対する各季節性曲線の相関を使用して季節性曲線の各々の反復性を判定し、反復性に基づいて第1の季節性曲線を保持する。実施形態は、第1の季節性曲線の滑らかさを判定し、第1の季節性曲線のまばらさを判定する。判定された反復性、滑らかさ、およびまばらさに基づいて、実施形態は、第1の季節性曲線は信頼できると判定し、複数の信頼できる季節性曲線を判定するために、複数の季節性曲線を受信することと、反復性を判定することと、滑らかさを判定することと、まばらさを判定することとを反復する。実施形態は、需要モデルと信頼できる季節性曲線とを使用して、第1のアイテムについての需要予測を判定する。実施形態は次に、需要予測に基づいて複数の小売店への追加数量の第1のアイテムの出荷を生成するように構成された在庫管理システムへ、需要予測を電子的に送信する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に従ったコンピュータサーバ/システムのブロック図である。
【
図2】一実施形態に従った、季節性および販促効果の需要パラメータを自動的に検証する際の
図1の需要予測モジュールの機能性のフロー図である。
【
図3】実施形態に従った、2つの完全な販売サイクルにわたる、あるアイテムについての例示的な季節性曲線を示す図である。
【
図4A】実施形態に従った、13週の販売サイクルにわたる、あるアイテムについての販促効果パラメータを示す図である。
【
図4B】実施形態に従った、
図4Aの販促効果についての回帰切片計算を示す図である。
【
図5】一実施形態に従った、需要モデルにおいて使用される季節性曲線および1組の販促パラメータの選択を最適化する際の
図1の需要予測モジュールの機能性のフロー図である。
【
図6】実施形態に従った、13週の販売サイクルにわたる、あるアイテムについての2つの例示的な季節性曲線を示す図である。
【
図7】実施形態に従った、13週の販売サイクルにわたる、あるアイテムについての例示的な販促効果を示す図である。
【
図8】一実施形態に従った、ここに開示されるような需要予測を含む一貫製造、在庫および物流システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
実施形態は、問題のある需要予測モデルパラメータを自動的に判定し、次に、問題のあるパラメータを需要予測から除去し、信頼できるパラメータで置換える。その結果、需要予測は最適化され、より正確である。
【0013】
販売需要予測方法は、判断法、外挿法、および原因法に大別され得る。外挿法は、活動自体の時系列データのみを使用して予測を生成する。公知の特定の手法は、より単純な移動平均および指数平滑化法から、より複雑なボックス・ジェンキンスアプローチに及ぶ。これらの公知の方法は、傾向、季節性および自己相関の時系列パターンをうまく識別して外挿するが、それらは、価格変動および販促などの外部要因を考慮に入れない。
【0014】
ベクトル自動回帰(Vector Auto Regression:VAR)モデルは、他の変数を含むようにボックス・ジェンキンス法を拡張しているが、それらの複雑性は推定を困難にする。原因予測は、結果を操ると考えられる現象を表わす入力を使用して量的モデルを構築することを伴う。これらのモデルは、販促変数を用いる線形回帰モデルと同じくらい単純であり得る。出発点は、値引、リベートまたは広告などの販促変数を用いる回帰モデルである。この考えは、モデルの単純性はマネージャがモデルの修正を理解し承認または指導するのを助け、マネージャが決定支援についてより詳しくなるにつれて、マネージャはより高性能で複雑なモデルを実現できるようになる、というものである。
【0015】
したがって、一般に、小売アイテムについての需要および販売に対する販促効果を推定するという問題は、2つの方法でアプローチされ得る。1つの方法では、販促効果は、アイテム/店舗レベルで(たとえば、「精細レベル」とも呼ばれる、各個々の小売店での個々の在庫管理単位(stock keeping unit:SKU)ごとに)直接推定され得る。しかしながら、このレベルでの利用可能な需要および販促データは典型的には不十分であり、あらゆる推定を概して不安定にし、結果を概して不正確にする。
【0016】
別の方法では、販促効果は、地域全体におけるすべての小売店についてなどといった、より集計されたレベルで推定され得る。このレベルでのデータは概してはるかにより安定し、より普及しており、販促効果の頑強な推定を可能にする。しかしながら、このレベルでのデータの豊富さは課題でもある。利用可能なデータ点がすべて考慮される場合、コンピュータを使用する推定値の生成は、処理される必要がある大量のデータに起因して非常に遅いかもしれず、出力は異常値にかなり影響されるかもしれない。一方、何らかの予め定義された基準に合格したデータ点のみが含まれる(すなわち、データフィルタリングを使用した)場合、処理速度は速くなるが、出力はバイアスをかけられ、予め定義された基準に依存する。
【0017】
たとえば、いくつかの予測システムは、非常に少ないデータを有するいくつかのカテゴリーが除外されるように、さまざまなSKUまたはカテゴリーからのデータをプールする。これは、それらのカテゴリーについての予測を不正確にする。フィルタリングのさらに別の例は、(1)天候関連事象、(2)膨らんだ需要(たとえば、人々が嵐の前に水を買い込むこと)、(3)少ない需要(たとえば、ハリケーン中に店舗が閉店され、通常よりも少ない需要をもたらすこと)、(4)サプライチェーン(たとえば、品切状況になって商品の販売が通常レベルを下回ること)、および(5)ハードウェア/IT(たとえば、コンピュータハードウェアまたはソフトウェアの故障が需要の不正確な取込みをもたらし得ること)といった異常事象を勘案するように、データにおいて訂正を行なうことを含む。上述の事項はすべて把握され、訂正されるかまたは分析から確実に除外される必要がある。
【0018】
以下の用語が、この発明の実施形態に適用される。
ここに使用されるような「アイテム」または「小売アイテム」という用語は、販売環境において販売、購入、および/または返却された商品を指す。「特定のアイテム」および「単一のアイテム」という用語はここに相互交換可能に使用され、単位アイテムではなく、ある特定のアイテムタイプ(たとえば、iPhone(登録商標)8など、ある特定のタイプの携帯電話)を指す。
【0019】
ここに使用されるような「期間」、「時期」、「小売期間」、または「暦期間」という用語は、売手が計画および予測のために毎年、暦において季節的期間を相関させるために使用する、時間の単位増分(たとえば1週=7日)を指す。これらの用語はここに相互交換可能に使用されてもよい。
【0020】
ここに使用されるような「販売チャネル」または「場所」または「小売場所」という用語は、アイテムが販売される物理的店舗、またはアイテムが販売されるオンラインストアを指してもよい。
【0021】
ここに使用されるような「販売データ」という用語は、過去の小売期間に(たとえば去年の52週にわたって)販売されたアイテムについて記録された履歴販売および販促情報を指す。販売データは、たとえば、各小売期間に販売されたアイテムの個数(または金額)を、そのアイテムについての1つ以上のタイプの販促を特徴付けるデータとともに含んでいてもよい。販売データは、たとえばデータベースに格納されてもよい。
【0022】
「販促」および「販売促進」という用語はここに交換可能に使用され、あるアイテムについてのある特定のタイプの販促を指す。販促コンポーネントのいくつかの例は、価格割引販促コンポーネント、テレビ広告コンポーネント、ラジオ広告コンポーネント、新聞広告コンポーネント、インターネット広告コンポーネント、電子メール広告コンポーネント、および店内広告コンポーネントを含んでいてもよい。
【0023】
「販促効果」という用語は、あるアイテムを販促する効果(たとえば、販売および収益性に対する効果)を特徴付ける数値を指す。たとえば、2.0という推定された販促効果は、あるアイテムについて、販促または販促の組合せが2倍の販売(100%の増加)をもたらすと推測されるということを示してもよい。販促効果(すなわち値)は、あるアイテムの需要を予測するための需要予測モデルにおいて使用されてもよい。販促効果はまた、あるアイテムの在庫のさまざまな局面を制御するためのコンピュータ化された在庫システムにおいて使用されてもよい。
【0024】
実施形態は一般に、需要予測のために使用される以下の需要モデルまたは関数(式(1))を利用する:
需要=ベース需要*季節性*販促効果(*付加効果)(1)
式中、「ベース需要」とは、いかなる効果または他の要因も考慮に入れない履歴需要であり、季節性とは、季節(すなわち時季)に基づく需要への影響であり、販促効果とは、ある期間中に提供された1つ以上の販促に基づく需要への効果である。多くの需要モデルは、天候などの付加効果を考慮に入れる。たとえば、今年の天候が去年と、および2年前と著しく異なる場合、予測は訂正を必要とするかもしれない。たとえば、今年、夏の暑い天候がより長い場合、ステーキおよびアイスクリームについての予測を増加させる必要があるかもしれない。別の付加効果は在庫であってもよい。ある人気ファッションのいくつかのサイズおよび/または色が欠品になっている場合、不足している品物を勘案するように予測を下方修正する必要があるかもしれない。さらに別の効果は店舗数であってもよい。小売業者が、積極的に拡大して来年に店舗数を10%増加させることを計画する場合、それに応じて予測を調節する必要がある。
【0025】
しかしながら、この発明の実施形態の目的のために、季節性および販促効果が販売予測に対して圧倒的に最大の影響を与えると仮定される。したがって、実施形態では、推定された季節性および販促効果が判定された後で、それらは、それらが信頼でき正確であることを確かめるために一連の検証を受ける。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に従ったコンピュータサーバ/システム10のブロック図である。単一のシステムとして示されているが、システム10の機能性は分散型システムとして実現され得る。また、ここに開示される機能性は、ネットワークを通してともに結合され得る別々のサーバまたはデバイス上で実現され得る。また、システム10の1つ以上のコンポーネントが含まれていなくてもよい。たとえば、サーバの機能性のために、システム10はプロセッサとメモリとを含む必要があり得るが、キーボードまたはディスプレイといった、
図1に示す他のコンポーネントのうちの1つ以上を含んでいなくてもよい。
【0027】
システム10は、情報を通信するためのバス12または他の通信メカニズムと、情報を処理するためにバス12に結合されたプロセッサ22とを含む。プロセッサ22は、任意のタイプの汎用または専用プロセッサであってもよい。システム10はさらに、プロセッサ22によって実行される命令および情報を格納するためのメモリ14を含む。メモリ14は、ランダムアクセスメモリ(random access memory:RAM)、読出専用メモリ(read only memory:ROM)、磁気または光学ディスクなどの静的ストレージ、もしくは任意の他のタイプのコンピュータ読取可能媒体の任意の組合せで構成され得る。システム10はさらに、ネットワークへのアクセスを提供するための、ネットワークインターフェイスカードなどの通信デバイス20を含む。したがって、ユーザは直接、またはネットワークを通してリモートに、または任意の他の方法で、システム10とインターフェイス接続してもよい。
【0028】
コンピュータ読取可能媒体は、プロセッサ22によってアクセス可能であり、揮発性および不揮発性媒体の双方、リムーバブルおよび非リムーバブル媒体、ならびに通信媒体を含む、任意の利用可能な媒体であってもよい。通信媒体は、コンピュータ読取可能命令、データ構造、プログラムモジュール、もしくは、搬送波または他の伝送メカニズムなどの変調データ信号における他のデータを含んでいてもよく、任意の情報配信媒体を含む。
【0029】
プロセッサ22はさらに、液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)などのディスプレイ24に、バス12を介して結合される。ユーザがシステム10とインターフェイス接続することを可能にするために、キーボード26と、コンピュータマウスなどのカーソル制御デバイス28とが、バス12にさらに結合される。
【0030】
一実施形態では、メモリ14は、プロセッサ22によって実行されると機能性を提供するソフトウェアモジュールを格納する。モジュールは、システム10のためのオペレーティングシステム機能性を提供するオペレーティングシステム15を含む。モジュールはさらに、需要予測のための最適需要予測パラメータを判定する需要予測モジュール16と、ここに開示されるすべての他の機能性とを含む。システム10は、より大きいシステムの一部であってもよい。したがって、システム10は、小売管理システム(たとえば、オラクル・コーポレイション(Oracle Corp.)からの「オラクル小売需要予測システム(Oracle Retail Demand Forecasting System)」または「オラクル小売高度科学エンジン(Oracle Retail Advanced Science Engine:ORASE)」)、もしくはエンタープライズ・リソース・プランニング(enterprise resource planning:ERP)システムといった、追加の機能性を含むための1つ以上の追加機能モジュール18を含み得る。データベース17はバス12に結合されて、モジュール16および18のための集中格納を提供し、顧客データ、製品データ、取引データなどを格納する。一実施形態では、データベース17は、格納されたデータを管理するために構造化問合せ言語(Structured Query Language:SQL)を使用することができるリレーショナルデータベース管理システム(relational database management system:RDBMS)である。一実施形態では、専用の販売時点(point of sale:POS)端末100が、需要を予測するために使用される取引データおよび履歴販売データ(たとえば、各小売店での各アイテム/SKUの取引に関するデータ)を生成する。POS端末100自体は、一実施形態に従って需要を予測するための追加の処理機能性を含んでいてもよく、単独で、または
図1の他のコンポーネントとともに、専用の需要予測システムとして動作することができる。
【0031】
一実施形態では、特に多数の小売店、多数のアイテム、および大量の履歴データがある場合、データベース17は、メモリ内データベース(in-memory database:IMDB)として実現される。IMDBとは、コンピュータデータ格納のために主としてメインメモリに依存するデータベース管理システムである。それは、ディスク格納メカニズムを採用するデータベース管理システムと対比される。メインメモリデータベースは、ディスク用に最適化されたデータベースよりも速い。なぜなら、ディスクアクセスはメモリアクセスよりも遅く、内部最適化アルコリズムがより単純であり、より少ないCPU命令を実行するためである。メモリ内のデータにアクセスすることは、データを問合せる際のシーク時間をなくし、それは、ディスクに比べてより速く、より予測可能な性能を提供する。
【0032】
一実施形態では、データベース17は、IMDBとして実現される場合、分散データ格子に基づいて実現される。分散データ格子とは、コンピュータサーバの集合が、分散またはクラスタ化された環境内で、情報および関連動作、たとえば計算などを管理するために、1つ以上のクラスタにおいて連携するシステムである。分散データ格子は、サーバ間で共有されるアプリケーションオブジェクトおよびデータを管理するために使用され得る。分散データ格子は、少ない応答時間、高スループット、予測可能なスケーラビリティ、連続的な利用可能性、および情報信頼性を提供する。特定の例では、たとえば、オラクル・コーポレイションからの「オラクル・コヒーレンス(Oracle Coherence)」データ格子などの分散データ格子は、より高い性能を達成するために情報をメモリに格納し、その情報の複製を複数のサーバ間で同期された状態で保つ際に冗長性を採用し、このため、あるサーバが故障した場合に、システムの回復力およびデータの継続的な利用可能性を確実にする。
【0033】
一実施形態では、システム10は、企業組織用のアプリケーションまたは分散アプリケーションの集合を含むコンピューティング/データ処理システムであり、物流、製造、および在庫管理機能性も実現してもよい。アプリケーションおよびコンピューティングシステム10は、クラウドベースのネットワークシステム、ソフトウェア・アズ・ア・サービス(software-as-a-service:SaaS)アーキテクチャ、または他のタイプのコンピューティングソリューションで動作するように、もしくは、当該システム等として実現されるように構成されてもよい。
【0034】
開示されるように、需要予測のための公知の例外駆動型ワークフローは、数字を見直すのに人間に依存しており、それを、時間がかかり、誤りが起こりやすいものにする。対照的に、実施形態は、信頼できない履歴データ点に基づいて推定された問題のある予測需要パラメータを自動的に検出する。信頼できないパラメータがいったん識別されると、実施形態はそれらを需要モデルから除去し、それらは、類似する製品または場所から借りられ得る最適化されたパラメータと置換えられる。これは、見直される必要のある例外の数を大いに減少させ、より正確な予測を生成する。
【0035】
需要パラメータは最初は分からないかもしれず、需要モデルは需要パラメータを提供するように構成され得る。需要パラメータの正確な判定を生成することによって、より正確な販売予測を獲得することができる。
【0036】
たとえば、いくつかの需要モデルについては、50%の値引が販売数量の4倍の増加をもたらす。これは単なる値の任意の選択ではない。代わりに、値引需要変数と販売数量との関係が、ある計算方法を通して判定される。特に、需要パラメータは、商品自体についての値引を含む履歴データを調べることによって判定され得る。判定プロセスは「推定」と呼ばれ、履歴販売データを調べてさまざまな統計学的アプローチを適用する推定ルーチンを伴い得る。
【0037】
実施形態は、季節性および販促効果パラメータを推定した後で、それらが信頼でき正確であることを確実にするために一連の自動検証を実行する。
図2は、一実施形態に従った、季節性および販促効果の需要パラメータを自動的に検証する際の
図1の需要予測モジュール16の機能性のフロー図である。一実施形態では、
図2(および以下の
図5)のフロー図の機能性は、メモリまたは他のコンピュータ読取可能媒体または有形媒体に格納され、プロセッサによって実行されるソフトウェアによって実現される。他の実施形態では、機能性は、ハードウェアによって(たとえば、特定用途向け集積回路(application specific integrated circuit:ASIC)、プログラマブルゲートアレイ(programmable gate array:PGA)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(field programmable gate array:FPGA)などの使用を通して)、または、ハードウェアとソフトウェアとの任意の組合せによって実行されてもよい。
【0038】
202で、ある特定のクラス/カテゴリーの製品について、履歴販売データが、全店舗についての全アイテムについて受信される。たとえば、クラス/カテゴリーは、「ヨーグルト」、「コーヒー」、または「ミルク」であってもよい。各クラスは、各個々の販売用アイテムであろうSKUまたは万国製品コード(Universal Product Code:UPC)レベルに至る、1つ以上のサブクラスを有する。たとえば、ヨーグルトというクラスについては、サブクラスはヨーグルトの各ブランドであってもよく、さらなるサブクラスは、販売される各個々の異なるタイプのヨーグルトアイテムに対応するであろうSKUに至る、風味、サイズ、タイプ(たとえば、ギリシャタイプまたは通常タイプ)であってもよい。各SKUまたはUPCは、離散的データ点または離散的アイテムと考えられるだろう。
【0039】
履歴販売および業績データは、たとえば、複数の過去の小売期間にわたるあるアイテムの過去の販売および販促と、各時期(たとえば春、夏、秋など)についての関連する季節性とを表わすデータを含んでいてもよい。履歴業績データは、過去数週間の小売期間へと区分化されてもよく、過去の各週は、その週に販売されたアイテムの個数を示すためにそれに割当てられた数値を有する。一実施形態によれば、履歴業績データはまた、小売期間にわたる、価格割引を表わす数値と、他の販促コンポーネントの値とを含んでいてもよい。一実施形態によれば、あるアイテムについての履歴業績データは、ネットワーク通信を介してアクセスされてもよく、各小売店で各POS端末100からアクセスされること、および/または、データベース17からアクセスされることを含む。
【0040】
204で、1つ以上のアイテムについて、季節性曲線が、履歴販売データに基づいて生成および/または受信される。季節性曲線は公知の手法を使用して生成され、この発明の実施形態は次に、生成された季節性曲線が信頼できるかどうかを判定する。他の実施形態では、季節性曲線は、202での履歴販売データに含まれ得る。季節性曲線は、一実施形態では、商品の需要の季節的変動を表わす、1組の週ごとの需要パラメータである。それらは、一般的な予測モデルでは勘案されない効果を表わす。季節性曲線は、商品、場所、および季節コードに基づいて特定のアイテムにマッピングされ、時系列に対するパラメータとしてモデル化される。
【0041】
図3は、実施形態に従った、2つの完全な販売サイクルにわたる、あるアイテムについての例示的な季節性曲線を示す(302:年1、304:年2)。他の実施形態では、3つ以上の販売サイクルが使用され得る。各年は、3つの季節性曲線についての季節性パラメータと、各年の集計曲線とを含む。一般に、季節性曲線は、単一のSKU/店舗よりも高い交点にあり、複数のアイテム/店舗の組合せをカバーする。なぜなら、単一のSKU/店舗は、データ量に関してまばらすぎるためである。たとえば、アイスクリームについては、ほとんどのアイスクリームアイテムは、フロリダの全店舗についておそらく同じ季節的パターンを有するであろう。
図3の単純化された例は、季節性曲線(すなわち集計曲線)がどのように複数のアイテム/店舗の組合せ(時系列)をカバーするかを示すために、3つの時系列を使用する。3つの時系列は、アイスクリームの例については、マイアミのある店舗でのバニラアイスクリーム、マイアミの同じ店舗でのラズベリーアイスクリーム、タンパのある店舗でのストロベリーアイスクリームなどであってもよい。関連する季節性曲線は、それらの時系列の集計になるであろう。
【0042】
図3における3つの時系列は、単純化された例として選択された。実際には、はるかに多い数が存在するであろう。また、13週も、
図3において単純化された例として選択されている。ほとんどのアイテムについては、一般に、販売サイクルの週の数は52(1年)である。しかしながら、ファッションアイテムについては、販売サイクル全体は、ファッションアイテムが流行遅れになって次のファッションアイテムと置換えられる前に、13週しか続かないかもしれない。
【0043】
図3に示す数は、所与の時系列についてその期間に販売された数量を表わす。0がある場合、その期間には販売がなかった。集計は、ある期間の全数量の合計である。
【0044】
図3の例でのようにたった2つの販売サイクルを使用すること、または、何らかの他の予め定義された数のサイクルを使用することは、季節的パターンが毎年反復可能であることを保証しない。したがって、実施形態は、季節性曲線に対して一連の妥当性検査を実行する。具体的には、
図2の206で、2年(とはいえ、多くの販売サイクルが使用される)における需要に対する季節性曲線の相関を使用して、反復性が判定される。相関が不十分である場合、季節的パターンの反復性は受入れられず、曲線は破棄される。相関が良好である(しきい値よりも高い)場合、曲線は保存される。
【0045】
図3の例については、0.9という相関しきい値が使用される。年2と年1との間の判定された前年比(year over year:YOY)相関は0.929099493である(ここで、+1という相関は完全正相関を示し、-1という相関は完全負相関を示し、0という相関は無相関を示す)。したがって、年2の集計曲線は、相関しきい値によって要求されるよりも良好に年1の集計曲線と相関しており、そのため、それは集計曲線2として保存される。言い換えれば、相関テストに合格したため、YOY季節性パターンは受入れ可能である。曲線1および曲線2は双方とも保存されるが、曲線2は最も最近の需要に基づくため、曲線2がさらなる計算のために使用されるであろう。典型的には、
図3に示すように2つの販売サイクルがある。より多くの販売サイクルが利用可能である場合、実施形態は最も最近の2つの販売サイクルを使用し、そのため、依然として
図3のように曲線1および曲線2があるであろう。
【0046】
208で、需要データの最も最近の受入れ可能な(すなわち、受入れ可能になるようにYOYパターンが確立される)季節性曲線(すなわち、
図3の例での曲線2)の滑らかさが判定される。季節性曲線がぎくしゃくする(すなわち滑らかではない)多くの理由がある。たとえば、販促需要が勘案されなかった場合、または、低/高価格設定ポリシーが実施された場合などである。低/高価格設定ポリシーとは、ある小売業者がある商品につい実践する価格設定ポリシーである。そのようなポリシーについては、アイテムは、価格が高いと売れず、価格が下げられると非常によく売れる。それは、ぎくしゃくした需要パターンとして反映されるであろう。そのようなポリシーの反対は、たとえば「毎日安値」戦略である。
【0047】
間違った期間に季節性の急上昇を有することは、予測精度に大きい悪影響を与え得る。これを避けるために、実施形態は、季節性曲線の標準偏差を判定する。それが高い(すなわち、標準偏差しきい値を上回る)場合、曲線は大きすぎる変動性を有しており、破棄される。それが低い(しきい値を下回る)場合、曲線は保存される。
【0048】
図3の例では、曲線2(すなわち、最も最近の需要データを有する曲線)の標準偏差しきい値は1.5であり、曲線2の計算された標準偏差は0.77064119である。したがって、この例では曲線2が保存される。その他の場合、それは破棄される。
【0049】
210で、季節性曲線のまばらさが判定される。つまり、実施形態は、季節性を推定するために十分な量の利用可能なデータがあるかどうかを判定する。利用可能なデータ点が少ししかない場合、季節性曲線はまばらすぎ、このため信頼できないかもしれない。まばらさをチェックするために、実施形態は、季節性が強いと予想される場合、ゼロ(すなわち、その週の販売がゼロ)である季節指数の数を判定する。数が大きい場合、曲線は破棄される。それが受入れ可能である(ゼロ指数しきい値を下回る)場合、曲線は保存される。
【0050】
図3の例では、ゼロ指数しきい値は5である。曲線2においてゼロである値の個数は3である。曲線は、ゼロの値を有する3つの期間(週1、3および13)を有する。これは、しきい値によって許可されるものを下回っており、そのため、この曲線はテストに合格し、破棄されない。その他の場合、それは破棄される。
【0051】
206、208、および210の機能性は、より多くの季節性曲線が「テストされる」ように、それ自体を反復する。206、208、および210の結果、需要販売予測を生成するために、信頼できる季節性曲線のみが残る(すなわち、信頼できない季節性曲線はすべて破棄されたであろう)。
【0052】
次に、実施形態は、販促効果の信頼性を判定する。季節性もさることながら、販促は、需要に対して著しい影響を与える。したがって、それらが正確で頑強であることを確かめることが必要である。
【0053】
図4Aは、実施形態に従った、13週の販売サイクルにわたる、あるアイテムについての販促効果パラメータを示す。行404は、期間中に販促が存在するか、すなわちアクティブであるかどうかを示す(0は、アクティブな販促効果がないことを示し、1は、その期間中のアクティブな販促効果または複数のアクティブな販促を示す)。行402は、対応する需要を示す。行402における1未満の数は、対応するアクティブな販促が、たとえば不良データまたは信頼できない販促のために、需要に対してプラスの効果を与えないことを示すであろう。
【0054】
212で、販促効果パラメータのまばらさが判定される。実施形態は、需要に対する販促の影響を推定するために十分なデータ点が使用されたかどうかを判定する。データ点とは、ゼロよりも大きい数である。数が小さすぎる場合、効果は破棄される。なぜなら、それらはおそらく信頼できないためである。販促効果パラメータはすべて破棄される。なぜなら、需要をモデル化する際、信頼できない効果を含まないほうがよいためである。データ点の数が受入れ可能である(しきい値を上回る)場合、効果は保存される。
【0055】
図4Aの例では、データ点しきい値の最小数は10である。13週のうち2週が需要0を有するため、利用可能なデータ点の数は11であり、そのため、販促効果は信頼できると考えられる。
【0056】
実施形態では、需要に対する販促影響の推定は、公知の線形または段階的回帰手法を使用する回帰ベースである。回帰はほとんどの場合うまく機能するが、予想しづらいデータパターンがいくつかある。たとえば、あるアイテムが販促される場合しか売れない場合、プログラムによって販促需要からベースライン需要を切り離すことはできない。切り離しが難しい場合の別の状況は、あるアイテムが非常に頻繁に販促される場合である。したがって、214で、実施形態は回帰切片をチェックする。販促効果の推定中、回帰は切片も計算し、それはベースライン需要の代理である。切片が小さい場合、販促効果は不安定であり、このため破棄される。切片が受入れ可能である(しきい値を上回る)場合、効果は保存され、需要予測モデルにおいて使用される。切片(しばしば定数と標示される)は、すべてのXが0である場合のYの予想平均値である。
【0057】
図4Bは、実施形態に従った、
図4Aの販促効果についての回帰切片計算を示す。列412は
図4Aからの需要影響であり、列414は
図4Aからの販促効果である。
図4Bの例では、最小切片しきい値は.5である。計算された切片は0.10090909、X変数は1.44909091である。X変数とは、販促の計算された効果である。この例では、販促がアクティブである場合、需要の45%の増加が予想される。なぜなら、この例では、計算された切片が許容最小値を下回り、販促効果が破棄されるためである。
【0058】
216で、上に開示された需要モデル(式1)と、上述の機能性の後で保持された季節性曲線および販促効果のすべてとを使用して、需要予測が計算される。需要予測は、単一の店舗での単一のアイテムについてのものであり、または、それは、アイテムが補充または計画される交点で生成され得る。典型的には、補充で使用される予測は、数週間または数日間における単一の店舗での単一のアイテムについて生成される。計画する目的のために、予測は、スタイル全体およびある領域について、さらには全店舗について生成され得る。
【0059】
図2の機能性の結果、信頼できないパラメータが識別されて除去され、需要モデルをより正確にする。具体的には、信頼できないパラメータは除去される。使用されるのは残りのパラメータである。たとえば、一実施形態が10組のパラメータを生成する(すなわち、各組は1つの需要モデルを生成するために使用され得る)場合、
図2の信頼性検査の後で、6組が破棄されるかもしれない。予測中に使用されるのは、残りの4組のうちの1つである。以下に開示される機能性は、モデルを最適化するために4組のうちのどれが使用されるかを判定することができる。
【0060】
218で、判定された需要予測が、製造生産、出荷物流、および在庫管理のために使用される。一実施形態では、最終需要予測が、在庫管理システム、製造システム、出荷および物流システム、販売支援システムなどの他の専用コンピュータへ送信される。一実施形態では、最終需要予測は個々のデータビットの形をしている。個々のデータビットは需要予測から変換されたものであり、格納されて他の専用コンピュータシステムへ送信され、そこで当該システムによって格納されて利用される。その結果、追加のアイテムが製造、保管、出荷などされてもよく、アイテムは最適に値付けされ得る。
【0061】
需要モデルから信頼できないパラメータを除去することに加えて、実施形態は、需要モデルがさらに最適化されるように「最良の」パラメータを選択する。たとえば、
図2の機能性の結果、10組のパラメータのうち6組が破棄される例では、実施形態は、最適化されたモデルを選択するために、残りの4組からパラメータの最良の組を選択することができる。
【0062】
公知の高性能の予測解決策は、販売パターンおよび販促効果を判定するために、履歴販売データを調べる。それらはまた、将来の需要の全体的見解を作り出すために、アイテムおよび場所属性と、天候などの外部要因とを使用する。
【0063】
一般に、需要予測のための公知のアプローチは2つある。第1のアプローチは、上に開示された情報(すなわち、季節性曲線、販促効果パラメータ、および他の需要モデルパラメータ)を使用して、予測モデルを構築する。そのモデルは次に、需要を予測するために使用され、最近の需要を反映するように時々リフレッシュされる。第2のアプローチは、複数の需要予測モデルを生成し、最も好適であると考えられるものを人間に手動で選ばせることである。
【0064】
これら2つのアプローチには欠点がある。第1のアプローチは単純で簡単明瞭であるが、すべての需要詳細を取込むほど豊富ではない。小売活動のために必要とされる正確な予測を作り出すには、異なる商品および場所についての異なるモデルを有することが非常に望ましい。第2のアプローチでは、それはモデルの手動選択に依存するため、選択されたモデルが次善のものであり、時間がかかるものである可能性が高い。モデルの選択が自動化された場合、最良のモデルが選択されない可能性が依然としてある。
【0065】
対照的に、実施形態は、複数の需要モデルを生成し、不良適合であるモデルを自動的に破棄する。残りのモデルについて、実施形態は、精細なアイテム/店舗レベルに至るまで、最良適合モデルを自動的に選択する。
【0066】
しかしながら、商品自体の履歴販売データが、実施形態が需要パラメータの信頼できる推定を行なうには少なすぎる場合がしばしばある。また、単一の商品アイテムのみに基づく需要パラメータの推定が非実用的であり得る数学的および統計学的理由がある。
【0067】
あるアイテムについて需要パラメータを正確に生成するにはデータが少なすぎるという問題を回避するために、いくつかのアイテムの履歴データをともにプールし、需要パラメータの全体的推定を全アイテムについて同時に行なうことができる。したがって、たとえば、弾力性推定値は、履歴データがともにプールされたいくつかの商品アイテムのすべてに対する、一種の平均弾力性を表わす。商品アイテムは類似していると考えられるため、全アイテムに対する平均弾力性を使用することは、任意の特定のアイテムの弾力性をひどくゆがめて表わすことはない。
【0068】
一実施形態では、アイテムをプールすることは、「プール」の階層を使用して、構造化され固定された方法で行なわれる。階層では、各プールは、それより下により小さいプールを含む。これは、販売階層であってもよい。このため、たとえば、階層の底は、ほんの少数のアイテムを有するプールを含むかもしれず、一方、階層の一番上には、小売業者によってその店舗のいずれかで販売された全商品を含む1つの巨大なプールがある。それらの間には、小売業者のある特定の部門における全アイテムを含む、部門レベルのプールといった中間プールまたは交点がある。プールの階層は、小売業者ごとに特有のものであってもよく、小売業者のビジネスの組織原理として機能してもよい。あるプールの「レベル」とは、この階層内でのそのプールのレベル(たとえば「部門レベル」)である。階層の各レベルは、複数のプールを含む。たとえば、部門レベルは、部門ごとに1つのプールを有する。同様に、サブクラスレベルは、サブクラスごとに1つのプールを有するであろう。プールはまた、パーティションと呼ばれてもよい。
【0069】
一実施形態では、最低レベルは、在庫管理単位(SKU)レベルである。SKUレベルは膨大な数のパーティションを有していてもよく、各パーティションは単一のアイテムである。次のレベルは、たとえば、色レベルであってもよい。色レベルは多数のパーティションを有していてもよく、各パーティションは単一色のプールを含み、それは、その特定の色のアイテムの数に依存して多くのまたは少ないSKUを含んでいてもよい。スタイルレベルが、色レベルより上にあってもよい。それより上に、「紳士用ベルト」といったサブクラスレベルがあってもよい。次に、そのレベルより上に、「紳士用商品」といったクラスレベルがあってもよい。これらのレベルは部門レベルに続き、それに区分レベルが続いてもよい。需要パラメータは、各レベルで計算され得る。
【0070】
他の構造化され固定された階層も可能である。たとえば、販売場所を系統立てるために、郵便番号、市、郡、州、国、および大陸という地理的階層を使用することができる。したがって、この説明において一例として使用される特定の階層は、唯一可能な階層と考えられるべきではない。
【0071】
ともにプールされるアイテムが多くなるほど、推定された需要パラメータは任意の特定のアイテムを表わさないであろう。したがって、理想的な場合、推定値は、最も小さい最低レベルのプールの各々において推定を実行することによって生成される。したがって、各プールは、他のプールに影響されないそれ自体の推定値を受取る。
【0072】
しかしながら、最低レベルのプールの多くはまた、アイテムまたは履歴データが少なすぎて、そのプールに特有の需要パラメータの信頼できる推定を行なうことができないかもしれない。それにもかかわらず、そのようなプールにおけるアイテムは予測を必要とするかもしれず、よって、需要パラメータを必要とするかもしれない。
【0073】
そのため、小さいプールをできるだけ表わす需要パラメータを生成するために、最も小さいプールを大きくするための構造化された方法が必要とされるかもしれない。より大きいプールに移行するこの構造化された方法は、「エスカレーションパス(escalation path)」として知られている。エスカレーションパスは、最低レベルのプールについての推定値を得る際に試みるプールの階層を示す、最低レベルから始まる一連のレベルである。需要モデルによって使用されることになっている推定値は、信頼できる(エスカレーションパスに沿った)最初のものであってもよい。したがって、エスカレーションパスは、所与のレベルでの需要パラメータが信頼できない場合に使用され得る。
【0074】
1つのエスカレーションパスは単に、最低レベルのプールに対する最良近似が、次に最も小さいものを含むプールであるという経験則に基づいている。この場合、エスカレーションパスは単に、各レベルからより高い次のレベルへ行くことからなる。
【0075】
実施形態では、予測が究極的に生成されるプール/エスカレーションレベルは典型的には、アイテム/店舗/週レベルである。上述の式(1)の需要モデルを参照して、実施形態では、ベース需要は、予測と同じ交点で生成される。しかしながら、季節性および販促効果は、複数の交点レベルまたは交点で推定されてもよい。たとえば、サブクラス/店舗、クラス/地域、アイテム/チャネルなどを含む交点について生成された季節性曲線があってもよい。同じことは販促効果にも当てはまる。
【0076】
しかしながら、予測時間では、各アイテム/店舗の組合せについて、たった1つの季節性曲線と1組の販促パラメータとを選択しなければならない。実施形態は、需要モデルにおいて使用される季節性曲線および1組の販促パラメータの選択を最適化する。
【0077】
図5は、一実施形態に従った、需要モデルにおいて使用される季節性曲線および1組の販促パラメータの選択を最適化する際の
図1の需要予測モジュール16の機能性のフロー図である。
【0078】
502で、ある特定のクラス/カテゴリーの製品について、履歴販売データが、全店舗についての全アイテムについて受信される。この履歴販売データは、
図2の202で受信されるものと同じデータであってもよい。
【0079】
504で、季節性曲線と数組の販促パラメータとを含む需要パラメータのプールが受信される。需要パラメータは、上に開示されるような推定されたパラメータであってもよい。一実施形態では、受信された需要パラメータは、上述の
図2の機能性が実行された後に信頼できると考えられる需要パラメータの組である。
【0080】
季節性曲線に関連して、実施形態は、最適化された季節性曲線を判定する際に2つの局面を考慮する。第1に、実施形態は、各曲線がアイテム/店舗の販売にどれくらい良好に適合するかを判定する。第2に、実施形態は、曲線自体が信頼できるかどうかを判定する。
【0081】
したがって、506で、各季節性曲線とアイテム/店舗の組合せの販売との相関が計算される。たとえば、10個のエスカレーションレベルがある場合、販売と曲線との相関について10個の値が記録される。季節性曲線ごとに、適合が、バックキャスティング(すなわち、過去における予測)とエスカレーションレベルまで集計された需要とを使用して判定される。
【0082】
適合と需要とを使用して、508で、二乗平均平方根誤差(root mean squared error:RMSE)が計算され、アイテム店舗ごとに10個の誤差計算を有する結果を収める。
【0083】
最後に、510で、以下のアルゴリズムを使用して、レベルごとにスコアが計算される:
【0084】
【0085】
式中、ペナルティーは、曲線の形状と曲線の推定中に有し得る確信とのトレードオフを可能にする。ペナルティーを判定するための基準は、曲線の形状が曲線またはその信頼性の選択における決定要因であることをユーザが望むかどうかを含む。ペナルティーの値は、2つの基準のバランスをとる。値は実現化例ごとに変わり得るが、典型的な値は1~5である。
【0086】
10個のスコアが利用可能である場合、実施形態は、最高スコアに対応する季節性曲線を自動的に選ぶ。
【0087】
図6は、実施形態に従った、13週の販売サイクルにわたる、あるアイテムについての2つの例示的な季節性曲線を示す。
図6の例では、506で、販売と季節性曲線との相関が判定される。曲線1の相関は0.709224として計算される。曲線2の相関は0.753982として計算される。次に、508で、曲線1についてのRMSEが2.5として計算され、曲線2についてのRMSEが3として計算される。
【0088】
次に510で、誤差対相関に重み付けする係数であるペナルティーが設定される。この例では、ペナルティーは1.5に設定される。次に、上に開示されたスコアアルゴリズムを使用して、曲線1のスコアが0.14931で計算され、曲線2のスコアが0.137088で計算される。
【0089】
これらの結果に基づいて、曲線1が「勝つ」。なぜなら、それはより低い相関を有する(すなわち、アイテムの販売にあまり似ていない形状を有する)ものの、それはより小さいRMSEを有するため、その推定値にはより高い確信があり、スコア全体を曲線2よりも高くするためである。より小さいRMSEは、YOY需要パターンがより安定していることを意味し、パターンが将来反復するであろうという確信を与える。
【0090】
次に、実施形態は、最適な販促効果を判定する。季節性曲線と同様に、販促効果は、さまざまな交点またはプールレベルで推定され得る。たとえば、プールレベルが7つあると仮定する。502で受信された販促効果のどれが「最良」であるかに関する決定を行なうために利用可能なメトリックは、以下を含む:
・アイテム/店舗ごとの履歴需要;
・アイテム/店舗ごとの(販促需要が除去された)履歴季節的需要;および
・7組の販促効果。
【0091】
この情報を用いて、512で、履歴季節的需要に加えて販促効果が適用されて履歴需要をシミュレートし、各プールレベルに各々対応する7つのそのようなメトリックを有する結果を収める。514で、シミュレートされた履歴需要を実際の履歴需要と比較することによって、誤差メトリックがレベルごとに判定される。一実施形態では、使用される誤差メトリックはMAPEである。他の誤差メトリックは、二乗平均平方根誤差、平均絶対誤差、平均誤差、絶対パーセント誤差などを含み得る。516で、最低MAPE(または他のメトリック)を生じさせるプールレベルで生成された販促効果が選択される。
【0092】
図7は、実施形態に従った、13週の販売サイクルにわたる、あるアイテムについての例示的な販促効果を示す。行702では、「0」は販促がアクティブではないことを示し、「1」は販促がアクティブであることを示す。
図7の単純化された例は、1つの販促または1つの事象についてのものである。この販促が与える、需要に対する効果は、2つの異なる交点で推定され、このため2つの効果を提供する。実施形態は、これら2つの効果のうちのどちらを選ぶかを判定する。
【0093】
図7の例は、2つの異なるソース(すなわち、2つの異なる交点レベル)から生じる販促効果を使用し、実施形態が実際の需要に最良に適合するもの(すなわち、最適化されたもの)をどのように選ぶかを示すことによって、方法論を例示する。実施形態では、1つ以上のアイテムについての複数の販促効果が、同じ時期の間適用され得る。
【0094】
まず、512で、販促効果(
図7の例では、週1および週9のみが販促効果を有する)が、(販促需要=非販促需要
*販促効果として単純化された)上述の式1に従って適用される。
図7の例では、プールレベル1からの販促効果は1.6であり、プールレベル2からの販促効果は2である。
【0095】
プールレベル1からの販促効果を使用する販促需要は、19.2(週5)および20(週9)である。プールレベル2からの販促効果を使用する販促需要は、24(週5)および25(週9)である。販促需要は上述の式1を使用して判定され、式中、非販促需要には効果が乗算される。
【0096】
514でプールレベル1について計算されたMAPEは、6.545455(100/2*(ABS(20-19.2)/20+ABS(22-20)/22として計算)である。プールレベル1について計算されたMAPEは、16.81818(100/2*(ABS(20-24)/20+ABS(22-25)/22として計算)である。
【0097】
上記に基づき、516で、プールレベル1で計算された効果によって生じる誤差がプールレベル2についての誤差を下回るため、レベル1の販促効果が選択される。
【0098】
図7は、2つのプールレベルで推定された1つの販促効果が存在する単純な例を示す。実際の用途では、典型的には、定義された10個以上の販促の組が存在し、各組は、各プールレベルで、典型的には5つ以上のレベルで推定されるであろう。そして、結果は、10個のレベルのうちの1つから生じる販促効果の組である。
【0099】
518で、上に開示された需要モデルと、上述の機能性の後で保持された季節性曲線および販促効果のすべてとを使用して、需要予測が計算される。
【0100】
520で、判定された需要予測が、製造生産、出荷物流、および在庫管理のために使用される。一実施形態では、最終需要予測が、在庫管理システム、製造システム、出荷および物流システム、販売支援システムなどの他の専用コンピュータへ送信される。一実施形態では、最終需要予測は個々のデータビットの形をしている。個々のデータビットは需要予測から変換されたものであり、格納されて他の専用コンピュータシステムへ送信され、そこで当該システムによって格納されて利用される。その結果、追加のアイテムが製造、保管、出荷などされてもよく、アイテムは最適に値付けされ得る。
【0101】
開示されるように、実施形態の1つの目標は、予測精度を究極的に最大化するためにアイテムについての関連する特徴を選択することである。良好な予測は概して、信用を受けない。アイテムは常に入手可能であり、それらは割引価格ではなく正価で売れる。小売業者が資金を在庫に投資しないよう、在庫レベルは高すぎてはならない。小売業者および供給業者は、労働力および生産能力を確実に計画できるべきである。
【0102】
しかしながら、予測が間違っている(すなわち、正確でない)場合、状況は劇的に変わる。効果は、多くのビジネス分野に対して悪影響を及ぼし得る。たとえば、予測が低すぎる場合、必要とされるものより少ない製品が小売業者に届き、当該製品は売り切れる。品切状況は、収益の低下および顧客満足の減少を通して小売業者に影響を与える。低い予測は供給業者にも影響を与え、供給業者は生産を縮小し、現在の労働力に対する必要性を見直さなければならない。
【0103】
予測が高すぎる場合にも悪影響がある。小売業者は、自分たちが売れるものよりも多くを注文するであろう。製品が傷みやすい場合、製品は劣化するかもしれず、廃棄物を増加させる。製品が傷みやすくなかったとしても、小売業者は余分のアイテムを割引価格で販売するかもしれず、それは収益に悪影響を与える。小売業者はさもなければ、商品を供給業者に返すかもしれない。これは供給業者に影響を与える。なぜなら、供給業者は、需要のない余分の製品を有するためである。さらに、製造業者は、間違ったものの生産に時間および資金を浪費するかもしれず、それは供給業者の収益に悪影響を与える。
【0104】
図8は、一実施形態に従った、ここに開示されるような需要予測を含む一貫製造、在庫および物流システム800を示す。
図8に示すように、システム800は、製品予測システム870を含み得る。製品予測システム870は、将来の製品需要を予測し、場合によっては、1つ以上の小売店801~804での、何十万もの製品、もしくは、用途によっては何千万ものまたはそれ以上の製品の将来の需要を予測および/または考慮する。予測システム870は、クラウドネットワーク850または他のタイプの通信網を通して、1つ以上の在庫システム820および1つ以上の製造システム880と通信している。
【0105】
予測システム870は、上述の
図2および
図5に関連して開示された機能性を実現することによって需要予測を生成する。在庫システム820は在庫を保管し、トラック810~813または何らかの他の運送メカニズムを使用してアイテムを店舗801~804へ届けるための運送物流を提供する。在庫システム820は、一実施形態では、予測システム810からの入力を使用して、在庫のレベルと店舗801~804へ届けるアイテムの量およびタイミングとを判定する、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)専用コンピュータシステムまたは専用在庫管理システムを実現する。
【0106】
製造システム880は、在庫システム820へ送られるべきアイテムを製造し、トラック881または何らかの他の運送メカニズムを使用してアイテムを在庫システム820へ届けるための運送物流を提供する。製造システム880は、一実施形態では、予測システム870からの入力を使用して、製造するべきアイテムの量と、製造のために使用されるリソースの在庫と、在庫システム820へ届けるアイテムの量およびタイミングとを判定する、ERP専用コンピュータシステムまたは専用製造システムを実現する。
【0107】
予測システム870は、製品の需要を予測する際、在庫システム820、販売追跡システム(図示せず)、および/またはデータベースからの情報を利用することができる。需要を予測する際、予測システム870は、事象、天候、社会的需要、経済的要因、および他の要因に起因する、1つ以上の製品の特徴的でない需要を予想するよう試みる。1つ以上の製品の需要に影響を与え得る、何十から何百、何千もの異なる変数が追跡されてもよい。これらの変数の変化は、特徴的でない需要をもたらし得る。たとえば、予測された天候の変化が追跡されてもよく、天候のそのような変化が需要に影響を与えるかどうかを判定する際に、予測された天候に関連する1つ以上の変数が使用されてもよく、さらに、需要の変化が予測されてもよい。
【0108】
一般に、
図8の要素は、販売、製造、または在庫の消費を行なう。消費者への直販のための小売場所/店舗801~804は、販売に影響を与える偶発的な自然および外部要因に起因して、最も変わりやすい在庫パターンを呈示する。しかしながら、在庫を消費する製造設備および拠点(ローカル設備で使用される製品の製品インテグレータ、インターネット出荷業者など)はまた、ここに開示されるような需要予測から利益を得る。開示されるように、各小売場所801~804は、販売データおよび履歴予測データを予測システム870へ送信する。販売データは、アイテムごとの在庫消耗統計値、または、以前の販売サイクル(すなわち数週)、典型的には4~7週の在庫サイクルにおける、各販売期間の、典型的には数日間のSKU/UPCを含む。
【0109】
予測システム870は販売データをリポジトリ872に格納し、在庫を補充するための注文を生成するために販売データを採用する。注文は、店舗801~804での在庫レベルを維持するための、1組のアイテムと、アイテムごとの数量とを含む。
【0110】
多くの小売注文方式は、販売期間および販売サイクルについて曜日に依存する。一構成では、各曜日に特有である在庫統計値を有する在庫管理環境において、在庫システム820は、以前の販売から在庫レベル統計値を曜日ごとに集めることによって目標在庫レベルを判定する。実施形態は、安全在庫が異なる曜日間の在庫の変動に対処するように、在庫レベル統計値に基づいて曜日ごとの在庫レベルを計算する。実施形態は、複数のアイテムの各々について、曜日ごとの安全在庫を含む目標在庫レベルを示す貯蔵レベルを与える。実施形態は、決まった曜日に与えられた貯蔵レベルを満たすように注文数量が到着するように、リードタイムに基づいて注文数量を計算する。実際の貯蔵レベルを識別することは、履歴データからの以前の週からある曜日の貯蔵レベルを識別することを含み、このため、週の全曜日の平均ではなく、週の同じ曜日に経時的に注目する。
【0111】
特定の構成では、開示された実施形態は、特殊なおよび/または特に大量の小売販売環境に関連して採用されてもよい。大規模な物流および流通業務では、トラックにできるだけ積荷することが有益であり、また、次の便へのアイテムの延期が必要である場合には、販売活動を中断する可能性が最も少ないアイテムを選択することが有益である。したがって、実施形態は、他のアイテムよりも速く販売され補充される傾向がある高速または高回転率アイテムを識別するために、POSシステム100と連携して動作可能である。アイテム上のUPCバーコード記号または無線自動識別(radio-frequency identification:RFID)は、単独でまたはデータベースルックアップとともに、あるアイテムを、ここに定義されるような安全在庫処理にとって適切な高速アイテムとして指定する、フィールド、名称、または値を含む。
【0112】
高速アイテムは、在庫データベースに表わされた複数のアイテムの各々について、製品識別子用のフィールドと当該アイテムについての安全在庫を示すフィールドとを識別し、製品識別子の各々について、販売高に起因する製品補充需要の増加を示す製品速度に基づく製品区分化フィールドを判定することによって、対処されてもよい。開示された実施形態は、安全在庫を計算するべきかどうか、すなわち、製品スループットを考慮すると、安全在庫に従って再供給するための諸経費および負担は価値があるかどうかを、速度フィールドに基づいて判定する。
【0113】
他の実施形態では、供給物流は、1日当たりトラック1台以上の配達頻度を引き起こすかもしれず、よって、より高い精細度を有する再供給ウィンドウをトリガする。そのような場合、安全在庫は、月曜の午前および月曜の午後のように、各曜日よりも詳しくてもよく、もしくは、午前7時、午前11時、および午後4時のように、ある特定の曜日における複数の配達または時間ウィンドウを指定するようにより詳しくてもよい。
【0114】
生成された需要予測を含む実施形態は、運送されるアイテムの需要および利ざやに従って、供給物流を実現し、配達(すなわちトラック)および積荷目録(すなわち含まれるアイテム)を指定する際に採用されてもよい。高速アイテムは、特定の配達において優先空間を有すると考えられ得るが、さらに、含まれるアイテムについての利ざやまたは値上げ、および、含まれるために選択された最大収益生成可能性を有するアイテムに基づいて選択され得る。
【0115】
ここに開示される需要予測を使用し、複数の運送車両を有する、そのような製品在庫出荷環境では、各車両(たとえばトラック)は、在庫補充のために販売場所へ配達されるための固定積載量のアイテムを受けるために構成される。実施形態は、第1のアイテムおよび第2のアイテムを含む複数のアイテムのうちの各アイテムについて安全在庫を計算し、第1のアイテムおよび第2のアイテムの計算された安全在庫に基づいて、配達車両に積荷されるべき第1のアイテムおよび第2のアイテムの各々の数量を判定することによって、配達車両に積荷する際に指示を出すことができる。実施形態は、配達車両において利用可能である空間が、判定された数量の第1のアイテムおよび第2のアイテムにとって不十分である場合、つまり、あるアイテムを除外して次の配達に延期する必要がある場合、安全在庫に基づいてトラック積載数量を再計算する。
【0116】
開示されるように、実施形態は、信頼できる季節性曲線および販促効果を自動的に判定し、信頼できないパラメータを破棄することによって、需要モデルを生成する。その結果、需要モデルは、既存の履歴データに基づいて需要を予測するために最適化されるであろう。
【0117】
いくつかの実施形態が、ここに具体的に例示および/または説明されている。しかしながら、開示された実施形態の変更および変形は上述の教示によって包含されており、この発明の趣旨および意図された範囲から逸脱することなく、添付された請求の範囲内にあるということが理解されるであろう。