(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】電熱装置を使用して透明窓を除氷するための方法及び構成
(51)【国際特許分類】
H05B 3/84 20060101AFI20231214BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20231214BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20231214BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20231214BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H05B3/84
B60S1/02 310
B60J1/00 H
H05B3/00 310D
H05B3/20 327B
(21)【出願番号】P 2020540581
(86)(22)【出願日】2019-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2019051789
(87)【国際公開番号】W WO2019145444
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-11-08
(32)【優先日】2018-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
【住所又は居所原語表記】Avenue Jean Monnet 4, 1348 Louvain-la-Neuve, Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー, ミシェル
【審査官】河内 誠
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102016200931(DE,A1)
【文献】特表2017-520079(JP,A)
【文献】特開平2-37061(JP,A)
【文献】特表2014-514200(JP,A)
【文献】特開2016-141378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00~3/86
B60S 1/02
B60J 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電熱装置を備えていない透明窓、特に車両フロントガラスを、電熱装置、特に加熱層を有する透明窓で改造する方法であって、前記方法は、
a. 車両から電熱装置を備えていない前記透明窓、特に車両フロントガラスを除去するステップと、
b. 電熱装置、特に加熱層、及び少なくとも1つの温度センサが設けられた透明窓を設置して、改造加熱透明窓を得るステップと、
c. 前記改造加熱透明窓に加熱電圧を印加するように、前記電熱装置を電圧供給装置に接続するステップと、
d. 遠隔制御装置を前記少なくとも1つの温度センサ及び前記電圧供給装置と接続するステップと、
を含み、
前記電熱装置は、前記改造加熱透明窓を除氷及び/又は防曇するために使用され、
前記電熱装置で改造加熱透明窓、特に車両フロントガラスを除氷及び/又は防曇するための方法は、
手動で又は自動的に開始された除氷及び/又は防曇プロセスに基づいて、
a. 加熱電圧を最初に印加する前に窓温度を測定するステップであって、前記加熱電圧及び加熱期間は、窓面積1平方メートル(m
2)当たり10オーム(Ω)未満の抵抗に対応する加熱電力が生成されるように選択され、前記窓温度が下側温度閾値を超える場合、前記電熱装置で改造加熱透明窓、特に車両フロントガラスを除氷及び/又は防曇するための方法は終了される、ステップと、
b. 窓面積1平方メートル(m
2)当たり10オーム(Ω)未満の抵抗に対応する加熱電力が生成されることを適用するために、前記電熱装置に30~60ボルトの加熱電圧を印加するステップと、
を含み、前記電熱装置は、電気的接続手段を介して、給電電圧又は加熱電圧を提供するための前記電圧供給装置に電気的に接続される、方法。
【請求項2】
前記改造加熱透明窓は、前記改造加熱透明窓に加熱電圧を印加するように、さらなる電圧供給装置によって電力供給される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記さらなる電圧供給装置は、車室内に設けられたバッテリである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記さらなる電圧供給装置は、車両の内部に設けられる、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記さらなる電圧供給装置は、前記車両のさらなる電動機能に電力を印加するために設けられる他の電圧供給装置から独立している、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記改造加熱透明窓は、外面及び内面を備えた積層透明窓である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
窓温度は、少なくとも1つの温度センサによって測定され、前記少なくとも1つの温度センサは、前記積層透明窓の内部に位置している、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記改造加熱透明窓は、前記改造加熱透明窓への加熱電圧の前記印加のスイッチを入れる/スイッチを切るために前記積層透明窓の内部に位置しているスイッチ素子をさらに備える、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
窓温度の下側温度閾値は、4℃以下である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記改造加熱透明窓の除氷及び/又は防曇は、遠隔で監視されるか、又は透明窓温度が0℃未満のとき自動的に起動される、請求項7~9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車技術の分野にあり、電熱装置で透明窓を除氷及び/又は防曇するための方法及び構成に関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、加熱可能な透明窓によって、車両に搭載された加熱可能でない透明窓を改造する方法に関係する。加熱可能な透明窓を使って、除氷及び/又は防曇機能は、このように、新しい透明窓に設けられた電熱装置で利用可能である。
【背景技術】
【0003】
電熱層を備えた透明窓は、それ自体周知であり、すでに特許文献で何度も説明されてきた。自動車では、法律により、中心視野に実質的な視覚制限があってはならないので、それらはフロントガラスとして使用されることが多い。加熱層によって生成された熱を用いて、凝縮水分、氷及び雪を短時間の内に除去することができる。
【0004】
加熱電流は、通常、集電導体として広い前面にわたって加熱電流を分散させる、少なくとも1対のストリップ状電極(「バスバー」)を介して加熱層に導入される。一般に、それにもかかわらず、実用化のために適正な加熱電力を得るために、加熱電圧は非常に高くなければならないのに対して、内燃機関駆動の自動車では、現在標準的な利用可能な車載電圧は12~48ボルトである。
【0005】
欧州特許出願公開第0256 690号明細書は、除氷のためにより高い給電電圧を使用し防曇のためにより低い給電電圧を使用する、異なる給電電圧を使った窓の電気加熱のための方法を提示する。窓ヒーターは、臨界の窓温度で遮断される。
【0006】
独国特許出願公開第10313464 A1号明細書は、窓加熱のための方法を教示し、そこでは、後部窓ヒーターに供給される電気エネルギーは、窓温度の関数として調節される。後部窓温度に対する閾値に到達すると、窓ヒーターは遮断される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
対照的に、本発明の目的は、新しい加熱可能な透明窓によって、車両に当初設置された既存の加熱可能でない透明窓を改造する簡単な方法にある。同様に、本発明は、電熱装置を使用して透明窓を除氷及び/又は防曇するための方法を提案する。この目的及び他の目的は、独立請求項の特徴を備えた方法及び構成を用いて本発明の提案に従って完遂される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の特徴によって示される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、透明窓を除氷及び/又は防曇するための構成、及び電熱装置を備えていない透明窓、特に車両フロントガラスを、電熱装置を有する透明窓で改造する方法が提示される。
【0009】
本発明によれば、電熱装置を備えていない透明窓、特に車両フロントガラスを、電熱装置、特に加熱層を有する透明窓で改造する方法は、以下のステップ、すなわち、
a.車両から電熱装置を備えていない透明窓、特に車両フロントガラスを除去するステップと、
b. 電熱装置、特に加熱層、及び少なくとも1つの温度センサが設けられた透明窓を設置して、改造加熱透明窓を得るステップと、
c. 透明窓に加熱電圧を印加するように、電熱装置を電圧供給装置に接続するステップと、
d. 遠隔制御装置を少なくとも1つの温度センサ及び電圧供給装置と接続するステップとを含む。
【0010】
本発明による窓構成は、電熱装置を備えた透明窓を含み、この電熱装置は、例えば、線状加熱素子として機能する細い電熱線の形で、さまざまな方法で設計され得る。好ましくは、しかし強制的にではなく、電熱装置は透明な電熱層又はフォイルであり、これは窓エリアの実質的な部分にわたって、特にその中心視野にわたって延在する。加熱装置は、電気的接続手段を介して、給電電圧又は加熱電圧を提供するための電圧供給装置に電気的に接続され得る、又は接続される。電熱層の場合、接続手段は少なくとも2つの接続電極を含み、これらは、加熱電流を加熱層に導入するのに役立ち、給電電圧の印加後に、加熱層によって形成される加熱フィールドにわたって加熱電流が流れるように、加熱層に電気的に接続される。接続電極は、例えば、ストリップ状又は帯状電極の形で実装されて、バスバーとして加熱電流を加熱層中に広範囲に分散させて導入することができる。高インピーダンスの加熱層と比較して、接続電極は、比較的低い又は低インピーダンスの電気抵抗を有する。
【0011】
構成は、透明窓の温度を測定できるように配設され実装された、少なくとも1つの温度センサ、並びに少なくとも1つの温度センサ及び電圧供給装置に結合された電子制御装置を同様に含み、電子制御装置は、本発明による方法を実行するように適切に構成される。窓の加熱のための制御又は調整ループが、制御装置、電圧供給装置及び少なくとも1つの温度センサによって形成される。
【0012】
温度センサは、窓の縁領域に有利に配設され、特に窓の縁領域にわたって、又はバスバー領域にわたって分散されるが、その理由は、通常、より大きな温度誘導応力がそこで発生し、それにより窓破損リスクが増加するからである。センサは、窓の内側の面に実装され得る、又は厚さが適当であれば、フロントガラスの場合には積層窓の中に実装され得る、電子センサの形で実装されてもよい。しかしながら、少なくとも1つの温度センサは、例えばバスバーと同じ材料から、特に印刷技術を使用して生産される、印刷導体又は測定ループの形で実装されてもよい。
【0013】
本発明による方法は、手動的に又は自動的に起動される除氷プロセスに基づいて実行され、除氷プロセスは、例えば開始信号によって起動される。開始信号は、例えば、例えば改造窓の内側の面若しくは(積層窓の場合には)窓の内部に実装されたスイッチ素子を押下することによって、オペレータによって手動的に、又は、例えば、0℃未満の低い外部温度などのある一定の条件が存在しているとき改造窓専用の独立した電圧供給装置を始動させた後、自動的に、又は、例えば(Bluetooth、WiFi又はLTE接続を介して)運転者が窓を加熱したいときスマートフォン又は任意の適当な手段からアプリケーションを使用することによって、生成され得る。本発明による方法が、特に開始信号を生成することによって、除氷プロセスを開始するためのステップを含み得ることは、理解される。以下に、すでに開始されている除氷プロセスを使って窓を除氷及び/又は防曇するために実行されるプロセスステップについて説明する。
【0014】
本発明による方法は、プロセスステップを含み、その中で、加熱装置に加熱電圧を最初に印加する前に、窓温度が測定される。ここで、測定された窓温度が、選択可能な下側温度閾値を上まわる場合、除氷又は防曇プロセスは、加熱電圧を印加する前に終了される。構成は、それから、待機又はオフ状態に自動的に移行する。代わりに、測定された窓温度が下側温度閾値以下である場合については、選択可能な大きさの加熱電圧が、選択可能な継続時間の加熱期間にわたって、又は温度閾値に到達する/回復するために必要な期間にわたって、窓を加熱又は除氷するために加熱装置に印加される。
【0015】
窓温度は、窓の加熱を開始する前に測定される。窓温度が選択可能な上側温度閾値に到達する場合、除氷プロセスは終了される。構成は、それから、待機又はオフ状態に自動的に移行する。窓温度が上側温度閾値よりも低い場合については、除氷プロセスは継続される。
【0016】
本発明による方法で、窓面積1平方メートル(m2)当たり10オーム(Ω)未満の抵抗に対応する加熱電力が生成されることを適用するために、加熱装置への加熱電圧は、30~60ボルトである。例えば、自動車のフロントガラスにおいて、窓を損傷するリスクなく窓を加熱するために印加される特に低い電圧で、除氷及び/又は防曇が確実且つ安全に達成され得る。窓の損傷を低減させる目的で、加熱電圧及び加熱期間は、窓面積1平方メートル(m2)当たり10オーム(Ω)未満の抵抗に対応する加熱電力が生成されるように選択される。
【0017】
特定の実施形態で、30~60ボルトの加熱電圧は、漸進的に達成される。例えば、15Vの第1のパルスがなされ、(例えば数分ごとに)漸進的に増加されて、30~60ボルトの最終的な電圧が達成される。したがって、ホットスポット又は攻撃的な加熱は限定され、実際のところ回避される。
【0018】
本発明による方法を用いて、選択可能な上側温度閾値を上まわる窓の加熱を同時に確実且つ安全に回避しながら、透明窓の効率的な除氷及び/又は防曇を得ることができる。上側温度閾値の選択に応じて、これにより、大きな温度変化に起因する、窓の破損、又ははんだ及び接着剤接続などの接続要素の破損を防止することが有利に可能になる。除氷及び/又は防曇プロセスを通した熱的に誘導される窓の損傷は、このように防止され得る。他方、相応に低い上側温度閾値を使って、人が加熱された窓に故意に又は不注意で触れた場合に火傷することを回避することが可能である。
【0019】
本発明による方法で、2つ以上の加熱期間が適用される場合、加熱期間は、同じ長さであってもよく、又は互いに異なる継続時間を有してもよい。
【0020】
本発明による方法の別の有利な実施形態で、加熱電圧の大きさは、温度センサによって測定された窓温度の関数として選択され、より高い窓温度の場合には、より低い加熱電圧が選択され、より低い窓温度の場合には、より高い加熱電圧が選択される。この措置によって、有利には、加熱電圧を外部の周囲温度に適合させることが可能になり、それにより、加熱電力を選択的に調節することができ、除氷及び/又は防曇のために消費される電気エネルギーを低減させることができる。
【0021】
本発明による方法で、外部の周囲温度が露点未満であるときのみ除氷プロセス及び/又は防曇が実行されるように、4℃以下の温度、及びより具体的には0℃未満の温度が下側温度閾値として選択されることは、実用化において有利である。加えて、上側温度閾値が20℃~90℃の範囲に、好ましくは50℃~70℃の範囲にあり、例えば70℃である場合、それは有利である。この結果として、一方では、低い電力損失で、急速な除氷及び/又は防曇を得ることができる。他方では、除氷中の窓の破損、及び窓に触れた際の身体部分の火傷が、確実且つ安全に回避される。
【0022】
本発明はさらに、電熱装置、特に加熱層を備えた透明窓、特に自動車フロントガラスを備えた窓構成に及び、電熱装置は、電圧供給装置に接続するための少なくとも2つの電極に接続され、それにより、加熱電圧を印加することによって加熱電流が加熱装置を通って流れる。窓構成は、窓温度を測定するための少なくとも1つの温度センサ、並びに少なくとも1つの温度センサ及び電圧供給装置と結合された遠隔制御装置をさらに含み、遠隔制御装置は、上述のように方法を実行するように適切に構成される。
【0023】
窓構成の有利な実施形態で、電極及び、例えば、電極と同じ材料から作ることができる、少なくとも1つの温度センサは、加熱層の形で実装される加熱装置上に、印刷技術を使用して印刷され得る。この措置を用いて、少なくとも1つの温度センサは、連続生産で、特に簡単且つ経済的な方式で生産され得る。少なくとも1つの温度センサは、例えば、導体ループ又は測定ループの形で実装される。
【0024】
窓構成の別の有利な実施形態で、複数の温度センサが設けられ、それらは、好ましくは均等に分散されて、周辺窓縁又は窓の縁領域にわたって分散配設され、それにより、窓の特に破損しやすい縁領域での温度変化が検出され得る。
【0025】
別の実施形態で、少なくとも温度センサが、温度をよりよく測定するためにガラス窓のオブスキュレーション帯のエリアに設けられる。したがって、ガラス窓全体の加熱の実際の性能が最適に測定され得る。
【0026】
本発明はさらに、機能的な個別部品としての、並びに家具、装置及び建物における、並びに陸路、空路又は水路による旅行のための輸送手段における組み込み部品としての、上述のような本発明による構成の窓の使用に及び、特に自動車における、好ましくは電気自動車における、特にフロントガラス、後部窓、側窓、及び/又はガラス屋根としての使用に及ぶ。
【0027】
異なる実施形態は、個別に、又は任意の組み合わせで実現され得ると理解される。特に、前述の特徴及び以下で解説する特徴は、本発明の範囲から逸脱することなく、示された組み合わせだけでなく、他の組み合わせで、又は単独でも使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0028】
これから、例示的な実施形態を使用して本発明を詳細に解説する。
【0029】
本発明の1つの実施形態によれば、窓構成は、自動車の透明フロントガラス、好ましくは電気自動車の透明フロントガラスを含み、それは、例えば、複合窓として実装される。
【0030】
本発明の1つの実施形態によれば、フロントガラスは、剛性の外側窓ガラス及び剛性の内側窓ガラスを有し、それらは、ともに個別の窓ガラスとして実装され、熱可塑性接着層を介して互いにしっかりと接合される。2つの個別の窓ガラスは、ほぼ同じ大きさであり、略台形の曲線輪郭を有するが、本発明はこれに制限されず、むしろフロントガラスは、実用化に適した任意の他の形状を有し得ると理解される。2つの個別の窓ガラスは、フロートガラス、鋳造ガラス、若しくはセラミックガラスなどのガラス材料、又は非ガラス材料、例えばプラスチック、特にポリスチレン(PS)、ポリアミド(PA)、ポリエステル(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMA)、若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)で作られる。一般に、十分な耐薬品性、適当な形状及び大きさの安定性、並びに適正な光透過性を備えた任意の材料が使用され得る。特にポリビニルブチラ―ル(PVB)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、及びポリウレタン(PU)に基づくプラスチックは、例えば、2つの個別の窓ガラスを接合するための接着層として使用され得る。フロントガラスとして以外の用途のために、可撓性材料から2つの個別の窓ガラスを生産することが同様に可能なはずである。この種のフロントガラスは、今日周知であり一般的に使用される。
【0031】
フロントガラスの輪郭は、2つの長い窓縁(設置位置の上下)及び2つの短い窓縁(設置位置の左右)の台形形状に対応して構成される、周辺窓縁によって画定される。
【0032】
1つの実施形態によれば、フロントガラスの電気加熱に役立つ透明加熱層が、接着層に接合された内側窓ガラス4の側に堆積される(「側3」)。加熱層は、内側窓ガラスの実質的に表面全体に塗布されるが、すべての側で周辺の内側窓ガラスの縁ストリップは覆われず、それにより、加熱層縁が窓縁に対して内方に後退している。
【0033】
1つの好ましい実施形態によれば、加熱層は、内側窓ガラス4に塗布されず、その代わりに加熱層を広面積のキャリア上に塗布し、キャリアはその後個別の窓ガラスに接着され、2枚のガラスの間に積層される。そのようなキャリアは、特に、例えばポリアミド(PA)、ポリウレタン(PU)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート(PC)、ポリエステル(PE)、又はポリビニルブチラール(PVB)で作られたプラスチックフィルムとすることができる。
【0034】
加熱層は、導電性材料を含む。この実施例は、銀、銅、金、アルミニウム又はモリブデンなどの高い電気伝導度を備えた金属、パラジウムと合金化された銀などの金属合金、及び透明導電性酸化物(TCO)である。TCOは、好ましくは、インジウムスズ酸化物、フッ化物がドープされた二酸化スズ、アルミニウムがドープされた二酸化スズ、ガリウムがドープされた二酸化スズ、ホウ素がドープされた二酸化スズ、スズ亜鉛酸化物、又はアンチモンがドープされた酸化スズである。加熱層7は、1つの導電性個別層、又は少なくとも1つの導電性副層を含む層構造からなることができる。例えば、そのような層構造は、好ましくは銀(Ag)である、少なくとも1つの導電性副層、並びに反射防止層及び遮断層などの他の副層を含む。
【0035】
加熱層の厚さは、広範囲に変化することができ、すべての箇所での厚さは、例えば、30nm~100μmの範囲にある。TCOの場合、厚さは、例えば100nm~1.5μmの範囲に、好ましくは150nm~1μmの範囲に、及びよりいっそう好ましくは200nm~500nmの範囲にある。有利には、加熱層は、ガラスの曲げ加工に必要な通常600℃より高い温度に機能的劣化なしで耐えるような、高い熱的安定性を有する。しかしながら、低い熱的安定性を備えた加熱層でさえも、それをガラス板の曲げ加工の後に塗布して、設けることができる。加熱層のシート抵抗は、好ましくは20オーム未満であり、例えば、0.1~20オームの範囲にある。描写された例示的な実施形態で、加熱層のシート抵抗は、例えば、1~5オームの範囲にある。
【0036】
加熱層は、例えば、気相から堆積され、この目的のために、化学蒸着(CVD)又は物理蒸着(PVD)などの、それ自体知られた方法が使用され得る。好ましくは、加熱層は、スパッタリング(マグネトロン・カソード・スパッタリング)によって堆積される。
【0037】
1つの特定の実施形態で、加熱層は、加熱型有線フロントガラスを形成するために2つの窓ガラスを接合する接着層に埋め込まれた導電性ワイヤとすることができる。
【0038】
フロントガラスは、350nm~800nmの波長範囲における可視光に対して十分に透明でなければならず、「透明」という用語は、80%より多くの光透過率を意味するものと理解される。これは特に、ガラスで作られる個別の窓ガラスと銀(Ag)で作られる透明加熱層7とを用いて得ることができる。
【0039】
加熱層7は、周知の技術によるバスバーに電気的に接続される。バスバーは、同じ材料から作られ、例えば、スクリーン印刷法を使用して、例えば、銀の印刷ペーストを加熱層上に印刷することによって、生産され得る。代わりに、例えば、銅又はアルミニウムで作られる、細い金属フォイルストリップからバスバーを生産することが同様に可能なはずである。これらは、例えば、接着層上に固定され、外側窓ガラスと内側窓ガラスの接合時に加熱層上に配設され得る。このプロセスで、電気的接触は、フロントガラスを形成する個別の窓ガラスの接合時に、熱及び圧力の作用を通して保証され得る。
【0040】
バスバーは、例えば、平らな帯状導体(例えば、細い金属フォイル)として実装される接続線、及び電力線を介して、給電電圧を供給するために電圧供給装置の一方の端子(例えば、負端子)に接続される。バスバーを用いて、加熱フィールドは取り囲まれ、その中で給電電圧を印加すると、加熱電流が流れる。電圧供給装置は、例えば、バッテリ又は蓄電池とすることができる。好ましくは、電圧供給装置は、自動車バッテリ、又はバッテリに結合された変圧器とは異なる。
【0041】
好ましくは、電圧供給装置は、アクセスが容易な車両の内部に設けられる。したがって、車両に当初設置された非加熱型フロントガラスを交換しなければならないとき、それを加熱型フロントガラスに容易に交換することができ、それから加熱型(被覆又は有線)フロントガラスを装備した車両を提供することができる。改造フロントガラスのバスバーは、それから、車両バッテリを修正することなく、独立した電圧供給装置に容易且つ迅速に接続することができる。したがって、フロントガラスが良好に電力供給されない場合、フロントガラス専用の電圧供給装置のみを交換することができ、したがって費用及び車両に設けられた他の機能への影響を低減させることができる。
【0042】
バッテリは、車両バッテリと異なってもよく、例えば車両の内部、例えば助手席の下に設置されてもよい。
【0043】
代わりに、新しい改造フロントガラスは、車両バッテリに直接接続されてもよい。
【0044】
好ましくは、電圧供給装置は、30~60ボルトの間の給電電圧が利用可能となるように実装され、それは、特に小さいバッテリ又は電気自動車のバッテリに当てはまり得る。
【0045】
本発明によれば、構成は、温度センサを同様に有する。少なくとも1つの温度センサは、外側窓ガラスの外方側(側1)に、又は好ましくは内側窓ガラスの内方側(側3)に配設され得るが、しかしながら、少なくとも1つの温度センサは、2つの個別の窓ガラスの間に積層されることを意味して、2つの個別の窓ガラスの間に配設されることが同様に考えられる。少なくとも1つの温度センサを用いて、フロントガラスの温度を検出することができる。
【0046】
別の実施形態で、少なくとも1つの温度センサは、加熱層縁又は窓縁の上に配設することができる。そのうえ、少なくとも1つの温度センサが、局部過熱(「ホットスポット」)が起こり得る窓領域に配設されることは有利である。これらは、特に、加熱層がないゾーン、例えば通信窓又は加熱層の構造化のための分離線の端部分である。
【0047】
少なくとも1つの温度センサは、例えば熱電対/サーミスタとして、多くの方法で実装され得る。
【0048】
少なくとも1つの温度センサは、データ線を介したデータ転送のために、マイクロプロセッサを用いた制御装置に接続され得る。制御装置は、1つの実施形態で、データ線を介して、電圧供給装置と関連付けられたスイッチング装置にさらに接続され、このスイッチング装置は、電力線に接続され、電圧供給装置を加熱層に電気的に接続するのに役立つ。同じく、スイッチング装置を電圧供給装置に組み込むことが可能である。
【0049】
データ線は、有線接続又はワイヤレス接続で実装され得る。したがって、窓2を除氷するための除氷及び/又は防曇プロセスは、この場合、自動車の制御盤内のスイッチング素子を操作することによって、手動的に起動又は開始される。例えば、エンジンを始動し、少なくとも1つの温度センサを用いて、指定された閾値未満、例えば0℃以下の低い外部温度を検出したらすぐに、自動的に除氷プロセスを開始することが同様に考えられるはずである。開始信号は、除氷及び/又は防曇プロセスを起動するために、例えば、手動的に又は自動的に生成され得る。
【0050】
本発明によれば、開始信号は、好ましくは、電話、外部の遠隔制御装置などのスマートデバイスからアプリケーションを通して生成され得る。
【0051】
別の実施形態によれば、開始信号は、透明窓及び特にフロントガラス上に設けられる静電容量式タッチを通して起動することができる。これは、フロントガラスが、静電容量式タッチ機能を設けることができる加熱型被覆フロントガラスであるとき、特に興味深い。静電容量式タッチなどは、以下の特許参考文献、すなわち、国際公開第2013189794号パンフレット、国際公開第2013189796号パンフレットに説明されている。
【0052】
除氷プロセスが起動されている場合、加熱層に加熱電圧を最初に印加する前に、フロントガラスの温度は、依然として測定される。ただ1つの温度センサ上のフロントガラスの温度が、選択可能な下側温度閾値、ここでは例えば0℃以下、を超える場合、加熱電圧は加熱層に印加されず、本方法又は除氷/防曇プロセスは終了される。この目的のために、例えば、停止信号が生成され得る。窓構成は、それから、待機又はオフ状態に移行する。代わりに、フロントガラスの温度が、下側温度閾値以下、ここでは例えば0℃以下である場合、電圧供給装置によって供給される30~60ボルトの給電電圧が、除氷及び/又は防曇速度によって定められる期間にわたって、加熱層に印加される。
【0053】
それから、少なくとも1つの温度センサによって測定されるフロントガラスの温度が、選択可能な上側温度閾値、ここでは、例えば20℃~90℃の範囲内又は例えば70℃に対応する場合、除氷及び/又は防曇プロセスは終了される。この目的のために、停止信号が、例えば生成され得る。窓構成は、それから、待機又はオフ状態に移行する。すでに述べたように、好ましくは、少なくとも1つの温度センサによって測定されたフロントガラスの温度が、選択可能な上側温度閾値、ここでは、例えば20℃~90℃の範囲内又は例えば70℃に対応するまで、30~60ボルトの間の加熱電圧が加熱層に印加され、その結果としてフロントガラスの除氷及び/又は防曇を低い電力損失で得ることができる。好ましくは、加熱電圧及び加熱期間は、窓面積1平方メートル(m2)当たり10オーム(Ω)未満の抵抗に対応する加熱電力が生成されるように選択される。