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特許7402809手首関節固定プレートおよび手首関節固定プレートを用いた方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】手首関節固定プレートおよび手首関節固定プレートを用いた方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A61B17/80
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020544455
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2019052899
(87)【国際公開番号】W WO2019162091
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】18158329.5
(32)【優先日】2018-02-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517037630
【氏名又は名称】メダルティス・ホールディング・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】MEDARTIS HOLDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エビ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ケブル,ラデック
(72)【発明者】
【氏名】アマン,マルク
(72)【発明者】
【氏名】カインツ,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シェツレ,ジモン-マルティン
(72)【発明者】
【氏名】トリベルホーン,トーマス
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06221073(US,B1)
【文献】欧州特許出願公開第02158864(EP,A2)
【文献】特開2017-153816(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56 - 17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠位領域(21)と、近位領域(22)とからなる手首関節固定プレート(20)であって、前記遠位領域(21)および前記近位領域(22)は、長手方向軸(A)の方向に互いに直接に軸方向に隣接し、前記手首関節固定プレート(20)は、固定手段を用いて、前記遠位領域(21)を手根骨(1)に固定できるとともに、前記近位領域(22)を橈骨(3)に固定できるような形状およびサイズを有し、前記遠位領域(21)は前記手首関節固定プレート(20)の最遠位位置(23)を含む遠位端領域(29)を有し、前記遠位端領域(29)が、横方向に隣り合う骨の一部を覆うことなく、大菱形骨(11)、小菱形骨(10)、有頭骨(9)、および有鉤骨(8)からなる群から選択されたたった1つの手根骨上に正確に配置され得るような形状およびサイズを有し、
前記遠位領域(21)は、舟状骨(7)、月状骨(6)または三角骨(5)からなる手根骨の近位列のうちのたった1つの近位手根骨の上方または上に配置され得、前記遠位領域(21)は最大で前記たった1つの近位手根骨に固定可能であり、前記遠位領域(21)は一定の幅を有し、前記手首関節固定プレート(20)は、長手方向に位置し、中手骨ではない、最大で2つの手根骨に固定可能である、手首関節固定プレート(20)。
【請求項2】
前記最遠位位置(23)は、人の有頭骨の最大幅に対応する最大幅(b1)を有する、請求項1に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項3】
前記遠位領域(21)は、10mm~15mmの幅(b1)を有する、請求項1または2に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項4】
前記遠位領域(21)は、15mm~30mmの長さ(l2)を有する、請求項1から3のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項5】
前記近位領域(22)の最遠位側プレート穴(25′)は、前記手首関節固定プレートの前記最遠位位置(23)から最大で20mm~35mmの距離(l1)にある、請求項1から4のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項6】
前記手首関節固定プレートは、前記長手方向軸(A)に沿って、55mm~85mmの範囲の長さ(L)を有する、請求項1から5のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項7】
前記近位領域(22)は、35mm~60mmの長さ(l3)を有する、請求項1から6のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項8】
前記手首関節固定プレート(20)は、前記長手方向軸(A)に沿って少なくとも第1の表面(30)において長手方向に延在するとともに、前記長手方向軸(A)に沿って前記第1の表面(30)に対して角度(α)をなして、第2の表面(31)において延在する、請求項1から7のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項9】
前記手首関節固定プレート(20)は、前記第1の表面(30)から距離を隔てて、前記第1の表面(30)に対して平行に、第3の表面(32)において前記長手方向に延在する、請求項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項10】
前記第2の表面(31)と前記第1の表面(30)との間の前記角度(α)は45°であり、および/または、前記第2の表面(31)が延在する長さは7.5mm~8.5mmである、請求項8または9に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項11】
前記手首関節固定プレート(20)は、近位方向(P)における前記第2の表面(31)の後に、前記長手方向軸(A)に沿って第3の表面(32)において近位方向(P)に延在する、請求項10に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項12】
前記手首関節固定プレート(20)は、近位方向(P)における前記第2の表面(31)の後、または第3の表面(32)の後、第4の表面(33)において前記第1の表面(30)内へと前記近位方向(P)に遷移し、
前記第4の表面(33)は、前記第1の表面に対して35°の角度(γ)を有し、および/または、8.5mm~9.5mmの長さだけ延在する、請求項10または11に記載の手首関節固定プレート。
【請求項13】
前記手首関節固定プレート(20)の前記近位領域(22)の最大幅(b2)は、8mm~20mmである、請求項1から12のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項14】
前記遠位領域(21)は、前記長手方向軸(A)に垂直な軸に対して+/-45°の角度範囲で、最大4個のプレート穴(24)を有し、前記プレート穴(24)は、前記手首関節固定プレート(20)を厳密に1つの手根骨(8,9,10,11)に固定するためのものである、請求項1から13のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項15】
前記遠位端領域(29)は、前記手首関節固定プレート(20)を厳密に1つの手根骨(8,9,10,11)に固定するための骨ねじを収容するための、最大で6個のプレート穴(24)を有する、請求項1から14のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【請求項16】
前記手首関節固定プレート(20)はチタンを含むか、またはチタンからなる、請求項1から15のいずれか1項に記載の手首関節固定プレート(20)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項の特徴部分に従った手首関節固定プレートおよび手首関節固定プレートを用いた方法に関する。
【背景技術】
【0002】
手首関節固定術(手首固定術)は、一般に、痛みのある手首の末期的状態を治療するために採用される。このような末期的状態を引起す可能性のある例として、たとえば、かなり古い舟状骨骨折(舟状骨偽関節)、月状骨の末期段階の壊死(月状骨軟化症)、または中手骨靭帯の初期裂傷に起因する手根骨の挫滅が挙げられる。特に、放射状骨折が不良位置で治癒した後に生じる疼痛性関節症の場合、または、内部起源の進行した疼痛性関節症の場合にも、癒合が実施される可能性がある。手首関節固定術の実施後、手首の痛みはなくなるが、手首が固くこわばってしまう。
【0003】
手首関節固定術のために、US5,853,413は、橈骨、いくつかの手根骨および中手骨を癒合させるために用いるプレートを提案している。橈骨、手根骨および中手骨は時間が経つにつれて互いにくっつくので、手首が癒合されることとなる。
【0004】
US5,853,413に開示されるプレートでは、手首が比較的広い領域にわたって癒合され、その結果、癒合後の患者の手首の動きの自由度が非常に制限されてしまう。
【0005】
部品製造業者であるMedartisは、カタログ「Arthrodesen-System 2.0/2.3, 2.5」において、いくつかの手根骨を橈骨と癒合させるプレートを提案している。しかしながら、US5,853,413とは対照的に、このプレートは中手骨にまでは延在していない。
【0006】
提案されたプレートでは、手首が全体的に癒合される範囲が、US5,853,413に開示されるプレートと比べるとはるかに小さい。しかしながら、癒合後の手首の動きの自由度は依然として著しく制限されてしまっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、公知のプレートの欠点を最小限にすること、特に、手首の痛みをなくすとともに手首の動きの自由度を可能な限り高くすることを可能にするプレートを利用可能にすることである。この目的は独立請求項に記載の特徴によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
遠位領域と近位領域とからなる手首関節固定プレートが提案されている。近位領域は、長手方向軸の方向に当該遠位領域と隣接している。当該プレートは、固定手段(特に、プレート穴の内部に挿入できるねじ)を用いてプレートの遠位領域を手根骨に固定できるとともに、プレートの近位領域を橈骨に固定できるような形状およびサイズを有する。プレートの最遠位位置を含む遠位端領域は、当該遠位端領域が、横方向に隣り合う骨の一部を覆うことなく、手根骨の遠位列(すなわち、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、および有鉤骨を含む群からなる手根骨)のうち1つの骨上にのみ正確に配置され得るような形状およびサイズを有する。
【0009】
したがって、本発明に従ったプレートは、中手骨にまでは延在しない。遠位端領域が、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、および有鉤骨を含む群のうち厳密に1つの手根骨上に配置され得るという事実は、ここでは、遠位領域が全体として、さらに別の手根骨のうち1つ以上の手根骨上にわたって位置しないことを意味するものとして理解されるべきではない。特に、遠位領域はさらに、舟状骨、月状骨または三角骨(すなわち、手根骨の近位列)のうち1つの骨上に位置させることもでき、これらの骨のうち1つの骨にねじ止めすることもできる。しかしながら、遠位端領域は、上述のこれら骨のうち1つの骨上には位置せず、当該1つの骨に固定されることもない。
【0010】
本発明に従ったプレートは、典型的には、手根骨の近位列の除去(近位列の手根骨切除術)後に使用することができる。このような場合、手根骨の第1の近位列(舟状骨、月状骨および三角骨)が除去される。この場合、本発明に従ったプレートは、遠位側の手根骨のうち厳密に1つの骨(特に有頭骨)上に配置されてこれに固定される。
【0011】
本発明に従ったプレートでは、正確には、橈骨に癒合されるのは、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、および有鉤骨を含む群からなる手根骨のうち厳密に1つだけである。したがって、癒合しているにもかかわらず、患者にとって比較的大きな動きの自由度が可能になり得る。近位列の手根骨切除術が行われていない場合、近位列の橈骨および/または手根骨との癒合が起こる可能性がある。
【0012】
本発明に従って遠位領域の形状およびサイズを選択することにより、隣り合う骨の上にプレートを配置しなくても、上述の骨のうちの1つ(特に、有頭骨)のみに当該プレートを配置して固定することが可能となる。好ましくは、最遠位位置は、人の有頭骨の最大幅にほぼ対応する最大幅を有する。
【0013】
遠位列のうち隣り合う手根骨、典型的には、有鉤骨および小菱形骨は、プレートによって覆われない。
【0014】
遠位領域、特に最遠位端は、好ましくは10mm~15mm、好ましくは12mm~14mm、特に好ましくは約13.5mmの幅を有する。遠位領域の幅は、遠位領域のうち最も外側にある2個の位置(または長手方向軸に対して平行な突起)の間で、長手方向軸に対して垂直に測定される。これらの幅は、制限されない程度に十分な癒合を得るのに有利であることが判明している。この幅は、好ましくはプレート全体の最大幅でもある。
【0015】
遠位領域は、好ましくは15mm~30mm、好ましくは15mm~20mmまたは20mm~27mm、特に好ましくは16mm~18mmまたは21mm~24mmの長さを有する。これらの長さであれば、プレートを中手骨内にまで延在させることなく、または、プレートを患者の橈骨上に過不足なく延在させて、手首を癒合させることが可能となる。上記長さが短すぎると癒合が不十分になる可能性があり、長すぎるとプレートの装着快適性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0016】
症状に応じて、さまざまな長さのプレートが考えられ得る。より短いプレートは、近位列の手根骨切除術後の治療のために、または近位列の手根骨切除術を行なわない小児患者の治療のために使用することができる。より長いプレートは、手根骨の近位列を保持しながら治療を行うために使用することができるか、または近位列の手根骨切除術を受けた後の大人の患者に使用することができる。典型的には、上述のより短いプレートの遠位領域の長さの好ましい範囲は、近位列の手根骨切除術または小児患者の場合、15mm~20mmである。より長いプレートの遠位領域の長さは、骨の近位列を保持する治療の場合、または近位列の手根骨切除術後の大人の患者を治療する場合、20mm~27mmである。
【0017】
近位領域の最遠位側プレート穴は、プレートの最遠位位置から最大で20mm~35mm、好ましくは22mm~26mm、または30mm~32mmの距離にあり得る。この場合、近位領域の最遠位側プレート穴からプレートの最遠位位置までの距離は、プレート穴の中心からプレートの最遠位位置までの直線経路の長さとして理解される。
【0018】
この場合も、上述のより短い距離およびより長い距離は、それぞれ、小児患者または大人患者に対する骨の近位列の除去または保持を伴う治療に関連している。
【0019】
プレートが好ましくは長手方向軸に沿って有する全長は、55mm~85mmの範囲であり、好ましくは、治療の種類に応じて、59mm~62mmまたは65mm~68mmの範囲である。
【0020】
この長さ範囲は、動きの自由度を過度に制限することなく、手根骨と橈骨との間の十分な癒合を実現するのに有利であることが判明している。
【0021】
近位領域は、好ましくは35mm~60mm、好ましくは40mm~50mmの長さを有する。しかしながら、近位領域において、プレートはまた、その意図される機能に悪影響を及ぼすことなく、より長くなるように設計することもできる。
【0022】
好ましくは、プレートは、長手方向軸に沿って少なくとも第1の表面において、または第1の接線で長手方向に延在し、付加的には、長手方向軸に沿って第1の表面または第1の接線に対して角度をなして、第2の表面または第2の接線において長手方向に延在する。
【0023】
プレートはさらに、第1の表面から距離を隔てて、第1の表面に対してほぼ平行に、第3の表面において長手方向に延在し得る。
【0024】
この実施形態は、手根骨の近位列を保持しつつ治療を施すための上述のより長いプレートに関連付けると特に好ましい。
【0025】
第2の表面または第2の接線は、好ましくは、第1の表面に対して約45°の角度を有しており、および/または、7.5mm~8.5mm、好ましくは8.0mmの長さだけ延在している。好ましい実施形態では、プレートはさらに、第2の表面の後に、長手方向軸に沿って第3の表面または第3の接線において近位方向に、特に8.0mm~9.0mm、好ましくは8.5mmの長さだけ延在する。
【0026】
プレートは、第2の表面の後、または第3の表面の後、第4の表面において、または第4の接線に沿って第1の表面内へと近位方向に遷移し得る。第4の表面または第4の接線は、好ましくは、第1の表面に対して約35°の角度を有し、および/または、8.5mm~9.5mm、好ましくは9.3mmの長さだけ延在する。ここで、表面を参照しているが、典型的には、各々の表面は実質的に平面に延在している。
【0027】
近位列の手根骨切除術で治療するために用いられるかまたは小児患者に用いられる短いプレートの場合、上記遷移は第2の平面から第4の平面へと直線的に起こる。骨の近位列を保持する治療する場合、または大人の患者を治療する場合、第3の平面は、第2の平面と第4の平面との間に位置する。
【0028】
上述の表面は完全に平面でなくてもよいことが認識されるだろう。1つ以上の曲線が考えられる。このため、上述では表面または接線を参照している。
【0029】
長手方向に沿っていくつかの表面/接線を有するこのような輪郭は、手根骨の解剖学的構造に対するプレートの良好な適合を可能にする。特に、遠位領域がわずかに丸みを帯びたサドル形状を有することで、遠位領域を手根骨上に適切に配置することが可能となる。サドル形状の代わりに、角度をなす少なくとも平面状の複数の部分が長手方向に存在することも考えられる。しかしながら、完全に平坦なプレートも考えられる。
【0030】
好ましくは、プレートの近位領域の最大幅は、8mm~20mm、好ましくは9mm~15mm、特に好ましくは13.5mmである。幅は、ここでも、近位領域の最も外側の2個の位置(または長手方向軸に対して平行な突起)の間における、長手方向軸に対して垂直に測定された距離として理解される。
【0031】
上面図を参照すると、遠位領域は、好ましくは、プレートを厳密に1つの手根骨に固定するために、互いに横並びに位置する(すなわち、長手方向軸Aに対してほぼ垂直な軸に対して+/-45°の角度範囲内で)、いずれの場合も最大2個、好ましくは厳密に2個のプレート穴を有する。
【0032】
2個のプレート穴は、上面図を参照すると、互いに隣り合って位置しており、遠位端領域を1本の手根骨にしっかりと固定することを可能にする。
【0033】
遠位端領域は、好ましくは、プレートを手根骨に固定するための骨ねじを収容するための最大で6個、好ましくは厳密に6個、のプレート穴を有する。当然、プレートは、たとえばK-ワイヤ用のさらなる穴を有することもできる。4個の遠位プレート穴は有頭骨用に意図されたものであり、2個の近位プレート穴は月状骨用に意図されたものである。大きな手の場合、および近位列の手根骨切除術の場合、短いプレートが用いられて、最大6個のねじが有頭骨にねじ込まれる。近位列の手根骨切除術を施さない小さな手の場合、短いプレートが用いられ、有頭骨および月状骨にねじ込まれる。
【0034】
プレート穴には、好ましくは、骨ねじを安定した角度で固定することを可能にする、当業者に公知の種類の遮断用輪郭を設けることができる。このような輪郭は、たとえばWO2004/086990A1から公知である。
【0035】
代替的には、異なる数のプレート穴、たとえば3個、4個または5個のプレート穴を遠位領域に有することも可能である。
【0036】
近位領域は、好ましくは、骨ねじ用の丸穴または長穴の形状をしたプレート穴を少なくとも2個、好ましくは3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個以上、有する。好ましくは、いくつかの丸穴および1つの長穴が設けられる。
【0037】
近位領域においても、骨ねじ用のプレート穴に遮断用輪郭を設けることができ、および/または、K-ワイヤ用の穴を設けることができる。
【0038】
結果として、近位領域を橈骨にしっかりと固定することができる。
近位領域において長穴形状のプレート穴を11個以上、および/または、2個以上もしくは1個未満、有することも考えられる。
【0039】
好ましくは、プレートはチタンを含むか、またはチタンからなる。チタン(合金)は、生体適合性および耐性があり、骨プレートに最適であることが判明している。
【0040】
他の金属/金属合金またはプラスチックなどの他の生体適合性材料も考えられる。
本発明は、さらに、手首関節固定プレート、好ましくは上述のプレートを用いる手首固定のための方法に関する。プレートの近位領域が、近位列の橈骨および/または手根骨に固定されるとともに、遠位領域が、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨および有鉤骨という手根骨のうち厳密に1つに固定される。
【0041】
1列当たり厳密に1つの手根骨に固定することで十分な癒合が達成されるが、覆われる面積はそれほど広くない。
【0042】
特に、プレートは中手骨には固定されない。さらに、プレートは、横方向に隣り合う2個の手根骨には固定されず、長手方向に位置する最大で2個の手根骨のみに固定される。遠位領域は、好ましくは、最大6個のねじで、1個の手根骨または複数の手根骨に固定される。近位領域は、好ましくは、2個~6個のねじで固定される。
【0043】
本発明のさらなる局面が概略的に示される添付の図から集約され得る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】手首周囲の解剖学的構造を示す図である。
図2】本発明に従った手首関節固定プレートを示す図である。
図3a】本発明に従った第1の手首関節固定プレートを示す側面図である。
図3b図3aに記載のプレートの平面図である。
図4a】本発明に従った手首関節固定プレートの代替的な実施形態を示す側面図である。
図4b図4aに記載のプレートの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、手首周囲の解剖学的構造の概略図を示す。手根骨1は、近位方向に橈骨3および尺骨4に隣接している。手根骨1から遠位側Dに中手骨2が位置している。手根骨1は、三角骨5、月状骨6および舟状骨7といった骨を有する。3個の手根骨5、6、7から遠位側Dに、有鉤骨8、有頭骨9、小菱形骨10および大菱形骨11といった手根骨が位置している。本発明に従った手首関節固定プレート20の最遠位位置23にある遠位端領域29(図2参照)が、有鉤骨8、有頭骨9、小菱形骨10および大菱形骨11といった4個の手根骨のうちの1つの骨上に配置され得る。骨プレートは、中手骨2にまでは延在しない。プレートは、近位領域22と遠位位置23との間で、さらに別の骨(すなわち、三角骨5、月状骨6または舟状骨7)のうちの1つの骨にわたって、または当該1つの骨上に位置し得るが、それには固定されない。
【0046】
図2は、意図された使用位置にある本発明に従った骨プレート20を示す。プレート20は純チタンまたはチタン合金から製造されるとともに長手方向軸Aを有する。長手方向軸Aに沿って、プレートは約55mm~約85mmの長さLを有する(図3a/図3b、図4a/図4bを参照)。
【0047】
プレート20は、近位方向Pに隣り合う遠位領域21および近位領域22からなる。遠位領域21は、治療の性質に応じて、長手方向軸Aに沿って16mm~28mmの長さを有する。近位領域22は、長手方向軸Aに沿って約40mm~約50mmの長さを有する。
【0048】
プレート20の近位領域22は橈骨3上に位置するとともに、橈骨3に固定可能である。遠位領域21は手根骨1上に位置するとともに、手根骨1に固定可能である。遠位端領域29は、6個のプレート穴24(明確にするために、1個のプレート穴にのみ符号を付す)を有する。遠位端領域29は、ねじ(図示せず)を用いて、有鉤骨8、有頭骨9、小菱形骨10および大菱形骨11(図1を参照)の群からなる単体の手根骨に、プレート穴24を介して固定することができるが、横方向に隣り合う骨は覆われていない。近位領域22は、近位領域をねじ(図示せず)で橈骨3に固定するための複数のプレート穴(具体的には、5個の丸穴25、25′(明確にするために、1個の丸穴にのみ符号を付す)と長穴26とを有する。
【0049】
したがって、プレートの遠位領域21は手根骨1にわたって延在する。しかしながら、遠位端領域29は、手根骨8、9、10、11のうち1つの骨上にしか位置せず、手根骨8、9、10、11のうち当該1つの骨のみに固定される。プレートのうち、中手骨2に固定されるかまたは中手骨2に接触する領域はない。
【0050】
遠位領域21は、サドル形状の窪み27を有する。窪み27があるために、プレート20は、遠位端領域29のうちより遠位側の端部が、遠位端領域29のうちより近位側の領域に対して約10°の角度で延在している。この窪み27によってプレート20の装着快適性が高められる。
【0051】
近位領域22において、プレート20は、その最も幅広の位置で、約13.5mmの幅b2を有する。遠位領域も約13.5mmの最大幅b1を有する。幅b1、b2は、最も外側の位置の間、または長手方向軸Aに対して平行な軸上の突起の間における、長手方向軸に対して垂直な経路上で測定される。
【0052】
治療の性質に応じて、近位領域22の最遠位側プレート穴25′から最遠位端23までの距離l1は約25mm(図4aおよび図4bにおける短いプレートについての以下の説明を参照)または31mm(図3aおよび図3bの長いプレートについての以下の説明を参照)である。明確にするために、長さl1はプレートの外側に示されている。長さl1は、近位領域22の最遠位側プレート穴25′の中心からプレート20の最遠位位置23までの直線経路上で測定される。
【0053】
図3aは、本発明に従ったプレート20の第1の実施形態を示す側面図である。このプレートは、手根骨の近位列を保持する治療用に意図されたものであるか、または近位列の手根骨切除術後の大人の患者の治療用に意図されたものである。近位部分22において、プレートは、約43mmの長さl3だけ第1の表面30において延在する。
【0054】
最遠位端23から近位方向Pに見ると、プレート20は、遠位領域21において、最初に表面30に対して角度αをなして延在する第2の表面31において延在する。この遠位領域において、次に、プレートは第1の表面30に対してほぼ平行である第3の表面32において延在する。第4の表面33によって、プレートは、第3の表面32から第1の表面30に遷移する。第4の表面33と第1の表面30との間が湾曲していることで、典型的には、橈骨上に配置され得る近位領域22と遠位領域21との間の境界が規定される。図示される実施形態では、遠位部分21の長さl2は18mm~22mmである。
【0055】
図3aにおいて、第2の表面31と第3の表面32との間の角度αは約45°であり、第3の表面32と第4の表面33との間の角度β、および第4の表面33と第1の表面30との間の角度γは、約35°である。
【0056】
具体例では、図3aの第1の表面30および第3の表面32は互いに対してほぼ平行である。しかしながら、第1の表面30と第3の表面32との間に小さな角度、たとえば最大で10°までの角度、を設けることも考えられる。
【0057】
図3bは、図3aのプレートの上面図を示す。同一の参照符号は同一の部分を示している。図3bはさらに、さまざまな穴、特に骨ねじを収容するためのプレート穴24(遠位領域21)および25、25′(近位領域22)、長穴26の形状をしたプレート穴、ならびに、K-ワイヤを収容するための穴28を示す。近位領域では、プレートは、約13.5mmの最大幅b2を有するとともに、近位方向Pに先細になっている。遠位領域21では、プレートは、同様に約13.5mmの実質的に一定の幅b1を有する。
【0058】
図4aおよび図4bは、図3aおよび図3bと同様に、本発明に従ったプレートの代替的な実施形態を示す。当該プレートは、近位列の手根骨切除術を受けた後の通常サイズの手を治療するのに適しているか、または、このような外科的介入なしに小さな手を治療するのにも適している。したがって、図3aに示す第3の表面32は存在しない。代わりに、図4aおよび図4bに示される本発明に従ったプレートは、第2の表面31から第4の表面33へと直接的に遷移する。したがって、図4aに記載の遠位部分21の長さl2は、図3aにおけるよりも短く、典型的には17mmである。対照的に、近位部分22の長さl3は、両方の実施形態でほぼ同じである。図4aに記載の実施形態では、第2の表面31は、なだらかな半径を呈しながら第4の表面33内に遷移する。第2の表面31および第3の表面33の互いに対する角度位置と、第1の表面30に対する角度位置とは、図3aの実施形態に記載の角度位置にほぼ対応している。
【0059】
近位部22の最遠位側プレート穴25′の、最遠位端23からの(図3bおよび図4bにおいてl1と示される)距離は、典型的には25mm(図3a)または17mm(図4a)である。
【0060】
第2の表面、第3の表面および第4の表面の長さは、典型的には7.5mm~10.0mmである。具体的な実施形態では、第2の表面の長さは約8.0mmであり、第3の表面の長さは約8.7mmであり、第4の表面の長さは約9.3mmである。
図1
図2
図3a
図3b
図4a
図4b