(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車両警報装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20231214BHJP
B60R 11/02 20060101ALI20231214BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20231214BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20231214BHJP
G01S 3/82 20060101ALI20231214BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20231214BHJP
H01L 21/8234 20060101ALI20231214BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20231214BHJP
H01L 27/088 20060101ALI20231214BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231214BHJP
H10B 12/00 20230101ALI20231214BHJP
G01S 5/22 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
G08G1/16 C
B60R11/02 M
B60R16/02 650A
H04R3/00 320
G01S3/82
G01S15/931
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L29/78 613B
H01L29/78 618B
H10B12/00 801
G01S5/22
(21)【出願番号】P 2020550954
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 IB2019058362
(87)【国際公開番号】W WO2020075008
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2018192450
(32)【優先日】2018-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆之
(72)【発明者】
【氏名】木村 清貴
(72)【発明者】
【氏名】玉造 祐樹
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-085288(JP,A)
【文献】特開2017-107141(JP,A)
【文献】特開2013-235564(JP,A)
【文献】特開平08-254995(JP,A)
【文献】特開2018-146948(JP,A)
【文献】特開2016-105590(JP,A)
【文献】特開2012-256409(JP,A)
【文献】国際公開第2017/079236(WO,A1)
【文献】米国特許第9733346(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00 ~ 1/16
B60R 11/02
B60R 16/02
H04R 3/00
G01S 3/80 ~ 3/82
G01S 5/22
G01S 15/931
H01L 27/06
H01L 27/088
H01L 29/78
H10B 12/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音源検知装置と、制御装置と、信号出力装置と、を有し、
前記音源検知装置は、外来音を取得する機能と、前記外来音の音源
の位置を特定する機能と、を有し、
前記制御装置は、前記音源
の位置の変化を取得する機能と、
前記音源と車両とが衝突の危険がある場合に前記信号出力装置に信号を供給する機能と、
前記音源の種類を特定する機能と、前記音源の種類と前記車両の相対速度から衝突時の衝撃の大きさを推定する機能と、を有し、
前記信号出力装置は、前記信号を受信して、
前記車両の搭乗者に向けて音響信号を出力する機能を有する
、車両警報装置。
【請求項2】
音源検知装置と、制御装置と、信号出力装置と、を有し、
前記音源検知装置は、外来音を取得する機能と、前記外来音の音源の位置を特定する機能と、を有し、
前記制御装置は、前記音源の位置の変化を取得する機能と、前記音源と車両とが衝突の危険がある場合に前記信号出力装置に信号を供給する機能と、前記音源の種類を特定する機能と、前記音源の種類と前記車両の相対速度から衝突時の衝撃の大きさを推定する機能と、前記音源と前記車両とが衝突確実と判断した場合に、乗員保護装置を起動する機能と、を有し、
前記信号出力装置は、前記信号を受信して、前記車両の搭乗者に向けて音響信号を出力する機能を有する、車両警報装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御装置は、
前記推定した衝撃の大きさに応じて、前記乗員保護装置の到達圧力を決定する機能を有する、車両警報装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項において、
前記制御装置は、記憶装置と、ニューラルネットワーク
とを有
し、
前記記憶装置に事前学習により記憶された重み情報又は音響情報と、前記ニューラルネットワークとを用いて前記音源の種類を特定する、車両警報装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項において、
前記信号出力装置として、前記車両に搭載されたオーディオシステム又はナビゲーションシステムを用いる、車両警報装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、車両警報装置に関する。または、本発明の一態様は、これらの動作方法に関する。
【0002】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0003】
自動車などの車両は、現代社会において必要不可欠な移動手段または物流手段の一つとなっている。近年、多くの機関で、ライダー(LIDAR:Light Detection And Ranging)、ミリ波レーダー、カメラなどのセンサを用いた車両周辺環境の認知技術開発が進められている。特許文献1では、マイクロホンを用いた音源定位技術によって、視覚的に見渡せない範囲にある障害物を検知する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一態様は、新規な車両警報装置などを提供することを課題の一つとする。または、動作速度が向上した車両警報装置などを提供することを課題の一つとする。または、高温環境下においても正確に動作可能な車両警報装置などを提供することを課題の一つとする。
【0006】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の別の一態様は、音源検知装置を有する車両警報装置であって、音源検知装置は複数のマイクロホンと遅延回路を含む。遅延回路を構成するトランジスタに、チャネルが形成される半導体層に金属酸化物の一種である酸化物半導体を含むトランジスタ(「OSトランジスタ」ともいう)を用いる。音源検知装置により外来音を取得し、外来音の音源位置を特定する。位置が特定された音源と車両の相対速度などから、当該音源と車両が衝突する可能性が高い危険が高いと判断した場合は、搭乗者に注意を喚起するための音響信号を出力する。
【0008】
また、本発明の別の一態様は、音源検知装置と、制御装置と、信号出力装置と、を有し、車両に搭載された車両警報装置であって、音源検知装置は、外来音を取得する機能と、外来音の音源位置を特定する機能と、を有し、制御装置は、音源位置の変化を取得する機能と、信号出力装置に信号を供給する機能と、を有し、信号出力装置は、信号を受信して、音響信号を出力する機能を有する車両警報装置である。
【0009】
また、本発明の別の一態様は、音源検知装置と、制御装置と、信号出力装置と、を有し、車両に搭載された車両警報装置であって、音源検知装置は、外来音を取得する機能と、外来音の音源位置を特定する機能と、を有し、制御装置は、音源位置の変化を取得する機能と、信号出力装置に信号を供給する機能と、を有し、信号出力装置は、信号を受信して音響信号を出力する機能を有し、音源検知装置は、第1マイクロホンおよび第2マイクロホンを有するマイクロホンアレイと、第1選択回路と、第1信号保持回路と、第2信号保持回路と、第2選択回路と、信号処理回路と、を有し、第1選択回路は、第1マイクロホンまたは第2マイクロホンを選択する機能を有し、第1信号保持回路は、第1マイクロホンを用いて複数のタイミングで取得した音源信号を、それぞれの音源信号に応じた複数の第1電圧として保持する機能を有し、第2信号保持回路は、第2マイクロホンを用いて複数のタイミングで取得した音源信号を、それぞれの音源信号に応じた複数の第2電圧として保持する機能を有し、第2選択回路は、複数の第1電圧のいずれか一と、複数の第2電圧のいずれか一と、を選択する機能を有し、信号処理回路は、第2選択回路で選択された第1電圧および第2電圧を演算する機能を有し、第1信号保持回路および第2信号保持回路は、それぞれ、第1トランジスタを有し、第1トランジスタの半導体層は酸化物半導体を含む車両警報装置である。
【0010】
音響信号は、搭乗者に注意を喚起する信号であることが好ましい。搭乗者の注意を喚起できれば、信号出力装置の出力は、音響信号でなくてもよい。例えば、発光信号であってもよいし、臭いや振動などであってもよい。
【0011】
制御装置は、音源位置と、音源位置と車両間の相対速度と、を用いて、音源位置の変化を取得する機能を有する。
【0012】
信号処理回路は、差動回路および/または乗算回路を有してもよい。
【0013】
なお、本発明の一態様は、自動車、バスなどの車両に限らず、あらゆる移動体に適用できる。例えば、電車や機関車などの鉄道車両、クレーン車やブルドーザーなどの土木作業用車両、有人ロボット、飛行機やヘリコプターなどの航空機、船舶、潜水艦などの、様々な移動体に適用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一態様によれば、新規な車両警報装置などを提供することができる。または、動作速度が向上した車両警報装置などを提供することができる。または、高温環境下においても正確に動作可能な車両警報装置などを提供することができる。
【0015】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0018】
本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、発明を明瞭化するために誇張または省略されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。また、上面図(「平面図」ともいう。)や斜視図などにおいて、図面をわかりやすくするために、一部の構成要素の記載を省略する場合がある。また、一部の隠れ線などの記載を省略する場合がある。
【0019】
本明細書等における「第1」、「第2」などの序数詞は、構成要素の混同を避けるために付すものであり、工程順または積層順など、なんらかの順番や順位を示すものではない。また、本明細書等において序数詞が付されていない用語であっても、構成要素の混同を避けるため、特許請求の範囲において序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲において異なる序数詞が付される場合がある。また、本明細書等において序数詞が付されている用語であっても、特許請求の範囲などにおいて序数詞を省略する場合がある。
【0020】
また、本明細書等において、XとYとが接続されている、と明示的に記載されている場合は、XとYとが電気的に接続されている場合と、XとYとが機能的に接続されている場合と、XとYとが直接接続されている場合とが、本明細書等に開示されているものとする。したがって、所定の接続関係、例えば、図または文章に示された接続関係に限定されず、図または文章に示された接続関係以外のものも、図または文章に開示されているものとする。
【0021】
また、本明細書等において、「平行」とは、例えば、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂直」および「直交」とは、例えば、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0022】
なお、本明細書等において、計数値および計量値に関して「同一」、「同じ」、「等しい」または「均一」(これらの同意語を含む)などと言う場合は、明示されている場合を除き、プラスマイナス20%の誤差を含むものとする。
【0023】
また、本明細書等において、高電源電位VDD(以下、単に「VDD」または「H電位」ともいう)とは、低電源電位VSSよりも高い電位の電源電位を示す。また、低電源電位VSS(以下、単に「VSS」または「L電位」ともいう)とは、高電源電位VDDよりも低い電位の電源電位を示す。また、接地電位をVDDまたはVSSとして用いることもできる。例えばVDDが接地電位の場合には、VSSは接地電位より低い電位であり、VSSが接地電位の場合には、VDDは接地電位より高い電位である。
【0024】
なお、「膜」という言葉と、「層」という言葉とは、場合によっては、または、状況に応じて、互いに入れ替えることが可能である。例えば、「導電層」という用語を、「導電膜」という用語に変更することが可能な場合がある。または、例えば、「絶縁膜」という用語を、「絶縁層」という用語に変更することが可能な場合がある。
【0025】
(実施の形態1)
本発明の一態様の車両警報装置について、図面を参照して説明する。
図1Aは、車両警報装置200を有する車両100の外観を示す斜視図である。
図1Bは、車両100の上面図である。なお、図面をわかりやすくするため、
図1Bなどでは車両100の構成要素の記載を一部省略している。また、
図2Aに車両警報装置200の構成例を説明するブロック図を示す。
【0026】
<車両100および車両警報装置200の構成例>
図1Aおよび
図1Bに示す車両100は、M個(Mは1以上の整数)の音源検知装置110を有する。本明細書などでは、1番目の音源検知装置110を音源検知装置110[1]と示し、k番目(kは1以上M以下の整数)の音源検知装置110を音源検知装置110[k]と示している。同様に、M番目の音源検知装置110を音源検知装置110[M]と示している。
【0027】
なお、本明細書などにおいて、音源検知装置110[1]乃至音源検知装置110[M]のうち任意の1つを示す場合は、「音源検知装置110[k]」、または、「音源検知装置110」と示す。他の構成要素を示す符号についても同様である。複数の要素を区別するために、[1]、あるいは_1等の表現が用いられる。
【0028】
図1Aおよび
図1Bでは14個の音源検知装置110(音源検知装置110[1]乃至音源検知装置110[11])を示している。具体的には、車両100の前方に音源検知装置110[1]乃至音源検知装置110[3]を有し、右側面に音源検知装置110[4]乃至音源検知装置110[7]を有し、後方に音源検知装置110[8]乃至音源検知装置110[10]を有し、左側面に音源検知装置110[11]乃至音源検知装置110[14]を有する。なお、車両100に設ける音源検知装置110の個数は、14個に限定されない。また、使用する音源検知装置110を増やすことで、車両100に接近する物体の位置や速度などの検出精度をより高めることができる。
【0029】
また、車両100は、ステアリング151内にエアバッグ装置131を有し、ダッシュボード152にエアバッグ装置132を有する。また、ドア135a内にエアバッグ装置133aを有し、ドア135b内にエアバッグ装置133bを有する。また、ドア136a内にエアバッグ装置134aを有し、ドア136b内にエアバッグ装置134bを有する。また、車両100は、制御装置120および信号出力装置130を有する。
【0030】
車両警報装置200は、音源検知装置110、制御装置120、および信号出力装置130を含んで構成される。具体的には、M個の音源検知装置110、および信号出力装置130が制御装置120に接続される(
図2A参照。)。
【0031】
制御装置120は、記憶装置121、演算装置122、およびニューラルネットワーク123などを有してもよい。演算装置122はGPU(Graphics Processing Unit)であってもよい。また、制御装置120または演算装置122をFPGA(Field Programmable Gate Array)やFPAA(Field Programmable Analog Array)といったPLD(Programmable Logic Device)によって実現してもよい。
【0032】
なお、音源検知装置110および信号出力装置130と、制御装置120の接続は、有線接続方式であってもよいし、無線接続方式であってもよい。金属配線などを用いて直接接続する有線接続方式は、無線通信などを用いて接続する無線接続方式よりもノイズの影響を受けにくい。金属配線に換えて光ファイバーなどを用いてもよい。一方、無線接続方式を用いると、接続に用いる配線の使用量を減らすことができる。また、音源検知装置110および信号出力装置130の設置自由度を高めることができる。よって、車両警報装置200の設置を容易とすることができる。
【0033】
また、制御装置120に、音源検知装置110以外のセンサ140を接続してもよい(
図2A参照。)。センサ140としては、例えば、電磁波センサ、超音波センサ、赤外線センサ、加速度センサ、イメージセンサ、ミリ波レーダー、ライダーなどがある。制御装置120に複数種類のセンサ140を接続してもよい。
【0034】
音源検知装置110[1]乃至音源検知装置110[3]は、主に車両100前方の音源を検知する機能を有する。また音源検知装置110[4]乃至音源検知装置110[7]は、主に車両100右側の音源を検知する機能を有する。また音源検知装置110[8]乃至音源検知装置110[10]は、主に車両100後方の音源を検知する機能を有する。また音源検知装置110[11]乃至音源検知装置110[14]は、主に車両100左側の音源を検知する機能を有する。
【0035】
音源検知装置110の設置高さH(路面から音源検知装置110までの高さ)は、路面から50cm以上、好ましくは1m以上、より好ましくは1m50cm以上にすることが好ましい。音源検知装置110の設置位置が路面に近いと、路面による音響反射などの影響を受けやすく、検知精度が低下する場合がある。
【0036】
また、M個の音源検知装置110は、それぞれの地上からの設置高さHが等しいことが好ましい。特に音源検知装置110[1]乃至音源検知装置110[3]の設置高さHが等しいことが好ましい。また、音源検知装置110[4]乃至音源検知装置110[7]の設置高さHが等しいことが好ましい。また、音源検知装置110[8]乃至音源検知装置110[10]の設置高さHが等しいことが好ましい。また、音源検知装置110[11]乃至音源検知装置110[14]の設置高さHが等しいことが好ましい。
【0037】
具体的には、M個の音源検知装置110それぞれの設置高さHは、設置高さHの平均値の0.8倍以上1.2倍以下であることが好ましく、設置高さHの平均値の0.9倍以上1.1倍以下であることがより好ましい。
【0038】
図2Bは、音源検知装置110[k]の構成を示すブロック図である。音源検知装置110[k]は、マイクロホンアレイ111[k]、遅延回路群112[k]、信号処理回路113[k]、ADC114[k]、およびデジタル演算回路115[k]、を有する。
【0039】
マイクロホンアレイ111[k]は、N個(Nは2以上の整数)のマイクロホン116を有する。マイクロホン116は、収音した音波を電気信号(「音源信号」ともいう)に変換する機能を有する。
【0040】
遅延回路群112[k]は、N個の遅延回路117を有する。j番目(jは1以上N以下の整数)のマイクロホン116(マイクロホン116[j])は、j番目の遅延回路117(遅延回路117[j])と電気的に接続する。N個の遅延回路117は、信号処理回路113[k]と電気的に接続され、信号処理回路113[k]はデジタル演算回路115[k]と電気的に接続されている。なお、音源検知装置110については、追って詳細に説明する。
【0041】
ADC114[k]はアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有する。よって、信号処理回路113[k]の出力がデジタル信号であれば、ADC114を設けなくてもよい。また、ADC114[k]、および/または、デジタル演算回路115[k]などの機能を制御装置120に受け持たせることで、音源検知装置110[k]の構成を簡略化することができる(
図2C参照。)。
【0042】
一方で、アナログ信号はノイズに弱いため、信号処理回路113[k]の出力がアナログ信号であれば、ADC114[k]は信号処理回路113[k]の極力近くに設けることが好ましい。
【0043】
音源検知装置110にADC114を設ける場合において、例えば、識別したい音源方向の数が8であれば、1つの音源検知装置110に8つのADC114を設けてもよい。ADC114を複数設けることで、音源検知装置110の処理能力を高めることができる。
【0044】
<車両警報装置200の動作例>
次に、車両警報装置200の動作例について、図面を参照して説明する。
図3および
図4は車両警報装置200の動作を説明するフローチャートである。
図5乃至
図9は、車両警報装置200の動作を説明する図である。
【0045】
〔動作例1〕
図3に、車両警報装置200の動作例を説明するフローチャートを示す。まず、車両100の外の音響(「外来音」ともいう。)を取得する(ステップS310)。
図5は、車両100から見て、壁状の構造物800の陰を移動する車両900が発する外来音901を取得する様子を示している。車両900の姿は、構造物800に遮られて車両100からは視認できない。
【0046】
次に、外来音901の音源位置を特定する(ステップS320。
図6参照。)。音源位置の特定方法については、追って詳細に説明する。
【0047】
次に、制御装置120において、音源位置と、音源と車両100間の相対速度から、位置が特定された音源が車両100に接近しているか否かを判断する(ステップS330)。
【0048】
制御装置120は、音源位置の変化から音源が車両100に衝突する危険があると判断した場合は、車両内に設けられた信号出力装置130に信号を供給する。信号出力装置130は、制御装置120から供給された信号を受けて、搭乗者に注意を喚起するための警告音などの音響信号を出力する(ステップS340。
図7参照。)。信号出力装置130から警告音を出力することで、搭乗者は衝突を防ぐための回避行動をとることができる。なお、信号出力装置130として、車両100に搭載しているオーディオシステムやナビゲーションシステムなどを用いてもよい。
【0049】
また、信号出力装置130の出力は、音響信号に限らず、発光信号であってもよい。または、臭いや振動などを出力することによって搭乗者に注意を喚起してもよい。
【0050】
音源の位置の特定は、1つの音源検知装置110で行なってもよいし、複数の音源検知装置110で行なってもよい。音源の位置の特定に用いる音源検知装置110の数を増やすことで、音源の位置を特定する精度を高めることができる。
【0051】
〔動作例2〕
図4に、動作例1と異なる動作を説明するフローチャートを示す。
図4は、車両警報装置200と連動して乗員保護装置(エアバッグ装置など)を用いる場合の動作例を示すフローチャートである。
【0052】
動作例2は、動作例1とステップS340までは同じ動作を行なう。続いて、デジタル演算回路115[k]および/または制御装置120で車両100に接近する音源を解析し、音の種類からどのような物体(本実施の形態では車両900)が接近しているのかを特定する(ステップS350)。例えば、テンプレートマッチングなどの情報処理方法でエンジン音、ブレーキ音、走行音などのノイズ成分を識別し、除外することができる。また、当該物体(以下、「接近物体」ともいう。)がトラックなのか、自動車なのか、オートバイなのか、などを特定することができる。また、接近物体が超音波衝突防止装置を備えている場合、当該接近物体の特定のために、当該接近物体が発する超音波を利用することも出来る。
【0053】
接近物体の種類特定、ノイズ成分の除去などの情報処理は、機械学習などの人工知能(AI:Artificial Intelligence)技術を用いて行なってもよい。
【0054】
例えば、制御装置120が有する記憶装置121に事前学習により取得した重み情報や、音響情報などを記憶しておき、該重み情報や該音響情報を用いてニューラルネットワーク123により接近物体の種類を特定してもよい。また、ニューラルネットワーク123をソフトウェアで構成し、演算装置122で演算することによって接近物体の種類を特定してもよい。
【0055】
人工知能技術を用いることで、エンジン音、ブレーキ音、走行音、および、その他の環境音などのノイズ成分の除去を行なうことができる。人工知能技術を用いることにより、さまざまなノイズ成分の中から接近物体を特定することができる。
【0056】
ここで、ニューラルネットワーク123の構成例を説明しておく。
図10Aに示すように、ニューラルネットワーク123は入力層IL、出力層OL、中間層(隠れ層)HLによって構成することができる。入力層IL、出力層OL、中間層HLはそれぞれ、1または複数のニューロン(ニューロン124)を有する。なお、中間層HLは1層であってもよいし2層以上であってもよい。2層以上の中間層HLを有するニューラルネットワークはDNN(ディープニューラルネットワーク)と呼ぶこともでき、ディープニューラルネットワークを用いた学習は深層学習と呼ぶこともできる。
【0057】
入力層ILの各ニューロンには入力データが入力され、中間層HLの各ニューロンには前層又は後層のニューロンの出力信号が入力され、出力層OLの各ニューロンには前層のニューロンの出力信号が入力される。なお、各ニューロンは、前後の層の全てのニューロンと結合されていてもよいし(全結合)、一部のニューロンと結合されていてもよい。
【0058】
図10Bに、ニューロンによる演算の例を示す。ここでは、ニューロン124と、ニューロン124に信号を出力する前層の2つのニューロンを示している。ニューロン124には、前層のニューロンの出力x
1と、前層のニューロンの出力x
2が入力される。そして、ニューロン124において、出力x
1と重みw
1の乗算結果(x
1w
1)と出力x
2と重みw
2の乗算結果(x
2w
2)の総和x
1w
1+x
2w
2が計算された後、必要に応じてバイアスbが加算され、値a=x
1w
1+x
2w
2+bが得られる。そして、値aは活性化関数hによって変換され、ニューロン124から出力信号y=h(a)が出力される。
【0059】
このように、ニューロンによる演算には、前層のニューロンの出力と重みの積を足し合わせる演算、すなわち積和演算が含まれる(上記のx1w1+x2w2)。この積和演算は、プログラムを用いてソフトウェア上で行ってもよいし、ハードウェアによって行われてもよい。積和演算をハードウェアによって行う場合は、積和演算回路を用いることができる。この積和演算回路としては、デジタル回路を用いてもよいし、アナログ回路を用いてもよい。積和演算回路にアナログ回路を用いる場合、積和演算回路の回路規模の縮小、または、メモリへのアクセス回数の減少による処理速度の向上及び消費電力の低減を図ることができる。
【0060】
積和演算回路は、チャネルが形成される半導体層にシリコン(単結晶シリコンなど)を含むトランジスタ(「Siトランジスタ」ともいう)によって構成してもよいし、OSトランジスタによって構成してもよい。特に、OSトランジスタはオフ電流が極めて少ないため、積和演算回路のアナログメモリを構成するトランジスタとして好適である。なお、SiトランジスタとOSトランジスタの両方を用いて積和演算回路を構成してもよい。
【0061】
続いて、制御装置120は、接近物体と車両100の距離および相対速度の変化から、接近物体と車両100との衝突が確実か推定する(ステップS360)。また、制御装置120は、接近物体の種別と相対速度から、衝突時の衝撃の大きさを推定する。この時、センサ140から得られた情報を加味することで、より正確に衝撃の大きさを推定することができる。
【0062】
衝突する可能性が低いと判断した場合は、ステップS310に戻る。衝突確実と判断した場合は、乗員保護装置を起動する(ステップS370)。例えば、乗員保護装置としてエアバッグ装置を用いる場合、車両100が搭載している全てのエアバッグ装置を同時に起動してもよいが、車両100の衝突場所を推定して、起動するエアバッグ装置を決定してもよい。
【0063】
例えば、車両100の右側面に衝突することが確実な場合、エアバッグ装置133aおよびエアバッグ装置133bを動作させてエアバッグ108を膨張させる。この時、衝突前はポンプなどの機械的方法によりエアバッグ108を膨張させ(
図8参照。)、衝突以降にインフレータにより急激にエアバッグを膨張させてもよい(
図9参照。)。
【0064】
エアバッグ108内の到達圧力は、先に推定した衝突時の衝撃の大きさに応じて決定する。エアバッグ内の圧力を適切に制御することにより、最適な乗員の保護を実現することができる。また、加速度センサなどを用いて、衝突直後の衝撃を検出してからさらにエアバッグ内の圧力を調節してもよい。衝突前からエアバッグ装置を起動することで、乗員を遅滞無く保護することができる。
【0065】
また、エアバッグ装置に複数のインフレータを設け、該インフレータを順次に動作させるなどして、エアバッグの圧力や膨張速度などを調節してもよい。エアバッグ装置に複数のインフレータを設ける場合、それぞれのインフレータの爆発力は同じでもよいし、異なっていてもよい。
【0066】
エアバッグ装置に複数のインフレータを設けると、インフレータ1つ当たりの火薬使用量を低減することができるため、エアバッグ装置の動作による二次災害発生の可能性を低減することができる。また、インフレータ動作時の爆発音を低減できるため、乗員の心理的負担などの軽減も可能である。
【0067】
また、エアバッグ装置に複数のインフレータを搭載することにより、1つのインフレータに不具合が生じても、他のインフレータによってエアバッグ装置を確実に動作させることができる。よって、エアバッグ装置の冗長性を高めることができる。すなわち、乗員保護装置の冗長性を高めることができる。
【0068】
また、前述の、衝突前にポンプなどの機械的方法によりエアバッグを膨張させる方法を用いると、直前で衝突が回避された場合やインフレータを動作させる必要がない程度の軽微な衝突の場合は、エアバッグを収納して再び使用することができる。インフレータを複数搭載したエアバッグ装置においても、エアバッグ装置の動作後に未使用のインフレータが残っている場合はエアバッグを収納して再び使用することができる。エアバッグ装置を交換する必要が無いため、車両100の整備費用を低減することができる。
【0069】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0070】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した音源検知装置110の構成および動作について、図面を参酌しながら詳細に説明する。
図11Aは、上記実施の形態で説明した音源検知装置110[k]の構成例を示すブロック図である。なお、
図11Aは
図2Cと同等のブロック図である。よって、説明の繰り返しを減らすため、主に上記実施の形態で説明した内容と異なる部分について説明する。
【0071】
本発明の一態様の音源検知装置110[k]は、複数のマイクロホンを有するマイクロホンアレイ111[k]を備え、各マイクロホンに入る音に遅延を与え、目的の方向からの音の位相を揃えることで目的の方向に焦点を合わせることができる音源定位装置としての機能を有する。音源とマイクロホンとの距離の差が音波の飛行時間(Time-Of-Flight:ToF)の違いとなることを利用して、音源の位置を推定する。
【0072】
図11Aでは、各マイクロホン116で変換された音源信号を音源信号D1乃至DNとして示している。音源信号D1は遅延回路117[1]に供給され、音源信号DNは遅延回路117[N]に供給される。すなわち、音源信号D1乃至音源信号DNは、それぞれが対応する遅延回路117[1]乃至遅延回路117[N]に供給される。
【0073】
また、各マイクロホン116と各遅延回路117の間に増幅回路を設けてもよい。各マイクロホン116と各遅延回路117の間に増幅回路を設けることで、マイクロホンアレイ111[k]と遅延回路群112[k]間の距離を広げることができる。
【0074】
遅延回路117(遅延回路117[1]乃至遅延回路117[N])は、各マイクロホン116から与えられた音源信号を遅延させて、出力信号を生成する機能を有する。
図11Bに、1つの遅延回路117の構成を説明するブロック図を示す。遅延回路117は、それぞれ、選択回路21、複数の信号保持回路22、選択回路23を有する。
【0075】
選択回路21(第1選択回路ともいう)は、音源信号D1乃至音源信号DNのいずれか一、例えば音源信号D1を複数の信号保持回路22に振り分けるデマルチプレクサとしての機能を有する。選択回路21はスイッチの機能を有し、選択信号Wによってオンまたはオフが制御される。選択回路21は、一例として、nチャネル型のトランジスタで構成する。この場合、選択回路21が有するトランジスタは、選択信号WがHレベルでオンとなり、Lレベルでオフとなる。
【0076】
複数の信号保持回路22は、音源信号に応じたアナログ電圧を保持し、当該アナログ電圧に応じた電圧を出力する機能を有する。信号保持回路22は、所定のタイミングの時刻に選択回路21が有するスイッチをオンにして音源信号をサンプリングすることで、アナログ電圧が書き込まれる。信号保持回路22へのアナログ電圧の書き込みは、選択信号WをHレベルとすることで制御することができる。また信号保持回路22でのアナログ電圧の保持は、選択信号WをLレベルとすることで制御することができる。
【0077】
なお複数の信号保持回路22にはそれぞれ、異なるタイミングで選択信号WをHレベルとした時刻での音源信号に基づくアナログ電圧が書き込まれ、Lレベルとすることで当該アナログ電圧が保持される。すなわち複数の信号保持回路22ではそれぞれ、マイクロホン116の音源信号を異なるタイミングで取得し、当該音源信号に応じた電圧を保持することができる。そのため複数の信号保持回路22では、次々と音源信号のサンプリングを行うことで、マイクロホン116から出力される音源信号における離散的な値を保持することができる。
【0078】
また複数の信号保持回路22は、保持したアナログ電圧を増幅して出力する機能を有する。一例としては、複数の信号保持回路22はそれぞれソースフォロワ回路を有し、当該ソースフォロワ回路等を介して保持したアナログ電圧に応じた電圧を出力する機能を有する。
【0079】
選択回路23(第2選択回路ともいう)は、複数の信号保持回路22に保持したアナログ電圧のいずれか一を選択して異なるタイミングで出力するマルチプレクサとしての機能を有する。選択回路23はスイッチの機能を有し、選択信号Sによってオンまたはオフが制御される。選択回路23は、一例として、nチャネル型のトランジスタで構成する。この場合、選択回路23が有するトランジスタは、選択信号SがHレベルでオンとなり、Lレベルでオフとなる。
【0080】
選択回路23は、遅延回路117[1]乃至遅延回路117[N]ごとに設けられ、出力信号Q11~Q1n乃至QN1~QNnを得ることができる。出力信号Q11~Q1nは音源信号D1に対応する信号であり、遅延回路117[1]が有する複数の信号保持回路22に保持したアナログ電圧を順次出力することで得られる離散的な信号である。この出力信号Q11~Q1nは、音源信号D1を所定の時間だけ遅延させた信号に相当する。出力信号Q21~Q2n乃至QN1~QNnについても同様に、音源信号D2乃至DNに対応する信号であり、遅延回路117[2]乃至遅延回路117[N]が有する信号保持回路22に保持したアナログ電圧を順次出力することで得られる離散的な信号である。この出力信号Q21~Q2n乃至QN1~QNnは、音源信号D2乃至DNを所定の時間だけ遅延させた信号に相当する。つまり選択回路23では、選択信号Sを所定の遅延時間に設定することで、遅延時間が定められた音源信号に応じた出力信号Q11~Q1n乃至QN1~QNnを出力することができる。
【0081】
遅延回路117を構成する各トランジスタとしては、OSトランジスタで構成されることが好ましい。特に、遅延回路117内の信号保持回路22を構成するトランジスタに、OSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタは、オフ状態の時にソースとドレイン間を流れる電流(「オフ電流」ともいう。)が極めて低い。OSトランジスタを信号保持回路22に用いることで、音源信号をサンプリングして得られるアナログ電圧を信号保持回路22に長期間保持させることができる。すなわち、信号保持回路22に保持されたアナログ電圧が変動しにくくなるため、音源信号に基づく音源の推定をより正確に行うことが可能になる。
【0082】
加えて、OSトランジスタを用いた信号保持回路22では、電荷の充電または放電によってアナログ電圧の書き換えおよび読み出しが可能となるため、実質的に回数の制限無くアナログ電圧の取得および読み出しが可能である。OSトランジスタを用いた信号保持回路は、磁気メモリあるいは抵抗変化型メモリなどのように原子レベルでの構造変化を伴わないため、書き換え耐性に優れている。またOSトランジスタを用いた信号保持回路は、フラッシュメモリのような繰り返し書き換え動作でも電子捕獲中心の増加による不安定性が認められない。
【0083】
またOSトランジスタを用いた信号保持回路22は、Siトランジスタを用いた回路上などに自由に配置可能であるため、複数の遅延回路を備える構成とした場合であっても、集積化を容易に行うことができる。またOSトランジスタは、Siトランジスタと同様の製造装置を用いて作製することが可能であるため、低コストで作製可能である。
【0084】
またOSトランジスタは、ゲート電極、ソース電極およびドレイン電極に加えて、バックゲート電極を含むと、4端子の半導体素子とすることができる。ゲート電極またはバックゲート電極に与える電圧に応じて、ソースとドレインとの間を流れる信号の入出力が独立制御可能な電気回路網で構成することができる。そのため、LSIと同一思考で回路設計を行うことができる。加えてOSトランジスタは、高温環境下において、Siトランジスタよりも優れた電気特性を有する。具体的には、125℃以上150℃以下といった高温下においてもオン電流とオフ電流の比が大きいため、良好なスイッチング動作を行うことができる。
【0085】
信号処理回路113は、選択回路23で選択された出力信号の差を演算し、当該差の積分を演算し、音源信号の位相が揃う遅延時間を見積もる機能を有する。信号処理回路113は、一例として、差動回路と、積分回路と、コンパレータと、三角波生成回路と、を有する。差動回路は、選択回路23で選択された、比較する2つの出力信号の電圧が入力される。積分回路は、差動回路の出力信号を積分して得られる値を出力する。コンパレータは、積分回路の出力信号および三角波生成回路の出力信号が入力される。
【0086】
信号処理回路113は、アナログ演算回路として機能する。信号処理回路113は、アナログ値の信号同士を比較して信号処理を行うためA/D変換回路などの占有面積の大きい回路を省略することができ、回路面積の増大を抑制することができる。
【0087】
また、信号処理回路113を乗算回路で構成してもよい。乗算回路は、オペアンプを用いた対数変換、加算、逆対数変換回路によって実現できる。また、乗算回路は、ギルバートセルなどのトランスリニア回路などで実現することも出来る。
【0088】
本発明の一態様の音源検知装置110は、遅延回路117を構成する各トランジスタとしてOSトランジスタを用いる。また、本発明の一態様の音源検知装置110は、異なるタイミングでサンプリングしたアナログ電圧に応じた電荷を保持する方式とする。OSトランジスタはオフ電流が極めて低いため、アナログ電圧を保持するための保持容量を小さくすることができる。よって、遅延回路117の搭載密度を高めることができる。
【0089】
加えて、本発明の一態様の音源検知装置110は、遅延回路117内に保持した電荷に応じたアナログ電圧を異なるタイミングで読み出すことで、出力信号として離散的な音源信号を読み出すことができる。制御信号Sのタイミングを異ならせることで、所望の遅延時間に制御することができる。そのため音源信号をデジタル信号に変換することなく所望の遅延時間に制御することができ、離散化された音源信号の位相を揃えることができる。
【0090】
図12では、
図11Bで説明した遅延回路117の具体的な回路構成例について説明する。
図12は、マイクロホン116から出力される音源信号D1を2つのノードで保持し、遅延時間の異なる3つの出力信号として出力する遅延回路の構成例である。
【0091】
図12は、選択回路21を構成するトランジスタ101、信号保持回路22を構成するトランジスタ101、トランジスタ102、およびトランジスタ103、並びに選択回路23を構成するトランジスタ104、を図示している。トランジスタ101乃至104は、nチャネル型のトランジスタとし、Hレベルの制御信号でオン、Lレベルの制御信号でオフとなるスイッチとして機能する。
【0092】
図12は、選択信号Wとして、選択信号W11およびW12を図示している。選択信号W11およびW12は、異なるタイミングで音源信号D1のアナログ電圧をサンプリングするための信号である。
【0093】
図12は、選択回路21でサンプリングされたアナログ電圧を保持するためのノードF11およびF12を図示している。また
図12ではノードF11およびF12がソースフォロワ回路の入力端子であるトランジスタ102のゲートに接続される構成を図示している。またソースフォロワ回路のバイアス電圧V
Bがトランジスタ103のゲートに印加される構成を図示している。なおノードF11およびF12には、容量素子が接続される構成を図示しているが、トランジスタ102のゲート容量を十分大きくとるなどの構成とすることで省略することもできる。なお
図12では、ソースフォロワ回路を構成するトランジスタ102およびトランジスタ103が接続されるノードをO11、O12として図示している。ノードO11、O12の電圧は、ノードF11、F12のアナログ電圧に相当する。ソースフォロワ回路があることで、後段にある選択回路23への電荷供給能力を高めることができる。
【0094】
図12は、選択回路23の選択信号Sとして、選択信号S11乃至S1n、およびS21乃至S2nを図示している。選択信号S11乃至S1nは、ノードO11の電圧を出力信号Q11乃至Q1nに出力する機能を有する。選択信号S11乃至S1nを供給するタイミングを調整することで、出力信号Q11乃至Q1nを、ノードO11の電圧を所定の期間だけ遅延させた信号にすることができる。また、選択信号S21乃至S2nは、ノードO12の電圧を出力信号Q11乃至Q1nに出力する機能を有する。選択信号S21乃至S2nを供給するタイミングを調整することで、出力信号Q11乃至Q1nを、ノードO12の電圧を所定の期間だけ遅延させた信号にすることができる。
【0095】
【0096】
図13Aは、
図12における動作の理解を容易にするため、音源信号をサンプリングするための選択信号Wを選択信号W11乃至W13とし、保持した複数のアナログ電圧を出力信号Q11およびQ12として読み出すための選択信号Sを選択信号S111およびS112、S121およびS122、並びに選択信号S131およびS132、とした遅延回路117の構成例である。つまり
図13Aに図示する遅延回路117は、異なる3回のタイミングで音源信号のサンプリングを行って3つのアナログ電圧を取得するとともに、異なる2回のタイミングで遅延時間の異なる2つの出力信号を出力する構成である。また
図13Aでは、ノードF11乃至F13およびノードO11乃至O13を図示している。
【0097】
図13Bは、
図13Aに示す遅延回路117に接続された音源信号D1をサンプリングする動作を説明するためのタイミングチャートである。
図13Bでは、音源信号D1の波形とともに、選択信号W11乃至W13、ノードF11乃至F13に書き込まれる電圧について時刻T1乃至T4での動作について説明する。なおタイミングチャートを説明する図において、ハッチングを付した期間は、不定状態を表す期間である。
【0098】
上述したように時刻T1で選択信号W11をHレベルとし、音源信号D1の電圧V1をノードF11に書き込んで音源信号D1のサンプリングが行われる。
【0099】
期間Tをあけた時刻T2で選択信号W12をHレベルとし、音源信号D1の電圧V2をノードF12に書き込んで音源信号D1のサンプリングが行われる。なお期間Tは短い方が好ましい。音源信号のサンプリング数を多くでき、角度分解能を高めることができる。
【0100】
時刻T3で選択信号W13をHレベルとし、音源信号D1の電圧V3をノードF13に書き込んで音源信号D1のサンプリングが行われる。
【0101】
ノードF11乃至F13に保持した電圧V1乃至V3は、選択信号W11乃至W13をLレベルとすることで保持することができる。初期化する場合は、時刻T4に示すように定電位の音源信号を与えた状態で選択信号W11をHレベルとすればよい。
【0102】
図14は、
図12における動作の理解を容易にするため、音源信号D1をサンプリングするための選択信号Wを選択信号W11乃至W13とし、保持した電圧を出力信号Q11およびQ12として読み出すための選択信号Sを選択信号S111およびS112、S121およびS122、並びに選択信号S131およびS132、とした遅延回路117[1]の構成例、および音源信号D2をサンプリングするための選択信号Wを選択信号W21乃至W23とし、保持した電圧を出力信号Q21およびQ22として読み出すための選択信号Sを選択信号S211およびS212、S221およびS222、並びに選択信号S231およびS232、とした遅延回路117[2]の構成例である。つまり
図14に図示する遅延回路117[1]および遅延回路117[2]は、3つのアナログ電圧を取得するとともに、異なる2回のタイミングで遅延時間の異なる2つの出力信号を出力する構成である。また
図14では、ノードF11乃至F13、ノードF21乃至F23、ノードO11乃至O13およびノードO21乃至O23を図示している。
【0103】
図15は、
図14に示す遅延回路117[1]のノードF11乃至F13に保持された電圧V1乃至V3、および遅延回路117[2]のノードF21乃至F23に保持された電圧V4乃至V6を出力信号Q11、Q12、Q21、およびQ22として読み出す動作を説明するためのタイミングチャートである。また
図15では、選択信号S111およびS112、S121およびS122、S131およびS132、S211およびS212、S221およびS222、並びに選択信号S231およびS232によってノードF11乃至F13およびノードF21乃至F23から読み出される出力信号Q11、Q12、Q21、およびQ22について、時刻T5乃至T8における動作を説明する。
【0104】
時刻T5で選択信号S111をHレベルとし、ノードF11の電圧V1に対応する電圧を出力信号Q11として出力する。また同じ時刻T5で選択信号S211をHレベルとし、ノードF21の電圧V4に対応する電圧を出力信号Q21として出力する。
【0105】
時刻T7で選択信号S131をHレベルとし、ノードF13の電圧V3に対応する電圧を出力信号Q11として出力する。また同じ時刻T7で選択信号S122をHレベルとし、ノードF12の電圧V5に対応する電圧を出力信号Q12として出力する。また時刻T7で選択信号S231をHレベルとし、ノードF23の電圧V6に対応する電圧を出力信号Q21として出力する。また同じ時刻T7で選択信号S222をHレベルとし、ノードF22の電圧V5に対応する電圧を出力信号Q22として出力する。
【0106】
時刻T8で選択信号S132をHレベルとし、ノードF13の電圧V3に対応する電圧を出力信号Q12として出力する。また同じ時刻T8で選択信号S232をHレベルとし、ノードF23の電圧V6に対応する電圧を出力信号Q22として出力する。
【0107】
図15に示すように出力信号Q12は、出力信号Q11を遅延させた信号として得ることができる。同様に出力信号Q22は、出力信号Q21を遅延させた信号として得ることができる。選択信号Sのタイミングを制御することで任意の遅延期間で、信号保持回路に保持した信号を遅延させて出力することができる。そのため、例えば遅延回路117[1]と遅延回路117[2]とで、音源とマイクロホンとの距離が異なる場合に、遅延期間を切り替えていくことで音源信号の位相を揃えることができ、音源の方向を推定することができる。
【0108】
図16Aは、上記説明した遅延期間を切り替えることで、音源信号に対応する出力信号の位相を揃え、音源の方向を推定する技術を説明するための模式図である。
【0109】
図16Aでは、音源40の他、マイクロホンアレイの一部として、マイクロホン116[1]、マイクロホン116[2]を図示している。なお
図16Aでは、説明のため、音源40とマイクロホン116[1]との距離を1mとし、マイクロホン116[1]とマイクロホン116[2]との距離を0.5mとする。そのため、音源40からマイクロホン116[2]への距離は、およそ1.12mとなる。従って音源40からマイクロホン116[2]への音の到達は、音速を340m/sと見積もると、音源40からマイクロホン116[1]への音の到達に比べて、およそ0.35msの期間だけ遅延することになる。
【0110】
図16Bでは、
図16Aに示す模式図において、遅延回路117[1]、遅延回路117[2]を経て得られる音源信号を遅延させた出力信号Q11乃至Q13、およびQ21乃至Q23を可視化した図である。
図16Bに図示するように遅延回路117[1]、遅延回路117[2]では、遅延期間なし(0ms)、遅延期間あり(0.35ms)、遅延期間あり(0.7ms)と設定した遅延回路で出力信号を遅延させている。
【0111】
図16Bに図示するように、遅延期間なし(0ms)では、マイクロホン116[1]とマイクロホン116[2]とで音の到達時刻に差があるため、遅延回路117[1]、遅延回路117[2]の双方から出力される出力信号は一致しない(時刻t1)。一方、遅延回路117[1]で遅延期間あり(0.35ms)を経た出力信号は、遅延回路117[2]から出力される遅延期間なしの出力信号と一致する(時刻t2)。時刻t3、t4で得られる出力信号についても一致する。異なる遅延回路を経た出力信号同士を比較することで、出力信号の位相の一致または不一致を判定し、音源の推定に利用することができる。
【0112】
図16A、
図16Bの模式図に示すようにサンプリングした音源信号に基づく出力信号を遅延させ、当該出力信号同士を比較する。そのため、目的の方向からの音の位相の遅延期間を見積もることでき、遅延時間から音源までの距離の差を算出することで、目的の方向に焦点を合わせることができる音源定位装置としての機能させることができる。
【0113】
次いで
図17では、信号処理回路113の具体的な構成例について図示する。
図17に図示する信号処理回路113は、差動回路31_1乃至31_9、積分回路32_1乃至32_9、コンパレータ33_1乃至33_9、三角波生成回路34、および演算回路35を有する。
【0114】
差動回路31_1乃至31_9は、各遅延回路(
図17の例では、遅延回路117[1]、遅延回路117[2])から出力される出力信号(
図17の例では、出力信号Q11乃至Q13、およびQ21乃至Q23)の各出力信号の差を演算する。積分回路32_1乃至32_9、は、各差動回路31_1乃至31_9の出力信号が入力され、当該出力信号を積分する。コンパレータ33_1乃至33_9は、三角波生成回路34から出力される三角波と、積分回路32_1乃至32_9の出力信号と、が入力され、電圧を比較する。演算回路35は、コンパレータ33_1乃至33_9の出力信号が入力され、音源信号の位相を揃えるための遅延時間を見積もることで、遅延時間から音源までの距離の差に対応する出力信号OUTを得ることができる。
【0115】
信号処理回路113を構成する回路の具体例について
図18A乃至
図18Cを参照して説明する。
図18Aは、
図17で図示する信号処理回路113の一段分の構成を抜き出したブロック図である。
図18Aでは、一例として、出力信号Q1、Q2が入力される差動回路31、積分回路32、コンパレータ33、三角波生成回路34を図示している。
【0116】
差動回路31の構成例について、
図18Bに示す。差動回路31は、一例として、抵抗素子51、抵抗素子52、およびトランジスタ53、トランジスタ54、トランジスタ55を有する。トランジスタ53のゲートには、非反転入力端子が接続される。トランジスタ54のゲートには、反転入力端子が接続される。トランジスタ55のゲートには、バイアス電圧Vbiasを与える配線が接続される。トランジスタ54のドレイン端子側には、差動回路31の出力端子OUTが設けられる。
【0117】
積分回路32の構成例について、
図18Cに示す。積分回路32は、一例として、ダイオード61、抵抗素子62、オペアンプ63、容量素子64、およびスイッチ65を有する。ダイオード61の入力端子に差動回路31の出力信号が与えられる。オペアンプの出力端子には、積分回路32の出力端子OUTが設けられる。
【0118】
図19A、
図19Bには、上述した遅延回路117の各トランジスタに適用可能な回路構成の変形例を示す。
【0119】
図12、
図13A等において、トランジスタ101乃至104は、バックゲート電極がないトップゲート構造またはボトムゲート構造のトランジスタとして図示したがこれに限らない。例えば、
図19Aに図示する遅延回路117Aのように、バックゲート電極を有するトランジスタ101A乃至104Aとしてもよい。
図19Aの構成とすることで、トランジスタ101A乃至104Aの状態を外部より制御しやすくすることができる。
【0120】
図12、
図13A等において、トランジスタ101乃至104は、バックゲート電極がないトップゲート構造またはボトムゲート構造のトランジスタとして図示したがこれに限らない。例えば、
図19Bに図示する遅延回路117Bのように、ゲート電極に接続されたバックゲート電極を有するトランジスタ101B乃至104Bとしてもよい。
図19Bの構成とすることで、トランジスタ101B乃至104Bを流れる電流量を増やすことができる。
【0121】
図20A、
図20Bに、上述した差動回路31の各トランジスタに適用可能な回路構成の変形例を示す。
【0122】
図18Bにおいて、トランジスタ53乃至55は、バックゲート電極がないトップゲート構造またはボトムゲート構造のトランジスタとして図示したがこれに限らない。例えば、
図20Aに図示する差動回路31Aのように、バックゲート電極を有するトランジスタ53A乃至55Aとしてもよい。
図20Aの構成とすることで、トランジスタ53A乃至55Aの状態を外部より制御しやすくすることができる。
【0123】
図18Bにおいて、トランジスタ53乃至55は、バックゲート電極がないトップゲート構造またはボトムゲート構造のトランジスタとして図示したがこれに限らない。例えば、
図20Bに図示する差動回路31Bのように、ゲート電極に接続されたバックゲート電極を有するトランジスタ53B乃至55Bとしてもよい。
図20Bの構成とすることで、トランジスタ53B乃至55Bを流れる電流量を増やすことができる。
【0124】
以上説明した本発明の一態様の半導体装置は、複数のマイクロホンの信号を一括してアナログ値の信号として保持するとともに、遅延させた信号を出力することができる。またアナログ電圧のまま、信号処理を行う構成とすることができる。よって、信号処理を行うためのA/D変換回路を削減可能であり、大量の演算処理などに起因する、周波数の誤差あるいは非同期などによる誤作動を低減することができる。なお本発明の一態様の半導体装置は、特定の音がどの方向から発せられているかを特定する音源定位の技術への適用に限らない。例えば、受信する信号の位相差から状態を推定するといった技術に適用することも可能である。
【0125】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0126】
(実施の形態3)
本実施の形態では、上記実施の形態で説明した車両警報装置200などの半導体装置に適用可能なトランジスタの構成ついて説明する。具体的には、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設ける構成について説明する。当該構成とすることで、半導体装置の設計自由度を高めることができる。また、異なる電気特性を有するトランジスタを積層して設けることで、半導体装置の集積度を高めることができる。
【0127】
図21に示す半導体装置は、トランジスタ300と、トランジスタ500と、容量素子600と、を有している。
図23Aはトランジスタ500のチャネル長方向の断面図であり、
図23Bはトランジスタ500のチャネル幅方向の断面図であり、
図23Cはトランジスタ300のチャネル幅方向の断面図である。
【0128】
トランジスタ500は、OSトランジスタである。よって、トランジスタ500は、オフ電流が小さいため、これを半導体装置が有するトランジスタに用いることにより、長期にわたり書き込んだデータ電圧あるいは電荷を保持することが可能である。つまり、リフレッシュ動作の頻度が少ない、あるいは、リフレッシュ動作を必要としないため、半導体装置の消費電力を低減することができる。
【0129】
本実施の形態で説明する半導体装置は、
図21に示すようにトランジスタ300、トランジスタ500、容量素子600を有する。トランジスタ500はトランジスタ300の上方に設けられ、容量素子600はトランジスタ300、およびトランジスタ500の上方に設けられている。
【0130】
トランジスタ300は、基板311上に設けられ、導電体316、絶縁体315、基板311の一部からなる半導体領域313、ソース領域またはドレイン領域として機能する低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bを有する。なお、トランジスタ300は、例えば、上記実施の形態におけるバッファ回路17が有するトランジスタ等に適用することができる。
【0131】
トランジスタ300は、
図23Cに示すように、半導体領域313の上面およびチャネル幅方向の側面が絶縁体315を介して導電体316に覆われている。このように、トランジスタ300をFin型とすることにより、実効上のチャネル幅が増大することによりトランジスタ300のオン特性を向上させることができる。また、ゲート電極の電界の寄与を高くすることができるため、トランジスタ300のオフ特性を向上させることができる。
【0132】
なお、トランジスタ300は、pチャネル型、あるいはnチャネル型のいずれでもよい。
【0133】
半導体領域313のチャネルが形成される領域、その近傍の領域、ソース領域、またはドレイン領域となる低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bなどにおいて、シリコン系半導体などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、Ge(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格子に応力を与え、格子間隔を変化させることで有効質量を制御したシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとGaAlAs等を用いることで、トランジスタ300をHEMT(High Electron Mobility Transistor)としてもよい。
【0134】
低抵抗領域314a、および低抵抗領域314bは、半導体領域313に適用される半導体材料に加え、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含む。
【0135】
ゲート電極として機能する導電体316は、ヒ素、リンなどのn型の導電性を付与する元素、もしくはホウ素などのp型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。
【0136】
なお、導電体の材料によって仕事関数が決まるため、当該導電体の材料を選択することで、トランジスタのしきい値電圧を調整することができる。具体的には、導電体に窒化チタンや窒化タンタルなどの材料を用いることが好ましい。さらに導電性と埋め込み性を両立するために導電体にタングステンやアルミニウムなどの金属材料を積層として用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが耐熱性の点で好ましい。
【0137】
なお、
図21に示すトランジスタ300は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。例えば、半導体装置をOSトランジスタのみの単極性回路(nチャネル型トランジスタのみ、などと同極性のトランジスタを意味する)とする場合、
図22に示すとおり、トランジスタ300の構成を、酸化物半導体を用いているトランジスタ500と同様の構成にすればよい。なお、トランジスタ500の詳細については後述する。
【0138】
トランジスタ300を覆って、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326が順に積層して設けられている。
【0139】
絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326として、例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。
【0140】
なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。また、本明細書中において、酸化窒化アルミニウムとは、その組成として窒素よりも酸素の含有量が多い材料を指し、窒化酸化アルミニウムとは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い材料を示す。
【0141】
絶縁体322は、その下方に設けられるトランジスタ300などによって生じる段差を平坦化する平坦化膜としての機能を有していてもよい。例えば、絶縁体322の上面は、平坦性を高めるために化学機械研磨(CMP)法等を用いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0142】
また、絶縁体324には、基板311、またはトランジスタ300などから、トランジスタ500が設けられる領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。
【0143】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、例えば、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0144】
水素の脱離量は、例えば、昇温脱離ガス分析法(TDS)などを用いて分析することができる。例えば、絶縁体324の水素の脱離量は、TDS分析において、膜の表面温度が50℃から500℃の範囲において、水素原子に換算した脱離量が、絶縁体324の面積当たりに換算して、10×1015atoms/cm2以下、好ましくは5×1015atoms/cm2以下であればよい。
【0145】
なお、絶縁体326は、絶縁体324よりも誘電率が低いことが好ましい。例えば、絶縁体326の比誘電率は4未満が好ましく、3未満がより好ましい。また例えば、絶縁体326の比誘電率は、絶縁体324の比誘電率の0.7倍以下が好ましく、0.6倍以下がより好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0146】
また、絶縁体320、絶縁体322、絶縁体324、および絶縁体326には容量素子600、またはトランジスタ500と接続する導電体328、および導電体330等が埋め込まれている。なお、導電体328、および導電体330は、プラグまたは配線としての機能を有する。また、プラグまたは配線としての機能を有する導電体は、複数の構造をまとめて同一の符号を付与する場合がある。また、本明細書等において、配線と、配線と接続するプラグとが一体物であってもよい。すなわち、導電体の一部が配線として機能する場合、および導電体の一部がプラグとして機能する場合もある。
【0147】
各プラグ、および配線(導電体328、導電体330等)の材料としては、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、タングステンを用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0148】
絶縁体326、および導電体330上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354が順に積層して設けられている。また、絶縁体350、絶縁体352、および絶縁体354には、導電体356が形成されている。導電体356は、トランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。なお導電体356は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0149】
なお、例えば、絶縁体350は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体356は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体350が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0150】
なお、水素に対するバリア性を有する導電体としては、例えば、窒化タンタル等を用いるとよい。また、窒化タンタルと導電性が高いタングステンを積層することで、配線としての導電性を保持したまま、トランジスタ300からの水素の拡散を抑制することができる。この場合、水素に対するバリア性を有する窒化タンタル層が、水素に対するバリア性を有する絶縁体350と接する構造であることが好ましい。
【0151】
絶縁体354、および導電体356上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364が順に積層して設けられている。また、絶縁体360、絶縁体362、および絶縁体364には、導電体366が形成されている。導電体366は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体366は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0152】
なお、例えば、絶縁体360は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体366は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体360が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0153】
絶縁体364、および導電体366上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374が順に積層して設けられている。また、絶縁体370、絶縁体372、および絶縁体374には、導電体376が形成されている。導電体376は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体376は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0154】
なお、例えば、絶縁体370は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体376は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体370が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0155】
絶縁体374、および導電体376上に、配線層を設けてもよい。例えば、
図21において、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384が順に積層して設けられている。また、絶縁体380、絶縁体382、および絶縁体384には、導電体386が形成されている。導電体386は、プラグまたは配線としての機能を有する。なお導電体386は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0156】
なお、例えば、絶縁体380は、絶縁体324と同様に、水素に対するバリア性を有する絶縁体を用いることが好ましい。また、導電体386は、水素に対するバリア性を有する導電体を含むことが好ましい。特に、水素に対するバリア性を有する絶縁体380が有する開口部に、水素に対するバリア性を有する導電体が形成される。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、バリア層により分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0157】
上記において、導電体356を含む配線層、導電体366を含む配線層、導電体376を含む配線層、および導電体386を含む配線層、について説明したが、本実施の形態に係る半導体装置はこれに限られるものではない。導電体356を含む配線層と同様の配線層を3層以下にしてもよいし、導電体356を含む配線層と同様の配線層を5層以上にしてもよい。
【0158】
絶縁体384上には絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516が、順に積層して設けられている。絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516のいずれかは、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。
【0159】
例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、例えば、基板311、またはトランジスタ300を設ける領域などから、トランジスタ500を設ける領域に、水素や不純物が拡散しないようなバリア性を有する膜を用いることが好ましい。したがって、絶縁体324と同様の材料を用いることができる。
【0160】
水素に対するバリア性を有する膜の一例として、CVD法で形成した窒化シリコンを用いることができる。ここで、トランジスタ500等の酸化物半導体を有する半導体素子に、水素が拡散することで、当該半導体素子の特性が低下する場合がある。したがって、トランジスタ500と、トランジスタ300との間に、水素の拡散を抑制する膜を用いることが好ましい。水素の拡散を抑制する膜とは、具体的には、水素の脱離量が少ない膜とする。
【0161】
また、水素に対するバリア性を有する膜として、例えば、絶縁体510、および絶縁体514には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0162】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0163】
また、例えば、絶縁体512、および絶縁体516には、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体512、および絶縁体516として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0164】
また、絶縁体510、絶縁体512、絶縁体514、および絶縁体516には、導電体518、およびトランジスタ500を構成する導電体(例えば、導電体503)等が埋め込まれている。なお、導電体518は、容量素子600、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体518は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0165】
特に、絶縁体510、および絶縁体514と接する領域の導電体518は、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する導電体であることが好ましい。当該構成により、トランジスタ300とトランジスタ500とは、酸素、水素、および水に対するバリア性を有する層で、分離することができ、トランジスタ300からトランジスタ500への水素の拡散を抑制することができる。
【0166】
絶縁体516の上方には、トランジスタ500が設けられている。
【0167】
図23Aおよび
図23Bに示すように、トランジスタ500は、絶縁体514および絶縁体516に埋め込まれるように配置された導電体503と、絶縁体516および導電体503の上に配置された絶縁体520と、絶縁体520の上に配置された絶縁体522と、絶縁体522の上に配置された絶縁体524と、絶縁体524の上に配置された酸化物530aと、酸化物530aの上に配置された酸化物530bと、酸化物530b上に互いに離れて配置された導電体542aおよび導電体542bと、導電体542aおよび導電体542b上に配置され、導電体542aと導電体542bの間に重畳して開口が形成された絶縁体580と、開口の底面および側面に配置された酸化物530cと、酸化物530cの形成面に配置された絶縁体550と、絶縁体550の形成面に配置された導電体560と、を有する。
【0168】
また、
図23Aおよび
図23Bに示すように、酸化物530a、酸化物530b、導電体542a、および導電体542bと、絶縁体580との間に絶縁体544が配置されることが好ましい。また、
図23Aおよび
図23Bに示すように、導電体560は、絶縁体550の内側に設けられた導電体560aと、導電体560aの内側に埋め込まれるように設けられた導電体560bと、を有することが好ましい。また、
図23Aおよび
図23Bに示すように、絶縁体580、導電体560、および絶縁体550の上に絶縁体574が配置されることが好ましい。
【0169】
なお、本明細書などにおいて、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cをまとめて酸化物530という場合がある。
【0170】
なお、トランジスタ500では、チャネルが形成される領域と、その近傍において、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの3層を積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、酸化物530bの単層、酸化物530bと酸化物530aの2層構造、酸化物530bと酸化物530cの2層構造、または4層以上の積層構造を設ける構成にしてもよい。また、トランジスタ500では、導電体560を2層の積層構造として示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体560が、単層構造であってもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。また、
図21、
図23Aに示すトランジスタ500は一例であり、その構造に限定されず、回路構成や駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0171】
ここで、導電体560は、トランジスタのゲート電極として機能し、導電体542aおよび導電体542bは、それぞれソース電極またはドレイン電極として機能する。上記のように、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に埋め込まれるように形成される。導電体560、導電体542aおよび導電体542bの配置は、絶縁体580の開口に対して、自己整合的に選択される。つまり、トランジスタ500において、ゲート電極を、ソース電極とドレイン電極の間に、自己整合的に配置させることができる。よって、導電体560を位置合わせのマージンを設けることなく形成することができるので、トランジスタ500の占有面積の縮小を図ることができる。これにより、半導体装置の微細化、高集積化を図ることができる。
【0172】
さらに、導電体560が、導電体542aと導電体542bの間の領域に自己整合的に形成されるので、導電体560は、導電体542aまたは導電体542bと重畳する領域を有さない。これにより、導電体560と導電体542aおよび導電体542bとの間に形成される寄生容量を低減することができる。よって、トランジスタ500のスイッチング速度を向上させ、高い周波数特性を有せしめることができる。
【0173】
導電体560は、第1のゲート(トップゲートともいう)電極として機能する場合がある。また、導電体503は、第2のゲート(ボトムゲートともいう)電極として機能する場合がある。その場合、導電体503に印加する電位を、導電体560に印加する電位と、連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ500のしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体503に負の電位を印加することにより、トランジスタ500のしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体503に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体560に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0174】
導電体503は、酸化物530、および導電体560と、重なるように配置する。これにより、導電体560、および導電体503に電位を印加した場合、導電体560から生じる電界と、導電体503から生じる電界と、がつながり、酸化物530に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0175】
本明細書等において、一対のゲート電極(第1のゲート電極、および第2のゲート電極)の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。また、本明細書等において、surrounded channel(S-channel)構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面および周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面および周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは後述する、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造およびプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0176】
また、導電体503は、導電体518と同様の構成であり、絶縁体514および絶縁体516の開口の内壁に接して導電体503aが形成され、さらに内側に導電体503bが形成されている。なお、トランジスタ500では、導電体503aおよび導電体503bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体503は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0177】
ここで、導電体503aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、上記不純物、または上記酸素のいずれか一または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0178】
例えば、導電体503aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体503bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0179】
また、導電体503が配線の機能を兼ねる場合、導電体503bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体505は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体503bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0180】
絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524は、第2のゲート絶縁膜としての機能を有する。
【0181】
ここで、酸化物530と接する絶縁体524は、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む絶縁体を用いることが好ましい。つまり、絶縁体524には、過剰酸素領域が形成されていることが好ましい。このような過剰酸素を含む絶縁体を酸化物530に接して設けることにより、酸化物530中の酸素欠損(VO:oxygen vacancyともいう)を低減し、トランジスタ500の信頼性を向上させることができる。なお、酸化物530中の酸素欠損に水素が入った場合、当該欠陥(以下、VOHと呼ぶ場合がある。)はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている酸化物半導体を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。また、酸化物半導体中の水素は、熱、電界などのストレスによって動きやすいため、酸化物半導体に多くの水素が含まれると、トランジスタの信頼性が悪化する恐れもある。本発明の一態様においては、酸化物530中のVOHをできる限り低減し、高純度真性または実質的に高純度真性にすることが好ましい。このように、VOHが十分低減された酸化物半導体を得るには、酸化物半導体中の水分、水素などの不純物を除去すること(脱水、脱水素化処理と記載する場合がある。)と、酸化物半導体に酸素を供給して酸素欠損を補填すること(加酸素化処理と記載する場合がある。)が重要である。VOHなどの不純物が十分に低減された酸化物半導体をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0182】
過剰酸素領域を有する絶縁体として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm3以上、好ましくは1.0×1019atoms/cm3以上、さらに好ましくは2.0×1019atoms/cm3以上、または3.0×1020atoms/cm3以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0183】
また、上記過剰酸素領域を有する絶縁体と、酸化物530と、を接して加熱処理、マイクロ波処理、またはRF処理のいずれか一または複数の処理を行っても良い。当該処理を行うことで、酸化物530中の水、または水素を除去することができる。例えば、酸化物530において、VoHの結合が切断される反応が起きる、別言すると「VOH→Vo+H」という反応が起きて、脱水素化することができる。このとき発生した水素の一部は、酸素と結合してH2Oとして、酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体から除去される場合がある。また、水素の一部は、導電体542にゲッタリングされる場合がある。
【0184】
また、上記マイクロ波処理は、例えば、高密度プラズマを発生させる電源を有する装置、または、基板側にRFを印加する電源を有する装置を用いると好適である。例えば、酸素を含むガスを用い、且つ高密度プラズマを用いることより、高密度の酸素ラジカルを生成することができ、基板側にRFを印加することで、高密度プラズマによって生成された酸素ラジカルを、効率よく酸化物530、または酸化物530近傍の絶縁体中に導入することができる。また、上記マイクロ波処理は、圧力を133Pa以上、好ましくは200Pa以上、さらに好ましくは400Pa以上とすればよい。また、マイクロ波処理を行う装置内に導入するガスとしては、例えば、酸素と、アルゴンとを用い、酸素流量比(O2/(O2+Ar))が50%以下、好ましくは10%以上30%以下で行うとよい。
【0185】
また、トランジスタ500の作製工程中において、酸化物530の表面が露出した状態で、加熱処理を行うと好適である。当該加熱処理は、例えば、100℃以上450℃以下、より好ましくは350℃以上400℃以下で行えばよい。なお、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気、または酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、もしくは10%以上含む雰囲気で行う。例えば、加熱処理は酸素雰囲気で行うことが好ましい。これにより、酸化物530に酸素を供給して、酸素欠損(VO)の低減を図ることができる。また、加熱処理は減圧状態で行ってもよい。または、加熱処理は、窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で行ってもよい。または、酸化性ガスを10ppm以上、1%以上、または10%以上含む雰囲気で加熱処理した後に、連続して窒素ガスもしくは不活性ガスの雰囲気で加熱処理を行っても良い。
【0186】
なお、酸化物530に加酸素化処理を行うことで、酸化物530中の酸素欠損を、供給された酸素により修復させる、別言すると「Vo+O→null」という反応を促進させることができる。さらに、酸化物530中に残存した水素に供給された酸素が反応することで、当該水素をH2Oとして除去する(脱水化する)ことができる。これにより、酸化物530中に残存していた水素が酸素欠損に再結合してVOHが形成されるのを抑制することができる。
【0187】
また、絶縁体524が、過剰酸素領域を有する場合、絶縁体522は、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子など)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)ことが好ましい。
【0188】
絶縁体522が、酸素や不純物の拡散を抑制する機能を有することで、酸化物530が有する酸素は、絶縁体520側へ拡散することがなく、好ましい。また、導電体503が、絶縁体524や、酸化物530が有する酸素と反応することを抑制することができる。
【0189】
絶縁体522は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、または(Ba,Sr)TiO3(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁膜として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0190】
特に、不純物、および酸素などの拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい)絶縁性材料であるアルミニウム、ハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体を用いるとよい。アルミニウム、ハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体として、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。このような材料を用いて絶縁体522を形成した場合、絶縁体522は、酸化物530からの酸素の放出や、トランジスタ500の周辺部から酸化物530への水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0191】
または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0192】
また、絶縁体520は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため、好適である。また、high-k材料の絶縁体を酸化シリコン、または酸化窒化シリコンと組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造の絶縁体520や、絶縁体526を得ることができる。
【0193】
なお、
図23Aおよび
図23Bのトランジスタ500では、3層の積層構造からなる第2のゲート絶縁膜として、絶縁体520、絶縁体522、および絶縁体524が図示されているが、第2のゲート絶縁膜は、単層、2層、または4層以上の積層構造を有していてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0194】
トランジスタ500は、チャネル形成領域を含む酸化物530に、酸化物半導体として機能する金属酸化物を用いることが好ましい。例えば、酸化物530として、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いるとよい。特に、酸化物530として適用できるIn-M-Zn酸化物は、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)であることが好ましい。また、酸化物530として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0195】
なお、酸化物半導体として機能する金属酸化物は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、および非晶質酸化物半導体などがある。
【0196】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0197】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0198】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M,Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M,Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In,M,Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In,M)層と表すこともできる。
【0199】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0200】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0201】
なお、インジウムと、ガリウムと、亜鉛と、を有する金属酸化物の一種である、In-Ga-Zn酸化物(「IGZO」ともいう。)は、上述のナノ結晶とすることで安定な構造をとる場合がある。特に、IGZOは、大気中では結晶成長がし難い傾向があるため、大きな結晶(ここでは、数mmの結晶、または数cmの結晶)よりも小さな結晶(例えば、上述のナノ結晶)とする方が、構造的に安定となる場合がある。
【0202】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0203】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。本発明の一態様の酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0204】
また、トランジスタ500には、キャリア濃度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物のキャリア濃度を低くする場合においては、金属酸化物中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。なお、金属酸化物中の不純物としては、例えば、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0205】
特に、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、金属酸化物中に酸素欠損を形成する場合がある。金属酸化物中のチャネル形成領域に酸素欠損が含まれていると、トランジスタはノーマリーオン特性となる場合がある。さらに、酸素欠損に水素が入った欠陥はドナーとして機能し、キャリアである電子が生成されることがある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成する場合がある。従って、水素が多く含まれている金属酸化物を用いたトランジスタは、ノーマリーオン特性となりやすい。
【0206】
酸素欠損に水素が入った欠陥は、金属酸化物のドナーとして機能しうる。しかしながら、当該欠陥を定量的に評価することは困難である。そこで、金属酸化物においては、ドナー濃度ではなく、キャリア濃度で評価される場合がある。よって、本明細書等では、金属酸化物のパラメータとして、ドナー濃度ではなく、電界が印加されない状態を想定したキャリア濃度を用いる場合がある。つまり、本明細書等に記載の「キャリア濃度」は、「ドナー濃度」と言い換えることができる場合がある。
【0207】
よって、金属酸化物を酸化物530に用いる場合、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm3未満、好ましくは1×1019atoms/cm3未満、より好ましくは5×1018atoms/cm3未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm3未満とする。水素などの不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0208】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度は、1×1018cm-3以下であることが好ましく、1×1017cm-3未満であることがより好ましく、1×1016cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1013cm-3未満であることがさらに好ましく、1×1012cm-3未満であることがさらに好ましい。なお、チャネル形成領域の金属酸化物のキャリア濃度の下限値については、特に限定は無いが、例えば、1×10-9cm-3とすることができる。
【0209】
また、酸化物530に金属酸化物を用いる場合、導電体542(導電体542a、および導電体542b)と酸化物530とが接することで、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散し、導電体542が酸化する場合がある。導電体542が酸化することで、導電体542の導電率が低下する蓋然性が高い。なお、酸化物530中の酸素が導電体542へ拡散することを、導電体542が酸化物530中の酸素を吸収する、と言い換えることができる。
【0210】
また、酸化物530中の酸素が導電体542(導電体542a、および導電体542b)へ拡散することで、導電体542aと酸化物530bとの間、および、導電体542bと酸化物530bとの間に異層が形成される場合がある。当該異層は、導電体542よりも酸素を多く含むため、当該異層は絶縁性を有すると推定される。このとき、導電体542と、当該異層と、酸化物530bとの3層構造は、金属-絶縁体-半導体からなる3層構造とみなすことができ、MIS(Metal-Insulator-Semiconductor)構造と呼ぶ、またはMIS構造を主としたダイオード接合構造と呼ぶ場合がある。
【0211】
なお、上記異層は、導電体542と酸化物530bとの間に形成されることに限られず、例えば、異層が、導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合や、導電体542と酸化物530bとの間、および導電体542と酸化物530cとの間に形成される場合がある。
【0212】
また、酸化物530においてチャネル形成領域にとして機能する金属酸化物は、バンドギャップが2eV以上、好ましくは2.5eV以上のものを用いることが好ましい。このように、バンドギャップの大きい金属酸化物を用いることで、トランジスタのオフ電流を低減することができる。
【0213】
酸化物530は、酸化物530b下に酸化物530aを有することで、酸化物530aよりも下方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物530b上に酸化物530cを有することで、酸化物530cよりも上方に形成された構造物から、酸化物530bへの不純物の拡散を抑制することができる。
【0214】
なお、酸化物530は、各金属原子の原子数比が異なる酸化物により、積層構造を有することが好ましい。具体的には、酸化物530aに用いる金属酸化物において、構成元素中の元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、構成元素中の元素Mの原子数比より、大きいことが好ましい。また、酸化物530aに用いる金属酸化物において、Inに対する元素Mの原子数比が、酸化物530bに用いる金属酸化物における、Inに対する元素Mの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530bに用いる金属酸化物において、元素Mに対するInの原子数比が、酸化物530aに用いる金属酸化物における、元素Mに対するInの原子数比より大きいことが好ましい。また、酸化物530cは、酸化物530aまたは酸化物530bに用いることができる金属酸化物を、用いることができる。
【0215】
また、酸化物530aおよび酸化物530cの伝導帯下端のエネルギーが、酸化物530bの伝導帯下端のエネルギーより高くなることが好ましい。また、言い換えると、酸化物530aおよび酸化物530cの電子親和力が、酸化物530bの電子親和力より小さいことが好ましい。
【0216】
ここで、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部において、伝導帯下端のエネルギー準位はなだらかに変化する。換言すると、酸化物530a、酸化物530b、および酸化物530cの接合部における伝導帯下端のエネルギー準位は、連続的に変化または連続接合するともいうことができる。このようにするためには、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面において形成される混合層の欠陥準位密度を低くするとよい。
【0217】
具体的には、酸化物530aと酸化物530b、酸化物530bと酸化物530cが、酸素以外に共通の元素を有する(主成分とする)ことで、欠陥準位密度が低い混合層を形成することができる。例えば、酸化物530bがIn-Ga-Zn酸化物の場合、酸化物530aおよび酸化物530cとして、In-Ga-Zn酸化物、Ga-Zn酸化物、酸化ガリウムなどを用いるとよい。
【0218】
このとき、キャリアの主たる経路は酸化物530bとなる。酸化物530a、酸化物530cを上述の構成とすることで、酸化物530aと酸化物530bとの界面、および酸化物530bと酸化物530cとの界面における欠陥準位密度を低くすることができる。そのため、界面散乱によるキャリア伝導への影響が小さくなり、トランジスタ500は高いオン電流を得られる。
【0219】
酸化物530b上には、ソース電極、およびドレイン電極として機能する導電体542a、および導電体542bが設けられる。導電体542a、および導電体542bとしては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウム、ルテニウム、イリジウム、ストロンチウム、ランタンから選ばれた金属元素、または上述した金属元素を成分とする合金か、上述した金属元素を組み合わせた合金等を用いることが好ましい。例えば、窒化タンタル、窒化チタン、タングステン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物などを用いることが好ましい。また、窒化タンタル、窒化チタン、チタンとアルミニウムを含む窒化物、タンタルとアルミニウムを含む窒化物、酸化ルテニウム、窒化ルテニウム、ストロンチウムとルテニウムを含む酸化物、ランタンとニッケルを含む酸化物は、酸化しにくい導電性材料、または、酸素を吸収しても導電性を維持する材料であるため、好ましい。更に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があるため好ましい。
【0220】
また、
図23では、導電体542a、および導電体542bを単層構造として示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0221】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0222】
また、
図23Aに示すように、酸化物530の、導電体542a(導電体542b)との界面とその近傍には、低抵抗領域として、領域543a、および領域543bが形成される場合がある。このとき、領域543aはソース領域またはドレイン領域の一方として機能し、領域543bはソース領域またはドレイン領域の他方として機能する。また、領域543aと領域543bに挟まれる領域にチャネル形成領域が形成される。
【0223】
酸化物530と接するように上記導電体542a(導電体542b)を設けることで、領域543a(領域543b)の酸素濃度が低減する場合がある。また、領域543a(領域543b)に導電体542a(導電体542b)に含まれる金属と、酸化物530の成分とを含む金属化合物層が形成される場合がある。このような場合、領域543a(領域543b)のキャリア密度が増加し、領域543a(領域543b)は、低抵抗領域となる。
【0224】
絶縁体544は、導電体542a、および導電体542bを覆うように設けられ、導電体542a、および導電体542bの酸化を抑制する。このとき、絶縁体544は、酸化物530の側面を覆い、絶縁体524と接するように設けられてもよい。
【0225】
絶縁体544として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、ネオジム、ランタンまたは、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。また、絶縁体544として、窒化酸化シリコンまたは窒化シリコンなども用いることができる。
【0226】
特に、絶縁体544として、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウム、およびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウム膜よりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱処理において、結晶化しにくいため好ましい。なお、導電体542a、および導電体542bが耐酸化性を有する材料、または、酸素を吸収しても著しく導電性が低下しない場合、絶縁体544は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0227】
絶縁体544を有することで、絶縁体580に含まれる水、および水素などの不純物が酸化物530c、絶縁体550を介して、酸化物530bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体580が有する過剰酸素により、導電体560が酸化するのを抑制することができる。
【0228】
絶縁体550は、第1のゲート絶縁膜として機能する。絶縁体550は、酸化物530cの内側(上面、および側面)に接して配置することが好ましい。絶縁体550は、上述した絶縁体524と同様に、過剰に酸素を含み、かつ加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。
【0229】
具体的には、過剰酸素を有する酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを用いることができる。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは熱に対し安定であるため好ましい。
【0230】
加熱により酸素が放出される絶縁体を、絶縁体550として、酸化物530cの上面に接して設けることにより、絶縁体550から、酸化物530cを通じて、酸化物530bのチャネル形成領域に効果的に酸素を供給することができる。また、絶縁体524と同様に、絶縁体550中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。絶縁体550の膜厚は、1nm以上20nm以下とするのが好ましい。
【0231】
また、絶縁体550が有する過剰酸素を、効率的に酸化物530へ供給するために、絶縁体550と導電体560との間に金属酸化物を設けてもよい。当該金属酸化物は、絶縁体550から導電体560への酸素拡散を抑制することが好ましい。酸素の拡散を抑制する金属酸化物を設けることで、絶縁体550から導電体560への過剰酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物530へ供給する過剰酸素量の減少を抑制することができる。また、過剰酸素による導電体560の酸化を抑制することができる。当該金属酸化物としては、絶縁体544に用いることができる材料を用いればよい。
【0232】
なお、絶縁体550は、第2のゲート絶縁膜と同様に、積層構造としてもよい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁膜の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合があるため、ゲート絶縁膜として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0233】
第1のゲート電極として機能する導電体560は、
図23Aおよび
図23Bでは2層構造として示しているが、単層構造でもよいし、3層以上の積層構造であってもよい。
【0234】
導電体560aは、水素原子、水素分子、水分子、窒素原子、窒素分子、酸化窒素分子(N2O、NO、NO2など)、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。導電体560aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、絶縁体550に含まれる酸素により、導電体560bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、または酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体560aとして、酸化物530に適用できる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体560bをスパッタリング法で成膜することで、導電体560aの電気抵抗値を低下させて導電体にすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0235】
また、導電体560bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることが好ましい。また、導電体560bは、配線としても機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体560bは積層構造としてもよく、例えば、チタン又は窒化チタンと上記導電性材料との積層構造としてもよい。
【0236】
絶縁体580は、絶縁体544を介して、導電体542a、および導電体542b上に設けられる。絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。例えば、絶縁体580として、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素、および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、または樹脂などを有することが好ましい。特に、酸化シリコン、および酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。特に、酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンは、後の工程で、容易に過剰酸素領域を形成することができるため好ましい。
【0237】
絶縁体580は、過剰酸素領域を有することが好ましい。加熱により酸素が放出される絶縁体580を、酸化物530cと接して設けることで、絶縁体580中の酸素を、酸化物530cを通じて、酸化物530へと効率良く供給することができる。なお、絶縁体580中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0238】
絶縁体580の開口は、導電体542aと導電体542bの間の領域に重畳して形成される。これにより、導電体560は、絶縁体580の開口、および導電体542aと導電体542bに挟まれた領域に、埋め込まれるように形成される。
【0239】
半導体装置を微細化するに当たり、ゲート長を短くすることが求められるが、導電体560の導電性が下がらないようにする必要がある。そのために導電体560の膜厚を大きくすると、導電体560はアスペクト比が高い形状となりうる。本実施の形態では、導電体560を絶縁体580の開口に埋め込むように設けるため、導電体560をアスペクト比の高い形状にしても、工程中に導電体560を倒壊させることなく、形成することができる。
【0240】
絶縁体574は、絶縁体580の上面、導電体560の上面、および絶縁体550の上面に接して設けられることが好ましい。絶縁体574をスパッタリング法で成膜することで、絶縁体550、および絶縁体580へ過剰酸素領域を設けることができる。これにより、当該過剰酸素領域から、酸化物530中に酸素を供給することができる。
【0241】
例えば、絶縁体574として、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0242】
特に、酸化アルミニウムはバリア性が高く、0.5nm以上3.0nm以下の薄膜であっても、水素、および窒素の拡散を抑制することができる。したがって、スパッタリング法で成膜した酸化アルミニウムは、酸素供給源であるとともに、水素などの不純物のバリア膜としての機能も有することができる。
【0243】
また、絶縁体574の上に、層間膜として機能する絶縁体581を設けることが好ましい。絶縁体581は、絶縁体524などと同様に、膜中の水または水素などの不純物濃度が低減されていることが好ましい。
【0244】
また、絶縁体581、絶縁体574、絶縁体580、および絶縁体544に形成された開口に、導電体540a、および導電体540bを配置する。導電体540aおよび導電体540bは、導電体560を挟んで対向して設ける。導電体540aおよび導電体540bは、後述する導電体546、および導電体548と同様の構成である。
【0245】
絶縁体581上には、絶縁体582が設けられている。絶縁体582は、酸素や水素に対してバリア性のある物質を用いることが好ましい。したがって、絶縁体582には、絶縁体514と同様の材料を用いることができる。例えば、絶縁体582には、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタルなどの金属酸化物を用いることが好ましい。
【0246】
特に、酸化アルミニウムは、酸素、およびトランジスタの電気特性の変動要因となる水素、水分などの不純物、の両方に対して膜を透過させない遮断効果が高い。したがって、酸化アルミニウムは、トランジスタの作製工程中および作製後において、水素、水分などの不純物のトランジスタ500への混入を防止することができる。また、トランジスタ500を構成する酸化物からの酸素の放出を抑制することができる。そのため、トランジスタ500に対する保護膜として用いることに適している。
【0247】
また、絶縁体582上には、絶縁体586が設けられている。絶縁体586は、絶縁体320と同様の材料を用いることができる。また、これらの絶縁体に、比較的誘電率が低い材料を適用することで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。例えば、絶縁体586として、酸化シリコン膜や酸化窒化シリコン膜などを用いることができる。
【0248】
また、絶縁体520、絶縁体522、絶縁体524、絶縁体544、絶縁体580、絶縁体574、絶縁体581、絶縁体582、および絶縁体586には、導電体546、および導電体548等が埋め込まれている。
【0249】
導電体546、および導電体548は、容量素子600、トランジスタ500、またはトランジスタ300と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体546、および導電体548は、導電体328、および導電体330と同様の材料を用いて設けることができる。
【0250】
また、トランジスタ500の形成後、トランジスタ500を囲むように開口を形成し、当該開口を覆うように、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体を形成してもよい。上述のバリア性の高い絶縁体でトランジスタ500を包み込むことで、外部から水分、および水素が侵入するのを防止することができる。または、複数のトランジスタ500をまとめて、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体で包み込んでもよい。なお、トランジスタ500を囲むように開口を形成する場合、例えば、絶縁体522または絶縁体514に達する開口を形成し、絶縁体522または絶縁体514に接するように上述のバリア性の高い絶縁体を形成すると、トランジスタ500の作製工程の一部を兼ねられるため、好適である。なお、水素、または水に対するバリア性が高い絶縁体としては、例えば、絶縁体522または絶縁体514と同様の材料を用いればよい。
【0251】
続いて、トランジスタ500の上方には、容量素子600が設けられている。容量素子600は、導電体610と、導電体620と、絶縁体630とを有する。
【0252】
また、導電体546、および導電体548上に、導電体612を設けてもよい。導電体612は、トランジスタ500と接続するプラグ、または配線としての機能を有する。導電体610は、容量素子600の電極としての機能を有する。なお、導電体612、および導電体610は、同時に形成することができる。
【0253】
導電体612、および導電体610には、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、銅、クロム、ネオジム、スカンジウムから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とする金属窒化物膜(窒化タンタル膜、窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いることができる。または、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの導電性材料を適用することもできる。
【0254】
本実施の形態では、導電体612、および導電体610を単層構造で示したが、当該構成に限定されず、2層以上の積層構造でもよい。例えば、バリア性を有する導電体と導電性が高い導電体との間に、バリア性を有する導電体、および導電性が高い導電体に対して密着性が高い導電体を形成してもよい。
【0255】
絶縁体630を介して、導電体610と重畳するように、導電体620を設ける。なお、導電体620は、金属材料、合金材料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングステンを用いることが好ましい。また、導電体などの他の構造と同時に形成する場合は、低抵抗金属材料であるCu(銅)やAl(アルミニウム)等を用いればよい。
【0256】
導電体620、および絶縁体630上には、絶縁体640が設けられている。絶縁体640は、絶縁体320と同様の材料を用いて設けることができる。また、絶縁体640は、その下方の凹凸形状を被覆する平坦化膜として機能してもよい。
【0257】
本構造を用いることで、酸化物半導体を有するトランジスタを用いた半導体装置において、微細化または高集積化を図ることができる。
【0258】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0259】
(実施の形態4)
本実施の形態では、半導体装置の一例として、ICチップ、電子部品、電子機器等について説明する。
【0260】
<電子部品の作製方法例>
図24Aは、電子部品の作製方法例を示すフローチャートである。電子部品は、半導体パッケージ、またはIC用パッケージともいう。この電子部品は、端子取り出し方向や、端子の形状に応じて、複数の規格や名称が存在する。そこで、本実施の形態では、その一例について説明することにする。以下述べる電子部品は、半導体装置を構成する遅延回路が有する各トランジスタを備えた電子部品に相当する。
【0261】
トランジスタで構成される半導体装置は、組み立て工程(後工程)を経て、プリント基板に脱着可能な部品が複数合わさることで完成する。後工程については、
図24Aに示す各工程を経ることで完成させることができる。具体的には、前工程で得られる素子基板が完成(ステップST71)した後、基板の裏面を研削する。この段階で基板を薄膜化して、前工程での基板の反り等を低減し、部品の小型化を図る。次に、基板を複数のチップに分離するダイシング工程を行う(ステップST72)。
【0262】
図24Bは、ダイシング工程が行われる前の半導体ウエハ7100の上面図である。
図24Cは、
図24Bの部分拡大図である。半導体ウエハ7100には、複数の回路領域7102が設けられている。例えば、回路領域7102には、本発明の形態に係る半導体装置が設けられている。
【0263】
複数の回路領域7102は、それぞれが分離領域7104に囲まれている。分離領域7104と重なる位置に分離線(「ダイシングライン」ともいう。)7106が設定される。ダイシング工程ST72では、分離線7106に沿って半導体ウエハ7100切断することで、回路領域7102を含むチップ7110を半導体ウエハ7100から切り出す。
図24Dにチップ7110の拡大図を示す。
【0264】
分離領域7104に導電層や半導体層を設けてもよい。分離領域7104に導電層や半導体層を設けることで、ダイシング工程時に生じうるESDを緩和し、ダイシング工程に起因する歩留まりの低下を防ぐことができる。また、一般にダイシング工程は、基板の冷却、削りくずの除去、帯電防止などを目的として、炭酸ガスなどを溶解させて比抵抗を下げた純水を切削部に供給しながら行なう。分離領域7104に導電層や半導体層を設けることで、当該純水の使用量を削減することができる。よって、半導体装置の生産コストを低減することができる。また、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0265】
ステップST72を行った後、分離したチップを個々にピックアップしてリードフレーム上に搭載し接合する、ダイボンディング工程を行う(ステップST73)。ダイボンディング工程におけるチップとリードフレームとの接着方法は製品に適した方法を選択すればよい。例えば、接着は樹脂やテープによって行えばよい。ダイボンディング工程は、インターポーザ上にチップを搭載し接合してもよい。ワイヤーボンディング工程で、リードフレームのリードとチップ上の電極とを金属の細線(ワイヤー)で電気的に接続する(ステップST74)。金属の細線には、銀線や金線を用いることができる。ワイヤーボンディングは、ボールボンディングとウェッジボンディングの何れでもよい。
【0266】
ワイヤーボンディングされたチップは、エポキシ樹脂等で封止される、モールド工程が施される(ステップST75)。モールド工程を行うことで電子部品の内部が樹脂で充填され、機械的な外力による内蔵される回路部やワイヤーに対するダメージを低減することができ、また水分や埃による特性の劣化を低減することができる。リードフレームのリードをメッキ処理する。そしてリードを切断及び成形加工する(ステップST76)。めっき処理によりリードの錆を防止し、後にプリント基板に実装する際のはんだ付けをより確実に行うことができる。パッケージの表面に印字処理(マーキング)を施す(ステップST77)。検査工程(ステップST78)を経て、電子部品が完成する(ステップST79)。
【0267】
完成した電子部品の斜視模式図を
図24Eに示す。
図24Eでは、電子部品の一例として、QFP(Quad Flat Package)の斜視模式図を示している。
図24Eに示すように、電子部品7000は、リード7001及びチップ7110を有する。
【0268】
電子部品7000は、例えばプリント基板7002に実装される。このような電子部品7000が複数組み合わされて、それぞれがプリント基板7002上で電気的に接続されることで電子機器に搭載することができる。完成した回路基板7004は、電子機器等の内部に設けられる。
【0269】
電子部品7000は、デジタル信号処理、ソフトウェア無線、アビオニクス(通信機器、航法システム、自動操縦装置、飛行管理システム等の航空に関する電子機器)、ASICのプロトタイピング、医療用画像処理、音声認識、暗号、バイオインフォマティクス(生物情報科学)、機械装置のエミュレータ、および電波天文学における電波望遠鏡等、幅広い分野の電子機器の電子部品(ICチップ)に適用することが可能である。このような電子機器としては、カメラ(ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ等)、表示装置、パーソナルコンピュータ(PC)、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯型情報端末(スマートフォン、タブレット型情報端末など)、電子書籍端末、ウエアラブル型情報端末(時計型、ヘッドマウント型、ゴーグル型、眼鏡型、腕章型、ブレスレット型、ネックレス型等)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機、家庭用電化製品などが挙げられる。
【0270】
<電子機器への適用例>
次いで、移動体、構造体などの電子機器あるいは筐体に、上述の電子部品を適用する場合について説明する。
【0271】
図25Aは、HMD910(HMD:Head Mounted Display)を図示している。HMD910は、筐体911の一部に開口部912が設けられている。また、HMD910は、セパレータ913、操作スイッチ914、外部記憶手段915、スピーカ916、音響外部出力端子917、固定具920、表示手段921(表示手段921Rおよび表示手段921L)、音源検知装置922(音源検知装置922[1]および音源検知装置922[2])を有する。
【0272】
音源検知装置922は、上記実施の形態に示した音源検知装置110を用いることができる。また、HMD910には、音源検知装置922などの機能を有する上述の電子部品が設けられている。
【0273】
HMD910の使用者は、HMD910を頭部に装着することで、表示手段921に表示される映像を鑑賞することができる。HMD910に音源検知装置922を設けることにより、鑑賞中に周囲の環境変化を感知することができる。また、必要に応じて警告音を発することができる。また、必要に応じて表示手段921に警告を表示することができる。HMD910に音源検知装置922を設けることにより、使用者は安心して映像鑑賞に集中することができるため、より高い没入感を得ることが出来る。
【0274】
図25Bは、スクーター950を図示している。スクーター950は、サイドミラー951、二次電池952、方向指示灯953、音源検知装置955を有する。二次電池952は、座席下収納954に収納されている。
【0275】
音源検知装置955は、上記実施の形態に示した音源検知装置110を用いることができる。また、スクーター950には、音源検知装置955などの機能を有する上述の電子部品が設けられている。スクーター950に音源検知装置955を設けることで、走行安全性を高めることができる。
【0276】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0277】
(実施の形態5)
本実施の形態では、OSトランジスタを用いることができる市場イメージについて説明する。
【0278】
<市場イメージ>
まず、OSトランジスタを用いることができる市場イメージを
図26に示す。
図26において、領域701は、OSトランジスタを用いたディスプレイ(Display)に応用可能な製品領域(OS Display)を表し、領域702は、OSトランジスタを用いたLSI(Large Scale Integration)をアナログ(analog)処理に応用可能な製品領域(OS LSI analog)を表し、領域703は、OSトランジスタを用いたLSIをデジタル(digital)処理に応用可能な製品領域(OS LSI digital)を表す。OSトランジスタは、
図26に示す領域701、領域702、および領域703の3つの領域、別言すると3つの大きな市場に好適に用いることができる。
【0279】
また、
図26において、領域704は、領域701と、領域702とが重なった領域を表し、領域705は、領域702と、領域703とが重なった領域を表し、領域706は、領域701と、領域703とが重なった領域を表し、領域707は、領域701と、領域702と、領域703とが、それぞれ重なった領域を表す。
【0280】
OS Displayでは、例えば、Bottom Gate型のOS FET(BG OSFET)、Top Gate型のOS FET(TG OS FET)などのFET構造を好適に用いることができる。なお、Bottom Gate型のOS FETには、チャネルエッチ型のFET、およびチャネル保護型のFETも含まれる。また、Top
Gate型のOS FETには、TGSA(Top Gate Self-Aligned)型のFETも含まれる。
【0281】
また、OS LSI analogおよびOS LSI digitalでは、例えば、Gate Last型のOS FET(GL OS FET)を好適に用いることができる。
【0282】
なお、上述のトランジスタは、それぞれ、ゲート電極が1つのSingle Gate構造のトランジスタ、ゲート電極が2つのDual Gate構造のトランジスタ、またはゲート電極が3つ以上のトランジスタを含む。また、Dual Gate構造のトランジスタの中でも特に、S-channel(surrounded channel)構造のトランジスタを用いると好適である。
【0283】
なお、本明細書等において、S-channel構造のトランジスタとは、一対のゲート電極の一方および他方の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を表す。また、本明細書等において、surrounded channel(S-channel)構造は、ソース電極およびドレイン電極として機能する導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺が、チャネル形成領域と同じくI型であるといった特徴を有する。また、導電体542aおよび導電体542bに接する酸化物530の側面及び周辺は、絶縁体544と接しているため、チャネル形成領域と同様にI型となりうる。なお、本明細書等において、I型とは先に記載の、高純度真性と同様として扱うことができる。また、本明細書等で開示するS-channel構造は、Fin型構造およびプレーナ型構造とは異なる。S-channel構造を採用することで、短チャネル効果に対する耐性を高める、別言すると短チャネル効果が発生し難いトランジスタとすることができる。
【0284】
また、OS Display(領域701)に含まれる製品としては、LCD(liquid crystal display)、EL(Electro Luminescence)、およびLED(Light Emitting Diode)を表示デバイスに有する製品が挙げられる。または、上記表示デバイスと、Q-Dot(Quantum
Dot)とを組み合わせることも好適である。
【0285】
なお、本実施の形態において、ELとは、有機EL、および無機ELを含む。また、本実施の形態において、LEDとは、マイクロLED、ミニLED、およびマクロLEDを含む。なお、本明細書等において、チップの面積が10000μm2以下の発光ダイオードをマイクロLED、チップの面積が10000μm2より大きく1mm2以下の発光ダイオードをミニLED、チップの面積が1mm2より大きい発光ダイオードをマクロLEDと記す場合がある。
【0286】
また、OS LSI analog(領域702)に含まれる製品としては、様々な周波数の音域(例えば、周波数が20Hz~20kHzの可聴音、または20kHz以上の超音波など)に対応する音源定位デバイス、あるいはバッテリ制御用デバイス(バッテリ制御用IC、バッテリ保護用IC、またはバッテリマネジメントシステム)などが挙げられる。
【0287】
また、OS LSI digital(領域703)に含まれる製品としては、メモリーデバイス、CPU(Central Processing Unit)デバイス、GPU(Graphics Processing Unit)デバイス、FPGA(field-programmable gate array)デバイス、パワーデバイス、OS LSIと、Si LSIとを積層または混在させたハイブリッドデバイス、発光デバイスなどが挙げられる。
【0288】
また、領域704に含まれる製品としては、表示領域に赤外線センサ、または近赤外線センサを有する表示デバイス、あるいはOS FETを有するセンサ付き信号処理デバイス、または埋め込み型バイオセンサデバイスなどが挙げられる。また、領域705に含まれる製品としては、A/D(Analog to Digital)変換回路などを有する処理回路、あるいは、当該処理回路を有するAI(Artificial Intelligence)デバイスなどが挙げられる。また、領域706に含まれる製品としては、Pixel AI技術が適用された表示デバイスなどが挙げられる。なお、本明細書等において、Pixel AI技術とは、ディスプレイの画素回路に搭載されたOS FETなどにより構成されるメモリを活用する技術をいう。
【0289】
また、領域707に含まれる製品としては、上記領域701乃至領域706に含まれる、あらゆる製品を組み合わせた複合的な製品が挙げられる。
【0290】
以上のように、本発明の一態様の半導体装置は、
図26に示すように、あらゆる製品領域に適用することが可能である。すなわち、本発明の一態様の半導体装置は、多くの市場に適用することが可能である。
【0291】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【符号の説明】
【0292】
100:車両、101:トランジスタ、102:トランジスタ、103:トランジスタ、104:トランジスタ、108:エアバッグ、110:音源検知装置、111:マイクロホンアレイ、112:遅延回路群、113:信号処理回路、114:ADC、115:デジタル演算回路、116:マイクロホン、117:遅延回路、120:制御装置、121:記憶装置、122:演算装置、123:ニューラルネットワーク、124:ニューロン、130:信号出力装置、131:エアバッグ装置、132:エアバッグ装置、133a:エアバッグ装置、133b:エアバッグ装置、134a:エアバッグ装置、134b:エアバッグ装置、140:センサ、151:ステアリング、152:ダッシュボード、200:車両警報装置