(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】レーザ装置、及び、レーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/064 20140101AFI20231214BHJP
B23K 26/53 20140101ALI20231214BHJP
H01L 21/301 20060101ALI20231214BHJP
H01S 3/067 20060101ALN20231214BHJP
【FI】
B23K26/064 K
B23K26/53
H01L21/78 B
H01S3/067
(21)【出願番号】P 2020553978
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042584
(87)【国際公開番号】W WO2020090889
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018204114
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】海老原 次郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-167433(JP,A)
【文献】特開2013-055084(JP,A)
【文献】特開2016-168606(JP,A)
【文献】特開2017-168772(JP,A)
【文献】特開2012-254478(JP,A)
【文献】特開2017-224678(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/301
H01S 3/067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出力する光源ユニットと、
前記光源ユニットから出力された前記レーザ光を増幅する増幅部を有する増幅ユニットと、
前記増幅部により増幅された前記レーザ光を外部に出力する出力ユニットと、
外部から前記増幅部への戻り光を遮断するための光アイソレータと、
を備え、
前記出力ユニットは、前記光源ユニット及び前記増幅ユニットと別体に構成され、
前記光源ユニットと前記増幅ユニットと前記出力ユニットとは、複数の光ファイバを含む光伝送路によって互いに光学的に接続されており、
前記光アイソレータは、前記増幅部と前記出力ユニットとの間において、前記光伝送路に設けられて
おり、
前記光アイソレータには、前記複数の光ファイバのうちの一の光ファイバと、前記複数の光ファイバのうちの別の光ファイバと、が接続されており、
前記光アイソレータは、前記増幅部によって増幅された前記レーザ光を前記一の光ファイバを介して前記増幅部から入力すると共に、前記別の光ファイバを介して前記出力ユニットに向けて出力する、
レーザ装置。
【請求項2】
前記光アイソレータは、当該光アイソレータ内の空間を伝搬する前記レーザ光の一部を分岐する光分岐部と、前記光分岐部により分岐された分岐光を外部に出力するための出力部と、を有する、
請求項1に記載のレーザ装置。
【請求項3】
前記増幅ユニットは、前記増幅部を励起するための励起光を出力する励起光源と、前記増幅部よりも前記出力ユニット側において前記光伝送路に設けられ、前記励起光を前記光伝送路に結合するための光結合部と、を有し、
前記光アイソレータは、前記光結合部と前記出力ユニットとの間において前記光伝送路に設けられている、
請求項1又は2に記載のレーザ装置。
【請求項4】
対象物にレーザ光を照射することによって前記対象物に改質領域を形成するためのレーザ加工装置であって、
請求項1~3のいずれか一項に記載のレーザ装置と、
前記対象物を支持する支持部と、
前記出力ユニットが取り付けられると共に前記支持部に臨むように配置され、前記レーザ装置からの前記レーザ光を前記対象物に照射するためのレーザ加工ヘッドと、
前記レーザ加工ヘッドを移動させる移動機構と、
を備える、
レーザ加工装置。
【請求項5】
前記レーザ装置及び前記レーザ加工ヘッドを複数組備える、
請求項4に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ装置、及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを保持する保持機構と、保持機構に保持されたワークにレーザ光を照射するレーザ照射機構と、を備えるレーザ加工装置が記載されている。特許文献1に記載のレーザ加工装置では、集光レンズを有するレーザ照射機構が基台に対して固定されており、集光レンズの光軸に垂直な方向に沿ったワークの移動が保持機構によって実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなレーザ加工装置にあっては、集光レンズを介してワークに照射されたレーザ光の反射光の一部が、集光レンズを介してレーザ照射機構側に戻されるおそれがある。そのような戻り光がレーザ発振器等へ至ることを防止するためには、レーザ加工装置に光アイソレータを設けることが考えられる。その場合、レーザ光の損失抑制の観点からは、レーザ照射機構といったレーザ出力部の最終段、すなわち、集光レンズよりも後段側(ワーク側)に光アイソレータを設けることができるこれにより、ワークからの反射光の戻りが抑制される。
【0005】
一方で、レーザ出力部に光アイソレータを設置すると、レーザ出力部が大型化する。上記のレーザ加工装置にあってはレーザ出力部が固定されているが、レーザ出力部を移動させる要求があり、この場合にはレーザ出力部の大型化を避けることが必要となる。
【0006】
そこで、本開示は、レーザ出力部の大型化を避けつつ外部からの戻り光の影響を抑制可能なレーザ装置、及び、レーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係るレーザ装置は、レーザ光を出力する光源ユニットと、光源ユニットから出力されたレーザ光を増幅する増幅部を有する増幅ユニットと、増幅部により増幅されたレーザ光を外部に出力する出力ユニットと、外部から増幅部への戻り光を遮断するための光アイソレータと、を備え、出力ユニットは、光源ユニット及び増幅ユニットと別体に構成され、光源ユニットと増幅ユニットと出力ユニットとは、複数の光ファイバを含む光伝送路によって互いに光学的に接続されており、光アイソレータは、増幅部と出力ユニットとの間において、光伝送路に設けられている。
【0008】
このレーザ装置においては、レーザ光を外部に出力する出力ユニットが、光源ユニット及び増幅ユニットと別体に構成されている。それぞれのユニットは、光ファイバを含む光伝送路を介して光学的に接続されている。そして、外部からの戻り光を遮断するための光アイソレータが、増幅部と出力ユニットとの間において当該光伝送路に設けられている。したがって、外部からの戻り光の進行は、増幅部に至る前に光アイソレータによって阻止される。よって、外部からの戻り光の増幅部への影響を抑制可能である。特に、光アイソレータは、上記のとおり出力ユニットよりも増幅部側に設けられている。よって、出力ユニット(レーザ出力部)の大型化が避けられる。
【0009】
ところで、光アイソレータを通過したレーザ光のビームプロファイルは、レーザ光の出力値に応じて変化する場合がある。一例として、レーザ光の出力値が大きくなると、出力値が小さい場合と比較してレーザ光のビーム径が小さくなる場合がある。これは、光アイソレータを構成する光学素子での熱レンズ効果が一因と考えられる。このため、光アイソレータがレーザ出力部の最終段に設けられていると、レーザ光の出力値に応じて異なるビームプロファイルのレーザ光が外部に出力されることとなるおそれがある。これに対して、本開示に係るレーザ装置は、このような問題を解決し得る。
【0010】
すなわち、本開示に係るレーザ装置においては、光アイソレータには、複数の光ファイバのうちの一の光ファイバと、複数の光ファイバのうちの別の光ファイバと、が接続されており、光アイソレータは、増幅部によって増幅されたレーザ光を一の光ファイバを介して増幅部から入力すると共に、別の光ファイバを介して出力ユニットに向けて出力するものとすることができる。この場合、一の光ファイバによって伝送されたレーザ光は、光アイソレータを通過した後に、出力ユニットに向けて別の光ファイバによってさらに伝送される。このように、光アイソレータを通過したレーザ光が光ファイバを再度伝搬することにより、ビームプロファイルの変化が抑制される。よって、レーザ光の出力値に応じて異なるビームプロファイルのレーザ光が外部に出力されることが避けられる。さらに、この効果によって、ビームプロファイルの機差が小さくなる。
【0011】
また、本開示に係るレーザ装置においては、光アイソレータは、当該光アイソレータ内の空間を伝搬するレーザ光の一部を分岐する光分岐部と、光分岐部により分岐された分岐光を外部に出力するための出力部と、を有してもよい。この場合、出力部を介してレーザ光の出力をモニタ可能となる。特に、この分岐部は、光アイソレータ内の空間を伝搬するレーザ光を分岐する。よって、例えば、光ファイバの融着部分や、光ファイバに設けられた光カプラ等を用いてレーザ光の出力をモニタする場合と比較して、光ファイバ内で生じる高次モードの光の影響が抑制され、高精度のモニタが可能である。
【0012】
さらに、本開示に係るレーザ装置においては、増幅ユニットは、増幅部を励起するための励起光を出力する励起光源と、増幅部よりも出力ユニット側において光伝送路に設けられ、励起光を光伝送路に結合するための光結合部と、を有し、光アイソレータは、光結合部と出力ユニットとの間において光伝送路に設けられていてもよい。このように、増幅部のための励起光の結合部が、増幅部よりも出力ユニット側に設けられる場合には、当該結合部と出力ユニットとの間に光アイソレータを設けることができる。
【0013】
ここで、本開示に係るレーザ加工装置は、対象物にレーザ光を照射することによって対象物に改質領域を形成するためのレーザ加工装置であって、上記のいずれかに記載のレーザ装置と、対象物を支持する支持部と、出力ユニットが取り付けられると共に支持部に臨むように配置され、レーザ装置からのレーザ光を対象物に照射するためのレーザ加工ヘッドと、レーザ加工ヘッドを移動させる移動機構と、を備える。
【0014】
このレーザ加工装置によれば、上述した効果と同様の効果を得ることができる。特に、上述したように、出力ユニットの大型化が避けられるため、出力ユニットが取り付けられたレーザ加工ヘッドの移動が容易となる。
【0015】
また、レーザ加工装置においては、レーザ装置及びレーザ加工ヘッドを複数組備えてもよい。このように、複数のレーザ加工ヘッドを移動させて用いる場合には、出力ユニットの大型化が避けられる結果、レーザ加工ヘッド同士を近接させることができる。このため、出力ユニットが大型化される場合と比較して、複数のレーザ加工ヘッドを同時に用いて加工可能なエリアが拡大される。
【発明の効果】
【0016】
本開示によれば、レーザ出力部の大型化を避けつつ外部からの戻り光の影響を抑制可能なレーザ装置、及び、レーザ加工装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態のレーザ加工装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示されるレーザ加工装置の一部分の正面図である。
【
図3】
図1に示されるレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドの正面図である。
【
図4】
図3に示されるレーザ加工ヘッドの側面図である。
【
図5】
図3に示されるレーザ加工ヘッドの光学系の構成図である。
【
図6】一実施形態に係るレーザ装置を示す模式図である。
【
図8】比較例に係るレーザ装置における出力光のビームプロファイルを示す図である。
【
図9】
図6に示されたレーザ装置における出力光のビームプロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、一実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を主略する場合がある。
【0019】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、複数の移動機構5,6と、支持部7と、複数の(ここでは1対)レーザ加工ヘッド10A,10Bと、光源部8と、制御部9と、を備えている。以下、第1方向をX方向、第1方向に垂直な第2方向をY方向、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向をZ方向という。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0020】
移動機構5は、固定部51と、移動部53と、取付部55と、を有している。固定部51は、装置フレーム1aに取り付けられている。移動部53は、固定部51に設けられたレールに取り付けられており、Y方向に沿って移動することができる。取付部55は、移動部53に設けられたレールに取り付けられており、X方向に沿って移動することができる。
【0021】
移動機構6は、固定部61と、1対の移動部(第1移動部、第2移動部)63,64と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)65,66と、を有している。固定部61は、装置フレーム1aに取り付けられている。1対の移動部63,64のそれぞれは、固定部61に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。取付部65は、移動部63に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。取付部66は、移動部64に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。つまり、装置フレーム1aに対しては、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動することができる。
【0022】
支持部7は、移動機構5の取付部55に設けられた回転軸に取り付けられており、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。つまり、支持部7は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動することができ、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。支持部7は、X方向及びY方向に沿って対象物100を支持する。対象物100は、例えば、ウェハである。
【0023】
図1及び
図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構6の取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で(支持部7に臨むように配置され)、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L1を照射するためのものである。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構6の取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で(支持部7に臨むように配置され)、支持部7に支持された対象物100にレーザ光L2を照射するためのものである。
【0024】
光源部8は、1対の光源81,82を有している。光源81は、レーザ光L1を出力する。レーザ光L1は、光源81の出射部81aから出射され、光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Aに導光される。光源82は、レーザ光L2を出力する。レーザ光L2は、光源82の出射部82aから出射され、別の光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Bに導光される。
【0025】
制御部9は、レーザ加工装置1の各部(複数の移動機構5,6、1対のレーザ加工ヘッド10A,10B、及び光源部8等)を制御する。制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
【0026】
以上のように構成されたレーザ加工装置1による加工の一例について説明する。当該加工の一例は、ウェハである対象物100を複数のチップに切断するために、格子状に設定された複数のラインのそれぞれに沿って対象物100の内部に改質領域を形成する例である。すなわち、レーザ加工装置1は、一例として、対象物100にレーザ光L1,L2を照射することによって対象物100に改質領域を形成するためのものである。
【0027】
まず、対象物100を支持している支持部7がZ方向において1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと対向するように、移動機構5が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って支持部7を移動させる。続いて、対象物100において一方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0028】
続いて、一方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、一方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0029】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、一方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し(レーザ光L1がスキャンされ)且つ一方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動する(レーザ光L2がスキャンされる)ように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0030】
続いて、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0031】
続いて、他方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、他方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0032】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、他方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し(レーザ光L1がスキャンされ)且つ他方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動する(レーザ光L2がスキャンされる)ように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0033】
なお、上述した加工の一例では、光源81は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L1を出力し、光源82は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L2を出力する。そのようなレーザ光が対象物100の内部に集光されると、レーザ光の集光点に対応する部分においてレーザ光が特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0034】
パルス発振方式によって出力されたレーザ光が対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインに沿ってレーザ光の集光点が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインに沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光の照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光の集光点の相対的な移動速度及びレーザ光の繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
[レーザ加工ヘッドの構成]
【0035】
図3及び
図4に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、を備えている。
【0036】
筐体11は、第1壁部21及び第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24、並びに、第5壁部25及び第6壁部26を有している。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において互いに対向している。第3壁部23及び第4壁部24は、Y方向において互いに対向している。第5壁部25及び第6壁部26は、Z方向において互いに対向している。
【0037】
第3壁部23と第4壁部24との距離は、第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さい。第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも小さい。なお、第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離と等しくてもよいし、或いは、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも大きくてもよい。
【0038】
レーザ加工ヘッド10Aでは、第1壁部21は、移動機構6の固定部61側に位置しており、第2壁部22は、固定部61とは反対側に位置している。第3壁部23は、移動機構6の取付部65側に位置しており、第4壁部24は、取付部65とは反対側であってレーザ加工ヘッド10B側に位置している(
図2参照)。すなわち、第4壁部24は、レーザ加工ヘッド10Bの筐体(第2筐体)にY方向に沿って対向する対向壁部である。第5壁部25は、支持部7とは反対側に位置しており、第6壁部26は、支持部7側に位置している。
【0039】
筐体11は、第3壁部23が移動機構6の取付部65側に配置された状態で筐体11が取付部65に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部65は、ベースプレート65aと、取付プレート65bと、を有している。ベースプレート65aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている(
図2参照)。取付プレート65bは、ベースプレート65aにおけるレーザ加工ヘッド10B側の端部に立設されている(
図2参照)。筐体11は、第3壁部23が取付プレート65bに接触した状態で、台座27を介してボルト28が取付プレート65bに螺合されることで、取付部65に取り付けられている。台座27は、第1壁部21及び第2壁部22のそれぞれに設けられている。筐体11は、取付部65に対して着脱可能である。
【0040】
入射部12は、第5壁部25に取り付けられている。入射部12は、筐体11内にレーザ光L1を入射させる。入射部12は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における入射部12と第2壁部22との距離は、X方向における入射部12と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における入射部12と第4壁部24との距離は、X方向における入射部12と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0041】
入射部12は、光ファイバ2の接続端部2aが接続可能となるように構成されている。光ファイバ2の接続端部2aには、ファイバの出射端から出射されたレーザ光L1をコリメートするコリメータレンズが設けられており、戻り光を抑制するアイソレータが設けられていない。当該アイソレータは、接続端部2aよりも光源81側であるファイバの途中に設けられている。これにより、接続端部2aの小型化、延いては、入射部12の小型化が図られている。接続端部2aは、後述するレーザ装置200の出力ユニット260である。
【0042】
調整部13は、筐体11内に配置されている。調整部13は、入射部12から入射したレーザ光L1を調整する。調整部13の詳細については後述する。
【0043】
集光部14は、第6壁部26に配置されている。具体的には、集光部14は、第6壁部26に形成された孔26aに挿通された状態で、第6壁部26に配置されている。集光部14は、調整部13によって調整されたレーザ光L1を集光しつつ筐体11外に出射させる。集光部14は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。すなわち、集光部14は、Z方向からみて、筐体11における第4壁部(対向壁部)24側に偏って配置されている。つまり、X方向における集光部14と第2壁部22との距離は、X方向における集光部14と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における集光部14と第4壁部24との距離は、X方向における集光部14と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0044】
図5に示されるように、調整部13は、アッテネータ31と、ビームエキスパンダ32と、ミラー33と、を有している。入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33は、Z方向に沿って延在する直線(第1直線)A1上に配置されている。アッテネータ31及びビームエキスパンダ32は、直線A1上において、入射部12とミラー33との間に配置されている。アッテネータ31は、入射部12から入射したレーザ光L1の出力を調整する。ビームエキスパンダ32は、アッテネータ31で出力が調整されたレーザ光L1の径を拡大する。ミラー33は、ビームエキスパンダ32で径が拡大されたレーザ光L1を反射する。
【0045】
調整部13は、反射型空間光変調器34と、結像光学系35と、を更に有している。調整部13の反射型空間光変調器34及び結像光学系35、並びに、集光部14は、Z方向に沿って延在する直線(第2直線)A2上に配置されている。反射型空間光変調器34は、ミラー33で反射されたレーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。結像光学系35は、反射型空間光変調器34の反射面34aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系35は、3つ以上のレンズによって構成されている。
【0046】
直線A1及び直線A2は、Y方向に垂直な平面上に位置している。直線A1は、直線A2に対して第2壁部22側(一方の壁部側)に位置している。レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1は、入射部12から筐体11内に入射して直線A1上を進行し、ミラー33及び反射型空間光変調器34で順次に反射された後、直線A2上を進行して集光部14から筐体11外に出射する。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。また、アッテネータ31は、ミラー33と反射型空間光変調器34との間に配置されていてもよい。また、調整部13は、他の光学部品(例えば、ビームエキスパンダ32の前に配置されるステアリングミラー等)を有していてもよい。
【0047】
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を更に備えている。
【0048】
ダイクロイックミラー15は、直線A2上において、結像光学系35と集光部14との間に配置されている。つまり、ダイクロイックミラー15は、筐体11内において、調整部13と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光L1を透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型とすることができる。
【0049】
測定部16は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。測定部16は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。測定部16は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)と集光部14との距離を測定するための測定光L10を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された測定光L10を検出する。つまり、測定部16から出力された測定光L10は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14を介して測定部16で検出される。
【0050】
より具体的には、測定部16から出力された測定光L10は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられたビームスプリッタ20及びダイクロイックミラー15で順次に反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15及びビームスプリッタ20で順次に反射され、測定部16に入射し、測定部16で検出される。
【0051】
観察部17は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。観察部17は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。観察部17は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)を観察するための観察光L20を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された観察光L20を検出する。つまり、観察部17から出力された観察光L20は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14を介して観察部17で検出される。
【0052】
より具体的には、観察部17から出力された観察光L20は、ビームスプリッタ20を透過してダイクロイックミラー15で反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15で反射され、ビームスプリッタ20を透過して観察部17に入射し、観察部17で検出される。なお、レーザ光L1、測定光L10及び観察光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
【0053】
駆動部18は、第4壁部24側において光学ベース29に取り付けられている。駆動部18は、例えば圧電素子の駆動力によって、第6壁部26に配置された集光部14をZ方向に沿って移動させる。
【0054】
回路部19は、筐体11内において、光学ベース29に対して第3壁部23側に配置されている。つまり、回路部19は、筐体11内において、調整部13、測定部16及び観察部17に対して第3壁部23側に配置されている。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測定部16から出力された信号、及び反射型空間光変調器34に入力する信号を処理する。回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。一例として、回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて、対象物100の表面と集光部14との距離が一定に維持されるように(すなわち、対象物100の表面とレーザ光L1の集光点との距離が一定に維持されるように)、駆動部18を制御する。なお、筐体11には、回路部19を制御部9(
図1参照)等に電気的に接続するための配線が接続されるコネクタ(図示省略)が設けられている。
【0055】
レーザ加工ヘッド10Bは、レーザ加工ヘッド10Aと同様に、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を備えている。ただし、一例として、レーザ加工ヘッド10Bの各構成は、
図2に示されるように、1対の取付部65,66間の中点を通り且つY方向に垂直な仮想平面に関して、レーザ加工ヘッド10Aの各構成と面対称の関係を有するように、配置されている。
【0056】
例えば、レーザ加工ヘッド10Aの筐体11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10B側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。これに対し、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10A側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。すなわち、レーザ加工ヘッド10Bにおいても、第4壁部24は、レーザ加工ヘッド10Aの筐体にY方向に沿って対向する対向壁部である。またレーザ加工ヘッド10Bにおいても、集光部14は、Z方向からみて、その筐体11における第4壁部(対向壁部)24側に偏って配置されている。
【0057】
レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付部66側に配置された状態で筐体11が取付部66に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部66は、ベースプレート66aと、取付プレート66bと、を有している。ベースプレート66aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている。取付プレート66bは、ベースプレート66aにおけるレーザ加工ヘッド10A側の端部に立設されている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付プレート66bに接触した状態で、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、取付部66に対して着脱可能である。
[レーザ装置の構成]
【0058】
引き続いて、本実施形態に係るレーザ装置について説明する。
図6は、一実施形態に係るレーザ装置を示す模式図である。
図6に示されるように、レーザ装置200は、光源ユニット210、増幅ユニット220、増幅ユニット240、光アイソレータ250、及び、出力ユニット260(接続端部2a)を備えている。光源ユニット210、増幅ユニット220,240、及び、光アイソレータ250は、上述した光源部8の光源81及び光源82のそれぞれに対応している。したがって、上述したレーザ加工装置1は、このレーザ装置200を複数(ここでは一対)備えている。すなわち、レーザ加工装置1は、レーザ装置200及びレーザ加工ヘッド(レーザ加工ヘッド10A,10B)を複数組(ここでは2組)備えている。なお、
図6,7においては、光源81に対応するレーザ装置200を図示する。
【0059】
光源ユニット210は、種光源211を有している。種光源211は、例えばレーザダイオードである。種光源211は、パルスジェネレータによって駆動され、種光であるレーザ光L1をパルス発振する。種光源211から出射されたレーザ光L1は、例えば光ファイバにより構成された光伝送路P1に結合される。レーザ光L1は、光伝送路P1を伝搬して光源ユニット210から出力される。
【0060】
増幅ユニット220は、例えばプリアンプ部である。増幅ユニット220は、光アイソレータ221、クラッドモードストリッパ222、増幅部223、光カプラ224,228、光コンバイナ225、励起光源226、バンドパスフィルタ229、及び、光アイソレータ230を有している。増幅ユニット220においては、複数の光ファイバを含むと共に光伝送路P1と光学的に接続された光伝送路P2が構成されており、上記の各光学要素が光伝送路P2に配置されている。すなわち、光源ユニット210と増幅ユニット220とは、光伝送路P1,P2によって互いに光学的に接続されている。レーザ光L1は、光伝送路P2を伝播しつつ増幅された後に増幅ユニット220から出力される。
【0061】
増幅部223は、例えばファイバレーザである。励起光源226は、例えばレーザダイオードであって、増幅部223を励起するための励起光を出力する。光コンバイナ225は、増幅部223の後段において光伝送路P2に設けられており、励起光源226から出力された励起光を光伝送路P2に結合する。これにより、励起光源226から出力された励起光が増幅部223に入力される。すなわち、増幅ユニット220においては、励起光がレーザ光L1の進行方向とは逆方向に進行する後方励起の構成が採用されている。これにより、増幅部223は、光伝送路P1,P2を介して光源ユニット210からのレーザ光L1を入力し、増幅して出力する。
【0062】
光アイソレータ221は、光源ユニット210と増幅部223との間において光伝送路P2に設けられており、種光源211への戻り光を遮断する。クラッドモードストリッパ222は、増幅部223の前段において光伝送路P2に設けられており、増幅部223で吸収されなかった励起光を除去する。光カプラ224は、光アイソレータ221とクラッドモードストリッパ222との間において光伝送路P2に設けられている。光カプラ224には、光ファイバを介してフォトダイオード等の検出器が接続されている。これにより、種光であるレーザ光L1を検出器によって検出してモニタ可能となる。
【0063】
光アイソレータ230は、光コンバイナ225の後段において光伝送路P2に設けられており、増幅部223への戻り光を遮断する。バンドパスフィルタ229は、増幅部223で発生したASE(Amplified Spontaneous Emission)光を除去する。光カプラ228は、バンドパスフィルタ229の後段において光伝送路P2に設けられている。光カプラ224には、光ファイバを介してフォトダイオード等の検出器が接続されている。これにより、増幅部223で増幅されたレーザ光L1を検出器によって検出してモニタ可能となる。
【0064】
増幅ユニット240は、例えばパワーアンプ部であり、レーザ装置200のうちの最も出力ユニット260側に設けられた増幅手段である。増幅ユニット240は、クラッドモードストリッパ241、増幅部242、複数の励起光源243、光コンバイナ(光結合部)244、及び、検出器245を有している。増幅ユニット240においては、複数の光ファイバを含む光伝送路P2が増幅ユニット220から続いて構成されており、上記の各光学要素が光伝送路P2に配置されている。すなわち、光源ユニット210及び増幅ユニット220と増幅ユニット240とは、光伝送路P1,P2によって互いに光学的に接続されている。増幅ユニット240は、光伝送路P2を介して増幅ユニット220からのレーザ光L1を入力し、増幅して出力する。
【0065】
増幅部242は、例えばファイバレーザである。励起光源243は、例えばレーザダイオードであり、増幅部242を励起するための励起光を出力する。光コンバイナ244は、増幅部242の後段において光伝送路P2に設けられており、励起光源243から出力された励起光を光伝送路P2に結合する。これにより、励起光源243から出力された励起光が増幅部242に入力される。すなわち、増幅ユニット240においても、励起光がレーザ光L1の進行方向とは逆方向に進行する後方励起の構成が採用されている。
【0066】
これにより、増幅部242は、光伝送路P2を介して増幅ユニット220(すなわち光源ユニット210)からのレーザ光L1を入力し、増幅して出力する。クラッドモードストリッパ241は、増幅部242の前段において光伝送路P2に設けられており、増幅部242で吸収されなかった励起光を除去する。
【0067】
出力ユニット260は、増幅ユニット220から出力されたレーザ光L1(すなわち、増幅部223及び増幅部242により増幅されたレーザ光L1)を外部に出力する。上述したように、出力ユニット260は、レーザ装置200をレーザ加工ヘッド10A,10Bに接続するための接続端部2aを構成している。したがって、出力ユニット260は、レーザ光L1をレーザ加工ヘッド10A,10Bに提供する。
【0068】
出力ユニット260においては、増幅ユニット240から続いて光伝送路P2が構成されている。すなわち、光源ユニット210及び増幅ユニット220,240と出力ユニット260とは、光伝送路によって互いに光学的に接続されている。出力ユニット260は、光伝送路P2の最終段の光ファイバ2の出力端部261を含む。また、出力ユニット260は、出力端部261から出力されたレーザ光L1をコリメートするコリメートレンズ262を含む。コリメートレンズ262から出射されたレーザ光L1は、レーザ加工ヘッド10A,10B(レーザ装置200の外部)に出力される。
【0069】
出力ユニット260は、光源ユニット210及び増幅ユニット220,240と別体に構成されている。ここでは、光源ユニット210及び増幅ユニット220,240が光源81(或いは光源82)として1つの筐体に収容されると共に、出力ユニット260が別の筐体に収容される。各筐体間は、光伝送路P2の一部を構成する光ファイバ2によって互いに接続されている。
【0070】
光アイソレータ250は、外部から増幅部242(最も出力ユニット260側の増幅部)への戻り光を遮断するためのものである。外部からの戻り光とは、ここでは、対象物100に照射されたレーザ光の反射光である。光アイソレータ250は、増幅部242と出力ユニット260との間において光伝送路P2に設けられている。より具体的には、光アイソレータ250は、光コンバイナ244と出力ユニット260との間に設けられている。一例として、光アイソレータ250は、増幅ユニット240と共通の筐体内に設けられている。
【0071】
図7は、光アイソレータの構成を示す模式図である。
図7に示されるように、光アイソレータ250は、筐体251、レンズ252,256、偏光子253,255、偏光回転素子254、ビームサンプラ(光分岐部)257、及び、出力窓(出力部)258を有している。光アイソレータ250には、光伝送路P2を構成する複数の光ファイバのうちの一の光ファイバ2Aと、複数の光ファイバのうちの別の光ファイバ2と、が接続されている。光ファイバ2Aの端部には、例えばフェルールF2Aが設けられており、光アイソレータ250の筐体251内に配置されている。また、光ファイバ2の出力端部261と反対側の端部には、例えばフェルールF2が設けられており、筐体251内に配置されている。
【0072】
光ファイバ2Aの端部から出射されたレーザ光L1は、筐体251内の空間を伝搬した後に光ファイバ2の端部に結合される。すなわち、光アイソレータ250内には、空間中に光伝送路P2が形成されている。レンズ252、偏光子253、偏光回転素子254、偏光子255、ビームサンプラ257、及び、レンズ256は、光ファイバ2Aから光ファイバ2に向かってこの順に光伝送路P2に設けられている。
【0073】
レンズ252は、光ファイバ2Aから出射された光をコリメートする。偏光子253は、第1偏光の光のみを通過させる。偏光回転素子254は、例えば、磁場中を進行する光の偏光が回転する現象であるファラデー効果を利用したファラデーローテータである。偏光回転素子254は、第1方向(光ファイバ2Aの端部から光ファイバ2の端部に向かう方向)に進行する第1偏光の光を入力した場合、その偏光方向を45°回転して、第2偏光の光を出力する。また、偏光回転素子254は、第1方向と逆方向の第2方向に進行する第2偏光の光を入力した場合には、その偏光方向を45°回転して、第3偏光の光を出力する。偏光子255は、第2偏光の光のみを通過させる。これにより、光アイソレータ250において第2方向に進行する光が遮断される。すなわち、光アイソレータは、偏光依存タイプのアイソレータとして構成されている。レンズ256は、偏光子255から出射されたレーザ光L1を光ファイバ2の端部に集光して結合する。
【0074】
ビームサンプラ257は、偏光子255とレンズ256との間において光伝送路P2に設けられている。これにより、ビームサンプラ257は、光アイソレータ250(筐体251)内の空間を伝搬するレーザ光L1の一部を分岐する。出力窓258は、筐体251に設けられており、ビームサンプラ257により分岐された分岐光を光アイソレータ250(筐体251)の外部に出力するためのものである。増幅ユニット240には、この出力窓258に光学的に接続された検出器245が設けられており、増幅部242によって増幅されたレーザ光L1を検出器245によってモニタ可能とされている。
[作用・効果]
【0075】
レーザ装置200においては、レーザ光L1を外部に出力する出力ユニット260が、光源ユニット210及び増幅ユニット220,240と別体に構成されている。それぞれのユニットは、光ファイバを含む光伝送路P1,P2を介して光学的に接続されている。そして、外部からの戻り光を遮断するための光アイソレータ250が、増幅部242と出力ユニット260との間において当該光伝送路P2に設けられている。したがって、外部からの戻り光の進行は、増幅部242に至る前に光アイソレータ250によって阻止される。よって、外部からの戻り光の増幅部242への影響を抑制可能である。特に、光アイソレータ250は、上記のとおり、出力ユニット260よりも増幅部242側に設けられている。よって、出力ユニット260の大型化が避けられる。
【0076】
ところで、光アイソレータを通過したレーザ光のビームプロファイルは、レーザ光の出力値に応じて変化する場合がある。
図8は、比較例に係るレーザ装置における出力光のビームプロファイルを示す図である。比較例に係るレーザ装置は、出力ユニットの最終段、すなわち、コリメートレンズのさらに後段に光アイソレータを設けた例である。
図8の(a)は、出力値を2Wとした場合を示し、
図8の(b)は、出力値を30Wとした場合を示す。
図8に示されるように、レーザ光の出力値が大きくなると、出力値が小さい場合と比較してレーザ光のビーム径が小さくなる場合がある。これは、光アイソレータを構成する光学素子での熱レンズ効果が一因と考えられる。このため、光アイソレータがレーザ出力部の最終段に設けられていると、レーザ光の出力値に応じて異なるビームプロファイルのレーザ光が外部に出力されることとなるおそれがある。
【0077】
これに対して、本実施形態に係るレーザ装置200は、このような問題を解決し得る。すなわち、レーザ装置200においては、光アイソレータ250には、複数の光ファイバのうちの一の光ファイバ2Aと、複数の光ファイバのうちの別の光ファイバ2と、が接続されている。そして、光アイソレータ250は、増幅部242によって増幅されたレーザ光L1を光ファイバ2Aを介して増幅部242から入力すると共に、光ファイバ2を介して出力ユニット260に向けて出力する。
【0078】
このため、光ファイバ2Aによって伝送されたレーザ光L1は、光アイソレータ250を通過した後に、出力ユニット260に向けて光ファイバ2によってさらに伝送される。このように、光アイソレータ250を通過したレーザ光L1が光ファイバ2を再度伝搬することにより、ビームプロファイルの変化が抑制される。よって、レーザ光の出力値に応じて異なるビームプロファイルのレーザ光が外部に出力されることが避けられる。このことは、
図9に示されたビームプロファイルから明確に把握される。
図9は、レーザ装置200における出力光のビームプロファイルを示す図である。
図9の(a)は、出力値を2Wとした場合を示し、
図9の(b)は、出力値を30Wとした場合を示す。
【0079】
また、レーザ装置200においては、光アイソレータ250は、当該光アイソレータ250内の空間を伝搬するレーザ光L1の一部を分岐するビームサンプラ257と、ビームサンプラ257により分岐された分岐光を外部に出力するための出力窓258と、を有している。このため、出力窓258を介してレーザ光L1の出力をモニタ可能となる。特に、このビームサンプラ257は、光アイソレータ250内の空間を伝搬するレーザ光L1を分岐する。よって、例えば、光ファイバの融着部分や、光ファイバに設けられた光カプラ等を用いてレーザ光L1の出力をモニタする場合と比較して、光ファイバ内で生じる高次モードの光の影響が抑制され、高精度のモニタが可能である。
【0080】
さらに、レーザ装置200においては、増幅ユニット240は、増幅部242を励起するための励起光を出力する励起光源243と、増幅部242よりも出力ユニット260側において光伝送路P2に設けられ、励起光を光伝送路P2に結合するための光コンバイナ244と、を有する。そして、光アイソレータ250は、光コンバイナ244と出力ユニット260との間において光伝送路P2に設けられていてもよい。このように、増幅部242のための励起光の結合部が、増幅部242よりも出力ユニット260側に設けられる場合には、当該結合部と出力ユニット260との間に光アイソレータ250を設けることができる。
【0081】
ここで、レーザ加工装置1は、対象物100にレーザ光L1を照射することによって対象物100に改質領域を形成するためのレーザ加工装置であって、上記のレーザ装置200と、対象物100を支持する支持部7と、出力ユニット260が取り付けられると共に支持部7に臨むように配置され、レーザ装置200からのレーザ光L1を対象物100に照射するためのレーザ加工ヘッド10A(或いはレーザ加工ヘッド10B)と、レーザ加工ヘッド10Aを移動させる移動機構6と、を備える。
【0082】
レーザ加工装置1によれば、上述した効果と同様の効果を得ることができる。特に、上述したように、出力ユニット260の大型化が避けられるため、出力ユニット260が取り付けられたレーザ加工ヘッド10Aの移動が容易となる。
【0083】
また、レーザ加工装置1においては、複数組のレーザ装置200及びレーザ加工ヘッド10A,10Bを備えている。この場合、出力ユニット260の大型化が避けられる結果、レーザ加工ヘッド10A,10B同士を近接させることができる。このため、出力ユニット260が大型化される場合と比較して、複数のレーザ加工ヘッド10A,10Bを同時に用いて加工可能なエリアが拡大される。
【0084】
以上の実施形態は、一実施形態を説明したものである。したがって、本開示は、上述したレーザ加工装置1及びレーザ装置200に限定されず、任意の変形がされ得る。例えば、光アイソレータ250は、上述した偏光依存タイプに限らず、偏光無依存タイプのアイソレータとして構成されていてもよい。なお、光伝送路P1,P2は、光ファイバのみで構成される場合もあるし空間を含んで構成される場合もある。
【0085】
また、上記の実施形態においては、ビームサンプラ257からの分岐光を検出器245によるモニタに供すべく外部に出力するための出力部として、光アイソレータ250に出力窓258を設ける場合を例示した。しかしながら、例えば、検出器245に接続された光ファイバ(出力モニタ用ファイバ)のファイバ端(フェルール)を光アイソレータ250に配置し、分岐光を当該ファイバ端に結合させてもよい。この場合、一例として、ビームサンプラ257と当該ファイバ端との間にレンズを設け、分岐光を当該ファイバ端に集光して結合することができる。この場合であっても、出力窓258を設ける場合と同様に、光ファイバ内で生じる高次モードの光の影響が抑制され、高精度のモニタが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0086】
レーザ出力部の大型化を避けつつ外部からの戻り光の影響を抑制可能なレーザ装置、及び、レーザ加工装置が提供される。
【符号の説明】
【0087】
1…レーザ加工装置、2…光ファイバ、6…移動機構、7…支持部、10A,10B…レーザ加工ヘッド、200…レーザ装置、210…光源ユニット、240…増幅ユニット、242…増幅部、250…光アイソレータ、260…出力ユニット。