(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20231214BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20231214BHJP
B23K 26/046 20140101ALI20231214BHJP
【FI】
B23K26/00 A
B23K26/00 M
B23K26/064 Z
B23K26/046
(21)【出願番号】P 2020553990
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2019042625
(87)【国際公開番号】W WO2020090912
(87)【国際公開日】2020-05-07
【審査請求日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2018203669
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛志
(72)【発明者】
【氏名】奥間 惇治
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-173129(JP,A)
【文献】特開平07-214359(JP,A)
【文献】特開2017-185506(JP,A)
【文献】特開2008-066751(JP,A)
【文献】特表2013-536080(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
H01L 21/78 - 21/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項23】
前記支持部は、前記第1方向に沿って移動し、前記第3方向に平行な軸線を中心線として回転する、請求項21又は22に記載のレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークを保持する保持機構と、保持機構に保持されたワークにレーザ光を照射するレーザ照射機構と、を備えるレーザ加工装置が記載されている。特許文献1に記載のレーザ加工装置では、集光レンズを有するレーザ照射機構が基台に対して固定されており、集光レンズの光軸に垂直な方向に沿ったワークの移動が保持機構によって実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ加工装置においては、様々な加工への応用を考慮すると、集光レンズの光軸に垂直な方向に沿って集光レンズが移動する構成が適切な場合がある。しかし、特許文献1に記載のレーザ加工装置では、レーザ発振器から集光レンズに至るレーザ光の光路上の各構成が筐体内に配置されることでレーザ照射機構が構成されているため、集光レンズの光軸に垂直な方向に沿って集光レンズを移動させることが困難である。何らかの手段で、集光レンズの光軸に垂直な方向に沿って筐体を移動させたとしても、筐体と他の構成との物理的な干渉が懸念される。
【0005】
本開示は、集光部をその光軸に垂直な方向に沿って移動させるのに好適なレーザ加工ヘッド、及びそのようなレーザ加工ヘッドを備えるレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドは、第1方向において互いに対向する第1壁部及び第2壁部、第1方向に垂直な第2方向において互いに対向する第3壁部及び第4壁部、並びに、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向において互いに対向する第5壁部及び第6壁部を有する筐体と、筐体に設けられ、筐体内にレーザ光を入射させる入射部と、筐体内に配置され、入射部から入射したレーザ光を調整する調整部と、筐体に取り付けられ、調整部によって調整されたレーザ光を集光しつつ筐体外に出射させる集光部と、を備え、第3壁部と第4壁部との距離は、第1壁部と第2壁部との距離よりも小さく、筐体は、第1壁部、第2壁部、第3壁部及び第5壁部の少なくとも1つがレーザ加工装置の取付部側に配置された状態で筐体が取付部に取り付けられるように、構成されており、集光部は、第6壁部に配置されており、第2方向において第4壁部側に片寄っている。
【0007】
このレーザ加工ヘッドでは、レーザ光を出力する光源が筐体内に設けられていないため、筐体の小型化を図ることができる。更に、筐体において、第3壁部と第4壁部との距離が第1壁部と第2壁部との距離よりも小さく、第6壁部に配置された集光部が第2方向において第4壁部側に片寄っている。これにより、第3壁部及び第4壁部が互いに対向する第2方向(集光部の光軸に垂直な方向)に沿って筐体を移動させる場合に、例えば、第4壁部側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部を近付けることができる。また、第3壁部と第4壁部との距離が第1壁部と第2壁部との距離よりも小さいため、第3壁部及び第4壁部が互いに対向する第2方向に沿って筐体を移動させる場合に、筐体が占有する空間を小さくすることができる。よって、このレーザ加工ヘッドは、集光部をその光軸に垂直な方向に沿って移動させるのに好適である。
【0008】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、入射部は、第5壁部に設けられており、第2方向において第4壁部側に片寄っていてもよい。これによれば、筐体内の領域のうち調整部に対して第3壁部側の領域に他の構成を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0009】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドは、筐体内において、調整部に対して第3壁部側に配置された回路部を更に備えてもよい。これによれば、筐体内の領域のうち調整部に対して第3壁部側の領域を有効に利用することができる。
【0010】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、筐体内には、筐体内の領域を第3壁部側の領域と第4壁部側の領域とに仕切る仕切壁部が設けられており、調整部は、筐体内において、仕切壁部に対して第4壁部側に配置されており、回路部は、筐体内において、仕切壁部に対して第3壁部側に配置されていてもよい。これによれば、回路部で発生する熱が調整部に伝わり難くなるため、回路部で発生する熱によって調整部に歪みが生じるのを抑制することができ、レーザ光を適切に調整することができる。更に、例えば空冷又は水冷等によって、筐体内の領域のうち第3壁部側の領域において回路部を効率良く冷却することができる。
【0011】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、調整部は、仕切壁部に取り付けられていてもよい。これによれば、調整部を筐体内において確実に且つ安定的に支持することができる。
【0012】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、回路部は、仕切壁部から離間していてもよい。これによれば、回路部で発生する熱が仕切壁部を介して調整部に伝わるのをより確実に抑制することができる。
【0013】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドは、対象物の表面と集光部との距離を測定するための測定光を出力し、集光部を介して、対象物の表面で反射された測定光を検出する測定部と、測定光を反射し、レーザ光を透過させるダイクロイックミラーと、を更に備え、回路部は、測定部から出力された信号を処理し、ダイクロイックミラーは、筐体内において、調整部と集光部との間に配置されていてもよい。これによれば、筐体内の領域を有効に利用しつつ、レーザ加工装置において、対象物の表面と集光部との距離の測定結果に基づいた加工が可能となる。
【0014】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、集光部は、第1方向において第1壁部又は第2壁部の一方の壁部側に片寄っていてもよい。これによれば、集光部の光軸に垂直な方向に沿って筐体を移動させる場合に、例えば、当該一方の壁部側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部を近付けることができる。
【0015】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、入射部は、第5壁部に設けられており、第1方向において一方の壁部側に片寄っていてもよい。これによれば、筐体内の領域のうち調整部に対して一方の壁部側とは反対側の領域に他の構成を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0016】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、測定部は、筐体内において、調整部に対して一方の壁部側とは反対側に配置されていてもよい。これによれば、筐体内の領域をより有効に利用しつつ、レーザ加工装置において、対象物の表面と集光部との距離の測定結果に基づいた加工が可能となる。
【0017】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドは、対象物の表面を観察するための観察光を出力し、集光部を介して、対象物の表面で反射された観察光を検出する観察部を更に備え、観察部は、筐体内において、調整部に対して一方の壁部側とは反対側に配置されていてもよい。これによれば、筐体内の領域を有効に利用しつつ、レーザ加工装置において、対象物の表面の観察結果に基づいた加工が可能となる。
【0018】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドは、集光部を第3方向に沿って移動させる駆動部を更に備え、回路部は、測定部から出力された信号に基づいて駆動部を制御してもよい。これによれば、対象物の表面と集光部との距離の測定結果に基づいてレーザ光の集光点の位置を調整することができる。
【0019】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、調整部は、入射部から入射したレーザ光を反射するミラー、ミラーで反射されたレーザ光を変調する反射型空間光変調器、及び、反射型空間光変調器の反射面と集光部の入射瞳面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成する結像光学系を有し、入射部及びミラーは、第3方向に沿って延在する第1直線上に配置されており、反射型空間光変調器、結像光学系及び集光部は、第3方向に沿って延在する第2直線上に配置されていてもよい。これによれば、反射型空間光変調器及び結像光学系を有する調整部をコンパクトに構成することができる。
【0020】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、集光部は、第1方向において第1壁部又は第2壁部の一方の壁部側に片寄っており、入射部は、第1方向において一方の壁部側に片寄っており、第1直線は、第2直線に対して一方の壁部側に位置していてもよい。これによれば、筐体内の領域のうち調整部に対して一方の壁部側とは反対側の領域において、集光部を用いた他の光学系を構成する場合に、当該他の光学系の構成の自由度を向上させることができる。
【0021】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、調整部は、レーザ光の径を拡大するビームエキスパンダを更に有し、ビームエキスパンダは、第1直線上において、入射部とミラーとの間に配置されていてもよい。これによれば、ビームエキスパンダを更に有する調整部をコンパクトに構成することができる。
【0022】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、入射部、調整部及び集光部は、第3方向に沿って延在する直線上に配置されていてもよい。これによれば、調整部をコンパクトに構成することができる。
【0023】
本開示の一側面のレーザ加工ヘッドでは、調整部は、レーザ光の出力を調整するアッテネータ、及び、レーザ光の径を拡大するビームエキスパンダを有してもよい。これによれば、アッテネータ及びビームエキスパンダを有する調整部をコンパクトに構成することができる。
【0024】
本開示の一側面のレーザ加工装置は、それぞれが上述したレーザ加工ヘッドである第1レーザ加工ヘッド及び第2レーザ加工ヘッドと、第1レーザ加工ヘッドの筐体が取り付けられた取付部である第1取付部と、第2レーザ加工ヘッドの筐体が取り付けられた取付部である第2取付部と、第1レーザ加工ヘッドの入射部及び第2レーザ加工ヘッドの入射部のそれぞれに入射させるレーザ光を出力する光源ユニットと、対象物を支持する支持部と、を備え、第1取付部及び第2取付部のそれぞれは、第2方向に沿って移動し、第1レーザ加工ヘッドの筐体である第1筐体は、第1筐体の第4壁部が第1筐体の第3壁部に対して第2レーザ加工ヘッド側に位置し且つ第1筐体の第6壁部が第1筐体の第5壁部に対して支持部側に位置するように、第1取付部に取り付けられており、第2レーザ加工ヘッドの筐体である第2筐体は、第2筐体の第4壁部が第2筐体の第3壁部に対して第1レーザ加工ヘッド側に位置し且つ第2筐体の第6壁部が第2筐体の第5壁部に対して支持部側に位置するように、第2取付部に取り付けられている。
【0025】
このレーザ加工装置では、第1レーザ加工ヘッドの集光部が第1筐体において第2レーザ加工ヘッド側に片寄っており、第2レーザ加工ヘッドの集光部が第2筐体において第1レーザ加工ヘッド側に片寄っている。これにより、第1レーザ加工ヘッド及び第2レーザ加工ヘッドのそれぞれを第2方向(集光部の光軸に垂直な方向)に沿って移動させる場合に、第1レーザ加工ヘッドの集光部と第2レーザ加工ヘッドの集光部とを互いに近付けることができる。また、第1レーザ加工ヘッド及び第2レーザ加工ヘッドのそれぞれを第2方向に沿って移動させる場合に、第1レーザ加工ヘッド及び第2レーザ加工ヘッドのそれぞれが占有する空間を小さくすることができる。よって、このレーザ加工装置によれば、対象物を効率良く加工することができる。
【0026】
本開示の一側面のレーザ加工装置では、第1取付部及び第2取付部のそれぞれは、第3方向に沿って移動してもよい。これによれば、対象物をより効率良く加工することができる。
【0027】
本開示の一側面のレーザ加工装置では、支持部は、第1方向に沿って移動し、第3方向に平行な軸線を中心線として回転してもよい。これによれば、対象物をより効率良く加工することができる。
【0028】
本開示の一側面のレーザ加工装置は、上述したレーザ加工ヘッドと、レーザ加工ヘッドの筐体が取り付けられた取付部と、レーザ加工ヘッドの入射部に入射させるレーザ光を出力する光源ユニットと、対象物を支持する支持部と、を備え、取付部は、第2方向に沿って移動する。
【0029】
このレーザ加工装置では、レーザ加工ヘッドの筐体において、第3壁部と第4壁部との距離が第1壁部と第2壁部との距離よりも小さく、第6壁部に配置された集光部が第2方向において第4壁部側に片寄っている。これにより、集光部の光軸に垂直な第2方向に沿って筐体を移動させる場合に、例えば、第4壁部側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部を近付けることができる。また、第2方向に沿って筐体を移動させる場合に、筐体が占有する空間を小さくすることができる。よって、このレーザ加工装置によれば、対象物を効率良く加工することができる。
【0030】
本開示の一側面のレーザ加工装置では、取付部は、第3方向に沿って移動してもよい。これによれば、対象物をより効率良く加工することができる。
【0031】
本開示の一側面のレーザ加工装置では、支持部は、第1方向に沿って移動し、第3方向に平行な軸線を中心線として回転してもよい。これによれば、対象物をより効率良く加工することができる。
【発明の効果】
【0032】
本開示によれば、集光部をその光軸に垂直な方向に沿って移動させるのに好適なレーザ加工ヘッド、及びそのようなレーザ加工ヘッドを備えるレーザ加工装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、一実施形態のレーザ加工装置の斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示されるレーザ加工装置の一部分の正面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示されるレーザ加工装置のレーザ加工ヘッドの正面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示されるレーザ加工ヘッドの側面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示されるレーザ加工ヘッドの光学系の構成図である。
【
図6】
図6は、変形例のレーザ加工ヘッドの光学系の構成図である。
【
図7】
図7は、変形例のレーザ加工装置の一部分の正面図である。
【
図8】
図8は、変形例のレーザ加工装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の構成]
【0035】
図1に示されるように、レーザ加工装置1は、複数の移動機構5,6と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド(第1レーザ加工ヘッド、第2レーザ加工ヘッド)10A,10Bと、光源ユニット8と、制御部9と、を備えている。以下、第1方向をX方向、第1方向に垂直な第2方向をY方向、第1方向及び第2方向に垂直な第3方向をZ方向という。本実施形態では、X方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は鉛直方向である。
【0036】
移動機構5は、固定部51と、移動部53と、取付部55と、を有している。固定部51は、装置フレーム1aに取り付けられている。移動部53は、固定部51に設けられたレールに取り付けられており、Y方向に沿って移動することができる。取付部55は、移動部53に設けられたレールに取り付けられており、X方向に沿って移動することができる。
【0037】
移動機構6は、固定部61と、1対の移動部(第1移動部、第2移動部)63,64と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)65,66と、を有している。固定部61は、装置フレーム1aに取り付けられている。1対の移動部63,64のそれぞれは、固定部61に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。取付部65は、移動部63に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。取付部66は、移動部64に設けられたレールに取り付けられており、Z方向に沿って移動することができる。つまり、装置フレーム1aに対しては、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動することができる。
【0038】
支持部7は、移動機構5の取付部55に設けられた回転軸に取り付けられており、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。つまり、支持部7は、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動することができ、Z方向に平行な軸線を中心線として回転することができる。支持部7は、対象物100を支持する。対象物100は、例えば、ウェハである。
【0039】
図1及び
図2に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構6の取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光(第1レーザ光)L1を照射する。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構6の取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光(第2レーザ光)L2を照射する。
【0040】
光源ユニット8は、1対の光源81,82を有している。1対の光源81,82は、装置フレーム1aに取り付けられている。光源81は、レーザ光L1を出力する。レーザ光L1は、光源81の出射部81aから出射され、光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Aに導光される。光源82は、レーザ光L2を出力する。レーザ光L2は、光源82の出射部82aから出射され、別の光ファイバ2によってレーザ加工ヘッド10Bに導光される。
【0041】
制御部9は、レーザ加工装置1の各部(複数の移動機構5,6、1対のレーザ加工ヘッド10A,10B、及び光源ユニット8等)を制御する。制御部9は、プロセッサ、メモリ、ストレージ及び通信デバイス等を含むコンピュータ装置として構成されている。制御部9では、メモリ等に読み込まれたソフトウェア(プログラム)が、プロセッサによって実行され、メモリ及びストレージにおけるデータの読み出し及び書き込み、並びに、通信デバイスによる通信が、プロセッサによって制御される。これにより、制御部9は、各種機能を実現する。
【0042】
以上のように構成されたレーザ加工装置1による加工の一例について説明する。当該加工の一例は、ウェハである対象物100を複数のチップに切断するために、格子状に設定された複数のラインのそれぞれに沿って対象物100の内部に改質領域を形成する例である。
【0043】
まず、対象物100を支持している支持部7がZ方向において1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと対向するように、移動機構5が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って支持部7を移動させる。続いて、対象物100において一方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0044】
続いて、一方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、一方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0045】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、一方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ一方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0046】
続いて、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインがX方向に沿うように、移動機構5が、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0047】
続いて、他方向に延在する一のライン上にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、他方向に延在する他のライン上にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Y方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。続いて、対象物100の内部にレーザ光L1の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Aを移動させる。その一方で、対象物100の内部にレーザ光L2の集光点が位置するように、移動機構6が、Z方向に沿ってレーザ加工ヘッド10Bを移動させる。
【0048】
続いて、光源81がレーザ光L1を出力してレーザ加工ヘッド10Aが対象物100にレーザ光L1を照射すると共に、光源82がレーザ光L2を出力してレーザ加工ヘッド10Bが対象物100にレーザ光L2を照射する。それと同時に、他方向に延在する一のラインに沿ってレーザ光L1の集光点が相対的に移動し且つ他方向に延在する他のラインに沿ってレーザ光L2の集光点が相対的に移動するように、移動機構5が、X方向に沿って支持部7を移動させる。このようにして、レーザ加工装置1は、対象物100において一方向と直交する他方向に延在する複数のラインのそれぞれに沿って、対象物100の内部に改質領域を形成する。
【0049】
なお、上述した加工の一例では、光源81は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L1を出力し、光源82は、例えばパルス発振方式によって、対象物100に対して透過性を有するレーザ光L2を出力する。そのようなレーザ光が対象物100の内部に集光されると、レーザ光の集光点に対応する部分においてレーザ光が特に吸収され、対象物100の内部に改質領域が形成される。改質領域は、密度、屈折率、機械的強度、その他の物理的特性が周囲の非改質領域とは異なる領域である。改質領域としては、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域等がある。
【0050】
パルス発振方式によって出力されたレーザ光が対象物100に照射され、対象物100に設定されたラインに沿ってレーザ光の集光点が相対的に移動させられると、複数の改質スポットがラインに沿って1列に並ぶように形成される。1つの改質スポットは、1パルスのレーザ光の照射によって形成される。1列の改質領域は、1列に並んだ複数の改質スポットの集合である。隣り合う改質スポットは、対象物100に対するレーザ光の集光点の相対的な移動速度及びレーザ光の繰り返し周波数によって、互いに繋がる場合も、互いに離れる場合もある。
[レーザ加工ヘッドの構成]
【0051】
図3及び
図4に示されるように、レーザ加工ヘッド10Aは、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、を備えている。
【0052】
筐体11は、第1壁部21及び第2壁部22、第3壁部23及び第4壁部24、並びに、第5壁部25及び第6壁部26を有している。第1壁部21及び第2壁部22は、X方向において互いに対向している。第3壁部23及び第4壁部24は、Y方向において互いに対向している。第5壁部25及び第6壁部26は、Z方向において互いに対向している。
【0053】
第3壁部23と第4壁部24との距離は、第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さい。第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも小さい。なお、第1壁部21と第2壁部22との距離は、第5壁部25と第6壁部26との距離と等しくてもよいし、或いは、第5壁部25と第6壁部26との距離よりも大きくてもよい。
【0054】
レーザ加工ヘッド10Aでは、第1壁部21は、移動機構6の固定部61側に位置しており、第2壁部22は、固定部61とは反対側に位置している。第3壁部23は、移動機構6の取付部65側に位置しており、第4壁部24は、取付部65とは反対側であってレーザ加工ヘッド10B側に位置している(
図2参照)。第5壁部25は、支持部7とは反対側に位置しており、第6壁部26は、支持部7側に位置している。
【0055】
筐体11は、第3壁部23が移動機構6の取付部65側に配置された状態で筐体11が取付部65に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部65は、ベースプレート65aと、取付プレート65bと、を有している。ベースプレート65aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている(
図2参照)。取付プレート65bは、ベースプレート65aにおけるレーザ加工ヘッド10B側の端部に立設されている(
図2参照)。筐体11は、第3壁部23が取付プレート65bに接触した状態で、台座27を介してボルト28が取付プレート65bに螺合されることで、取付部65に取り付けられている。台座27は、第1壁部21及び第2壁部22のそれぞれに設けられている。筐体11は、取付部65に対して着脱可能である。
【0056】
入射部12は、第5壁部25に取り付けられている。入射部12は、筐体11内にレーザ光L1を入射させる。入射部12は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における入射部12と第2壁部22との距離は、X方向における入射部12と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における入射部12と第4壁部24との距離は、X方向における入射部12と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0057】
入射部12は、光ファイバ2の接続端部2aが接続可能となるように構成されている。光ファイバ2の接続端部2aには、ファイバの出射端から出射されたレーザ光L1をコリメートするコリメータレンズが設けられており、戻り光を抑制するアイソレータが設けられていない。当該アイソレータは、接続端部2aよりも光源81側であるファイバの途中に設けられている。これにより、接続端部2aの小型化、延いては、入射部12の小型化が図られている。なお、光ファイバ2の接続端部2aにアイソレータが設けられていてもよい。
【0058】
調整部13は、筐体11内に配置されている。調整部13は、入射部12から入射したレーザ光L1を調整する。調整部13は、筐体11内において、仕切壁部29に対して第4壁部24側に配置されている。調整部13は、仕切壁部29に取り付けられている。仕切壁部29は、筐体11内に設けられており、筐体11内の領域を第3壁部23側の領域と第4壁部24側の領域とに仕切っている。仕切壁部29は、筐体11と一体となっている。調整部13が有する各構成は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。仕切壁部29は、調整部13が有する各構成を支持する光学ベースとして機能している。調整部13が有する各構成の詳細については後述する。
【0059】
集光部14は、第6壁部26に配置されている。具体的には、集光部14は、第6壁部26に形成された孔26aに挿通された状態で、第6壁部26に配置されている。集光部14は、調整部13によって調整されたレーザ光L1を集光しつつ筐体11外に出射させる。集光部14は、X方向においては第2壁部22側(一方の壁部側)に片寄っており、Y方向においては第4壁部24側に片寄っている。つまり、X方向における集光部14と第2壁部22との距離は、X方向における集光部14と第1壁部21との距離よりも小さく、Y方向における集光部14と第4壁部24との距離は、X方向における集光部14と第3壁部23との距離よりも小さい。
【0060】
図5に示されるように、調整部13は、アッテネータ31と、ビームエキスパンダ32と、ミラー33と、を有している。入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33は、Z方向に沿って延在する直線(第1直線)A1上に配置されている。アッテネータ31及びビームエキスパンダ32は、直線A1上において、入射部12とミラー33との間に配置されている。アッテネータ31は、入射部12から入射したレーザ光L1の出力を調整する。ビームエキスパンダ32は、アッテネータ31で出力が調整されたレーザ光L1の径を拡大する。ミラー33は、ビームエキスパンダ32で径が拡大されたレーザ光L1を反射する。
【0061】
調整部13は、反射型空間光変調器34と、結像光学系35と、を更に有している。調整部13の反射型空間光変調器34及び結像光学系35、並びに、集光部14は、Z方向に沿って延在する直線(第2直線)A2上に配置されている。反射型空間光変調器34は、ミラー33で反射されたレーザ光L1を変調する。反射型空間光変調器34は、例えば、反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)である。結像光学系35は、反射型空間光変調器34の反射面34aと集光部14の入射瞳面14aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。結像光学系35は、3つ以上のレンズによって構成されている。
【0062】
直線A1及び直線A2は、Y方向に垂直な平面上に位置している。直線A1は、直線A2に対して第2壁部22側(一方の壁部側)に位置している。レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1は、入射部12から筐体11内に入射して直線A1上を進行し、ミラー33及び反射型空間光変調器34で順次に反射された後、直線A2上を進行して集光部14から筐体11外に出射する。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。また、アッテネータ31は、ミラー33と反射型空間光変調器34との間に配置されていてもよい。また、調整部13は、他の光学部品(例えば、ビームエキスパンダ32の前に配置されるステアリングミラー等)を有していてもよい。
【0063】
レーザ加工ヘッド10Aは、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を更に備えている。
【0064】
ダイクロイックミラー15は、直線A2上において、結像光学系35と集光部14との間に配置されている。つまり、ダイクロイックミラー15は、筐体11内において、調整部13と集光部14との間に配置されている。ダイクロイックミラー15は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。ダイクロイックミラー15は、レーザ光L1を透過させる。ダイクロイックミラー15は、非点収差を抑制する観点では、例えば、キューブ型、又は、ねじれの関係を有するように配置された2枚のプレート型が好ましい。
【0065】
測定部16は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。測定部16は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。測定部16は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)と集光部14との距離を測定するための測定光L10を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された測定光L10を検出する。つまり、測定部16から出力された測定光L10は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14を介して測定部16で検出される。
【0066】
より具体的には、測定部16から出力された測定光L10は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられたビームスプリッタ20、及びダイクロイックミラー15で順次に反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された測定光L10は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15及びビームスプリッタ20で順次に反射され、測定部16に入射し、測定部16で検出される。
【0067】
観察部17は、筐体11内において、調整部13に対して第1壁部21側(一方の壁部側とは反対側)に配置されている。観察部17は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。観察部17は、対象物100の表面(例えば、レーザ光L1が入射する側の表面)を観察するための観察光L20を出力し、集光部14を介して、対象物100の表面で反射された観察光L20を検出する。つまり、観察部17から出力された観察光L20は、集光部14を介して対象物100の表面に照射され、対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14を介して観察部17で検出される。
【0068】
より具体的には、観察部17から出力された観察光L20は、ビームスプリッタ20を透過してダイクロイックミラー15で反射され、集光部14から筐体11外に出射する。対象物100の表面で反射された観察光L20は、集光部14から筐体11内に入射してダイクロイックミラー15で反射され、ビームスプリッタ20を透過して観察部17に入射し、観察部17で検出される。なお、レーザ光L1、測定光L10及び観察光L20のそれぞれの波長は、互いに異なっている(少なくともそれぞれの中心波長が互いにずれている)。
【0069】
駆動部18は、第4壁部24側において仕切壁部29に取り付けられている。駆動部18は、例えば圧電素子の駆動力によって、第6壁部26に配置された集光部14をZ方向に沿って移動させる。
【0070】
回路部19は、筐体11内において、仕切壁部29に対して第3壁部23側に配置されている。つまり、回路部19は、筐体11内において、調整部13、測定部16及び観察部17に対して第3壁部23側に配置されている。回路部19は、仕切壁部29から離間している。回路部19は、例えば、複数の回路基板である。回路部19は、測定部16から出力された信号、及び反射型空間光変調器34に入力する信号を処理する。回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。一例として、回路部19は、測定部16から出力された信号に基づいて、対象物100の表面と集光部14との距離が一定に維持されるように(すなわち、対象物100の表面とレーザ光L1の集光点との距離が一定に維持されるように)、駆動部18を制御する。なお、筐体11には、回路部19を制御部9(
図1参照)等に電気的に接続するための配線が接続されるコネクタ(図示省略)が設けられている。
【0071】
レーザ加工ヘッド10Bは、レーザ加工ヘッド10Aと同様に、筐体11と、入射部12と、調整部13と、集光部14と、ダイクロイックミラー15と、測定部16と、観察部17と、駆動部18と、回路部19と、を備えている。ただし、レーザ加工ヘッド10Bの各構成は、
図2に示されるように、1対の取付部65,66間の中点を通り且つY方向に垂直な仮想平面に関して、レーザ加工ヘッド10Aの各構成と面対称の関係を有するように、配置されている。
【0072】
例えば、レーザ加工ヘッド10Aの筐体(第1筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10B側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。これに対し、レーザ加工ヘッド10Bの筐体(第2筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10A側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。
【0073】
レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付部66側に配置された状態で筐体11が取付部66に取り付けられるように、構成されている。具体的には、次のとおりである。取付部66は、ベースプレート66aと、取付プレート66bと、を有している。ベースプレート66aは、移動部63に設けられたレールに取り付けられている。取付プレート66bは、ベースプレート66aにおけるレーザ加工ヘッド10A側の端部に立設されている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、第3壁部23が取付プレート66bに接触した状態で、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bの筐体11は、取付部66に対して着脱可能である。
[作用及び効果]
【0074】
レーザ加工ヘッド10Aでは、レーザ光L1を出力する光源が筐体11内に設けられていないため、筐体11の小型化を図ることができる。更に、筐体11において、第3壁部23と第4壁部24との距離が第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さく、第6壁部26に配置された集光部14がY方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、第3壁部23及び第4壁部24が互いに対向するY方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成(例えば、レーザ加工ヘッド10B)が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。また、第3壁部23と第4壁部24との距離が第1壁部21と第2壁部22との距離よりも小さいため、第3壁部23及び第4壁部24が互いに対向するY方向に沿って筐体11を移動させる場合に、筐体11が占有する空間を小さくすることができる。よって、レーザ加工ヘッド10Aは、集光部14をその光軸に垂直な方向に沿って移動させるのに好適である。
【0075】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、Y方向において第4壁部24側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側の領域に他の構成(例えば、回路部19)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0076】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、回路部19が、筐体11内において、調整部13に対して第3壁部23側に配置されている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側の領域を有効に利用することができる。
【0077】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、調整部13が、筐体11内において、仕切壁部29に対して第4壁部24側に配置されており、回路部19が、筐体11内において、仕切壁部29に対して第3壁部23側に配置されている。これにより、回路部19で発生する熱が調整部13に伝わり難くなるため、回路部19で発生する熱によって調整部13に歪みが生じるのを抑制することができ、レーザ光L1を適切に調整することができる。更に、例えば空冷又は水冷等によって、筐体11内の領域のうち第3壁部23側の領域において回路部19を効率良く冷却することができる。
【0078】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、調整部13が仕切壁部29に取り付けられている。これにより、調整部13を筐体11内において確実に且つ安定的に支持することができる。
【0079】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、回路部19が仕切壁部29から離間している。これにより、回路部19で発生する熱が仕切壁部29を介して調整部13に伝わるのをより確実に抑制することができる。
【0080】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、集光部14が、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第2壁部22側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。
【0081】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12が、第5壁部25に設けられており、X方向において第2壁部22側に片寄っている。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に他の構成(例えば、測定部16及び観察部17)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0082】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、測定部16及び観察部17が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域に配置されており、回路部19が、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第3壁部23側に配置されており、ダイクロイックミラー15が、筐体11内において調整部13と集光部14との間に配置されている。これにより、筐体11内の領域を有効に利用することができる。更に、レーザ加工装置1において、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいた加工が可能となる。また、レーザ加工装置1において、対象物100の表面の観察結果に基づいた加工が可能となる。
【0083】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、回路部19が、測定部16から出力された信号に基づいて駆動部18を制御する。これにより、対象物100の表面と集光部14との距離の測定結果に基づいてレーザ光L1の集光点の位置を調整することができる。
【0084】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、入射部12、並びに、調整部13のアッテネータ31、ビームエキスパンダ32及びミラー33が、Z方向に沿って延在する直線A1上に配置されており、調整部13の反射型空間光変調器34、結像光学系35及び集光部14、並びに、集光部14が、Z方向に沿って延在する直線A2上に配置されている。これにより、アッテネータ31、ビームエキスパンダ32、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。
【0085】
また、レーザ加工ヘッド10Aでは、直線A1が、直線A2に対して第2壁部22側に位置している。これにより、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第1壁部21側の領域において、集光部14を用いた他の光学系(例えば、測定部16及び観察部17)を構成する場合に、当該他の光学系の構成の自由度を向上させることができる。
【0086】
以上の作用及び効果は、レーザ加工ヘッド10Bによっても同様に奏される。
【0087】
また、レーザ加工装置1では、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14が、レーザ加工ヘッド10Aの筐体11においてレーザ加工ヘッド10B側に片寄っており、レーザ加工ヘッド10Bの集光部14が、レーザ加工ヘッド10Bの筐体11においてレーザ加工ヘッド10A側に片寄っている。これにより、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14とレーザ加工ヘッド10Bの集光部14とを互いに近付けることができる。また、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bのそれぞれが占有する空間を小さくすることができる。よって、レーザ加工装置1によれば、対象物100を効率良く加工することができる。
【0088】
また、レーザ加工装置1では、1対の取付部65,66のそれぞれが、Y方向及びZ方向のそれぞれに沿って移動する。これにより、対象物100をより効率良く加工することができる。
【0089】
また、レーザ加工装置1では、支持部7が、X方向及びY方向のそれぞれに沿って移動し、Z方向に平行な軸線を中心線として回転する。これにより、対象物100をより効率良く加工することができる。
[変形例]
【0090】
本開示は、上述した実施形態に限定されない。例えば、
図6に示されるように、入射部12、調整部13及び集光部14は、Z方向に沿って延在する直線A上に配置されていてもよい。これによれば、調整部13をコンパクトに構成することができる。その場合、調整部13は、反射型空間光変調器34及び結像光学系35を有していなくてもよい。また、調整部13は、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有していてもよい。これによれば、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32を有する調整部13をコンパクトに構成することができる。なお、アッテネータ31及びビームエキスパンダ32の配列の順序は、逆であってもよい。
【0091】
また、筐体11は、第1壁部21、第2壁部22、第3壁部23及び第5壁部25の少なくとも1つがレーザ加工装置1の取付部65(又は取付部66)側に配置された状態で筐体11が取付部65(又は取付部66)に取り付けられるように、構成されていればよい。また、集光部14は、少なくともY方向において第4壁部24側に片寄っていればよい。これらによれば、Y方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。また、Y方向に沿って筐体11を移動させる場合に、筐体11が占有する空間を小さくすることができる。また、Z方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、対象物100に集光部14を近付けることができる。
【0092】
また、集光部14は、X方向において第1壁部21側に片寄っていてもよい。これによれば、集光部14の光軸に垂直な方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第1壁部21側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。その場合、入射部12は、X方向において第1壁部21側に片寄っていてもよい。これによれば、筐体11内の領域のうち調整部13に対して第2壁部22側の領域に他の構成(例えば、測定部16及び観察部17)を配置する等、当該領域を有効に利用することができる。
【0093】
回路部19は、測定部16から出力された信号、及び/又は、反射型空間光変調器34に入力する信号を処理するものに限定されず、レーザ加工ヘッドにおいて何らかの信号を処理するものであればよい。
【0094】
また、光源ユニット8の出射部81aからレーザ加工ヘッド10Aの入射部12へのレーザ光L1の導光、及び光源ユニット8の出射部82aからレーザ加工ヘッド10Bの入射部12へのレーザ光L2の導光の少なくとも1つは、ミラーによって実施されてもよい。
図7は、レーザ光L1がミラーによって導光されるレーザ加工装置1の一部分の正面図である。
図7に示される構成では、光源81は、Y方向において移動部63の側方(移動部64とは反対側)に位置するように固定部61に取り付けられている。光源81の出射部81aは、移動部63側に向いている。移動部63には、レーザ光L1を反射するミラー3が取り付けられている。ミラー3は、Y方向において光源81の出射部81aと対向し且つZ方向においてレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向するように、移動部63に取り付けられている。光源81の出射部81aから出射されたレーザ光L1は、ミラー3で反射され、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に入射する。なお、光源81は、装置フレーム1aに取り付けられていてもよい。
【0095】
図7に示される構成では、移動部63がY方向に沿って移動しても、Y方向においてミラー3が光源81の出射部81aと対向する状態が維持される。また、取付部65がZ方向に沿って移動しても、Z方向においてミラー3がレーザ加工ヘッド10Aの入射部12と対向する状態が維持される。したがって、レーザ加工ヘッド10Aの位置によらず、光源81の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に確実に入射させることができる。しかも、光ファイバ2による導光が困難な高出力長短パルスレーザ等の光源を利用することもできる。
【0096】
また、
図7に示される構成では、ミラー3は、角度調整及び位置調整の少なくとも1つが可能となるように、移動部63に取り付けられていてもよい。これによれば、光源81の出射部81aから出射されたレーザ光L1を、レーザ加工ヘッド10Aの入射部12に、より確実に入射させることができる。
【0097】
また、光源ユニット8は、1つの光源を有するものであってもよい。その場合、光源ユニット8は、1つの光源から出力されたレーザ光の一部を出射部81aから出射させ且つ当該レーザ光の残部を出射部82aから出射させるように、構成されていればよい。
【0098】
また、レーザ加工装置1は、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えていてもよい。1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1でも、集光部14の光軸に垂直なY方向に沿って筐体11を移動させる場合に、例えば、第4壁部24側に他の構成が存在したとしても、当該他の構成に集光部14を近付けることができる。また、Y方向に沿って筐体11を移動させる場合に、筐体11が占有する空間を小さくすることができる。よって、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1によっても、対象物100を効率良く加工することができる。また、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1において、取付部65がZ方向に沿って移動すれば、対象物100をより効率良く加工することができる。また、1つのレーザ加工ヘッド10Aを備えるレーザ加工装置1において、支持部7が、X方向に沿って移動し、Z方向に平行な軸線を中心線として回転すれば、対象物100をより効率良く加工することができる。
【0099】
また、レーザ加工装置1は、3つ以上のレーザ加工ヘッドを備えていてもよい。
図8は、2対のレーザ加工ヘッドを備えるレーザ加工装置1の斜視図である。
図8に示されるレーザ加工装置1は、複数の移動機構200,300,400と、支持部7と、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bと、1対のレーザ加工ヘッド10C,10Dと、光源ユニット(図示省略)と、を備えている。
【0100】
移動機構200は、X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれの方向に沿って支持部7を移動させ、Z方向に平行な軸線を中心線として支持部7を回転させる。
【0101】
移動機構300は、固定部301と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)305,306と、を有している。固定部301は、装置フレーム(図示省略)に取り付けられている。1対の取付部305,306のそれぞれは、固定部301に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、Y方向に沿って移動することができる。
【0102】
移動機構400は、固定部401と、1対の取付部(第1取付部、第2取付部)405,406と、を有している。固定部401は、装置フレーム(図示省略)に取り付けられている。1対の取付部405,406のそれぞれは、固定部401に設けられたレールに取り付けられており、それぞれが独立して、X方向に沿って移動することができる。なお、固定部401のレールは、固定部301のレールと立体的に交差するように配置されている。
【0103】
レーザ加工ヘッド10Aは、移動機構300の取付部305に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Aは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Aから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。レーザ加工ヘッド10Bは、移動機構300の取付部306に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Bは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Bから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。
【0104】
レーザ加工ヘッド10Cは、移動機構400の取付部405に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Cは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Cから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。レーザ加工ヘッド10Dは、移動機構400の取付部406に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Dは、Z方向において支持部7と対向した状態で、支持部7に支持された対象物100にレーザ光を照射する。レーザ加工ヘッド10Dから出射されるレーザ光は、光源ユニット(図示省略)から光ファイバ2によって導光される。
【0105】
図8に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成は、
図1に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成と同様である。
図8に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10C,10Dの構成は、
図1に示されるレーザ加工装置1における1対のレーザ加工ヘッド10A,10BをZ方向に平行な軸線を中心線として90度回転した場合の1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bの構成と同様である。
【0106】
例えば、レーザ加工ヘッド10Cの筐体(第1筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10D側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部65に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Cの集光部14は、Y方向において第4壁部24側(すなわち、レーザ加工ヘッド10D側)に片寄っている。
【0107】
レーザ加工ヘッド10Dの筐体(第2筐体)11は、第4壁部24が第3壁部23に対してレーザ加工ヘッド10C側に位置し且つ第6壁部26が第5壁部25に対して支持部7側に位置するように、取付部66に取り付けられている。レーザ加工ヘッド10Dの集光部14は、Y方向において第4壁部24側(すなわち、レーザ加工ヘッド10C側)に片寄っている。
【0108】
以上により、
図8に示されるレーザ加工装置1では、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Aの集光部14とレーザ加工ヘッド10Bの集光部14とを互いに近付けることができる。また、1対のレーザ加工ヘッド10A,10BのそれぞれをY方向に沿って移動させる場合に、1対のレーザ加工ヘッド10A,10Bのそれぞれが占有する空間を小さくすることができる。また、1対のレーザ加工ヘッド10C,10DのそれぞれをX方向に沿って移動させる場合に、レーザ加工ヘッド10Cの集光部14とレーザ加工ヘッド10Dの集光部14とを互いに近付けることができる。また、1対のレーザ加工ヘッド10C,10DのそれぞれをX方向に沿って移動させる場合に、1対のレーザ加工ヘッド10C,10Dのそれぞれが占有する空間を小さくすることができる。
【0109】
また、本開示のレーザ加工ヘッド及びレーザ加工装置は、対象物100の内部に改質領域を形成するためのものに限定されず、他のレーザ加工を実施するためのものであってもよい。
【0110】
最後に、レーザ加工装置1の動作の例について説明する。レーザ加工装置1の動作の一例は、次のとおりである。対象物100には、X方向に延びると共にY方向に配列された複数のラインが設定されているものとする。そのような状態において、制御部9が、一のラインに対してレーザ光L1をX方向にスキャンする第1スキャン処理と、別のラインに対してレーザ光L2をX方向にスキャンする第2スキャン処理とを、少なくとも一部の時間において重複するように実行する。特に、制御部9は、対象物100のY方向の一方の端部に位置するラインからY方向の内側のラインに向けて順に第1スキャン処理を実行しつつ、対象物100のY方向の他方の端部に位置するラインからY方向の内側のラインに向けて順に第2スキャン処理を実行することができる。これにより、スループットの向上が図られる。
【0111】
レーザ加工装置1の動作の一例は、次のとおりである。レーザ加工装置1においては、制御部9が、レーザ加工ヘッド10A,10Bが一のライン上に配列された第1状態において、レーザ光L1の集光点をZ方向における第1位置に位置させつつレーザ光L1を当該一のラインに対してX方向にスキャンする第1スキャン処理と、第1状態において、レーザ光L2の集光点をZ方向における第2位置(第1位置よりも入射面側の位置)に位置させつつレーザ光L2を当該一のラインに対してX方向にスキャンする第2スキャン処理と、を実行する。このとき、制御部9は、レーザ光L2の集光点をレーザ光L1の集光点よりも所定距離以上X方向と反対方向に離間した位置としながら、第1スキャン処理及び第2スキャン処理を実行する。所定距離は、例えば300μmである。これにより、スループットを向上しつつ、改質領域から亀裂を十分に進展させることができる。
【0112】
レーザ加工装置1の動作の一例は、次のとおりである。制御部9が、一のラインに対してレーザ光L1をX方向にスキャンする第1スキャン処理と、別のラインに対してレーザ光L2をX方向にスキャンする第2スキャン処理とを、少なくとも一部の時間において重複するように実行すると共に、第2スキャン処理のみを実行しているときに、加工が完了したラインを含む対象物100の領域を、レーザ加工ヘッド10Aと共に可動とされた撮像ユニットにより撮像する撮像処理を実行する。撮像処理においては、対象物100を透過する光(例えば近赤外領域の光)が用いられる。これにより、第1スキャン処理が行われない時間を利用して、非破壊にてレーザ加工の成否を確認できる。
【0113】
レーザ加工装置1の動作の一例は、次のとおりである。レーザ加工装置1は、対象物100において一部分を剥離する剥離加工を実施する。例えば剥離加工では、支持部7を回転しながら、レーザ加工ヘッド10A,10Bからレーザ光L1,L2をそれぞれ照射すると共に、当該レーザ光L1,L2の集光点それぞれの水平方向における移動を制御することにより、対象物100の内部において仮想面に沿って改質領域を形成する。その結果、仮想面に渡る当該改質領域を境界として、対象物100の一部を剥離可能となる。
【0114】
レーザ加工装置1の動作の一例は、次のとおりである。レーザ加工装置1は、対象物100において不要部分を除去するトリミング加工を実施する。例えばトリミング加工では、支持部7を回転しながら、対象物100における有効領域の周縁に沿った位置に集光点を位置させた状態で、支持部7の回転情報に基づきレーザ加工ヘッド10A,10Bにおけるレーザ光L1,L2の照射の開始及び停止を制御することにより、対象物100における有効領域の周縁に沿って改質領域を形成する。その結果、例えば冶具又はエアーにより、当該改質領域を境界として不要部分を除去可能となる。
【0115】
レーザ加工装置1の動作の一例は、次のとおりである。表面側に機能素子層を有する対象物100に対して、対象物100の裏面から、ラインに沿ってレーザ光L1を機能素子層に照射し、ラインに沿って弱化領域を機能素子層に形成する。対象物100の裏面から、ラインに沿って、レーザ光L1に対して後行するように、レーザ光L1のパルス幅よりも短いパルス幅のレーザ光L2を対象物100の内部に照射する。レーザ光L2の照射により、当該弱化領域を利用して、対象物100の表面に達する亀裂がラインに沿って確実に形成される。
【符号の説明】
【0116】
1…レーザ加工装置、7…支持部、8…光源ユニット、10A,10B,10C,10D…レーザ加工ヘッド(第1レーザ加工ヘッド、第2レーザ加工ヘッド)、11…筐体(第1筐体、第2筐体)、12…入射部、13…調整部、14…集光部、14a…入射瞳面、15…ダイクロイックミラー、16…測定部、17…観察部、18…駆動部、19…回路部、21…第1壁部、22…第2壁部、23…第3壁部、24…第4壁部、25…第5壁部、26…第6壁部、29…仕切壁部、31…アッテネータ、32…ビームエキスパンダ、33…ミラー、34…反射型空間光変調器、34a…反射面、35…結像光学系、65,66,305,306,405,406…取付部(第1取付部、第2取付部)。