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7402828マット材料、それを作製する方法、汚染防止装置及び断熱材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】マット材料、それを作製する方法、汚染防止装置及び断熱材
(51)【国際特許分類】
   B01J 33/00 20060101AFI20231214BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20231214BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B01J33/00 G
F01N3/28 311N
F01N3/28 311P
F01N3/28 311Q
B01D53/94 300
B01D53/94 ZAB
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020570765
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-14
(86)【国際出願番号】 US2019037870
(87)【国際公開番号】W WO2019246180
(87)【国際公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-06-17
(31)【優先権主張番号】62/687,829
(32)【優先日】2018-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】酒匂 健二
(72)【発明者】
【氏名】ラトッド,シャイレンドラ ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ディーツ, ピーター ティー.
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-529369(JP,A)
【文献】特開平11-036853(JP,A)
【文献】特開2002-013415(JP,A)
【文献】特表2009-539031(JP,A)
【文献】特表2007-504400(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/73
53/86-53/90
53/94
53/96
B01J 21/00-38/74
C09J 1/00-201/10
F01N 3/00
3/02
3/04-3/38
9/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動作温度を有する2つの部材間に挟み込まれた状態で使用されるように構成されたマット材料であって、前記使用の前に前記マット材料が、
無機繊維を含み第1の表面及び第2の表面を有するマット状本体部と、
前記本体部の前記第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つに形成された領域に接着された無機接着剤の表面層と、を備え、
前記無機接着剤がアルカリ金属ケイ酸塩を含み、
前記無機接着剤の表面層が前記マット材料の露出面を画定しかつ実質的な乾燥状態にあり
実質的な乾燥状態にある前記無機接着剤が、前記動作温度に加熱されると接着性を示す、マット材料。
【請求項2】
実質的に乾燥しており、前記マット材料を120℃で30分加熱した後の質量損失率は、加熱前のマット材料の質量に基づいて5%以内である、請求項1に記載のマット材料。
【請求項3】
前記無機接着剤が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩を含有する、請求項1又は2に記載のマット材料。
【請求項4】
前記無機接着剤を含有する前記領域が、無機コロイド粒子を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のマット材料。
【請求項5】
動作温度を有する汚染防止装置であって、
ケーシングと、
前記ケーシング内に設けられた汚染防止要素と、
前記ケーシングと前記汚染防止要素との間に配設された請求項1~4のいずれか一項に記載のマット材料と、を備え、
前記マット材料の前記第1の表面は内面であり、前記マット材料の前記第2の表面は外面であり、前記無機接着剤が、(a)前記ケーシングの内面と前記マット材料の前記外面との間、及び、(b)前記マット材料の前記内面と前記汚染防止要素の前記外面との間、の少なくとも1つに配置されている、
汚染防止装置。
【請求項6】
前記マット材料を600℃の温度条件下で1時間加熱した後、固定領域が、(a)前記ケーシングの前記内面と前記マット材料の前記外面との間、及び、(b)前記マット材料の前記内面と前記汚染防止要素の前記外面との間、のうちの少なくとも1つに形成される、請求項5に記載の汚染防止装置。
【請求項7】
200℃以上に達する可能性がある動作温度を有する表面を有する第1の部材と、
前記第1の部材の前記表面と対向する表面を有する第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に配設された、請求項1~4のいずれか一項に記載のマット材料と、を備え、
前記無機接着剤が、(a)前記第1の部材の前記表面と前記マット材料の前記第1の表面との間、及び、(b)前記マット材料の前記第2の表面と前記第2の部材の前記表面との間、の少なくとも1つに配置されている、
断熱構造。
【請求項8】
第1の表面及び第2の表面を有するマット状本体部を提供することと、
アルカリ金属ケイ酸塩を含む無機接着剤を含有する溶液を、前記本体部の前記第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つの一部にコーティングして表面層を形成することと、
前記本体部の上に前記無機接着剤の表面層が形成された後に、乾燥プロセスによって実質的に乾燥したマット材料を得ることとを含む、マット材料を製造する方法。
【請求項9】
られた前記実質的に乾燥したマット材料を120℃で30分加熱した後の質量損失率は、加熱前のマット材料の質量に基づいて5%以内である、
請求項8に記載のマット材料を製造する方法。
【請求項10】
前記マット材料を少なくとも100~150℃の温度条件下で少なくとも10分間加熱した後、前記第1の部材の前記表面と前記マット材料との間に固定領域が形成される、請求項7に記載の断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マット材料、その製造方法、並びに汚染防止装置及び断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車エンジンからの排気ガスは、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)などを含有する。ディーゼルエンジンからの排気ガスは、煤などの粒子状物質を更に含む。これらを除去する手段として、セラミック触媒コンバータ又はディーゼル微粒子フィルタ(DPF)を使用する排気ガス浄化システムが知られている。加えて、ガソリン微粒子フィルタ(GPF)の実装も検討されている。これらのデバイスは一般に、汚染防止装置と呼ばれる。
【0003】
例えば、汚染防止装置(例えば、セラミック触媒コンバータ)は、汚染防止要素(例えば、セラミック製のハニカム形状の触媒担体)と、汚染防止要素を包み込む金属製のケーシングと、汚染防止要素の外周面とケーシングの内面との間の隙間に充填された保持材料とを含む。保持材料は、ケーシング内に汚染防止要素を保持して、汚染防止要素に衝撃や振動などによる機械的衝撃が偶発的に加わることを防止する。保持材料は、汚染防止要素がケーシング内で移動及び破壊することを防止し、汚染防止要素の動作寿命にわたって望ましい効果を提供する。この種の保持材料は、一般に実装用材料と呼ばれる。このような保持材料は、一般に、単一層又は複数の層を含むマット状材料であり、汚染防止要素の周囲に巻き付けられることによって使用される。
【0004】
保持材料は、一般に、優れた断熱性及び耐熱性を達成する観点から、無機繊維などの無機材料を主成分として含む。このような保持材料(実装用材料)は、例えば、特許文献特開昭57-61686号(A)、特開2002-66331号(A)、及び特開2006-223920号(A)に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
保持材料は、汚染防止装置のケーシング内に汚染防止要素を実装する技術分野では、主に保持材料の圧縮反発力及び摩擦力によって使用中の位置のずれを防止するように設計されている。すなわち、保持材料は、ケーシング内の汚染防止要素と一緒に封入された後に、汚染防止要素が所定の位置から移動しないように、保持材料が接触している他の部材の表面(すなわち、ケーシングの内面及び/又は汚染防止要素の外面)に対する圧縮反発力によって、汚染防止要素を保持する。
【0006】
本開示の目的は、加熱環境下で使用される装置又は構造に適用されるマット材料を提供することであり、マット材料は、使用中にマット材料及びそれと接触する他の部材の位置のずれを抑制することができる。本開示の別の目的は、このようなマット材料を製造する方法、及びマット材料を含むデバイス(例えば、汚染防止装置及び断熱構造)を提供することである。
【0007】
本開示の一態様は、マット材料に関する。マット材料は、2つの部材間に挟み込まれた状態で使用される。マット材料は、第1の表面及び第2の表面を有するマット状本体部と、本体部の第1の表面及び第2の表面のうちの少なくとも1つに形成された領域とを含む。この領域は、無機接着剤を含有し、無機接着剤は、加熱されると(例えば、デバイスの動作温度に加熱されるか、又は、マット材料が使用される断熱構造の環境温度に加熱される)、接着性を示す。
【0008】
本開示の別の態様は、上記のマット材料(例えば、汚染防止装置及び断熱構造)を含むデバイスに関する。汚染防止装置は、ケーシングと、ケーシング内に設けられた汚染防止要素と、ケーシングと汚染防止要素との間に配設された上記マット材料とを備えることができる。断熱構造は、200℃以上に達する可能性がある温度を有する表面を備えた第1の部材と、第1の部材の表面と対向する表面を有する第2の部材と、第1の部材と第2の部材との間に配設された上記マット材料と、を備えることができる。
【0009】
別の態様では、本開示は、マット材料を作製又は製造する方法に関する。この製造方法は、第1の表面及び第2の表面を有するマット状本体部を提供することと、無機接着剤を含有する溶液を、本体部の第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つにコーティングすることと、を含み得る。
【0010】
本開示によれば、加熱環境下で使用される装置又は構造に適用されるマット材料が提供され、マット材料によって、使用中にマット材料及びそれに接触する他の部材の位置のずれを完全に防止又は大幅に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示によるマット材料の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の線II-IIに沿った概略的な断面図である。
図3】本開示による汚染防止装置の一実施形態を概略的に示す断面図である。
図4】本開示による断熱構造を概略的に示す断面図である。
図5】マット材料の一部(無機接着剤としてリン酸アルミニウムを使用する)がケーシングの内面に固定された状態を示す写真である。
図6】マット材料の一部(無機接着剤としてケイ酸ナトリウムを使用する)が触媒担体の外面に固定された状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本実施形態によるマット材料は、2つの部材間に挟み込まれた状態で使用され、マット材料は、第1の表面及び第2の表面を有するマット状本体部と、本体部の第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つに形成された領域であって、領域が無機接着剤を含有する、領域と、を備え、無機接着剤が、加熱されると接着性を示す。マット材料を、加熱環境下で使用される装置又は構造に適用することにより、使用中にマット材料及びそれと接触する他の部材の位置のずれを抑制することができる。
【0013】
本実施形態によるマット材料は、汚染防止装置及び断熱構造などのデバイスに適用される。本実施形態による汚染防止装置は、ケーシングと、ケーシング内に設けられた汚染防止要素と、ケーシングと汚染防止要素との間に配設された上記マット材料とを有する。断熱構造は、200℃以上に達する可能性がある温度を有する表面を有する第1の部材と、第1の部材の表面と対向する表面を有する第2の部材と、第1の部材と第2の部材との間に配設された上記マット材料と、を備える。
【0014】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態を詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のマット材料の一例を示す斜視図である。この図面に示したマット材料10は、円形円筒又は楕円形円筒の外形を有する汚染防止要素30の周りに巻き付けられるように、また汚染防止要素30をケーシング20内に保持するように構成されている(図3を参照)。マット材料10は、汚染防止要素30の外周の長さに一致する長さを有する。マット材料10は、例えば、一端に凸部10aを有し、他方の端に凹部10bを有し、マット材料10が汚染防止要素30の周囲に巻かれたときに凸部10aと凹部10bとが互いに嵌合する形状を有している。また、L形状などの他の形状も可能であり、嵌合のための形状は特に限定されないことに留意されたい。
【0016】
マット材料10は、図2に示すように、マット状本体部1と、本体部1の両方の表面に設けられた、約5~約15mmほどの厚さの表面層5(無機接着剤を含む領域)とを含む。本体部1は、第1の表面1aと第2の表面1bとを有する。本体部1は、約3~約10μmの直径(例えば、平均直径)を有することができる無機繊維を含む。本体部1は、必要に応じて配合された他の構成要素を含んでもよい。各表面層5は、加熱されると接着性を示す無機接着剤と、必要に応じて任意に配合された他の成分とを含む。マット材料10は、その1つの表面に表面層5のみを有してもよいことに留意されたい。あるいは、マット材料10は、表面層5を、1つの表面又は両方の表面1a及び1bの領域の一部分又は一部のみに有してもよい。加えて、図2は、表面層5が表面1a及び表面1bにラミネートされた(laminated)状態を示しているが、表面層5が表面1a及び/又は表面1bに接着されている、又は表面層5の一部を本体部1に含浸されている、他の状態が可能である場合がある。
【0017】
上記のように、表面層5は、加熱されると接着性を示す無機接着剤を含有する。本明細書に記載の無機接着剤としては、加熱される際の他の部材との反応生成物の形成による接着のみならず、加熱されると表面層5の無機接着剤によって示される流動性、及び他の部材の表面の接触面への浸透により得られる固着効果(固定状態)による接着性も提供するものが含まれる。接着性が示される温度は限定されないが、例えば200℃以上、300℃以上、又は600℃以上である。例えば、マット材料10は、2つの部材間に挟み込まれた状態で配置され、600℃の温度条件下で1時間放置される。次いで、マット材料10は、他の部材との接着性を示す。加熱されたマット材料10が冷却された後に、マット材料10と他の部材との間に固定領域が形成されているか否かを確認することによって、目視で判断することができる(図5及び6を参照)。
【0018】
無機接着剤は概ね、通常の温度で液体状態であるが、表面層5は、未使用マット材料10上で実質的に乾燥している。本明細書において「実質的に乾燥した」とは、例えば、無機接着剤をコーティングした後の乾燥プロセスによって得られる乾燥状態を指し、このような乾燥状態では、マット材料10を120℃で30分加熱した後の質量損失率は、加熱前のマット材料10の質量に基づいて約5%以内である。表面層5は、実質的に乾燥しているため、マット材料10をデバイスに組み立てる際の作業性に優れるという利点を有する。
【0019】
上記無機接着剤は、例えば、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩である。アルカリ金属塩の具体例としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸リチウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩の具体例としては、ケイ酸マグネシウム及びケイ酸カルシウムなどのアルカリ土類金属ケイ酸塩が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、及びリン酸カルシウムが挙げられる。これらの成分の1種は単独であってもよく、又は2種以上の組み合わせを使用してもよい。
【0020】
上記無機接着剤を含有する液体を本体部1の表面にコーティングした後、乾燥プロセスによって表面層5を形成してもよい。表面層5中の無機接着剤(上記塩)の含有量は、例えば、1g/m~50g/mであり、2g/m~40g/m、又は5g/m~30g/mであってもよい。表面層5の無機接着剤の量は、マット材料10が他の部材に必要とされる接着性に応じて適宜設定することができる。
【0021】
表面層5は、無機コロイド粒子を含有してもよい。無機コロイド粒子を形成するために無機材料の各種微粒子を用いることができるが、好ましい無機材料としては、金属酸化物、窒化物、炭化物、並びに耐熱性を有する材料が挙げられる。例えば、好ましい例としては、シリカ、アルミナ、ムライト、ジルコニア、マグネシア、及びチタニアが挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な材料の例としては、窒化ホウ素及び炭化ホウ素が挙げられる。これらの無機材料は、単独で、又はこれらの2つ以上の組み合わせで使用することができる。
【0022】
上述の無機コロイド粒子は、無機材料の種類及び所望の摩擦改善効果に従って様々な粒径で使用することができるが、約1~100nmの平均粒径を有することが一般的に好ましい。無機コロイド粒子が1nm未満の平均粒径を有する場合、このような無機コロイド粒子は、摩擦増加効果に寄与し得る摩擦層を形成することができない。対照的に、無機コロイド粒子が100nmを超える平均粒径を有する場合、粒子は、摩擦の増加に適切に寄与するには大きすぎるため、脱落し得る。無機コロイド粒子の平均粒径は、より好ましくは約10~80nmの範囲であり、最も好ましくは約20~50nmの範囲である。無機コロイド粒子に関しては、国際公開第2007/030410号を参照することができる。
【0023】
無機接着剤はまた、粘土(カオリン)、ベーマイト、二酸化チタン、ヒュームドシリカ、ヒュームドアルミナ、沈降シリカ、ATH、並びに粘度及び吸収特性を改質するための他の適合性のある一般的なフィラーを含んでもよい。
【0024】
無機接着剤はまた、グリセリン、ソルビトール、他の糖アルコール、及びエチレングリコールなどの保湿剤を含有してもよい。これらの材料は、取り扱い特性を改善するために無機接着剤を可塑化するのに役立ち得る。
【0025】
適合性のある染料及び顔料もまた、無機接着剤の存在及び位置を特定するのを助けるために組み込まれてもよい。接着が所望される表面を濡らすのを助けるために、適合性のある界面活性剤も含まれ得る。
【0026】
表面層5は、必要に応じて、無機繊維を更に含んでもよい。無機繊維の直径は、約1nm~約15nmであってもよく、これらは、例えば、約1nm以上、約2nm以上、又は約3nm以上であり、約15nm以下、約8nm以下、又は約5nm以下であってもよい。約1nm以上の直径を有する無機繊維は、1nmより細い無機繊維と比較して容易に利用可能であるという利点を有する。加えて、このような無機繊維は、汚染防止装置の製造中に、繊維片の飛散を抑制することができる傾向がある。一方、約15nm以下の直径を有する無機繊維は、約15nmよりも太い無機繊維と比較して、デバイスの製造中に繊維片の生成を抑制できる傾向がある。無機繊維の平均長さは、例えば、約500~約5000nmであり、約1000~約4000nm、又は約1400~約3000nmであってもよい。
【0027】
無機繊維の直径(平均直径)及び平均長さ(平均繊維長)は、例えば、顕微鏡画像(TEM画像、SEM画像など)からランダムにサンプリングされた50以上の繊維の太さ及び長さを測定し、その平均値を計算することによって決定することができる。無機繊維のアスペクト比は、平均長さの値を直径の値で割ることによって計算される。
【0028】
上記無機繊維の平均長さは、例えば、約60~約2000であり、約100~約1500nm、又は約300~約800nmであってもよい。アスペクト比が約60以上の無機繊維は、アスペクト比が約60よりも小さい無機繊維と比較して、デバイスの製造中の繊維片の飛散を抑制できる傾向がある。一方、約2000以下のアスペクト比を有する無機繊維は、アスペクト比が約2000よりも大きい無機繊維と比較して容易に利用可能であるという利点がある。無機繊維に関しては、特開2017-210815号を参照することができる。
【0029】
本体部1は、主に無機繊維で構成される。本体部1を構成する無機繊維の具体例としては、ガラス繊維、セラミック繊維、炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ホウ素繊維等が挙げられるが、他の無機繊維を必要に応じて使用することができる。上記のものから選択される1種類の無機繊維は、単独であってもよく、又は2種以上の組み合わせが使用されてもよい。また、無機繊維は複合繊維の形態で使用されてもよい。中でも特に好ましいのは、アルミナ繊維、シリカ繊維、及びアルミナ-シリカ繊維などのセラミック繊維である。1種類のセラミック繊維が単独で使用されてもよく、又は2種以上の組み合わせが使用されてもよい。また、セラミック繊維は複合繊維の形態で使用されてもよい。未膨張バーミキュライトなどの膨張材料もまた、本体部1の総重量の約5~約50%の濃度で本体部1内に収容されてもよい。
【0030】
本体部1は、主に無機繊維を含み、任意の添加剤として有機結合剤を有する。その2つの代表的な製造方法、すなわち、乾式プロセス及び湿式プロセスが存在する。
【0031】
乾式プロセスでは、例えば、アルミナ繊維前駆体は、オキシ塩化アルミニウムなどのアルミナ源とシリカゾルなどのシリカ源と、ポリビニルアルコールなどの有機結合剤と、水との混合物を含むゾル-ゲルを紡糸することによって得られる。この後、アルミナ繊維前駆体をシート状にラミネートし(laminating)、次いでラミネート(laminate)をニードルパンチし、約1000~1300℃の範囲の高温で焼成して本体部1を得る。ニードルパンチ密度は、例えば、約1パンチ/cm~50パンチ/cmであり、この密度を変更することによって、マットの厚さ、バルク比重、及び強度を調整することができる。一方、湿式プロセスでは、出発物質としての無機繊維と有機結合剤とを、任意の添加剤と混合した後、無機繊維を開繊する工程、スラリーを調製する工程、抄造成形、成形型への加圧などを連続的に行うことによって、本体部1が得られる。湿式プロセス(ウェットラミネーションプロセス(wet lamination process))についての詳細については、国際公開第2004/061279号及び米国特許第6,051,193号を参照することができる。有機結合剤の種類及び使用量は特に限定されないことに留意されたい。有機結合剤としては、例えば、ラテックスの形態で提供されるアクリル樹脂、スチレン-ブタジエン樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、天然ゴム、ポリ酢酸ビニル樹脂などを用いることができる。あるいは、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルエステル樹脂などの熱可塑性樹脂を有機結合剤として使用してもよい。
【0032】
本実施形態によるマット材料10を製造する方法は、本体部1を提供することと、無機接着剤を含有する液体を、本体部1の第1の表面1a又は第2の表面1bのうちの少なくとも1つにコーティングすることと、上記液体をコーティングした後に、本体部1に熱を加えることと、を含む。上記製造方法によれば、本体部1の少なくとも1つの表面に表面層5が形成されたマット材料10を得ることができる。
【0033】
本体部1として、有機結合剤及び/又は無機微細粒子を含む無機繊維を含むマットを使用した場合には、表面層5の形成の前に、無機繊維を含むマットに有機結合剤及び/又は無機微細粒子を含有するコロイド溶液を含浸させる工程(工程(a))が行われる。
【0034】
マットが無機微細粒子をその中に含有する場合、微細粒子の含有量が本体部1の総質量に基づいて約1~約10質量%となるように、工程(a)において、コロイド溶液の組成を調整することが好ましい。無機微細粒子の含有量が約1質量%以上であることにより、十分な表面圧が得られやすく、無機微細粒子の含有量が約10質量%以下であることにより、マット材料10を汚染防止要素の周囲に巻き付けるのに十分な可撓性が容易に得られる。
【0035】
コロイド溶液を含浸したマットを乾燥させる工程は、必要に応じて行われることに留意されたい。また、コロイド溶液のこのような乾燥は、他の乾燥工程と共に行うことができることにも留意されたい。例えば、表面層5を形成する工程の後に実施される無機接着剤の乾燥工程と組み合わせることもできる。あるいは、このような工程は、他の溶液をコーティングした後、乾燥工程と組み合わせることもできる。コロイド溶液の乾燥は、例えば、約80~約250℃に設定された温風乾燥機で約10~約180分間行われる。
【0036】
表面層5の形成に用いられる液体は、必要に応じて配合される無機接着剤及び成分(無機繊維及び/又は無機微細粒子)を含有する。本体部1の表面上への液体のコーティングは、例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、フィルム転写、カーテンコーティングなどによって実施されてもよい。単位面積当たりのコーティング量(固形物の質量)は、一実施形態では、例えば、約1g/m~約200g/mである。更に、コーティング量は、一実施形態では、単位面積当たり約10g/m~約175g/mであってもよい。コーティング量は、単位面積当たり約20g/m~約150g/mであってもよい。コーティング後の乾燥工程は、水を揮発させることによって表面層5を形成するためのものである。例えば、溶液でコーティングされた後の本体部1は、約75~約250℃に設定された温風乾燥機で約10~約180分間乾燥させることができる。これにより、本体部1の表面に表面層5が形成される。無機接着剤のコーティングは、表面層のうちの1つの一部、例えばストライプのパターンなどに形成されてもよい。
【0037】
表面層5を形成する工程は、複数の工程に分割されて行われてもよい。例えば、まず、無機接着剤を含有する液体を本体部1の表面に塗布した後、他の成分を含有する液体を本体部1の表面にコーティングしてもよい。順序は逆であってもよく、すなわち最初に、他の成分を含有する液体を本体部1の表面上にコーティングし、次いで、無機接着剤を含有する液体を本体部1の表面上にコーティングしてもよい。無機接着剤は、湿潤した又は乾燥した本体部1のいずれかに適用されてもよい。
【0038】
マット材料10は、図3に示すように、汚染防止装置50内に汚染防止要素30を保持するために使用される。汚染防止要素30の具体例としては、エンジンからの排気ガスの浄化のための、触媒担体、フィルタ要素などが挙げられる。汚染防止装置50の具体例としては、触媒コンバータ及び排気浄化デバイス(例えば、ディーゼル微粒子フィルタデバイス)が挙げられる。
【0039】
図3に示した汚染防止装置50は、ケーシング20と、ケーシング20内に設けられた汚染防止要素30と、ケーシング20の内面と汚染防止要素30の外面との間に配設されたマット材料10と、を含む。汚染防止装置50は、排気ガスを汚染防止要素30に導入するガス流入口21と、汚染防止要素30を通過した排気ガスが排出されるガス流出口22と、を更に含む。
【0040】
汚染防止装置50において、マット材料10は、ケーシング20の内面と汚染防止要素30の外面との間に挟み込まれた状態で配設されている。ケーシング20の内面と汚染防止要素30の外面との間の間隙の幅は、気密性を確保し、マット材料10の使用量を低減する観点から、好ましくは約1.5~約15mmである。マット材料10は、好ましくは、加熱されると、マット材料10がその上に当接する他の部材に固定され得るように、適切に圧縮された状態にある。マット材料10は、ケーシング20の内面に、及び汚染防止要素30の外面に固定されるため、汚染防止装置50内の汚染防止要素30の位置ずれを高度に抑制することができる。加えて、アセンブリの嵩密度は、関連技術における材料と比較して低く設定することができ、したがって、使用される比較的高価な無機繊維材料の量を低減することができる。マット材料10を圧縮及び組み立てるための技術の例としては、クラムシェル(clamshell)技術、スタッフィング(stuffing)技術、及びターニキット(tourniquet)技術が挙げられる。
【0041】
汚染防止要素30は、高温の排気ガスの通過時に高温に達する。汚染防止要素30とマット材料10との間の部分は、200~1100℃ほどの高温に加熱される。一方、マット材料10とケーシング20との間の部分は、100~800℃ほどの高温に加熱される。汚染防止装置50は、加熱されると接着性を示す表面層5を有するマット材料10を含んでいるため、ケーシング20内に汚染防止要素30を強固に保持することができる。
【0042】
触媒担体によって担持される触媒は、一般に、金属(例えば、白金、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、ニッケル、及びパラジウム)並びに金属酸化物(例えば、五酸化バナジウム、及び二酸化チタン)であり、好ましくはコーティングの形態で使用される。汚染防止装置は、触媒担体の代わりにフィルタ要素を適用することによって、ディーゼル微粒子フィルタ又はガソリン微粒子フィルタとして構成され得ることに留意されたい。
【0043】
本開示の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態は、マット材料10を汚染防止装置に適用する例で説明したが、マット材料10は、熱源を含む断熱構造、例えば、排気マニホールド及び排気管、又は高温流体が流れる排気ガスシステム部品、及びその周囲に設置された熱シールドカバーに適用されてもよい。図4に簡単に示すように、断熱構造60は、200℃以上に到達する可能性がある温度を有する表面61aを有する第1の部材61(例えば、高温流体が流れる熱源又は排気ガスシステム部品)と、第1の部材61の表面61aと対向する表面62aを有する第2の部材62(例えば、熱シールドカバー)と、第1の部材61と第2の部材62との間に配設されたマット材料10とを含む。第1の部材61からの熱は、200℃以上の温度に上昇させることができ、マット材料10の無機接着剤を促進して接着性を示す。無機接着剤の接着性により、断熱構造60におけるマット材料10の位置ずれを抑制することができる。
【実施例
【0044】
本開示は、その実施例を参照して説明する。言うまでもなく、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
本体部の作製
以下に列挙する化学物質を、1分間の間隔で撹拌しながら10Lの水に導入し、有機結合剤及び無機微細粒子を含有するコロイド溶液を調製した。
(1)硫酸アルミニウム(固形分濃度40%の水溶液):6g
(2)有機結合剤(日本ゼオン株式会社から入手可能なAcrylic Latex LX874(商品名)):2.6g
(3)コロイドシリカ(日産化学株式会社から入手可能なSnowtex O(商品名)):10g
(4)液体アルミン酸ナトリウム(固形分40%):3.5g
【0046】
ニードルパンチされたアルミナ繊維ブランケット(三菱ケミカル株式会社から入手可能なMaftec MLS-2 Blanket(商品名))を15cm×40cmに切り出した。これを金属メッシュ上に置き、上記のコロイド溶液を上から注いだ後、金属メッシュ上で15秒間吸引して水を除去した。このようにして、上記コロイド溶液をブランケットに含浸させた後、170℃の温度に設定した温風乾燥機で45分間乾燥プロセスを行った。これにより、マット材料の本体部を作製した。
【0047】
無機接着剤を含有する水溶液
水溶液1:濃度50%に希釈したケイ酸ナトリウム(富士化学株式会社から入手可能なケイ酸ナトリウムNo.3)の水溶液を調製した。
水溶液2:濃度50%に希釈したリン酸アルミニウム(多木化学株式会社から入手可能なWR-100B)の水溶液を調製した。
【0048】
実施例1
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、本体部の第1の表面(担体側の表面)上に下記のようにコーティングした。水溶液1を、第1の表面の全面に、固形分に換算して20g/mのコーティング量までスプレーコーティングした。次いで、170℃の温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを実施した。これにより、第1の表面の全面に無機接着剤を含有する領域を形成した。上記と同様な方法で、本体部の第2の表面(ケーシング側面)の全面にも、無機接着剤を含有する領域を形成した。
【0049】
実施例1a
第1の表面及び第2の表面上の水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)のコーティング量(固形分換算)を、それぞれ20g/mの代わりに2g/mとしたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例によるマット材料を作製した。
【0050】
実施例1b
第1の表面及び第2の表面上の水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)のコーティング量(固形分換算)を、それぞれ20g/mの代わりに40g/mとしたこと以外は、実施例1と同様にして、本実施例によるマット材料を作製した。
【0051】
実施例2
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)の代わりに水溶液2(リン酸アルミニウム水溶液)を用いた以外は、実施例1と同様にして、本実施例によるマット材料を作製した。
【0052】
比較例1
実施例1と同様にして作製した本体部(無機接着剤を含有する領域を有さない)を、この例によるマット材料として用いた。
【0053】
加熱される際の接着性の評価
上記実施例及び比較例のマット材料が、加熱されると接着性を示すかどうかを下記のように評価した。マット材料を幅75mm、長さ350mmに切り出し、長さ115mm及び外径105mmを有する円筒状触媒担体(日本ガイシ株式会社から入手可能なHONEYCERAM(商品名))の外周に巻き付けた。これを長さ150mm及び内径114mmを有する円筒状のステンレス鋼ケーシングに、ガイドコーンを使用して、40mm/秒で圧入した。このようにして作製されたコンバータサンプルを600℃で1時間加熱した後、マット材料とケーシングとが位置ずれしないように触媒担体を引き抜き、その後、マット材料の一部がケーシングの内面に固定されたサンプルを、ケーシングとの接着性を有するものとして評価した。結果を表1に示す。図5は、マット材料の一部がケーシングの内面に固定された状態を示す写真であることに留意されたい。
【0054】
上記と同様にして作製したコンバータサンプルを600℃で1時間加熱した後、マット材料と触媒担体が位置ずれしないようにケーシングから引き抜いた。マット材料の一部が触媒担体の外面に固定されたサンプルを、その後、触媒担体との接着性を有するものとして評価した。結果を表1に示す。図6は、マット材料の一部が触媒担体の外面に固定された状態を示す写真であることに留意されたい。
【表1】
【0055】
実施例3
アルミナゾルAS520(日産化学株式会社から入手可能、固形物濃度;20質量%)を水で5質量%の固形物濃度に希釈してコロイド溶液を調製した。このコロイド溶液を、本体部の第1の表面(担体側の表面)上に下記のようにコーティングした。水溶液1を、Spray Gun PS-9513(商品名、アネスト岩田株式会社から入手可能)によって、固形分に換算して5g/mのコーティング量で第1の表面上にコーティングした。次いで、実施例1と同様にして、水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、固形分に換算して20g/mのコーティング量で第1の表面上にスプレーコーティングした。次いで、170℃の温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを行った。これにより、第1の表面の全面に無機繊維及び無機接着剤を含有する領域を形成した。上記と同様な方法で、本体部の第2の表面(ケーシング側の表面)にも、無機繊維及び無機接着剤を含有する領域を形成した。
【0056】
実施例4
上記コロイド溶液(アルミナゾル水溶液)及び水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を噴霧する順序を変更したこと、すなわち、水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を噴霧した後、コロイド溶液(アルミナゾル水溶液)を噴霧したこと以外は、実施例3と同様にして、無機繊維及び無機接着剤を含有する領域を本体部の両方の表面に形成した。
【0057】
触媒担体を引き抜くために必要な力の測定
触媒担体を引き抜くための力を、実施例1~4及び比較例1に従ってマット材料上で下記のように測定した。長さ115mm、外径105mmを有する円筒状触媒担体(日本ガイシ株式会社から入手可能なHONEYCERAM(商品名))の外面を加熱することができるようにヒーターを設置した。マット材料を75mmの幅及び350mmの長さで切り出し、触媒担体の外周に巻き付けた。これを、150mmの長さ及び114mmの内径を有する円筒状のステンレス鋼ケーシングに、40mm/秒で圧入した。圧入の24時間後、これを加熱し、触媒担体とマット材料との間の温度が900℃に達し、マット材料とケーシングとの間の温度が600℃に達した。これらの温度に達した後、ステンレス鋼ケーシングから40mm/秒で触媒担体を引き抜く際に、力(N)を測定した。測定中の最大力(N)から、触媒担体を引き抜くために必要な力(N/cmのマット材料の単位面積当たりの力)を計算した。結果を表2に示す。
【表2】
【0058】
実施例5
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、本体部の第1の表面(担体側の表面)上に下記のようにコーティングした。水溶液を、表面に、固形分に換算して20g/mのコーティング量まで滴下コーティングした。1/2インチの列間の間隔及び1/2インチのドット間の間隔を有する列のウェブ幅にわたって液滴を堆積させた。次いで、170Cの温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを実施した。これにより、無機接着剤を含有する領域を、第1の表面の全面に均一に分布した別個の液滴で形成した。上記と同様な方法で、無機接着剤を含有する領域を、本体部の第2の表面(ケーシング側の表面)の全面に、均一に分布した別個の液滴で形成した。
【0059】
実施例5では、両方の表面がコーティングされているが、第1の表面又は第2の表面のみがコーティングされ得ることも考えられる。表面に適用される量は、実施例5に記載された量とは異なり得る。ドットの列間の距離はまた、例えば、約1/4インチ~約2インチのどこかで異なっていてもよい。
【0060】
実施例6
水溶液1(ケイ酸ナトリウム水溶液)を、本体部の第1の表面(担体側の表面)上に下記のようにコーティングした。水溶液を、表面に、固形分に換算して20g/mのコーティング量までストライプでコーティングした。ストライプは、1/2インチのストライプ間の間隔を有するウェブ幅にわたって堆積させた。次いで、170Cの温度に設定した温風乾燥機で5分間乾燥プロセスを実施した。これにより、無機接着剤を含有する領域を、第1の表面の全面に均一に分布した別個のストライプで形成した。上記と同様な方法で、無機接着剤を含有する領域を、本体部の第2の表面(ケーシング側の表面)の全面に、均一に分布した別個のストライプで形成した。
【0061】
実施例6では、両方の表面がコーティングされているが、第1の表面又は第2の表面のみがコーティングされ得ることも考えられる。表面に適用される量は、実施例6に記載された量とは異なり得る。ストライプ間の距離はまた、例えば、約1/4インチ~約2インチのどこかで異なっていてもよい。更に、実施例6のストライプは直線として想定されるが、非直線のストライプもまた可能であることも考えられる。例えば、ストライプはジグザグ状であってもよく、又は正弦波などとして適用されてもよい。
【0062】
実施例7:
ニードルパンチされたアルミナ繊維ブランケット(3M Company,St.Paul MNから入手可能な3M 1600HTE 1474坪量)を、84cm×520cmに切り取った。
【0063】
PQ corporation Valley Forge PAから入手可能なPQタイプNケイ酸ナトリウム950グラム、グリセリン50グラム、及びClariant Corporation Muttenz Switzerlandから入手可能なアシッドブルーAE03の1グラムを混合することにより、接着剤溶液を調製した。
【0064】
接着剤溶液を、2mmの流体先端を備えた3M 16570 Accuspray Model HG18 Spray Gunを使用して、ニードルパンチされたブランケット上に噴霧した。3つの別個のサンプルを、湿潤接着剤の66、132、及び273グラム毎平方メートルでコーティングした。75℃のオーブン中で45分間乾燥させた後、乾燥コーティング重量はそれぞれ、32、64、及び139グラム毎平方メートルであった。
【0065】
各コーティングされたサンプルから、試験片44.5×44.5mmを切り取った。Maudlin Productsから部品番号316-002-12-100で入手可能な316ステンレス鋼シム(0.05×50×150mm)の片を、ステンレス鋼シムに面する接着剤コーティングを用いて試験片間に均等に配置した。接着剤コーティングされた試料/シム/試料からなるアセンブリを、10psi(68.9kPa)の圧力で、2つの加熱された44.5×44.5mmのプラテン(滑りを防ぐための水平溝を有する)の間に配置し、記載された温度で10分間保持した。10分後、力を記録しながら、シムをアセンブリから100mm/分で取り外した(垂直に引っ張った)。接合形成の証拠(シム上の接着剤又は繊維の存在、又は試料の分離)が認められた。各温度設定点及び接着剤コーティング重量(gsm)の結果については、表3を参照されたい。表3の力は、重量ポンドである。接合点が決定されると、全ての温度範囲を試験する必要はないことに留意されたい。
【表3】
【0066】
本開示によれば、加熱環境下で使用される装置又は構造に適用されるマット材料が提供され、マット材料では、使用中にマット材料及びそれに接触する他の部材の位置のずれを抑制することができる。以下に例示的実施形態を示す。
[項目1]
2つの部材間に挟み込まれた状態で使用されるように構成されたマット材料であって、前記マット材料が、
第1の表面及び第2の表面を有するマット状本体部と、
前記本体部の前記第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つに形成された領域であって、前記領域が無機接着剤を含む、領域と、を備え、
前記無機接着剤が、加熱されると接着性を示す、マット材料。
[項目2]
実質的に乾燥している、項目1に記載のマット材料。
[項目3]
前記無機接着剤が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びリン酸塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩を含有する、項目1又は2に記載のマット材料。
[項目4]
前記アルカリ金属塩が、アルカリ金属ケイ酸塩である、項目3に記載のマット材料。
[項目5]
前記アルカリ金属ケイ酸塩が、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、及びケイ酸リチウムからなる群から選択される少なくとも1つである、項目4に記載のマット材料。
[項目6]
前記リン酸塩が、リン酸アルミニウム、リン酸マグネシウム、及びリン酸カルシウムからなる群から選択される少なくとも1つである、項目3に記載のマット材料。
[項目7]
前記塩の含有量が、前記無機接着剤を含有する前記領域において1g/m ~50g/m である、項目3に記載のマット材料。
[項目8]
前記無機接着剤を含有する前記領域が、前記本体部の前記第1の表面及び第2の表面の両方に形成されている、項目1~7のいずれか一項に記載のマット材料。
[項目9]
前記無機接着剤を含有する前記領域が、前記本体部の前記第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つの全面に形成されている、項目1~8のいずれか一項に記載のマット材料。
[項目10]
前記無機接着剤を含有する前記領域が、前記本体部の前記第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つの一部に形成されている、項目1~8のいずれか一項に記載のマット材料。
[項目11]
前記無機接着剤を含有する前記領域が、無機コロイド粒子を含有する、項目1~10のいずれか一項に記載のマット材料。
[項目12]
前記無機コロイド粒子が、アルミナである、項目11に記載のマット材料。
[項目13]
前記無機接着剤を含有する前記領域が、60~2000のアスペクト比を有する無機繊維を含有する、項目1~12のいずれか一項に記載のマット材料。
[項目14]
前記60~2000のアスペクト比を有する無機繊維が、アルミナ繊維である、項目13に記載のマット材料。
[項目15]
ケーシングと、
前記ケーシング内に設けられた汚染防止要素と、
前記ケーシングと前記汚染防止要素との間に配設された項目1~14のいずれか一項に記載のマット材料と、を備える、汚染防止装置。
[項目16]
前記マット材料を600℃の温度条件下で1時間加熱した後、固定領域が、前記ケーシングの内面と前記マット材料の外面との間、及び前記マット材料の内面と前記汚染防止要素の外面との間、のうちの少なくとも1つに形成される、項目15に記載の汚染防止装置。
[項目17]
200℃以上に達する可能性がある温度を有する表面を有する第1の部材と、
前記第1の部材の前記表面と対向する表面を有する第2の部材と、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に配設された、項目1~14のいずれか一項に記載のマット材料と、を備える、断熱構造。
[項目18]
前記マット材料を600℃の温度条件下で1時間加熱した後、固定領域が、前記第1の部材の前記表面と前記マット材料との間、及び前記マット材料と前記第2の部材の前記表面との間、のうちの少なくとも1つに形成される、項目17に記載の断熱構造。
[項目19]
第1の表面及び第2の表面を有するマット状本体部を提供することと、
無機接着剤を含有する溶液を、前記本体部の前記第1の表面又は第2の表面のうちの少なくとも1つの一部にコーティングすることと、を含む、マット材料を製造する方法。
[項目20]
乾燥プロセスによって実質的に乾燥したマット材料を得ることを更に含む、項目19に記載のマット材料を製造する方法。
[項目21]
前記マット材料を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、前記ケーシングの内面と前記マット材料の外面との間に固定領域が形成される、項目1~14のいずれか一項に記載の汚染防止サポートマット材料。
[項目22]
前記マット材料を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、前記マット材料の内面と前記汚染防止要素の外面との間に固定領域が形成される、項目1~14のいずれか一項に記載の汚染防止サポートマット材料。
[項目23]
前記マット材料を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、前記第1の部材の前記表面と前記マット材料との間に固定領域が形成される、項目17に記載の断熱構造。
[項目24]
前記マット材料を少なくとも約100~150℃の温度条件下で少なくとも約10分間加熱した後、前記マット材料と前記第2の部材の前記表面との間に固定領域が形成される、項目17に記載の断熱構造。
[項目25]
前記塩の含有量が、前記無機接着剤を含有する前記領域において1g/m ~200g/m である、項目3に記載のマット材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6