(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】気泡含有セメントミルクの生成方法
(51)【国際特許分類】
B28C 5/02 20060101AFI20231214BHJP
B01F 23/237 20220101ALI20231214BHJP
E02D 3/12 20060101ALI20231214BHJP
B01F 101/28 20220101ALN20231214BHJP
【FI】
B28C5/02
B01F23/237
E02D3/12
B01F101:28
(21)【出願番号】P 2021019526
(22)【出願日】2021-02-10
(62)【分割の表示】P 2019210531の分割
【原出願日】2019-11-21
【審査請求日】2022-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】517127687
【氏名又は名称】藤井 健之
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100187827
【氏名又は名称】赤塚 雅則
(72)【発明者】
【氏名】藤井 健之
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-069754(JP,A)
【文献】特開2005-214009(JP,A)
【文献】特開平07-207655(JP,A)
【文献】特開平10-183602(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28C 1/00-9/04
B01F 21/00-25/90
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧よりも高圧の圧縮気体と起泡剤によって気泡(13)を生成する気泡生成工程と、
前記気泡(13)を微細化手段に通して微細化する第一微細化工程と、
微細化された前記気泡(13)をその内圧で破裂させてさらに微細な気泡(13)とする第二微細化工程と、
前記第二微細化工程によって微細化された気泡(13)とセメントミルク(17)とを混合する混合工程と、
を有
し、
前記微細化手段が、球状の撹拌部材(27)と、流体の流動方向に対して垂直に互いに離間して設置された複数のフィルタ(28)によって構成された気泡含有セメントミルクの生成方法。
【請求項2】
前記第二微細化工程後の気泡(13)の直径が、20μm以上500μm以下の範囲である請求項1に記載の気泡含有セメントミルクの生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、気泡含有セメントミルクの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建設工事等の工事現場においては、地盤の掘削作業時に工事現場の隣接地側から工事現場側へ土砂が崩壊するのを防止する土留め壁を構築するための柱列杭や、建物を支持するための支持杭が形成される。この杭の施工方法として、例えば下記特許文献1に示す方法がある。この施工方法においては、地盤に掘削した掘削穴の中に、セメント、水、及び、ベントナイトを主成分とするセメントミルクを注入し、掘削に伴って生じた掘削土とセメントミルクを撹拌混合したソイルセメントからなる柱状体を形成する。そして、このソイルセメントが固化する前に掘削穴にH形鋼などの芯材を挿入して、芯材が埋設された柱状体を構築している(特許文献1の段落0017~0037、
図1~
図3など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る土留め壁の構築方法においては、セメントミルク中の水分が掘削穴の内壁に吸収されることによってその内壁が緩みやすく、その一部が柱状体側に崩壊することがある。この崩壊が生じると、ソイルセメントが固化した後の柱状体の強度が不足したり、掘削穴の底部に崩壊した土砂が堆積して、掘削穴への芯材の挿入が困難となったりする等の問題が生じ得る。
【0005】
そこで、この発明は、掘削穴の内壁が柱状体側に崩壊するのを防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、この発明は、地盤に所定深さの掘削穴を形成する掘削工程と、起泡剤によって生成した気泡を含む気泡含有セメントミルクを前記掘削穴に注入しながら前記掘削工程に伴って生じた掘削土と撹拌混合して、前記気泡を含むソイルセメントからなる柱状体を形成する柱状体形成工程と、を有し、前記気泡の内圧を前記掘削穴の内壁に作用させて、該掘削穴の内壁の前記柱状体側への崩壊を防止した杭施工方法を構成した。
【0007】
ソイルセメント中に導入された気泡は、その直径が小さいほど、この気泡の周囲の圧力に対する内圧(ゲージ圧)が高い状態で安定的に保持することができる性質を有している。掘削穴の内壁は、この内壁と接触する気泡の内圧によって径方向外向きに押圧されている。このため、この押圧によって掘削穴の内壁が柱状体側に崩壊するのを防止することができる。
【0008】
前記構成においては、前記気泡の直径が、20μm以上500μm以下の範囲であるのが好ましい。
【0009】
このようにすると、掘削穴の内壁の崩壊防止に必要な押圧力を気泡からその内壁に向かって作用させることができる。
【0010】
また、この発明においては、大気圧よりも高圧の圧縮気体と起泡剤によって気泡を生成する気泡生成工程と、前記気泡を微細化手段に通して微細化する第一微細化工程と、微細化された前記気泡をその内圧で破裂させてさらに微細な気泡とする第二微細化工程と、前記第二微細化工程によって微細化された気泡とセメントミルクとを混合する混合工程と、を有する気泡含有セメントミルクの生成方法を構成した。
【0011】
上記の杭施工方法においては、既述の通り、気泡の直径を小さくするほど気泡の内圧が高い状態で安定的に保持することができるが、微細な気泡を形成するのは容易ではない。そこで、第一微細化工程と第二微細化工程の2工程を順次行った後にセメントミルクを混合することによって、微細な気泡が混合されたセメントミルクを容易に形成することができる。
【0012】
前記構成においては、前記第二微細化工程後の気泡の直径が、20μm以上500μm以下の範囲であるのが好ましい。
【0013】
このようにすると、既述の通り、掘削穴の内壁の崩壊防止に必要な押圧力を気泡からその内壁に向かって作用させることができる。
【0014】
また、この発明においては、起泡剤によって生成した気泡を含む気泡含有セメントミルクと、地盤の掘削によって生じた掘削土とを撹拌混合した柱状体を有し、前記気泡の直径が、20μm以上500μm以下の範囲である杭を構成した。
【0015】
このようにすると、この杭の施工の際に掘削穴の内壁の崩壊が生じず、掘削穴の底まで均質なソイルセメントからなる柱状体を構築することができるため、この杭の十分な強度を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
この発明は、杭施工方法を、地盤に所定深さの掘削穴を形成する掘削工程と、起泡剤によって生成した気泡を含む気泡含有セメントミルクを前記掘削穴に注入しながら前記掘削工程に伴って生じた掘削土と撹拌混合して、前記気泡を含むソイルセメントからなる柱状体を形成する柱状体形成工程と、を有し、前記気泡の内圧を前記掘削穴の内壁に作用させて、該掘削穴の内壁の前記柱状体側への崩壊を防止するようにしたので、ソイルセメント中に導入された気泡による径方向外向きの押圧によって、掘削穴の内壁が柱状体側に崩壊するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明に係る杭施工方法の工程を示す断面図であって、(a)は掘削穴を形成した状態、(b)は気泡含有セメントミルクを注入しつつ撹拌混合を行い、ソイルセメントからなる柱状体を形成している状態、(c)は柱状体が完成した状態
【
図3】杭施工方法の工程を示す断面図であって、(a)は柱状体に1枚目の鋼矢板を挿入しつつある状態、(b)は1枚目の鋼矢板の挿入が完了した状態、(c)は1枚目の鋼矢板の隣に新たに柱状体を形成した状態、(d)は新たに形成した柱状体に、2枚目の鋼矢板を挿入しつつある状態、(e)は2枚目の鋼矢板の挿入が完了した状態
【
図4】この発明に係る気泡含有セメントミルクの生成方法に用いる気泡含有セメントミルクの生成装置を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明に係る杭施工方法の各工程を
図1(a)~(c)を用いて説明する。この杭施工方法は、掘削工程と柱状体形成工程を主要な構成要素としている。
【0019】
掘削工程は、
図1(a)に示すように、地盤Gに所定深さの掘削穴10を形成する工程である。オーガ11の下端側には掘削刃12が取り付けられており、このオーガ11を回転駆動すると掘削刃12によって地盤Gが掘削される。
【0020】
柱状体形成工程は、
図1(b)に示すように、気泡13を含む気泡含有セメントミルク14を掘削刃12の下端に設けられたノズルから噴射するとともに、掘削刃12を回転しながら複数回上下動することにより、掘削穴10内の掘削土15と気泡含有セメントミルク14を撹拌混合して、気泡13を含むソイルセメントからなる柱状体16を形成する工程である。
【0021】
気泡含有セメントミルク14の生成に用いられるセメントミルク17(
図4参照)は、セメントと水を主成分とする。この主成分の配合割合(配合量)は、例えば、セメント:水=200kg:300kgとされる。この配合割合のとき、水セメント比(水/セメント×100)は150となる。このセメントミルク17に、起泡剤によって生成した気泡13が、例えば約200L導入され、上記の配合量の場合、気泡13を含む気泡含有セメントミルク14の総体積は約550~600Lとなる。このとき、気泡含有セメントミルク14の総体積に占める気泡13の割合(気泡注入率)は約0.35となり、その比重は約0.91となる。この実施形態においては、起泡剤として界面活性剤(商品名:エマール(花王株式会社製))を使用した。
【0022】
この実施形態に用いられる気泡含有セメントミルク14は、気泡13の発生に伴う体積増加に対応して、通常のセメントミルク(例えば、水セメント比が250)よりも水分量を少なめに調整されている。このため、この気泡含有セメントミルク14を用いて生成されたソイルセメントは、通常のソイルセメントよりも高い粘度を有している。このように、気泡含有セメントミルク14の水分量を減らすことにより、気泡含有セメントミルク14から地盤Gへの水分の吸収量が減少する。このため、地盤Gが水分の吸収によって緩み、掘削穴10の内壁がソイルセメントからなる柱状体16側に向かって崩壊するのを防止する効果が一層高まる。
【0023】
起泡剤には、生成した気泡13を安定化させるための添加剤を適宜添加することが許容される。この添加剤として、例えば、気泡含有セメントミルク14の粘性を高める高分子化合物を採用することができる。
【0024】
なお、石や砂が多く内壁が崩壊しやすい土質の場合は、セメントミルク17に若干量のベントナイト(例えば、セメント200kgに対してベントナイト25kg)を添加することも許容される。このように、ベントナイトを添加するとその粘土質成分が内壁に浸透してこの内壁を保護するため、この内壁の崩壊をより確実に防止することができる。
【0025】
柱状体形成工程が完了すると、
図1(c)に示すように、掘削穴10の中に、気泡含有セメントミルク14と掘削土15が撹拌混合され、気泡13が均等に導入されたたソイルセメントからなる柱状体16が形成される。
【0026】
図1(c)中のA部の拡大図を
図2に示す。柱状体16の内部には、高密度に気泡13が導入されている。気泡13の平均直径は、例えば、約500μmとすることができる。この気泡13の一部は、掘削穴10の内壁と接している。なお、
図2においては、各気泡13を独立気泡のように図示したが、実際には、多数の気泡13が連結した連続気泡となっていることが多く、この連続気泡が掘削穴10の内壁の広い範囲に亘って接触している。
【0027】
この気泡13は、後述する気泡含有セメントミルクの生成装置18(
図4参照)に接続された圧縮気体の送出装置(図示せず)から送出される高圧気体(例えば0.7MPa(約7気圧))によって生成される。この高圧気体の体積と、気泡含有セメントミルク14の体積増加分(気泡含有セメントミルク14と元のセメントミルク17との体積差。
図4中のΔV参照。)は、ほぼ同じであり、かつ、気泡含有セメントミルクの生成装置18からの高圧気体の漏れはないことから、気泡13の内圧は、元の高圧気体の圧力と同程度であると推定できる。このように、高い内圧の気泡13を掘削穴10の内壁に作用させることにより(
図2参照)、その内壁が柱状体16側に崩壊するのを防止することができる。
【0028】
一般的に、気泡13の内外の圧力差Δpは、次に示すYoung-Laplaceの式から導出される。
Δp=p-p’=2γ/R
ここで、pは気泡内部の圧力、p’は気泡外部の圧力、γは表面張力、Rは気泡半径である。
【0029】
Young-Laplaceの式は、表面張力γが大きいほど、あるいは、気泡半径Rが小さいほど、気泡13の内外の圧力差Δpが高くなることを示している。例えば、起泡剤(界面活性剤)の表面張力γが50mN/mとすると、気泡半径Rが250μm(直径が500μm)のとき圧力差Δpは約400Pa(0.004気圧)となる。この圧力差Δpは、圧縮気体の送出装置から送出される高圧気体の圧力(例えば0.7MPa)と比較すると非常に小さい。この理由は明らかではないが、例えば、セメントミルク17の見かけ上の表面張力が、起泡剤の表面張力よりも非常に大きく、高い内圧の気泡13を維持し得るようになっていること等が考えられる。
【0030】
気泡13の直径は特に限定されないが、20μm以上500μm以下の範囲とするのが好ましい。直径が20μmより小さい気泡13を生成するのは難しく、作業コストの上昇の虞があるため好ましくない。また、直径が500μmより大きい気泡13は、掘削穴10の内壁の崩壊を防止し得る十分な内圧pを維持することが難しいため好ましくない。気泡13の直径は、100μm以上500μm以下の範囲とするのがより好ましい。
【0031】
ソイルセメントからなる柱状体16には、
図3(a)~(e)に示すように芯材19が埋設される。この実施形態では、芯材19として鋼矢板を採用した。まず、未固化状態の柱状体16に、掘削穴10aの底部に至るまで1枚目の鋼矢板19aを挿入する(
図3(a)(b)参照)。1枚目の鋼矢板19aを挿入し終えたら、その鋼矢板19aに隣接する掘削穴10bを形成し、その掘削穴10bに新たに柱状体16を形成する(
図3(c)参照)。そして、その新たに形成した柱状体16に2枚目の鋼矢板19bを挿入する。1枚目の鋼矢板19aと2枚目の鋼矢板19bは、各鋼矢板19a、19bの横幅方向両端部に形成されたジョイントによって互いに連結される(
図3(d)(e)参照)。
図3(c)~(e)に示す作業を繰り返すことによって、必要枚数の鋼矢板(芯材19)を連結した土留め壁20が構築される。
【0032】
このようにして構築された杭(土留め壁20)は、柱状体16の内部に直径が、20μm以上500μm以下の範囲の直径の気泡13を含んでおり、この気泡13の高い内圧pが掘削穴10(10a、10b)の内壁を径方向外向きに押圧する。このため、杭の施工の際に掘削穴10(10a、10b)の内壁の崩壊が生じず、掘削穴10(10a、10b)の底まで均質な柱状体16を構築することができ、この杭の十分な強度を確保することができる。
【0033】
ここでは、鋼矢板19a、19bを用いた土留め壁20を例示して説明したが、この発明は、建物の地盤改良杭などにも適用することができる。また、芯材19は鋼矢板19a、19bに限定されず、H形鋼などの他形状のものも採用することができる。
【0034】
このように、ソイルセメントに気泡13を導入することにより、柱状体16とこの柱状体16に挿入される芯材19との間の摩擦力が低下する。このため、柱状体16への芯材19の挿入、及び、土留め壁20の用済み後における柱状体16からの芯材19の引き抜きをスムーズに行うことができるというメリットもある。
【0035】
気泡含有セメントミルク14は、以下において説明する気泡含有セメントミルクの生成方法によって生成される。この気泡含有セメントミルクの生成方法は、気泡生成工程、第一微細化工程、第二微細化工程、及び、混合工程を有する。
【0036】
気泡生成工程は、大気圧よりも高圧の圧縮気体と起泡剤によって気泡13を生成する工程である。この気泡生成工程においては、高圧の圧縮気体と気泡13の総体積がほぼ同じとなるように工程管理されており、気泡13の内圧は、圧縮気体の圧力とほぼ同じと推定される。圧縮気体の圧力は、0.1MPa以上1.0MPa以下の範囲内とするのが好ましく、0.3MPa以上0.9MPa以下の範囲内とするのがさらに好ましく、0.5MPa以上0.8MPa以下の範囲内とするのがさらに好ましい。この圧縮気体として、圧縮空気、圧縮窒素などの種々の気体を採用することができる。
【0037】
第一微細化工程は、起泡剤によって生成した気泡13を微細化手段に通して微細化する工程である。混合工程によって生じた気泡13の中には、直径が数mm以上の大きなものも混在している。このように大きな気泡13は、その内圧をあまり高くすることができないため、掘削穴10の内壁を押圧する効果は低い。そこで、大きな気泡13を第一微細化工程で微細化することにより、高い内圧の気泡13が高密度に形成され、掘削穴10の内壁を効果的に押圧することができる。
【0038】
第二微細化工程は、第一微細化工程によって微細化された気泡13を自己破裂させてさらに微細な気泡13とする工程である。第一微細化工程によって大部分の気泡13は微細化されているが、一部の気泡13は十分に微細化されていないことがある。このとき、十分に微細化されていない気泡13の内圧は、その直径からすると過大で不安定な状態となっている。この微細化されていない気泡13は、しばらく放置しておくとその内圧で自己破裂し、これにより微細な気泡13が高密度に生成される。第二微細化工程によって得られた気泡13の総体積は、気泡生成工程で使用された高圧の圧縮気体の体積とほぼ同じである。このため、この気泡13の内圧も、圧縮気体の圧力とほぼ同じと推定される。
【0039】
混合工程は、起泡剤によって生成した気泡13とセメントミルク17を混合する工程である。この混合工程によって、内部に気泡13が取り込まれた気泡含有セメントミルク14が生成される。この気泡含有セメントミルク14の体積は、セメントミルク17と第二微細化工程で得られた気泡13の体積の合計とほぼ同じである。このため、気泡含有セメントミルク14中の気泡13の内圧も、圧縮気体の圧力とほぼ同じと推定される。
【0040】
上記の一連の気泡含有セメントミルクの生成方法を実現する気泡含有セメントミルクの生成装置18の一例を
図4に示す。この気泡含有セメントミルクの生成装置18は、複数の気泡生成部21と、気泡生成部21同士を接続する接続管22と、最上流側の気泡生成部21の上流側に接続された気体導入管23及び起泡剤導入管24と、最下流側の気泡生成部21の下流側に接続された排出管25と、排出管25の下流側に設けられたミキサー26とを有している。
【0041】
気泡生成部21は一方向に向かって流体を流動させることが可能な管状となっている。この気泡生成部21の内部には、球状(ビーズ状)の撹拌部材27が充填されており、さらに、流体の流動方向に対して垂直に、複数のフィルタ28が互いに離間して設置されている。この撹拌部材27とフィルタ28が既述の微細化手段に対応する。気体導入管23には、圧縮気体の送出装置(図示せず)が、起泡剤導入管24には、起泡剤タンク(図示せず)がそれぞれ接続されており、この気体導入管23を通って高圧の圧縮気体(この実施形態では圧縮空気)が、起泡剤導入管24を通って起泡剤がそれぞれ最上流側の気泡生成部21に送り込まれる。
【0042】
圧縮気体と起泡剤の混合に伴って気泡13が生成し、その気泡13は、撹拌部材27の間の隙間、及び、フィルタ28を通過する際に微細化される(第一微細化工程)。複数の気泡生成部21を直列配置することにより、気泡13を所定の直径までスムーズに微細化することができる。撹拌部材27のサイズや充填量、フィルタ28の目の粗さや枚数等は、微細化後の気泡13の直径に対応して適宜変更される。また、気泡生成部21の連結数も適宜変更することが可能である。第一微細化工程によって微細化された気泡13は、最下流側の気泡生成部21の下流側から排出管25に送られる。
【0043】
なお、
図4に示した気泡含有セメントミルクの生成装置18の気泡生成部21は、撹拌部材27とフィルタ28の両方を併用したが、いずれか一方のみを採用した構成とできる場合もある。また、撹拌部材27やフィルタ28の代わりに、他の微細化手段を採用できる場合もある。また、この構成においては、4台の気泡生成部21を直列配置したが、この台数は適宜増減することもできる。
【0044】
排出管25は、その長さが数メートルから20メートル程度の可撓性ホースである。気泡生成部21から送出された気泡含有セメントミルク14が排出管25を通過するには、数秒から数十秒程度を要する。そして、その通過の間に、気泡生成部21を通過する間に十分に微細化されなかった気泡13をその内圧で自己破裂させて微細な気泡13を生成する(第二微細化工程)。これにより、ほとんどの気泡13が十分微細化され、この気泡13の高い内圧pによって径方向外向きに掘削穴10の内壁を押圧することによって、この内壁の崩壊を防止することができる。
【0045】
ミキサー26は、気泡含有セメントミルク14を生成し一時的に貯めておくための容器である。このミキサー26には、予め少量のセメントミルク17が充填されており、このセメントミルク17中に排出管25の先端が挿入されている。排出管25から気泡13を供給すると、この気泡13がセメントミルク17中に取り込まれてその体積が増加し(
図4中の白抜き矢印参照)、気泡含有セメントミルク14が生成される。
【0046】
上記の実施形態において示した杭施工方法、気泡含有セメントミルクの生成方法、及び、杭はあくまでも例示であって、掘削穴10の内壁が柱状体16側に崩壊するのを防止する、というこの発明の課題を解決し得る限りにおいて、杭施工方法及び気泡含有セメントミルクの生成方法の工程の一部や、杭の構成の一部に変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0047】
10(10a、10b) 掘削穴
11 オーガ
12 掘削刃
13 気泡
14 気泡含有セメントミルク
15 掘削土
16 柱状体
17 セメントミルク
18 気泡含有セメントミルクの生成装置
19 芯材
19a、19b 鋼矢板
20 土留め壁
21 気泡生成部
22 接続管
23 気体導入管
24 起泡剤導入管
25 排出管
26 ミキサー
27 撹拌部材
28 フィルタ
G 地盤