(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】筆記具
(51)【国際特許分類】
B43K 3/00 20060101AFI20231214BHJP
B43K 29/02 20060101ALI20231214BHJP
B43K 24/12 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B43K3/00 K
B43K29/02 Z
B43K29/02 F
B43K24/12
(21)【出願番号】P 2021176734
(22)【出願日】2021-10-28
(62)【分割の表示】P 2017094263の分割
【原出願日】2017-05-10
【審査請求日】2021-11-29
(31)【優先権主張番号】P 2016095099
(32)【優先日】2016-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 雅也
(72)【発明者】
【氏名】濱田 雅文
(72)【発明者】
【氏名】澤 幸儀
【審査官】内藤 万紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-206013(JP,A)
【文献】特開2010-274462(JP,A)
【文献】実開平05-012186(JP,U)
【文献】特開2011-173339(JP,A)
【文献】実開昭50-042830(JP,U)
【文献】特開平11-268476(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 3/00
B43K 29/02
B43K 24/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に複数の筆記体を収容するとともに、
該軸筒の後端付近から先端方向に長手方向に沿って形成される複数のスライド窓と、
該軸筒の後端に装着される機能部と、
前記複数の筆記体の後端に接続されるノック棒と、
前記ノック棒の一部として形成されるとともに前記スライド窓から外方に突出するスライドボタンと、を有する筆記具であって、
前記複数の筆記体のうち少なくとも2つ及び前記機能部はそれぞれ、消しゴム、摩擦用ラバー及び被覆消去材のいずれかである消去具として形成され、
前記消去具はそれぞれ、前記複数の筆記体のうち前記消去具として形成されたもの以外による描線の消去に対応するとともに、
前記複数の筆記体のうち少なくとも1つは、筒部の内部に円筒形状の前記消去具が挿入された構造を有し、
前記筒部の正面及び背面にはそれぞれ複数個かつ同数のストッパ孔が形成され、
長手方向に沿った断面がT字型を呈するストッパが前記ストッパ孔に挿入されることで、前記消去具が押圧で後方に押し戻されるのが防がれていることを特徴とす
る筆記具。
【請求項2】
軸筒内に複数の筆記体を収容するとともに、
該軸筒の後端付近から先端方向に長手方向に沿って形成される複数のスライド窓と、
該軸筒の後端に装着される機能部と、
前記複数の筆記体の後端に接続されるノック棒と、
前記ノック棒の一部として形成されるとともに前記スライド窓から外方に突出するスライドボタンと、を有する筆記具であって、
前記複数の筆記体のうち少なくとも2つ及び前記機能部はそれぞれ、消しゴム、摩擦用ラバー及び被覆消去材のいずれかである消去具として形成され、
前記消去具はそれぞれ、前記複数の筆記体のうち前記消去具として形成されたもの以外による描線の消去に対応するとともに、
前記複数の筆記体のうち少なくとも1つは、円筒形状の前筒及びこの前筒より長い円筒形状の後筒が、介在部により連結された構造を有し、
前記前筒には、中筒が外挿された円筒形状の前記消去具が挿入され、
前記介在部は、前記前筒の後端から摺動可能に挿入される円柱形状の摺動部と、この摺動部の前方に位置するとともに外径がやや小径で前記中筒の後端に挿入されて固定される部分である円柱形状の前方挿入部と、前記後筒の前端から挿入されて固定される円柱形状の後方挿入部と、前記摺動部及び前記後方挿入部より小径でこれらを連結するとともに外周にスプリングが外挿される円柱形状の縮径部と、を有し、
当該筆記体に対応する前記スライドボタンを前記スライド窓に沿って前方へ押圧することで、前記後筒及び前記介在部が前記中筒を前方へ押圧し、前記消去具が軸筒の先端から露出可能となることを特徴とす
る筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、筆記具の後端に様々な部品を取り付けることがあった。たとえば、筆記具がシャープペンシルの場合には消しゴムがそのような部品として取り付けられることが多い。また、熱変色性のインクを使用するボールペンの場合には、摩擦用のラバーをそのような部品として後端に取り付けることもある。
下記特許文献1には、ゴム状弾性を有する弾性部を、軸筒の後部にネジ嵌合により着脱自在な頭冠に取り付けた多芯筆記具が開示されている。
また、下記特許文献2には、軸筒の後端に孔を設けて、そこにイヤフォンジャックアクセサリーを取り付け可能とした多芯筆記具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-49192号公報
【文献】特開2015-143020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、筆記具の後端に、ネジ嵌合のような回転取り付け動作も要さず、かつ、孔のような意匠性を減ずるような構造も要さずに、着脱容易な取付部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決すべく、本発明は、軸筒51内に複数の筆記体56を収容するとともに、該軸筒51の後端付近から先端方向に長手方向に沿って形成される複数のスライド窓53を有する筆記具50の後端に取り付ける筆記具取付部品10であって、
前記筆記具50の後端に接する先端面21と、
前記先端面21から前記筆記具50の先端方向へ突設されるとともに、前記複数のスライド窓53の各々に対応する複数の係合爪30と、を備え、
前記各係合爪30は、前記先端方向へ延伸する延伸片31と、該延伸片31の先端において筆記具50の中心軸方向へ折れ曲がった係止片32とを備えるとともに、該係止片32は前記スライド窓53の後端に係止するものであることを特徴とする。
【0006】
なお、以下の記載では、筆記具50の先端側に当たる方向を「先端」側とし、その反対側を「後端」側とする。
「スライド窓53」とは、筆記具50内に収容されている軸筒51のノック動作のためのスライドボタン55等が前後にスライドする空間として設けられた開口部である。本発明に係る筆記具取付部品10は、筆記具50後端に取り付けられる際、このスライド窓53の後端に係止することとなっている。具体的には、筆記具取付部品10の先端面21から突設される係合爪30のうち延伸片31が、筆記具50後端縁から筆記具50先端方向へ延伸する。そしてその延伸片31の先端は中心軸方向に折れ曲がり係止片32となっており、これがスライド窓53の後端に係止する。この係止片32による係止は、各スライド窓53の少なくとも一部について行われる。
【0007】
なお、係合爪30の材質については特に限定はないが、スライド窓53への着脱の際に若干の弾性変形が起こることを考慮すると金属で形成することが望ましい。
以上により、筆記具50のスライド窓53に対応する複数の係合爪30を備えることで、筆記具取付部品10は若干の弾性変形をもって容易に筆記具50に取り付けることができる。
【0008】
また、本発明に係る筆記具取付部品10は、前記先端面21を有する基部20と、該基部20の後端側に装着される機能部15とを備えることとしてもよい。ここで、「機能部15」とは、筆記具取付部品10に何らかの機能を具備させるものをいう。たとえば複数の筆記体56のうちにシャープペンシルリフィル61が含まれている場合には、機能部15として消去体57としての消しゴムを備えることもできる。また、複数の筆記体56のうちに含まれるボールペンリフィル60に、熱変色性のインクが充填されている場合には、消去体57としての摩擦用のラバーを機能部15として備えることもできる。なお、熱変色性インクとは、常温(たとえば25℃)で所定の色彩(第1色)を維持し、所定温度(たとえば65℃)まで昇温させると別の色彩(第2色)へと変化し、その後、所定温度(たとえば10℃)まで冷却させると、再び元の色彩(第1色)へと復帰する性質を有するインクをいう。一般的には第2色を無色とし、第1色(たとえば赤)で筆記した描線を昇温させて無色とする構成となる。その他、機能部15として、印鑑や、固形着色具、ストラップ等、また、装飾目的のアクセサリー等を備えることも可能である。なお、機能部15の消去体57としての機能は上記に限られるものではなく、筆記体56の描線の性質に応じた様々なものを採用することができる。
【0009】
なお、複数の筆記体56のうち、少なくとも1つを、いずれかの筆記体56の描線を消去するための消去体57として形成されていることとしてもよい。
【0010】
さらに、本発明に係る筆記具取付部品10は、前記機能部15を覆う被覆部40を備えることとしてもよい。すなわち、機能部15に対するキャップやカバーといったものを「被覆部40」とすることができる。
また、本発明に係る筆記具取付部品10を後端に取り付けた筆記具50そのものを製品とすることもできる。そして、筆記具取付部品10は、摩耗や破損等の必要に応じ、また、使用者の所望により、交換することが可能である。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のように構成されているので、筆記具の後端に、ネジ嵌合のような回転取り付け動作も要さず、かつ、孔のような意匠性を減ずるような構造も要さずに、着脱容易な取付部品を提供することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具取付部品を装着した筆記具において、(A)筆記体の収納状態及び(B)筆記体の突出状態をいずれも右側面図で示す。
【
図2】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具取付部品を(A)上方斜視図、(B)平面図、(C)正面図及び(D)右側面図で示す。
【
図3】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具取付部品を(A)下方斜視図及び(B)底面図で示す。
【
図4】
図2(C)におけるIV-IV断面図を示す。
【
図5】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具取付部品の基部を(A)上方斜視図、(B)平面図、(C)正面図及び(D)右側面図で示す。
【
図6】
図5(C)におけるVI-VI断面図を示す。
【
図7】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具取付部品の被覆部を(A)正面図、(B)下方斜視図及び(C)底面図で示す。
【
図8】
図7(A)におけるVIII-VIII断面図を示す。
【
図9】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具取付部品の筆記具への取り付けの状態を(A)下方斜視図及び(B)上方斜視図にて示す。
【
図10】本発明の第1の実施の形態に係る筆記具取付部品を装着した筆記具を右側面断面図で示す。
【
図11】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具取付部品を装着した筆記具において、筆記体の収納状態を(A)正面図、(B)右側面図及び(C)(A)のXI-XI断面図で示す。
【
図12】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具取付部品を装着した筆記具において、先軸を取り外した状態を示した斜視図である。
【
図13】本発明の第2の実施の形態で用いられるシャープペンシル芯に用いる黒色粒子を示す概略図面であり、(A)は概略側面図、(B)は概略平面図である。
【
図14】本発明の第2の実施の形態に係る消しゴムリフィルを、(A)斜視図、(B)正面図、(C)右側面図、(D)(B)におけるXIV-XIV断面図、(E)背面図、(F)底面図及び(G)平面図で示す。
【
図15】
図14における筒部を、(A)背面側を上向きにした斜視図、(B)背面側を上向きにした左側面図、(C)正面図、(D)右側面図及び(E)(C)におけるXV-XV断面図で示す。
【
図16】
図14におけるストッパを、(A)斜視図、(B)正面図、(C)右側面図、(D)(B)におけるXVI-XVI断面図、(E)背面図及び(F)底面図で示す。
【
図17】本発明の第2の実施の形態に係る固形芯リフィルを、(A)左側面側を上向きにした斜視図、(B)左側面図、(C)正面図、(D)右側面図及び(E)(C)におけるXVII-XVII断面図で示す。
【
図18】
図17における筒部を、(A)背面側を上向きにした斜視図、(B)背面図、(C)左側面図、(D)正面図、(E)底面図及び(F)平面図で示す。
【
図19】
図17におけるストッパを、(A)下方斜視図、(B)正面図、(C)上方斜視図、(D)底面図、(E)右側面図、(F)平面図及び(B)におけるXIX-XIX断面図で示す。
【
図20】本発明の第2の実施の形態に係る摩擦用ラバーリフィルを斜視図で示す。
【
図21】本発明の第2の実施の形態に係る他の例の摩擦用ラバーリフィルについて、(A)摩擦用ラバーの不使用時の状態、(B)摩擦用ラバーの使用時の状態及び(C)(B)の先端部を拡大した状態をそれぞれ断面図で示す。
【
図22】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具取付部品を(A)上方斜視図、(B)平面図、(C)正面図及び(D)右側面図で示す。
【
図23】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具取付部品を(A)下方斜視図及び(B)底面図で示す。
【
図24】(A)
図23(B)におけるXXIVa-XXIVa断面図及び(B)
図22(C)におけるXXIVb-XXIVb断面図を示す。
【
図25】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具取付部品の基部を(A)上方斜視図、(B)平面図、(C)正面図及び(D)右側面図で示す。
【
図26】
図25に示す基部の係合爪を取り付ける前の状態を(A)上方斜視図、(B)平面図、(C)正面図、(D)背面図、(E)底面図及び(F)下方斜視図で示す。
【
図27】
図25に示す基部の係止板を(A)上方斜視図、(B)平面図、(C)正面図、(D)背面図、(E)底面図及び(F)下方斜視図で示す。
【
図29】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具取付部品の筆記具への取り付けの状態を(A)下方斜視図及び(B)上方斜視図にて示す。
【
図30】本発明の第2の実施の形態に係る筆記具取付部品を装着した筆記具を右側面断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
(1)第1の実施の形態
(1-1)筆記具50
図1は、第1の実施の形態に係る筆記具取付部品10を装着した筆記具50を示したものである。筆記具50は、軸筒51内に3本の筆記体56としてのボールペンリフィル60を収容したいわゆる多機能筆記具である。各筆記体56の後端にはノック棒54が接続されている。このノック棒54の一部が外方に突出した突起として形成され、これをスライドボタン55と称する。一方、軸筒51には、各筆記体56に対応したスライド窓53が長手方向に沿って設けられている。各スライドボタン55は対応するスライド窓53から外方へ突出し、該スライド窓53に沿って前後方向へ摺動する。
図1(A)では全てのスライドボタン55が各スライド窓53の後端に位置している。この状態では、軸筒51の先端からはいずれの筆記体56も突出せずに、軸筒51の内部へ収納されている。この状態から、いずれかのスライドボタン55を先端方向へ摺動させ、該スライドボタン55が対応するスライド窓53の先端に達すると、
図1(B)に示すように対応する筆記体56が軸筒51の先端から突出する。なお、筆記具50の後端には筆記具取付部品10が装着されているが、この装着方法については後述する。
【0014】
(1-2)筆記具取付部品10
筆記具取付部品10は、
図2~4に示すような構造を有する。すなわち、略円柱状の基部20の後端側に、略円筒状の被覆部40が装着されている(
図2(A)、(C)、(D)、
図3(A)及び
図4参照)。また、基部20の先端面21は、筆記具50の後端面に合わせた凹曲面に形成されており(
図4)、そこからステンレス製で断面L字状の係合爪30が先端方向へ突設されている(
図3(A)及び
図4参照)。係合爪30は、長手方向に沿って延伸している延伸片31と、この延伸片31の先端から中心軸方向へ直角に折れ曲がっている係止片32とから成る(
図2(C)、(D)、
図3(A)及び
図4参照)。係合爪30は、
図1に示すスライド窓53に対応する位置に設けられている。さらに、基部20には略円柱状の機能部15が装着されている。被覆部40はこの機能部15をも被覆している(
図4参照)。本実施の形態ではこの機能部15は消しゴムである。
【0015】
基部20は、
図5及び
図6に示すように、その後端部分の外径が小さくなっており、この部分が縮径部22となっている。また、この縮径部22の外周の後端近傍には、周方向に沿って外方へ突出した外方係止突条23が設けられている。さらに、この縮径部22の内部空間は、機能部15(
図4参照)を収容する収容部24となっている(
図5(A)、(B)及び
図6参照)。この基部20は、係合爪30を金型に挿入した状態で合成樹脂を射出成形するインサート成形により形成されている。
【0016】
被覆部40は、
図7及び
図8に示すように、前記縮径部22よりわずかに大きな内径を有する略円筒形状を呈する。被覆部40の後端面41は緩やかな傾斜の円錐台状に形成されているとともに、その中心には通気孔42が形成されている(
図7(C)及び
図8参照)。また、被覆部40内周面のやや先端側寄りには、周方向に沿って内方へ突出した内方係止突条43が設けられている(
図7(B)及び
図8参照)。被覆部40は合成樹脂の射出成形により形成されている。なお、合成樹脂に帯電防止剤としてアルキルスルホン酸ソーダやアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、等を混練、成形させることで埃等の付着汚れを防止することができる。
【0017】
(1-3)筆記具取付部品10の取り付け及び取り外し
被覆部40を基部20へ装着する際には、縮径部22の後端側から被覆部40を被せ、内方係止突条43が外方係止突条23を弾性変形により乗り越えるようにして先端方向へ押圧すると、
図4に示すような装着状態となる。内部の機能部15を使用する際には、被覆部40を把持して後方へ引っ張ると、内方係止突条43が再び弾性変形により外方係止突条23を乗り越え、被覆部40が基部20から離れることとなる。
【0018】
筆記具取付部品10を筆記具50に取り付ける際には、
図9(A)及び(B)に示すように係合爪30をスライド窓53の位置に合わせた状態で、先端方向へ押圧する。これにより、延伸片31のわずかな外方への弾性変形を経て、係止片32がスライド窓53の後端へ係合することとなる(
図10参照)。また、取り外す際には、筆記具取付部品10を強く後方へ引っ張ることで、延伸片31が外方へ弾性変形し、係止片32とスライド窓53との係合が解除されることとなる。
【0019】
(2)第2の実施の形態
(2-1)筆記具50
図11は、第2の実施の形態に係る筆記具取付部品10を装着した筆記具50を示したものである。本実施の形態も前記第1の実施の形態と同様、いわゆる多機能筆記具であるが、前記第1の実施の形態とは、軸筒51内には3本の筆記体56及び2本の消去体57の計5本のリフィル(
図11(C)及び
図12参照)が収容される点が異なっている。また、軸筒51後端の筆記具取付部品10の係合爪30の固定手段の構造も異なっている。これらについては後述する。
【0020】
軸筒51は、
図11(A)及び(B)に示すように、略円筒状の後軸51Aの先端に、先細に形成された略円筒状の先軸51Bが螺着された構造になっている。この先軸51Bは、筆記体56又は消去体57の交換や後述する調節の際に取り外し可能となっている。
図11(C)の断面図に示すように、後軸51Aの内部には、5本のリフィルがそれぞれ貫通するガイド部材58が装着されている。このガイド部材58は、5本のリフィルがそれぞれ長手方向に貫通する5つのガイド孔58A(図中では1つのみ視認される)を備えている。
【0021】
筆記体56及び消去体57の後端にはそれぞれノック棒54が接続されている。各ノック棒54の先端部分と、対応するガイド孔58Aの後端縁との間にはそれぞれ、リフィルを後方へ付勢するスプリング59が介装されている。このノック棒54の一部が外方に突出した突起として形成され、これをスライドボタン55と称する。なお、正面に位置するノック棒54には、スライドボタン55の代わりにクリップ52が連設されている。
【0022】
一方、軸筒51には、各筆記体56に対応したスライド窓53が長手方向に沿って設けられている。各スライドボタン55及びクリップ52は、対応するスライド窓53から外方へ突出し、該スライド窓53に沿って前後方向へ摺動する。
図11(A)及び(B)では、全てのスライドボタン55及びクリップ52が各スライド窓53の後端に位置している。この状態では、軸筒51の先端からはいずれの筆記体56又は消去体57も突出せずに、軸筒51の内部へ収納されている。この状態から、いずれかのスライドボタン55又はクリップ52を先端方向へ摺動させ、該スライドボタン55又はクリップ52が対応するスライド窓53の先端に達すると、対応する筆記体56又は消去体57の先端が軸筒51の先端から突出する。なお、筆記具50の後端には筆記具取付部品10が装着されているが、この装着方法については後述する。
【0023】
後軸51Aから先軸51Bを取り外すと、
図12に示すように、3本の筆記体56としてボールペンリフィル60、シャープペンシルリフィル61及び熱変色色材が配合された熱変色性の固形芯62A(
図17参照)が装着された固形芯リフィル62並びに2本の消去体57として消しゴムリフィル63及び摩擦用ラバーリフィル64が視認される。また、機能部15として、隠蔽性顔料を含有する被覆消去材65が筆記具取付部品10に装着されている(
図11(C)参照)。
【0024】
(2-2)ボールペンリフィル60
ボールペンリフィル60は、先端に筆記ボール60Aを抱持するホルダー60Bと、インクを収容するインク収容管60Cと、これらホルダー60B及びインク収容管60Cを連結する継手60Dとを有する。
本実施の形態において、インク収容管60Cに収容されるインクは、いわゆる非熱変色性インクであり、色材と溶剤と水と増粘剤と0.01重量%以上0.5重量%以下の結晶セルロースとを配合するとともに、前記結晶セルロースの積算体積50%の粒子径が0.3μm以上7μm以下であり、最大粒子径が60μm以下である。
「結晶セルロース」とは、一般的に食品添加物等として使用されるものであり、繊維性植物からパルプとして得たα-セルロースを、鉱酸で部分的に解重合し、セルロース結晶領域を取り出して精製したものをいう。なお、セルロース結晶領域とは、セルロース分子領域が緻密かつ規則的に存在する部分を示す。
この結晶セルロースの配合比としては、上述の通り、0.01重量%以上0.5重量%以下が最適である。ここで、この配合比が0.01重量%未満であれば、結晶セルロースに期待される直流現象の防止効果は得られない。一方、この配合比が0.5重量%を上回ると直流現象の防止効果は得られるものの、描線のカスレが見られるとともに経時安定性も悪化するようになりインクとしては好ましくない。
【0025】
色材として、水に溶解又は分散可能な全ての染料、酸化チタンを始めとする公知の無機系及び有機系顔料、樹脂エマルジョンを染料で着色した疑似顔料、並びに白色系プラスチック顔料を本発明に係るインク組成物に添加してもよい。染料の具体例としては、たとえば、エオシン、フロキシン、ウォーターイエロー#6-C、アシッドレッド、ウォーターブルー#105、ブリリアントブルーFCF及びニグロシンNB等の酸性染料、ダイレクトブラック154、ダイレクトスカイブルー5B及びバイオレットBB等の直接染料、並びに、ローダミン及びメチルバイオレット等の塩基性染料が挙げられる。無機系顔料としては、たとえば、カーボンブラック等が挙げられる。有機系顔料としては、たとえば、アゾレーキ、キレートアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料並びに染料レーキ等が挙げられる。いずれを添加する場合も、添加量は、インク全量に対して0.1~40重量%の範囲内で、インクの描線濃度により適宜増減することが望ましい。
【0026】
溶剤として、水に相溶性のある極性基を有する水溶性有機溶媒を使用することができる。具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、グリセリン、ピロリドンなどが挙げられ、これらは単独又は2種以上の混合物として用いることができる。
増粘剤は、インク中での結晶セルロースの沈降を防止してインクの性能を悪化させないために必須なものである。この増粘剤としては様々なものが使用できるが、特に、アルカリ膨潤型エマルションや、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体といった、比較的弱い剪断減粘性を付与するものであれば、結晶セルロースの沈降を防ぎ、かつ凝集しづらいため、長期的に安定に存在させることができる。
【0027】
なお、この増粘剤としては、合成高分子、セルロース類及び多糖類からなる群から選ばれた少なくとも一種を使用することができる。合成高分子としては、たとえば、ポリアクリル酸類、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル、ビスアクリルアミドメチルエーテル、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリエチレングリコール、ポリジオキソラン、ポリスチレンスルホン酸、ポリプロピレンオキサイドなどが挙げられる。セルロース類としては、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。多糖類としては、キサンタンガム、グアーガム、カゼイン、アラビアガム、ゼラチン、アミロース、アガロース、アガロペクチン、アラビナン、カードラン、カロース、カルボキシメチルデンプン、キチン、キトサン、クインスシード、グルコマンナン、ジェランガム、タマリンシードガム、デキストラン、ニゲラン、ヒアルロン酸、プスツラン、フノラン、ペクチン、ポルフィラン、ラミナラン、リケナン、カラギーナン、アルギン酸、トラガカントガム、アルカシーガム、ローカストビーンガムなどが挙げられる。
【0028】
ここで、「アルカリ膨潤型エマルション」とは、未中和のアクリル系ポリマーであって主にカルボキシル基のような酸基をポリマーの立体構造の中に包含したものであって、アルカリで中和することで一旦膨潤し、さらに中和を続けることで最終的には溶解に至るものをいう。
本実施の形態では、このアルカリ膨潤型エマルションの中でも、アルカリ膨潤会合型エマルションがさらに望ましい。ここでこの「アルカリ膨潤会合型エマルション」とは、ポリマーが膨潤した際に、分子中の疎水性の部分が他分子のその部分と会合し、分子間が緩やかな結合を形成することで、増粘性を発揮させるものをいう。
【0029】
アルカリ膨潤会合型エマルションには大きく分けて2つの増粘作用があると考えられる。第1の増粘作用は、水あるいは極性溶媒との混合物中でのアルカリ領域のみで溶解し、分子中のカルボキシル基などの親水基が水和膨張して、溶液中での立体障害となり、粘性が上昇する作用をいう。第2の増粘作用は、分子中の疎水基と親水基とがそれぞれ別個に、インク中の成分、たとえば顔料、溶剤、界面活性剤のそれぞれ疎水基と親水基と会合吸着してネットワーク状の集合体を形成し、粘性が上昇する作用をいう。
本発明のアルカリ膨潤会合型エマルションは、カルボキシル基及び疎水基を有するポリマーからなる。疎水基としては、たとえば鎖状又は環状の炭化水素基、芳香族炭化水素基、ハロゲン化アルキル基、オルガノシリコン基(-SiR3)、フッ化炭素基(-CnF2n+1)等を挙げることができる。具体的なポリマーとしては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸共重合体、ポリメタクリル酸共重合体などが挙げられる。
【0030】
また、「セルロース誘導体」とはセルロースにメチル基等の適当な残基を付加させた分子構造を有するものをいう。
さらに、本実施の形態においては、結晶セルロースの積算体積50%の粒子径が0.3μm以上7μm以下であり、最大粒子径が60μm以下である。
本実施の形態でいう「積算体積50%の粒子径」とは、粒子全体の体積に対して積算体積が50%になるときの粒子の球形換算直径のことをいう。この粒子径が0.3μm未満だと、直流防止性能が劣ることになる。一方、この粒子径が7μmを上回ると、筆記性に悪影響が出てくる。また、ここでいう「最大粒子径」とは積算体積99%になるときの粒子の球形換算直径のことをいう。最大粒子径が60μmを超えるとやはり筆記性に悪影響が出る。
【0031】
結晶セルロースは、まずその懸濁液を作製し、サンドミル等で分散を行い、規定の大きさで使用することが好ましい。分散性を制御することで、目止め効果が高く、さらに経時安定性の高いインクが得られる。
また、その他の添加剤として、顔料の分散剤、pH調整剤、防腐剤、防錆剤及び潤滑剤のいずれか若しくはいくつか又は全部を本発明に係るインク組成物に添加してもよい。
顔料の分散剤としては、たとえば、スチレンマレイン酸のアンモニウム塩及びスチレンアクリル酸のアンモニウム塩などの水溶性高分子等が挙げられる。
pH調整剤としては、たとえば、アンモニア、尿素、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、トリポリリン酸ナトリウム及び炭酸ナトリウム等のアルカリ金属塩並びに水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水酸化物等が挙げられる。
【0032】
防腐剤としては、たとえば、フェノール、ナトリウムオマジン、ペンタクロロフェノールナトリウム、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、2,3,5,6-テトラクロロ-4(メチルスルフォニル)ピリジン、ベンズイミダゾール系化合物、並びに安息香酸、ソルビタン酸及びデヒドロ酢酸のアルカリ金属塩等が挙げられる。
潤滑剤としては、たとえば、リン酸エステル類、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のポリアルキレングリコール誘導体、脂肪酸アルカリ塩、ノニオン系界面活性剤及びジメチレンポリシロキサンのポリエチレングリコール付加物等のポリエーテル変性シリコーン等が挙げられる。
【0033】
防錆剤としては、たとえば、サポニン、トリルトリアゾール、ベンゾトリアゾール、リン酸オクチル、チオリン酸ジオクチル、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール、オクチルオキシメタンホスホン酸、ジシクロヘキシルアンモニウム・ナイトライト、ジイソプロピルアンモニウム・ナイトライト、プロパルギルアルコール、ジアルキルチオ尿素などの化合物を用いることができる。
【0034】
(2-3)被覆消去材65
本実施の形態において、ボールペンリフィル60にて筆記された描線を上から被覆して消去するための被覆消去材65は、機能部15として筆記具取付部品10に装着されている(
図11(C)参照)。この被覆消去材65は、ワックスと、体質材と、隠蔽性顔料とを含むとともに、さらに、C:12~30の二塩基酸又はその誘導体と、粘着性付与剤と、基材としての融点60~90℃であるエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体及びエチレンアクリル酸エチル共重合体のいずれか/又はこれらのうちの2以上の混合物20~80重量%とを含む。
本実施の形態における「ワックス」とは、被覆消去材65の構成成分のうち一般的にワックスとして分類されるものをいう。被覆消去材65の成分としてのワックスは、非使用時には形状保持に寄与するが、力が加えられると速やかに崩壊して筆記時の潤滑性を付与するものである。また、後述の粘着性付与材と相溶して筆記面への定着性を付与する。このワックスとしては、融点45~100℃程度で溶融温度が低いものが望ましい。具体的には、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ウルシロウ、ミツロウ、モクロウ、モンタンワックス、硬化ヒマシ油、パーム硬化油等が本発明におけるワックスとして使用可能である。また、その配合量は全体の50重量%以下が望ましい。
【0035】
本実施の形態における「体質材」とは、被覆消去材65の強度向上、筆記性向上に寄与する成分である。また、後述の隠蔽性顔料の補助的な作用も発揮する。具体的には、タルク、カオリン、マイカ、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、チタン酸カリウムウィスカーなどが本発明における体質材として使用可能である。また、その配合量は全体の10~50重量%が望ましい。
本実施の形態における「隠蔽性顔料」とは、この被覆消去材65により得られた塗膜が、下地を隠蔽することに寄与する成分である。具体的には、隠蔽性白色顔料あるいは隠蔽性黒色顔料が使用可能である。隠蔽性白色顔料としては、無機顔料である二酸化チタンが本発明として最も好適である。また、その配合量は全体の10~50重量%が望ましい。この他の隠蔽性白色顔料としては、酸化亜鉛、白色樹脂粒子等が挙げられるが、隠蔽力等の観点から、二酸化チタンが最も好ましい。隠蔽性黒色顔料としては、具体的には、カーボンブラック、黒鉛、鉄黒が使用可能である。
【0036】
本実施の形態において、C:12~30の二塩基酸又はその誘導体は、筆記面への定着性、隠蔽性を向上させるために用いられる。ここで、「C:12~30の二塩基酸」とは、下記化学式1のように、カルボキシル基を両端に有する鎖状有機化合物であって、その両端のカルボキシル基の炭素以外の鎖状部分(下記化学式1における「R」)の炭素数が12~30であるものをいう。
【0037】
【0038】
ここで、「-R-」は、下記化学式2のような直鎖であっても、下記化学式3のような分鎖であってもよく、また途中に下記化学式4のような二重結合を有するものであってもよい。
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
また、「その誘導体」とは、両端のカルボキシル基に化学的に修飾を加えた誘導体をいい、たとえば、ジグリシジルエステル(下記化学式5)及びメチルエステル(下記化学式6)のようなエステル化合物、ジオール(下記化学式7)及びジアミン(下記化学式8)のような置換体、ポリ酸ポリ無水物(下記化学式9)のような重合体、ナトリウム塩(下記化学式10)及びアミン塩(下記化学式11)のような塩類がある。
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
この、C:12~30の二塩基酸又はその誘導体の融点が70℃を超えると定着性、隠蔽性の向上効果が発現しにくく、70℃以下であることが望ましい。さらに前述の品質向上効果を求めると、C:12~30の二塩基酸又はその誘導体の含有量が、被覆消去材65の全体に対し、1~12重量%の範囲であることが望ましい。1重量%未満では着色性向上効果が発現せず、一方、12重量%を超えてもそれ以上着色性は向上せず、書き味が悪くなるためである。さらに好ましくは、C:12~30の二塩基酸又はその誘導体と、被覆消去材65に含有される全ワックス類との重量比が、該二塩基酸又はその誘導体:該ワックス類=2:100~20:100の範囲であることが望ましい。該二塩基酸又はその誘導体が2:100未満では前記品質向上効果が発現せず、一方、20:100を超えてもそれ以上品質は向上せず、書き味が悪くなるためである。
【0051】
本発明における「粘着性付与剤」とは、被覆消去材65による描線の、筆記面への定着性を向上させる目的で用いられる。
本発明における「エチレン酢酸ビニル共重合体」、「エチレンアクリル酸共重合体」、「エチレンアクリル酸エチル共重合体」とは、本実施の形態の被覆消去材65の基材をなすものである。非使用時には基材として被覆消去材65に柔軟性を与え形状保持に寄与する。また、筆記時には筆記面との摩擦熱により塗膜状に摩耗し筆記面に固着することにより、隠蔽性に寄与することとなる。また、この成分は、被膜をこの被覆消去材65自身で擦過することで細かく破砕されて除去されてしまう、いわゆる「自己消去性」の発揮にも寄与するものである。これらの性質を発揮すべく、このエチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体の融点は60~90℃のものが使用される。
なお、前記エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、エチレンアクリル酸エチル共重合体のJIS K7210:1999で定めるメルトフローレートは、400~800g/10minであることが望ましい。
【0052】
また、前記エチレン酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルモノマーを10重量%以上の割合で重合させたものであることが望ましい。
さらに、前記粘着性付与剤は、テルペン樹脂、テルペン樹脂変性物、マレイン酸樹脂誘導体、クマロン・インデン樹脂、クマロン・インデン樹脂誘導体、スチレン系樹脂、イソプレン系樹脂、松脂、ロジンエステル及び石油樹脂から成る群から選ばれる1つ又は2以上の混合物であることが望ましい。
なお、その他の成分として、たとえば潤滑性付与を目的として融点45℃以下のオイルも少量、具体的には5重量%未満であれば使用可能である。このようなオイルとしては、ホホバ油、流動パラフィン、スクワラン、スクワレン、流動パラフィン等が挙げられる。
【0053】
本実施の形態の被覆消去材65は、上述の成分にて短円筒形状に成形され、前記したように機能部15として筆記具取付部品10に装着される。筆記具取付部品10の詳細は後述する。
【0054】
(2-4)シャープペンシルリフィル61
シャープペンシルリフィル61は、シャープペンシル芯61Cを収容する芯収容管61Aと、その先端に装着されシャープペンシル芯61Cの繰り出しに関与する機構部61Bとを備える(
図11(C)参照)。
本実施の形態において、シャープペンシル芯61Cは、黒鉛粒子のa-b面の面積が8μm
2を超え、500μm
2未満であって、該黒鉛粒子のa-b面に、下記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子が接着している黒色粒子を含有する。
A群:カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノダイヤ、黒鉛化カーボンブラック
図13は、本実施の形態のシャープペンシル芯61Cに用いる黒色粒子を示す概略図面であり、(A)は概略側面図、(B)は概略平面図であり、図示符号Aが黒色粒子、Bが黒鉛粒子、Cがカーボンナノ粒子である。なお、図中では、明確化の点から区別化しているが、接着焼成後は実際上区別化は困難となるものである。
【0055】
本実施の形態のシャープペンシル芯61Cに用いる黒鉛粒子は、黒鉛粒子のa-b面の面積が8μm2を超え、500μm2未満のものであって、該黒鉛粒子のa-b面に、上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子が接着しているものである。
用いる黒鉛粒子としては、たとえば、燐片状黒鉛、鱗状(塊状)黒鉛、土状黒鉛、球状化黒鉛、薄片化黒鉛、人造黒鉛、キッシュ黒鉛、膨張黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛粒子を挙げることができる。
【0056】
本実施の形態のシャープペンシル芯61Cでは、芯の強度、摩耗、摩擦の点から、黒鉛粒子のa-b面の面積が8μm2を超え500μm2未満のものを用いることが必要であり、さらなる芯の強度、摩耗、摩擦の点から、9μm2以上100μm2以下のものが望ましい。
これらの黒鉛粒子のa-b面の面積が8μm2以下であると、シャープペンシル芯61Cの強度、滑らかさが低下する結果となり、一方、500μm2以上であると、やはりシャープペンシル芯61Cの強度が低下し、摩耗も増えすぎる結果となり、好ましくない。
また、黒鉛粒子のアスペクト比は、書き味と強度をさらに向上させる点、成形性の点から、好ましくは、2以上、220以下であるもの、さらに好ましくは、5以上100以下であるものが望ましい。
【0057】
本実施の形態のシャープペンシル芯61Cでは、上記黒鉛粒子のa-b面に、上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子を接着したものを用いるものである。
用いる上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子は、更なる強度及び濃度の向上の点、黒鉛粒子の接着の点から、好ましくは、その平均一次粒子径が5nm以上、200nm以下である黒色粒子を含むもの、さらに好ましくは、5nm以上、50nm以下である黒色粒子を含むものが望ましい。
本発明において、「平均一次粒子径」は、走査電子顕微鏡(SEM)画像を株式会社マウンテック製ソフトMac-View ver.4で測定した値を意味するものであり、以下において、たとえば、平均一次粒子径が5nmの場合、D50=5nmとして表示する。
【0058】
上記黒鉛粒子のa-b面に接着する、上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子を以下に、具体的に詳述する。
用いるカーボンナノファイバーとしては、チューブ径の外径で示されることが多く、ナノファイバーであれば50~200nmとなるものが挙げられ、カーボンナノチューブとしては、5nm~50nmとなるものが挙げられ、フラーレンとしては、C60,C70などを用いることができ、この場合一次粒径は0.7~10nm程度と非常に小さく、凝集力が大きいため通常30~70μmとなるものが挙げられ、ナノダイヤとしては、クラスターダイヤ、多結晶ダイヤ、単結晶ダイヤのいずれも用いることが可能で、粒径は10nm~200nmとなるものが挙げられる。
また、黒鉛化カーボンブラックとしては、東海カーボン社製トーカブラック、誘導場燃焼黒鉛化カーボンブラックなどが挙げられ、又はネス法等によって得られるカーボンブラックを黒鉛粒子のa-b面に接着した後、黒色粒子の製造(焼成)の際や、シャープペンシル芯61Cの製造(焼成)の際に、当該カーボンブラックを黒鉛化(黒鉛化カーボンブラック)としてもよいものである。なお、カーボンナノ粒子が黒鉛化していないと、強度が出ないわりに摩耗せず、カーボンナノ粒子が大きすぎると黒鉛の配向を阻害し、強度が下がるわりに、黒鉛との密着性が低下し、濃度が上がらないものとなる。黒鉛化せしめる温度として、1,400~3,000℃程度で黒鉛化せしめることができる。
【0059】
本実施の形態のシャープペンシル芯61Cにおいて、黒鉛粒子のa-b面に上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子を接着する方法としては、たとえば、黒鉛表面に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂等のバインダー成分をすり鉢などによって塗って、上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子を接着させた後、非酸化性雰囲気中で焼成することにより、又は、黒鉛表面にバインダー成分となる金属被膜を鍍金によって作製し、次いで、上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子と金属被膜とを非酸化性雰囲気中で焼成(溶接)することにより行うことができる。
好ましくは、カーボンナノ粒子と黒鉛粒子の配合比は、強度及び書き味をさらに向上させる点から、1:1~1:100の範囲内、さらに好ましくは、1:1~1:50の範囲内であることが望ましい。
【0060】
具体的に用いることができる黒鉛粒子は、たとえば、下記製法1~4などの製法により得ることができる。
製法1:黒鉛表面にフェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂を上記手段により塗って、上記A群のカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノダイヤ、黒鉛化カーボンブラックなどのカーボンナノ粒子を黒鉛表面に接着させ、窒素ガス雰囲気中などで焼成する。
製法2:黒鉛表面に塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニルポリ塩化ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂を上記手段により塗って、上記A群のカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノダイヤ、黒鉛化カーボンブラックなどのカーボンナノ粒子を黒鉛表面に接着させ、窒素ガス雰囲気中などで焼成する。
【0061】
製法3:黒鉛表面にニッケル被膜、銅被膜、銀被膜などの金属被膜を上記手段により形成し、上記A群のカーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、フラーレン、ナノダイヤ、黒鉛化カーボンブラックなどのカーボンナノ粒子を金属被膜に溶接させる。
製法4:黒鉛表面にフェノール樹脂、フラン樹脂などの熱硬化性樹脂を上記手段により塗って、カーボンブラックを黒鉛表面に接着させ、窒素ガス雰囲気中などで焼成する。
なお、焼成雰囲気下としては、上記窒素ガス雰囲気下の他、アルゴン(Ar)やヘリウム(He)、及び真空などの非酸化性雰囲気下で行うことができる。また、焼成温度・時間は、用いる接着手段等により変動するが、800~1,700℃であり、30~720分間が好ましい。
【0062】
本実施の形態のシャープペンシル芯61Cは、上記で得られた特性の黒鉛粒子を含有するものであり、その含有量は、シャープペンシル芯61Cの全量中に1~50質量%であることが好ましく、さらに好ましくは、2~50質量%であるものが望ましい。
この黒鉛粒子の含有量が1質量%未満であると、効果が小さく、50質量%を超えると、強度、書き味が著しく劣る。
【0063】
本実施の形態のシャープペンシル芯61Cは、上記A群から選ばれる黒色粒子を含むカーボンナノ粒子が接着された黒色粒子と、下記B群及びC群から選ばれる樹脂とを混合し、成形後、150℃以上、300℃以下の温度で低温硬化又は耐炎化させた後、1,000℃以上、2,200℃以下、好ましくは、1,000℃以上、2,000℃以下の温度で焼成することにより製造することができる。
B群:ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルポリ塩化ビニル共重合体、ピッチ、ビニルアルコール系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂
C群:フラン系樹脂、フェノール系樹脂、セルロース系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、イミド系樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、ユリア・メラニン樹脂、エポキシ樹脂
【0064】
上記製法において、成形後に低温硬化させる温度が150℃未満であると、可塑剤が気化しきらなかったり、熱硬化が起こらなかったりし、一方、300℃を越える温度であると、分解や酸化が急激に進行し、好ましくない。
また、焼成温度が1,000℃未満であると、強度が弱く、材料としても安定しない。一方、2,200℃を越える温度であると、黒鉛化が急激に進行し、強度がやはり弱くなり、好ましくない。
【0065】
上記特性の黒色粒子と、上記B群から選ばれる樹脂との混合物中には、有機溶剤、安定剤、潤滑剤(成形助剤)などの各成分を適宜選択して混合することができ、また、焼成後、α-オレフィンオリゴマー、脂肪酸エステル、スピンドル油、ワックス類などの含浸油などを含浸させてもよいものである。
【0066】
具体的には、本実施の形態のシャープペンシル芯61Cは、強度、書き味の点から、上記特性の黒色粒子20~70質量%と、上記B及びC群から選ばれる樹脂20~70質量%と、ステアリン酸ナトリウム5~30質量%等をヘンシェルミキサーで分散混合し、加圧ニーダー、二本ロールで混練し、押出成型機により所定の形状・大きさ等に成型した後、電気炉で150℃以上、300℃以下で低温硬化又は耐炎化させ、次いで、非酸化性雰囲気下(窒素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下等)で1,000℃以上、2,200℃以下の温度で焼成し、該焼成芯体の気孔内にα-オレフィンオリゴマー、シリコーンオイル、エステルオイル等の合成油、ヒマシオイル等の植物油、グリース等の潤滑剤を含浸などにより充填することにより製造することができる。
【0067】
(2-5)消しゴムリフィル63
消しゴムリフィル63の形状は、
図14に示すように、筒部63B、接続部63C、ストッパ63D及び消しゴム63Aが組み合わされてなるものである。より具体的には、正面(
図14(B))及び背面(
図14(E))にそれぞれ複数個かつ同数のストッパ孔63Eを備えた細長円筒形状の筒部63Bの後端に、外径がほぼ同じ接続部63Cが装着されている。接続部63Cの後端には、ノック棒54の先端が挿入されて接続される接続孔63Iが設けられている(
図14(D)、(G))。また、筒部63Bの内部には、円筒形状の消しゴム63Aが挿入され(
図14(D))、その先端が筒部63Bの先端から突出している(
図14(A)~(E))。また、筒部63Bの外側面から、各ストッパ孔63Eのいずれかに一部が挿入された状態で(
図14(D))、ストッパ63Dが装着されている(
図14(A)~(G))。
【0068】
筒部63Bの形状を
図15にて示す。筒部63Bは、略長方形状の真鍮材を、短辺を周方向として円筒形状に塑性変形させて形成される。それにより、元の長辺同士の間が長スリット63Gとなっている(
図15(A)、(B)及び(E))。また、筒部63Bの先端部分には、この長スリット63Gに対してそれぞれ120°周方向に離間するようにして、2つの短スリット63Hが形成されている(
図15(A)、(C)、(D)及び
図14(F))。筒部63Bの先端部分は先端に向けてわずかに絞られているが(
図15(B)~(E))、これらの短スリット63H及び長スリット63Gが形成されていることで半径方向にわずかに弾性変形が可能となっている。この弾性変形により内部に収納される消しゴム63Aを挿入することが可能となっており、さらに軸心方向に締まることで、挿入された消しゴム63Aを保持することが可能となっている(
図14(D))。
【0069】
筒部63Bの正面(
図15(C))及び背面(
図15(A))には、前述した通り、それぞれ複数個かつ同数のストッパ孔63Eが長手方向に沿って形成されている。このストッパ孔63Eは後述するストッパ63Dの一部が挿入される箇所である。
【0070】
ストッパ63Dの形状を
図16にて示す。ストッパ63Dは、半円筒形状の半筒部63Jと、この半筒部63Jの凹面部分の中心から突出する円筒形状の挿入部63Lとから成る(
図16(A)、(C)、(D)、(E)及び(F))。このストッパ63Dは平面視では半筒部63Jの凸面部分が前後方向がやや長い長方形状として視認される(
図16(B))。そしてその長手方向に沿った断面は、略T字型を呈する(
図16(D))。このT字の「縦棒」に相当する挿入部63Lは、前記ストッパ孔63Eに挿入されることで、筒部63Bに挿入されている消しゴム63Aの後端に当接し、消しゴム63Aが押圧で後方へ押し戻されるのを防いでいる(
図14(D)参照)。
【0071】
本実施の形態において、消しゴムリフィル63に装着される消しゴム63Aは、アクリル系熱可塑性樹脂粉末、可塑剤及び無機粉体を少なくとも含有してなることを特徴とするものである。
【0072】
本実施の形態の消しゴム63Aに用いるアクリル系熱可塑性樹脂粉末は、消しゴム63Aの基材となるものであり、アクリル系熱可塑性樹脂の粉末であれば、特に限定されない。
アクリル系熱可塑性樹脂として、利用可能なモノマーとしては、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、tーブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート等のアルキルアルコールの(メタ)アクリレート類、あるいはシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の環式アルキルアルコールの(メタ)アクリレート類を主成分(50モル%以上含有)とする共重合体が挙げられる。
【0073】
(メタ)アクリレート類と共重合可能な他のモノマーとしては、たとえば、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、メタクリル酸2-サクシノロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、メタクリル酸2-マレイノロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、メタクリル酸2-フタロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、メタクリル酸2-ヘキサヒドロフタロイルオキシエチル-2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸等のカルボキシル基含有モノマー、アリルスルホン酸等のスルホン酸基含有モノマー、アセトアセトキエチル(メタ)アクリレート等のカルボニル基含有(メタ)アクリレート類、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート類、グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレート類、N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類、さらにアクリルアミド及びその誘導体として、たとえば、ジアセトンアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド、N-ブトキシメチルアクリルアミド等、さらにはスチレン及びその誘導体、酢酸ビニル、ウレタン変性アクリレート類、エポキシ変性アクリレート類、シリコーン変性アクリレート類、等が挙げられる。
【0074】
本実施の形態の消しゴム63Aに用いるアクリル系樹脂粉末は、その組成比率を変更するだけでなく、好ましくは、ゾルの分散安定性の点、ゾルの粘度調整、焼結時の強度の点から、一次粒径が20~80μmとなるものが望ましく、また、ガラス転移温度(Tg)が好ましくは、50~115℃、さらに好ましくは、75~95℃となるものが望ましい。なお、本実施の形態において、「ガラス転移温度(Tg)」とは、アクリル樹脂粉末の非結晶部分の運動性が大きくなりゴム状態になる境目の温度をいう。
さらに、用いるアクリル系樹脂粉末は、好ましくは、ゾルの安定性の点、焼結の均一性の点から、コアシェル構造やグラディエント構造に代表されるような粒子中心部から周辺部に向けて同心円状に2段階以上又は無段階的に構成モノマー単位が分布した構造などが挙げられ、特にコアシェル構造によってコア部(芯部)とシェル部(外殻部)でガラス転移温度が異なる組成を配したアクリル系樹脂粉末の使用が好ましい。
コアとシェルの組成は特に限定しないが、ガラス転移温度(Tg)が比較的高いシェルと、該シェルよりガラス転移温度(Tg)が比較的低いコアで構成されるものが好ましく、たとえば、シェルのガラス転移温度(Tg)が75~115℃であれば、コアのガラス転移温度(Tg)が50~95℃となるものが挙げられ、コアをメチルメタクリレートと炭素数2~8(C2~C8)のアルキルアクリレートの共重合体や各種エステル、シェルをメチルメタクリレート単独、メチルメタクリレートとアクリル酸の共重合体又はメチルメタクリレートとC2~C8アルキルアクリレートとアクリル酸の共重合体などから構成することができる。
【0075】
本実施の形態の消しゴム63Aに用いるアクリル系樹脂粉末は、水系媒体中での乳化重合、シード乳化重合、ソープフリー重合、懸濁重合、微細懸濁重合、有機媒体中での分散重合、水/有機混合媒体中での分散重合、有機媒体中での沈殿重合などの手法により、コアシェル構造などの各種構造となるものを重合することができ、得られた重合体分散液を噴霧乾燥法(スプレードライ法)、塩や酸等による凝固法、凍結乾燥法、遠心分離法、濾過法等の手法を用いて粉体化することができ、市販品があれば、それらを使用することができる。
用いることができるアクリル系樹脂粉末としては、たとえば、三菱レイヨン社製のプラスチゾル用アクリル系樹脂粉末である、ダイヤナールLP-3106(コアシェル構造、コアTg75℃、シェルTg85℃、一次粒径70μm)、ダイヤナールLP-3202(コアシェル構造、コアTg85℃、シェルTg95℃、一次粒径60μm)などを挙げることができる。
【0076】
これらのアクリル系樹脂粉末の含有量は、消しゴム63Aの全量に対して、0.5~50重量%、好ましくは、1~20重量%含有されていることが望ましい。
この含有量が0.5重量%未満であると、ほとんど含有効果が得られなくなり、一方、50重量%を超えると、消去性が著しく低下する結果となり、好ましくない。
【0077】
本実施の形態の消しゴム63Aに用いる可塑剤は、アクリル系樹脂粉末などの基材を可塑化又はゲル化することができる可塑剤であれば、特に限定されず、たとえば、フタル酸ジオクチル(DOP、ジオクチルフタレート)、アジピン酸ジオクチル(DOA)、セバシン酸ジオクチル(DOS)、セバシン酸ブジチル(DBS)、フタル酸ジメチル(DMP)、フタル酸ジイソノニル(DINP)、フタル酸ジヘキシルなどの少なくとも1種が挙げられる。好ましくは、摩耗特性、強度の点から、フタル酸ジオクチル(DOP)である。
これらの可塑剤の含有量は、消しゴム63Aの全量に対して、好ましくは、10~70重量%含有されていることが望ましい。さらに好ましくは、30~60重量%含有されていることが望ましい。
この含有量が10重量%未満であると、消去性が著しく低くなり、一方、70重量%を超えると、強度が実用強度以下となり、好ましくない。
【0078】
本実施の形態の消しゴム63Aに用いる無機粉体としては、たとえば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(ヒドロキシアパタイトを含む)、硫酸マグネシウム、シリカ、亜鉛華、カーボン(カーボンブラック、ケッチェンブラック)、種々の粘土鉱物(タルク、カオリン、パイロフィライト、マイカ、スメクタイト)及びそれぞれの複合体(シリカ被覆炭酸カルシウム等)が挙げられ、好ましくは、摩耗性、摩擦性、消去性の点から、炭酸カルシウム及び/又は炭酸マグネシウムである。
用いる無機粉体としては、特に吸液性多孔体構造となるものが好ましく、比表面積が大きく、吸液率が高い吸液性を有する多孔体から構成される無機粉体が望ましい。特に、比表面積100~500m2/g、吸液率100~1,000ml/100gの粒子からなる無機粉体が挙げられる。なお、上記比表面積はBET法での比表面積であり、吸液率は粉体100gの山に亜麻仁油を滴下して行って、砂団子状態からトロー(流動状態)となる最低の亜麻仁油量をいう。上記吸液率100ml/100g未満の無機粉体では、後述の吸着力が不足し消去性が十分でない。なお、吸液率1,000ml/100gを超える無機粉体は、現在販売されておらず、おそらく製造も困難であると考えられるため、これを用いた消しゴム63Aの製造は事実上不可能である。
具体的に用いることができる無機粉体としては、塩基性炭酸マグネシウム多孔体、リン酸カルシウムの花弁状多孔質構造体、多孔質シリカ粒子、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維、炭酸カルシウムの二次凝集体、炭酸カルシウムの花弁状多孔質体などの無機粉体を挙げることができ、特に、上記比表面積、吸液率の各範囲内を充足する各吸液性多孔体からなる無機粉体、塩基性炭酸マグネシウム多孔体の使用が望ましい。
【0079】
これらの無機粉体の中で、特に、製造性、入手性、コストなどから塩基性炭酸マグネシウム多孔体、炭酸カルシウムの二次凝集体などの無機粉体の使用が好ましい。上記塩基性炭酸マグネシウム多孔体は、薄片状微細結晶からなる管状の凝集した粒子であり、この管状粒子は外径が1~20μm、長さが5~200μmのものであることが望ましい。
なお、上記塩基性炭酸マグネシウムは、化学式mMgCO3・Mg(OH)2・nH2Oで表されるものであり、m及びnの値については特に限定はなく、通常の塩基性炭酸マグネシウムとして知られているmの値が3~5、nの値が3~8のものなどである。また、この塩基性炭酸マグネシウムの管状粒子は、単純な撹拌、温度やpHなどの環境の変化によって、薄片状微細結晶が容易に分散してしまうような凝集ではなく、塩基性炭酸マグネシウムの薄片状微細結晶が集合し物理的に固定されたものである。
【0080】
本実施の形態の消しゴム63Aにおいて、上記塩基性炭酸マグネシウム多孔体などの吸液性多孔体の製造は、既知であり、たとえば、上記特性の塩基性炭酸マグネシウム多孔体の場合は、水溶液中にて水溶性マグネシウム塩と水溶性炭酸塩を用いることなどにより、薄片状微細結晶の管状粒子となる塩基性炭酸マグネシウムを製造することができる。
この塩基性炭酸マグネシウム多孔体は、市販のマグチューブ(日鉄鉱業社製)の各グレードのもの、さらには粒子表面をアルミナ処理、各種脂肪酸等で処理したグレードを用いることができる。
【0081】
これらの無機粉体の含有量は、消しゴム63Aの全量に対して、好ましくは、10~50重量%、さらに好ましくは、10~30重量%含有されていることが望ましい。
この含有量が10重量%未満であると、紙面から鉛筆粉などを掻き取る効果が小さくなり消去性が低下し、一方、50重量%を超えると、摩耗が多く消しカスが多くなりすぎるため、好ましくない。
【0082】
本実施の形態の消しゴム63Aにおいて、上記アクリル系樹脂粉末、可塑剤、無機粉体以外には、他の基材成分を含有することが好ましく、さらに必要に応じて、通常の消しゴム等に用いられている各種配合剤を所望量配合して成形することにより、シャープペンシル芯61Cによる筆記描線の消去時に、紙面を汚すことがなく、確実に消去することができると共に、消しカスがほとんど出ない消しゴム63Aを製造することができるものとなる。
用いることができる他の基材成分としては、特に限定されず、たとえば、各種の熱可塑性樹脂、合成ゴムなどの少なくとも1種を使用することができ、好ましくは、熱可塑性樹脂が望ましい。
熱可塑性樹脂としては、たとえば、塩化ビニル樹脂(PVC)、その共重合体(たとえば、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体)などの塩化ビニル系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレンアクリル酸共重合体、ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。合成ゴムとしては、たとえば、ブチルゴム、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、ニトリルブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムなどが挙げられる。特に好ましくは、塩化ビニル樹脂(PVC)、又は、その共重合体(塩化ビニル酢酸ビニル共重合体)など塩化ビニル系樹脂である。
【0083】
好適に用いられる上記塩化ビニル系樹脂としては、具体的には、ポリ塩化ビニルとしてカネビニールシリーズ(カネカ社製)、ビニカシリーズ(三菱化成ビニル社製)、リューロンペーストシリーズ(ホモポリマー及びコポリマー:東ソー社製)等が挙げられ、これらは、単独でも2種以上併用してもよい。
これらの熱可塑性樹脂などの他の基材成分の含有量は、硬さ、弾力、消去性、消しカス量の点から、消し具全量に対して、好ましくは、10~50重量%、さらに好ましくは、15~30重量%含有されていることが望ましい。
【0084】
また、必要に応じて、各種配合剤、たとえば、上記基材成分(特に塩化ビニル系樹脂)の高温における劣化を防止するために、たとえば、ステアリン酸Ca-Znなどの熱安定剤を用いることができる。また、粘度調整剤、滑剤、溶剤、着色剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、芳香剤などを適宜量配合することができる。
さらに、基材成分としてゴムや、エラストマーを用いた場合には、たとえば、軟化剤、加硫剤、加硫促進剤、充填剤、老化防止剤、着色剤などを適宜量配合することができる。
【0085】
本実施の形態の消しゴム63Aは、上記アクリル系熱可塑性樹脂粉末、可塑剤及び無機粉体、さらに必要に応じて、他の基材成分、上記各種配合剤のそれぞれ所定量を常法により混練することにより調製した後、好ましい形状に成形して作製することができる。
消しゴム63Aの形状としては、前述の通り円柱状である。
【0086】
本実施の形態の消しゴム63Aが、なぜ、消しカスが出る従来の消しゴムよりも、シャープペンシル芯61Cによる筆記描線に対して、消去時に、紙面を汚すことがなく、確実に消去することができ、しかも、消しカスや表面のバリの発生がほとんど出ないものとなるかは以下のような作用機構によるものである。
すなわち、本実施の形態の消しゴム63Aでは、上記アクリル系熱可塑性樹脂粉末、可塑剤及び無機粉体を少なくとも含有し、たとえば、上記アクリル系熱可塑性樹脂粉末として、コアシェル構造のアクリル系熱可塑性樹脂粉末、無機粉体として、塩基性炭酸カルシウム多孔体等、可塑剤とを少なくとも含有することにより、筆記描線に擦り付けると消しゴム63Aの内部の吸液性多孔体に黒鉛が吸着し、紙面から黒鉛が消去され、吸着された黒鉛は吸液性多孔体の吸着能力により拡散され、上記アクリル系熱可塑性樹脂粉末の含有により、吸着力が増強され、消しカスや消しゴム63Aの表面のバリの発生もほとんど生じることなく、しかも、一旦吸着した黒鉛は再度紙面に移ることがないので紙面を汚すことがなく、確実に消去することができるものとなる。したがって、本実施の形態の消しゴム63Aは、消しカスをほとんど生じることなく、筆記描線の消去性に優れ、しかも、消しゴム63Aの表面のバリの発生もないものとなる。なお、本実施の形態の消しゴム63Aは、消去の度に吸着した黒鉛等を消し具内に拡散、蓄積していくものであり、たとえば、消しゴム63Aの色を白色とした場合には、消去の度ごとに消しゴム63Aの色は黒色度が増加していくものとなる。
【0087】
この消しゴムリフィル63が先軸51Bから突出している状態では、筆記具50は、先端から突出する消しゴム63Aにより、シャープペンシル芯61Cにより筆記された描線を消去可能な消去具として機能することとなる。そして、使用により消しゴム63Aの先端が黒くなって消去が困難になったら、一旦先軸51Bを後軸51Aから取り外して
図12に示すような状態としてから、消しゴムリフィル63を摘まんで引き離すことで、
図14(A)に示すように単離することができる。この状態において、まず、ストッパ63Dを取り外し、次いで消しゴム63Aの先端を摘まんで引き出し、黒くなった部分をカッター等にて切断する。そして、再び消しゴム63Aの先端が適宜の長さだけ突出するように再び筒部63Bへ挿入し、短くなった消しゴム63Aの後端に近いストッパ孔63Eにストッパ63Dの挿入部63Lを
図14(D)に示すように挿入すれば、再び消しゴム63Aは固定される。
【0088】
(2-6)固形芯リフィル62
固形芯リフィル62の形状は、
図17に示すように、筒部62B、接続部62C、ストッパ62D及び固形芯62Aが組み合わされてなるものである。より具体的には、正面(
図17(C))及び背面(
図17(D)及び(E))にそれぞれ複数個かつ同数のストッパ孔62Eを備えた細長円筒形状の筒部62Bの後端に、外径がほぼ同じ接続部62Cが装着されている。接続部62Cの後端には、ノック棒54の先端が挿入されて接続される接続孔62Iが設けられている(
図14(E))。また、筒部62Bの内部には、先端が円錐形状に削られた円筒形状の固形芯62Aが挿入され(
図17(E))、その先端が筒部62Bの先端から突出している(
図17(A)~(E))。また、筒部62Bの内部に、各ストッパ孔62Eのうち正面及び背面に対向するいずれかの一対から一部が突出した状態で(
図17(E))、ストッパ62Dが挿入されている(
図17(A)~(E))。
【0089】
筒部62Bの形状を
図18にて示す。筒部62Bは、略長方形状の真鍮材を、短辺を周方向として円筒形状に塑性変形させて形成される。それにより、元の長辺同士の間が長スリット62Gとなっている(
図18(A)、(C)、(E)及び(F))。また、筒部62Bの先端部分には、この長スリット62Gに対してそれぞれ120°周方向に離間するようにして、2つの短スリット62Hが形成されている(
図18(A)、(B)、(D)及び(E))。筒部62Bの先端部分は、これらの短スリット62H及び長スリット62Gが形成されていることで半径方向にわずかに弾性変形が可能となっている。この弾性変形により内部に収納される固形芯62Aを挿入することが可能となっており、さらに挿入後に軸心方向に締まることで、挿入された固形芯62Aを保持することが可能となっている(
図17(E))。
【0090】
筒部62Bの正面(
図18(D))及び背面(
図18(B))には、前述した通り、それぞれ複数個かつ同数のストッパ孔62Eが長手方向に沿って形成されている。そして、隣接するストッパ孔62E同士は、該ストッパ孔62Eの直径より狭い幅の連絡部62Fにて連絡している。このストッパ孔62Eは後述するストッパ62Dの一部が筒部62Bの内部から突出する箇所である。
【0091】
ストッパ62Dの形状を
図19にて示す。ストッパ62Dは、長手方向に伸びる一対の弾性部62Jと、これらを後端側で連結する連結部62Kとが、側面視で略U字型の形状を呈している(
図19(A)、(C)、(E)及び(G))。また、各弾性部62Jの先端付近からは、それぞれ外方へ突出する略短円筒形状の挿入部62Lが設けられている(
図19(A)、(C)、(D)、(E)、(F)及び(G))。このストッパ62Dのうち一対の弾性部62J及び連結部62Kは筒部62Bの内部に収容されるが、一対の挿入部62Lのみが内方からストッパ孔62Eへ挿入されている(
図17(E))。これにより、一対の弾性部62Jの先端が筒部63Bに挿入されている固形芯62Aの後端に当接し、固形芯62Aが押圧で後方へ押し戻されるのを防いでいる(
図17(E)参照)。
【0092】
本実施の形態において、固形芯リフィル62に装着される固形芯62Aは、少なくとも樹脂成分、ワックス成分、熱変色色材及び白色の体質材を含有し、前記樹脂成分として、ロジン及びロジン変成物のうち少なくとも一方を0.5重量%以上20重量%以下の範囲で含有し、前記ワックス成分として、融点45℃以上のグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルのうちの少なくとも一方を8重量%以上50重量%以下の範囲で含むことで、熱変色性を備える。
【0093】
本実施の形態の固形芯62Aにおいて、「樹脂成分」として用いられるロジン及びロジン変成物は、一般的にロジン及びロジン変成物として分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。また、ロジンの主成分であるアビチエン酸を使用することも可能である。なお、ここで「ロジン変成物」とは、ロジンのグリセリンエステル等をいう。
これらは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする固形芯62Aの着色性、硬さによって適宜選択される。
この樹脂成分の含有率は0.5重量%以上20重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が0.5重量%を下回ると、平滑面での定着性が劣り着色が不十分であり、また強度的に弱く、実用的でない。一方、20重量%を上回ると硬く、やはり平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。
【0094】
本実施の形態の固形芯62Aにおいて、「ワックス成分」として用いられるグリセリン脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にグリセリン脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸グリセリド、ステアリン酸グリセリド等、また、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドのいずれも用いることができる。さらに、これら以外のものとしては、グリセリン脂肪酸エステルを主成分とするハゼロウ、ウルシロウ等のモクロウ類、ヤマハゼロウ、ヤマウルシロウ等のスマックワックス類等の天然物のいずれをも用いることができる。
【0095】
本実施の形態の固形芯62Aにおいて、「ワックス成分」として用いられるペンタエリスリトール脂肪酸エステルとしては、融点45℃以上で一般的にペンタエリスリトール脂肪酸エステルとして分類されているものであれば、特に限定されず、いずれも使用できる。たとえば、融点45℃以上のパルミチン酸ペンタエリスリット、ステアリン酸ペンタエリスリット等、また、モノペンタエリスリット、ジペンタエリスリット、トリペンタエリスリット、テトラペンタエリスリットのいずれも用いることができる。なお、融点が45℃を下回ると、実用上の強度が弱すぎ、固形芯62Aを細く成形すると折れやすくなる。
【0096】
これら本実施の形態の固形芯62Aに用いるグリセリン脂肪酸エステル及びペンタエリスリトール脂肪酸エステルは、化成品、天然物を区別することなく、単独、又は2種以上混合して用いることも可能であり、目的とする固形芯62Aの着色性、硬さによって適宜選択される。
上記ワックス成分の含有率は8重量%以上50重量%以下の範囲にあることとなっている。この含有率が8重量%を下回ると固形芯62Aは硬く、平滑面での定着性が劣り着色が不十分となる。一方、50重量%を上回ると固形芯62Aは強度的に弱くなり、実用的でない。
【0097】
本実施の形態の固形芯62Aに用いる「熱変色色材」とは、たとえば、少なくともロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤から構成される熱変色性組成物であって、これらの材料を封入してマイクロカプセル顔料としたものも含まれる。マイクロカプセル顔料は、その壁材を強固にする点から、マイクロカプセル粒子の壁材が、架橋を可能とするモノマー、ポリマーあるいは架橋材を含む重合物などから形成される高分子樹脂の壁材から形成され、この熱変色組成物を内包させることが望ましい。
【0098】
本実施の形態の固形芯62Aに用いるロイコ染料としては、電子供与性染料で、発色剤として機能するものであれば、特に限定されるものではない。具体的には、優れた発色特性を得る点から、たとえば、3,3-ビス(p-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、2-クロロ-3-メチル-6-ジメチルアミノフルオラン、3-ジブチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-アニリノフルオラン、3-ジエチルアミノ-6-メチル-7-キシリジノフルオラン、2-(2-クロロアニリノ)-6-ジブチルアミノフルオラン、3,6-ジメトキシフルオラン、3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジエチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-ジブチルアミノフルオラン、1,2-ベンツ-6-エチルイソアミルアミノフルオラン、2-メチル-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(N-フェニル-N--メチルアミノ)-6-(N-p-トリル-N-エチルアミノ)フルオラン、2-(3’-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、3-メトキシ-4-ドデコキシスチリノキノリンなどが挙げられ、これらは、単独(1種)で又は2種以上を混合して(以下、単に「少なくとも1種」という)用いることができる。
さらに、黄色ないし赤色の発色を発現させるピリジン系化合物、キナゾリン系化合物、ビスキナゾリン系化合物等も用いることができる。
これらのロイコ染料は、ラクトン骨格、ピリジン骨格、キナゾリン骨格、ビスキナゾリン骨格等を有するものであり、これらの骨格(環)が開環することで発色を発現するものである。
【0099】
本実施の形態の固形芯62Aに用いる顕色剤は、ロイコ染料を発色させるものである。結晶状態の粒子から構成され、この結晶状態でインク中に含有されるものである。
具体的に用いることができる顕色剤としては、発色特性に優れるインクを得る点から、たとえば、o-クレゾール、tert-ブチルカテコール、ノニルフェノール、n-オクチルフェノール、n-ドデシルフェノール、n-ステアリルフェノール、p-クロロフェノール、p-ブロモフェノール、o-フェニルフェノール、ヘキサフルオロビスフェノール、p-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、p-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、没食子酸ドデシル、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4-ジヒドロキシジフェニルスルホン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1-フェニル-1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、2,2-ビス(4’-ヒドロキシフェニル)n-ノナンなどが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
【0100】
本実施の形態の固形芯62Aに用いる変色温度調整剤は、加熱溶融した状態でロイコ染料と顕色剤の結合を遮断して消色状態をなし、再度変色温度調整剤を融点以下に冷却することで変色温度調整剤が結晶化し、発色状態になることを繰り返し、その変化は可逆的に変色温度調整剤の融点を境にして呈するものである。また、加熱溶融した状態でロイコ染料と顕色剤の結合を遮断して消色状態をなし、再度変色温度調整剤の融点に冷却しても、その融点では変色温度調整剤が結晶化せず、消色状態を維持するものを用いることができる。後者の変色温度調整剤は、融点よりさらに数度から数十度温度を下げることで結晶化し、発色状態をなすヒステリシス特性を有する準可逆的な変化を呈するものであり、さらに再度加熱、冷却することでこの変化は繰り返し消発色を呈するものである。
【0101】
本実施の形態の固形芯62Aに用いることができる変色温度調整剤は、上記機能を有するものであれば、特に限定されず、たとえば、水酸基、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などの極性基を、少なくとも1つ有する化合物、具体的には、デカン酸、ドデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ドコサン酸、テトラドコサン酸、ヘキサドコサン酸、オクタドコサン酸などの飽和脂肪酸、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、イソステアリルアルコール、パルミトレイルアルコール、などの高級アルコール、上記脂肪酸とアミンのアミド類、上記脂肪酸とアルコールのエステル類、上記高級アルコールと、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコールとのエーテル類などが挙げられ、また、ジフェニルプロパンジオン、ジベンジオキシベンゼン、ジフェノキシベンゼン、ジイソプロピルナフタレン、ベンジルビフェニル、ベンジルナフチルエーテル、ジベンジルスルホキシド、ジメチルテレフタレート、ジフェニルカルボネート、ジフェニルスルホン、フルオランテン、フルオレン、メチルヒドロキシナフタレート、フェニルヒドロキシナフタレート、ステラニリド、などの芳香族化合物などが挙げられ、これらは、少なくとも1種用いることができる。
【0102】
マイクロカプセル顔料は、平均粒子径が0.1~20μmであって、壁膜はエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、尿素-ホルムアルデヒド系樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド系樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、ブチル化尿素樹脂、尿素-メラミン系樹脂等のアミノ樹脂の他、アクリル樹脂、マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレンなどで形成されたものであり、この熱変色組成物を内包させたものである。これらの樹脂の他、ゼラチン、デンプン、アラビアガム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸エステル、エチルセルロース、酢酸セルロースなどで形成されてもよいものである。
【0103】
本実施の形態の固形芯62Aの「熱変色色材」をマイクロカプセル顔料とする場合には、少なくとも上記ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤からなる熱変色性組成物を平均粒子径が0.1~20μmとなるように、マイクロカプセル化することにより製造することができる。
マイクロカプセル化法としては、たとえば、界面重合法、界面重縮合法、in situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライニング法などを挙げることができ、用途に応じて適宜選択することができる。
たとえば、水溶液からの相分離法では、ロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤を加熱溶融後、乳化剤溶液に投入し、加熱撹拌して油滴状に分散させ、次いで、カプセル膜剤として、たとえば、壁膜がアミノ樹脂で形成できる樹脂原料などを使用、アミノ樹脂溶液、具体的には、メチロールメラミン水溶液、尿素溶液、ベンゾグアナミン溶液などの各液を徐々に投入し、引き続き反応させて調製後、この分散液を濾過することにより目的の熱変色性のマイクロカプセル顔料を製造することができる。
【0104】
これらのロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤の含有量は、用いるロイコ染料、顕色剤、変色温度調整剤の種類、マイクロカプセル化法などにより変動するが、ロイコ染料1に対して、質量比で顕色剤0.1~100、変色温度調整剤1~100である。また、カプセル膜剤は、カプセル内容物に対して、質量比で0.1~1である。
本実施の形態の固形芯62Aのマイクロカプセル顔料では、上記ロイコ染料、顕色剤及び変色温度調整剤の種類、量などを好適に組み合わせることにより、各顔料の色、任意の発色温度、消色温度とすることができる。
【0105】
本実施の形態の固形芯62Aの「熱変色色材」をマイクロカプセル顔料とする場合には、壁膜が樹脂で形成されることが好ましく、さらに好ましくは、製造性、保存安定性、筆記性の点から、メラミン樹脂を含むアミノ樹脂等の熱硬化樹脂で形成されることが望ましい。マイクロカプセル顔料の壁膜の厚さは、必要とする壁膜の強度や描線濃度に応じて適宜決められる。
【0106】
「熱変色色材」がマイクロカプセル顔料である場合の平均粒子径は、着色性、発色性、易消色性、安定性の点、及び、筆記性への悪影響を抑制する点から、0.1~20μm、さらに好ましくは、0.2~5.0μmであるものが望ましい。なお、本実施の形態の固形芯62Aで言及する「平均粒子径」は、レーザー回折・散乱式粒子径粒度分布測定装置(レーザー回折散乱式粒度分布計MT3000(日機装株式会社製))にて、平均粒子径(体積基準分布による算術平均径)を測定した値である。
この平均粒子径が0.1μm未満であると、十分な描線濃度が得られず、一方、20μmを越えると、筆記性の劣化、マイクロカプセル顔料の分散安定性の低下、摩擦による筆記面からの脱離が発生し、好ましくない。
なお、上記範囲(0.1~20μm)となる平均粒子径のマイクロカプセル顔料は、マイクロカプセル化法により変動するが、水溶液からの相分離法などでは、マイクロカプセル顔料を製造する際の攪拌条件を好適に組み合わせることにより調製することができる。
【0107】
本実施の形態の固形芯62Aにおいて、「熱変色色材」の含有量は、インク組成物全量に対して、好ましくは、5~30重量%、さらに好ましくは、10~25重量%である。
この熱変色色材(顕色粒子)の含有量が5重量%未満であると、着色力、発色性が不十分となり、一方、30重量%を超えると、カスレが生じやすくなり、好ましくない。
【0108】
本実施の形態の固形芯62Aにおける「熱変色色材」の他、色材として通常の顔料を含むことができる。その顔料としては、ジスアゾイエローAAA、ピラゾロンオレンジ等のアゾ系有機顔料、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のシアニン系有機顔料、キナクリドンレッド等の高級有機顔料、ファナルカラー等染付け顔料、蛍光顔料、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、紺青等の無機顔料等をすべて用いることができる。
【0109】
本実施の形態の固形芯62Aにおける「白色の体質材」としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、マイカ、窒化ホウ素、チタン酸カリウムウィスカー、塩基性硫酸マグネシウムウィスカーのウィスカー類等公知の体質材であって、白色を呈するものをすべて用いることができる。
ここで、「二酸化チタン」としてはルチル、アタナーゼを問わず従来公知の二酸化チタンをすべて用いることができる。しかし、透明プラスチック、ガラス等透明な板面に濃く明確に描画することを目的とするには、触媒用二酸化チタンは粒子径が細かく、薄い描画面となり、好ましくないが、下記の通り、下地を透かして見るアンダーラインマーカーとする場合には逆に好都合である。
また、たとえば、二酸化チタンを添加せずに、これらの白色の体質材のみを添加して変色性の固形芯62Aを組成すると、半透明の描線が引けて下地が透けて見えるアンダーラインマーカーとして利用できるほか、この描線の上から半透明のシートをさらに被せてコピーをとると、複写物においては描線を引いた箇所が消去されて、即席の穴埋め問題集となる。
【0110】
この固形芯リフィル62が先軸51Bから突出している状態では、筆記具50は、先端から突出する固形芯62Aにより、熱変色性を有する描線を筆記可能となる。そして、使用により固形芯62Aが摩耗して短くなったら、一旦先軸51Bを後軸51Aから取り外して
図12に示すような状態としてから、固形芯リフィル62を摘まんで引き離すことで、
図17(A)に示すように単離することができる。この状態において、まず、筒部62Bの先端から突出している固形芯62Aの先端を摘まんで引き出し、先端を適宜切削等する。それから再び筒部62Bへ挿入する。次いで、一対の挿入部62Lを内方へ押圧して弾性部62Jを撓ませ、そのままストッパ62Dを前方へスライドさせ、固形芯62Aの後端と当接したところで押圧を解けば、短くなった固形芯62Aの後端に近いストッパ孔62Eに挿入部62Lが
図17(E)に示すように内方から挿入され、再び固形芯62Aは固定される。
【0111】
(2-7)摩擦用ラバーリフィル64
摩擦用ラバーリフィル64の形状は、
図20に示すように、筒部64B、接続部64C、ストッパ64D及び摩擦用ラバー64Aが組み合わされてなるものであり、前記消しゴム63Aが摩擦用ラバー64Aに置換された以外の各部材の構成は、前記消しゴムリフィル63の各部材の構成とそれぞれ共通するものである。
本実施の形態において、摩擦用ラバーリフィル64に装着される摩擦用ラバー64Aとしては、シリコーン樹脂、スチレンを含む樹脂、フッ素系樹脂、クロロプレン樹脂、ニトリル樹脂、ポリエステル系樹脂、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)等の軟質樹脂(ゴム、エラストマー)や、ポリアセタール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ABS樹脂、ポリカーボネイト樹脂、ポリエステル樹脂等の硬質樹脂を用いることができる。特に、上記の硬質樹脂のうち、JIS K 6253におけるデュロメータタイプAの硬度が60以上の硬質樹脂が好ましい。この硬度が60未満であると軟らかすぎるため筆跡を摩擦して変色させる際の摩擦熱の発生が難しくなる。好ましくは65以上100以下、より好ましくは70以上90以下とすれば、問題なく摩擦熱によって筆跡を変色させることができる。
【0112】
なお、摩擦用ラバーリフィル64の他の例として、
図21に示すような形状のものも使用できる。この例における摩擦用ラバーリフィル64は、金属製で円筒形状の前筒64E及びこの前筒64Eより長い金属製で円筒形状の後筒64Fが、金属又は合成樹脂製の介在部64Hにより連結された構成を有している。また、前筒64Eの前半部分には、より小径かつ短い金属製で円筒形状の中筒64Gが摺動可能に挿入されている。中筒64Gの前端から後方に向かって半ばを過ぎた箇所まで、長手方向に沿った一対のスリット64Pが形成されている。このスリット64Pの意義については、前記固形芯リフィル62の筒部62Bにおける長スリット62G及び短スリット62H並びに前記消しゴムリフィル63の筒部63Bにおける長スリット63G及び短スリット63Hと同様である。このスリット64Pによる中筒64Gの先端部分の弾性変形を利用して、中筒64Gの先端から円柱形状の摩擦用ラバー64Aが挿入可能であり、挿入後はこの弾性変形の復元力で保持されることとなっている。
介在部64Hは、前筒64Eの後端から摺動可能に挿入される円柱形状の摺動部64Jと、この摺動部64Jの前方に位置するとともに外径がやや小径で中筒64Gの後端に圧入又はポンチ止め等で固定される部分である円柱形状の前方挿入部64Iと、後筒64Fの前端から圧入又はポンチ止め等で固定される円柱形状の後方挿入部64Lと、摺動部64J及び後方挿入部64Lより小径でこれらを連結する円柱形状の縮径部64Kと、縮径部64K及び後方挿入部64Lの境界に位置し後筒64Fの前端に当接するフランジ64Mとで構成される。ここで、中筒64Gの後端は、摺動部64Jと前方挿入部64Iとの間の前方段部64Nと当接している(
図21(C))。また、縮径部64Kの外周にはスプリング64Qが外挿される(
図21(A)及び(B))。スプリング64Qの前端は、前筒64Eの後端縁に形成されている後方段部64Oに当接している。また、スプリング64Qの後端は、介在部64Hのフランジ64Mに当接している。すなわち、スプリング64Qは、前筒64Eと後筒64Fとの間に介装されることとなっている。
なお、後筒64Fの開放している後端(
図21(A)及び(B))には、固形芯リフィル62の接続部62C及び消しゴムリフィル63の接続部63Cと同様の図示しない接続部が接続され、これを介して対応するノック棒54にこの摩擦用ラバーリフィル64が接続される。
【0113】
軸筒51の内部に収容されている状態では、
図21(A)に示すように、スプリング64Qの付勢力により前筒64Eが後筒64Fから離間する方向に付勢されており、これにより前筒64Eが摩擦用ラバー64Aの先端を完全に覆っている。これは、ノック動作で摩擦用ラバー64Aが前方へ移動する際、摩擦用ラバー64Aは前筒64Eが覆っているため摩擦用ラバー64Aの先端が先軸51Bの内径部に接触しないようになっている。
この状態から、対応するノック棒54が操作されると、摩擦用ラバーリフィル64は前方へ移動する。このとき、
図21(B)に示すように、前筒64Eの先端は、先軸51Bの先端開口の近傍に当接してそこで前方への移動が阻止される。一方、ノック棒54から後筒64F及び介在部64Hに加えられた押圧力は、スプリング64Qを圧縮しつつ、先端に連結されている中筒64Gをさらに前進させ、その先端を先軸51Bの先端開口から突出させる。この状態で摩擦用ラバー64Aが先軸51Bの先端から露出することで、摩擦用ラバーによる描線の消去が可能となっている。
図21(B)に示す状態からノック棒54を元の位置へ後退させると、圧縮されていたスプリング64Qの復元力で介在部64Hが後方へ移動し、それにより中筒64Gも後退することで、
図21(A)に示すように、摩擦用ラバー64Aが中筒64Gに完全に覆われた状態に復帰することとなる。
【0114】
(2-8)筆記具取付部品10
筆記具取付部品10は、
図22~24に示すような構造を有する。すなわち、略円柱状の基部20の後端側に、略円筒状の被覆部40が装着されている(
図22(A)、(C)、(D)、
図23(A)及び
図24(A)参照)。また、基部20の先端面21は、筆記具50の後端面に合わせた凹曲面に形成されており(
図24(A))、そこからステンレス製の係合爪30が先端方向へ突設されている(
図23(A)及び
図24(A)参照)。係合爪30は、
図22(C)、(D)及び
図23(A)で視認されるような外部から視認される部分として、長手方向に沿って延伸している延伸片31及びこの延伸片31の先端から中心軸方向へ直角に折れ曲がっている係止片32と、外部からは視認されない部分として、この延伸片31の後端から中心軸方向へ直角に折れ曲がっている取付片33(
図24(A)及び
図28参照)とから成る。係合爪30は、
図11に示すスライド窓53の5つのうち3つに対応する位置に設けられている。なお、係合爪30は、基部20の先端面21に形成されている2個の取付孔25及び長短2本の取付溝26を利用して基部20に装着されるが、これについてはさらに後述する。さらに、基部20の底部には円盤状の係止板35が嵌入されていて、この係止板35を挟むようにして略円柱状の機能部15が収容部24内に装着されている(
図24(A)参照)。この係止板35の先端面から突出する2個の嵌合突起36がそれぞれ取付孔25に嵌合しているが(
図23(B)参照)、この点についても後述する。被覆部40はこの機能部15をも被覆している(
図24(A)参照)。本実施の形態ではこの機能部15は前述の通り被覆消去材65である。基部20における軸方向と垂直な断面である
図24(B)に示すように、2個の円弧状の取付溝26のうち、長い方には2個の係止片32が嵌合しており、一方、短い方には1個の係止片32が嵌合している。また、より幅広の円弧状を呈する2個の取付孔25にはそれぞれ嵌合突起36が嵌合している。
【0115】
基部20は、
図25(A)、(C)及び(D)に示すように、その後端部分の外径が小さくなっており、この部分が縮径部22となっている。また、この縮径部22の外周には、周方向に沿って外方へ突出した外方係止突条23が設けられている(
図25(A)、(C)及び(D)並びに
図26(A)、(C)、(D)及び(F))。さらに、この縮径部22の内部空間は、機能部15(
図4参照)を収容する収容部24となっている(
図25(A)及び(B)並びに
図26(A)及び(B)参照)。また、基部20の平面視(
図25(B))では、収容部24の底面に装着される円形の係止板35が視認される。これについては後述する。
【0116】
被覆部40は、
図22及び
図24(A)に示すように、前記縮径部22よりわずかに大きな内径を有する略円筒形状を呈する。被覆部40の後端面41は緩やかな傾斜の円錐台状に形成されている。また、被覆部40内周面のやや先端側寄りには、周方向に沿って内方へ突出した内方係止突条43が設けられている(
図24(B)参照)。被覆部40は合成樹脂の射出成形により形成されている。なお、合成樹脂に帯電防止剤としてアルキルスルホン酸ソーダやアルキルベンゼンスルホン酸ソーダ、等を混練、成形させることで埃等の付着汚れを防止することができる。
【0117】
係合爪30及び係止板35が装着される前の基部20を
図26に示す。基部20の先端面21には、先述の通り、2個の取付孔25及び長短2本の取付溝26が形成されている(
図26(E)及び(F))。2個の円弧状の取付溝26のうち、長い方の取付溝26の中間にはより幅広の円弧状を呈する取付孔25が形成されている。また、短い方の取付溝26の一端にも、同じくより幅広の円弧状を呈する取付孔25が形成されている。これら2個の取付孔25は、収容部24の底面まで貫通している(
図26(A)及び(B))。
【0118】
係止板35は、先述の通り円盤状を呈している(
図27(A)、(B)、(E)及び(F))。係止板35の先端面の周縁からは、2個の短円弧状の嵌合突起36が突出している(
図27(A)、(C)、(D)、(E)及び(F))。これらの嵌合突起36は、それぞれ前記基部20の2個の取付孔25とそれぞれ嵌合する位置及び形状を有している。
【0119】
図28に示すように、基部20には3個の係合爪30及び係止板35が装着される。3個の係合爪30のうち2個は、長い方の取付溝26の方にある取付孔25から後方へ向かって1個ずつ挿入され、それぞれ取付溝26のいずれかの端へスライドさせ、取付片33を収容部24の底面に係止させる(
図24(A)参照)。一方、もう1個の係合爪30は、短い方の取付溝26の方にある取付孔25から後方へ向かって挿入され、取付溝の反対の端へスライドさせ、同様に取付片33を収容部24の底面に係止させる。そして、収容部24の中へ係止板35を挿入し、2個の嵌合突起36をそれぞれ対応する取付孔25に嵌合させることで、係合爪30が固定される。ここで、取付孔25及び嵌合突起36はそれぞれ非対称な位置及び形状に形成されているため、互いに嵌合する位置が一通りに決められることとなっている。
【0120】
(2-9)筆記具取付部品10の取り付け及び取り外し
被覆部40を基部20へ装着する際には、縮径部22の後端側から被覆部40を被せ、内方係止突条43が外方係止突条23を弾性変形により乗り越えるようにして先端方向へ押圧すると、
図24(A)に示すような装着状態となる。内部の機能部15を使用する際には、被覆部40を把持して後方へ引っ張ると、内方係止突条43が再び弾性変形により外方係止突条23を乗り越え、被覆部40が基部20から離れることとなる。
【0121】
筆記具取付部品10を筆記具50に取り付ける際には、
図29(A)及び(B)に示すように、3つある係合爪30のうち長い方の取付溝26に取り付けられている2つを、5つあるスライド窓53のうち、いずれかの隣り合う2つの位置に合わせ、同時に、もう1つの係合爪30を、1つ隔てたスライド窓53の位置に合わせた状態で、先端方向へ押圧する。これにより、延伸片31のわずかな外方への弾性変形を経て、係止片32がスライド窓53の後端へ係合することとなる(
図30参照)。また、取り外す際には、筆記具取付部品10を強く後方へ引っ張ることで、延伸片31が外方へ弾性変形し、係止片32とスライド窓53との係合が解除されることとなる。
【0122】
なお、機能部15は、第2の実施形態で述べた被覆消去材65に限らず、固形芯62A、消しゴム63A又は摩擦用ラバー64Aを収容してもよい。また、第1の実施形態又は第2の実施形態に示した態様に限らず、様々な筆記体56と、その各々に対応する消去体57を自由に組み合わせてリフィル又は機能部15として装着することで、様々な消去又は変色方式の筆記体とそれに対応する消去又は変色具を備えた筆記具を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明は、筆記具の後端に、消しゴム、摩擦用ラバー、印鑑、固形着色具、ストラップ等の機能性の部材を装着するための取付部品として利用可能である。また、筆記具の後端に、アクセサリー等の装飾部材を装着するための取付部品としても利用可能である。
【符号の説明】
【0124】
10 筆記具取付部品 15 機能部
20 基部 21 先端面 22 縮径部
23 外方係止突条 24 収容部 25 取付孔
26 取付溝
30 係合爪 31 延伸片 32 係止片
33 取付片
35 係止板 36 嵌合突起
40 被覆部 41 後端面 42 通気孔
43 内方係止突条
50 筆記具
51 軸筒
51A 後軸 51B 先軸
52 クリップ 53 スライド窓 54 ノック棒
55 スライドボタン 56 筆記体 57 消去体
58 ガイド部材
58A ガイド孔
59 スプリング
60 ボールペンリフィル
60A 筆記ボール 60B ホルダー 60C インク収容管
60D 継手
61 シャープペンシルリフィル
61A 芯収容管 61B 機構部 61C シャープペンシル芯
62 固形芯リフィル
62A 固形芯 62B 筒部 62C 接続部
62D ストッパ 62E ストッパ孔 62F 連絡部
62G 長スリット 62H 短スリット 62I 接続孔
62J 弾性部 62K 連結部 62L 挿入部
63 消しゴムリフィル
63A 消しゴム 63B 筒部 63C 接続部
63D ストッパ 63E ストッパ孔 63G 長スリット
63H 短スリット 63I 接続孔 63J 半筒部
63L 挿入部
64 摩擦用ラバーリフィル
64A 摩擦用ラバー 64B 筒部 64C 接続部
64D ストッパ 64E 前筒 64F 後筒
64G 中筒 64H 介在部 64I 前方挿入部
64J 摺動部 64K 縮径部 64L 後方挿入部
64M フランジ 64N 前方段部 64O 後方段部
64P スリット 64Q スプリング
65 被覆消去材
A 黒色粒子 B 黒鉛粒子 C カーボンナノ粒子