(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】定常ブレーキシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/1755 20060101AFI20231214BHJP
B60T 8/176 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60T8/1755 A
B60T8/176
(21)【出願番号】P 2021198053
(22)【出願日】2021-12-06
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2021-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】592246761
【氏名又は名称】財団法人車輌研究測試中心
(74)【代理人】
【識別番号】100201329
【氏名又は名称】山口 真二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167601
【氏名又は名称】大島 信之
(74)【代理人】
【識別番号】100220917
【氏名又は名称】松本 忠大
(72)【発明者】
【氏名】魏 嘉樂
(72)【発明者】
【氏名】許 ▲そう▼譁
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-069756(JP,A)
【文献】特表平10-504785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 8/00 - 8/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸上車両に設けられる定常ブレーキシステムであって、
液圧ブレーキ装置、及び電子制御ユニットを有し、
前記液圧ブレーキ装置は、前記陸上車両の単一車軸の
2つの車輪に設けられ、
前記電子制御ユニットは、前記液圧ブレーキ装置、及び前記陸上車両に設けられる動的センシング装置に接続され、
前記電子制御ユニットは、前記動的センシング装置を利用して前記車輪の輪速を取得し、各前記車輪の減速度及び実際スリップ率の少なくとも1つを計算し、そして、ブレーキ信号を受信し、且つ前記車輪の減速度が第1設定値を超えるか、又は前記実際スリップ率が第2設定値を超えると判断した場合に、
前記単一車軸の2つの車輪それぞれの前記動的センシング装置による検出結果に応じた2つの液圧制御命令を
アンチロックブレーキシステムに基づいてそれぞれ生成し、
前記
2つの液圧制御命令は、前記液圧ブレーキ装置を駆動して各前記車輪の輪速を低下又は増加させ、且つ、ブレーキ過程において各前記車輪の前記輪速が0を超えるように制御する命令であり、
前記
2つの液圧制御命令
の各々は圧力上昇命令、圧力維持命令、又は圧力低下命令
のいずれかであり、
前記圧力低下命令の優先度が前記圧力維持命令の優先度より高く、前記圧力維持命令の前記優先度が前記圧力上昇命令の優先度より高く、
前記電子制御ユニットは、前記動的センシング装置を利用し、前記陸上車両が直進していると判断した場合、又は前記陸上車両が0より大きく且つ第3設定値未満である第1姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、前記
単一車軸の2つの車輪に前記アンチロックブレーキシステムに基づいてそれぞれ生成された2つの液圧制御命令から、優先度が最も高い液圧制御命令を選択し、前記選択された液圧制御命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速を制御することを特徴とする、
定常ブレーキシステム。
【請求項2】
前記電子制御ユニットは、前記動的センシング装置を利用して前記陸上車両が前記第1姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、各前記車輪の目標スリップ率を低下させ、前記選択された液圧制御命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して各前記車輪の前記実際スリップ率が対応する前記目標スリップ率に近づくように制御することを特徴とする、
請求項1に記載の定常ブレーキシステム。
【請求項3】
前記
単一車軸の2つの車輪は、第1車輪及び第2車輪を有し、
前記陸上車両が第1側および前記第1側とは反対側の第2側を有する車線を走行しており、前記電子制御ユニットは、前記動的センシング装置を利用して前記陸上車両が前記第3設定値以上且つ第4設定値未満である第2姿勢物理量で前記車線の前記第2側に向かって曲がっており、前記第1車輪が前記車線の前記第2側よりも前記第1側に近く且つ前記第2車輪が前記車線の前記第1側よりも前記第2側に近いと判断した場合に、前記圧力低下命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記第1車輪の前記輪速及び前記第2車輪の目標スリップ率を上昇させ、前記圧力維持命令又は前記圧力上昇命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記第2車輪の前記実際スリップ率が前記目標スリップ率に近づくように制御することを特徴とする、
請求項1に記載の定常ブレーキシステム。
【請求項4】
前記電子制御ユニットは、前記動的センシング装置を利用して前記陸上車両が前記第4設定値以上である第3姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、前記
単一車軸の2つの車輪に前記アンチロックブレーキシステムに基づいてそれぞれ生成された2つの液圧制御命令から、優先度が最も高い液圧制御命令を選択し、前記選択された液圧制御命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速を制御することを特徴とする、
請求項3に記載の定常ブレーキシステム。
【請求項5】
前記動的センシング装置は、
2つの輪速センサー、回転角センサー、及び姿勢センサーを有し、
前記
2つの輪速センサーは、それぞれ前記
単一車軸の2つの車輪に設けられ、前記電子制御ユニットに接続され、前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速をそれぞれ検出し、
前記電子制御ユニットは、前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速を受信してそれに基づいて前記陸上車両の車速を推定し、さらに前記車速及び前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速に基づいて前記車輪の減速度及び前記実際スリップ率の少なくとも1つを
計算し、
前記回転角センサーは、前記陸上車両の操舵機構に設けられ、前記電子制御ユニットに接続され、前記操舵機構の回転角を検出し、
前記姿勢センサーは、前記電子制御ユニットに接続され、前記陸上車両に設けられ、前記陸上車両の実際姿勢の物理量を検出し、
電子制御ユニットは、前記回転角及び前記実際姿勢の物理量を受信してそれに基づき、前記陸上車両が直進しているのか、前記第1姿勢物理量で曲がっているのかを判断することを特徴とする、
請求項1に記載の定常ブレーキシステム。
【請求項6】
前記姿勢センサーは、ジャイロスコープ、慣性計測ユニット(IMU)、傾斜角推定器、加速度計、又はそれらの組み合わせを有することを特徴とする、
請求項5に記載の定常ブレーキシステム。
【請求項7】
前記液圧ブレーキ装置は、
2つのブレーキディスク、
2つのブレーキキャリパー、液圧制御ユニット(Hydraulic Control Unit、HCU)を有し、
前記
2つのブレーキディスクは、それぞれ前記
単一車軸の2つの車輪に設けられ、前記
2つの車輪と一緒に回転し、
前記
2つのブレーキキャリパーは、それぞれの位置が前記
2つのブレーキディスクの位置に対応し、
前記液圧制御ユニットは、前記電子制御ユニット及び前記
2つのブレーキキャリパーに接続され、
前記電子制御ユニットは、前記陸上車両が直進していると判断した場合、又は前記陸上車両が前記第1姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、前記選択された液圧制御命令により前記液圧制御ユニットを駆動して前記
2つのブレーキキャリパーを押圧し、さらに前記
2つのブレーキキャリパーがそれぞれ前記
2つのブレーキディスクを摩擦するように制御することにより、前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速を制御することを特徴とする、
請求項1に記載の定常ブレーキシステム。
【請求項8】
前記ブレーキ信号は、ブレーキ電圧値であり、
前記電子制御ユニットは、前記陸上車両のブレーキスイッチに接続され、前記ブレーキスイッチから制御可能な電圧値を受信し、
前記陸上車両の前記ブレーキスイッチがOFFにされた時、前記制御可能な電圧値は前記ブレーキ電圧値と等しくなく、
前記陸上車両の前記ブレーキスイッチがONにされた時、前記制御可能な電圧値は前記ブレーキ電圧値と等しいことを特徴とする、
請求項1に記載の定常ブレーキシステム。
【請求項9】
陸上車両の単一車軸の
2つの車輪を制御する定常ブレーキ方法であって、
各前記車輪の減速度及び実際スリップ率の少なくとも1つを
計算し、そして、ブレーキ信号を受信し、且つ前記車輪の減速度が第1設定値を超える、又は前記実際スリップ率が第2設定値を超えると判断した場合に、
アンチロックブレーキシステムに基づいて前記単一車軸の2つの車輪それぞれの動的センシング装置による検出結果に応じた2つの液圧制御命令を
それぞれ生成する工程と、
前記
2つの液圧制御命令は、前記
単一車軸の2つの車輪に取り付けられる液圧ブレーキ装置を駆動して各前記車輪の輪速を低下又は増加させ、且つ、ブレーキ過程において各前記車輪の前記輪速が0を超えるように制御する命令であり、
前記
2つの液圧制御命令
の各々は圧力上昇命令、圧力維持命令、又は圧力低下命令
のいずれかであり、前記圧力低下命令の優先度が前記圧力維持命令の優先度より高く、前記圧力維持命令の前記優先度が前記圧力上昇命令の優先度より高く、
前記陸上車両が直進している場合、又は前記陸上車両が0より大きく且つ第3設定値未満である第1姿勢物理量で曲がっている場合に、前記
単一車軸の2つの車輪に前記アンチロックブレーキシステムに基づいてそれぞれ生成された2つの液圧制御命令から、優先度が最も高い液圧制御命令を選択し、前記選択された液圧制御命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速を制御する工程と、を有することを特徴とする、
定常ブレーキ方法。
【請求項10】
前記陸上車両が前記第1姿勢物理量で曲がっている場合に、各前記車輪の目標スリップ率を低下させ、前記選択された液圧制御命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して各前記車輪の前記実際スリップ率が対応する前記目標スリップ率に近づくように制御することを特徴とする、
請求項9に記載の定常ブレーキ方法。
【請求項11】
前記
単一車軸の2つの車輪は、第1車輪及び第2車輪を有し、
前記陸上車両が第1側および前記第1側とは反対側の第2側を有する車線を走行しており、前記陸上車両が前記第3設定値以上且つ第4設定値未満である第2姿勢物理量で前記車線の前記第2側に向かって曲がっており、前記第1車輪が前記車線の前記第2側よりも前記第1側に近く且つ前記第2車輪が前記車線の前記第1側よりも前記第2側に近い場合に、前記圧力低下命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記第1車輪の前記輪速及び前記第2車輪の目標スリップ率を上昇させ、前記圧力維持命令又は前記圧力上昇命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記第2車輪の前記実際スリップ率が前記目標スリップ率に近づくように制御することを特徴とする、
請求項9に記載の定常ブレーキ方法。
【請求項12】
前記陸上車両が前記第4設定値以上である第3姿勢物理量で曲がっている場合に、前記
単一車軸の2つの車輪に前記アンチロックブレーキシステムに基づいてそれぞれ生成された2つの液圧制御命令から優先度が最も高い液圧制御命令を選択し、前記選択された液圧制御命令により前記液圧ブレーキ装置を駆動して前記
単一車軸の2つの車輪の前記輪速を制御することを特徴とする、
請求項11に記載の定常ブレーキ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブレーキ技術、特に定常ブレーキシステム及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
オートバイ又は車等の陸上車両は、人々の移動速度を速めるために日常生活で広く利用されているが、移動速度が速いと一定のリスクが伴っているため、ブレーキシステムと組み合わせて高速移動時のリスクを低減する必要がある。一般的には、ブレーキ力が高いほどブレーキ効果が高いが、ブレーキ力がタイヤのグリップより高くなると、タイヤがロックされてスリップして制御不能となる危険性がある。
【0003】
それに対応するためにアンチロックブレーキシステム(Anti-lock Braking System、ABS)が開発されている。その原理は、キャリパー(caliper)のブレーキライニング(Brake Lining)を素早く車両のブレーキディスクに押圧及び解放を繰り返す(間欠ブレーキ)ことである。そのため、ブレーキディスクが常に過大なブレーキ力をかけられる状態にならず、ブレーキにおいてブレーキディスク及びタイヤがロックされず、即ち、地面に対してタイヤが車両の移動速度に対応する回転数で回転する。すると、前記車両のタイヤが地面とのより良い摩擦力を維持しているため、ドライバーが車両を制御できる。陸上車両の単一車軸に2つの車輪があり、且つ複数の車軸を有すると想定すると、アンチロックブレーキシステムを搭載していない陸上車両は、直進している途中に急ブレーキをかけた時、ブレーキの静摩擦力が道路との摩擦力の限界値を超えると、車輪がロックされる状態となる。アンチロックブレーキシステムを搭載している陸上車両は、急ブレーキをかけた時、車輪がロックされないが、アンチロックブレーキシステムはバランスよく単一車軸の複数の車輪に作用できない。また、アンチロックブレーキシステムを搭載している陸上車両は、曲がりながら急ブレーキをかけた時、前車軸又は後車軸の車輪がロックされて陸上車両が軌道から外れるか、又は車輪の横方向の摩擦が小さくなって横滑りとなる可能性がある。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するための定常ブレーキシステム及びその方法を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ブレーキの安定性を高める定常ブレーキシステム及びその方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの実施例において、定常ブレーキシステムは、陸上車両に設けられ、液圧ブレーキ装置及び電子制御ユニットを有する。液圧ブレーキ装置は、陸上車両の単一車軸の複数の車輪に設けられる。電子制御ユニットは、液圧ブレーキ装置、及び陸上車両に設けられる動的センシング装置に接続される。電子制御ユニットは、動的センシング装置を利用して各車輪の減速度及び実際スリップ率の少なくとも1つを検出し、ブレーキ信号を受信してそれに基づいてブレーキ操作があり、且つ車輪の減速度が第1設定値を超えるか、又は実際スリップ率が第2設定値を超えると判断した場合に、複数の液圧制御命令を生成する。複数の液圧制御命令は、液圧ブレーキ装置を駆動して各車輪の輪速を低下させ、ブレーキ過程において各車輪の輪速が0を超えるように制御し、前記複数の液圧制御命令は、圧力上昇命令、圧力維持命令、又は圧力低下命令を含み、圧力低下命令の優先度が圧力維持命令の優先度より高く、圧力維持命令の優先度が圧力上昇命令の優先度より高い。電子制御ユニットは、動的センシング装置を利用し、陸上車両が直進していると判断した場合、又は前記陸上車両が0より大きく且つ第3設定値未満である第1姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、優先度が高い液圧制御命令により優先度が低い液圧制御命令を置換し、前記複数の液圧制御命令により液圧ブレーキ装置を駆動して単一車軸の複数の車輪の輪速を制御する。
【0007】
本発明の1つの実施例において、電子制御ユニットは、動的センシング装置を利用して陸上車両が第1姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、各車輪の目標スリップ率を低下させ、前記複数の液圧制御命令により液圧ブレーキ装置を駆動して各車輪の実際スリップ率が対応する目標スリップ率に近づくように制御する。
【0008】
本発明の1つの実施例において、複数の車輪は、第1車輪及び第2車輪を有する。陸上車両が車線を走行しており、電子制御ユニットは、動的センシング装置を利用して陸上車両が第3設定値以上且つ第4設定値未満である第2姿勢物理量で車線の内側に向かって曲がっており、第1車輪が車線の外側に近く且つ第2車輪が車線の内側に近いと判断した場合に、圧力低下命令により液圧ブレーキ装置を駆動して第1車輪の輪速及び第2車輪の目標スリップ率を上昇させ、圧力維持命令又は圧力上昇命令により液圧ブレーキ装置を駆動して第2車輪の実際スリップ率が目標スリップ率に近づくように制御する。
【0009】
本発明の1つの実施例において、電子制御ユニットは、動的センシング装置を利用して陸上車両が第4設定値以上である第3姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、優先度が高い液圧制御命令により優先度が低い液圧制御命令を置換し、前記複数の液圧制御命令により液圧ブレーキ装置を駆動して単一車軸の複数の車輪の輪速を制御する。
【0010】
本発明の1つの実施例において、複数の輪速センサー、回転角センサー、及び姿勢センサーを有する。複数の輪速センサーは、それぞれ複数の車輪に設けられ、電子制御ユニットに接続され、複数の車輪の輪速をそれぞれ検出する。電子制御ユニットは、複数の車輪の輪速を受信してそれに基づいて陸上車両の車速を推定し、さらに車速及び複数の車輪の輪速に基づいて車輪の減速度及び実際スリップ率の少なくとも1つを検出する。回転角センサーは、陸上車両の操舵機構に設けられ、電子制御ユニットに接続され、操舵機構の回転角を検出する。姿勢センサーは、電子制御ユニットに接続され、陸上車両に設けられ、陸上車両の実際姿勢の物理量を検出する。電子制御ユニットは、回転角及び実際姿勢の物理量を受信してそれに基づいて陸上車両が直進しているのか、第1姿勢物理量で曲がっているのかを判断する。
【0011】
本発明の1つの実施例において、姿勢センサーは、ジャイロスコープ、慣性計測ユニット(IMU)、傾斜角推定器、傾斜角速度推定器、偏揺角推定器、偏揺角速度推定器、加速度計、又はそれらの組み合わせを有する。
【0012】
本発明の1つの実施例において、液圧ブレーキ装置は、複数のブレーキディスク、複数のブレーキキャリパー、及び液圧制御ユニット(Hydraulic Control Unit、HCU)を有する。複数のブレーキディスクは、それぞれ複数の車輪に設けられ、複数の車輪と一緒に回転する。複数のブレーキキャリパーは、それぞれの位置が複数のブレーキディスクの位置に対応する。液圧制御ユニットは、電子制御ユニット及び複数のブレーキキャリパーに接続される。電子制御ユニットは、陸上車両が直進しているのか、陸上車両が第1姿勢物理量で曲がっているのかを判断した場合に、前記複数の液圧制御命令により液圧制御ユニットを駆動して複数のブレーキキャリパーを押圧し、さらに複数のブレーキキャリパーがそれぞれ複数のブレーキディスクを摩擦するように制御することにより、単一車軸の複数の車輪の輪速を制御する。
【0013】
本発明の1つの実施例において、ブレーキ信号は、ブレーキ電圧値である。電子制御ユニットは、陸上車両のブレーキスイッチ信号に接続され、ブレーキスイッチから制御可能な電圧値を受信する。陸上車両のブレーキスイッチがOFFにされた時、制御可能な電圧値はブレーキ電圧値と等しくない。陸上車両のブレーキスイッチがONにされた時、制御可能な電圧値はブレーキ電圧値と等しい。
【0014】
本発明の1つの実施例において、陸上車両の単一車軸の複数の車輪を制御する定常ブレーキ方法は、各車輪の減速度及び実際スリップ率の少なくとも1つを検出し、ブレーキ信号に基づいてブレーキ操作があって車輪の減速度が第1設定値を超えるか又は実際スリップ率が第2設定値を超えると判断した場合に、複数の液圧制御命令を生成する工程と、複数の液圧制御命令は、複数の車輪に取り付けられる液圧ブレーキ装置を駆動して各車輪の輪速を低下させ、ブレーキ過程において各車輪の輪速が0を超えるように制御し、前記複数の液圧制御命令は、圧力上昇命令、圧力維持命令、又は圧力低下命令を含み、圧力低下命令の優先度が圧力維持命令の優先度より高く、圧力維持命令の優先度が圧力上昇命令の優先度より高く、陸上車両が直進していると判断した場合、又は陸上車両が0より大きく且つ第3設定値未満である第1姿勢物理量で曲がっている場合に、優先度が高い液圧制御命令により優先度が低い液圧制御命令を置換し、前記複数の液圧制御命令により液圧ブレーキ装置を駆動して単一車軸の複数の車輪の輪速を制御する工程と、を有する。
【0015】
本発明の1つの実施例において、陸上車両が第1姿勢物理量で曲がっている場合に、各車輪の目標スリップ率を低下させ、前記複数の液圧制御命令により液圧ブレーキ装置を駆動して各車輪の実際スリップ率が対応する目標スリップ率に近づくように制御する。
【0016】
本発明の1つの実施例において、複数の車輪は、第1車輪及び第2車輪を有する。陸上車両が車線を走行しており、陸上車両が第3設定値以上且つ第4設定値未満である第2姿勢物理量で車線の内側に向かって曲がっており、第1車輪が車線の外側に近く且つ第2車輪が車線の内側に近い場合に、圧力低下命令により液圧ブレーキ装置を駆動して第1車輪の輪速及び第2車輪の目標スリップ率を上昇させ、圧力維持命令又は圧力上昇命令により液圧ブレーキ装置を駆動して第2車輪の実際スリップ率が目標スリップ率に近づくように制御する。
【0017】
本発明の1つの実施例において、陸上車両が第4設定値以上である第3姿勢物理量で曲がっている場合に、優先度が高い液圧制御命令により優先度が低い液圧制御命令を置換し、前記複数の液圧制御命令により液圧ブレーキ装置を駆動して単一車軸の複数の車輪の輪速を制御する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の定常ブレーキシステム及びその方法によれば、陸上車両のアンチロック機構を利用してブレーキにおいて単一車軸の複数の車輪のブレーキ液圧を同じにするように制御することで、ブレーキの安定性を高めることができる。また、陸上車両が曲がる時に車輪の実際スリップ率及び目標スリップ率を制御することで、曲がりの安定性を高めることができる。
【0019】
以下、実施例及び図面を開示しながら本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の1つの実施例の定常ブレーキシステムのシステムブロック図である。
【
図2】本発明の1つの実施例の単一車軸の2つの車輪で曲がる状態を示す模式図である。
【
図3】本発明の1つの実施例の液圧制御ユニットが圧力上昇命令を実行する装置ブロック図である。
【
図4】本発明の1つの実施例の液圧制御ユニットが圧力維持命令を実行する装置ブロック図である。
【
図5】本発明の1つの実施例の液圧制御ユニットが圧力低下命令を実行する装置ブロック図である。
【
図6】本発明の1つの実施例の定常ブレーキ方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を開示しながら本発明の実施例を説明する。図面及び明細書において、同じ符号は同じ又は類似の部材を示す。図面において、簡単化又は表示の便宜上で、その形状及び厚さを拡大して表示する場合もある。図面に開示されていないか又は明細書に記載されていない素子は、当業者(practitioner)に自明であるものであることに留意されたい。当業者は、本発明の内容に基づいて様々な変更、改良を行うことができる。
【0022】
下記内容があくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって示される。明細書及び請求項において、「1つ」及び「前記」は、特に限定しない限り、「1つ又は少なくとも1つ」の素子又は成分を示す。また、前後の文章から明らかに複数ではないと分からない限り、複数の素子又は成分の意味も含む。なお、「中に」は、特に限定しない限り、「中に」及び「上に」の意味も含む。明細書及び請求項に記載の用語(terms)は、特に限定しない限り、当業者が理解する意味と同じ意味を有する。また、一部の特定の用語は、後述で明確に定義して説明する。明細書に記載の用語は、あくまで例示であり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、本発明は、下記各実施例に限定されない。
【0023】
また、「(電気)接続」は、直接及び間接的な(電気)接続手段を示す。例えば、第1装置が第2装置に接続されるとは、前記第1装置が直接に前記第2装置に接続されること、又は他の装置又は他の接続手段を介して間接的に前記第2装置に接続されることを表す。また、電気信号は、その伝送過程において減衰又は他の変化が生じる場合があるが、特に限定しない限り、伝送元又は提供元での信号及び受信側での信号が同じ信号と見なされるべきである。例えば、電気信号Sが電子回路の端子Aから電子回路の端子Bに伝送される時に、トランジスタスイッチのソースとドレイン電極、及び/又は寄生容量を通ることで電圧降下を生じる。しかしながら、意図的に伝送時に生じた減衰又は他の変化を使用して特定の技術的な効果を達成する場合以外、電子回路の端子Aでの電気信号S及び端子Bでの電気信号Sは、同じ信号と見なされるべきである。
【0024】
本明細書において、「1つの実施例」又は「実施例」等の文言は、少なくとも1つの実施例に関する特定の素子、構造又は特徴を示す。そのため、本明細書に記載の「1つの実施例」又は「実施例」の文言は、同じ実施例に対することとは限らない。なお、複数の実施例に記載の特定の部材、構造、及び特徴を適切に組み合わせることができる。
【0025】
特に明記しない限り、一部の用語、例えば「有してもよい」又は「してもよい」は、1つの実施例において有しても有しなくてもよい特徴、素子、又は工程を示す。他の実施例において、それらの特徴、素子、又は工程が必要とされない場合がある。
【0026】
本発明の定常ブレーキシステム及びその方法は、陸上車両がアンチロック機構を利用してブレーキにおいて単一車軸の複数の車輪のブレーキ液圧を制御することで、ブレーキの安定性を高めることができる。
【0027】
図1は、本発明の1つの実施例の定常ブレーキシステムのシステムブロック図である。
図1を参照しながら説明する。定常ブレーキシステムは、陸上車両に設けられる。陸上車両は、例えばバイク又は車が挙げられる。定常ブレーキシステムは、液圧ブレーキ装置1及び電子制御ユニット2を有する。液圧ブレーキ装置1は、陸上車両の単一車軸3の複数の車輪4_1、4_2に設けられる。電子制御ユニット2は、液圧ブレーキ装置1、及び複数の車輪4_1、4_2に設けられる動的センシング装置5に接続される。以下、車輪4_1、4_2数が2つである場合を例として説明する。電子制御ユニット2は、陸上車両のブレーキスイッチ6に接続されてもよい。
【0028】
定常ブレーキシステムの動作を説明する。まず、電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用して各車輪4_1、4_2の減速度及び実際スリップ率の少なくとも1つを検出する。電子制御ユニット2は、ブレーキ信号Bを受信してそれに基づいてブレーキ操作が実行され、且つ第1条件及び第2条件の少なくとも1つを満足すると判断した場合に、複数の液圧制御命令を生成する。第1条件は、各車輪4_1、4_2の減速度が第1設定値を超える。第2条件は、各車輪4_1、4_2の実際スリップ率が第2設定値を超える。第1設定値及び第2設定値は、必要に応じて決定できる。例えば、ブレーキ信号Bは、ブレーキ電圧値である。電子制御ユニット2は、ブレーキスイッチ6から制御可能な電圧値を受信する。陸上車両のブレーキスイッチ6がOFFにされた時に、制御可能な電圧値がブレーキ電圧値と等しくない。陸上車両のブレーキスイッチ6がONにされた時に、制御可能な電圧値がブレーキ電圧値と等しい。本発明において、ブレーキ信号Bの受信方法について特に限定がない。複数の液圧制御命令は、液圧ブレーキ装置1を駆動して各車輪4_1、4_2の輪速Wを低下させ、ブレーキ過程において各車輪4_1、4_2の輪速Wが0を超えるように制御し、各車輪4_1、4_2がロックされることを避ける。複数の液圧制御命令は、圧力上昇命令、圧力維持命令、又は圧力低下命令を含む。実際スリップ率D=(V-W)/Vであり、Vが陸上車両の車速である。言い換えると、第1条件及び第2条件の少なくとも1つを満足すると、電子制御ユニット2は、アンチロック機構を実行する。ブレーキの安定性をさらに高めるために、電子制御ユニット2は、圧力低下命令の優先度が圧力維持命令の優先度より高く、圧力維持命令の優先度が圧力上昇命令の優先度より高くするように設定する。電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用し、陸上車両が直進していると判断した場合、又は陸上車両が0より大きく且つ第3設定値未満である第1姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、優先度が高い液圧制御命令により優先度が低い液圧制御命令を置換し、前記液圧制御命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して車輪4_1、4_2の輪速Wを制御し、複数の車輪4_1、4_2に最大ブレーキ力を提供する。陸上車両がバイクである場合、姿勢物理量は、傾斜角又は傾斜角速度である。陸上車両の傾斜角は、ボディのシャーシ(chassis)によって決められる。シャーシの法線ベクトルが地面に対して垂直になると、陸上車両の傾斜角は0°である。単位時間内に傾斜角の変化が無い場合、傾斜角速度は0°/秒である。陸上車両が車である場合、姿勢物理量は偏揺角(yaw angle)又は偏揺角速度(yaw rate)である。陸上車両の偏揺角は、陸上車両のボディに平行で地面に垂直な平面によって決められる。偏揺角が0°である場合、陸上車両の進行方向は前記平面の法線ベクトルに垂直である。単位時間内に傾斜角の変化が無い場合、偏揺角速度は0°/秒である。例えば、車輪4_1、4_2の液圧制御命令がそれぞれ圧力上昇命令及び圧力維持命令にあり、陸上車両が直進している場合、又は陸上車両が第1姿勢物理量で曲がっている場合に、電子制御ユニット2は、圧力維持命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して車輪4_1、4_2の輪速Wを制御する。車輪4_1、4_2の液圧制御命令がそれぞれ圧力低下命令及び圧力維持命令にあり、陸上車両が直進しているか又は第1姿勢物理量で曲がっている場合に、電子制御ユニット2は、圧力低下命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して車輪4_1、4_2の輪速Wを制御する。車輪4_1、4_2の液圧制御命令がそれぞれ圧力低下命令及び圧力上昇命令にあり、陸上車両が直進しているか又は第1姿勢物理量で曲がっている場合に、電子制御ユニット2は、圧力低下命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して車輪4_1、4_2の輪速Wを制御する。
【0029】
ブレーキ時の向心力を高めるために、陸上車両が曲がる時に、電子制御ユニット2は、縦方向の目標スリップ率を低下させる。それは、陸上車両を運転する時に各車輪4_1、4_2に最大摩擦限界があるからである。最大摩擦力は、縦方向及び横方向の両方に作用し、横方向により高い摩擦力を提供すると、陸上車両の横力及び向心力を増加できる。陸上車両が安定して曲がっている時に、電子制御ユニット2は、縦方向のスリップ率が小さくなるように制御し、横方向により高い摩擦力及び横力を維持し、曲がりの安定性及び向心力を高めることができる。本発明の1つの実施例において、電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用して陸上車両が第1姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、各車輪4_1、4_2の目標スリップ率を低下させ、前記液圧制御命令により液圧ブレーキ装置1を駆動し、各車輪4_1、4_2の実際スリップ率Dが対応する目標スリップ率に近づくように、好ましくは実際スリップ率Dが対応する目標スリップ率以下になるように制御する。前記実際スリップ率D及び目標スリップ率は、いずれも縦方向のスリップ率である。例えば、車輪4_1の実際スリップ率D及び目標スリップ率が元々それぞれ10%及び11%である場合、電子制御ユニット2は、車輪4_1の目標スリップ率を7%に低下させ、車輪4_1の実際スリップ率Dを6%に調整する。
【0030】
図2は、本発明の1つの実施例の単一車軸の2つの車輪で曲がる状態を示す模式図である。
図1及び
図2を参照しながら説明する。車輪4_1を第1車輪、車輪4_2を第2車輪とする。本発明の1つの実施例において、陸上車両が車線を走行しており、電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用して陸上車両が第3設定値以上且つ第4設定値未満である第2姿勢物理量で車線の内側に向かって曲がっており、第1車輪が車線の外側に近く且つ第2車輪が車線の内側に近いと判断した場合に、圧力低下命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して第1車輪の輪速W及び第2車輪の目標スリップ率を上昇させ、圧力維持命令又は圧力上昇命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して第2車輪の実際スリップ率Dが対応する目標スリップ率に近づくように、好ましくは第2車輪の実際スリップ率Dが対応する目標スリップ率以下になるように制御する。第3設定値及び第4設定値は、それぞれ10°及び50°であるが、それらに限定されず、必要に応じて決定できる。例えば、車輪4_2の実際スリップ率D及び目標スリップ率が元々それぞれ10%及び11%である場合、電子制御ユニット2は、車輪4_2の目標スリップ率を13%に上昇させ、車輪4_2の実際スリップ率Dを12%に調整する。言い換えると、第2車輪の輪速Wを低くする。第1車輪及び第2車輪の輪速差は、陸上車両が車線の内側に向かって曲がるのを助け、陸上車両が目的の軌道から外れることを防ぐことができる。
【0031】
電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用して陸上車両が第4設定値以上である第3姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、優先度が高い液圧制御命令により優先度が低い液圧制御命令を置換し、前記液圧制御命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して複数の車輪4_1、4_2の輪速Wを制御することで、ブレーキの安定性を高めることができる。
【0032】
本発明の1つの実施例において、動的センシング装置5は、複数の輪速センサー52、回転角センサー53、及び姿勢センサー54を有する。輪速センサー52、回転角センサー53、及び姿勢センサー54は、いずれも電子制御ユニット2に接続される。姿勢センサー54は、ジャイロスコープ、慣性計測ユニット(IMU)、傾斜角推定器、傾斜角速度推定器、偏揺角推定器、偏揺角速度推定器、加速度計、又はそれらの組み合わせを有するが、それらに限定されない。複数の輪速センサー52は、それぞれ複数の車輪4_1、4_2に設けられ、複数の車輪4_1、4_2の輪速Wを検出する。回転角センサー53は、陸上車両の操舵機構に設けられ、操舵機構の回転角Uを検出する。電子制御ユニット2は、複数の車輪4_1、4_2の輪速Wを受信してそれに基づいて陸上車両の車速を推定し、さらに車速及び複数の車輪4_1、4_2の輪速Wに基づいて車輪の減速度及び実際スリップ率Dの少なくとも1つを検出する。推定した車速は、例えば車輪4_1、4_2のリアルタイムの平均輪速又は基準車速である。基準車速は、事前設定された減速度及び車輪4_1、4_2の初期平均輪速から得られる。姿勢センサー54は、陸上車両の実際姿勢の物理量Tを検出し、実際姿勢の物理量Tが第1姿勢物理量、第2姿勢物理量、又は第3姿勢物理量であるかを判断する。電子制御ユニット2は、回転角U及び実際姿勢の物理量Tを受信してそれに基づいて陸上車両が直進しているか又は第1姿勢物理量、第2姿勢物理量又は第3姿勢物理量で曲がっているかを判断する。
【0033】
本発明の1つの実施例において、液圧ブレーキ装置1は、複数のブレーキディスク11、複数のブレーキキャリパー12、及び液圧制御ユニット(Hydraulic Control Unit、HCU)13を有する。複数のブレーキディスク11は、それぞれ複数の車輪4_1、4_2に設けられる。複数のブレーキキャリパー12は、それぞれの位置が複数のブレーキディスク11の位置に対応する。液圧制御ユニット13は、電子制御ユニット2及び複数のブレーキキャリパー12に接続される。電子制御ユニット2は、陸上車両が直進しているか又は第1姿勢物理量、第2姿勢物理量、又は第3姿勢物理量で曲がっていると判断した場合に、前記液圧制御命令又は異なる液圧制御命令により液圧制御ユニット13を駆動して複数のブレーキキャリパー12を押圧し、さらに複数のブレーキキャリパー12がそれぞれ複数のブレーキディスク11に摩擦するように制御することで、複数の車輪4_1、4_2の輪速W、実際スリップ率D、及び車速を制御する。
【0034】
図3は、本発明の1つの実施例の液圧制御ユニットが圧力上昇命令を実行する装置ブロック図である。
図3を参照しながら説明する。液圧制御ユニット13は、スーパーチャージャー131、モーター132、第1逆止弁1331、第2逆止弁1332、第3逆止弁1333、第4逆止弁1334、第5逆止弁1335、第6逆止弁1336、第7逆止弁1337、第8逆止弁1338、第1電磁弁134、第2電磁弁135、第3電磁弁136、及び第4電磁弁137を有する。ブレーキキャリパー12、スーパーチャージャー131、モーター132、第1逆止弁1331、第2逆止弁1332、第3逆止弁1333、第4逆止弁1334、第5逆止弁1335、第6逆止弁1336、第7逆止弁1337、第8逆止弁1338、第1電磁弁134、第2電磁弁135、第3電磁弁136、及び第4電磁弁137は、互いにオイルパイプを介して接続される。スーパーチャージャー131は、ブレーキオイル138を貯蔵するオイルタンクを有する。
図3において、実線はブレーキオイル138が通過するオイル通路を表し、点線はブレーキオイル138が通過しないオイル通路を表する。スーパーチャージャー131は、第3逆止弁1333、第4逆止弁1334、第7逆止弁1337、第8逆止弁1338、第2電磁弁135、及び第3電磁弁136に接続される。第1逆止弁1331は、第2逆止弁1332、モーター132、及び第1電磁弁134に接続される。第2逆止弁1332は、モーター132及び第3逆止弁1333に接続される。第3逆止弁1333は、第4逆止弁1334、第7逆止弁1337、第8逆止弁1338、第2電磁弁135、及び第3電磁弁136に接続される。第4逆止弁1334は、第5逆止弁1335、第7逆止弁1337、第8逆止弁1338、第2電磁弁135、及び第3電磁弁136に接続される。第5逆止弁1335は、モーター132及び第6逆止弁1336に接続される。第6逆止弁1336は、モーター132及び第4電磁弁137に接続される。第4電磁弁137は、ブレーキキャリパー12、第8逆止弁1338、第3電磁弁136、及び第6逆止弁1336に接続される。第8逆止弁1338は、第7逆止弁1337、第2電磁弁135、及び第3電磁弁136に接続される。第7逆止弁1337は、第2電磁弁135、第3電磁弁136、ブレーキキャリパー12、及び第1電磁弁134に接続される。電子制御ユニット2は、モーター132、第1電磁弁134、第2電磁弁135、第3電磁弁136、及び第4電磁弁137に接続される。
【0035】
液圧制御ユニット13が圧力上昇命令を実行する場合、電子制御ユニット2は、第2電磁弁135及び第3電磁弁136を介して対応するオイル通路を開き、モーター132を停止させ、第1電磁弁134及び第4電磁弁137を介して対応するオイル通路を閉じる。スーパーチャージャー131でブレーキオイル138を押圧し、ブレーキオイル138を第2電磁弁135及び第3電磁弁136を通過させる。さらに、複数のブレーキキャリパー12への押圧の圧力を上げて、複数のブレーキキャリパー12がそれぞれ複数のブレーキディスク11に摩擦するように制御することで、複数の車輪4_1、4_2の輪速及び車速を制御する。
【0036】
図4は、本発明の1つの実施例の液圧制御ユニットが圧力維持命令を実行する装置ブロック図である。
図4を参照しながら説明する。液圧制御ユニット13が圧力維持命令を実行する場合、電子制御ユニット2は、モーター132を停止させ、第2電磁弁135、第3電磁弁136、第1電磁弁134、及び第4電磁弁137を介して対応するオイル通路を閉じる。ブレーキオイル138は、第1電磁弁134と第2電磁弁135との間に、及び第3電磁弁136と第4電磁弁137との間に制限される。そのため、複数のブレーキキャリパー12への押圧の圧力を維持でき、さらに複数のブレーキキャリパー12がそれぞれ複数のブレーキディスク11に摩擦するように制御することで、ブレーキ圧力を維持しながら前記ブレーキ圧力に応じて複数の車輪4_1、4_2の輪速及び車速を変更する。
【0037】
図5は、本発明の1つの実施例の液圧制御ユニットが圧力低下命令を実行する装置ブロック図である。
図5を参照しながら説明する。液圧制御ユニット13が圧力低下命令を実行する場合、電子制御ユニット2は、モーター132を動作させ、第1電磁弁134及び第4電磁弁137を介して対応するオイル通路を開き、第2電磁弁135及び第3電磁弁136を介して対応するオイル通路を閉じる。モーター132でオイルパイプ内のブレーキオイル138を吸引してスーパーチャージャー131のオイルタンクに輸送することで、スーパーチャージャー131を解放する。そのため、ブレーキオイル138によって複数のブレーキキャリパー12への押圧の圧力を低下させ、さらに複数のブレーキキャリパー12がそれぞれ複数のブレーキディスク11に摩擦するように制御することで、ブレーキ圧力を低下させ、複数の車輪4_1、4_2の加速度を上昇させる。そのため、ブレーキオイル138は、第1電磁弁134、第4電磁弁137、第1逆止弁1331、第2逆止弁1332、第3逆止弁1333、第4逆止弁1334、第5逆止弁1335、第6逆止弁1336、第7逆止弁1337、及び第8逆止弁1338を通過する。
【0038】
電子制御ユニット2は、異なる液圧制御命令を生成して車輪4_1、4_2の輪速Wを変更する。圧力上昇命令に対応して車輪4_1の輪速Wを変更する場合、電子制御ユニット2は、第3電磁弁136を介して対応するオイル通路を開き、モーター132を停止させ、第4電磁弁137を介して対応するオイル通路を閉じる。圧力維持命令に対応して車輪4_1の輪速Wを変更する場合、電子制御ユニット2は、モーター132を停止させ、第3電磁弁136及び第4電磁弁137を介して対応するオイル通路を閉じる。圧力低下命令に対応して車輪4_1の輪速Wを変更する場合、電子制御ユニット2は、モーター132を動作させ、第4電磁弁137を介して対応するオイル通路を開き、第3電磁弁136を介して対応するオイル通路を閉じる。圧力上昇命令に対応して車輪4_2の輪速Wを変更する場合、電子制御ユニット2は、第2電磁弁135を開き、モーター132及び第1電磁弁134を停止させる。圧力維持命令に対応して車輪4_2の輪速Wを変更する場合、電子制御ユニット2は、モーター132を停止させ、第2電磁弁135及び第1電磁弁134を介して対応するオイル通路を閉じる。圧力低下命令に対応して車輪4_2の輪速Wを変更する場合、電子制御ユニット2は、モーター132を動作させ、第1電磁弁134を介して対応するオイル通路を開き、第2電磁弁135を介して対応するオイル通路を閉じる。
【0039】
図6は、本発明の1つの実施例の定常ブレーキ方法のフローチャートである。
図1及び
図6を参照しながら本発明の定常ブレーキ方法を説明する。まず、工程S10に示すように、電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用して各車輪4_1、4_2の輪速Wを取得する。工程S11において、電子制御ユニット2は、各車輪4_1、4_2の実際スリップ率D及び車輪の減速度の少なくとも1つを計算する。工程S12に示すように、電子制御ユニット2は、ブレーキ信号Bを受信したかどうかを判断し、YESの場合、工程S14に進み、NOの場合、工程S16に進む。工程S16において、プロセスを完了する。工程S14において、電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用して車速を推定した後、工程S18に進む。工程S18に示すように、電子制御ユニット2は、車速が設定速度、例えば1km/hより早いかどうかを判断し、NOの場合、工程S20に進み、YESの場合、工程S24に進む。工程S20において、アンチロック機構を実行しなかった前提でブレーキ操作を行う。工程S24において、電子制御ユニット2は、アンチロック機構を実行したかどうかを判断し、NOの場合、工程S20に進み、YESの場合、工程S26に進む。例えば、各車輪4_1、4_2の減速度が第1設定値を超えるか又は各車輪4_1、4_2の実際スリップ率Dが第2設定値を超える場合に、電子制御ユニット2は、アンチロック機構を実行したと判断する。各車輪4_1、4_2の減速度が第1設定値以下又は各車輪4_1、4_2の実際スリップ率Dが第2設定値以下である場合に、電子制御ユニット2は、アンチロック機構を実行しなかったと判断する。工程S26において、電子制御ユニット2は、動的センシング装置5を利用して陸上車両の実際姿勢の物理量T及び操舵機構の回転角Uを取得する。最後、工程S28に示すように、電子制御ユニット2は、実際姿勢の物理量T及び操舵機構の回転角Uに基づいて陸上車両が直進しているのか又は第1姿勢物理量、第2姿勢物理量、又は第3姿勢物理量で曲がっているのかを判断し、陸上車両の進行状態に対応して液圧制御命令を調整し、さらに調整した液圧制御命令により液圧ブレーキ装置1を駆動して各車輪4_1、4_2の輪速Wを制御する。
【0040】
上記実施例の定常ブレーキシステム及びその方法によれば、陸上車両のアンチロック機構を利用してブレーキにおいて単一車軸の複数の車輪のブレーキ液圧を同じにするように制御することで、ブレーキの安定性を高めることができる。また、陸上車両が曲がる時に車輪の実際スリップ率及び目標スリップ率を制御することで、曲がりの安定性を高めることができる。
【0041】
上記内容は、あくまで本発明の実施例に過ぎない。本発明は、それらに限定されない。本発明の請求の範囲に記載の形状、構造、特徴及び精神に基づいてなされた変更及び改良は、いずれも本発明に含む。
【符号の説明】
【0042】
1 液圧ブレーキ装置
11 ブレーキディスク
12 ブレーキキャリパー
13 液圧制御ユニット
131 スーパーチャージャー
132 モーター
1331 第1逆止弁
1332 第2逆止弁
1333 第3逆止弁
1334 第4逆止弁
1335 第5逆止弁
1336 第6逆止弁
1337 第7逆止弁
1338 第8逆止弁
134 第1電磁弁
135 第2電磁弁
136 第3電磁弁
137 第4電磁弁
138 ブレーキオイル
2 電子制御ユニット
3 単一車軸
4_1、4_2 車輪
5 動的センシング装置
52 輪速センサー
53 回転角センサー
54 姿勢センサー
6 ブレーキスイッチ
B ブレーキ信号
W 輪速
U 回転角
T 実際姿勢の物理量
S10、S11、S12、S14、S16、S18、S20、S24、S26、S28 工程