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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 37/12 20060101AFI20231214BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20231214BHJP
   B05D 7/04 20060101ALI20231214BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231214BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20231214BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231214BHJP
   B05D 3/06 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B32B37/12
B32B17/10
B05D7/04
B05D7/24 301P
B05D3/00 D
B05D7/00 A
B05D7/00 E
B05D3/06 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021508211
(86)(22)【出願日】2020-02-10
(86)【国際出願番号】 JP2020005148
(87)【国際公開番号】W WO2020195251
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019057851
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100186185
【弁理士】
【氏名又は名称】高階 勝也
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 淳一
(72)【発明者】
【氏名】村重 毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 啓介
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敏広
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0230361(US,A1)
【文献】特開2011-145534(JP,A)
【文献】特表2018-531785(JP,A)
【文献】国際公開第2014/207867(WO,A1)
【文献】特開2012-071281(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B05D 7/04
B05D 7/24
B05D 3/00
B05D 7/00
B05D 3/06
C03C 17/34
Japio-GPG/FX
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスフィルムと樹脂フィルムとを、接着剤を介して積層させて前駆積層体を得る積層工程と、
該前駆積層体に活性エネルギー線を照射して、接着剤を硬化させる硬化工程とを含み、
該硬化工程において、該前駆積層体の面内で不均一に活性エネルギー線を照射することを含み、
該硬化工程において、該前駆積層体の幅方向における積算光量が略均一となるように、活性エネルギー線を照射することを含む、
積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記樹脂フィルムが、偏光板である、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記樹脂フィルムの幅が、前記ガラスフィルムよりも広く、
該樹脂フィルムの幅と該ガラスフィルムの幅との差が、10mm~100mmである、請求項1または2に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示素子や有機ELを用いた表示・照明素子、さらに太陽電池は、搬送性、収納性、デザイン性の観点から軽量、薄型化が進んでおり、またロール・ツー・ロールプロセスによる連続生産に向けた開発も進んでいる。これらの素子等に用いられるガラスに可撓性を持たせる方法として、極薄の薄ガラス(以下「ガラスフィルム」ともいう。)の使用が提案されている。ガラスフィルムは可撓性を有しており、ロール状に巻き取ることができるため、ロール・ツー・ロールプロセスでの加工が可能である。これまで、ロール・ツー・ロールプロセスを用いて、ガラスフィルムに偏光板等の樹脂フィルムを積層する方法などについての開示がある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第8525405号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ガラスフィルムと樹脂フィルムとの積層は、接着剤層を介して行われ得、生産効率等を考慮すれば、活性エネルギー線(例えば、紫外線)により硬化し得る接着剤が好ましく用いられ得る。本発明の発明者らは、このようなガラスフィルムと樹脂フィルムとの積層時、接着剤硬化の際、樹脂フィルムの一部がガラスフィルムと十分に密着せずに剥離して、外観不良が多発するという課題を見いだした。このような課題は、例えば、樹脂フィルム同士を接着剤層を介して積層する際には発生せず、ガラスフィルムを用いた場合に特有の課題であり、ガラスフィルムと樹脂フィルムとの線膨張係数の差が大きいことにより生じるものと考えられる。
【0005】
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、ガラスフィルムと樹脂フィルムとを接着剤層を介して積層することを含む積層フィルムの製造方法であって、ガラスフィルムと樹脂フィルムとの剥離を防止して、外観に優れる積層フィルムが得られ得る積層フィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の積層フィルムの製造方法は、ガラスフィルムと樹脂フィルムとを、接着剤を介して積層させて前駆積層体を得る積層工程と、該前駆積層体に活性エネルギー線を照射して、接着剤を硬化させる硬化工程とを含み、該硬化工程において、該前駆積層体の面内で不均一に活性エネルギー線を照射することを含む。
1つの実施形態においては、上記硬化工程において、上記前駆積層体の幅方向における積算光量が不均一となるように、活性エネルギー線を照射することを含む。
1つの実施形態においては、上記硬化工程において、上記前駆積層体の幅方向中央部分における積算光量が、該前駆積層体の幅方向端部における積算光量よりも多くなるようにして、活性エネルギー線を照射することを含む。
1つの実施形態においては、上記硬化工程において、上記前駆積層体の幅方向中央部に活性エネルギー線を照射した後に、上記前駆積層体の幅方向端部および幅方向中央部に活性エネルギー線を照射することを含む。
1つの実施形態においては、上記硬化工程において、上記前駆積層体の幅方向端部の最高温度が、60℃以下である。
1つの実施形態においては、上記硬化工程において、前駆積層体の幅方向における積算光量が略均一となるように、活性エネルギー線を照射することを含む。
1つの実施形態においては、上記樹脂フィルムが、偏光板である。
1つの実施形態においては、上記樹脂フィルムの幅が、上記ガラスフィルムよりも広く、該樹脂フィルムの幅と該ガラスフィルムの幅との差が、10mm~100mmである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ガラスフィルムと樹脂フィルムとを接着剤層を介して積層することを含む積層フィルムの製造方法であって、ガラスフィルムと樹脂フィルムとの剥離を防止して、外観に優れる積層フィルムが得られ得る積層フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の1つの実施形態による積層フィルムの製造方法を説明する概略図である。
図2】(a)~(d)は、本発明の1つの実施形態における硬化工程の例を示す概略平面図である。
図3】(a)および(b)は、本発明の別の実施形態における硬化工程の例を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
A.積層フィルムの製造方法
図1は、本発明の1つの実施形態による積層フィルムの製造方法を説明する概略図である。本発明の積層フィルムの製造方法は、ガラスフィルム10と樹脂フィルム20とを接着剤30を介して積層させて前駆積層体110を得る積層工程と、該前駆積層体110に活性エネルギー線を照射して、接着剤を硬化させる硬化工程とを含む。硬化工程を経て、ガラスフィルム10と樹脂フィルム20とが接着剤層を介して積層して構成された積層フィルムを得ることができる。硬化工程においては、前駆積層体の面内で不均一に活性エネルギー線を照射する。「不均一に活性エネルギー線を照射する」とは、活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させる領域(照射領域)内全域で同量の活性エネルギー線を前駆積層体に照射するのではなく、照射領域内の所定箇所において、前駆積層体に照射する活性エネルギー線を他の箇所よりも少なくする、あるいは、ゼロにすることを意味する。例えば、照射炉200内に複数ある照射機の一部について、照射量を少なくする、あるいは、オフにすることにより、不均一に活性エネルギー線を照射することができる。
【0010】
代表的には、ガラスフィルムおよび樹脂フィルムは、長尺状であり、それぞれのフィルムを搬送しながらロールトゥロールで積層工程および硬化工程が行われる。本明細書において、「長尺状」とは、幅に対して長さが十分に長い細長形状を意味し、例えば、幅に対して長さが10倍以上、好ましくは20倍以上の細長形状を含む。なお、本明細書において、「長さ方向」とは、フィルムの搬送方向を意味し、「幅方向」とは搬送方向に直交する方向を意味する。
【0011】
本発明においては、不均一に活性エネルギー線を照射して、接着剤を硬化させることにより、樹脂フィルムへの過剰な加熱、樹脂フィルムの急激な温度変化を回避して、ガラスフィルムと樹脂フィルムとの剥離を防止することができる。特に、前駆積層体の幅方向中央部分よりも、幅方向端部への活性エネルギー線の照射量を少なくすることにより、樹脂フィルムの寸法変化に起因した幅方向端部における樹脂フィルムの部分的な剥離を防止する効果が顕著となり、外観不良の発生が抑制され、歩留まりよく積層フィルムを得ることができる。詳細は後述する。
【0012】
本発明の積層フィルムの製造方法は、その他の任意の適切な工程をさらに含んでいてもよい。
【0013】
A-1.積層工程
積層工程においては、ガラスフィルムおよび/または樹脂フィルムの一方の面に、接着剤を塗布し、当該接着剤を介してガラスフィルムと樹脂フィルムとを積層する。
【0014】
(ガラスフィルム)
上記ガラスフィルムは、任意の適切なものが採用され得る。上記ガラスフィルムは、組成による分類によれば、例えば、ソーダ石灰ガラス、ホウ酸ガラス、アルミノ珪酸ガラス、石英ガラス等が挙げられる。また、アルカリ成分による分類によれば、無アルカリガラス、低アルカリガラスが挙げられる。上記ガラスのアルカリ金属成分(例えば、NaO、KO、LiO)の含有量は、好ましくは15重量%以下であり、さらに好ましくは10重量%以下である。
【0015】
上記ガラスフィルムの厚さは、好ましくは10μm~150μmであり、より好ましくは20μm~140μmであり、さらに好ましくは30μm~130μmであり、特に好ましくは40μm~120μmである。
【0016】
上記ガラスフィルムの幅は、好ましくは100mm~5000mmであり、より好ましくは200mm~3000mmであり、さらに好ましくは300mm~2000mmである。
【0017】
上記ガラスフィルムの波長550nmにおける光透過率は、好ましくは85%以上である。上記ガラスフィルムの波長550nmにおける屈折率は、好ましくは1.4~1.65である。
【0018】
上記ガラスフィルムの密度は、好ましくは2.3g/cm~3.0g/cmであり、さらに好ましくは2.3g/cm~2.7g/cmである。
【0019】
上記ガラスフィルムの成形方法は、任意の適切な方法が採用され得る。代表的には、上記ガラスフィルムは、シリカやアルミナ等の主原料と、芒硝や酸化アンチモン等の消泡剤と、カーボン等の還元剤とを含む混合物を、1400℃~1600℃の温度で溶融し、薄板状に成形した後、冷却して作製される。上記ガラスフィルムの成形方法としては、例えば、スロットダウンドロー法、フュージョン法、フロート法等が挙げられる。これらの方法によって板状に成形されたガラスフィルムは、薄板化したり、平滑性を高めたりするために、必要に応じて、フッ酸等の溶剤により化学研磨されてもよい。
【0020】
(樹脂フィルム)
上記樹脂フィルムは、積層フィルムの用途に応じて、任意の適切なフィルムとすることができる。上記樹脂フィルムは、例えば、偏光板、光学フィルム、導電フィルム、調光フィルム等であり得る。樹脂フィルムは単層であってもよく、複層であってもよい。
【0021】
上記樹脂フィルムの幅は、好ましくは110mm~5000mmであり、より好ましくは210mm~3000mmであり、さらに好ましくは310mm~2000mmである。
【0022】
1つの実施形態においては、樹脂フィルムの幅は上記ガラスフィルムの幅よりも、広い。樹脂フィルムの幅と上記ガラスフィルムの幅との差は、好ましくは10mm~100mmであり、より好ましくは20mm~70mmである。樹脂フィルムの幅を、ガラスフィルムの幅よりも広くすることにより、脆弱なガラスフィルムの端面が保護され得る。樹脂フィルムの幅を広くして、樹脂フィルムの端部がガラスフィルムからはみ出る場合、通常、樹脂フィルムの端部が進展(特に、長さ方向の進展)し易くなり、樹脂フィルムがガラスフィルムから剥離しやすくなるが、本発明の製造方法によれば、このような剥離を防止して、外観に優れる積層フィルムを得ることができる。
【0023】
上記樹脂フィルムの線膨張係数は、好ましくは1ppm/℃~150ppm/℃であり、より好ましくは5ppm/℃~100ppm/℃である。線膨張係数は、熱機械分析装置(TMA)により測定することができる。本発明においては、ガラスフィルムよりも線膨張係数が格段に大きい樹脂フィルム、すなわち、加熱進展によりガラスフィルムとの寸法差が大きくなる傾向にある樹脂フィルムとガラスフィルムとを積層しても、樹脂フィルムの剥離を防止することができる。
【0024】
以下、樹脂フィルムの代表例として、偏光板を説明する。
【0025】
上記偏光板は、偏光子を有する。偏光子の厚みは特に制限されず、目的に応じて適切な厚みが採用され得る。当該厚みは、代表的には、1μm~80μm程度である。1つの実施形態においては、薄型の偏光子が用いられ、当該偏光子の厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは15μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは6μm以下である。
【0026】
上記偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは40.0%以上、より好ましくは41.0%以上、さらに好ましくは42.0%以上、特に好ましくは43.0%以上である。偏光子の偏光度は、好ましくは99.8%以上であり、より好ましくは99.9%以上であり、さらに好ましくは99.95%以上である。
【0027】
好ましくは、上記偏光子は、ヨウ素系偏光子である。より詳細には、上記偏光子は、ヨウ素を含むポリビニルアルコール系樹脂(以下、「PVA系樹脂」と称する)フィルムから構成され得る。
【0028】
上記PVA系樹脂フィルムを形成するPVA系樹脂としては、任意の適切な樹脂が採用され得る。例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体が挙げられる。ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる。エチレン-ビニルアルコール共重合体は、エチレン-酢酸ビニル共重合体をケン化することにより得られる。PVA系樹脂のケン化度は、通常85モル%~100モル%であり、好ましくは95.0モル%~99.95モル%であり、さらに好ましくは99.0モル%~99.93モル%である。ケン化度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。このようなケン化度のPVA系樹脂を用いることによって、耐久性に優れた偏光子が得られ得る。ケン化度が高すぎる場合には、ゲル化してしまうおそれがある。
【0029】
PVA系樹脂の平均重合度は、目的に応じて適切に選択され得る。平均重合度は、通常1000~10000であり、好ましくは1200~5000であり、さらに好ましくは1500~4500である。なお、平均重合度は、JIS K 6726-1994に準じて求めることができる。
【0030】
上記偏光子の製造方法としては、例えば、PVA系樹脂フィルム単体を延伸、染色する方法(I)、樹脂基材とポリビニルアルコール系樹脂層とを有する積層体(i)を延伸、染色する方法(II)等が挙げられる。方法(I)は、当業界で周知慣用の方法であるため、詳細な説明は省略する。上記製造方法(II)は、好ましくは、樹脂基材と該樹脂基材の片側に形成されたポリビニルアルコール系樹脂層とを有する積層体(i)を延伸、染色して、該樹脂基材上に偏光子を作製する工程を含む。積層体(i)は、樹脂基材上にポリビニルアルコール系樹脂を含む塗布液を塗布・乾燥して形成され得る。また、積層体(i)は、ポリビニルアルコール系樹脂膜を樹脂基材上に転写して形成されてもよい。上記製造方法(II)の詳細は、例えば、特開2012-73580号公報に記載されており、この公報は、本明細書に参考として援用される。
【0031】
1つの実施形態においては、偏光板は、偏光子の少なくとも片側に配置された保護フィルムを備える。上記保護フィルムとしては、任意の適切な樹脂フィルムが採用され得る。保護フィルムの形成材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂等のシクロオレフィン系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられる。なかでも好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。なお、「(メタ)アクリル系樹脂」とは、アクリル系樹脂および/またはメタクリル系樹脂をいう。
【0032】
1つの実施形態においては、上記(メタ)アクリル系樹脂として、グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が用いられる。グルタルイミド構造を有する(メタ)アクリル系樹脂(以下、グルタルイミド樹脂とも称する)は、例えば、特開2006-309033号公報、特開2006-317560号公報、特開2006-328329号公報、特開2006-328334号公報、特開2006-337491号公報、特開2006-337492号公報、特開2006-337493号公報、特開2006-337569号公報、特開2007-009182号公報、特開2009-161744号公報、特開2010-284840号公報に記載されている。これらの記載は、本明細書に参考として援用される。
【0033】
上記保護フィルムと上記偏光子とは、任意の適切な接着層を介して積層される。偏光子作製時に用いた樹脂基材は、保護フィルムと偏光子とを積層する前、あるいは、積層した後に、剥離され得る。
【0034】
上記保護フィルムの厚みは、好ましくは4μm~250μmであり、より好ましくは5μm~150μmであり、さらに好ましくは10μm~100μmであり、特に好ましくは10μm~50μmである。
【0035】
上記保護フィルムの弾性率は、好ましくは1GPa~10GPaであり、より好ましくは2GPa~7GPaであり、さらに好ましくは2GPa~5GPaある。このような範囲であれば、耐突刺性に優れる樹脂フィルムを得ることができる。
【0036】
(接着剤)
上記接着剤としては、任意の適切な活性エネルギー線(例えば、紫外線)硬化性接着剤が用いられ得る。接着剤としては、例えば、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤、アクリル系接着剤、シリコーン系接着剤、ウレタン系接着剤、これらの混合物等が挙げられる。なかでも好ましくはエポキシ系接着剤である。エポキシ系接着剤は、硬化収縮し難い点で、本発明に用いる接着剤として好適である。一方、エポキシ系接着剤は、硬化に時間を要し、長時間にわたり活性エネルギー線の照射に曝される傾向にある。長時間にわたる活性エネルギー線の照射は、樹脂フィルムの進展の要因、すなわち、樹脂フィルムの剥離の要因となり得るが、本発明によれば、硬化に時間を要するエポキシ系接着剤を用いても、樹脂フィルムのガラスフィルムからの剥離を防止して、外観に優れる積層フィルムを得ることができる。接着剤は、溶液状態であってもよく、シート状態であってもよい。
【0037】
接着剤を塗布する方法としては、例えば、エアドクターコーティング、ブレードコーティング、ナイフコーティング、リバースコーティング、トランスファロールコーティング、グラビアロールコーティング、キスコーティング、キャストコーティング、スプレーコーティング、スロットオリフィスコーティング、カレンダーコーティング、電着コーティング、ディップコーティング、ダイコーティング等のコーティング法;フレキソ印刷等の凸版印刷法、ダイレクトグラビア印刷法、オフセットグラビア印刷法等の凹版印刷法、オフセット印刷法等の平版印刷法、スクリーン印刷法等の孔版印刷法等の印刷法等が挙げられる。
【0038】
接着剤は、硬化後の厚さが0.1μm~15μmとなるように塗布することが好ましく、硬化後の厚さが0.5μm~10μmとなるように塗布することがより好ましい。
【0039】
上記ガラスフィルムと樹脂フィルムとを接着剤を介して積層する方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。当該積層方法としては、樹脂フィルム側にグラビアロールコーティングを用いて接着剤を塗工し、その後ガラスフィルムと積層させる方法が挙げられる。
【0040】
A-2.硬化工程
上記のとおり、硬化工程においては、前駆積層体に活性エネルギー線を照射して、接着剤を硬化させる。活性エネルギー線の照射は、例えば、所定長さを有する照射炉内で、当該照射炉内に複数設けられた活性エネルギー線の照射機により行われ得る。
【0041】
図2(a)~(d)は、本発明の1つの実施形態における硬化工程の例を示す概略平面図である。図2においては、照射領域200内(例えば、照射炉内)における照射部分210(例えば、照射機を稼働させる部分)を着色して示している。また、図2(b)および図2(c)においては、活性エネルギー線の照射量の多少を着色の濃淡で示しており、着色の濃い領域は活性エネルギー線の照射量が多い領域を意味し、着色の薄い領域は当該照射量の少ない領域を意味している。図2に示す実施形態においては、前駆積層体110の幅方向における積算光量が不均一となるように、活性エネルギー線が照射されている。好ましくは、前駆積層体の幅方向中央部分における積算光量が、幅方向端部における積算光量よりも多くなるようにして活性エネルギー線が照射される。このようにすれば、樹脂フィルムが剥離しやすい幅方向端部において、当該剥離の発生を顕著に抑制することができる。
【0042】
幅方向の積算光量を不均一にする活性エネルギー線の照射方法のひとつの例として、図2(a)に示すように、照射領域の一部において、前駆積層体110の幅方向中央部分にのみ活性エネルギー線を照射し、残りの部分において前駆積層体110の幅方向全域(すなわち、幅方向の中央部分および幅方向端部)に活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。本明細書において、前駆積層体の幅方向中央部分とは、前駆積層体の幅方向における中央を含む部分であって、例えば、前駆積層体幅に対して20%~90%(好ましくは50%~80%)の幅を有する部分である。幅方向端部とは、上記中央部分以外の部分である。前駆積層体進行方向に対して右側にある端部の幅と左側にある端部の幅は、同じであってもよく、異なっていてもよい。好ましくは、両幅方向端部の幅の比(右側端部/左側端部)は、好ましくは1/4~4であり、より好ましくは1/2~2であり、さらに好ましくは1/1.5~1.5であり、特に好ましくは1/1.2~1.2である。
【0043】
幅方向の積算光量を不均一にする活性エネルギー線の照射方法の別の例として、図2(b)に示すように、照射領域の一部において、前駆積層体110の幅方向中央から幅方向端辺にかけて、活性エネルギー線の照射に強弱をつけ、残りの部分において前駆積層体110の幅方向全域(すなわち、幅方向の中央部分および幅方向端部)に活性エネルギー線を照射する方法が挙げられる。また、さらに別の例として、図2(c)に示すように、照射領域の全域において、前駆積層体110の幅方向中央から幅方向端辺にかけて、活性エネルギー線の照射に強弱をつける方法が挙げられる。前駆積層体110の幅方向中央から幅方向端辺にかけて、活性エネルギー線の照射に強弱をつける場合、活性エネルギー線の照射の強弱は、段階的に設定してもよく、無段階で設定してもよい。
【0044】
幅方向の積算光量を不均一にする活性エネルギー線の照射方法のさらに別の例として、図2(d)に示すように、照射部分210を略三角形状に設定する方法が挙げられる。なお、照射方法としては、図2(a)~(d)に示す実施形態に限らず、積算光量が不均一となるように(好ましくは、前駆積層体の幅方向中央部分における積算光量が、幅方向端部における積算光量よりも多くなるように)活性エネルギー線が照射されていれば、任意の適切な照射方法が採用され得る。
【0045】
幅方向の積算光量を不均一にして活性エネルギー線を照射する場合、幅方向中央部に対する積算光量は、好ましくは100mJ/cm~3000mJ/cmであり、より好ましくは200mJ/cm~2500mJ/cmであり、さらに好ましくは300mJ/cm~2000mJ/cmである。幅方向端部に対する積算光量は、好ましくは25mJ/cm~2700mJ/cmであり、より好ましくは50mJ/cm~2300mJ/cmであり、さらに好ましくは75mJ/cm~1800mJ/cmである。また、幅方向中央に対する積算光量は、幅方向端辺に対する積算光量に対して、1.1倍~4倍であることが好ましく、1.2倍~3倍であることが好ましい。このような範囲であれば、樹脂フィルムが剥離しやすい幅方向端部において、当該剥離の発生を顕著に抑制することができる。
【0046】
また、幅方向の積算光量を不均一にして活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射する場合、上記前駆積層体の幅方向中央部に活性エネルギー線を照射した後に、幅方向端部および幅方向中央部に活性エネルギー線を照射することが好ましい。幅方向中央部分を先に硬化させておくことにより、樹脂フィルムの剥離を効果的に抑制することができる。また、仮に、幅方向端部において樹脂フィルムの剥離が生じたとしても、その範囲を狭くとどめることができる。
【0047】
1つの実施形態においては、前駆積層体の表面温度を基準に、活性エネルギー線の照射量が調整される。硬化工程において、前駆積層体の幅方向中央部分の表面温度は、好ましくは25℃~80℃であり、より好ましくは30℃~70℃である。硬化工程において、前駆積層体の幅方向端部の表面温度は、好ましくは60℃以下であり、より好ましくは20℃~50℃であり、さらに好ましくは25℃~40℃である。また、硬化工程において、幅方向中央部分の表面温度は、幅方向端部の表面温度の1.1倍~3.5倍であることが好ましく、1.2倍~3倍であることがより好ましい。なお、本明細書において、前駆積層体の表面温度とは、活性エネルギー線が照射される側の表面温度である。
【0048】
図3(a)および図3(b)は、本発明の別の実施形態における硬化工程の例を示す概略平面図である。図3においては、照射領域200内(例えば、照射炉内)における照射部分210(例えば、照射機を稼働させる部分)を着色して示している。図3に示す実施形態においては、前駆積層体の幅方向における積算光量が略均一となるように、活性エネルギー線が照射されている。積算光量が略均一となるように活性エネルギー線を照射する場合、前駆積層体の幅方向中央部分に活性エネルギー線を照射した後、幅方向端部に活性エネルギー線を照射することが好ましい。幅方向中央部分を先に硬化させておくことにより、樹脂フィルムの剥離を効果的に抑制することができる。また、仮に、幅方向端部において樹脂フィルムの剥離が生じたとしても、その範囲を狭くとどめることができる。なお、前駆積層体の左側と右側とに分けて、活性エネルギー線を照射してもよく、すなわち、図3(b)に示すように、前駆積層体の左半分または右半分において、前駆積層体の幅中央部分に活性エネルギー線を照射した後、幅方向端部に活性エネルギー線を照射し、次いで、残りの半分において、前駆積層体の幅中央部分に活性エネルギー線を照射した後、幅方向端部に活性エネルギー線を照射してもよい。なお、照射方法としては、図3(a)および(b)に示す実施形態に限らず、積算光量が略均一となるように(好ましくは、前駆積層体の幅方向中央部分に活性エネルギー線を照射した後、幅方向端部に活性エネルギー線を照射するように)活性エネルギー線が照射されていれば、任意の適切な照射方法が採用され得る。
【0049】
積算光量が略均一となるように、活性エネルギー線(例えば、紫外線)を照射する場合、前駆積層体に対する積算光量は、好ましくは100mJ/cm~3000mJ/cmであり、より好ましくは200mJ/cm~2500mJ/cmであり、さらに好ましくは300mJ/cm~2000mJ/cmである。積算光量が略均一であるとは、積算光量の面内におけるバラツキが、平均値±20%であることを意味する。
【0050】
活性エネルギー線を照射して接着剤を硬化させる領域(照射領域)の長さは、好ましくは0.5m~20mであり、より好ましくは1m~10mである。また、硬化工程における搬送速度(ライン速度)は、好ましくは2m/分~50m/分であり、より好ましくは3m/分~30m/分であり、さらに好ましくは5m/分~20m/分である。このような範囲であれば、活性エネルギー線の照射量の調整が容易となる。
【実施例
【0051】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例になんら限定されるものではない。
【0052】
[製造例1]
(接着剤の調製)
エポキシ系樹脂(ダイセル化学工業社製、商品名「セロキサイド2021P」、)、エポキシ系樹脂(ダイセル化学工業社製、商品名「EHPE3150」)、オキセタン系樹脂(東亜合成社製、商品名「アロンオキセタン OXT-221」)、エポキシ基末端カップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)、及び重合開始剤(サンアプロ株式会社製CPI101A サンアプロ株式会社製)を、60:10:20:4:2の割合(重量基準)で混合して、紫外線硬化性の接着剤を準備した。
【0053】
[実施例1]
(UV照射機の準備)
幅500mm×長さ1000mmの範囲でUV照射可能なように、UV照射機(ウシオ電機社製、商品名「UniJet E110Z HD U365-453」)を60個(幅方向6個×長手方向10個)配置した。上記UV照射機は、被照射体(前駆積層体)との距離が50mmとなるように配置した。
(積層フィルムの製造)
500mmの偏光板フィルム(日東電工社製、商品名「NPF TEG1425DU」)にグラビアロールコーティングにて厚みが1μmとなる様に上記接着剤を塗工した後、幅450mmのガラスフィルム(日本電気硝子社製、商品名「OA-10G」、厚み100μm)と貼り合わせて、前駆積層体を形成した。
次いで、上記UV照射機を配置した炉内で、ガラスフィルム面側からUV光をあてるようにして、前駆積層体を搬送して(ライン速度:5m/分)、接着剤を硬化させて積層フィルムを得た。このとき、図2(a)に示す照射方法のように、前駆積層体の幅方向端部に対応する箇所に位置するUV照射機の一部をオフにして、前駆積層体の幅方向中央部(幅:350mm)へのUV照射量が、それ以外(幅方向端部)へのUV照射量より多くなるようにした。具体的には、前駆積層体の幅方向中央部(幅:350mm)へのUV照射量(積算光量)は、1151mJ/cmであり、それ以外の部分(幅方向端部)へのUV照射は積算光量が487mJ/cmであった。また、UV照射時(UV照射開始から300mm進んだ地点)の、積層フィルムの表面温度を、サーモポート社製の商品名「サーフェスサーモ TP-500HT」にて測定したところ、積層フィルム幅方向中央部の温度は69℃であり、幅方向端部近傍の温度は27℃であった。
(評価)
上記のようにして、連続して100mの積層フィルムを得た。得られた積層フィルムの剥離(ガラスフィルムと偏光板との界面剥離)の数を目視にて確認した。結果、積層フィルムにおける剥離は見られなかった。
【0054】
[実施例2]
図2(b)に示す照射方法のように、前駆積層体の幅方向端部に対応する箇所に位置するUV照射機の一部の出力を、幅方向中央部に対応する箇所に位置するUV照射機の出力の半分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。前駆積層体の幅方向中央部(幅:350mm)へのUV照射量(積算光量)は、1113mJ/cmであり、それ以外の部分(幅方向端部)へのUV照射は積算光量が731mJ/cmであった。また、UV照射時(UV照射開始から300mm進んだ地点)の、積層フィルムの表面温度を、サーモポート社製の商品名「サーフェスサーモ TP-500HT」にて測定したところ、積層フィルム幅方向中央部の温度は72℃であり、幅方向端部近傍の温度は43℃であった。
得られた積層フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果、積層フィルムの幅方向端部において、2箇所、剥離が確認された。
【0055】
[実施例3]
図2(c)に示す照射方法のように、前駆積層体の幅方向端部に対応する箇所に位置するUV照射機の出力を、幅方向中央部に対応する箇所に位置するUV照射機の出力の半分にしたこと以外は、実施例1と同様にして、積層フィルムを得た。前駆積層体の幅方向中央部(幅:350mm)へのUV照射量(積算光量)は、1051mJ/cmであり、それ以外の部分(幅方向端部)へのUV照射は積算光量が512mJ/cmであった。また、UV照射時(UV照射開始から300mm進んだ地点)の、積層フィルムの表面温度を、サーモポート社製の商品名「サーフェスサーモ TP-500HT」にて測定したところ、積層フィルム幅方向中央部の温度は72℃であり、幅方向端部近傍の温度は43℃であった。
得られた積層フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果、積層フィルムの幅方向端部において、1箇所、剥離が確認された。
【0056】
[実施例4]
図2(d)に示す照射方法のように、前駆積層体の幅方向端部に対応する箇所に位置するUV照射機の一部をオフにし、幅方向における照射範囲を前駆体の走行につれて漸増させるようにしたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。前駆積層体の幅方向中央部(幅:350mm)へのUV照射量(積算光量)は、1087mJ/cmであり、それ以外の部分(幅方向端部)へのUV照射は積算光量が331mJ/cmであった。また、UV照射時(UV照射開始から300mm進んだ地点)の、積層フィルムの表面温度を、サーモポート社製の商品名「サーフェスサーモ TP-500HT」にて測定したところ、積層フィルム幅方向中央部の温度は73℃であり、幅方向端部近傍の温度は24℃であった。
得られた積層フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果、積層フィルムにおける剥離は見られなかった。
【0057】
[比較例1]
UV照射機の出力をすべて同じとし、前駆積層体の幅方向中央部(幅:350mm)へのUV照射量(積算光量)を1089mJ/cmとし、それ以外の部分(幅方向端部)へのUV照射を積算光量が1051mJ/cmとしたこと以外は、実施例1と同様にして積層フィルムを得た。UV照射時(UV照射開始から300mm進んだ地点)の、積層フィルムの表面温度を、サーモポート社製の商品名「サーフェスサーモ TP-500HT」にて測定したところ、積層フィルム幅方向中央部の温度は73℃であり、幅方向端部近傍の温度は74℃であった。
得られた積層フィルムを実施例1と同様の評価に供した。結果、幅方向端部における剥離が5箇所、幅方向全域にわたって剥離した箇所が13個確認された。
【0058】
【表1】
【符号の説明】
【0059】
10 ガラスフィルム
20 樹脂フィルム
30 接着剤
110 前駆積層体
図1
図2
図3