(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】液浸冷却電子システムおよび装置
(51)【国際特許分類】
H05K 7/20 20060101AFI20231214BHJP
H01L 23/44 20060101ALI20231214BHJP
G06F 1/20 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
H05K7/20 N
H01L23/44
G06F1/20 A
G06F1/20 C
(21)【出願番号】P 2021517362
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 US2019044678
(87)【国際公開番号】W WO2020068272
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-25
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515081763
【氏名又は名称】リキッドクール ソリューションズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】アーチャー、ショーン、 マイケル
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー、スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ロー、デビッド
(72)【発明者】
【氏名】タフティ、ライル、 リック
【審査官】五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-283677(JP,A)
【文献】米国特許第9596787(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/20
H01L 23/44
G06F 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液浸冷却される電子装置であって、
内部空間を画定する非加圧の装置ハウジングであって、少なくとも部分的に開いた上部を有するトレイと、前記トレイに着脱可能に取り付けられ、前記少なくとも部分的に開いた上部の上に配置されたカバーとを備える非加圧の装置ハウジングと、
前記装置ハウジングの前記内部空間内に配置された少なくとも1つの発熱電子部品と、
前記内部空間の誘電冷却液であって、前記少なくとも1つの発熱電子部品を部分的にまたは完全に浸し、前記少なくとも1つの発熱電子部品と直接接触する誘電冷却液と、
前記内部空間と流体連通するポンプ入口と、ポンプ出口とを有するポンプと、
前記ポンプ出口と流体連通する熱交換器入口を有し、前記内部空間と流体連通する熱交換器出口を有する熱交換器とを備えることを特徴とする、液浸冷却される電子装置。
【請求項2】
前記内部空間内の液分配マニホールドであって、前記液分配マニホールドは、前記熱交換器出口と流体連通するマニホールド入口と、複数のマニホールド出口とを有する液分配マニホールドと、
前記マニホールド出口のうちの1つに接続された自身の入口端と、前記少なくとも1つの発熱電子部品に隣接して、誘電冷却液の回帰流を前記少なくとも1つの発熱電子部品に向ける自身の出口端とを有するチューブとをさらに備える、請求項1に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項3】
前記ポンプは、前記内部空間内に配置されており、前記ポンプ入口は、前記誘電冷却液に浸される、請求項1に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項4】
前記熱交換器は、前記内部空間内に配置されている、請求項1に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項5】
前記熱交換器は、前記非加圧の装置ハウジングの外部に配置されている、請求項1に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項6】
前記ポンプおよび前記熱交換器は、前記非加圧の装置ハウジングの第1の端部に配置されており、
前記液分配マニホールドは、前記第1の端部の反対側にある、前記非加圧の装置ハウジングの第2の端部に配置されている、請求項2に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項7】
前記内部空間内に配置された蓋なしの上部トレイをさらに備え、
前記少なくとも1つの発熱電子部品は、前記蓋なしの上部トレイ内に配置され、
前記チューブの前記出口端は、前記蓋なしの上部トレイに接続されて、前記誘電冷却液の回帰流を前記蓋なしの上部トレイにより画定された空間の中に向け、
前記蓋なしの上部トレイの側壁は、誘電冷却液が前記蓋なしの上部トレイにより画定された前記空間を出る誘電冷却液出口堰を備える、請求項2に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項8】
前記内部空間と周囲環境との空気連通をもたらす、前記カバーにある通気孔または圧力緩和および/または均一化機構をさらに備える、請求項1に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項9】
前記内部空間内の複数の前記発熱電子部品を備え、
前記発熱電子部品は、複数のデータ記憶装置、複数の電源、複数のプロセッサ、または複数のスイッチを含む、請求項1に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項10】
液浸冷却される電子システムであって、ラックにある垂直アレイに配置された、複数の、請求項1に記載の液浸冷却される電子装置を備える、液浸冷却される電子システム。
【請求項11】
液浸冷却される電子装置であって、
内部空間を画定する装置ハウジングであって、前記装置ハウジングは、少なくとも部分的に開いた上部を有するトレイと、前記トレイに着脱可能に取り付けられ、前記少なくとも部分的に開いた上部の上に配置されたカバーとを備える装置ハウジングと、
前記内部空間と周囲環境との空気連通をもたらす、前記カバーにある通気孔または圧力緩和および/または均一化機構と、
前記装置ハウジングの前記内部空間内に配置された少なくとも1つの発熱電子部品と、
前記内部空間の誘電冷却液であって、前記誘電冷却液は、前記少なくとも1つの発熱電子部品を部分的にまたは完全に浸し、前記少なくとも1つの発熱電子部品と直接接触する誘電冷却液と、
前記内部空間と流体連通するポンプ入口と、ポンプ出口とを有するポンプと、
前記ポンプ出口と流体連通する熱交換器入口と、前記内部空間と流体連通する熱交換器出口とを有する熱交換器とを備える、液浸冷却される電子装置。
【請求項12】
前記内部空間内の液分配マニホールドであって、前記液分配マニホールドは、前記熱交換器出口と流体連通するマニホールド入口と、複数のマニホールド出口とを有する液分配マニホールドと、
前記マニホールド出口のうちの1つに接続された自身の入口端と、前記少なくとも1つの発熱電子部品に隣接して、誘電冷却液の回帰流を前記少なくとも1つの発熱電子部品に向ける自身の出口端とを有するチューブとをさらに備える、請求項11に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項13】
前記ポンプは、前記内部空間内に配置されており、前記ポンプ入口は、前記誘電冷却液に浸される、請求項11に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項14】
前記熱交換器は、前記内部空間内に配置されている、請求項11に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項15】
前記熱交換器は、前記装置ハウジングの外部に配置されている、請求項11に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項16】
前記ポンプおよび前記熱交換器は、前記装置ハウジングの第1の端部に配置されており、
前記液分配マニホールドは、前記第1の端部の反対側にある、前記装置ハウジングの第2の端部に配置されている、請求項12に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項17】
前記内部空間内に配置された蓋なしの上部トレイをさらに備え、
前記少なくとも1つの発熱電子部品は、前記蓋なしの上部トレイ内に配置され、
前記チューブの前記出口端は、前記蓋なしの上部トレイに接続されて、前記誘電冷却液の回帰流を前記蓋なしの上部トレイにより画定された空間の中に向け、
前記蓋なしの上部トレイの側壁は、誘電冷却液が前記蓋なしの上部トレイにより画定された前記空間を出る誘電冷却液出口堰を備える、請求項
12に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項18】
前記内部空間内の複数の前記発熱電子部品を備え、
前記発熱電子部品は、複数のデータ記憶装置、複数の電源、複数のプロセッサ、または複数のスイッチを含む、請求項11に記載の液浸冷却される電子装置。
【請求項19】
液浸冷却される電子システムであって、ラックにある垂直アレイに配置された、複数の、請求項11に記載の液浸冷却される電子装置を備える、液浸冷却される電子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子アレイシステムおよび装置の液浸冷却に関する。
【背景技術】
【0002】
液浸冷却電子システムおよび装置が知られている。液浸冷却される電子装置のアレイの一例は、ラックシステムに配置された液浸サーバ(LSS)のアレイである。ラックシステム内のLSSのアレイの一例は、米国特許第7,905,106,7,911,793号、および、第8,089,764号に開示されている。液浸冷却される電子装置のアレイの別の例は、米国特許第9,451,726号に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第7,905,106号公報
【文献】米国特許第7,911,793号公報
【文献】米国特許第8,089,764号公報
【文献】米国特許第9,451,726号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
例えば誘電冷却液といった冷却液を用いて個々の電子装置または電子装置のアレイを浸冷する液浸冷却装置およびシステムを記載する。一実施形態では、電子装置は、内部空間内の圧力が、非加圧(すなわち「ゼロ」の圧力)の装置ハウジング外部の圧力と等しいか、これよりもわずかにだけ大きい前記内部空間を画定する前記非加圧の装置ハウジングを備える。
【0005】
一実施形態では、液浸冷却される電子装置が、内部空間内の圧力が非加圧の装置ハウジング外部の圧力と等しい前記内部空間を画定する前記非加圧の装置ハウジングを備えることができる。1つまたは複数の発熱電子部品、例えば複数の発熱電子部品が、前記装置ハウジングの前記内部空間内に配置されており、誘電冷却液が、前記内部空間にあり、前記誘電冷却液は、前記発熱電子部品のうちの1つまたは複数を部分的にまたは完全に浸し、前記発熱電子部品のうちの1つまたは複数と直接接触する。ポンプが、前記内部空間と流体連通するポンプ入口と、ポンプ出口とを有する。例えば液体-液体熱交換器といった熱交換器が、前記ポンプ出口と流体連通する熱交換器入口と、熱交換器出口とを有する。液分配マニホールドが、前記内部空間内にあり、前記液分配マニホールドは、前記熱交換器出口と流体連通するマニホールド入口と、複数のマニホールド出口とを有する。チューブが、前記液体マニホールド出口のうちの1つに接続された自身の入口端を有し、自身の出口端が、前記発熱電子部品のうちの1つに隣接して、誘電冷却液の回帰流を直接前記1つの発熱電子部品に向ける。液浸冷却される電子システムが、複数の前記液浸冷却される電子装置を備えることができる。
【0006】
本明細書に記載された液浸冷却装置およびシステムの一適用例は、ラックシステムに配置されたLSSのアレイと共に使用するためのものである。しかしながら、本明細書に記載された概念は、電子装置のアレイが液浸冷却される他の用途にも使用可能であり、その例としては、ブレードサーバ、ディスクアレイ/ストレージシステム、ソリッドステートメモリデバイス、ストレージエリアネットワーク、ネットワーク接続型ストレージ、ストレージ通信システム、ルータ、遠隔通信インフラストラクチャ/スイッチ、有線、光学および無線通信デバイス、セルプロセッサデバイス、プリンタ、電源等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0007】
本明細書に記載された液浸冷却装置およびシステムは、液浸冷却の利点を享受し得るあらゆる分野に使用可能である。一例では、液浸冷却装置およびシステムは、ブロックチェーンコンピューティング(暗号通貨)用途において、例えばASICまたはGPUコンピュータマイニング構成において使用可能である。また、液浸冷却装置およびシステムは、ディープラーニング用途において、例えば、最大帯域幅をカバーするマルチGPU構成および高性能GPUのダイレクトメモリアクセス(DMA)において使用可能である。また、液浸冷却装置およびシステムは、マルチコプロセッサ構成、例えば、GPUコプロセッサのDMA能力をカバーするマルチGPU構成を有する、人工知能およびハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)クラスタにおいて使用可能である。本明細書に記載された液浸冷却装置およびシステムの多くの他の用途および使用が可能であり、予想される。
【発明の効果】
【0008】
本明細書に記載された液浸冷却装置およびシステムは、完全に密閉された電子装置ハウジングを必要としないので、コストを低減する上で有用であり、修理および改良のための電子機器へのアクセスを容易にする。また、液浸冷却は、空冷と比べて優れた冷却効率を有し、これにより所要電力および関連する事業費を減少させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本明細書に記載された液浸冷却される電子装置の例の斜視図である。
【
図2】
図2は、カバーが外された、
図1の液浸冷却される電子装置の部分斜視図である。
【
図3】
図3は、ハウジングが外された、
図1の液浸冷却される電子装置の斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1~
図3の装置と類似するが熱交換器が代替の位置にある、本明細書に記載された液浸冷却される電子装置のさらに他の例の斜視図である。
【
図5】
図5は、
図1~
図3の装置と類似するが熱交換器が他の代替の位置にある、本明細書に記載された液浸冷却される電子装置のさらに他の例の斜視図である。
【
図6】
図6は、
図1~
図3の装置と類似するが冷却分配ユニットを備えた、本明細書に記載された液浸冷却される電子装置のさらに他の例の斜視図である。
【
図7】
図7は、ラックに配置された、本明細書に記載された液浸冷却される電子装置の垂直アレイの背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記載された電子装置内の電子機器を冷却するために使用される冷却液は、誘電液であってもよいが、これに限定されない。冷却液は、好ましくは、単相の誘電冷却液である。単相の誘電冷却液は、吸熱過程時に冷却液の状態が液体から気体へ変化しないように、浸された発熱電子部品により発生した熱量を処理できる程度に十分に高い熱伝導性および熱容量を有することが好ましい。発熱電子部品の浸冷とは、発熱電子部品のうちの1つまたは複数が、誘電冷却液に部分的にまたは完全に浸され、誘電冷却液に直接密着するように、十分な冷却液が存在することを意味する。
【0011】
冷却液に浸される発熱電子部品は、発熱し、電子部品を冷却液に部分的にまたは完全に浸すことにより冷却したいと望まれ得る任意の電子部品であってもよい。例えば、電子部品としては、例えばCPUおよび/またはGPUといった1つまたは複数のプロセッサ、1つまたは複数の電源、1つまたは複数のスイッチ、1つまたは複数のデータ記憶ドライブ、1つまたは複数のメモリモジュール、および他の電子部品を挙げることができる。電子部品により形成された電子システムとしては、ブレードサーバ、ディスクアレイ/ストレージシステム、ソリッドステートメモリデバイス、ストレージエリアネットワーク、ネットワーク接続型ストレージ、ストレージ通信システム、ルータ、遠隔通信インフラストラクチャ/スイッチ、有線、光学および無線通信デバイス、セルプロセッサデバイス、プリンタ、電源等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0012】
図1~
図3に、液浸冷却される電子装置600の例を示す。装置600は、内部空間605を画定する底部液密トレイ604と、トレイ604に着脱可能に嵌って、トレイ604の内部空間605に収容された冷却液に汚染物質が落下することを防止するカバー606とにより形成された装置ハウジング602を備える。トレイ604は、内部空間605を画定する側壁および底壁と、少なくとも部分的に開いた上部とを有する。図示された例では、トレイ604の上部全体が開いているものとして示されている。しかしながら、他の実施形態では、トレイ604の上部の一部のみが開いていてもよい。カバー606は、トレイ604の上部の開いている一部の上に着脱可能に配置される。
【0013】
ハウジング602は、内部空間605内の圧力(または真空)が、装置ハウジング外部の圧力と等しいか、これよりもわずかにだけ大きくなる/小さくなるような、非加圧(すなわち「ゼロ」の圧力)のまたは最小限に加圧されたと称することができる。例えば、内部空間605内の圧力は、周囲圧力と等しくてもよい。他の実施形態では、内部空間内の圧力は、値が小さくかつ測定し難いであろう小さい圧力であってもよく、例えば約0.1psiまでであってもよい。このように、本明細書で使用される非加圧の装置ハウジングは、圧力がゼロである(すなわち、内部空間内の圧力は、周囲圧力と等しい)内部空間605を取り囲むとともに、例えば周囲圧力よりも大きい約0.1psiまでの圧力といった小さな圧力/真空を取り囲むことが意図される。これは、加圧されたまたは密閉されたハウジングと称することができる、液浸冷却される電子機器用のいくつかの装置ハウジングと対照をなす。加圧されたまたは密閉されたハウジングは、同じ流体ループを備える他の同様に液体浸漬冷却される電子装置に接続されるとともに、正の圧力をポンプの出口に発生させ、対応する負のまたはより低い圧力を入口からポンプに発生させることにより流体循環を生じさせる中心のまたは遠隔のポンプにより生成される圧力を受ける結果として、典型的には、周囲空気圧力よりも大きい正の測定可能な圧力レベルで動作し得る。
【0014】
内部空間605と周囲との間の圧力を最小限にすることは、任意の適した方法で実現することができる。例えば、一実施形態では、通気孔、逆止弁、または他の圧力緩和/均一化機構等の圧力緩和/均一化機構608は、
図1に示すようにカバー606に設けられて、内部空間と周囲との空気連通をもたらすことができる。他の実施形態では、圧力を最小限にすることは、カバー606がトレイ604に密接に嵌らず密閉しない結果として簡潔に実現することができる。ハウジング602が加圧されることは意図されないので、装置600を密閉しかつ加圧する必要はない。しかしながら、トレイ604は、そこから、内部空間605内に配置される冷却液が漏れることを防止するために、密閉されるまたは漏れを起こさないようにする必要がある。装置600内の圧力を最小限にすることは、許容される。なぜなら、誘電冷却液が、トレイ604および熱交換器(後述)内で再循環するからであり、装置600が、周囲環境の圧力と異なる圧力で動作する必要がないからである。
【0015】
図2および
図3に最良に示すように、様々な発熱電子部品610が、内部空間605内に配置されている。電子部品610は、装置600が形成する電子システムの種類に基づいて変わってもよい。使用することができる電子部品610の例としては、例えばCPUおよび/またはGPUといった1つまたは複数のプロセッサ、1つまたは複数の電源、1つまたは複数のスイッチ、1つまたは複数のデータ記憶ドライブ、1つまたは複数のメモリモジュール、および他の電子部品が挙げられるが、これらに限定されない。電子部品により形成された電子システムとしては、ブレードサーバ、ディスクアレイ/ストレージシステム、ソリッドステートメモリデバイス、ストレージエリアネットワーク、ネットワーク接続型ストレージ、ストレージ通信システム、ルータ、遠隔通信インフラストラクチャ/スイッチ、有線、光学および無線通信デバイス、セルプロセッサデバイス、プリンタ、電源等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0016】
誘電冷却液が、内部空間605に配置され、誘電冷却液は、発熱電子部品610のうちの少なくともいくつかを部分的にまたは完全に浸し、これらと直接接触する。トレイ604内の誘電液の水位は、浸冷したい電子部品を部分的にまたは完全に浸すのに十分である。
【0017】
冷却液分配回路が、装置600内の冷却液を分配するために設けられている。
図2および
図3に示す実施形態では、分配回路は、内部空間605に収容されたバルク冷却液と流体連通するポンプ入口と、ポンプ出口とを有し、内部空間605内にある1つまたは複数のポンプ612を備える。図示された例では、2つのポンプ612が示されており、一方のポンプ612は、一次ポンプとして使用され、他方のポンプ612は、一次ポンプの故障の場合の予備のポンプとして使用される。各ポンプ612の出口に流体接続され、どのポンプ出口を使用するか選択するために、ポンプ612の監視された動作に基づいて、適したポンプコントローラにより制御することができる制御弁614を設けることができる。ポンプ612は、冷却液に部分的にまたは完全に浸すことができ、あるいは、ポンプ612は、浸されなくてもよいが冷却液に入口を有する。
【0018】
熱交換器616が、内部空間605内に配置されており、制御弁614を介してポンプ出口と流体連通する入口と、出口とを有する。熱交換器616は、回帰する冷却液の温度の減少に適した任意の構成を有することができる。図示された例では、熱交換器616は、熱交換器616に二次冷却液を供給する外部冷却流体ループ618に接続された液体-液体熱交換器として構成されている。しかしながら、熱交換器616は、液体-空気熱交換器または回帰する冷却液の温度を減少させることができる任意の他の構成であってもよい。
【0019】
熱交換器616は、ハウジング602内の任意の適した位置に据え付けることができる。図示された例では、熱交換器616は、トレイ604の端壁620の内向面に据え付けられるものとして示されている。熱交換器616は、内部空間605内に配置された冷却液に部分的にまたは完全に浸されてもよいし、浸されなくてもよい。
【0020】
図2と合わせて
図3を参照すると、液分配マニホールド622が、内部空間605内に配置されており、供給ライン626を介して熱交換器616の出口と流体連通する入口624と、マニホールド622から通じる複数のマニホールド出口628とを有する。冷却液が内部空間605内のバルク冷却液に入る前に、液分配マニホールド622は、電子部品610のうちの対象とするものに冷却液を分配する。
【0021】
回帰する冷却液は、マニホールド622から、直接、CPU、GPU、電源、スイッチ等のような電子部品610のうちのいくつかに向けることができる。例えば、
図2および
図3に示すように、1つまたは複数の蓋なしの上部トレイ630が、内部空間605内に配置されており、電子部品610のうちのいくつかが、トレイ630に配置されている。供給チューブ632が、出口628から各トレイ630へ延びることにより、回帰する冷却液をトレイ630に向ける。トレイ630は、トレイ630内に位置した電子部品610の周囲に冷却液を保持する。誘電冷却液がトレイ630により画定された空間を出る1つまたは複数の液出口すなわち堰634が、各トレイ630の側壁に形成されている。使用時に、各トレイ630は、トレイ630で電子部品610を液浸冷却するのに十分な水位まで冷却液で充填されるように設計されている。その後、冷却液は、堰634から溢れ出し、重力により、内部空間605の他の部分のバルク冷却液に流入し、その後、そこで、ポンプ612により冷却のために熱交換器616に送ることができる。また、内部空間605内にあるがトレイ630のうちの1つの内部にはない電子部品のうちのいくつかは、内部空間605に収容されたバルク冷却液に、部分的にまたは完全に浸されてもよい。
【0022】
流体分配マニホールド622は、各々の出口628からトレイ630への流れを最適に管理するために、各々の出口628に冷却液の流れを配分する上で有用であるように構成することができる。例えば、出口628の大きさを変更することができ、供給チューブ632の大きさを変更することができ、調節可能な弁を出口628またはチューブ632等に設けることができる。流れの管理は、適切な量および/または適正な圧力の回帰する冷却液を向けるために有用である。
【0023】
堰634は、トレイ630の最大誘電冷却液水位に配置されており、ここで堰634は、トレイ630内の誘電冷却液の水位を定めるとともに、トレイ630内の発熱電子部品を冷却するために必要なトレイ630内の誘電冷却液の流れの容積流量を定める。本明細書および特許請求の範囲の全体で使用されるように、堰は、冷却液用の出口であり、ここで冷却液は、堰に接続されたポンプ圧力を使用せず、重力により出る。堰は、米国特許第7905106号に記載されている出口52b、112のような、出口を通じてポンプ圧力により冷却液が出るように使用中にポンプに接続されることが意図された出口とは異なるとともに、区別される。
【0024】
本実施形態では、ポンプ612および熱交換器616は、装置ハウジング602の第1の端部に配置されており、液分配マニホールド622は、第1の端部の反対側にある、装置ハウジング602の第2の端部に配置されている。しかしながら、他の配置も可能である。
【0025】
図4に、他の例である、装置600と類似する液浸冷却される電子装置640を示し、同様の要素は、同じ参照符号を用いて参照する。本実施形態では、冷却液が装置ハウジングを出て冷却されるように、熱交換器616は、装置ハウジングの内部空間605外部に配置されている。例えば、熱交換器616は、トレイ604の端壁620の外面に据え付けることができる。図示しないが、装置640は、
図1のカバー606のようなカバーを備える。
【0026】
図5に、他の例である、装置600と類似する液浸冷却される電子装置650を示し、同様の要素は、同じ参照符号を用いて参照する。本実施形態では、冷却液が装置ハウジングを出て冷却されるように、熱交換器616は、装置ハウジングの内部空間605外部に配置されている。本実施形態では、熱交換器616は、トレイ604の端壁620に据え付けないが、代わりに、熱交換器616が装置ハウジングに据え付けられないように、装置650から離れた外部の位置に据え付けられる。図示しないが、装置650は、
図1のカバー606のようなカバーを備える。
【0027】
図6に、他の例である、装置600と類似する液浸冷却される電子装置660を示し、同様の要素は、同じ参照符号を用いて参照する。本実施形態では、熱交換器およびポンプの両方が、装置ハウジングの内部空間605外部に配置されている。さらに、ポンプおよび熱交換器は、冷却分配ユニット662と称する共通のユニットに組み込まれている。冷却分配ユニット662は、トレイ604の端壁620に据え付けないものとして図示するが、代わりに、装置660から離れた外部の位置に据え付けられる。しかしながら、冷却分配ユニット662は、端壁620の外面に据え付けることができる。図示しないが、装置660は、
図1のカバー606のようなカバーを備える。
【0028】
図7を参照すると、
図1~
図3の複数の装置600は、例えばラック672にある垂直アレイ670に共に配置されているものとして図示する。あるいは、装置600は、個別におよびに互いに別々に使用することができる。一つの例示的な実施では、複数の電子装置600は、ラック672にある複数の垂直に離隔された列に配置することができる。
図7に、ラック672に据え付けられ、外部冷却流体ループ618の一部であり、二次冷却液を熱交換器616へ導くために使用される垂直マニホールド674を示す。ラック672にある同様の垂直アレイが、電子装置640、650、660について実現することができる。
【0029】
本明細書に記載されたポンプは、電子装置の所望の性能に応じて、ポンプコントローラにより、適応性があるように制御することができる。例えば、ポンプは、直列にまたは並列に動作するように制御することができる。さらに、ポンプは、第1のポンプの故障の場合、第2のポンプが、第1のポンプの予備としての役割を果たす冗長モードで動かすことができる。
【0030】
本明細書に記載された電子装置および垂直アレイの設計は、様々なシステム構成において非常に用途が広く、各電子装置がそれ自体の独立した流体冷却ループを有することから、修理のために容易にアクセス可能である。さらに、装置600が密閉されるとともに正味の正のゲージ圧で動作していたら存在するだろう撓み力を補償するために、装置ハウジング602は、内部空間605内にトレイ604の床とカバー606との間の強化構造を有するように設計される必要がないので、電子機器の多数の構成を内部に据え付けることができる開放容積になるように、装置ハウジング602全体を設計することが可能になる。また、さらに、電子装置および垂直アレイは、密閉された/加圧された、充填されたシステムまたは槽と比較して、浸漬冷却を実現するために必要とされる冷却液の量の点でより効率が良く、これは、重量およびコストの観点の両方からの利点である。記載された概念により、バルク流浸漬冷却(bulk flow immersion cooling)、高パワー密度の部品の定方向流浸漬冷却(directed flow immersion cooling)、2018年9月20日に提出された「液浸冷却電子システムおよび装置」という名称の出願番号第16/137015号に記載されている電子装置を保持する保管トレイの使用等の重力戻し浸漬冷却(gravity return immersion cooling)、および装置ハウジング内の流体プールの水位より上に突出する可能性があり、各々が同じ装置ハウジングにおいて同時に実現され得る電子基板の重力支援冷却(gravity assisted cooling)が可能になる。
【0031】
本願に開示した例は、あらゆる点において、例示的であると見なされ、決して限定的であると見なされるべきではない。本発明の範囲は、上述の明細書によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と同じ意味および範囲内のあらゆる変形は、本発明に含まれるものである。