(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】汚染用マスク及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
A62B 18/02 20060101AFI20231214BHJP
A61M 16/06 20060101ALI20231214BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20231214BHJP
A62B 7/10 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A62B18/02 A
A61M16/06 A
A41D13/11 Z
A62B7/10
(21)【出願番号】P 2021523164
(86)(22)【出願日】2019-11-08
(86)【国際出願番号】 EP2019080709
(87)【国際公開番号】W WO2020094850
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-09-28
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2018/114772
(32)【優先日】2018-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(32)【優先日】2019-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】コーン タオ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ウェイジョーン
(72)【発明者】
【氏名】スー ウィリアム
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-194092(JP,A)
【文献】特開2015-097779(JP,A)
【文献】特表2018-512518(JP,A)
【文献】特表2013-501585(JP,A)
【文献】特表2018-519128(JP,A)
【文献】特表2017-501781(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236275(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0110946(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62B 7/00-33/00
A61M 16/06
A41D 13/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気チャンバ、
前記空気チャンバと前記空気チャンバの外側の周囲環境との間の境界を形成するフィルタ、
前記空気チャンバの外側から前記空気チャンバ内に空気を吸い込む、及び/又は前記空気チャンバの内側から前記空気チャンバ外に空気を吸い出すためのファン、
前記ファンの回転速度を決定するための手段、
前記空気チャンバの外側の周囲温度を測定するための温度センサ、並びに
制御器
を有する汚染用マスクにおいて、前記制御器は、
前記決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、呼吸の深さに関連する第1の値及び呼吸数に関連する第2の値を得る、並びに
前記第1の値、前記第2の値及び前記周囲温度に依存して、ファンの速度を設定する
ように構成され、前記ファンの速度は、複数のゼロではないファンの速度の選択された1つに設定され、異なる環境温度条件下、及び前記汚染
用マスクのユーザの異なる活動レベルに対し、異なる空気流が提供される、汚染用マスク。
【請求項2】
前記第1の値は、サンプリングウィンドウ中のファンの回転速度の最大スイングに基づいている、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記第2の値は、前記ファンの回転速度の連続する最大値と最小値との間の時間に基づく周波数である、請求項1又は2に記載のマスク。
【請求項4】
前記空気チャンバの外側の周囲湿度レベルを測定するための湿度センサをさらに有し、前記制御器は、前記湿度レベルにさらに依存して、ファンの速度を設定するように構成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載のマスク。
【請求項5】
前記制御器は、前記周囲温度及び前記周囲湿度レベルから、快適性の尺度に関連する熱指数の値を得るように構成される、請求項4に記載のマスク。
【請求項6】
前記熱指数の値は、前記周囲温度、前記周囲湿度レベル、並びに前記周囲温度及び/又は前記周囲湿度レベルの1つ以上の累乗からなる多項式関数を有する、請求項5に記載のマスク。
【請求項7】
前記制御器は、
現在のファンの回転速度並びに前記第1及び第2の値から、前記ファンの速度を上げる、前記ファンの速度を下げる又は前記ファンの速度を同じに保つ命令を生成する
ように構成される、請求項4乃至6の何れか一項に記載のマスク。
【請求項8】
前記制御器は、
前記周囲温度及び前記周囲湿度レベルから、前記ファンの速度が上げられる又は下げられるべき量を決定する
ように構成される、請求項7に記載のマスク。
【請求項9】
前記制御器は、
前記ファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、前記マスクが着用されていないことを決定し、前記マスクが着用されていないことが決定される場合、前記ファンをオフにする
ように構成される、請求項1乃至8の何れか一項に記載のマスク。
【請求項10】
前記ファンは、電子整流ブラシレスモータにより駆動し、前記回転速度を決定するための手段は、前記モータの内部センサから構成される、又は
前記回転速度を決定するための手段は、前記ファンを駆動させるモータへの電気供給上のリップルを検出するための回路から構成される、
請求項1乃至9の何れか一項に記載のマスク。
【請求項11】
前記制御器は、
前記ファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、呼吸サイクルを決定する、並びに
前記呼吸サイクルの相に依存して出口弁を制御し、及び/又は吸入時間中、前記ファンをオフにする
ように構成される、請求項1乃至10の何れか一項に記載のマスク。
【請求項12】
汚染用マスクを制御する非治療方法であって、前記汚染用マスクは、患者に治療を施すためのマスクではなく、前記方法は、
空気チャンバと前記空気チャンバの外側の周囲環境との間の境界を形成するファンを用いて、前記マスクの前記空気チャンバ内にガスを吸い込む及び/又は前記空気チャンバからガスを吸い出すステップ、
前記ファンの回転速度を決定するステップ、
前記決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、呼吸の深さに関連する第1の値及び呼吸数に関連する第2の値を得るステップ、
前記空気チャンバの外側の周囲温度を測定するステップ、並びに
前記第1の値、前記第2の値及び前記周囲温度に依存して、ファンの速度を設定するステップ
を有し、前記ファンの速度は、複数のゼロではないファンの速度の1つに設定され、異なる環境温度条件下、及び前記汚染
用マスクのユーザの異なる活動レベルに対し、異なる空気流が提供される、汚染用マスクを制御する非治療方法。
【請求項13】
前記空気チャンバの外側の周囲湿度レベルを測定するステップを有し、前記ファンの速度を設定するステップは、前記湿度レベルにさらに依存している、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記周囲温度及び前記周囲湿度レベルから、快適性の尺度に関連する熱指数の値を得るステップ、を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
現在のファンの回転速度及び前記第1の値から、前記ファンの速度を上げる、前記ファンの速度を下げる又は前記ファンの速度を同じに保つ命令を生成するステップ、
前記周囲温度及び前記周囲湿度レベルから、前記ファンの速度が上げられる又は下げられるべき量を決定するステップ
を有する、請求項13又は14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファンにより補助される流れを用いて、マスクの着用者にろ過された空気を供給するための汚染用マスクに関に関する。
【背景技術】
【0002】
世界保健機関(WHO)は、毎年400万人が大気汚染が原因で死亡していると推定している。この問題の一部は、都市における外気の質である。最も悪いクラスは、推奨されるレベルの10倍以上の年間汚染レベルを有するデリーのようなインドの都市である。推奨される安全レベルの年平均の8.5倍である北京はよく知られている。しかしながら、ロンドン、パリ及びベルリンのようなヨーロッパの都市であっても、WHOが推奨するレベルよりも高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この問題は短時間では大きく改善されないので、この問題に対処する唯一の方法は、ろ過によって、よりきれいな空気を供給するマスクを着用することである。快適性及び有効性を向上させるために、1つ又は2つのファンがマスクに追加される。これらのファンは使用中にオンに切り替わり、通常は一定の電圧で使用される。効率と寿命の理由から、これらファンは通常、電気整流ブラシレスDCファンである。
【0004】
電動マスクを使用する着用者の利点は、従来の非電動マスクにおけるフィルタの抵抗に対する吸入により引き起こされるわずかな負担から肺が解放されることである。
【0005】
さらに、従来の非電動マスクにおいて、吸入は、マスク内にわずかな負圧も引き起こし、この負圧は汚染物質がマスク内に漏れ入ることにつながり、これらが有毒物質である場合、この漏れは危険であることを示す。電動マスクは、安定した気流を顔に送出し、例えば呼気弁の抵抗により決定されるわずかな陽圧を与え、如何なる漏れも内側ではなく必ず外側に向かうようにする。
【0006】
ファンの動作又は速度が調整される場合、幾つかの利点がある。これは、吸入及び呼気のシーケンス中のより適切な換気によって快適性を向上させるために使用されることができる、又は電気効率を向上させるために使用されることができる。後者は、バッテリ寿命の延長又は換気の強化につながる。これらの態様の両方は、現在のデザインにおいて改善を必要とする。
【0007】
ファンの速度を調整するために、マスク内の圧力が測定され、圧力変動及び圧力の両方がファンを制御するために使用される。
【0008】
例えば、マスク内の圧力は、圧力センサにより測定され、ファンの速度は、センサの測定値に依存して変化することができる。圧力センサはコストがかかるので、マスク内の圧力を監視する代替方法を提供することが望ましい。
【0009】
出願人は、まだ公開されていないが、圧力測定の代理(プロキシ)としてファンの回転速度を使用するという解決策を提案した。圧力又は圧力の変化は、ファンの回転速度に基づいて決定される。この圧力情報を用いて、ユーザの呼吸パターンがトラッキングされ、マスクが着用されているかどうかを決定することもできる。この手法は、WO2018/215225号に記載されている。
【0010】
出願人は、まだ公開されていないが、ファンの速度を制御する際に使用するための指標として、内側のマスク環境(温度及び相対湿度)が使用されるという解決策も提案した。しかしながら、マスクチャンバ内のセンサは、結露による誤差の影響を受けやすく、センサ応答を劣化させる可能性がある。同様に、温度及び湿度センサの応答は、一般に遅いため、必要な速度で変化をトラッキングすることができない場合もある。暑い気候条件において、息を吸うときに検出される温度と、息を吐くときに検出される温度との間の変化も小さい。
【0011】
公知の制御方法も、例えばユーザの運動レベルのようなユーザの活動を考慮することは容易ではない。
【0012】
従って、低コストで実施することができ、ユーザの活動レベルを考慮したファンの速度制御を提供することができるファンの速度制御方法及び装置の必要性がある。
【0013】
国際公開第2016/157159号は、ファン、出口弁、及びユーザの呼吸サイクルを示すパラメータを検出するセンサを備える呼吸マスクを開示している。任意選択で、例えば湿度、温度及び圧力のような他のパラメータが測定される。出口弁は、検出されたパラメータに従って制御される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、請求項により定義される。
【0015】
本発明の1つの態様による例によれば、
空気チャンバ、
前記空気チャンバと、前記空気チャンバの外側の周囲環境との間の境界を形成するフィルタ、
前記空気チャンバの外側から空気チャンバ内に空気を吸い込む及び/又は前記空気チャンバの内側から空気チャンバ外に空気を吸い出すためのファン、
前記ファンの回転速度を決定するための手段、
前記空気チャンバの外側の周囲温度を測定するための温度センサ、並びに
制御器
を有する汚染用マスクを提供し、前記制御器は、
前記決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、呼吸の深さに関連する第1の値及び呼吸数に関連する第2の値を得る、並びに
前記第1の値、前記第2の値及び周囲温度に依存して、ファンの速度を設定する
ように適合され、前記ファンの速度は、複数のゼロではないファンの速度の選択される1つに設定される。
【0016】
このマスクは、ファンの回転速度及び外部温度に基づいた、ファンの速度の自動調整を備える。外部温度を考慮することにより、ユーザの快適性の推定が行われる。ファンの速度調整は、異なる環境条件(温度)下、及びユーザの異なる活動レベルに対し、異なる空気流を提供することができる。例えば、夏の間、早く歩くと、ユーザはマスク内環境を管理するのを助けるために大量の空気流を必要とする一方、冬の間、着用者を冷たくすることを避けるために、比較的少量の空気流が必要とされる。周囲温度の測定、すなわちマスクチャンバの外側での使用は、水の結露の問題を回避する。
【0017】
これは、低コストの解決策、例えば、PCB基板上に容易に組み込まれ得る、必要とされる外部検出を提供する。
【0018】
第1及び第2の値は、ユーザ活動が考慮されることを可能にする。第1の値は、例えば呼吸の深さに関連し、これは、第1の値と呼吸の深さとの間に正の相関があることを意味する。より一般的には、第1の値は例えば、ファンの圧力変動の大きさに関係(すなわち、相関)する。圧力変動は、マスクが着用され、通常の使用時に、呼吸により引き起こされる。第2の値は、呼吸数と正の相関を有する。これは、第1の値により示されるような呼吸の深さに加え、ユーザの活動レベルのもう1つの指標として使用されてもよい。
【0019】
本発明は、汚染用マスクに関する。これは、ユーザが呼吸する周囲空気をろ過することを主目的とする装置を意味する。マスクは、如何なる形式の患者治療も行わない。特に、ファンの動作から生じる圧力レベル及び流れは、(空気チャンバ内の温度又は相対湿度に影響を及ぼすことにより)快適さの提供を支援する、及び/又はユーザによるかなりの追加の呼吸努力を必要とすることなく、フィルタを横断する流れを提供するのを支援することを単に意図する。ユーザがマスクを着用しない状態と比較して、マスクは、全体的な呼吸補助を提供しない。
【0020】
本システムにおいて、圧力測定を行う代わりに、ファンの速度監視も使用される。ファンの速度を測定するために、追加のセンサを必要としないように、ファン自体が使用されてよい。前記チャンバは、通常の使用時には閉じられるので、チャンバ内の圧力変動は、ファンの負荷条件に影響を及ぼし、故にファンの電気的特性を変更させる。同様に、ファンの電気的特性は、チャンバの性質、例えばチャンバの容積、及びチャンバが開いた又は閉じた容積であるかどうかを決定する。
【0021】
第1の値は例えば、サンプリングウィンドウ中のファンの回転速度の最大スイングに基づく。このスイングは、圧力変動の程度を表し、故に、それは呼吸の深さに関連する。第2の値は例えば、ファンの回転速度における、連続する最大値と最小値との間の時間に基づく周波数である。この時間期間は、呼吸期間の半分に対応し、従って、この値から直接得られる周波数は、呼吸数(すなわち、周波数)の2倍に対応する。
【0022】
サンプリングウィンドウは、少なくとも1つの全呼吸サイクルを取り込むのに十分であるように選択され、例えば10呼吸/分の最低呼吸数で、1つの全呼吸サイクルを取り込むためには6秒である。
【0023】
フィルタは、空気チャンバとこの空気チャンバの外側の周辺環境との間の境界を直接形成する。これは、流れ運搬通路の必要性を回避するコンパクトな構成を提供する。これは、ユーザがフィルタを通して息を吸うことが可能であることを意味する。フィルタは、複数の層を持ってもよい。例えば、外側の層(例えば、布層)がマスクの本体を形成し、内側の層はより微細な汚染物質を除去するためでもよい。内側の層は、清掃又は交換のために取り外し可能でもよいが、空気が構造物を通ることが可能である、及びこの構造物がろ過機能を果たすという点で、両方の層が一緒にフィルタを構成すると考えられてもよい。
【0024】
故に、フィルタは好ましくは、空気チャンバの外壁、及び任意選択で1つ以上の他のフィルタ層を備える。これは、マスクの本体がろ過機能を果たすので、特にコンパクトな構成を提供し、より大きなフィルタ領域を可能にする。従って、ユーザが息を吸うとき、周囲空気がフィルタを通じてユーザに直接供給される。
【0025】
排気用のファンの場合、圧力は、(周囲圧力と比較して)正又は負であり、例えば、ファンがオフである場合、吸気により引き起こされる負圧及び呼気により引き起こされる正圧が存在する。排気用のファンがオンである場合、ファンの速度及び呼吸特性に依存して、呼吸中に負圧又は正圧が可能である。呼吸をしていない間は負圧が生じる。
【0026】
ファンが空気チャンバ内の圧力(例えば、吸入中に空気チャンバに入る流れ)の増大を提供するためのものである場合、例えば、ユーザの吸入を補助するために、わずかに増大した圧力を提供することだけが必要とされる。
【0027】
如何なる場合も、使用中の空気チャンバ内の最大圧力は、例えば4cmH2O未満、例えば2cmH2O未満、例えば1cmH2O未満であり、空気チャンバの外側の圧力よりも高い。
【0028】
マスクは、空気チャンバの外側の周囲湿度レベルを測定するための湿度センサをさらに含んでもよく、制御器は、その湿度レベルにさらに依存してファンの速度を設定するように構成される。従って、外部の周囲温度及び湿度の両方が考慮される。これは、環境条件の決定に関する精度の増大を提供する。
【0029】
例えば、制御器は、周囲温度及び周囲湿度レベルから、
快適性の尺度に関連する熱指数の値を得る
ように構成される。
【0030】
この熱指数の値は、一般的な周囲の環境条件を代表するものであり、これらの特定の条件において予想されるユーザの快適性を考慮してファンの速度が設定されるように使用される。
【0031】
熱指数の値は、周囲温度、周囲湿度レベル並びに周囲温度及び/又は周囲湿度レベルの1つ以上の累乗からなる多項式関数を有する。例えば、それは、周囲温度、周囲温度の二乗、周囲湿度レベル及び周囲湿度レベルの二乗の関数を含むことができる。
【0032】
制御器は、
現在のファンの回転速度、並びに第1及び第2の値から、ファンの速度を上げる、ファンの速度を下げる又はファンの速度を同じに保つ命令を生成する
ように構成される。
【0033】
従って、呼吸の深さ及び呼吸数は、現在のファンの速度を考慮して、ファンの速度の変更が必要であるかどうかを制御するために使用される。
【0034】
制御器は、周囲温度及び周囲湿度レベルから、
ファンの速度を上げるべき又は下げるべき量を決定する
ように構成される。
【0035】
従って、前記環境条件は、ファンの速度調整が必要な量を決定する。
【0036】
制御器は、ファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、マスクが着用されていないことを決定し、マスクが着用されていないことが決定される場合、ファンをオフにするように構成される。
【0037】
マスクが着用されているかどうかを検出するために、ファンの回転信号が解析される。これは、(呼吸が検出されるときの)呼吸の深さを示す第1の値、及び呼吸が検出されるときの)呼吸数を示す第2の値の両方を考慮している。
【0038】
マスクが着用されているかどうかを決定することにより、マスクのデザインは、マスクが着用されてないとき、如何なる追加のセンサも必要とせずに、電力を節約することを可能にする。特に、マスクの圧力差が検出されない場合、これは、両側が大気圧であり、マスクが装着されていないことを示す。実際には、閉じられた又は一部が閉じられたチャンバもはや存在してないので、空気チャンバは、大気に開いている。マスクが装着されていないことが検出される場合、ファンがオフされる。
【0039】
ファンは電子整流ブラシレスモータにより駆動し、回転速度を決定するための手段は、モータの内部センサから構成される。その代わりに、前記回転速度を決定するための手段が、ファンを駆動させるモータへの電気供給上のリップルを検出するための回路から構成される。
【0040】
内部センサは、モータの回転を可能にするための上記モータに既に設けられている。モータは、内部センサの出力が供給される出力ポートを有してもよい。従って、回転速度を決定するのに適した信号を搬送するポートがある。その代わりに、モータのコイルを流れる電流を切り替えることにより生じるリップルが検出され、これは、入力電圧源の有限インピーダンスの結果として、供給電圧に誘起される変化を引き起こす。
【0041】
前記ファンが2線式のファンであり、リップルを検出する回路は、ハイパスフィルタを有する。適切なファンの速度の出力をまだ持っていないモータに必要とされる追加回路が、最小限に抑えることができる。
【0042】
制御器は、
ファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、呼吸サイクルを決定する、並びに
呼吸サイクルの相に依存して出口弁を制御し、及び/又は吸入時間中にファンをオフにする
ように構成される。
【0043】
従って、回転の監視は、吸入相を決定するための簡単な方法を提供し、この方法は、マスクの通気弁のタイミングを制御する、又はマスクが着用されているかどうか、及び故に使用中であるかどうかを決定するために使用される。
【0044】
制御器は、吸入時間中、ファンをオフにするように構成されてもよい。これは、電力を節約するために使用される。吸入中にファンを停止することは、そのように構成される場合、電力を節約するので、フィルタを介した呼吸が困難ではないユーザにとって望ましい。
【0045】
ファンは、空気チャンバの内部から外に空気を吸い出すためだけのものでもよい。このように、ファンは、呼気中であっても、同時に新鮮なろ過された空気を空気チャンバに供給することを促進することができ、これはユーザの快適さを向上させる。この場合、新鮮な空気が常に顔に供給されるように、空気チャンバ内の圧力は、外圧(大気圧)よりも低くてよい。
【0046】
出口弁は、受動的な圧力調整逆止弁又は能動的に駆動する電気的制御可能な弁を有する。これは、マスクをより快適にするために使用される。吸入中、弁を(能動的又は受動的に)閉じることにより、ろ過されていない空気が吸い込まれることが防止される。呼気中、弁は、吐き出された空気が放出されるように開かれる。
【0047】
本発明は、汚染用マスクを制御する非治療方法も提供し、汚染用マスクは、患者に治療を施すためのマスクではなく、前記方法は、
空気チャンバと前記空気チャンバの外側の周囲環境との間の境界を形成するファンを用いて、前記マスクの空気チャンバ内にガスを吸い込む及び/又は前記空気チャンバからガスを吸い出すステップ、
前記ファンの回転速度を決定するステップ、
前記決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、
呼吸の深さに関連する第1の値及び呼吸の速度に関連する第2の値を得るするステップ、
前記空気チャンバの外側の周囲温度を測定するステップ、並びに
前記第1の値、前記第2の値及び前記周囲温度に依存して、ファンの速度を設定するステップであり、前記ファンの速度は、複数のゼロではないファンの速度の選択される1つに設定される、ステップ
を有する。
【0048】
前記方法は、前記空気チャンバの外側の周囲湿度レベルを測定するステップをさらに含み、及び前記ファンの速度を設定するステップはさらに、湿度レベルに依存している。熱指数の値は、温度及び湿度の測定値から得られ、これは快適性の尺度に関連する。
【0049】
前記方法は、
前記現在のファンの回転速度及び第1の値から、ファンの速度を上げる、ファンの速度を下げる又はファンの速度を同じに保つ命令を生成するステップ、並びに
前記周囲温度及び周囲湿度レベルから、ファンの速度が上げられる又は下げられるべき量を決定するステップ
を有する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
本発明の例は、添付の図面を参照して詳細に説明される。
【
図1】
図1は、フェイスマスクの一部として実施される圧力監視システムを示す。
【
図2】
図2は、圧力監視システムの構成要素の一例を示す。
【
図3】
図3は、組み合わされた温度及び湿度センサの例を示す。
【
図4B】
図4Bは、ファンの回転速度がどのように経時的に変化するかを示す。
【
図5】
図5は、ブラシレスDCモータの固定子の1つを流れる電流を制御するための回路を示す。
【
図6】
図6は、熱指数の尺度を説明するために使用される図である。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本発明は、図面を参照して説明される。
【0052】
詳細な説明及び特定の例は、装置、システム及び方法の例示的な実施形態を示しているが、単に例示を目的としたものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではないことを理解されたい。本発明の装置、システム及び方法のこれら並びに他の特徴、態様及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲及び添付の図面からより良く理解される。図面は単に概略的なものであり、一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。同じ又は類似の部分を示すために、同じ参照番号が図面全体にわたり使用されることも理解されたい。
【0053】
本発明は、駆動ファンを有する汚染用マスクを提供し、このマスクにおいて、ファンの回転速度、並びに外部温度及び任意選択で湿度レベルも監視される。ファンの回転速度又はファンの回転速度の変化は、呼吸の深さに関連する第1の値、及び呼吸の速度に関連する第2の値を得るために使用される。これらは、周囲温度及び任意選択で周囲湿度レベルと組み合わせて使用され、ファンの速度を設定する。従って、ファンの速度は、ユーザの呼吸特性及び周囲環境条件を考慮して設定される。
【0054】
図1は、自動的なファンの速度制御を備えるフェイスマスクを示す。
【0055】
被験者の鼻及び口を覆うフェイスマスク12を着用している被験者10が示される。マスクの目的は、空気が被験者に吸い込まれる前に、その空気をろ過することである。この目的のために、マスク本体自体がエアフィルタ16として作用する。吸入により、空気は、マスクにより形成される空気チャンバ18に吸い込まれる。吸入中、例えば逆止弁のような出口弁22は、空気チャンバ18内の低圧により閉じられる。
【0056】
検出装置24は、少なくとも周囲温度、好ましくは、空気チャンバ18の外側の周囲温度及び湿度(例えば、相対湿度又は絶対湿度)の両方を測定するために設けられる。
【0057】
フィルタ16は、マスクの本体だけで形成されてもよいし、或いは複数の層があってもよい。例えば、マスク本体は、プレフィルタとして機能する多孔質織物材料から形成される外部カバーを有してもよい。この外部カバーの内側には、より微細なフィルタ層が外部カバーに可逆的に取り付けられている。次いで、より微細なフィルタ層は、清掃及び交換のために取り外されてよいのに対し、外部カバーは、例えば拭き取ることにより清掃されてもよい。外部カバーがろ過機能も果たす、例えば、大きな破片(例えば、泥)からより微細なフィルタを保護する一方、より微細なフィルタは、微細な粒子状物質のろ過を行う。3つ以上の層があってもよい。複数の層が一緒になってマスクの全体的なフィルタとして機能する。
【0058】
被験者が息を吐き出すとき、空気は、出口弁22を通り排出される。この弁は、容易な呼気を可能にするために開かれるが、吸入中は閉じられる。ファン20は、出口弁22を介した空気の排除を補助する。好ましくは、さらなる空気が顔に供給されるように、呼気よりも多くの空気が排除される。これは、相対湿度を下げる及び冷却を行うので、快適性が向上する。吸入中、弁を閉じることにより、ろ過されていない空気が吸い込まれることが防止される。従って、出口弁22のタイミングは、被験者の呼吸サイクルに依存する。出口弁は、フィルタ16の圧力差によって作動される単純な受動逆止弁でもよい。しかしながら、出口弁は代わりに、電子制御弁でもよい。
【0059】
マスクが着用され、ユーザが呼吸している場合、チャンバ内の圧力が変化する。特に、チャンバは、ユーザの顔により閉じられる。マスクを着用したときの閉じられたチャンバ内の圧力も、被験者の呼吸サイクルの関数として変化する。被験者が息を吐くとき、わずかに圧力が上昇し、被験者が息を吸うとき、わずかに圧力が低下する。
【0060】
ファンが一定の駆動レベル(すなわち電圧)で駆動する場合、ファンに異なる圧力降下が存在するので、異なる優勢圧力(prevailing pressure)は、それ自体がファンへの異なる負荷として現れる。このとき、この変化した負荷は、異なるファンの速度をもたらす。従って、ファンの回転速度は、ファンの圧力の測定の代理として使用されてもよい。
【0061】
ファンの一方の側における既知の圧力(例えば、大気圧)に対し、圧力の監視は、ファンの他方の側における圧力又は少なくとも圧力の変化の決定を可能にする。この他方の側は、例えば大気圧とは異なる圧力を持つ閉じられたチャンバである。
【0062】
ファンの回転速度の監視に基づいて検出される圧力の変動は、ユーザの呼吸に関する情報を取得するために使用されてよい。特に、第1の値は、呼吸の深さを表し、第2の値は、呼吸の速度を表す。本発明によれば、第1及び第2の値、並びに周囲温度及び周囲湿度レベルは、ファンの速度を設定するのに使用される。その上、ファンの両側において等しい圧力(又は第1及び第2の値に関連する他の条件)を検出することにより、チャンバは閉じられてなく、両側は大気圧に繋がっていると決定することも可能である。
【0063】
これは、しきい値を下回るファンの速度の変動となる。従って、この状況は、マスクが着用されていない、故に使用されていないと決定するのに使用される。この情報は、電力を節約するためにファンのスイッチを切るのに使用することができる。
【0064】
回転速度を決定するための手段が、ファンのモータからの既に存在する出力信号を有してもよいし、又は別個の簡単な検出回路が、ファンの追加の部分として設けられてもよい。しかしながら、何れの場合も、ファン自体が使用されるため、追加のセンサは必要ない。
【0065】
図2は、システムの構成要素の一例を示す。
図1と同じ構成要素は、同じ参照番号が付される。検出装置は、別個の温度センサ24a及び湿度センサ24bとして示される。
【0066】
図1に示される構成要素に加え、
図2は、制御器30、ローカルバッテリ32及びファンの回転速度を決定するための手段36を示す。
【0067】
ファン20は、ファンブレード20a及びファンモータ20bを有する。1つの例において、ファンモータ20bは、電子整流ブラシレスモータであり、回転速度を決定するための手段は、前記モータの内部センサを有する。電子整流ブラシレスDCのファンは、回転子の位置を測定し、この回転子が回転するようにコイルを流れる電流を切り替える内部センサを有する。従って、内部センサは、モータの速度のフィードバック制御を可能にするために、このようなモータに既に設けられている。
【0068】
モータは、内部センサの出力34が供給される出力ポートを持つことができる。故に、回転速度を決定するのに適した信号を搬送するポートがある。
【0069】
その代わりに、回転速度を決定するための手段が、モータ20bへの電力供給上のリップルを検出するための回路36から構成されてよい。このリップルは、モータのコイルを流れる電流を切り替えることにより生じ、これはバッテリ32の有限インピーダンスの結果として、供給電圧に誘起される変化を引き起こす。前記回路36は、例えばファンが回転する周波数帯域にある信号だけが処理されるようにハイパスフィルタを有する。これは、極めて単純な追加の回路を提供し、従来の圧力センサよりはるかに低コストである。
【0070】
これは、モータが、組み込まれたセンサの出力端子を持たない2線式のファンを含む、
如何なるデザインとすることができることを意味する。ブラシ付きのDCモータでも動作する。
【0071】
出口弁22が電子的に切り換えられる弁である場合、呼吸サイクルのタイミング情報が、呼吸サイクルの相に依存して出口弁22を制御するのに使用されてよい。従って、ファンの速度を監視することは、吸入相を決定する簡単な方法を提供し、吸入相は次いで、マスクの出口弁22のタイミングを制御するのに使用することができる。
【0072】
出口弁を制御することに加え、制御器は、吸入時間又は呼気時間の間、ファンをオフにすることができる。これは、マスクに異なる動作モードを与え、これを使用して電力を節約することができる。
【0073】
所定の駆動レベル(つまり電圧)にとって、ファンブレードへの負荷が軽減されるため、ファンの圧力が低くなりファンの速度が上がる。これは、流れの増加を生じさせる。従って、ファンの速度と圧力差との間には反比例の関係がある。
【0074】
この反比例の関係は、較正処理中に得られてもよいし又はファンの製造業者により提供されてもよい。較正処理は、例えば被験者が正常な呼吸で定期的に吸気及び呼気するように指示される期間にわたり、ファンの速度情報を解析することを含む。次いで、取り込まれたファンの速度情報が呼吸サイクルに適合され、それにより、吸気と呼気とを区別するためのしきい値が設定される。
【0075】
図3は、ファン、逆止弁及び検出装置24を組み入れたモジュールの1つの可能なデザインを示す。このモジュールは、一方の側にバッテリ32及び検出装置24を担持するプリント回路基板34を有し、ファン20及び弁22が他方の側に取り付けられている。上面側の上には、カバー36が設けられる。検出装置は、マスクの外側を向く。
【0076】
図4Aは、(測定されるセンサ電圧として)時間に対する回転子の位置を概略的に示す。
【0077】
回転速度は、ファンへの直流(DC)電圧の(モータにおける切り替え事象により生じる)交流(AC)成分の周波数から測定される。このAC成分は、電源のインピーダンスに課される、ファンが消費する電流の変動に由来する。
【0078】
図4Aは、吸入中の信号をプロット40として及び呼気中の信号をプロット42として示す。圧力勾配の増大によるファンへの負荷の増大により引き起こされる呼気中の周波数の減少がある。従って、観測される周波数の変化は、呼吸サイクル中の異なるファンの性能に起因する。
【0079】
図4Bは、時間に対するファンの回転速度をプロットすることにより、経時的な周波数の変動を示す。連続する最大値と最小値との間に、ファンの回転速度の最大差Δfanがあり、これは呼吸の深さと相関する。これは、ファンの回転信号から得られる第1の値である。これらの時点の間の時間は、第2の値、例えばこの時間期間に対応する周波数(この場合、呼吸数の2倍)を得るために使用される。
【0080】
第1の値は、未処理のファンの回転信号から得られてもよいし、又は最初に平滑化が行われてよいことも留意すべきである。従って、処理されていないリアルタイムの速度又は処理される速度に基づいて、最大スイングを計算するための少なくとも2つの異なる方法がある。実際には、リアルタイムの信号に加えられるノイズ又は他の変動が存在する。リアルタイムの信号を処理して、平滑化される信号から第1の値を計算するために、平滑化アルゴリズムが使用されてよい。
【0081】
呼気中、ファンの動作は、顔とマスクとの間にある領域から空気を押し出させる。これは、呼気が容易になるので、快適性が向上する。それは、顔への追加の空気を吸い込むこともでき、それは温度及び相対湿度を低下させる。吸気と呼気との間において、ファンの動作は、顔とマスクとの間にある空間に新鮮な空気が吸い込まれ、それにより前記空間を冷却するので、快適性を向上させる。
【0082】
吸入中、出口弁は(能動的又は受動的の何れかにより)閉じられ、節電のために、ファンのスイッチがオフにされる。これは、呼吸サイクルの検出に基づく動作モードを提供する。
【0083】
呼吸サイクルの一部の間、ファンがオフにされ、故に圧力情報を与えない場合、吸気相及び呼気相の正確なタイミングは、以前の呼吸サイクルから推測される。
【0084】
ファンの補助による呼気のために、出口弁が再び開く直前に電源が復旧される必要がある。これは、次の吸気ー呼気サイクルが適切な時間に維持され、十分な圧力及び流量を利用可能にすることも確実にする。
【0085】
約30%の省電力は、この手法を用いて簡単に達成可能であり、バッテリ寿命の延長となる。その代わりに、有効性を高めるために、ファンへの電力を30%だけ増大させることも可能である。
【0086】
異なるファン及び弁の構成を用いる場合、ファンの回転速度の測定が、向上した快適性を達成するための制御を可能にする。
【0087】
フィルタがファンと直列にあるファンの構成において、圧力の監視は、特に、ファン及びフィルタの両端の圧力降下に基づいて、フィルタの流れ抵抗を測定するのに使用される。これは、マスクがある時間期間、顔に乗ってないとき、スイッチをオンにすることができる。この抵抗は、フィルタの古さの代理として使用することができる。
【0088】
上述したように、電子整流ブラシレスDCモータを使用するファンは、回転子の位置を測定し、回転子が回転するようにコイルを流れる電流を切り替える内部センサを有する。
【0089】
図5は、DC供給のVDD、GNDからモータの固定子のコイル50に交流電圧を生成するためのインバータとして機能するHブリッジ回路を示す。インバータは、コイル50の両端に交流電圧を発生させるための一組のスイッチS1~S4を有する。これらスイッチは、回転子の位置に依存する信号により制御され、これらの回転子の位置信号が、ファンの回転を監視するのに使用されてよい。
【0090】
上述したように、システムは、好ましくは周囲温度及び湿度の両方を測定する。これら2つの測定値が組み合わされて、例えば熱指数(Heat Index)として知られる尺度のような快適性レベルの尺度を提供する。
図6は、温度(℃)に対する相対湿度(%RH)の図表を示す。異なる熱指数の値を示すために、異なる領域は、異なって陰影が付けられる。
【0091】
熱指数は、周囲温度(T)、周囲温度の二乗(T2)、周囲湿度レベル(rh)及び周囲湿度レベルの二乗(rh2)の関数である。一例は、
Indexheat=-42.379+(2.04901523×T)+(10.14333127×rh)-(0.22475541×T×rh)-(6.83783×10-3×T2)-(5.481717×10-2×rh2)+(1.22874×10-3×T2×rh)+(8.5282×10-4×T×rh2)-(1.99×10-6×T2×rh2)
である。
【0092】
熱指数は、異なる温度及び相対湿度の条件下での快適性の程度の尺度を与える。例えば、29未満は、不快感なしと分類され、29~34.5までは、許容可能であると分類され、34.5~39までは、多少の不快感があると分類され、39~45までは、かなり不快感があると分類され、45~54までは、危険であると分類され、54より上は、差し迫った熱中症に対応する。従って、指数の値が高いほど、不快に感じている。熱指数は、T>10℃の場合に利用可能である。T<10℃の場合、他の冷却パラメータが考慮されるべきである。
【0093】
制御器は、以下の表1を使用して最初のファンの回転速度を設定する。
【表1】
【0094】
T>10℃であるとき、最初のファンの回転速度は、熱指数の増加と共に増大する。T<10℃である間、相対的に低いファンの回転が提供される。この低いファンの回転が、ユーザが寒すぎると感じないことを確実にする。
【0095】
表にある回転速度は、もちろん単なる例である。
【0096】
ファンの回転信号は、リアルタイムで得られ、呼吸の深さを表す第1の値、及び呼吸数を表す第2の値が連続して監視される。安静時の成人の正常な呼吸数は、12~18bpm(呼吸/分)であり、人々が活動、例えばランニング、早歩き又は自転車を乗ることを行うとき、それは増大する。
【0097】
サンプリングウィンドウは、少なくとも1呼吸サイクルを含むべきであり、そうしなければ、呼吸数が取得され得ない。
【0098】
呼吸の深さを表す第1の値は、
図4Bに示されるように、(少なくとも1回の呼吸、例えば5秒の)サンプリングウィンドウ内で取り込まれた回転速度の最大スイング
Δfan=Fan(max)-Fan(min)
に基づいている。
【0099】
呼吸数を表す第2の値は、これらの最大値及び最小値に対するタイミングの差に対応する周波数
f=1/|tFan(max)-tFan(min)|
により与えられる。
【0100】
従って、第2の値は、ファンの回転速度における連続する最大値と最小値との間の時間に基づく周波数である。再び、第2の値は、未処理のファンの回転信号から得られてもよいし、又は最初に平滑化が行われてもよい。
【0101】
呼吸数は、0.5fと定義されてもよい。fを計算するためのもう1つの方法は、下降(上昇)から上昇(下降)までの変曲点を特定することである。
【0102】
ファンの回転速度をリアルタイムで調整するために、一例は、以下に示されるようなルックアップテーブル2を利用する。
【0103】
ルックアップテーブルには、以下の4つのサブテーブルがある。各サブテーブルは、呼吸数の異なる範囲(すなわち、第2の値に対する異なる範囲)に対するものであり、各サブテーブルは、呼吸の深さ(すなわち、第1の値Δfan)の変更によってファンの速度がどのように変える必要があるのかを示す。
【表2】
【0104】
各サブテーブルにおいて、"-"は、ファンの速度が現在のレベルでの実施を保つことを意味し、"Fan+、Fan-、Fan++及びFan--"は、ファンの速度をどのように変更するかを示している。
【0105】
ファンの速度に対する所望の変化は、("-"により示されるように、それが所望の値に向きをとる)ファンの速度の現在のレベル、呼吸数(呼吸/分)、及び呼吸の深さΔfanに依存することが分かる。
【0106】
Fan+、Fan-、Fan++及びFan--の意味は、以下の表3によって明らかにされる。
【表3】
【0107】
値nは、上記の表にあるファンの速度設定1~5の間のように、ファンの速度における段階的変化が行われる回数を表す。
【0108】
例えば、現在のファンのレベルがレベル1である及びn=3である場合(例えばこのシナリオでは、"Fan+"AND熱指数>45)、ファンはレベル4(1+3)に変更されるべきである。
【0109】
最初のファンの速度を決定するために、ユーザによりファンがオンにされるとき、必ずしも最低速度からとは限らず、適切な最初のファンの速度が必要とされる。熱指数は、異なる環境条件下におけるユーザの快適性レベルを概ね反映できるので、熱指数は、上に示されるように最初の速度を設定するのに使用される。
【0110】
ファンの速度をリアルタイムで適応させるとき、呼吸数及び呼吸量は、ユーザの活動に伴って変化する。例えば、12bpmの呼吸数及び0.5Lの一回換気量で普通に座ることは、ファンのレベルが~5500rpm(上記表2参照)である場合、おそらくは350rpm未満のファンの速度変化(Δfan)が生じる。活動が増加する、例えば座ることから歩行になる(例えば、20bpm、1Lの体積)場合、Δfanは、350rpmより上に増大し、これは、ファンレベルの増大を必要とする。熱指数は、ファンがどのレベルに変更されるべきかを決定するのを助けるために使用される。
【0111】
上の表は、単なる1つの詳細な実施を提供するだけであり、当然、異なるファンのデザイン等に対し、異なるバージョンが可能である。
【0112】
マスクは、(
図1に示されるように)鼻及び口だけを覆うためのものでもよいし、又はフルフェイスマスクでもよい。マスクは、周囲の空気をろ過するためのものである。
【0113】
上述したマスクのデザインは、フィルタ材料により形成されるメインの空気チャンバを持ち、ユーザは、これを介して空気を吸い込む。
【0114】
別のマスクのデザインは、上述したように、ファンと直列なフィルタを有する。この場合、ファンは、ユーザがフィルタを通して空気を吸い込むのを助け、故に、ユーザの呼吸努力を減らす。出口弁は、吐き出された空気を排出することを可能にし、入口弁は、吸気口に設けられてもよい。
【0115】
入口弁及び/又は出口弁を制御するために、呼吸により引き起こされる圧力変動を検出する本発明が再び利用されてもよい。この例におけるファンは、ユーザが直列のフィルタを通して空気を吸い込むことを補助するために、吸入中にオンにする必要があるが、出口弁が開いている呼気中は、オフにすることがある。従って、得られた圧力情報は、ファンの動作が必要ないとき、電力を節約するようにファンを制御するのに再び使用されてもよい。マスクが装着されているかどうかの検出が実施されてもよい。
【0116】
本発明は、ファンの補助による吸気又は呼気、及びフィルタ膜により形成される空気チャンバ又は封止される気密空気チャンバを用いて、多くの異なるマスクのデザインに利用されてもよいことが分かる。
【0117】
故に、上述したような1つの選択肢は、例えば排気弁が開いているとき、空気チャンバの内側から外側に空気を引き出すためだけのファンの使用である。このような場合、呼気中にきれいなろ過された空気のマスク容積内への正味の流れが存在するように、マスク容積内の圧力がファンによって外部の大気圧より下に維持されてもよい。従って、低い圧力は、呼気中はファンによって、吸気中(ファンがオフにされるとき)にはユーザによって引き起こされてもよい。
【0118】
代替オプションは、周囲から空気チャンバ内に空気を吸い込むためだけのファンの使用である。このような場合、ファンは、空気チャンバ内の圧力を増大させるように動作するが、使用中の空気チャンバ内の最高圧力は、特に高圧で補助される呼吸を目的としていないので、空気チャンバの外側の圧力よりも高い4cmH2O以下のままである。従って、低電力のファンが使用されてもよい。
【0119】
全ての場合において、空気チャンバ内の圧力は好ましくは、2cmH2O以下、1cmH2O以下又は0.5cmH2O以下のままであり、外部の大気圧より上である。従って、汚染用マスクは、持続的気道陽圧を提供する際に使用するためのものではなく、患者に治療を施すためのマスクではない。
【0120】
マスクは低電力の動作が特に興味深いので、バッテリで動作することが好ましい。
【0121】
上の例において、呼吸の深さに関連する第1の値は、サンプリングウィンドウ中のファンの回転速度の最大スイングに基づいて得られる。ファンの回転速度の他の解析が使用されてもよい。例えば、平均のファンの速度からの正の最大偏差又は平均のファンの速度からの負の最大偏差が使用されてもよい。ファンの速度のスイングは、サンプリングウィンドウ内の何れか1つの呼吸サイクルの最大値でもよいし、又は全サンプリングウィンドウにわたり観測された最低のファンの速度と最高のファンの速度との間の差でもよい。第1の値が得られる前に、例えば平均又は移動平均のような他の統計的尺度が最初に得られてもよい。例えば、くしゃみ又は咳のような事象を除外するために、極値がフィルタ除去されてもよい。
【0122】
従って、第1の値を得るための異なる方法が存在し、上述したよりも複雑な信号処理が実行されてもよい。しかしながら、一般に、ファンの回転速度の変動の振幅と呼吸の深さとの間には相関関係がある。
【0123】
上の例において、呼吸数に関連する第2の値は、ファンの回転速度の連続する最大値と最小値との間の時間に基づいて得られる。ファンの回転速度の他の解析が使用されてもよい。例えば、時間は、(最小値の時間を使用しない)連続する最大値の間、又は(最大値の時間を使用しない)連続する最小値の間でもよい。時間ウィンドウにわたり平均化をしてもよく、例えば、上述したようにくしゃみ又は咳のような事象を除外するために、他の処理が行われてもよい。従って、呼吸数を決定するために、再び例えば平均又は移動平均のような、さらに複雑な信号処理が実行されてもよい。
【0124】
従って、第2の値を得るための異なる方法が存在する。しかしながら、一般に、ファンの回転速度の変動間のタイミングと呼吸数との間には相関関係がある。
【0125】
ファンの速度は、複数の可能なファンの速度値を用いて制御される。従って、ファンの速度は、動作しているファンの速度とゼロ(オフ)のファンの速度との間で制御されるだけではない。3、4、5又はそれ以上の別個のファンの速度設定があってもよい。上の例は、5つのファンの速度設定を有するが、5つより多くてもよい。
【0126】
従って、ファンの速度は、複数のゼロではないファンの速度の選択された1つに設定される。マスクは、ファンをこれらのファンの速度の何れか1つに駆動させる能力を有する。上述したように、ファンが設定され得る離散するファンの速度の組があってもよいし、又はある範囲内にある連続するファンの速度があってもよく、このとき、アルゴリズムが、その可能な範囲内における如何なる所望のファンの速度を選択してよい。
【0127】
【0128】
この方法は、
ステップ70において、ファンを使用してマスクの空気チャンバ内にガスを吸い込む及び/又は空気チャンバからガスを吸い出すステップ、
ステップ72において、ファンの回転速度を決定するステップ、
ステップ74において、決定されるファンの回転速度又はファンの回転速度の変化から、呼吸の深さに関連する第1の値及び呼吸数に関連する第2の値を得るステップ、
ステップ76において、空気チャンバの外側の周囲温度及び空気チャンバの外側の周囲湿度レベルを測定するステップ、並びに
ステップ78において、第1の値、第2の値、周囲温度及び周囲湿度レベルに依存してファンの速度を設定するステップ
を有する。
【0129】
この方法は、第1の値又は第1の値及び第2の値に基づいて、ステップ80において、マスクが装着されていないと決定するステップ、及び次いで、ファンをオフにするステップを有する。
【0130】
上述したように、実施形態は、必要とされる様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアと共に、多数の方法で実施される制御器を利用する。処理器は、必要とされる機能を実行するために、ソフトウェア(例えば、マイクロコード)を用いてプログラムされる1つ以上のマイクロプロセッサを用いる制御器の一例である。しかしながら、制御器は、処理器を用いて又は用いずに実施されてもよいし、幾つかの機能を行うための専用のハードウェアと、他の機能を行うための処理器(例えば1つ以上のプログラムされるマイクロプロセッサ及び関連する回路)との組み合わせとして実施されてもよい。
【0131】
本開示の様々な実施形態に用いられる制御器の構成要素の例は、限定ではないが、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)を含む。
【0132】
様々な実施において、処理器又は制御器は、例えばRAM、PROM、EPROM及びEEPROMである揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリのような1つ以上の記憶媒体に関連付けられてもよい。この記憶媒体は、1つ以上の処理器及び/又は制御器上で実行されるとき、必要とされる機能を行う1つ以上のプログラムで符号化されてもよい。様々な記憶媒体は、処理器及び/又は制御器内に取り付けられてもよいし、或いは記憶媒体に記憶される1つ以上のプログラムが処理器又は制御器に読み込まれるように、搬送可能でもよい。
【0133】
開示される実施例に対する他の変形例は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、本発明を実施する際に当業者により理解及び実施され得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、要素が複数あることを述べなくても、その要素が複数あることを排除するものではない。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。請求項における如何なる参照符号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。