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特許7402881自由形状に3Dプリントされた二重硬化型のテーラードファイバープレイスメントプリフォームを用いた繊維複合体の製造プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】自由形状に3Dプリントされた二重硬化型のテーラードファイバープレイスメントプリフォームを用いた繊維複合体の製造プロセス
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/118 20170101AFI20231214BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20231214BHJP
   B29C 69/00 20060101ALI20231214BHJP
   B29C 39/10 20060101ALI20231214BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20231214BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20231214BHJP
   B33Y 50/00 20150101ALI20231214BHJP
【FI】
B29C64/118
B29C64/314
B29C69/00
B29C39/10
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/00
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021537178
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-18
(86)【国際出願番号】 US2019053998
(87)【国際公開番号】W WO2020139433
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-09-27
(31)【優先権主張番号】16/235,252
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519448326
【氏名又は名称】コニカ ミノルタ ビジネス ソリューションズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーニング, カーステン
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/179547(WO,A1)
【文献】特表2019-526467(JP,A)
【文献】特表2017-537826(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0326761(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105881913(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0202080(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性繊維強化ポリマー(FRP)複合体オブジェクトを作製する方法であって、
熱硬化性繊維強化ポリマー(FRP)複合体プリフォームを作製する工程において、
3Dプリンタのプリントヘッドから、紫外線(UV)硬化性成分及び熱硬化性成分を持つ二重硬化樹脂を含む二重硬化樹脂被覆繊維を供給する供給工程と、
前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給している間に、UV光源で前記UV硬化性成分を硬化させる工程であって、前記二重硬化樹脂被覆繊維が部分硬化されて、部分硬化された前記二重硬化樹脂被覆繊維の接触部同士が接着する部分硬化工程と、
前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給し硬化させている間に、前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを3Dプリントするための前記プリントヘッドの位置調整を行う3Dプリント工程と、を含み、かつ
前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを用いて、前記熱硬化性FRP複合体オブジェクトを作製する成形工程、を含む方法。
【請求項2】
前記供給工程の前に、コア繊維を前記二重硬化樹脂でコーティングして前記二重硬化樹脂被覆繊維を形成する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コア繊維のコーティングは、ディップコーティング、噴霧、ブラシによる塗布、前記二重硬化樹脂の含浸、を含む群のうち少なくとも一つを用いて行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記プリントヘッドから供給される前記二重硬化樹脂被覆繊維は、未硬化のプリプレグ二重硬化繊維である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記UV硬化性成分を硬化させる前記UV光源は、発光ダイオード(LED)ランプを備え、
前記LEDランプは3W以上30W以下のパワーを有し、
前記LEDランプは3J/mm以上の強度の光で前記二重硬化樹脂被覆繊維の表面を照明する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
供給された前記二重硬化樹脂被覆繊維を、前記プリントヘッドの機械式チョッパーで切断する工程を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
供給された前記二重硬化樹脂被覆繊維を、前記プリントヘッドの光学チョッパーのレーザーで切断する工程を更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記成形工程が、
前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを、型に収容する工程と、
熱硬化性樹脂を型に注入し、熱を加える工程と、を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
熱硬化性繊維強化ポリマー(FRP)複合体オブジェクト作製するシステムであって、
紫外線(UV)硬化性成分及び熱硬化性成分を有する二重硬化樹脂を含む二重硬化樹脂被覆繊維をプリントヘッドから供給する3Dプリンタと、
前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給している間に、前記UV硬化性成分を硬化させることで、前記二重硬化樹脂被覆繊維を部分硬化させ、部分硬化された前記二重硬化樹脂被覆繊維の接触部同士を接着させるUV光源と、
熱硬化性繊維強化ポリマー(FRP)複合体プリフォームを用いて、前記熱硬化性FRP複合体オブジェクトを作製する成形装置と、を備え、
前記3Dプリンタは、前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給し硬化させている間に、前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを3Dプリントするための前記プリントヘッドの位置調整を行うシステム。
【請求項10】
前記3Dプリンタは、前記プリントヘッドの位置調整を行う多軸ロボットアームを備える、請求項に記載のシステム。
【請求項11】
前記3Dプリンタは、前記プリントヘッドの位置調整を行うガントリーを備え、
前記プリントヘッドは、ガントリーに回転可能に取り付けられている、請求項に記載のシステム。
【請求項12】
コーティングシステムをさらに備え、
前記コーティングシステムは、前記供給の前にコア繊維を前記二重硬化樹脂でコーティングすることで、前記二重硬化樹脂被覆繊維を形成する、請求項から11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
前記コーティングシステムは、前記二重硬化樹脂の浴を備え、
前記浴において前記コア繊維をディップコートし、前記二重硬化樹脂被覆繊維を形成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記コーティングシステムは、噴霧器を備え、
前記噴霧器で前記二重硬化樹脂を噴霧して前記コア繊維をコーティングし、前記二重硬化樹脂被覆繊維を形成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
前記コーティングシステムは、ブラシを備え、
前記ブラシで前記二重硬化樹脂を塗布して前記コア繊維をコーティングし、前記二重硬化樹脂被覆繊維を形成する、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
前記UV硬化性成分を硬化させる前記UV光源は、発光ダイオード(LED)ランプを備え、
前記LEDランプは3W以上30W以下のパワーを有し、
前記LEDランプは3J/mm以上の強度の光で前記二重硬化樹脂被覆繊維の表面を照明する、請求項から15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記プリントヘッドは、供給された前記二重硬化樹脂被覆繊維を切断する機械式チョッパーを備える、請求項から16のいずれかのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記プリントヘッドは、供給された前記二重硬化樹脂被覆繊維をレーザーで切断する光学チョッパーを備える、請求項から16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項19】
前記成形装置が、前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを収容する型を備える、請求項9から18のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
熱硬化性繊維強化ポリマー(FRP)複合体オブジェクトを生成するためのコンピュータ読取り可能なプログラムを格納する非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体(CRM)によって実行されるプログラムであって、コンピュータに3Dプリンタを制御させて、
前記3Dプリンタのプリントヘッドから、紫外線(UV)硬化性成分及び熱硬化性成分を有する二重硬化樹脂を含む二重硬化樹脂被覆繊維を供給する供給ステップと、
前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給している間に、UV光源で前記UV硬化性成分を硬化させることで、前記二重硬化樹脂被覆繊維を部分硬化させ、部分硬化した前記二重硬化樹脂被覆繊維の接触部同士を接着させる部分硬化ステップと、
前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給し硬化させている間に、熱硬化性繊維強化ポリマー(FRP複合体プリフォームを3Dプリントするための前記プリントヘッドの位置調整を行う3Dプリントステップと、
前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを用いて、前記熱硬化性FRP複合体オブジェクトを作製する成形ステップと、を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0001】
繊維強化ポリマー(FRP)複合体オブジェクトは、近年特に航空機(例:ボーイング747、エアバスA350、エアバスA380)や電気自動車(例:BMW i-series)の用の大型・小型部品の製造において人気を集めている。FRP複合体オブジェクトの従来の製造には、繊維を手や機械によって織物、マット、トウ又はロービングの形状にし、平らで柔軟性のあるプリフォームを形成する工程がある。立体的な(3D)複合体オブジェクトを生成するには、平らで柔軟性のあるプリフォームを折り重ねて(ドレープして)3次元の型に入れる必要があるが、これでは生産時間とコストが増大する。
【課題を解決するための手段】
【0002】
概して、一の態様では、本発明は熱硬化性FRP複合体オブジェクト作製する方法に関する。本方法は、熱硬化性FRP複合体プリフォームを作製する工程において、3Dプリンタのプリントヘッドから、紫外線(UV)硬化性成分及び熱硬化性成分を持つ二重硬化樹脂を含む二重硬化樹脂被覆繊維を供給する工程と、前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給している間に、UV光源で前記UV硬化性成分を硬化させる工程であって、前記二重硬化樹脂被覆繊維が部分硬化されて、部分硬化された前記二重硬化樹脂被覆繊維の接触部同士が接着する工程と、前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給し硬化させている間に、前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを3Dプリントするための前記プリントヘッドの位置調整を行う工程と、を含み、かつ前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを用いて、前記熱硬化性FRP複合体オブジェクトを作製する成形工程、を含む。
【0003】
概して、他の態様では、本発明は熱硬化性FRP複合体オブジェクト作製するシステムに関する。本システムは、紫外線(UV)硬化性成分及び熱硬化性成分を有する二重硬化樹脂を含む二重硬化樹脂被覆繊維をプリントヘッドから供給する3Dプリンタと、前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給している間に、前記UV硬化性成分を硬化させることで、前記二重硬化樹脂被覆繊維を部分硬化させ、部分硬化された前記二重硬化樹脂被覆繊維の接触部同士を接着させる前記UV光源と、熱硬化性FRP複合体プリフォームを用いて、前記熱硬化性FRP複合体オブジェクトを作製する成形装置と、を備え、前記3Dプリンタは、前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給し硬化させている間に、前記熱硬化性FRP複合体プリフォームを3Dプリントするための前記プリントヘッドの位置調整を行う。
【0004】
概して、他の態様では、本発明は、熱硬化性FRP複合体オブジェクトを生成するためのコンピュータ読取り可能なプログラムコードを格納する、非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体(CRM)に関する。コンピュータ読取り可能なプログラムコードは、コンピュータに3Dプリンタを制御させて次を行わせる:3Dプリンタのプリントヘッドから、紫外線(UV)硬化性成分及び熱硬化性成分を有する二重硬化樹脂を含む二重硬化樹脂被覆繊維を供給し、前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給している間に、UV光源で前記UV硬化性成分を硬化させることで、前記二重硬化樹脂被覆繊維を部分硬化させ、部分硬化した前記二重硬化樹脂被覆繊維の接触部同士を接着させ、前記二重硬化樹脂被覆繊維を供給し硬化させている間に、熱硬化性FRP複合体プリフォームを3Dプリントするための前記プリントヘッドの位置調整を行う。また、コンピュータ読取り可能なプログラムコードは、次を行わせる:熱硬化性FRP複合体プリフォームを用いて、熱硬化性FRP複合体オブジェクトを作製する。
【0005】
本発明のその他の側面は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の一つ以上の実施形態に係るシステムを示す。
図2】本発明の一つ以上の実施形態に係る他のシステムを示す。
図3】本発明の一つ以上の実施形態に係る、二重硬化樹脂被覆繊維を形成して熱硬化性FRP複合体プリフォームを生成するためのフローチャートを示す。
図4】本発明の一つ以上の実施形態に係る、未硬化の予備含浸(プリプレグ)二重硬化繊維を供給して熱硬化性FRP複合体プリフォームを生成するためのフローチャートを示す。
図5】当技術分野において既知の成形システムを示す。
図6】本発明の一つ以上の実施形態に係る、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクトを生成するためのフローチャートを示す。
図7】本発明の一つ以上の実施形態に係るコンピューティングシステムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
ここで、添付の図面を参照しながら具体的な実施形態を詳細に説明する。一貫性を保つため、各図面における類似の要素には、類似の参照番号を付している。
【0008】
以下、本発明における実施形態の詳細な説明においては、本発明がより完全に理解されるよう、多数の細部を具体的に記載している。しかし当業者にとっては、これらの具体的な詳細が無くとも本発明が実施可能であることは明らかであろう。また、説明が不必要に煩雑にならないよう、周知の特徴については詳細に記載しないこととした。
【0009】
本出願の全体において、序数(例えば、第1、第2、第3等)は、要素(すなわち、本出願におけるあらゆる名詞)の形容詞として用いうる。序数の使用は、例えば「前」、「後」、「単数の」やその他の用語を使用して明確に開示されていない限り、要素の特定の序列を示唆するものでも、要素に特定の序列をつけるものでもなく、ある要素を単数に限定するものでもない。むしろ、序数の使用は要素の区別を目的としている。例えば第1の要素は、第2の要素と区別され、また、第1の要素は、2つ以上の要素を含んでいてもよく、要素の順序付けとしては第2の要素の後(又は前)であってもよい。
【0010】
単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、複数も対象として含むと理解されるべきである。よって、例えば「水平ビーム(a horizontal beam)」への言及は、1つ以上のビームへの言及も包含する。
【0011】
「約」、「実質的に」等の用語は、記載される特徴、パラメーター又は値が正確に達成される必要がないことを意味し、例えば許容度、測定誤差、測定の精度限界及びその他の当業者に公知の要因等を含む偏差又は変動が、その特徴により得られるとされる効果を阻害しない程度で起こりうることを意味する。
【0012】
概して、本発明の実施形態は、熱硬化性FRP複合体プリフォームを生成するためのシステム、方法及び非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体(CRM)によって実行されるプログラムを提供する。
【0013】
図1は、本発明の一つ以上の実施形態に係るシステム(100)を示す。システム(100)は、例えば、3Dプリンタ(105)、プリントヘッド(110)、二重硬化樹脂被覆繊維(115)及びUV(紫外線)光源(120)といった複数の構成要素を備える。各構成要素について、以下で詳しく説明する。
【0014】
概して、3Dプリンタ(105)は、プリントヘッド(110)から二重硬化樹脂被覆繊維(115)を供給する。二重硬化樹脂被覆繊維(115)は、UV硬化性成分と熱硬化性成分とを有する二重硬化樹脂を含む。供給の工程の間、UV光源(120)はUV硬化性成分を硬化させ、また3Dプリンタ(105)はプリントヘッド(110)の位置調整を行って(すなわち、動かし、向きを決めて)、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を立体的に印刷(3Dプリント)する。
【0015】
一つ以上の実施形態において、3Dプリンタ(105)で二重硬化樹脂被覆繊維(115)を自由な形状に配置することにより、サイクルタイム及び全体的なコストを削減しつつ、高強度かつ低質量の熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を作成することができる。複雑かつ任意の自由形状を空間内にプリントすることにより、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を最適に配置することができ、望ましい特性を最大化でき(例えば、強度、剛性、柔軟性、外観、樹脂透過性を高めつつ)、重量、生産時間、生産コストを削減することができる。
【0016】
さらに、製造中は、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の形状を保持するための織り込み支持構造や補足的な支持構造に頼ることなく、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を最終的なFRP複合体オブジェクトに近似させることができる。補足的な支持構造の織り込み材料や補足材料が複合体プリフォーム内に含まれていると、亀裂の発生や伝播を生じさせる好ましくない微小欠陥や核形成部位を招く可能性がある。
【0017】
したがって、システム(100)は、自動テープ積層(ATL)やテーラードファイバープレイスメント(TFP)といった従来のFRP複合体製造技術の速度、効率、品質を上回ることができる。
【0018】
本発明の一つ以上の実施形態において、3Dプリンタ(105)は、3Dプリント工程中にプリントヘッド(110)の位置調整を行う多軸ロボットアームを備えてもよい。多軸ロボットアームによるプリントヘッド(110)の位置調整の自由度を高めるため、プリントヘッド(110)は、多軸ロボットアームに回転可能に取り付けられてよい。一つ以上の実施形態において、3Dプリンタ(105)のプリントヘッド(110)の位置調整の次元は3次元未満である。
【0019】
一つ以上の実施形態において、3Dプリンタ(105)は、3Dプリント工程中にプリントヘッド(110)の位置調整を行うガントリーを備えてもよい。ガントリーの各軸は、各軸の所定の軌道に沿った直線的又は曲線的な動きを提供できる。ガントリーによるプリントヘッド(110)の位置調整の自由度を高めるため、プリントヘッド(110)は、ガントリーに回転可能に取り付けられてよい。
【0020】
一つ以上の実施形態において、3Dプリンタ(105)は、3Dプリンタ(105)を介して二重硬化樹脂被覆繊維(115)を導くもしくは操作する繊維供給ガイドを備えてもよい。
【0021】
一つ以上の実施形態において、3Dプリンタ(105)は基板(ビルドプレート又はプリントベッド、図示せず)を備えてもよく、当基板の表面上で熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)が3Dプリントされる。基板は固定でもよいし、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の位置がプリントヘッド(110)の位置調整の範囲を補うものとなるよう可動であってもよい。
3Dプリンタ(105)は、基板の表面の温度を制御することにより、基板と熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)との接着性を制御してもよい。
【0022】
一つ以上の実施形態において、プリントヘッド(110)は、少なくとも二重硬化樹脂被覆繊維(115)を供給する。プリントヘッド(110)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を供給するノズルを備えてもよい。3Dプリンタ(105)によるプリントヘッド(110)の位置調整・配向の自由度によって、二重硬化樹脂被覆繊維(115)の供給を最適化し、かつ効率的なサイクルタイムを実現することができる。非限定的な例において、プリントヘッド(110)は約200mm/秒の速度で移動し、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を約200mm/秒の速度で供給し得る。プリントヘッド(110)の速度と二重硬化樹脂被覆繊維(115)の供給の速度は、必ずしも同じである必要はない。
【0023】
さらに、プリントヘッド(110)の移動及び供給速度は、従来の3Dプリンティングで用いられる速度を上回ってもよい。「固体」オブジェクトの従来のプリントにおいては、高品質な製品を生産するために、内部構造と外表面を共に非常に高精度でプリントする必要がある。最終的なFRPオブジェクトの形状は、プリフォームを製造した後の成形工程(例えば、高圧樹脂転写成形(HP-RTM)によって確定されるため、プリントヘッド(110)の位置調整に求められる精度は、従来の3Dプリントに比べて大幅に低くなる。その結果、サイクルタイムと生産コストを削減するためにより早い速度を用いることができる。
【0024】
一つ以上の実施形態において、二重硬化樹脂被覆繊維(115)はコア繊維(130)を含む。一つ以上の実施形態において、コア繊維(130)は、高強度かつ高弾性な■き出しの炭素繊維、炭素繊維糸、3Kトウ、又は50Kトウであってよいが、これらのクラスの繊維に特に限定されない。非限定的な例では、コア繊維(30)は、テナックス(登録商標)フィラメント糸でもよいが、この製品群に特に限定されない。一つ以上の実施形態において、コア繊維(130)は、未硬化の予備含浸(プリプレグ)繊維であってよい。非限定的な例では、未硬化プリプレグ繊維はトレカ炭素繊維(登録商標)であってよいが、この製品群に特に限定されない。
【0025】
一つ以上の実施形態において、コア繊維(130)はガラス繊維やアラミド繊維であってよいが、これらの材料に特に限定されない。さらに、コア繊維(130)は、異なる繊維材料の混成物や混合物であってもよい。
【0026】
一つ以上の実施形態において、二重硬化樹脂被覆繊維(115)は二重硬化樹脂を含む。二重硬化樹脂は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)をコーティングしてもよいし、又は二重硬化樹脂被覆繊維(115)に含浸されてもよい。二重硬化樹脂は、ビスフェノールAジグリジルエーテル、アミン又は無水硬化剤、オリゴマーアクリレート、部分的及び/又は完全にアクリル化したエポキシオリゴマー(例えば、光硬化組織と熱硬化組織を結合させるため)、光誘導体(例えば、ベンゾフェノン誘導体)及び他の添加剤(例えば、硬化促進剤、安定剤、捕捉剤、反応開始剤)を含んでよいが、ここで列挙したものに特に限定されない。
【0027】
一つ以上の実施形態において、二重硬化樹脂は、UV光で光学的に硬化されるUV硬化性成分を含む。一つ以上の実施形態において、UV硬化性成分を硬化させるために必要な光の波長は、UVの波長範囲に限定されない。一つ以上の実施形態において、UV硬化性成分を硬化させるために必要な光の波長は、100nmより大きく、400nm未満であってよいが、所望の硬化レベルが達成できるのであれば、この波長範囲に特に限定されない。
【0028】
概して、UV硬化性成分は、UV硬化性成分を光学的に活性化するのに十分なエネルギーを有する波長の光によって硬化する。UV硬化性成分は、処理中の温度にさらされても実質的に影響を受けない。UV硬化性成分は、供給工程の影響を受けない。
【0029】
一つ以上の実施形態において、二重硬化樹脂は、所定範囲の温度に所定時間さらされることで熱硬化する熱硬化性成分を含む。熱硬化性成分は、UV硬化性成分を硬化させる光の波長にさらされても実質的に影響を受けない。概して、熱硬化性成分は、供給工程及び3Dプリント工程の影響を受けない。
【0030】
一つ以上の実施形態において、UV光源(120)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)の表面を露光させ、二重硬化樹脂被覆繊維(115)のUV硬化性成分を硬化させて、部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)を生成する。この「部分硬化」という語は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)のUV硬化性成分の一部又は全部が硬化し、熱硬化性成分が実質的に未硬化であることを意味する。部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、3Dプリント工程の間、及びその後オペレータや他機器に取り扱われる間、自身の重量と形状を支えることができる。すなわち、部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、取り扱われて型に入れられる際に実質的、永久的に変形したり、反ったり、又は崩れたりしない程度の強度と柔軟性を有する。一つ以上の実施形態において、部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、供給された部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)の接触部同士が接着する程度に粘着質であってよい。
【0031】
一つ以上の実施形態において、UV光源(120)は、白熱電球、発光ダイオード(LED)、UV LEDランプの組み合わせ、アークランプといった非干渉性の光源、又はその他の適切な非干渉性の光源又は光学系であってよいが、これらの光源に特に限定されない。一つ以上の実施形態において、UV光源(120)は、レーザー、色素レーザー、ガスレーザー、固体レーザー、エキシマレーザー、スーパーコンティニュームレーザーといった干渉性の光源、その他適切な干渉性の光源や光学系であってよいが、これらの光源に特に限定されない。
【0032】
一つ以上の実施形態において、UV光源(120)は他の光源に置き換えられてもよい。すなわち、光源が発する光の波長は、UVの波長範囲に限定されない。一つ以上の実施形態において、光の波長は100nmより大きく400nm未満であってよいが、この波長範囲に特に限定されない。一つ以上の実施形態において、光の波長は100nm未満でもよいし、400nmより大きくてもよい。概して、光の波長は、UV硬化性成分を光学的に硬化するのに十分なエネルギーを有する。
【0033】
非制限的な例において、UV光源(120)は、3W以上かつ30W以下のパワーを有するLEDランプに換えることができる。3Dプリント工程中、光源のパワーは固定又は調整可能とすることができる。光源は、3J/mm 以上の強度で二重硬化樹脂被覆繊維(115)の表面を照らし得るが、この強度範囲に特に限定されるものではない。例えば、より低強度の光で部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)が生成されるのであれば、3J/mm 未満の強度でもよい。
【0034】
一つ以上の実施形態において、UV光源(120)は3Dプリンタ(105)と一体であってよい。図1に示す非限定的な例において、プリントヘッド(110)はUV光源(120)を内部に収容してもよい。UV光源(120)を内部に収容することによって、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の他の部分に影響を及ぼし得る迷光を減らしたり、オペレータの不要な被曝を減らすことができる。図2に示す非限定的な例において、プリントヘッド(110)はUV光源(120)を外部に収容してもよい。UV光源(120)を外部的に収容することで、物理的な構成要素(例えば、供給の構成要素や光源の構成要素)の分離を可能にし、修理や交換の際のアクセスを容易にすることができる。すなわち、UV光源(120)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)のプリントヘッド(110)からの供給前、供給中、又は供給後に、継続してUV硬化性成分を硬化させることができる。
【0035】
一つ以上の実施形態において、UV光源(120)と3Dプリンタ(105)とは別体であってよい。非限定的な例において、UV光源(120)は、プリントヘッド(110)とは独立の第2のロボットアーム又は第2のガントリーシステムによって配置・配向されてよい。第2の位置調整システムにより、二重硬化樹脂被覆繊維(115)の表面をより均一又はより高強度な光で露光することができる。
【0036】
一つ以上の実施形態において、システム(100)は二重硬化樹脂被覆繊維(115)を供給し部分硬化させるが、このとき、部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)によって、3Dプリント工程中に任意の形状で自立し、かつ自らの重量と形状を支えられる熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)が形成されるように、供給及び部分硬化を行う。3Dプリンタ(105)は基板を備えてもよいが、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)は基板の形状による制限を受けない。熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)は、基板上で、任意で自由な三次元形状に作成することができる。すなわち、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)は、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクトの形状に近似するよう作成することができる。
【0037】
非限定的な例においては、3Dプリンタ(105)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を平らで水平な複数の層状に供給してもよい。この非限定的な例においては、コア繊維(130)の高強度性、高弾性といった有益な物理的特性は、供給された水平な層の平面によって定義される方向に限られ得る。
【0038】
他方、3Dプリンタ(105)は、全方向についてより等しい物理的特性を持つ熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を生産することができる。したがって、別の非限定的な例において、3Dプリンタ(105)は熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を3Dプリントする間、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を水平・垂直の両方向に供給することができる。すなわち、コア繊維(130)の高強度性、高弾性といった有益な物理的特性を空間のあらゆる方向に適用させることができる。
【0039】
一つ以上の実施形態において、供給のパターンは、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の形状やデザインに合わせて詳細に調整できる。一つ以上の実施形態において、二重硬化樹脂被覆繊維(115)は、様々な密度及び三次元の様々な向きで供給することができる。それにより、想定上の所定の加重について、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の一部の強度及び/又は柔軟性を最適化することができる。一つ以上の実施形態において、二重硬化樹脂被覆繊維(115)は、様々な密度及び三次元の様々な向きで供給することができる。それにより、表面の品質を最適化し、さらに/又は熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の一部の重量を削減することができる。
【0040】
部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、3Dプリント工程中に熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の重量及び形状を支えるのに十分な強度があるため、その供給パターンは任意かつ自由な形状であってよい。したがって、作製中に基板上の熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を支持するための補足的な支持構造(例えば、支持テープやステッチ糸)は必要とされない。さらに、供給パターンは3Dプリンタ(105)の基板の形状に全く影響されない。
【0041】
一つ以上の実施形態において、システム(100)はさらにコーティングシステム(140)を備え得る。コーティングシステム(140)は、プリントヘッド(110)からの供給の前に、コア繊維(130)を二重硬化樹脂でコーティングすることにより、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を形成する。一つ以上の実施形態において、コーティングシステム(140)は、コア繊維(130)に二重硬化樹脂を含浸させてもよい。
【0042】
一つ以上の実施形態において、コーティングシステム(140)は、二重硬化樹脂(145)の浴を備えてもよい。コア繊維(130)を二重硬化樹脂(145)の浴中でディップコーティング(浸漬被覆)することにより、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を形成してもよい。コア繊維(130)は、1つ以上のプーリー(滑車)(150)によって、又は重力のみによって、又は機械的経路によって浴中に誘導され得るが、これらの誘導に必ずしも限定されない。コア繊維(130)は、二重硬化樹脂(145)の浴内に完全に沈めてもよいし、その表面に沿って引かれてもよいが、これらのコーティング方法に必ずしも限定されない。
【0043】
一つ以上の実施形態において、コーティングシステム(140)は噴霧器を備えてもよい。噴霧器で二重硬化樹脂をコア繊維(130)に噴霧しコーティングすることで、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を形成してもよい。噴霧器は、二重硬化樹脂をエアロゾル又は液体の形で放出するものであってよいが、これらの形に必ずしも限定されない。
【0044】
一つ以上の実施形態において、コーティングシステム(140)はブラシを備えてもよい。ブラシで二重硬化樹脂をコア繊維(130)に塗布しコーティングすることで、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を形成してもよい。ブラシは、毛状の塗布具やローラーの塗布具を備えてもよいが、必ずしもこれらの塗布具に限定されない。
【0045】
一つ以上の実施形態において、以下のようになるよう、コーティングシステム(140)を3Dプリンタ(105)内に備えてもよい:コア繊維(130)が3Dプリンタ(105)内に供給される;コーティングシステム(140)がコア繊維(130)をコーティングして二重硬化樹脂被覆繊維(115)を形成する;3Dプリンタ(105)が二重硬化樹脂被覆繊維(115)を供給し部分硬化させる。
【0046】
一つ以上の実施形態において、以下のようになるよう、コーティングシステム(140)は3Dプリンタ(105)とは別個であってもよい:コア繊維(130)がコーティングシステム(140)内に供給される;コーティングシステム(140)がコア繊維(130)をコーティングして二重硬化樹脂被覆繊維(115)を形成する;二重硬化樹脂被覆繊維(115)が3Dプリンタ(105)内に供給される;3Dプリンタ(105)が二重硬化樹脂被覆繊維(115)を供給し部分硬化させる。
【0047】
一つ以上の実施形態において、プリントヘッド(110)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を切断するチョッパー(155)を備える。一つ以上の実施形態において、チョッパー(155)は機械式であり、刃やハサミ、カッター等であってよいが、これらの機械装置に特に限定されるものではない。一つ以上の実施形態において、チョッパー(155)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を切除、又はそうでなければ切断するレーザーを備えた光学系であってもよい。一つ以上の実施形態において、チョッパー(155)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)がUV光源(120)によって部分硬化される前に、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を切断してもよい(図2参照)。一つ以上の実施形態において、チョッパー(155)は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)がUV光源(120)によって部分硬化された後、部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)を切断してもよい(図1参照)。
【0048】
図2は、本発明の一つ以上の実施形態に係るシステム(200)を示す。システム(200)の3Dプリンタ(105)に対しては、UV硬化性成分と熱硬化性成分とを持つ二重硬化樹脂を含んだ未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)が直接供給される。一つ以上の実施形態において、未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)は、3Dプリンタ(105)とは別体のコーティングシステム(140)によって前処理を施され、低温(すなわち、未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)の性質を保ち、かつそれに含まれる熱硬化性成分に影響を与えない温度範囲)にて保管されていたコア繊維(130)である。未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)は、インラインで連続的に生産され3Dプリンタ(105)に供給されてもよいし、3Dプリンタ(105)に供給される前に前処理を施され保存されてもよいが、これらの構成に特に限定されない。
【0049】
図3及び図4は、本発明の一つ以上の実施形態に係るフローチャートを示す。各フローチャートは、熱硬化性FRP複合体プリフォームを生成する方法を示している。具体的には、図3は、二重硬化樹脂被覆繊維(115)を形成し、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を生成する方法を示す。図4は、未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)を供給して熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を生成する方法を示す。図3図4のステップのうち1つ以上が、図1図2を参照して上述したシステム(100)と(200)の構成要素によって実行され得る。本発明の一つ以上の実施形態においては、図3図4のステップのうち1つ以上を省略し、反復し、及び/又は図3図4に示される順序とは異なる順序で実施してもよい。従って、本発明の範囲は、図3図4に示される具体的なステップの配置に限定されるとみなされるべきではない。
【0050】
図3を参照する。図1を参照して上述したように、ステップ305において、コア繊維(130)が、例えばコーティングシステム(140)によって二重硬化樹脂でコーティングされ、二重硬化樹脂被覆繊維(115)が形成される。コア繊維(130)は任意の供給源から得ることができる(例えば、コア繊維又は前処理を施されたコア繊維を製造するシステムなど)。
【0051】
ステップ310では、図1を参照して上述したように、二重硬化樹脂被覆繊維(115)が3Dプリンタ(105)のプリントヘッド(110)から供給される。
【0052】
ステップ315では、図1を参照して上述したように、二重硬化樹脂被覆繊維(115)のUV硬化性成分をUV光源(120)で硬化させる。
【0053】
ステップ320では、図1を参照して上述したように、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)が3Dプリンタ(105)によって3Dプリントされる。
【0054】
ステップ325では、図1を参照して上述したように、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)が3Dプリンタ(105)から取り出される。部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、取り扱われ又はいじられても、実質的、永久的に変形したり、反ったり又は崩れたりしない程度の強度を有する。
【0055】
図4を参照する。図2を参照して上述したように、ステップ405において、未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)が、二重硬化樹脂被覆繊維(115)として3Dプリンタ(105)に供給される。未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)は、任意の供給源から得ることができる(例えば、未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)又は低温で保存された前処理済の未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)を製造するシステム)。
【0056】
ステップ410では、図2を参照して上述したように、未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)が3Dプリンタ(105)のプリントヘッド(110)から供給される。
【0057】
ステップ415では、図2を参照して上述したように、未硬化プリプレグ二重硬化繊維(205)のUV硬化性成分がUV光源(120)で硬化される。
【0058】
ステップ420では、図2を参照して上述したように、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)が3Dプリンタ(105)によって3Dプリントされる。
【0059】
ステップ425では、図2を参照して上述したように、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)が3Dプリンタ(105)から取り出される。部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、取り扱われ又はいじられても、実質的、永久的に変形したり、反ったり又は崩れたりしない程度の強度を有する。
【0060】
一つ以上の実施形態において、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の毎時生産速度は、1.3kg/時~30kg/時間であってよい(様々な部品に対応する分範囲でのサイクルタイム)が、この範囲に特に限定されない。3Dプリントのサイクルタイムと、HP-RTMを用いた成形のサイクルタイムは類似しているため、システム(100)又は(200)は、成形システムと並行して、又は成型システムに続いて稼働させることができる。
【0061】
図5は、当技術分野において既知の成形システムを示す。成形システム(500)は、型(505)を備える。型(505)の空洞がプリフォームを収容し、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクト(510)の形状を決める。熱硬化性樹脂を、樹脂注入口(515)を通して型(505)に注入する。型に対し、例えば熱伝導やマイクロ波によって熱を加え、二重硬化樹脂被覆繊維(115)及び注入された熱硬化性樹脂を完全に硬化させる。こうして、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)と注入された熱硬化性樹脂が結合され、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクト(510)が作成される。
【0062】
図6は、本発明の一つ以上の実施形態に係るフローチャートを示す。本フローチャートは、最終的な熱硬化性FRP複合体(510)を生成する方法を示す。
【0063】
図6を参照する。ステップ605では、図5を参照して上述したように、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)が型(505)の空洞に挿入される。部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、型(505)の空洞にはまる程度の柔軟性を有し得る。
【0064】
ステップ610では、図5を参照して上述したように、型(505)は熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)の周囲で閉じられ、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクト(510)の形状を定める。
【0065】
ステップ615では、図5を参照して上述したように、熱硬化性樹脂が樹脂注入口(515)から型(505)に注入され加圧されることで、型(505)の空洞を充填するとともに熱硬化性FRP複合プリフォーム(125)に浸透・透過する。部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、加圧注入時に押し出されない程度の強度を持ち得る。さらに、部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)は、樹脂透過性を向上させ、より高い樹脂注入圧力を可能にするパターンで供給され得る。したがって、空隙及び望ましくない核形成部位を最小化することができる。これにより、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクト(510)の物理的特性及び表面の品質を高めることができる。
【0066】
ステップ620では、図5を参照して上述したように、熱が加えられ、注入された熱硬化性樹脂及び熱硬化性FRP合成プレフォーム(510)内の部分硬化した二重硬化樹脂被覆繊維(135)の熱硬化性成分が完全に硬化される。
【0067】
ステップ625では、図5を参照して上述したように、型(505)が開かれ、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクト(510)が露わにされ、開放される。
【0068】
ステップ630では、図5を参照して上述したように、最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクト(510)が型(505)から取り外される。型(505)はその後、成形サイクルを繰り返す用意ができた状態となる。
【0069】
一つ以上の実施形態においては、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を型(505)の空洞に素早く挿入できるため、成形システム(500)のサイクルタイムを低減することができる。
熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)は自身の形状と重量を支えており、3Dプリンタ(105)から型(505)に直ちに移すことができるため、取り扱いを自動化し、移す時間を短縮することができる。熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)は、型(505)の空洞の形状、及び最終的な熱硬化性FRP複合体オブジェクト(510)の形状に近似もしくは厳密に一致させることができる。そのため、熱硬化性FRP複合体プリフォーム(125)を型(505)の空洞にはめるのに最小限の時間や処理変動で済むか、若しくは時間や処理変動を全く必要としない。
【0070】
比較例として、例えばATLやTFPによって製造されたプリフォームを用いると、型の空洞にプリフォームを入れるのにより時間がかかる。この比較としてのプリフォームは、柔軟性のある平らな基板上に配置された繊維(例えば、支持テープやステッチ糸によって柔軟性のある平らな基板上に保持された繊維)を含んでいる。この比較としてのプリフォームを3Dの型に入れる際、この柔軟性のある平らな基板が型の形状の上に折り重なることとなる。各成形サイクルの間、オペレータはこの比較としてのプリフォームを検査する必要があり、プリフォームのしわが寄った箇所や不適切な箇所を修正するためにセクション全体、若しくは個々の繊維までも配置し直さなければならない可能性がある。その結果、工程中の繊維の密度、位置及び配向にばらつきがでる可能性がある。よって、この比較としてのプリフォームを用いると、成型システムの全体的なサイクルタイムが増加し、均一性の比較的低い製品が生産される。
【0071】
本発明の実施形態は、使用するプラットフォームにかかわらず、事実上あらゆる種類のコンピューティングシステムに実装できる。例えば、コンピューティングシステムは、一つ以上の可搬装置(例えば、ノート型コンピュータ、スマートフォン、パーソナルデジタルアシスタント、タブレット型コンピュータ又はその他の可搬装置)、デスクトップコンピュータ、サーバ、サーバシャーシにおけるブレード、又は本発明の一つ以上の実施形態を実施するための最低限の処理能力、メモリ及び入出力装置を少なくとも備えるその他の種類の一つ以上のコンピューティング装置であってよい。例えば図7に示すように、コンピューティングシステム(700)は、一つ以上のコンピュータプロセッサ(705)、関連するメモリ(710)(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、キャッシュメモリ、フラッシュメモリ等)、一つ以上の記憶装置(715)(例えば、ハードディスク、コンパクトディスク(CD)ドライブやデジタル多用途ディスク(DVD)ドライブといった光ドライブ、フラッシュメモリスティック等)、その他多くの構成要素及び機能を有してよい。コンピュータプロセッサ(705)は、指示を処理するための集積回路でもよい。例えば、コンピュータプロセッサは、一つ以上のコア又はプロセッサのマイクロコアでもよい。また、コンピューティングシステム(700)は、タッチスクリーン、キーボード、マウス、マイク、タッチパッド、電子ペン、又はその他の種類の入力装置といった入力装置(720)を一つ以上備えてよい。また、コンピューティングシステム(700)は、スクリーン(例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ、タッチスクリーン、ブラウン管(CRT)モニター、プロジェクタ、又はその他の表示装置)、プリンタ、外部記憶装置、又はその他の出力装置といった出力装置(725)一つ以上備えてよい。出力装置のうち一つ以上が入力装置と同じであっても良いし、異なってもよい。コンピューティングシステム(700)は、ネットワークインターフェース接続(図示なし)を介してネットワーク(730)(例えば、ローカルエリアネットワーク(LAN)、インターネット等の広域ネットワーク(WAN)、モバイルネットワーク、又はその他の種類のネットワーク)に接続されてよい。入力装置及び出力装置は、ローカルに又はリモートに(例えば、ネットワーク(730)を介して)コンピュータプロセッサ(705)、メモリ(710)及び記憶装置(715)に接続されてよい。コンピューティングシステムには数多くの様々な種類があり、前述の入力装置及び出力装置は他の形態をとってもよい。
【0072】
本発明の実施形態を実施するためのコンピュータ読取り可能なプログラムコードの形態をとるソフトウェア指示は、全て又は一部が、一時的に又は恒久的に、CD、DVD、記憶装置、ディスケット、テープ、フラッシュメモリ、物理メモリ、又はその他のコンピュータ読取り可能な記憶媒体といった非一時的なコンピュータ読取り可能な媒体に記憶されてよい。具体的には、ソフトウェア指示は、プロセッサによって実行された際に本発明の実施形態を実施するように構成された、コンピュータ読取り可能なプログラムコードに相当し得る。
【0073】
更に、前述のコンピューティングシステム(700)の構成要素は、そのうち一つ以上が遠隔に配され、ネットワーク(730)を介してその他の構成要素と接続されてもよい。また、本発明の一つ以上の実施形態は、複数のノードを有する分散システムに実装されてもよく、本発明の各部は、分散システム内の異なるノード上に配置されてもよい。本発明の一実施形態では、ノードは別個のコンピューティング装置に相当する。あるいは、ノードは関連する物理メモリを有するコンピュータプロセッサに相当し得る。あるいは、ノードは、共有メモリ及び/又は情報源を有するコンピュータプロセッサ、もしくはコンピュータプロセッサのマイクロコアに相当し得る。
【0074】
本発明の一つ以上の実施形態は、次の利点のうち一つ以上を有し得る:高強度かつ低質量の熱硬化性FRP複合体プリフォームを生成する;複雑、任意かつ自由な形状の熱硬化性FRP複合体プリフォームを生成する;関連する成形システムのサイクルタイム及び製造コストを削減する;関連する成形システムの処理変動を向上させる。
【0075】
限られた数の実施形態を参照して本発明を説明したが、本開示の恩恵に浴する当業者であれば、ここで開示された本発明の範囲から逸脱しない他の実施形態が考案可能であると分かるだろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7