(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】選択的細胞切除のための空間多重化波形
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
A61B18/12
(21)【出願番号】P 2021555452
(86)(22)【出願日】2020-03-13
(86)【国際出願番号】 US2020022571
(87)【国際公開番号】W WO2020190688
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-09-22
(32)【優先日】2019-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フォーサイス、ブルース アール.
(72)【発明者】
【氏名】キャナディ、ラリー ディ.ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】ゴルジツキ、ジョナサン タイラー
(72)【発明者】
【氏名】オストルート、ティモシー エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ、ホン
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-500170(JP,A)
【文献】特表2005-523085(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0303543(US,A1)
【文献】特表2007-526012(JP,A)
【文献】特表2004-516274(JP,A)
【文献】特開2011-036672(JP,A)
【文献】特表2007-516792(JP,A)
【文献】国際公開第2017/157890(WO,A1)
【文献】特表平11-509431(JP,A)
【文献】特開2010-036037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189097(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0021028(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0171523(US,A1)
【文献】特表2019-508138(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0030210(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 - 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不可逆的電気穿孔で使用するための組織切除エネルギーの送達に使用するのに適した信号発生器において、
電圧変換回路、エネルギー蓄積回路及び出力制御回路を有する治療出力ブロックと、
組織切除エネルギーの送達プローブに接続するのに適した入力/出力回路であって、それに接続され、
第1、第2及び第3の電極を含む少なくとも3つの電極を有するプローブを、
前記少なくとも3つの電極のサブセットの個々の活性化によって使用できるように複数の出力チャンネルを規定する前記入力/出力回路と、
ユーザが前記信号発生器を制御することを可能にし、前記信号発生器によって送達される組織切除エネルギーの1つ以上のパラメータを表示するのに適したユーザインタフェースと、
前記治療出力ブロックと前記ユーザインタフェースとに接続されたコントローラと、
前記コントローラに接続され、及び、治療サイクルの送達のための命令を格納しているメモリであって、
前記治療サイクルは、
前記少なくとも3つの電極から選択される電極の第1対間の第1単相パルスと、
前記少なくとも3つの電極から選択される電極の第2対間の第2単相パルスと、
前記少なくとも3つの電極から選択される電極の第3対間の第3単相パルスと
、を含む、前記メモリと
、を備え、
各第1、第2及び第3単相パルスが
、アノード及びカソードの固有の組み合わせを使用し、ここで、格納された命令が、前記第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれについて、前記少なくとも3つの電極のうちのどれをアノードとして使用し、前記少なくとも3つの電極のうちのどれをカソードとして使用するかを規定し、
各治療サイクルの終了時に、
周辺組織の複素インピーダンスによって決定される周辺組織の時定数未満である規定の最大時間内に前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達された電荷量が
それぞれゼロ付近に保たれ、
それによって筋収縮のリスクを低減させる、信号発生器。
【請求項2】
前記格納された命令が、内部又は表面に前記プローブが配置される組織の電気穿孔閾値を超える前記第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれの振幅を規定する、請求項1に記載の信号発生器。
【請求項3】
前記格納された命令が、内部又は表面に前記プローブが配置される組織の不可逆的電気穿孔閾値を超える前記第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれの振幅を規定する、請求項1に記載の信号発生器。
【請求項4】
前記格納された命令が、
前記第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれについてアノード及びカソードとして使用される電極間の距離を考慮して、1センチメートルあた
り600ボルトを超える前記第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれの振幅を規定する、請求項1に記載の信号発生器。
【請求項5】
前記格納された命令が
、10マイクロ秒未満のパルス幅をそれぞれが有するように前記第1、第2及び第3単相パルスを規定する、請求項1に記載の信号発生器。
【請求項6】
前記格納された命令が、筋収縮を防止するために、1ミリ秒未満の時間間隔で完了するように
前記治療サイクルを構成する、請求項1に記載の信号発生器。
【請求項7】
前記格納された命令が
、前記治療サイクルの最後の単相パルスが送達される
まで、
前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷量がゼロ付近に保たれないように
前記治療サイクルを構成する、請求項1に記載の信号発生器。
【請求項8】
前記入力/出力回
路に接続され、各出力チャンネルにおいて電流又は電圧の少なくとも1つを監視するのに適した検出回路構成をさらに備え、前記格納された命令が、
インピーダンスを使用して前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷を決定することによって電荷バランスを保つための計算を容易にするために、治療出力時のインピーダンスを監視するための命令をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の信号発生器。
【請求項9】
前記格納された命令が、
前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷を前記コントローラに監視させ
、前記治療サイクルの完了前に、1つ以上の
追加の単相パルスの送達を行って、
前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷量をゼロ付近にするのに適して
おり、前記1つ以上の追加の単相パルスは、前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される監視された電荷を使用する前記格納された命令によって決定される、請求項8に記載の信号発生器。
【請求項10】
前記格納された命令が、
前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷を前記コントローラに監視させ
、前記治療サイクルの完了前に、1つ以上の治療パルスのパルス幅を前記コントローラに調節させて
、前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷量をゼロ付近にするのに適している、請求項8に記載の信号発生器。
【請求項11】
前記格納された命令が、
前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷を前記コントローラに監視させ
、前記治療サイクルの完了前に、1つ以上の治療パルスの電圧レベルを前記コントローラに調節させて
、前記第1、第2及び第3の電極のそれぞれによって送達される電荷量をゼロ付近にするのに適している、請求項8に記載の信号発生器。
【請求項12】
前記格納された命令が
、前記治療サイクルの少なくとも2回の送達を含んでなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の信号発生器。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の信号発生器と、
前記少なくとも3つの電極をその表面に有するレビーン(商標)ニードルプローブと
、を備え
、前記少なくとも3つの電極は独立してアドレス可能である、システム。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の信号発生器と、プローブ使用時に患者の身体上に配置されるのに適したリターン電極と
、を備える
、システム。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか一項に記載の信号発生器と
、切除信号の送達のために、その表面に
前記少なくとも3つの電極を有するプローブと
、を備える
、切除システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は選択的細胞切除のための空間多重化波形に関する。
【背景技術】
【0002】
病変組織の除去又は破壊は、多くの癌治療法の目標である。腫瘍は外科的に除去してもよいが、より侵襲性の低いアプローチが多くの注目を集めている。組織切除は、体内の望ましくない組織を破壊する低侵襲な方法である。切除は、熱的であってもよく、又は非熱的であってもよい。
【0003】
熱的切除は、望ましくない細胞を破壊するために、熱を加えるか、又は熱を除去する。たとえば、冷凍切除は、細胞外区画を凍結させることによって、-15Cで細胞の脱水を開始させ、さらに低温で膜破裂を生じさせることによって細胞を殺す。冷凍切除は、患者の抗腫瘍免疫反応を(有益に)刺激することが公知である。
【0004】
加熱に基づく熱切除は、組織を破壊するために加熱する。無線周波数(RF:Radio-frequency)熱切除、マイクロ波切除及び高密度焦点式超音波療法は、それぞれ、局所組織の温度を身体の正常な37℃よりもかなり上に上げるために用いることができる。たとえば、RF熱切除は、摩擦によって熱に変換される細胞膜の振動を誘発するために高周波電界を用いる。細胞温度が50℃に達すれば細胞死は30秒で起こり、より高い温度では細胞死は瞬時に起こる。しかしながら、加熱に基づく切除は、冷凍切除に伴う望ましい免疫反応を引き起こさない可能性がある。
【0005】
加熱又は冷却を用いる熱切除技術は、それぞれ、治療領域の正常構造を助ける能力をほとんどあるいはまったく持たないという欠点がある。血管構造、神経構造又は他の構造への二次的な損傷は望ましくない。したがって、様々な研究者が、非熱切除も探求してきた。
【0006】
非熱切除技術は、電気化学療法及び不可逆的電気穿孔を含む。電気穿孔とは、高電圧パルス電界にさらされた細胞の細胞膜が、脂質二重層の不安定化により一時的に透過性になる現象を指す。次いで、少なくとも一時的に孔が形成される。電気化学療法は、孔の形成と、細胞死をもたらす化学物質の導入とを組み合わせている。用いる化学分子が大きいため、電界を受ける細胞のみがその化学物質を吸収し、その後死ぬため、治療ゾーンに有用な選択性をもたらす。不可逆的電気穿孔(IRE:Irreversible electroporation)は、化学物質を省き、代わりに通常は振幅が大きい電界を用い、回復点を超えて細胞膜の孔を拡大させるため、利用できる細胞膜がないために細胞死を引き起こす。印加電界の空間特性は、どの細胞及び組織が影響を受けるかを制御するため、熱技術と比較して、治療ゾーンでのより優れた選択性を可能にする。
【0007】
電気(熱的か否かにかかわらず)切除技術を用いる場合の課題の1つは、局所筋肉刺激に関するものである。単相波形は、一定の細胞死を引き起こす点で、IREにより優れた結果をもたらすと考えられている。しかしながら、単相波形は、とりわけ筋肉刺激を引き起こす傾向にあり、手術を容易にするために麻痺薬の使用を必要とする。二相波形は、筋肉刺激を回避するが、単相波形と同じエネルギーレベル及び振幅、又は同じエネルギーレベルもしくは振幅では同等に有効ではない可能性がある。二相波形をより有効にするために、単に電力を上げることは、熱切除を引き起こすリスクがある。筋肉刺激を回避しながら、IREのための単相刺激と同等に有効な使用波形を可能にし、それによって単相治療と二相治療の両方の利点を得るための、最新技術の強化と代替手段が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本件発明者らは、とりわけ、解決すべき課題は、筋肉刺激を避けながら、高い効果と組織選択性とを組み合わせた切除治療を提供することであると認識した。以下に示すいくつかの例は、このような目的を達成するために、治療出力の空間多重化を使用する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
例示であって限定するものではない第1の例は、組織切除エネルギーの送達に使用するのに適した信号発生器であって、電圧変換回路、エネルギー蓄積回路及び出力制御回路を含む治療出力ブロックと、組織切除エネルギーの送達プローブに接続するのに適した入力/出力回路であって、それに接続され、複数の電極を有するプローブを、複数の電極のサブセットの個々の活性化によって使用できるように複数の出力チャンネルを規定する入力/出力回路と、ユーザが信号発生器を制御することを可能にし、信号発生器によって送達される組織切除エネルギーの1つ以上のパラメータを表示するのに適したユーザインタフェースと、治療出力ブロックとユーザインタフェースとに接続されたコントローラと、コントローラに接続され、治療サイクルであって、少なくとも3つの電極から選択される電極の第1対間の第1単相パルスと、少なくとも3つの電極から選択される電極の第2対間の第2単相パルスと、少なくとも3つの電極から選択される電極の第3対間の第3単相パルスとを含む治療サイクルの送達のための格納された命令を有するメモリと、を含む信号発生器において、各第1、第2及び第3単相パルスが、第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれに固有の出力チャンネルの定義を含む格納された命令を有するアノード及びカソードの固有の組み合わせを使用し、各治療サイクルの終了時に、各出力チャンネルによって送達された電荷量がゼロ付近に保たれ、格納された命令が、周辺組織の時定数未満である規定の最大時間内に治療サイクルが完了することを要求し、時定数が、筋収縮の高リスクに関連する時間の長さを規定する、信号発生器の形態を取る。
【0010】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、内部又は表面にプローブが配置される組織の電気穿孔閾値を超える第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれの振幅を規定してもよい。
【0011】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、内部又は表面にプローブが配置される組織の不可逆的電気穿孔閾値を超える第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれの振幅を規定してもよい。
【0012】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、プローブを考慮して、1センチメートルあたり約600ボルトを超える第1、第2及び第3単相パルスのそれぞれの振幅を規定してもよい。
【0013】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、約10マイクロ秒未満のパルス幅をそれぞれが有するように第1、第2及び第3単相パルスを規定してもよい。
【0014】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、筋収縮を防止するために、1ミリ秒未満の時間間隔で完了するようにパルス列を構成してもよい。
【0015】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、パルス列の最後の単相パルスが送達されるとき、すべての出力チャンネルを通じて電荷平衡が達成されるようにパルス列を構成してもよい。
【0016】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、機器は、入力/出力回路構成に接続され、各出力チャンネルにおいて電流又は電圧の少なくとも1つを監視するのに適した検出回路構成をさらに備え、格納された命令は、電荷平衡の計算を容易にするために、治療出力時のインピーダンスを監視するための命令をさらに含んでもよい。
【0017】
これに加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、各出力チャンネルにおいて送達される電荷をコントローラに監視させ、パルス列の完了前に、1つ以上の単相パルスの送達を行って、切除治療送達時の電流の流れ又はインピーダンスの1つ以上の変動により普通ならゼロ以外のはずの電荷平衡を高めてもよい。
【0018】
これに加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、各出力チャンネルにおいて送達される電荷をコントローラに監視させ、パルス列の完了前に、1つ以上の治療パルスのパルス幅をコントローラに調節させて電荷の不均衡を減少させてもよい。
【0019】
これに加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、各出力チャンネルにおいて送達される電荷をコントローラに監視させ、パルス列の完了前に、1つ以上の治療パルスの電圧レベルをコントローラに調節させて電荷の不均衡を減少させてもよい。
【0020】
例示であって限定するものではない第1の例に加えて、あるいはこれに代えて、格納された命令は、パルス列の少なくとも2回の送達を要求してもよい。
他の例は、例示であって限定するものではない第1の例に記載の信号発生器と、独立してアドレス可能な複数の電極をその表面に有するレビーン(LeVeen、登録商標)ニードルプローブとを含むシステムを含む。
【0021】
他の例は、例示であって限定するものではない第1の例に記載の信号発生器と、プローブ使用時に患者の身体上に配置されるのに適したリターン電極とを含むシステムを含む。
例示であって限定するものではない第2の例は、少なくとも3つの電極を含む複数の電極を用いて組織を切除する方法であって、切除される組織の内部又は表面に少なくとも3つの電極を配置し、少なくとも3つの電極から選択される電極の第1対間の第1単相パルスと、少なくとも3つの電極から選択される電極の第2対間の第2単相パルスと、少なくとも3つの電極から選択される電極の第3対間の第3単相パルスとを含む治療サイクルを送達し、各第1、第2及び第3単相パルスは、アノードとカソードの固有の組み合わせを使用し、各治療サイクルの終了時に、各電極によって送達される電荷量はゼロ付近に保たれ、治療サイクルは、周辺組織の時定数未満である規定の最大時間内に完了し、時定数は、筋収縮の高リスクに関連する時間の長さを規定することを含む方法の形態を取る。
【0022】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、第1、第2及び第3単相パルスは、それぞれ、電極が内部又は表面に配置される組織の電気穿孔閾値を超える振幅を有していてもよい。
【0023】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、第1、第2及び第3単相パルスは、それぞれ、電極が内部又は表面に配置される組織の不可逆的電気穿孔閾値を超える振幅を有していてもよい。
【0024】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、第1、第2及び第3単相パルスは、それぞれ、1センチメートルあたり約600ボルトを上回る電界を発生させてもよい。
【0025】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、第1、第2及び第3単相パルスは、それぞれ、約10マイクロ秒未満のパルス幅を有していてもよい。
【0026】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、複数の電極の少なくとも2つは、少なくともいくつかの電極の対が、標的組織を通る治療ベクトルを規定するように、切除される標的組織の周りに配置されるのに適したコンフォーマルアレイの一部であってもよい。
【0027】
これに加えて、あるいはこれに代えて、複数の電極の少なくとも4つは、標的組織領域の周りに空間的に配置されるように組織に配置されてもよく、第1、第2及び第3電極対の少なくとも1つは、それらの間で少なくとも1つの別の電極を有する2つの電極を使用する。
【0028】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、各パルス列は、筋収縮を防止するために、1ミリ秒未満の時間間隔で完了してもよい。
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、電荷平衡は、パルス列の最後の単相パルスが送達されるとき、すべての電極を通じて達成される。
【0029】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、電荷平衡の計算を容易にするために、第1、第2及び第3電極対のそれぞれの間でインピーダンスを監視することをさらに含んでもよい。
【0030】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、電荷平衡の計算を容易にするために、第1、第2及び第3電極対のそれぞれの間で電流の流れを監視することをさらに含んでもよい。
【0031】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、パルス列時に、複数の電極によって送達される電荷を監視させることと、パルス列の完了前に、1つ以上の単相パルスを送達して、切除治療送達時に使用される電極対間の電流の流れ又はインピーダンスの1つ以上の変動により普通ならゼロ以外のはずの電荷平衡を高めることとをさらに含んでもよい。
【0032】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、電荷の不均衡を減少させるために、1つ以上の治療パルスのパルス幅を調整することをさらに含んでもよい。
【0033】
例示であって限定するものではない第2の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、電荷の不均衡を減少させるために、1つ以上の治療パルスの電圧レベルを調整することをさらに含んでもよい。
【0034】
例示であって限定するものではない第3の例は、少なくとも3つの電極を含む複数の電極を用いて組織を切除する方法であって、切除される組織の内部又は表面に少なくとも3つの電極を配置し、少なくとも3つの電極から選択される電極の第1対間の第1単相パルス、少なくとも3つの電極から選択される電極の第2対であって、第1対とは異なる第2対間の第2単相パルス、電極の第1対を用いる第1単相パルスと等しいが逆の第3単相パルス、電極の第2対を用いる第2単相パルスと等しいが逆の第4単相パルスを含み、各治療サイクルの終了時に、各電極によって送達される電荷量がゼロ付近に保たれ、第2単相パルスが、第1単相パルスと第3単相パルスとの間で行われ、第3単相パルスが、第2単相パルスと第4単相パルスとの間で行われ、治療サイクルが、周辺組織の時定数未満である規定の最大時間内に完了し、時定数が、筋収縮の高リスクに関連する時間の長さを規定する治療サイクルを送達することを含む方法の形態を取る。
【0035】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、第1、第2、第3及び第4単相パルスの少なくとも1つは、電極が内部又は表面に配置される組織の電気穿孔閾値を超える振幅を有していてもよい。
【0036】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、第1、第2、第3及び第4単相パルスの少なくとも1つは、電極が内部又は表面に配置される組織の不可逆的電気穿孔閾値を超える振幅を有していてもよい。
【0037】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、単相パルスは、それぞれ、1センチメートルあたり約600ボルトを上回る電界を発生させてもよい。
【0038】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、単相パルスは、それぞれ、約10マイクロ秒未満のパルス幅を有していてもよい。
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、複数の電極の少なくとも2つは、少なくともいくつかの電極の対が、標的組織を通る治療ベクトルを規定するように、切除される標的組織の周りに配置されるのに適したコンフォーマルアレイの一部であってもよい。
【0039】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、各パルス列は、筋収縮を防止するために、1ミリ秒未満の時間間隔で完了してもよい。
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、電荷平衡は、パルス列の最後の単相パルスが送達されるとき、すべての電極を通じて達成される。
【0040】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、電荷平衡の計算を容易にするために、第1及び第2電極対のそれぞれの間でインピーダンスを監視することをさらに含んでもよい。
【0041】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、電荷平衡の計算を容易にするために、第1及び第2電極対のそれぞれの間で電流の流れを監視することをさらに含んでもよい。
【0042】
例示であって限定するものではない第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、パルス列時に、複数の電極によって送達される電荷を監視させ、パルス列の完了前に、1つ以上の単相パルスを送達して、切除治療送達時に使用される電極対間の電流の流れ又はインピーダンスの1つ以上の変動により普通ならゼロ以外のはずの電荷平衡を高めることをさらに含んでもよい。
【0043】
例示であって限定するものではない第2又は第3の例に加えて、あるいはこれに代えて、方法は、少なくとも2回の治療サイクルを送達することをさらに含んでもよい。
例示であって限定するものではない第4の例は、患者に切除治療を送達するためのプローブとともに使用するように構成されたパルス発生器であって、電圧ベースの治療を送達するための出力回路構成と、送達される治療パルスの特性を監視するための監視回路構成と、例示であって、限定するものではない第2又は第3の例、又は言及した付記又はその代替物に記載の治療を送達するのに適した実行可能命令セットを含む不揮発性メモリを含む制御回路構成とを含むパルス発生器の形態を取る。
【0044】
例示であって限定するものではない第5の例は、例示であって限定するものではない第4の例に記載のパルス発生器と、切除信号の送達のために、その表面に複数の電極を有するプローブとの形態を取る。
【0045】
この概要は、本特許出願の主題への導入を目的としたものである。この概要は、本発明の排他的又は網羅的な説明を提供するものではない。発明の詳細な説明は、本特許出願についてのさらなる情報を提供するために含まれている。
【0046】
必ずしも縮尺どおり描かれているわけではない図面において、同じ数字は、異なる図において同様な構成要素を示すことができる。異なる文字の接尾語を持つ同じ数字は、同様な構成要素の異なる例を示すことができる。図面は、例として一般的に説明するものであって、本文書で説明されている様々な実施形態を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図1】電界強度とパルス持続時間の組み合わせに関連する様々な治療モダリティの近似を示す図である。
【
図5】従来技術である「LeVeen(登録商標)」ニードルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1は、送達される電気パルスの振幅-時間関係に依る様々な生物物理学的応答の近似を示す。細胞応答間の閾値(10、20、30)は、一般に、印加電界強度とパルス持続時間との関数として機能する。第1閾値10未満では効果は生じない。第1閾値10と第2閾値20との間では可逆的電気穿孔が生じる。第2閾値20超第3閾値30未満では、主として不可逆的電気穿孔(IRE)が生じる。第3閾値30超では、主として組織の加熱によってもたらされる熱的な効果が出始める。したがって、たとえば、一定の電界強度と持続時間では効果がない可能性があるが(位置12)、電界印加の持続時間が長くなれば、可逆的電気穿孔(位置22)と、不可逆的電気穿孔(位置32)と、熱切除(位置40)とが起こり得る。
【0049】
米国特許第6,010,613号に記載されているように、可逆的電気穿孔を引き起こすためには、約1ボルトの範囲の膜電位が必要である。しかしながら、タイミング及び持続時間などのパルスパラメータと、可逆的電気穿孔に必要となる膜電位との間の関係については、依然として活発に研究が行われている。治療される細胞の特性に応じて必要な電界は異なる可能性がある。マクロレベルでは、可逆的電気穿孔は、1センチメートルあたり数百ボルトのレベルの電圧を必要とするが、不可逆的電気穿孔では、より高い電圧を必要とする。例として肝臓組織のin vivo電気穿孔を考慮すれば、米国特許8,048,067号に記載されているように、可逆的電気穿孔の閾値電界強度は約360V/cmの可能性があり、不可逆的電気穿孔の閾値電界強度は約680V/cmの可能性がある。一般的に言って、治療される組織の大部分を通じてこのような効果を得るために、複数の個々のパルスが送達される。たとえば、2、4、8又は16以上のパルスが送達されてもよい。いくつかの実施形態において、数百のパルスを送達してもよい。
【0050】
電気穿孔のための電界は、通常は、1~数百マイクロ秒の範囲の持続時間をそれぞれが有する一連の個々のパルスを送達することによって印加されている。たとえば、米国特許第8,048,067号は、
図1の線20と線30との間の領域が実際に存在し、いくつかの実験において、1秒間隔で送達される一連の800マイクロ秒のパルスを用いて非熱IRE治療を実現することができることを示すために行った分析と実験を記載している。
【0051】
組織膜は、穿孔状態から静止状態まで瞬時には復帰しない。そのため、時間的に近接するパルスの印加は、たとえば米国特許第8,926,606号に記載されているように、累積効果を有し得る。さらに、米国特許出願公開第2007/0025919号に記載されているように、一連のパルスは、最初に細胞膜に穿孔を生成させ、次いで生成された可逆的な孔を通して大分子を移動させるために使用することができる。
【0052】
図2~
図4は、細胞への電界の印加の様々な影響を示す。可逆的電気穿孔閾値未満の電界強度では、
図2に示すように、細胞60の細胞膜62はそのまま維持され、孔は生じない。
図3に示すように、より高い電界強度では、可逆的電気穿孔閾値超不可逆的電気穿孔閾値未満で、細胞70の膜72は孔74を発生させる。印加電界とパルス形状の特性に応じて、大小の孔74が生じることが可能であり、発生した孔は、長い時間又は短い時間持続する可能性がある。
【0053】
図4に示すように、さらに高い電界強度では、不可逆的電気穿孔閾値超で、細胞80は、多くの孔84、孔86を伴う膜82を有するようになっている。高振幅又は高出力レベルでは、孔84、孔86は、大きくなりすぎるため、かつ、数が多くなりすぎるため、又はそのいずれか一方のため、細胞が回復できない可能性がある。
図4に示されるように、孔は細胞80の左側及び右側に空間的に集中し、細胞膜が印加電界に平行となる領域88には孔がほとんど又はまったくないことにも注目してよい(ここでは、電界は、
図4で示された細胞の右側及び左側に配置される電極間で印加されていると想定している)。これは、電界が、細胞膜に対して直交せずに平行に近いため、領域88の膜電位が低いままであることによるものである。
【0054】
図5は、従来技術である「レビーン(LeVeen、登録商標)」ニードルを示す。米国特許第5,855,576号に記載されているように、この機器は、患者110の標的組織112にアクセスしたあとに伸長又は収縮させることができる複数の組織穿刺電極102に延びているシャフト104を有する挿入可能部分100を含む。この装置の近位端には、電源108への電気配線106が接続されており、RFエネルギーを供給するために使用することができる。
【0055】
通常は、レビーンニードルは、標的組織への熱切除を送達するために使用される。たとえば、‘576特許に記載されているように、プレート(単数又は複数)の形態でのリターン電極は、患者の皮膚上に配置してもよく、リターン電極は、他の組織穿刺電極として設置することが可能であり、また、リターン電極は、組織穿刺電極102の近位の、その遠位端の近くのシャフト104上に設置してもよい。
【0056】
元の設計に対する機能強化は、たとえば、複数の電極の作動はもちろん、別々に電気的に活性化する電極の個々の作動の両方に関して、組織穿刺電極102の独立した作動を説明している米国特許第6,638,277号において見つけることができる。特許第5,855,576号及び第6,638,277号は、様々な治療送達プローブを示すために参照によって本願に組み込まれる。米国仮特許出願第62/620,873号(その開示は、様々な治療送達プローブを示すものとして参照によって本願に組み込まれる)は、電極のスペーシング、サイズ及び選択における自由度を可能にするレビーンニードル概念の更新及び強化を開示している。
【0057】
図6~
図8は、様々な波形の特徴を示す。
図6について言えば、単相波形は150で示されている。波形150は、ベースライン又は等電位152に対して示されている。理想的な方形波は、振幅154、パルス幅156及びサイクル長158を有することが示されている。波形150は、ベースライン152から指定された振幅154まで垂直に上昇する理想的な方形波として示されている。このような波形を説明するとき、周波数は、通常はサイクル長158の逆数を示す。したがって、たとえば、1マイクロ秒のパルス幅156を有する波形が2マイクロ秒間隔158で送達される場合、その波形の「周波数」は、500kHz(2マイクロ秒の逆数)と記載してもよい。波形150は、電流制御又は電圧制御波形であってもよい。以下でさらに詳しく述べるように、様々な例において、いずれのアプローチを使用してもよい。
【0058】
任意の実際の印加において、生成された波形のエッジは丸くされ、ベースライン152からの上昇は、
図7に示すようにさらに丸くされ、162で示されるベースラインからの上方剥離は、立ち上がり時間160が特徴となる。出力の終わりに、立ち下がり時間166を特徴とする非理想的な立ち下がり164もある。波形の実際の印加は、示されているように、臨界減衰信号又は過減衰信号のエッジの信号出力が不足減衰か又は丸くされている場合にたとえば振幅のオーバーシュートを含む可能性のある、ピーク振幅のいくらかの変動も含む。
【0059】
いくつかの例において、1つ以上の立ち上がり時間160又は立ち下がり時間166を操作することができる。例示的な例において、システムの出力回路構成は、抵抗器、インダクタなどの、その回路に切り替えた場合に立ち上がり時間を遅らせることができる選択可能な要素を含んでもよい。たとえば、インダクタを流れる電流は瞬時には変化することはできず、したがって、誘導素子を出力回路に切り替えることによって、インダクタが電流を流し始めるときに立ち上がり時間を遅くすることができる。
【0060】
立ち上がり時間及び立ち下がり時間は、いくつかの異なる方法で操作してもよい。たとえば、プロセス設定は、ピーク電圧目標を変更するように選択してもよい。高い目標は、様々な構成要素が指数関数的に応答して、出力回路がオンになるか、又はそれに切り替えられるため、速い立ち上がり時間をもたらすことができる。出力を監視することによって、システムはピーク電圧目標を人工的に増加させて立ち上がり時間を減少させることができ、真のピーク電圧に達すると、システムは、電圧源を切り替えるか、又は出力レギュレーションを使用して(整流器の使用か、又は個々の放電経路による出力電流のリダイレクトなどによる)、電圧出力に制限を加えてもよい。他の例において、様々な立ち上がり時間及び立ち下がり時間を示す様々なHVスイッチタイプを備える、システムに使用可能かつ選択可能な複数の様々なHVスイッチを備えることなどによる構成要素選択を行ってもよい。たとえば、それぞれが様々な立ち上がり/立ち下がり特性を示す3つの出力スイッチが使用可能な場合、システムは、特定の治療出力セッション中に使用するための適切な出力スイッチを選択することにより、長いか又は短い立ち上がり時間/立ち下がり時間を要求するユーザ入力に応答してもよい。ハイパス又はローパスフィルタリングは、スルーレートを制御するための出力回路に切り替えてもよく、又は制御信号回路に切り替えてもよい。たとえば、出力トランジスタの低速ターンオンは、トランジスタそれ自身の立ち上がり時間を遅くすることができ、逆に出力トランジスタの高速ターンオンは、立ち上がり時間を速めることができる。他の例において、立ち上がり時間又は立ち下がり時間のデジタル化制御を可能にする出力回路として、デジタル‐アナログ変換器を使用してもよい。さらに別の例において、デジタル‐アナログ変換器によって出力スイッチへの制御信号を生成することができ、それによって、出力回路構成それ自身へのオン/オフ信号を操作することができる。さらに別の例において、波形発生器及び選択的細胞切除の制御と題された米国仮特許出願第62/819,101号(その開示は、参照によって本願に組み込まれる)に示したコンデンサスタック出力を使用して、迅速な立ち上がり時間は、コンデンサスタックの最上部からの1つのスイッチング出力(又は所望の目標レベル)を用いて達成されてもよく、また、遅い立ち上がり時間は、コンデンサスタックのすべてよりも小さい出力を用いて出力を順にオンさせ、次いでさらにコンデンサスタックを出力に追加することによって達成されてもよい。出力回路構成における適切に配置されたダイオードは、このような操作時のコンデンサスタックの新しく追加された部分の逆電流又は短絡を防止する。
【0061】
図8は、今回は、二相信号についてのさらなる詳細を示す。ここでは、波形は180で示され、最初は182の正パルスであり、すぐ後に190の負パルスが続く。正パルス182は振幅184を有し、負パルス190は、通常は正パルスと電圧は等しいが、正パルスとは逆の極性である振幅192を有する。正パルス182はパルス幅186を有し、負パルス190はパルス幅194を有する。通常は、2つのパルス幅186、194は互いに等しい。示されている信号については、サイクル長は、正パルス182の始めの部分からその後のサイクルの開始まで、196で示されているように決定することができる。同様に、周波数はサイクル長の逆数である。
【0062】
二相信号の典型的な印加又は使用において、その目的は、一部分において、各サイクルの終わりに電荷平衡を達成することである。そのため、二相のパルス幅は等しく保たれ、極性は逆ではあるが振幅も等しい。電圧制御又は電流制御システムのどちらを使用する場合でも、単にパルス幅及び振幅を制御することによって、電荷平衡を合理的に維持することができる。たとえば、電圧制御システムにおいて、電流の流れは、サイクル内で大なり小なり一定であり、サイクル長196はミリ秒範囲以下であることが想定される。すなわち、切除手術時に、細胞が破壊されるにしたがって組織インピーダンスは変化し、一般にインピーダンスを減少させる細胞媒体を排出することが公知であるが、インピーダンスは直ちに変化することはないため、電圧を制御するものではなくても、単純な二相波形の電荷平衡が課題になる。
【0063】
位相間の時間188は、正及び負パルス間のベースラインにおいて使われる時間間隔であり、基礎となる回路構成の物理的制約に従って通常は最小化される。したがって、たとえば、第1スイッチをオフにして正パルス182を終了させる必要があり、第2スイッチが負パルス190を開始させるために用いられる場合、デジタル制御を想定して、可能性のある内部短絡を防止するために、システムは、第1スイッチをオフにして、次いで第2スイッチをオンにした後に数デジタルクロックサイクルを終了してもよい。より速い切り替えにより、この位相間の時間を短縮させることができ、この時間間隔188を短縮するために多くのエンジニアリングの努力が行われている。
【0064】
たとえば、非常に短い位相間の時間188は、米国特許第10,154,869号に示すような設計を用いて達成することができる。特許第10,154,869号において、インダクタは出力負荷と平行して配置される。電源は、治療送達の初期段階において負荷とインダクタに印加される。電源と負荷/インダクタとの間のスイッチを開くことによって、電源が切断された後、インダクタが負荷から電流を引き出すため、負荷を流れる電流がほぼ瞬時に反転する。
【0065】
図6~
図8から、一般的な使用法の背景が得られる。以下にさらに示すいくつかの実施形態において、単相パルスは、筋肉刺激を防止する電荷平衡に関して二相の成果を達成するために用いられる。本明細書におけるすべての例において、用語「筋肉刺激を引き起こさずに」とは、少しの筋肉刺激は許容されるが、それは該当する介入及び手術領域内で、又は介入もしくは手術領域内で許容される量のみであることに留意する必要がある。たとえば、生じる刺激は、患者が不快に感じるほど強くはない。他の例において、生じる刺激は、組織を除去するための手術が、刺激を受けた患者の動作によって干渉を受けない程度に小さい。他の例において、生じる筋肉刺激は、手術に影響がなく、麻痺薬の投与を必要とせずに手術を行うことが可能である。いくつかの例において、生じる刺激は、プローブの配置と固定に影響を及ぼさないか、又は十分に小さいために、プローブの移動が生じない。
【0066】
図9は、ブロック方式の信号発生器を示す。信号発生器200は内蔵型ユニットであってもよく、またそれは、ワイヤ及び無線接続のうちの少なくともいずれか一方とともに接続されたいくつかの個々の構成要素を含んでもよい。制御ブロックは202で示されており、ステートマシン、マイクロコントローラ及び関連するデジタル論理又はマイクロプロセッサの形での複数の論理回路や、さらには、必要に応じてラップトップ又はデスクトップコンピュータなどの既成の演算装置を含んでもよい。メモリ204は、制御ブロック202から独立していてもしていなくてもよく、操作のための実行可能命令セットを格納するだけでなく、システムの動作のログ及び、治療時に受信されるセンサ出力を保管するためにも含まれる。メモリ204は揮発性又は不揮発性メモリであってもよく、光学メディア、デジタルメディア、フラッシュドライブ、ハードドライブ、ROM、RAMなどを含んでもよい。UI又はユーザインタフェース206は、制御ブロックに組み込まれてもよい(制御装置202のためにラップトップ(メモリ204及びUI206のそれぞれを含む)を用いる場合など)。UI206は、必要に応じて、マウス、キーボード、スクリーンタッチスクリーン、マイクロホン、スピーカなどを含んでもよい。
【0067】
電源入力208は、電池(単数又は複数)を含んでもよいが、通常は、線電源を受け取るための壁コンセントに差し込む電気的接続を含む。治療ブロックは210で示され、いくつかの段階を含む。絶縁及び電圧変換回路は212で示され、たとえば、電池又は線電圧を受け入れ、HVストレージ214に格納される高電圧出力に増加させる1つ以上の変圧器又は他の昇圧コンバータ(容量式昇圧変換回路など)を含んでもよい。HVストレージ214は、電池、インダクタ又は他の回路素子を含んでもよいが、通常は、積層型コンデンサなどの容量式ストレージブロックである。HVストレージ214は、ブロック212からHV信号を取得し、経時的にそれを平滑化して、それからHV出力回路216によって送達されるより安定した高電圧出力を提供するのに役立ててもよい。また、HVストレージ214は、長時間にわたってエネルギーを格納して短いバーストで送達することによって、低出力電圧入力が、非常に高い電源出力を生成することを可能にしてもよい。
【0068】
HV出力回路216は、218で示されるIOブロックへの高電圧信号の選択的出力を可能にする、たとえば、シリコン制御式整流器、高出力Mosfet及び他の要素などの高電圧スイッチを含む多くのスイッチ及び他の要素を含む出力制御回路であってもよい。IOブロック218は、1つ以上の送達プローブ220からのプラグを受け入れるためのいくつかのコンセントだけでなく、リターン電極として役立てるか、又は単に患者及びシステムを接地するための、患者の身体に配置される1つ以上の不関電極の1つ以上の出力を提供してもよい。
【0069】
治療ブロック210へのいくつかの代替的アプローチにおいて、HVストレージから信号を直接に出力するためのスイッチのセットを用いるHV出力216ではなく、共振回路は、HV信号を電源として、共振回路の出力を選択的に切り替えることによって、共振回路の出力を治療送達に用いてもよい。「Hブリッジ」における4つのスイッチのセットを用いてRF回路を駆動するトポロジーは、たとえば米国特許第10,105,172号に示されている。いくつかの実施形態において、個々のパルスの制御は、本発明において、波形発生器及び選択的細胞切除のための制御と題された米国仮特許出願第62/819,101号(その開示は、参照によって本願に組み込まれる)に示すように、駆動RF回路を省略し、単に拡張Hブリッジ回路の1形態に依存することによって達成される。
【0070】
制御ブロック202へのフィードバックを提供するために、1つ以上の検出回路224が含まれてもよい。たとえば、検出回路は、プローブ220への出力ノードの電圧を測定してもよく、組織性状を観察することを可能にするプローブ220に接続する出力ノードに向かう電流を測定してもよい。たとえば、一例として直接変換、遂次近似、ランプ型、ウィルキンソン、積分、デルタコード化、パイプライン化、シグマデルタ、及び時間インターリーブADCなどのうちの少なくともいずれか1つを含む電圧測定回路は当該分野で周知であり、適用に適している場合は、それらのいずれも使用してもよい。電流測定回路構成は、たとえば、トレース抵抗検出、変流器又はロゴスキーコイルなどの、ファラデーの法則に基づく電流センサ、又は1つ以上の伝送路に電気的又は磁気的に接続された磁場センサの使用(ホール効果、フラックスゲート、及び磁気抵抗電流センサのうちの少なくともいずれか1つ)を使用してもよい。安全目的のために、出力回路構成に電流センサを使用して、短絡又は過電流状態を抑えてもよい。
【0071】
他の例において、プローブ220は、温度センサ、力センサ又は化学物質もしくはpHセンサなどのセンサを含んでもよく、それらのいずれも、治療送達時に組織性状を監視するために使用することができる。たとえば、温度センサを使用して、ある領域の温度が閾値温度より高くなっているか、又は上昇傾向を示しているかどうかを観察することによって、電気穿孔などの非熱療法を管理してもよく、その場合、電源出力の1つ以上の要素を減少させて、所望の治療タイプが優位であることを確認してもよい。プローブがこのような部材を含む場合、検出回路224は、感知された信号が制御ブロック202での使用のために調整されることを可能にするために、任意の適切な増幅器、フィルターなどを含んでもよい。
【0072】
検出回路224は、以下に述べるように、心調律を捕捉し、治療送達のための生理学的ウィンドウを同定するために、1つ以上の電極(たとえば患者の胸部に配置した表面電極)とともに使用するのに適した心調律センサを含んでもよい。治療のための生理学的ウィンドウを同定するための心臓信号は、代わりに、クリニック内ECGモニター、心臓モニター、ペースメーカ又は除細動器などの埋め込み型医療機器、又は心調律を検知する様々なウェアラブル製品から受信してもよい。
【0073】
任意選択で、「他の治療」ブロック222を含めてもよい。「他の」治療は、たとえば、追加の治療を提供するため、送達される治療を促進するため、又は免疫反応を引き起こして切除後の身体の治癒自体を容易にするための化学薬品又は生物学的製剤の送達を含んでもよい。このような他の治療222は、たとえば、シリンジ又はカテーテル又はプローブによって患者に送達される材料のリザーバ(詰め替え可能であってもよい)を含んでもよい。「他の治療」222は、電気的に送達される治療の切除効果を、促進するため、増強するため、相乗的に発揮するため、又は別に追加するための物質を導入することを含んでもよい。たとえば、物質注入と電界印加の組み合わせによる不可逆的電気穿孔と題された米国特許出願第16/188,343号(その開示は、参照によって本願に組み込まれる)に開示されているように、電界効果を改変又は増強するために物質を注入してもよい。
【0074】
いくつかの例において、必要に応じて免疫反応を促進して、電気的切除の前、最中又は後に組織冷却を可能にする凍結療法をこのシステムに組み込んでもよい。凍結療法は、たとえば、治療プローブ220上のバルーンを用いて送達されてもよく、亜酸化窒素などの加圧流体源に接続されたバルーン内のノズルとは別に提供されてもよい。たとえば米国特許第6,428,534号に開示されているように、ノズルから排出された加圧流体は、膨張するか、又は液体からガスへの相変化を行って局所冷却を引き起こす。他の例において、流体(ガス又は液体)は、外部で冷却され、凍結目的でカテーテルによって導入されてもよく、これに変えて外部で熱せられ、加熱切除目的で、カテーテルによって導入されてもよい。
【0075】
さらに他の例において、他の治療222は、機械的エネルギー(たとえば超音波)又は、たとえば、標的組織にレーザーエネルギーが送達されるのを可能にするプローブを通して延びている光ファイバーに接続されたレーザー源(たとえば垂直共振器面発光型レーザー)を用いる光エネルギーなどのエネルギーの送達を含んでもよい。いくつかの例において、指摘したように、標的組織を破壊するための主要アプローチとして使用されない場合であっても、免疫反応を引き起こすための二次の又は「他の」治療を使用してもよい。
【0076】
図10~
図11は、電極がその近傍にある標的組織を示す。
図10に示すように、標的組織300は、複数の電極1~6によって囲まれていてもよい。上記の
図5に示すプローブは、標的組織300の周りにいくつかの電極を容易に配置するために、個々の電極1~6を標的の周りの組織に穿刺し、進めて用いてもよい。従来の二相印加において、電極は対又は群で、又は遠隔のリターン電極に関連する完全群で使用してもよく、正相信号の直後に、ほぼ等しいが逆の電圧又は電流の負相信号を用いてもよい。このような使用と対照的に、本発明は、代わりに、治療出力の空間多重化を用いて、二相治療の副作用の低減(特に筋肉刺激)を利用しながら、単相出力の有効性をも備えた治療を送達する。そうするための一例において、電極を使用して、以下のようなラウンドロビン方式で単相治療を送達してもよい。
【0077】
【0078】
この例では、各出力は単相波形であってもよい。シーケンス中のパルス幅と振幅は、必要に応じて、一定に保ってもよく、又は変化させてもよい。一例において、パルス幅は、各パルスについて0.1~10マイクロ秒の範囲にある。振幅は、電圧又は電流に基づいて決定してもよく、また、たとえば、視覚化又は距離推定を用いて決定して、1センチメートルあたりのボルトで出力を提供してもよい。たとえば、出力振幅は、標的組織300のIRE閾値を超えると同時に、このような距離を考慮に入れて選択されてもよい。一例において、X線撮影又は他の視覚化によって行うことができる計算、又はプローブの展開領域の組織の単位距離あたりのインピーダンスを推定し、電極1と4の間のインピーダンスを測定し、次いで距離を計算することによって決定することができる計算、電極1と4は、2センチメートル離れていると推定してもよい。
【0079】
治療は、上記のチャートを参照して、任意の順序で順次送達されてもよい。すなわち、ABCDEFがその順序であってもよい。いくつかの例において、シーケンスADは、名前を書かなくても本質的に二相出力の形態であり、そのため単相出力と同等に有効でない可能性があり、回避してもよい。いくつかの例において、電極ペアリングの連続又は瞬時の反転を避けるために、直前のパルス送達から、任意の所定のパルス送達に対して少なくとも1つの電極が異なることを要求するルールを設定してもよい。
【0080】
いくつかの例において、完了したシーケンスは、以下の2つのルールのそれぞれを満たす時間間隔(単数又は複数)内に完了するパルス列として送達される。
‐電荷平衡ルール:以下の範囲内の電荷平衡又は電荷平衡の近似を与えることによってパルス列が完了する。
○組織型及び水分含有量などの因子に依存する場合がある、周辺組織の時定数よりも小さい時間間隔。周辺組織の時定数は、電界内の組織及び細胞の複素インピーダンスを反映する。たとえば、2つの電極間の組織の時定数は、その複素インピーダンスによって決定される。簡略化したモデルでは、時定数は、2つの電極間で生成される電界内の、細胞を含む組織の抵抗を掛けた静電容量になる。すでに分極化されている細胞又は組織は、より大きい又はより小さい有効時定数を有していてもよい。
○約1ミリ秒未満の時間間隔
○患者を試験することによって決定された、患者が許容できる最大時間間隔。たとえば、患者を試験するために、治療出力は、ある時間間隔によって分離された第1部分及び第2部分を含んでもよく、第1部分と第2部分を分離する間隔は、筋収縮が認められるまで、患者が収縮又は張力を感じることを報告するまで、又は患者によって不快感が示されるまで延ばすことができ、治療の第1部分は、電荷の不均衡をもたらす第1単相パルス(単数又は複数)であり、治療の第2部分は、電荷の不均衡を取り除くように構成されている。たとえば、二相出力は、位相間の時間(
図8、188)を個々のパルス幅の倍数まで制御し広げることによって、たとえば数十マイクロ秒又は数百マイクロ秒、又はさらに患者が許容できる数ミリ秒まで分離され、なお以下に示す治療完了ルールの範囲内にとどまる、5マイクロ秒パルスを用いて、2つの部分に分離してもよい。
‐治療完了ルール:パルス列は、患者の心調律などの非治療因子の観察によって決定される生理学的ウィンドウ内で送達される。
【0081】
治療完了ルールに関しては、心臓をドライバーとして、心調律は、R波、QRS群、P波及びT波として一般に公知の様々な構成要素を含む。切除目的での非心臓組織の刺激は、心調律の妨げになるべきではなく、心臓は、R波ピーク(又はQRS群の終点)とT波との間の間隔では電気信号の干渉の影響を受けにくい可能性がある。この間隔は、ST間隔(S波はQRS群の終点となる)と呼ばれることもある。特定の患者のST間隔は数十ミリ秒持続する可能性があり、5~100ミリ秒の範囲である可能性がある。おおよそ60ミリ秒が健常者に一般的であるが、本明細書で説明した治療は必ずしも健康な人や一般的な人を対象とするものではないため、ST間隔は「一般的」でない可能性がある。一例において、R波が感知されると、治療バーストは、R波検出又はR波ピークから約50ミリ秒の遅延の後に送達される。いずれにしても、いくつかの例において、治療はST間隔ウィンドウ内で開始され、完了される。ST間隔又は他の生理学的に有用なウィンドウの同定に有用な心臓信号は、別の機器(外部又は埋め込み型の)から得られてもよく、又は患者の内部もしくは表面に配置された電極から心臓信号を受信するための入力を有する治療発生装置によって感知されてもよい。他の情報源は、ドライバーであってもよい。たとえば、横隔膜運動の検出は、患者がいつ吸気又は呼気したかに関する治療の送達の時間を設定するのに役立つ可能性がある。
【0082】
他の例において、これらのタイミングルールの一方、他方又は両方を省いてもよい。いくつかの例において、パルス列が1ミリ秒又は800マイクロ秒又は500マイクロ秒以内に平衡電荷状態に戻らなければならないというルールを設定することなどによってウィンドウを近似してもよい。
【0083】
他の例において、複数の電極をカソードとして一緒にまとめることができる。
【0084】
【0085】
さらにもう1つの例において、複数の電極をアノードとして一緒にまとめてもよい。
【0086】
【0087】
アノードとカソードの両方とも一緒にまとめることができる。
【0088】
【0089】
このような様々なペアリングを使用してもよい。上記で述べたように、治療はルールセットに従って送達することができる。治療を送達するための装置は、必要に応じて、格納された命令セット又はハードワイヤリングにこのようなルールセットを組み込んでもよい。
【0090】
上記を考慮すれば、例示的な例は、パルス列内の電極の選択された対又は群間で複数の単相出力を送達することを含む治療送達法の形態を取る。さらに、治療送達及びパルス列は、パルス列内の連続する各パルスが、直前のパルスとは異なる少なくとも1つの電極を使用することを要求する第1ルールを用いて送達されてもよい(以前用いられた電極を省くか、1つの電極を追加するか、又は1つ以上の電極を1つ以上の他の電極と交換するかのいずれかで)。第2ルールは、周辺組織の時定数未満又は1ミリ秒未満などの事前設定された時間間隔内でパルス列が送達されることを要求する。第3ルールは、指定された生理学的ウィンドウ内でパルス列が送達されることを要求する。ここで、この生理学的ウィンドウは、心臓が電気的干渉に不応性であるか、又は少なくとも比較的影響を受けにくい心周期内の時間に該当する。他の例示的な例は、第1、第2及び第3ルールを実行形式で保存するか、又は組み込むように構成されている、上記の
図9に示されているような信号発生器の形態を取ってもよい。これらの例示的な例のそれぞれについて、出力治療パルスは、たとえば、パルスあたり約0.1~10マイクロ秒の範囲であってもよく、パルス列は任意の適切な長さ、たとえば約4~約100パルスであってもよく、パルス列は繰り返されてもよい。
【0091】
いくつかの例において、様々な電極を用いて治療が送達されるとき、各電極に出入りする出力電流を追跡してもよい。パルス列又は一連のパルス列の終わりに、各電極を流れる電流の合計を決定してもよく、任意の1つの電極界面で任意の蓄積電荷を相殺すると考えられる所定量の電流又は電圧を送達することによる1つ以上の補正出力が生成されてもよい。様々な例示的な実施例は、送達される電荷を監視し、次いで「補正」パルスを提供して電極表面上のいずれか1つ以上の任意の蓄積電荷を打ち消すという組み合わせを含んでもよい。補正パルスは、特に、電流制御出力ではなく、電圧制御出力が用いられる場合に役立つ可能性がある。
【0092】
図11は他の例を示す。ここでは、不規則な形状の標的組織320の周りに電極のアレイが示されている。この例において、電極は、互いに、又は標的組織320から、すべて等距離にあるわけではない。距離/スペースのこのような変化を考慮に入れるために、治療出力が送達される前に、追加的な一連の計算を行ってもよい。可視化ツールを用いるか、又は組織インピーダンスに依拠して、治療に使用する様々な電極対間の距離を計算してもよい。その場合、治療シーケンスは次のとおりである。
【0093】
【0094】
ここで、V1は、それを送達するために使用される電極(1,4)の対を考慮して、標的組織320のIRE閾値を超えるように選択された電圧である。したがって、たとえば、電極1と4が3cm離れ、電極3と6が2cm離れている場合、V1は電圧V3の約1.5倍として選択される可能性がある。大まかに700v/cmというIREの要件を用いれば、V1は2100ボルトになり、V3は1400ボルトになる可能性がある。上記の、一緒にまとめた電極も、必要に応じて用いることができる。
【0095】
示されたパルス列内で、必要に応じてV1とV1*とは同じであってもよい。あるいは、ステップA中に、インピーダンス又は他の因子を監視することによって、ステップDで、たとえば、インピーダンスが高すぎる場合には電圧を上げ、インピーダンスが低すぎる場合には電圧を下げる変更を通知してもよい。しかしながら、一般に、1つのパルス列内では、アスタリスクの付いた電圧は、以前の送達と同じになる可能性が高い。
【0096】
ABCDEFのパルス列については、治療が送達されるときに、一連の測定インピーダンスを生成することができる。複数のパルス列が送達されるとき、治療が機能していると想定して、細胞が破裂し、細胞膜に形成された開口部を通じて流体が排出され、それによって一般にインピーダンスが低下するため、測定インピーダンスが変化する可能性がある。インピーダンスが低下するとき、電流が上昇して熱効果が大きくなることがさらに懸念される可能性がある。したがって、いくつかの例において、各パルス列が完了したとき、それに続くパルス列を送達する前に、インピーダンスをチェックし、出力電圧を下げて、熱効果を回避又は制限してもよい。
【0097】
図10~
図11で示されている例は、基本的に電極対を使用して電荷平衡を生じるための整合出力を提供するが、代わりに他のアプローチを使用してもよい。
図12は、以下のようなステップA、B、C及びDによる例を示す。
【0098】
【0099】
このパルス列において、治療送達に用いられる各電極は、少なくとも1回はアノードとして、また少なくとも1回はカソードとして用いられる。各パルスは単相であってもよく、したがってステップA~Dの治療パルスのいずれも個々には電荷平衡をもたらさないが、パルス列全体で電荷平衡をもたらす。いくつかの例において、一般に、V1~V4のそれぞれは同じであってもよい。
【0100】
このアプローチのために、V1~V4がすべて同じ場合は、各ステップで電流の流れを監視し、完了時に1つ以上の補正出力を使用することが役に立つ可能性がある。たとえば、電極の間隔は均一ではない可能性があり、そのためあるステップでは他のステップよりも電流が多く流れ、1つ以上の電極界面で電荷の不均衡が残る場合がある。いくつかの例において、各電極が、一般にバランスのとれた方法で使用される限り、これで十分な可能性がある。他の例において、監視は、電極の電荷不均衡が閾値を超えると決定するなど、電荷平衡閾値に関して行ってもよく、補正パルス(単数又は複数)が生成されてもよい。
【0101】
他の例において、V1~V4は、インピーダンスを考慮に入れて変更してもよい。インピーダンスは、先行するパルス列で、又は治療目的で使用されるよりも低い出力電圧で予備試験することによって、パルス列が送達される前に測定することができる。各出力対のインピーダンス(すなわち、ステップAでは1~2で、ステップBでは2~3で、など)を知ることによって、一連のインピーダンスI(1,2)、I(2,3)、I(3.4)、I(4,1)が得られ、次のように行ってV1~V4を算出してもよい。
V1=Vn×I(1,2)/In
V2=Vn×I(2,3)/In
V3=Vn×I(3,4)/In
V4=Vn×I(4,1)/In
式中、Vnは公称電圧であり、Inは公称インピーダンスである。Inは、4つのインピーダンスI(1,2)、I(2,3)、I(3.4)、I(4,1)のセットの平均インピーダンスにすることもできる。少なくとも一次近似で、このアプローチは各ステップにおける電流の流れを均等化する。他の例において、印加電圧を変更するのではなく、可変抵抗を電流流路に切り替えるか、又は電流流路から切り替えて、各ステップにおいて治療出力から見たインピーダンスを同じにすることができる。
【0102】
いくつかの例において、補正修正は、インピーダンス又は距離を算出することによって残留電荷を減少させる保護的アプローチとして、パルス列内のパルスごとに振幅ではなくパルス幅を変更することであってもよい。たとえば:
【0103】
【0104】
ここで、たとえば、電極1と2の間のインピーダンスが電極3と4の間のインピーダンスよりも低いためにステップAが他のステップよりも高い電流の流れを有する場合、PW1を短くして各ステップの電流の流れを等しくしてもよい。各ステップで送達される電荷は次のとおりである。
Q1=V1×PW1/I(1,2)
Q2=V1×PW2/I(2,3)
Q3=V1×PW3/I(3,4)
Q4=V1×PW4/I(4,1)
等化計算を行い、得られたパルス幅を治療送達に用いてもよい。たとえば、PWnを公称パルス幅とし(これはユーザが入力してもよいし、システムデフォルトにしてもよい)、Inを公称インピーダンスとして、以下を用いてパルス幅を調整してもよい。
PW1=PWT×I(1,2)/In
PW2=PWT×I(2,3)/In
PW3=PWT×I(3,4)/In
PW4=PWT×I(4,1)/In
したがって、これらの式において、インピーダンスが高いほどパルス幅が長くなり、その特定の治療送達ベクターに関連する電流を低下させる原因となる。公称インピーダンスInではなく、上記式は、インピーダンスI(1,2)、I(2,3)、I(3,4)、I(4,1)のセットの平均インピーダンスを使用してもよい。求めるパルス幅は、たとえば、計算が、公称値に対して一定の量又は百分率以内のパルス幅に調節することを要求することによる、たとえば数マイクロ秒又は20~30パーセント以下の調整を可能にすることによる、特定の境界条件に制限してもよい。たとえば、10マイクロ秒の公称パルス幅を用いる場合、最大調整パルス幅は12マイクロ秒であり、最小は8マイクロ秒(プラス/マイナス2マイクロ秒、又はプラスマイナス20%)であってもよい。いくつかの例において、変更制限は公称値の25%、最大2マイクロ秒であってもよい。
【0105】
さらに別の例において、一般的アプローチ又はデフォルトアプローチは、各ステップで等しい電圧を提供して、出力を単純化することであってもよい。患者に筋肉刺激が発生していることが認められた場合はインピーダンスを計算して、電圧を変更するか、又はパルス幅(単数又は複数)を変更するか、又は治療経路の抵抗を追加もしくは削除するなどの補正機能を作動させてもよい。同様に、パルス列又は一連のパルス列の最後にパルスを追加して残留電荷を除去することによって、補正機能を印加してもよい。しかしながら、パルス列の最後にこのような機能を送達することは、患者に埋め込まれたままではない切除療法の状況では有用性が低い可能性がある。筋肉刺激の短期間の影響は、電極/組織の境界面の分解を導く長期不均衡を、回避するというよりも、追跡する因子である。代わりに、治療送達中に電荷平衡を監視し、電荷の不均衡閾値が計算又は検出されたときに補正出力を出すことによって補正出力を決定してもよい。
【0106】
図13は他の例を示す。今回は、電極を4段階の治療出力にグループ化する。
【0107】
【0108】
同様に、電圧V1~V4は、各ステップで等しくてもよく、又は上記の
図12に関して説明した方法と原理を用いて異なるものにしてもよい。また、印加されるパルス幅は、上記のように修正してもよい。
【0109】
図14は、交互の電極の対が、交互にアノードとカソードになっているさらに他の例を示す。ここでは、電極1と3は1つの群であり、電極2,4は他の群である。治療アプローチ又はパターンは、アノード/カソードとしての2つの群の間で交互に行われる。この例は、各群の極性を完全に逆転させるという点でいくつかの以前の例とは異なる。その切り替えが迅速に行われる場合、出力は実質的に二相治療になる。そのため、このシステムは、1つ以上の追加の制約を加える。例示的な例において、ステップAとBの間で瞬時又はほぼ瞬時の極性切り替えが行われる二相アプローチではなく、下記のパターンを使用してもよい。
【0110】
【0111】
ここで、T1はPW1以上であり、T2はPW2以上である。この例において、PW1及びPW2又はPW1もしくはPW2は、0.1~10マイクロ秒の範囲であってもよく、それより長いか又は短い範囲であってもよい。電極1、2、3及び4への接続を開放するのではなく、チャートに示すように、システムは、それぞれを基準電圧に接地又は接続してもよい。
【0112】
上記の例において、いくつかの実施態様において、アノードとして識別される電極を、接地に対して負電圧を印可するために使用してもよく、一方、正電圧はカソードによって印加される。他の例において、アノードは単に接地されているか、又はシステムの基準電極である。
【0113】
図15は他の例を示す。ここでは、出力のセットは、単一のカソードを使用し、他の電極はアノードとして機能する。
【0114】
【0115】
再度、電流の流れは、出力電極の全部又は一部を介して監視してもよく、また所望の程度の電荷平衡を維持するために、電圧レベル及びパルス幅のうちの少なくともいずれか一方の管理又は補正パルスの印加を使用してもよい。
【0116】
これらの限定されない例のそれぞれは、単独で通用することもできるが、他の例の1つ以上と様々な順列又は組み合わせで組み合わせることもできる。
上記の詳細な説明には、発明の詳細な説明の一部を構成する添付図面への参照が含まれている。図面は、本発明を実施することができる特定の実施形態を例示として示している。これらの実施形態は、本明細書では「実施例」とも呼ぶ。このような例は、図示又は記載されているものに加えて要素を含むことができる。しかしながら、本発明者らは、図示又は記載されている要素のみが提供される例も企図する。さらに、本発明者らは、特定の例(又はその1つ以上の態様)に関して、又は本明細書に図示又は記載されている他の例(又はその1つ以上の態様)に関して、図示又は記載されているこれらの要素(又はその1つ以上の態様)の任意の組み合わせ又は順列を用いる例も企図する。
【0117】
本文書と、参照によって組み込まれる任意の文書との間に矛盾した用法が用いられている場合、本文書の用法が優先する。
本文書において、特許文献では一般的であるように、用語「a」又は「an」は、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」という任意の他の例又は使用に依存せず、1つ又は1つ以上を含むために使用される。さらに、下記の請求項において、用語「第1」、「第2」及び「第3」などは、単に符号として使用され、それらの対象に数値要件を課すものではない。
【0118】
本明細書に記載の方法の例は、少なくとも一部分において機械又はコンピュータに実装可能である。いくつかの例は、上記の例で説明された方法を実行する電子機器を構成するように動作可能な命令で符号化された、コンピュータ可読媒体又は機械可読媒体を含むことができる。このような方法の実施態様は、たとえばマイクロコード、アセンブリ言語コード、高級言語コードなどのコードを含むことができる。このようなコードは、様々な方法を実行するためのコンピュータ可読命令を含むことができる。コードは、コンピュータプログラム製品の一部を形成してもよい。さらに、一例において、コードは、実行中又は他の時間などに、1つ以上の揮発性、非一次的、又は不揮発性の有形のコンピュータ可読媒体に有形に格納することができる。これらの有形のコンピュータ可読媒体の例は、限定するものではないが、ハードディスク、取り外し可能な磁気又は光ディスク、磁気カセット、メモリカード又はスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などを含むことができる。
【0119】
上記の説明は、例示を目的としたものであり、限定を目的としたものではない。たとえば、上記の例(又はその1つ以上の態様)は、互いに組み合わせて使用してもよい。たとえば、当業者は、上記の説明を精査することによって、他の実施形態を使用することができる。
【0120】
要約は、読者が、技術的開示の性質を素早く確認できるように、37C.F.R.§1.72(b)に準拠して提供されている。要約は、請求項の範囲又は意味を解釈又は制限するために使用されないという理解のもとに提出されている。
【0121】
また、上記「発明を実施するための形態」において、様々な特徴をまとめて、本開示を簡素化してもよい。これは、請求されていない開示された特徴が、請求に不可欠であることを意図すると解釈されるべきではない。むしろ、発明の主題は、開示されている特定の実施形態の全部の特徴にあるとは限らないことがある。したがって、以下の請求項は、本明細書において実施例又は実施形態として「発明を実施するための形態」に組み込まれ、各請求項は、個別の実施形態として独立しており、そのような実施形態は、さまざまな組み合わせ又は入れ替えにおいて互いに組み合わされうると想定される。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照して、そのような請求項に権利が認められる均等物の全範囲とともに判断されるべきである。