(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】車体後部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20231214BHJP
【FI】
B62D25/08 L
(21)【出願番号】P 2022012364
(22)【出願日】2022-01-28
【審査請求日】2022-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】千野 峻吾
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-30448(JP,A)
【文献】再公表特許第2013/018415(JP,A1)
【文献】特開2007-296917(JP,A)
【文献】中国実用新案第210364060(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネルと、
前記フロアパネルの車幅方向端部側において車体前後方向に延設されており、上部に開口部を有するリアフレームと、
前記リアフレームの車幅方向外部から上方に延設されるリアホイルハウスと、
前記リアホイルハウスの下部の車幅方向内側において、前記フロアパネル上で車幅方向に延設されるリアクロスメンバと、
前記リアホイルハウスに沿って上下方向に延設されるホイルハウス補強部材と、
車体前後方向に延設されており、前記開口部を覆うアッパスティフナと、
を備え、
前記アッパスティフナは、前後方向に分割された前部スティフナ及び後部スティフナを備え、
前記ホイルハウス補強部材の下部は、前記アッパスティフナ及び前記リアクロスメンバに結合されており、
前記前部スティフナ及び前記後部スティフナの結合部は、前記アッパスティフナ及び前記ホイルハウス補強部材の結合部と前後方向にオフセットしている
ことを特徴とする車体後部構造。
【請求項2】
前記前部スティフナ及び前記後部スティフナの結合部は、前記前部スティフナ及び前記後部スティフナが重ね合わせられており、車体前後方向に2か所の結合箇所が配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の車体後部構造。
【請求項3】
前記前部スティフナ及び前記リアホイルハウスに架設されるガセットを備え、
前記ホイルハウス補強部材は、前記後部スティフナに結合されており、
前方から後方にかけて、前記ガセット及び前記前部スティフナの結合部、前記前部スティフナ及び前記後部スティフナの結合部、前記後部スティフナ及び前記ホイルハウス補強部材の結合部の順に設けられている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車体後部構造。
【請求項4】
前記前部スティフナは、前記後部スティフナよりも高強度に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の車体後部構造。
【請求項5】
前記ホイルハウス補強部材は、
前記リアホイルハウスの側部に設けられるホイルハウス側部補強部材と、
前記ホイルハウス側部補強部材及び前記リアクロスメンバを繋ぐとともに、前記アッパスティフナに連結される連結部材と、
を備え、
前記連結部材は、当該連結部材の車体前部を構成する前部連結部材と、当該連結部材の車体後部を構成する後部連結部材と、によって構成されており、
前記前部連結部材は、前記後部連結部材よりも高強度に形成されている
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の車体後部構造。
【請求項6】
前記フロアパネル及び前記リアクロスメンバによって構成される閉断面と、前記ホイルハウス補強部材、前記アッパスティフナ及び前記リアホイルハウスによって構成される閉断面とは、連続した閉断面を構成する
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の車体後部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の車体後部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然災害を抑制すべく地球環境の改善の観点から、自動車の燃費改善が要求されている。その一方で、車両の衝突安全性の維持又は向上が要求されている。これらの要求を満足するために、高強度かつ軽量な車体後部構造の開発が進められている。
【0003】
特許文献1には、リアホイルハウスの車幅方向内面にブレース材を設け、リアホイルハウス及びブレース材によって閉断面骨格を構成する構造が記載されている。かかる構造において、ブレース材の下端部は、リアサイドフレームの上壁部に結合されている。
【0004】
また、特許文献2には、車体前後方向に延設されるリアサイドフレームの上壁部を前後に2分割する構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-196109号公報
【文献】特開2006-218951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の構造を組み合わせた場合には、ブレース材及びリアサイドフレームの上壁部の結合部と、リアサイドフレームの2分割部材の結合部とが、同じ位置に設けられることとなり、応力が局所的に集中しやすい場所が発生する。そのため、かかる部位の補強が必要となり、重量増加に繋がる。
【0007】
本発明は、前記の点に鑑みてなされたものであり、耐衝突性能を向上するとともに軽量化を実現することが可能な車体後部構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するために、本発明の車体後部構造は、フロアパネルと、前記フロアパネルの車幅方向端部側において車体前後方向に延設されており、上部に開口部を有するリアフレームと、前記リアフレームの車幅方向外部から上方に延設されるリアホイルハウスと、前記リアホイルハウスの下部の車幅方向内側において、前記フロアパネル上で車幅方向に延設されるリアクロスメンバと、前記リアホイルハウスに沿って上下方向に延設されるホイルハウス補強部材と、車体前後方向に延設されており、前記開口部を覆うアッパスティフナと、を備え、前記アッパスティフナは、前後方向に分割された前部スティフナ及び後部スティフナを備え、前記ホイルハウス補強部材の下部は、前記アッパスティフナ及び前記リアクロスメンバに結合されており、前記前部スティフナ及び前記後部スティフナの結合部は、前記アッパスティフナ及び前記ホイルハウス補強部材の結合部と前後方向にオフセットしていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、耐衝突性能を向上するとともに軽量化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る車体後部構造を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、本発明の車体後部構造を車両の左部に適用した場合を例にとり、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、参照図面において、「前後」は、車両の進行方向における前後方向すなわち車体前後方向を示し、「左右」は、運転席から見た左右方向(車幅方向)をそれぞれ示している。
【0012】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る車体後部構造1は、車体を構成する金属製の骨格部材として、フロアパネル2と、サイドシル3と、リアフレーム30(
図3及び
図4参照)と、アッパスティフナ4と、リアクロスメンバ60と、を備える。リアフレーム30は、車体前後方向に延設される矩形閉断面形状のフレーム(リアフレーム)の下部を構成する部材(リアフレームロア)であり、アッパスティフナ4は、矩形閉断面のフレームの上部を構成する部材(リアフレームアッパ)である。また、車体後部構造1は、車体を構成する金属製の骨格部材として、内部にダンパベース5(
図5参照)が設けられたリアホイルハウス70を備える。
【0013】
また、車体後部構造1は、車体を構成する金属製の骨格部材として、ホイルハウス上部補強部材80と、ホイルハウス側部補強部材90と、連結部材6と、ガセット7と、ピラー8と、を備える。ホイルハウス上部補強部材80、ホイルハウス側部補強部材90及び連結部材6は、互いに連結されており、リアホイルハウス70を補強するホイルハウス補強部材を構成する。
【0014】
<フロアパネル>
フロアパネル2は、車体の床面を構成する板状部材である。フロアパネル2は、左右一対のサイドシル3,3間、左右一対のリアフレーム30,30及びアッパスティフナ4,4間に架け渡されている。
【0015】
<サイドシル>
サイドシル3は、車体の車幅方向端部かつ前後方向中間部において、前後方向に延設される矩形閉断面部材である。
図2に示すように、サイドシル3は、当該サイドシル3の車幅方向内部を構成するサイドシルインナ20と、当該サイドシル3の車幅方向外部を構成するサイドシルアウタ(図示せず)と、を組み合わせることによって形成されている。
【0016】
≪サイドシルインナ≫
サイドシルインナ20は、内壁部21と、内壁部21の下端部から車幅方向外方に延設される下壁部22と、下壁部22の車幅方向外端部から下方に延設される下フランジ部23と、を一体に備える。また、サイドシルインナ20は、内壁部21の上端部から車幅方向外方に延設される上壁部24と、上壁部24の車幅方向外端部から上方に延設される上フランジ部25と、を一体に備える。
【0017】
内壁部21の前部は、フロアパネル2の車幅方向端部から上方に延設されるフランジ部と溶接等によって接合されている。内壁部21の後部は、後記するリアフレーム30の前部の外壁部34と溶接等によって接合されている。かかる部位において、サイドシル3の矩形閉断面と、リアフレーム30及びアッパスティフナ4によって構成される矩形閉断面とは、車幅方向に並んでいる。下フランジ部23及び上フランジ部25は、図示しないサイドシルアウタと溶接等によって接合されている。
【0018】
<リアフレーム>
図3及び
図4に示すように、リアフレーム(リアフレームロア)30は、車体の車幅方向端部かつ後部において、前後方向に延設される略ハット形状部材である。リアフレーム30は、上部に開口部を有する形状を呈する。リアフレーム30は、下壁部31と、下壁部31の車幅方向内端部から上方に延設される内壁部32と、内壁部32の上端部から車幅方向内方に延設されるフランジ部33と、を一体に備える。またリアフレーム30は、下壁部31の車幅方向外端部から上方に延設される外壁部34を一体に備える。
【0019】
フランジ部33は、フロアパネル2の車幅方向端部の下側に重ねられており、フロアパネル2と溶接等によって接合されている。外壁部34の前部は、サイドシルインナ20の内壁部21の車幅方向内側に重ねられており、内壁部21と溶接用によって接合されている。外壁部34の後部の上端部は、後記するリアホイルハウス70の側壁部71の車幅方向内側に重ねられており、側壁部71と溶接等によって接合されている。また、外壁部34の後部の上端部は、後記するアッパスティフナ4の外フランジ部の車幅方向外側に重ねられており、外フランジ部と溶接等によって接合されている。
【0020】
<アッパスティフナ>
図1に示すように、アッパスティフナ(リアフレームアッパ)4は、車体の車幅方向端部かつ後部において、前後方向に延設される板状部材である。アッパスティフナ4は、リアフレーム30(
図3及び
図4参照)の開口部を覆うように設けられており、リアフレーム30と協働して矩形閉断面を構成する。アッパスティフナ4は、当該アッパスティフナ4の前部を構成する前部スティフナ40と、当該アッパスティフナ4の後部を構成する後部スティフナ50と、を備える。前部スティフナ40は、後部スティフナ50よりも高強度に形成されている。かかる構造は、前部スティフナ40及び後部スティフナ50の材料、厚み、形状等によって設定される。
【0021】
≪前部スティフナ≫
前部スティフナ40の前部は、サイドシル3の車幅方向内側に設けられており、前部スティフナ40の後部は、リアホイルハウス70の下端部の車幅方向内側に設けられている。
図3に示すように、前部スティフナ40は、上壁部41と、上壁部41の車幅方向内端部から下方に延設される内壁部42と、内壁部42の下端部から車幅方向内方に延設される内フランジ部43と、を一体に備える。また、前部スティフナ40は、上壁部41の車幅方向外端部から上方に延設される外フランジ部44と、前部スティフナ40の前部において、外フランジ部44の上端部から車幅方向外方に延設される外フランジ屈曲部45(
図1参照)と、を一体に備える。
【0022】
前部スティフナ40は、前方にいくにしたがって高さが低くなる形状を呈する。すなわち、前部スティフナ40の前端部において、内壁部42及び外フランジ部44は消失しており、上壁部41、内フランジ部43及び外フランジ屈曲部45は、略同じ高さとなっている。
【0023】
内フランジ部43は、フロアパネル2の車幅方向端部の上側に重ねられており、フロアパネル2と溶接等によって接合されている。外フランジ部44の後部は、リアホイルハウス70の側壁部71の車幅方向内側に重ねられており、側壁部71と溶接等によって接合されている。外フランジ屈曲部45は、サイドシルインナ20の上壁部24の上側に重ねられており、上壁部24と溶接等によって接合されている。なお、
図3に示す断面は、前部スティフナ40及び後部スティフナ50が重ねられて結合される部位であるため、後部スティフナ50が前部スティフナ40の下側に設けられている。
【0024】
≪後部スティフナ≫
図1に示すように、後部スティフナ50は、リアホイルハウス70の側壁部71の下端部の車幅方向内側に設けられている。
図4に示すように、後部スティフナ50は、上壁部51と、上壁部51の車幅方向内端部から下方に延設される内壁部52と、内壁部52の下端部から車幅方向内方に延設される内フランジ部53と、を一体に備える。また、後部スティフナ50は、上壁部51の車幅方向外端部から上方に延設される外フランジ部54を一体に備える。
【0025】
内フランジ部53は、フロアパネル2の車幅方向端部の上側に重ねられており、フロアパネル2と溶接等によって接合されている。外フランジ部54は、リアフレーム30の外壁部34における上端部の車幅方向内側に重ねられており、外壁部34と溶接等によって接合されている。
【0026】
<リアクロスメンバ>
図1に示すように、リアクロスメンバ60は、フロアパネル2上において、車幅方向に延設される略ハット形状部材である。リアクロスメンバ60は、下部に開口部を有する形状を呈する。リアクロスメンバ60は、フロアパネル2と協働して矩形閉断面を構成する。リアクロスメンバ60は、上壁部61と、上壁部61の前端部から下方に延設される前壁部62と、前壁部62の下端部から前方に延設される前フランジ部63と、を一体に備える。また、リアクロスメンバ60は、上壁部61の後端部から下方に延設される後壁部64と、後壁部64の下端部から後方に延設される後フランジ部65と、を一体に備える。
【0027】
前フランジ部63及び後フランジ部65は、フロアパネル2の上側に重ねられており、フロアパネル2と溶接等によって接合されている。
【0028】
<リアホイルハウス>
リアホイルハウス70は、図示しない後輪が収容される部材である。リアホイルハウス70は、側面視で上に凸の略円板形状を呈する側壁部71と、側壁部71の円弧形状端部から車幅方向外方に延設される側面視円弧形状の周壁部72と、周壁部72の径方向外端部から径方向外方に延設されるフランジ部73と、を一体に備える。
【0029】
図3に示すように、側壁部71の下端部の前部は、前部スティフナ40の外フランジ部44における後部の車幅方向外側に重ねられており、外フランジ部44と溶接等によって接合されている。
図4に示すように、側壁部71の下端部の後部は、後部スティフナ50の外フランジ部54の車幅方向外側に重ねられており、外フランジ部54と溶接等によって接合されている。
【0030】
<ダンパベース>
図5に示すように、ダンパベース5は、リアホイルハウス70の側壁部71及び周壁部72によって構成される空間内に設けられており、当該空間内において車輪を懸架するサスペンションダンパ(図示せず)の上端部を支持する湾曲板状部材である。ダンパベース5は、リアホイルハウス70の周壁部72の上端部の下面及び側壁部71の車幅方向外面と溶接等によって接合されている。
【0031】
<ホイルハウス上部補強部材>
図1に示すように、ホイルハウス上部補強部材80は、リアホイルハウス70の上部(周壁部72)と協働して矩形閉断面を構成することによって、リアホイルハウス70の上部を補強する部材である。ホイルハウス上部補強部材80は、上壁部81と、上壁部81の前端部から下方に延設される前壁部82と、前壁部82の下端部から前方に延設される前フランジ部83と、を一体に備える。また、ホイルハウス上部補強部材80は、上壁部81の後端部から下方に延設される後壁部84と、後壁部84の下端部から後方に延設される後フランジ部85と、を一体に備える。
【0032】
前フランジ部83及び後フランジ部85は、周壁部72の上側に重ねられており、周壁部72と溶接等によって接合されている。
【0033】
<ホイルハウス側部補強部材>
ホイルハウス側部補強部材90は、リアホイルハウス70の側壁部71と協働して矩形閉断面を構成することによって、リアホイルハウス70の側部を補強する部材である。
図5に示すように、ホイルハウス側部補強部材90は、内壁部91と、内壁部91の前端部から車幅方向外方に延設される前壁部92と、前壁部92の車幅方向外端部から前方に延設される前フランジ部93と、を一体に備える。また、ホイルハウス側部補強部材90は、内壁部91の後端部から車幅方向外方に延設される後壁部94と、後壁部94の車幅方向外端部から後方に延設される後フランジ部95と、を一体に備える。
【0034】
前フランジ部93及び後フランジ部95は、側壁部71の車幅方向内側に重ねられており、側壁部71と溶接等によって接合されている。
【0035】
<連結部材>
図1に示すように、連結部材6は、リアクロスメンバ60の車幅方向端部とホイルハウス側部補強部材90の下端部とを連結する部材である。連結部材6は、当該連結部材6の前部を構成する前部連結部材100と、当該連結部材6の後部を構成する後部連結部材110と、を備える。前部連結部材100は、後部連結部材110よりも高強度に形成されている。かかる構造は、前部連結部材100及び後部連結部材110の材料、厚み、形状等によって設定される。
【0036】
≪前部連結部材≫
図6及び
図7に示すように、前部連結部材100は、上内壁部101と、上内壁部101の前端部から下方及び車幅方向外方に延設される前壁部102と、前壁部102の車幅方向内部における下端部及び車幅方向外端部から前方に延設される第一のフランジ部103と、を一体に備える。また、前部連結部材100は、前壁部102の車幅方向外部における下端部から前方に延設される第二のフランジ部104と、前壁部102の車幅方向外端部から前方に延設される第三のフランジ部105と、を一体に備える。
【0037】
第一のフランジ部103は、フロアパネル2並びに後部スティフナ50の内フランジ部53の上側及び内壁部52の車幅方向内側に重ねられており、フロアパネル2、内フランジ部53及び内壁部52と溶接等によって接合されている。第二のフランジ部104は、後部スティフナ50の上壁部51の上側に重ねられており、上壁部51と溶接等によって接合されている。第三のフランジ部105は、リアホイルハウス70の側壁部71の車幅方向内側に重ねられており、側壁部71と溶接等によって接合されている。
【0038】
≪後部連結部材≫
後部連結部材110は、上内壁部111と、上内壁部111の後端部から下方及び車幅方向外方に延設される後壁部112と、後壁部112の車幅方向内部における下端部及び車幅方向外端部から前方に延設される第一のフランジ部113と、を一体に備える。また、後部連結部材110は、後壁部112の車幅方向外部における下端部から後方に延設される第二のフランジ部114と、後壁部112の車幅方向外端部から後方に延設される第三のフランジ部115と、を一体に備える。
【0039】
第一のフランジ部113は、フロアパネル2並びに後部スティフナ50の内フランジ部53の上側及び内壁部52の車幅方向内側に重ねられており、フロアパネル2、内フランジ部53及び内壁部52と溶接等によって接合されている。第二のフランジ部114は、後部スティフナ50の上壁部51の上側に重ねられており、上壁部51と溶接等によって接合されている。第三のフランジ部115は、リアホイルハウス70の側壁部71の車幅方向内側に重ねられており、側壁部71と溶接等によって接合されている。
【0040】
また、前部連結部材100の上内壁部101の後端部、及び、後部連結部材110の上内壁部111の前端部は、互いに重ねられて溶接等によって接合されている。かかる重ね合わせ部位は、下方かつ車幅方向内方にいくにつれて後方に向かうように傾斜している。かかる構成によると、連結部材よりも前方における側突による荷重を、リアクロスメンバ60へ好適に伝達することができる。
【0041】
図8に示すように、フロアパネル2及びリアクロスメンバ60によって構成される閉断面X1は、車幅方向に延びている。フロアパネル2、連結部材6、後部スティフナ50及びリアホイルハウス70によって構成される閉断面X2は、車幅方向内部において車幅方向に延びており、車幅方向外部において上下方向に延びている。ホイルハウス側部補強部材90及びリアホイルハウス70によって構成される閉断面X3は、上下方向に延びている。ホイルハウス上部補強部材80及びリアホイルハウス70によって構成される閉断面X4は、車幅方向に延びている。閉断面X1,X2,X3,X4は、直列に繋がっており、連続した閉断面を構成する。
【0042】
すなわち、フロアパネル2、後部スティフナ50の内壁部52及び上壁部51、並びに、リアホイルハウス70の側壁部71及び周壁部72は、直列に繋がっており、連続した閉断面の下壁部及び車幅方向外壁部を構成する。また、リアクロスメンバ60の上壁部61、連結部材6の上内壁部101,111、ホイルハウス側部補強部材90の内壁部91、並びに、ホイルハウス上部補強部材80の上壁部81は、直列に繋がっており、連続した閉断面の上壁部及び車幅方向内壁部を構成する。また、リアクロスメンバ60の前壁部62、連結部材6の前壁部102、ホイルハウス側部補強部材90の前壁部92、及び、ホイルハウス上部補強部材80の前壁部81は、直列に繋がっており、連続した閉断面の前壁部を構成する。また、リアクロスメンバ60の後壁部64、連結部材6の後壁部112、ホイルハウス側部補強部材90の後壁部94、及び、ホイルハウス上部補強部材80の後壁部84は、直列に繋がっており、連続した閉断面の後壁部を構成する。
【0043】
<ガセット>
図9に示すように、ガセット7は、リアホイルハウス70の前部を補強する部材である。ガセット7は、車室において後部座席が設けられる領域であるリアホイルハウス70の前端部側において、側突に対する車体強度を向上する。ガセット7は、当該ガセット7の下部を構成する下部ガセット120と、当該ガセット7の上部を構成する上部ガセット130と、を備える。
【0044】
≪下部ガセット≫
下部ガセット120は、内壁部121と、内壁部121の下端部から車幅方向内方に延設される内フランジ部122と、を一体に備える。また、下部ガセット120は、内壁部121の前端部から車幅方向外方に延設される前壁部123と、前壁部123の下端部及び車幅方向外端部から前方に延設される前フランジ部124と、を一体に備える。また、下部ガセット120は、内壁部121の後端部から車幅方向外方に延設される後壁部125と、後壁部125の下端部及び車幅方向外端部から後方に延設される後フランジ部126と、を一体に備える。
【0045】
内フランジ部122は、前部スティフナ40の上壁部41の上側に重ねられており、上壁部41と溶接等によって接合されている。前フランジ部124は、前部スティフナ40の上壁部41の上側及びリアホイルハウス70のフランジ部73の車幅方向内側に重ねられており、上壁部41及びフランジ部73のそれぞれと溶接等によって接合されている。後フランジ部126は、前部スティフナ40の上壁部41の上側及びリアホイルハウス70の側壁部71の車幅方向内側に重ねられており、上壁部41及び側壁部71のそれぞれと溶接等によって接合されている。
【0046】
≪上部ガセット≫
上部ガセット130は、内壁部131と、内壁部131の上端部から上方に延設される上フランジ部132と、を一体に備える。また、上部ガセット130は、内壁部131の前端部から車幅方向外方に延設される前壁部133と、前壁部133の下端部及び車幅方向外端部から前方に延設される前フランジ部134と、を一体に備える。また、上部ガセット130は、内壁部131の後端部から車幅方向外方に延設される後壁部135と、後壁部135の下端部及び車幅方向外端部から後方に延設される後フランジ部136と、を一体に備える。
【0047】
上フランジ部132は、リアホイルハウス70のフランジ部73の車幅方向内側に重ねられており、フランジ部73と溶接等によって接合されている。前フランジ部134は、リアホイルハウス70のフランジ部73の車幅方向内側に重ねられており、フランジ部73と溶接等によって接合されている。後フランジ部136は、リアホイルハウス70の側壁部71の車幅方向内側及び周壁部72の前側に重ねられており、側壁部71及び周壁部72のそれぞれと溶接等によって接合されている。
【0048】
図9に示すように、前部スティフナ40の後端部及び後部スティフナ50の前端部は、互いに重ねられており、結合されている(溶接によって接合されている)。かかる重ね合わせ部位において、結合点(溶接による結合点、図におけるX印参照)は、車体前後方向において少なくとも2か所に設定されている。
【0049】
また、前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部(溶接による接合部)は、前方のガセット7と後方の連結部材6との間に設定されている。すなわち、ガセット7及び前部スティフナ40の結合部(溶接による接合部、図におけるX印参照)が最も前方に位置し、その後方に前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部(溶接による接合部)が位置し、さらのその後方に連結部材6及び後部スティフナ50の結合部(溶接による接合部、図におけるX印参照)が位置する。
【0050】
<ピラー>
図1に示すように、ピラー8は、リアホイルハウス70と車体の天井を構成するルーフパネル(図示せず)との間において上下方向に延設される矩形閉断面部材である。ピラー8は、当該ピラー8の車幅方向内部を構成するピラーインナ140と、当該ピラー8の車幅方向外部を構成するピラーアウタ(車体の側面を構成するパネル。図示せず)と、を組み合わせることによって形成されている。
【0051】
≪ピラーインナ≫
ピラーインナ140は、内壁部141と、内壁部141の下端部から車幅方向内方に延設される下フランジ部142と、を一体に備える。また、ピラーインナ140は、内壁部141の前端部から車幅方向外方に延設される前壁部143と、前壁部143の車幅方向外端部から前方に延設される前フランジ部144と、を一体に備える。また、ピラーインナ140は、内壁部141の後端部から車幅方向外方に延設される後壁部145と、後壁部145の車幅方向外端部から後方に延設される後フランジ部146と、を一体に備える。
【0052】
下フランジ部142は、リアホイルハウス70の周壁部72の上側及びホイルハウス上部補強部材80の上壁部81の上側に重ねられており、周壁部72及び上壁部81のそれぞれと溶接等によって接合されている。前フランジ部144は、ピラーアウタの車幅方向内側に重ねられており、ピラーアウタと溶接等によって接合されている。後フランジ部146は、ピラーアウタの車幅方向内側に重ねられており、ピラーアウタと溶接等によって接合されている。
【0053】
<部材同士の結合部の位置関係>
図9に示すように、前部スティフナ40の後端部及び後部スティフナ50の前端部は、互いに重ねられており、結合されている(溶接によって接合されている)。かかる重ね合わせ部位において、結合点(溶接による結合点、図におけるX印参照)は、車体前後方向において少なくとも2か所(車幅方向に配列される前側の1列目と、その後ろで車幅方向に配列される後側の2列目の前後2列)に設定されている。
【0054】
また、前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部(溶接による接合部)は、前方のガセット7と後方の連結部材6との間に設定されている。すなわち、ガセット7及び前部スティフナ40の結合部(溶接による接合部、図におけるX印参照)が最も前方に位置し、その後方に前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部(溶接による接合部)が位置し、さらのその後方に連結部材6及び後部スティフナ50の結合部(溶接による接合部、図におけるX印参照)が位置する。
【0055】
車両の衝突(側突)時において、衝突による荷重は、ホイルハウス補強部材及びリアホイルハウス70によって構成される閉断面構造、並びに、リアフレーム30及びアッパスティフナ4によって構成される閉断面構造に入力される。また、これらの閉断面構造に入力された荷重は、連結部材6を介してリアクロスメンバ60に伝達される。また、車両の衝突(側突)時において、衝突による荷重は、ガセット7及びリアホイルハウス70によって構成される閉断面構造に入力される。かかる閉断面構造に入力された荷重は、アッパスティフナ4及び連結部材6を順次介してリアクロスメンバ60に伝達される。ここで、ガセット7及び前部スティフナ40の結合部位と、前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部位と、連結部材6及び後部スティフナ50の結合部位とは、前後方向にオフセットしている。したがって、車体後部構造1は、これらの結合部位のいずれかが同じ位置に設けられる場合と比較して、衝突時の荷重による応力集中を防止し、耐衝突性能を向上することができる。
【0056】
本発明の実施形態に係る車体後部構造1は、フロアパネル2と、前記フロアパネル2の車幅方向端部側において車体前後方向に延設されており、上部に開口部を有するリアフレーム30と、前記リアフレーム30の車幅方向外部から上方に延設されるリアホイルハウス70と、前記リアホイルハウス70の下部の車幅方向内側において、前記フロアパネル2上で車幅方向に延設されるリアクロスメンバ60と、前記リアホイルハウス70に沿って上下方向に延設されるホイルハウス補強部材と、車体前後方向に延設されており、前記開口部を覆うアッパスティフナ4と、を備え、前記アッパスティフナ4は、前後方向に分割された前部スティフナ40及び後部スティフナ50を備え、前記ホイルハウス補強部材の下部は、前記アッパスティフナ4及び前記リアクロスメンバ60に結合されており、前記前部スティフナ40及び前記後部スティフナ50の結合部は、前記アッパスティフナ4及び前記ホイルハウス補強部材の結合部と前後方向にオフセットしている。
このように、車体後部構造1は、応力が集中しやすい部位である前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部とアッパスティフナ4及びホイルハウス補強部材の結合部とを前後方向にオフセットさせることによって、衝突(側突)時の荷重を分散して受けることができ、これらの結合部の破損を抑制することができる。したがって、車体後部構造1は、耐衝突性能を向上するとともに軽量化を実現することができる。
【0057】
また、車体後部構造1において、前記前部スティフナ40及び前記後部スティフナ50の結合部は、前記前部スティフナ40及び前記後部スティフナ50が重ね合わせられており、車体前後方向に2か所の結合箇所が配置されている。
したがって、車体後部構造1は、前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部の前後方向寸法を大きくして当該結合部の強度を向上することによって、補強部材を追加することなく衝突(側突)時におけるリアフレーム30の変形を抑制するとともに、衝突による荷重をリアクロスメンバ60へ伝達し、当該荷重を広範囲に分散して受けることができる。
【0058】
また、車体後部構造1は、前記前部スティフナ40及び前記リアホイルハウス70に架設されるガセット7を備え、前記ホイルハウス補強部材は、前記後部スティフナ50に結合されており、前方から後方にかけて、前記ガセット7及び前記前部スティフナ40の結合部、前記前部スティフナ40及び前記後部スティフナ50の結合部、前記後部スティフナ50及び前記ホイルハウス補強部材の結合部の順に設けられている。
したがって、車体後部構造1は、応力が集中しやすい部位である前部スティフナ40及びガセット7の結合部を、前部スティフナ40及び後部スティフナ50の結合部並びに後部スティフナ50及びホイルハウス補強部材の結合部と前後方向にオフセットさせることによって、衝突(側突)時の荷重を分散して受けることができ、これらの結合部の破損を抑制することができる。
【0059】
また、車体後部構造1において、前記前部スティフナ40は、前記後部スティフナ50よりも高強度に形成されている。
したがって、車体後部構造1は、後部座席が設けられる区間において高い耐衝突性能を実現するとともに、重量増加を抑制することができる。
【0060】
また、車体後部構造1において、前記ホイルハウス補強部材は、前記リアホイルハウス70の側部に設けられるホイルハウス側部補強部材90と、前記ホイルハウス側部補強部材90及び前記リアクロスメンバ60を繋ぐとともに、前記アッパスティフナ4に連結される連結部材6と、を備え、前記連結部材6は、当該連結部材6の車体前部を構成する前部連結部材100と、当該連結部材6の車体後部を構成する後部連結部材110と、によって構成されており、前記前部連結部材100は、前記後部連結部材110よりも高強度に形成されている。
したがって、車体後部構造1は、連結部材6において後部座席が設けられる区間側のみを高強度化することによって、連結部材6の成形性を確保しつつ、重量増加を抑制することができるとともに、耐衝突性能を向上することができる。
【0061】
また、車体後部構造1において、前記フロアパネル2及び前記リアクロスメンバ60によって構成される閉断面と、前記ホイルハウス補強部材、前記アッパスティフナ4及び前記リアホイルハウス70によって構成される閉断面とは、連続した閉断面を構成する。
したがって、車体後部構造1は、連続した閉断面形状によって車体剛性を向上し、衝突(側突)時の荷重を強固に受けつつ広範囲に分散することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、前後方向にオフセットして配置される各結合部の並び順は、前記したものに限定されない。
【符号の説明】
【0063】
1 車体後部構造
2 フロアパネル
3 サイドシル
4 アッパスティフナ
5 ダンパベース
6 連結部材(ホイルハウス補強部材)
7 ガセット
8 ピラー
20 サイドシルインナ
30 リアフレーム
40 前部スティフナ
50 後部スティフナ
60 リアクロスメンバ
70 リアホイルハウス
80 ホイルハウス上部補強部材(ホイルハウス補強部材)
90 ホイルハウス側部補強部材(ホイルハウス補強部材)
100 前部連結部材(ホイルハウス補強部材)
110 後部連結部材(ホイルハウス補強部材)
120 下部ガセット
130 上部ガセット
140 ピラーインナ