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特許7402912運転支援装置、車両制御システム、運転支援方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】運転支援装置、車両制御システム、運転支援方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20231214BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20231214BHJP
   B60W 40/04 20060101ALI20231214BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20231214BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W50/14
B60W40/04
B60W60/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022044396
(22)【出願日】2022-03-18
(65)【公開番号】P2023137946
(43)【公開日】2023-09-29
【審査請求日】2022-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】岡 敬祐
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 真也
(72)【発明者】
【氏名】石川 峻也
(72)【発明者】
【氏名】北原 陽平
【審査官】藤田 和英
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-126823(JP,A)
【文献】特開2007-210591(JP,A)
【文献】特開2020-097346(JP,A)
【文献】国際公開第2017/154070(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0126917(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ー 60/00
G08G 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が操舵操作子を把持しない第1状態と、運転者が操舵操作子を把持する第2状態とのいずれかで、車両の操舵および加減速を自動的に制御する自動運転制御装置と共に、前記車両に搭載される運転支援装置であって、
前記車両の前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイスの出力を参照し、前記物体のうち対象物体と前記車両との接近度合いが第1条件を満たす場合に、前記車両の制動装置に指示して前記車両を停止させる制動制御部と、
前記対象物体との接触を操舵により回避するように、前記車両の操舵装置に指示する操舵回避制御部と、
を備え、
前記制動制御部は、前記接近度合いが第2条件を満たす場合に、第1予備動作を行う第1予備動作制御部を含み、
前記接近度合いが第3条件を満たし、且つ、前記第3条件が満たされた時点において、前記対象物体の側方の走路のいずれにも前記操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、第2予備動作を行う第2予備動作制御部を更に備え、
前記第2予備動作制御部は、前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第2予備動作の作動を促進し
前記第2予備動作は、制動力を出力することと、表示を行うことと、音声を出力することと、振動を出力することのうち一部または全部を含み、
前記第2予備動作の作動を促進することは、出力量を大きくすること、作動タイミングを早めること、出力態様を強めることのうち一部または全部を含み、
前記第1条件は前記第2条件よりも、前記接近度合いが高い場合に満たされる条件であり、
前記第2条件は前記第3条件よりも、前記接近度合いが高い場合に満たされる条件である、
運転支援装置。
【請求項2】
前記第2予備動作制御部は、前記自動運転制御装置が前記第1状態で動作している場合、前記第2予備動作と同期して、運転者に操舵操作子を把持するよう促す情報を出力装置に出力させる、
請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記第2予備動作制御部は、前記情報を出力装置に出力させた後、前記運転者が前記操舵操作子を把持しなかった場合、前記運転者が前記操舵操作子を把持した場合に比して、前記第2予備動作の作動タイミングを早くする、
請求項2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記第1予備動作は、制動力を出力する動作であり、
前記第1予備動作制御部は、前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第1予備動作に関する前記第2条件を、成立しやすい側に変更する、
請求項1から3のうちいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記第2予備動作は、前記第1予備動作よりも早いタイミングで開始される動作である、
請求項1から4のうちいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記第1予備動作と前記第2予備動作のうち少なくとも一方は、前記制動制御部が前記制動装置に出力を指示する制動力よりも小さい制動力を出力するように、前記制動装置に指示する動作である、
請求項1から5のうちいずれか1項記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記第1予備動作と前記第2予備動作の双方は、前記制動制御部が前記制動装置に出力を指示する制動力よりも小さい制動力を出力するように、前記制動装置に指示する動作であり、
前記第2予備動作において最初に出力される制動力は、前記第1予備動作において最初に出力される制動力よりも小さい、
請求項6記載の運転支援装置。
【請求項8】
請求項1からのうちいずれか1項記載の運転支援装置と、前記自動運転制御装置と、を備える車両制御システム。
【請求項9】
運転者が操舵操作子を把持しない第1状態と、運転者が操舵操作子を把持する第2状態とのいずれかで、車両の操舵および加減速を自動的に制御する自動運転制御装置と共に、前記車両に搭載される運転支援装置が、
車両の前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイスの出力を参照し、前記物体のうち対象物体と前記車両との接近度合いが第1条件を満たす場合に、前記車両の制動装置に指示して前記車両を停止させることと、前記対象物体との接触を操舵により回避するように、前記車両の操舵装置に指示することとのうち一方または双方を行い、
前記対象物体と前記車両との接近度合いが第2条件を満たす場合に、第1予備動作を行い、
前記対象物体と前記車両との接近度合いが第3条件を満たし、且つ、前記第3条件が満たされた時点において、前記対象物体の側方の走路のいずれにも前記操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、第2予備動作を行い、
前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第2予備動作の作動を促進し
前記第2予備動作は、制動力を出力することと、表示を行うことと、音声を出力することと、振動を出力することのうち一部または全部を含み、
前記第2予備動作の作動を促進することは、出力量を大きくすること、作動タイミングを早めること、出力態様を強めることのうち一部または全部を含み、
前記第1条件は前記第2条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件であり、
前記第2条件は前記第3条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件である、
運転支援方法。
【請求項10】
運転者が操舵操作子を把持しない第1状態と、運転者が操舵操作子を把持する第2状態とのいずれかで、車両の操舵および加減速を自動的に制御する自動運転制御装置と共に、前記車両に搭載される運転支援装置のコンピュータに、
車両の前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイスの出力を参照し、前記物体のうち対象物体と前記車両との接近度合いが第1条件を満たす場合に、前記車両の制動装置に指示して前記車両を停止させることと、前記対象物体との接触を操舵により回避するように、前記車両の操舵装置に指示することとのうち一方または双方を行わせ、
前記対象物体と前記車両との接近度合いが第2条件を満たす場合に、第1予備動作を行わせ、
前記対象物体と前記車両との接近度合いが第3条件を満たし、且つ、前記第3条件が満たされた時点において、前記対象物体の側方の走路のいずれにも前記操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、第2予備動作を行わせ、
前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第2予備動作の作動を促進させ
前記第2予備動作は、制動力を出力することと、表示を行うことと、音声を出力することと、振動を出力することのうち一部または全部を含み、
前記第2予備動作の作動を促進することは、出力量を大きくすること、作動タイミングを早めること、出力態様を強めることのうち一部または全部を含み、
前記第1条件は前記第2条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件であり、
前記第2条件は前記第3条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件である、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置、車両制御システム、運転支援方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動減速制御と自動操舵制御を行う車両制御装置の発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-50010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動減速制御に加えて自動操舵制御を行うことが可能な車両では、車両の周辺環境の急変にも迅速に対応できる確率が高くなり、制御の余裕度が比較的高くなる。一方で、対象物体の側方に回避スペースが無い場合は自動操舵制御が困難になるため、制御の余裕度は自動減速制御のみ行う車両と変わらないことになる。このため、適切な予備動作を行うことが好ましい。一方、近年では自動運転技術について実用化が進められているが、従来の技術では、自動運転の状態と関連して適切な予備動作を行うことができない場合があった。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、自動運転の状態に応じた適切な予備動作を行うことができる運転支援装置、車両制御システム、運転支援方法、およびプログラムを提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る運転支援装置、車両制御システム、運転支援方法、およびプログラムは、以下の構成を採用した。
(1):この発明の一態様に係る運転支援装置は、運転者が操舵操作子を把持しない第1状態と、運転者が操舵操作子を把持する第2状態とのいずれかで、車両の操舵および加減速を自動的に制御する自動運転制御装置と共に、前記車両に搭載される運転支援装置であって、車両の前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイスの出力を参照し、前記物体のうち対象物体と前記車両との接近度合いが第1条件を満たす場合に、前記車両の制動装置に指示して前記車両を停止させる制動制御部と、前記対象物体との接触を操舵により回避するように、前記車両の操舵装置に指示する操舵回避制御部と、を備え、前記制動制御部は、前記接近度合いが第2条件を満たす場合に、第1予備動作を行う第1予備動作制御部を含み、前記接近度合いが第3条件を満たし、且つ、前記第3条件が満たされた時点において、前記対象物体の側方の走路のいずれにも前記操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、第2予備動作を行う第2予備動作制御部を更に備え、前記第2予備動作制御部は、前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第2予備動作の作動開始条件を緩和し、前記第1条件は前記第2条件よりも、前記接近度合いが高い場合に満たされる条件であり、前記第2条件は前記第3条件よりも、前記接近度合いが高い場合に満たされる条件であるものである。
【0007】
(2):上記(1)の態様において、前記第2予備動作制御部は、前記自動運転制御装置が前記第1状態で動作している場合、前記第2予備動作と同期して、運転者に操舵操作子を把持するよう促す情報を出力装置に出力させるものである。
【0008】
(3):上記(2)の態様において、前記第2予備動作制御部は、前記情報を出力装置に出力させた後、前記運転者が前記操舵操作子を把持しなかった場合、前記運転者が前記操舵操作子を把持した場合に比して、前記第2予備動作の作動タイミングを早くするものである。
【0009】
(4):上記(1)から(3)のいずれかの態様において、前記第1予備動作制御部は、前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第1予備動作の作動開始条件を緩和するものである。
【0010】
(5):上記(1)から(4)のいずれかの態様において、前記第2予備動作は、前記第1予備動作よりも早いタイミングで開始される動作であるものである。
【0011】
(6):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記第1予備動作と前記第2予備動作のうち少なくとも一方は、前記制動制御部が前記制動装置に出力を指示する制動力よりも小さい制動力を出力するように、前記制動装置に指示する動作であるものである。
【0012】
(7):上記(6)の態様において、前記第1予備動作と前記第2予備動作の双方は、前記制動制御部が前記制動装置に出力を指示する制動力よりも小さい制動力を出力するように、前記制動装置に指示する動作であり、前記第2予備動作において最初に出力される制動力は、前記第1予備動作において最初に出力される制動力よりも小さいものである。
【0013】
(8):上記(1)から(5)のいずれかの態様において、前記第1予備動作と前記第2予備動作のうち少なくとも一方は、注意喚起のための表示、音声出力、または振動出力を行うように出力装置に指示する動作であるものである。
【0014】
(9)本発明の他の態様に係る車両制御システムは、上記(1)から(8)のいずれかの態様の運転支援装置と、前記自動運転制御装置と、を備える車両制御システムである。
【0015】
(10):本発明の他の態様に係る運転支援方法は、運転者が操舵操作子を把持しない第1状態と、運転者が操舵操作子を把持する第2状態とのいずれかで、車両の操舵および加減速を自動的に制御する自動運転制御装置と共に、前記車両に搭載される運転支援装置が、車両の前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイスの出力を参照し、前記物体のうち対象物体と前記車両との接近度合いが第1条件を満たす場合に、前記車両の制動装置に指示して前記車両を停止させることと、前記対象物体との接触を操舵により回避するように、前記車両の操舵装置に指示することとのうち一方または双方を行い、前記対象物体と前記車両との接近度合いが第2条件を満たす場合に、第1予備動作を行い、前記対象物体と前記車両との接近度合いが第3条件を満たし、且つ、前記第3条件が満たされた時点において、前記対象物体の側方の走路のいずれにも前記操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、第2予備動作を行い、前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第2予備動作の作動開始条件を緩和し、前記第1条件は前記第2条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件であり、前記第2条件は前記第3条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件であるものである。
【0016】
(11):本発明の他の態様に係るプログラムは、運転者が操舵操作子を把持しない第1状態と、運転者が操舵操作子を把持する第2状態とのいずれかで、車両の操舵および加減速を自動的に制御する自動運転制御装置と共に、前記車両に搭載される運転支援装置のコンピュータに、車両の前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイスの出力を参照し、前記物体のうち対象物体と前記車両との接近度合いが第1条件を満たす場合に、前記車両の制動装置に指示して前記車両を停止させることと、前記対象物体との接触を操舵により回避するように、前記車両の操舵装置に指示することとのうち一方または双方を行わせ、前記対象物体と前記車両との接近度合いが第2条件を満たす場合に、第1予備動作を行わせ、前記対象物体と前記車両との接近度合いが第3条件を満たし、且つ、前記第3条件が満たされた時点において、前記対象物体の側方の走路のいずれにも前記操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、第2予備動作を行わせ、前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第2予備動作の作動開始条件を緩和させ、前記第1条件は前記第2条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件であり、前記第2条件は前記第3条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件であるものである。
【発明の効果】
【0017】
(1)~(11)の態様によれば、自動運転の状態に応じた適切な予備動作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の運転支援装置が搭載される車両の構成図である。
図2】運転支援装置の構成図である。
図3】運転支援装置の機能の概要を示す図である。
図4】操舵回避制御部の作動場面の一例を示す図である。
図5】予備動作について説明するための図である。
図6】運転支援装置により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その1)である。
図7】自動運転制御装置の構成図である。
図8】運転モードと自車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。
図9】自動運転制御装置200が動作していない場合(車両がモードDまたはEである場合)と、モードCで動作している場合とで第2予備動作が異なる様子を例示した図である。
図10】自動運転制御装置200が動作していない場合(車両がモードDまたはEである場合)と、モードAまたはBで動作している場合とで第2予備動作が異なる様子を例示した図である。
図11】運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の運転支援装置、車両制御システム、運転支援方法、およびプログラムの実施形態について説明する。
【0020】
[全体構成]
図1は、実施形態の運転支援装置100が搭載される車両Mの構成図である。車両Mは、例えば、二輪や三輪、四輪等の車両であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、或いはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、或いは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0021】
車両Mには、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ナビゲーション装置50と、MPU(Map Positioning Unit)60と、ドライバモニタカメラ70と、運転操作子80と、運転支援装置100と、自動運転制御装置200と、走行駆動力出力装置300と、ブレーキ装置310と、ステアリング装置320とが搭載される。これらの装置や機器は、CAN(Controller Area Network)通信線等の多重通信線やシリアル通信線、無線通信網等によって互いに接続される。なお、図1に示す構成はあくまで一例であり、構成の一部が省略されてもよいし、更に別の構成が追加されてもよい。
【0022】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。カメラ10は、車両システム1が搭載される車両(以下、車両M)の任意の箇所に取り付けられる。前方を撮像する場合、カメラ10は、フロントウインドシールド上部やルームミラー裏面等に取り付けられる。カメラ10は、例えば、周期的に繰り返し車両Mの周辺を撮像する。カメラ10は、ステレオカメラであってもよい。
【0023】
レーダ装置12は、車両Mの周辺にミリ波などの電波を放射すると共に、物体によって反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離および方位)を検出する。レーダ装置12は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。レーダ装置12は、FM-CW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式によって物体の位置および速度を検出してもよい。
【0024】
LIDAR14は、車両Mの周辺に光(或いは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、車両Mの任意の箇所に取り付けられる。
【0025】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14のうち一部または全部による検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を運転支援装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14の検出結果をそのまま運転支援装置100に出力してよい。車両システム1から物体認識装置16が省略されてもよい。カメラ10、レーダ装置12、LIDAR14、および物体認識装置16のうち一部または全部は、「検知デバイス」の一例である。
【0026】
HMI30は、車両Mの乗員に対して各種情報を提示すると共に、乗員による入力操作を受け付ける。HMI30は、各種表示装置、スピーカ、ブザー、振動発生装置(バイブレータ)、タッチパネル、スイッチ、キーなどを含む。
【0027】
車両センサ40は、車両Mの速度を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、車両Mの向きを検出する方位センサ等を含む。
【0028】
ナビゲーション装置50は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機や案内制御部、地図情報を記憶した記憶部等を有する。GNSS受信機は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、車両Mの位置を特定する。車両Mの位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定または補完されてもよい。案内制御部は、例えば、GNSS受信機により特定された車両Mの位置(或いは入力された任意の位置)から、乗員により入力された目的地までの経路を、地図情報を参照して決定し、車両Mが経路に沿って走行するようにHMI30に案内情報を出力させる。地図情報は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。地図情報は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。ナビゲーション装置50は、通信装置を介してナビゲーションサーバに車両Mの現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから経路を取得してもよい。
【0029】
MPU60は、例えば、推奨車線決定部を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報を保持している。推奨車線決定部は、ナビゲーション装置50から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報を参照してブロックごとに推奨車線を決定する。推奨車線決定部は、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部61は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両Mが、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。第2地図情報は、ナビゲーション装置50の地図情報よりも高精度な地図情報である。
【0030】
ドライバモニタカメラ70は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ70は、自車両Mの運転席に着座した乗員(以下、運転者)の頭部を正面から(顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置および向きで、自車両Mにおける任意の箇所に取り付けられる。例えば、ドライバモニタカメラ70は、自車両Mのインストルメントパネルの中央部に設けられたディスプレイ装置の上部に取り付けられる。
【0031】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、自動運転制御装置200、もしくは、走行駆動力出力装置300、ブレーキ装置310、およびステアリング装置320のうち一部または全部に出力される。ステアリングホイール82は、「操舵操作子」の一例である。操舵操作子は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持している(力を加えられる状態で接していることをいう)か否かを検知可能な信号を自動運転制御装置200に出力する。
【0032】
走行駆動力出力装置300は、車両が走行するための走行駆動力(トルク)を駆動輪に出力する。走行駆動力出力装置300は、例えば、内燃機関、電動機、および変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。ECUは、運転支援装置100から入力される情報、自動運転制御装置200から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0033】
ブレーキ装置310は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ECUとを備える。ECUは、運転支援装置100から入力される情報、自動運転制御装置200から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。ブレーキ装置310は、運転操作子80に含まれるブレーキペダルの操作によって発生させた油圧を、マスターシリンダを介してシリンダに伝達する機構をバックアップとして備えてよい。なお、ブレーキ装置310は、上記説明した構成に限らず、運転支援装置100から入力される情報等に従ってアクチュエータを制御して、マスターシリンダの油圧をシリンダに伝達する電子制御式油圧ブレーキ装置であってもよい。
【0034】
ステアリング装置320は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、運転支援装置100から入力される情報、自動運転制御装置200から入力される情報、或いは運転操作子80から入力される情報に従って、電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0035】
[運転支援装置]
図2は、運転支援装置100の構成図である。運転支援装置100は、例えば、制動制御部110と、操舵回避制御部120と、第2予備動作制御部130とを備える。制動制御部110は、第1予備動作制御部112を含み、第2予備動作制御部130は、操舵回避可否判定部132を含む。これらの機能部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで運転支援装置100のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。
【0036】
運転支援装置100から走行駆動力出力装置300、ブレーキ装置310、およびステアリング装置320への指示は、運転操作子80からの検出結果よりも優先して実行されるように、走行駆動力出力装置300、ブレーキ装置310、およびステアリング装置320の内部において設定がなされている。なお、制動に関しては、運転支援装置100からの指示よりもブレーキペダルの操作量に基づく制動力の方が大きい場合は、後者を優先して実行するように設定されてもよい。また、運転支援装置100からの指示を優先して実行するための仕組みとして、車内LANにおける通信優先度が用いられてもよい。
【0037】
運転支援装置100は、自動運転制御装置200の動作状態に応じて以下に説明する機能に変更を加える。これについては自動運転制御装置200について説明した後に説明する。
【0038】
図3は、運転支援装置100の機能の概要を示す図である。以下、本図と図2を参照しながら運転支援装置100の各部について説明する。図3において車両Mは三車線の道路を走行しており、その中央にある車線L2に居る。Dは車両Mの進行方向である。
【0039】
制動制御部110は、車両Mの前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイス(前述)の出力を参照し、物体のうち対象物体TOと車両Mとの接近度合いが第1条件を満たす場合に、ブレーキ装置310および/または走行駆動力出力装置300に指示して車両Mを減速させ、停止させる。対象物体TOは、車両Mと同じ走路上にあり、且つ車両Mの進行方向側にある物体であって、マンホールなどの乗り越え可能な物体を除く、車両Mが接触を回避すべき物体である。制動制御部110は、そのような物体を抽出して対象物体TOに設定する。図2の例では、従来の最後尾にいる他車両が対象物体TOに設定されている。走路とは、例えば車線であるが、道路区画線が存在しない路面において車両Mが仮想的に設定する仮想車線であってもよい。以下の説明においても同様である。
【0040】
「接近度合い」とは、物体間の接近度合いを示す各種の指標値で表されるものである。例えば、「接近度合い」は距離を相対速度(互いに接近する方向を正とする)で除算して求められる指標値であるTTC(Time To Collision)である。なお相対速度が負(互いに離れる方向)である場合、TTCは仮に無限大に設定される。TTCは、値が小さい程、「接近度合い」が高いことを表す指標値である。そして、「第1条件」を満たすとは、例えばTTCが第1閾値Th1未満であることである。第1閾値Th1は、例えば、1コンマ数[sec]程度の値である。TTCに代えて、同様の性質を有する指標値、例えば車頭時間や距離、その他の指標値が「接近度合い」として用いられてもよい。また、加速度やジャークを加味して調整されたTTCが「接近度合い」として用いられてもよい。以下の説明において、「接近度合い」はTTCであるものとして説明する。
【0041】
制動制御部110は、TTCが第1閾値Th1未満である場合、例えば車両Mを第1減速度B1で減速させる制動力を出力するようにブレーキ装置310および/または走行駆動力出力装置300に指示する。第1減速度B1は、例えば、0コンマ数[G](1に近い)程度の減速度である。これによって、制動制御部110は、車両Mを速やかに減速させて停止させ、対象物体TOとの接触を回避する。指示された減速度からブレーキ出力、回生制御量、エンジンブレーキ量などを求める機能は、ブレーキ装置310や走行駆動力出力装置300のECUが有しており、ECUは、指示された減速度と車両Mの速度とに基づいてそれぞれの制御量を決定する。これについては公知技術であり詳細な説明を省略する。
【0042】
第1予備動作制御部112の動作については後述し、先に操舵回避制御部120について説明する。
【0043】
図4は、操舵回避制御部120の作動場面の一例を示す図である。操舵回避制御部120は、制動制御部110が対象物体TOよりも手前で車両Mを停止させることが困難であると判定された場合、対象物体TOの側方の走路(例えば車線L1、L2)に車両Mが進行可能なスペースが存在するか否かを判定し、スペースが存在すると判定した場合に、回避軌道ETを生成し、回避軌道ETに沿って車両Mが進行するようにステアリング装置320に指示する(操舵回避)。例えば、操舵回避制御部120は、図4に示す領域A2L、A2Rのように、対象車両TOの両側における対象車両の少し前から後方にかけて延在する側方領域内に物体が存在するか否かを判定し、存在しない場合に、対象物体TOの側方の走路に車両Mが進行可能なスペースが存在すると判定する。制動制御部110が対象物体TOよりも手前で車両Mを停止させることが困難であるか否かの判定は、制動制御部110によって行われてもよいし、操舵回避制御部120によって行われてもよい。操舵回避制御部120は、例えばカメラ画像の白線や路肩を認識することで走路の境界も認識しており、そもそも走行可能な領域A2L、A2Rのいずれかが存在しない場合、例えば車線L1とL3のいずれかが存在しない場合は、当該領域に物体が存在すると判定してよい。
【0044】
操舵回避が行われるのは、対象物体TOが想定外の減速を行った、認識されている対象物体TOとは別の物体が車両Mと対象物体TOの間に割り込んできて新たな対象車両TOとして設定されたなど、車両の周辺環境の急変が生じた場面である。このような場面において、予め対象車両TOの手前で停止するように計算された減速度では対応できない可能性があるが、操舵回避の機能を有することで、車両の周辺環境の急変にも対応できる確率を高めることができる。
【0045】
[予備動作]
以下、第1予備動作制御部112および第2予備動作制御部130の処理について説明する。図5は、予備動作について説明するための図である。
【0046】
第1予備動作制御部112は、対象物体TOと車両Mとの接近度合いが第2条件を満たす場合に(例えば、TTCが、第2閾値Th2未満である場合に)、車両Mの運転者に対象物体TOの存在を伝えるための第1予備動作を行う。第1予備動作は、例えば、TTCが、第2閾値Th2未満となってから、第1閾値Th1未満となるまでの間、車両Mを第2減速度B2で減速させる制動力を出力するようにブレーキ装置310および/または走行駆動力出力装置300に指示する動作である。第2減速度B2は、第1減速度B1よりも小さい(ゼロに近い)減速度である。第2閾値Th2は第1閾値Th1よりも大きい値である。従って、第1条件は第2条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件である。
【0047】
第2予備動作制御部130は、対象物体TOと車両Mとの接近度合いが第3条件を満たし(例えば、TTCが第3閾値Th3未満であり)、且つ、第3条件が満たされた時点において、対象物体TOの側方の走路のいずれにも操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、車両Mの運転者に対象物体TOの存在を伝えるための第2予備動作を行う。進行可能なスペースに関する判定は、操舵回避可否判定部132により行われる。第3閾値Th3は第2閾値Th2よりも大きい値である。従って、第2条件は第3条件よりも、接近度合いが高い場合に満たされる条件である。
【0048】
操舵回避可否判定部132は、例えば、TTCが第3閾値Th3未満となった時点で、図5に示す領域A1L、A1Rのように、対象車両TOの両側における対象車両の少し前から後方にかけて延在する側方領域内に物体が存在するか否かを判定し、存在しない場合に、対象物体TOの側方の走路に車両Mが進行可能なスペースが存在すると判定する。領域A1L、A1Rのそれぞれは、例えば、将来の不確定要因を考慮し、領域A2L、A2Rのそれぞれよりも大きい領域に設定される。操舵回避可否判定部132は、操舵回避制御部120と同様に、例えばカメラ画像の白線や路肩を認識することで走路の境界も認識しており、そもそも走行可能な領域A1L、A1Rのいずれかが存在しない場合、例えば車線L1とL3のいずれかが存在しない場合は、当該領域に物体が存在すると判定してよい。図5の例では、領域A1Rに物体が存在しないため、操舵回避可否判定部132は、対象物体TOの側方の走路に車両Mが進行可能なスペースが存在すると判定する。
【0049】
第2予備動作は、例えば、TTCが、第3閾値Th3未満となってから、第1閾値Th1未満となるまでの間、まず車両Mを第3減速度B3で減速させる制動力を出力するようにブレーキ装置310および/または走行駆動力出力装置300に指示し、次いで、車両Mを第4減速度B4で減速させる制動力を出力するようにブレーキ装置310および/または走行駆動力出力装置300に指示する動作である。第3減速度B3は、例えば、第2減速度B2よりも小さい(ゼロに近い)減速度であり、第4減速度B4は、第2減速度よりも大きい、または同程度であり、且つ第1減速度B1よりも小さい減速度である。第3減速度B3から第4減速度B4に切り替えるタイミングについては任意に設定されてよい。
【0050】
このように、第2予備動作は、第1予備動作に比して、より早いタイミングで開始され、且つ多段階で行われる。前述したように、操舵回避が可能な状況では、車両の周辺環境の急変にも迅速に対応できる確率が高くなり、制御の余裕度が比較的高くなる。一方で、対象物体の側方に回避スペースが無い場合は操舵回避の機能を備えていたとしても、それを実行することが困難になるため、制御の余裕度は自動停止のみ行うことが可能な車両と変わらないことになる。つまり、操舵回避が困難な状況においては、操舵回避が可能な状況に比して、より早くかつ効果的に車両Mの運転者に注意喚起を与えることが好ましい。本実施形態によれば、第2予備動作を、第1予備動作に比して、より早いタイミングで開始し、且つ多段階で行うことにより、対象物体の周辺状況に応じた適切な予備動作を行うことができる。
【0051】
図6は、運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その1)である。
【0052】
まず、制動制御部110が、対象物体TOを特定する(ステップS1)。次に、第2予備動作制御部130が、車両Mと対象物体TOとのTTCが第3閾値Th3未満であるか否かを判定する(ステップS2)。車両Mと対象物体TOとのTTCが第3閾値Th3以上である場合、ステップS1に処理が戻される。
【0053】
車両Mと対象物体TOとのTTCが第3閾値Th3未満であると判定した場合、第2予備動作制御部130の操舵回避可否判定部132は、対象物体TOの側方の走路に車両Mが進行可能なスペースが存在するか否かを判定する(ステップS3)。
【0054】
対象物体TOの側方の走路に車両Mが進行可能なスペースが存在しないと判定された場合、第2予備動作制御部130は、第2予備動作を実行する(ステップS4)。次いで、第2予備動作制御部130は、車両Mと対象物体TOとのTTCが上昇して第3閾値Th3以上となったか否かを判定する(ステップS5)。車両Mと対象物体TOとのTTCが上昇して第3閾値Th3以上となったと判定された場合、ステップS1に処理が戻される。
【0055】
車両Mと対象物体TOとのTTCが上昇して第3閾値Th3以上となったと判定されなかった場合、制動制御部110が、車両Mと対象物体TOとのTTCが第1閾値Th1未満であるか否かを判定する(ステップS6)。車両Mと対象物体TOとのTTCが第1閾値Th1以上であると判定された場合、ステップS3に処理が戻される。ステップS3で肯定的な判定が得られた場合、第2予備動作が停止され、ステップS8以降の処理が実行される。車両Mと対象物体TOとのTTCが第1閾値Th1未満であると判定した場合、制動制御部110は、車両Mを第1減速度B1で減速させる制動力をブレーキ装置310および/または走行駆動力出力装置300に出力させて車両Mを減速させ、停止させる(ステップS7)。このとき、前述したように、車両Mを減速させて停止させることに代えて(または、加えて)操舵回避が行われる場合がある。
【0056】
ステップS3において肯定的な判定を得た場合、すなわち車両Mと対象物体TOとのTTCが第3閾値Th3未満であり、且つ対象物体TOの側方の走路に車両Mが進行可能なスペースが存在する場合、制動制御部110の第1予備動作制御部112が、車両Mと対象物体TOとのTTCが第2閾値Th2未満であるか否かを判定する(ステップS8)。車両Mと対象物体TOとのTTCが第2閾値Th2以上であると判定された場合、ステップS1に処理が戻される。
【0057】
車両Mと対象物体TOとのTTCが第2閾値Th2未満であると判定した場合、第1予備動作制御部112は、第1予備動作を実行する(ステップS9)。次いで、第1予備動作制御部112は、車両Mと対象物体TOとのTTCが上昇して第2閾値Th2以上となったか否かを判定する(ステップS10)。車両Mと対象物体TOとのTTCが上昇して第2閾値Th2以上となったと判定された場合、ステップS1に処理が戻される。
【0058】
車両Mと対象物体TOとのTTCが上昇して第2閾値Th2以上となったと判定されなかった場合、制動制御部110が、車両Mと対象物体TOとのTTCが第1閾値Th1未満であるか否かを判定する(ステップS11)。車両Mと対象物体TOとのTTCが第1閾値Th1以上であると判定された場合、ステップS3に処理が戻される。ステップS3で否定的な判定が得られた場合、第1予備動作が停止され、ステップS4以降の処理が実行される。車両Mと対象物体TOとのTTCが第1閾値Th1未満であると判定した場合、制動制御部110は、第1減速度B1をブレーキ装置310および/または走行駆動力出力装置300に出力させて車両Mを減速させ、停止させる(ステップS7)。
【0059】
[自動運転制御装置]
図7は、自動運転制御装置200の構成図である。自動運転制御装置200は、例えば、第1制御部220と、第2制御部260とを備える。第1制御部220と第2制御部260は、それぞれ、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサがプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらの構成要素のうち一部または全部は、LSIやASIC、FPGA、GPUなどのハードウェア(回路部;circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、予め自動運転制御装置200のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置(非一過性の記憶媒体を備える記憶装置)に格納されていてもよいし、DVDやCD-ROMなどの着脱可能な記憶媒体に格納されており、記憶媒体(非一過性の記憶媒体)がドライブ装置に装着されることで自動運転制御装置200のHDDやフラッシュメモリにインストールされてもよい。自動運転制御装置200は「車両制御装置」の一例であり、行動計画生成部240と第2制御部260を合わせたものが「運転制御部」の一例である。
【0060】
第1制御部220は、例えば、認識部230と、行動計画生成部240と、モード決定部250とを備える。第1制御部220は、例えば、AI(Artificial Intelligence;人工知能)による機能と、予め与えられたモデルによる機能とを並行して実現する。例えば、「交差点を認識する」機能は、ディープラーニング等による交差点の認識と、予め与えられた条件(パターンマッチング可能な信号、道路標示などがある)に基づく認識とが並行して実行され、双方に対してスコア付けして総合的に評価することで実現されてよい。これによって、自動運転の信頼性が担保される。
【0061】
認識部230は、カメラ10、レーダ装置12、およびLIDAR14から物体認識装置16を介して入力された情報に基づいて、自車両Mの周辺にある物体の位置、および速度、加速度等の状態を認識する。物体の位置は、例えば、自車両Mの代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナー等の代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。物体の「状態」とは、物体の加速度やジャーク、あるいは「行動状態」(例えば車線変更をしている、またはしようとしているか否か)を含んでもよい。
【0062】
また、認識部230は、例えば、自車両Mが走行している車線(走行車線)を認識する。例えば、認識部230は、第2地図情報62から得られる道路区画線のパターン(例えば実線と破線の配列)と、カメラ10によって撮像された画像から認識される自車両Mの周辺の道路区画線のパターンとを比較することで、走行車線を認識する。なお、認識部230は、道路区画線に限らず、道路区画線や路肩、縁石、中央分離帯、ガードレールなどを含む走路境界(道路境界)を認識することで、走行車線を認識してもよい。この認識において、ナビゲーション装置50から取得される自車両Mの位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。また、認識部230は、一時停止線、障害物、赤信号、料金所、その他の道路事象を認識する。
【0063】
認識部230は、走行車線を認識する際に、走行車線に対する自車両Mの位置や姿勢を認識する。認識部230は、例えば、自車両Mの基準点の車線中央からの乖離、および自車両Mの進行方向の車線中央を連ねた線に対してなす角度を、走行車線に対する自車両Mの相対位置および姿勢として認識してもよい。これに代えて、認識部230は、走行車線のいずれかの側端部(道路区画線または道路境界)に対する自車両Mの基準点の位置などを、走行車線に対する自車両Mの相対位置として認識してもよい。
【0064】
行動計画生成部240は、原則的には推奨車線決定部により決定された推奨車線を走行し、更に、自車両Mの周辺状況に対応できるように、自車両Mが自動的に(運転者の操作に依らずに)将来走行する目標軌道を生成する。目標軌道は、例えば、速度要素を含んでいる。例えば、目標軌道は、自車両Mの到達すべき地点(軌道点)を順に並べたものとして表現される。軌道点は、道なり距離で所定の走行距離(例えば数[m]程度)ごとの自車両Mの到達すべき地点であり、それとは別に、所定のサンプリング時間(例えば0コンマ数[sec]程度)ごとの目標速度および目標加速度が、目標軌道の一部として生成される。また、軌道点は、所定のサンプリング時間ごとの、そのサンプリング時刻における自車両Mの到達すべき位置であってもよい。この場合、目標速度や目標加速度の情報は軌道点の間隔で表現される。
【0065】
行動計画生成部240は、目標軌道を生成するにあたり、自動運転のイベントを設定してよい。自動運転のイベントには、定速走行イベント、低速追従走行イベント、車線変更イベント、分岐イベント、合流イベント、テイクオーバーイベントなどがある。行動計画生成部240は、起動させたイベントに応じた目標軌道を生成する。
【0066】
モード決定部250は、自車両Mの運転モードを、運転者に課されるタスクが異なる複数の運転モードのいずれかに決定する。モード決定部250は、例えば、運転者状態判定部252と、モード変更処理部254とを備える。これらの個別の機能については後述する。
【0067】
図8は、運転モードと自車両Mの制御状態、およびタスクの対応関係の一例を示す図である。自車両Mの運転モードには、例えば、モードAからモードEの5つのモードがある。制御状態すなわち自車両Mの運転制御の自動化度合いは、モードAが最も高く、次いでモードB、モードC、モードDの順に低くなり、モードEが最も低い。この逆に、運転者に課されるタスクは、モードAが最も軽度であり、次いでモードB、モードC、モードDの順に重度となり、モードEが最も重度である。なお、モードDおよびEでは自動運転でない制御状態となるため、自動運転制御装置200としては自動運転に係る制御を終了し、運転支援または手動運転に移行させるまでが責務である。以下、それぞれの運転モードの内容について例示する。
【0068】
モードAでは、運転者には前方監視、ステアリングホイール82の把持(図ではステアリング把持)のいずれも課されない。但し、モードAであっても運転者は、自動運転制御装置200を中心としたシステムからの要求に応じて速やかに手動運転に移行できる体勢であることが要求される。なお、ここで言う自動運転とは、操舵、加減速のいずれも運転者の操作に依らずに制御されることをいう。前方とは、フロントウインドシールドを介して視認される自車両Mの進行方向の空間を意味する。モードAは、例えば、高速道路などの自動車専用道路において、所定速度(例えば50[km/h]程度)以下で自車両Mが走行しており、追従対象の前走車両が存在するなどの条件が満たされる場合に実行可能な運転モードであり、TJP(Traffic Jam Pilot)と称される場合もある。この条件が満たされなくなった場合、モード決定部250は、モードBに自車両Mの運転モードを変更する。
【0069】
モードBでは、運転者には自車両Mの前方を監視するタスク(以下、前方監視)が課されるが、ステアリングホイール82を把持するタスクは課されない。モードCでは、運転者には前方監視のタスクと、ステアリングホイール82を把持するタスクが課される。モードDは、自車両Mの操舵と加減速のうち少なくとも一方に関して、ある程度の運転者による運転操作が必要な運転モードである。例えば、モードDでは、ACC(Adaptive Cruise Control)やLKAS(Lane Keeping Assist System)といった運転支援が運転支援装置100とは別の運転支援装置(不図示)によって行われる。モードEでは、操舵、加減速ともに運転者による運転操作が必要な手動運転の状態となる。モードD、モードEともに、当然ながら運転者には自車両Mの前方を監視するタスクが課される。モードAおよびBは「第1状態」の一例であり、モードCは「第2状態」の一例である。また、モードDおよびモードEは、「自動運転制御装置が動作していない状態」の一例である。
【0070】
モード決定部250は、決定した運転モード(以下、現運転モード)に係るタスクが運転者により実行されない場合に、よりタスクが重度な運転モードに自車両Mの運転モードを変更する。
【0071】
例えば、モードAにおいて運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢である場合(例えば許容エリア外の脇見を継続している場合や、運転困難となる予兆が検出された場合)、モード決定部250は、HMI30を用いて運転者に手動運転への移行を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。自動運転を停止した後は、自車両はモードDまたはEの状態になり、運転者の手動操作によって自車両Mを発進させることが可能となる。以下、「自動運転を停止」に関して同様である。モードBにおいて運転者が前方を監視していない場合、モード決定部250は、HMI30を用いて運転者に前方監視を促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。モードCにおいて運転者が前方を監視していない場合、或いはステアリングホイール82を把持していない場合、モード決定部250は、HMI30を用いて運転者に前方監視を、および/またはステアリングホイール82を把持するように促し、運転者が応じなければ自車両Mを路肩に寄せて徐々に停止させ、自動運転を停止する、といった制御を行う。
【0072】
運転者状態判定部252は、上記のモード変更のために運転者の状態を監視し、運転者の状態がタスクに応じた状態であるか否かを判定する。例えば、運転者状態判定部252は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して姿勢推定処理を行い、運転者が、システムからの要求に応じて手動運転に移行できない体勢であるか否かを判定する。また、運転者状態判定部252は、ドライバモニタカメラ70が撮像した画像を解析して視線推定処理を行い、運転者が前方を監視しているか否かを判定する。
【0073】
モード変更処理部254は、モード変更のための各種処理を行う。例えば、モード変更処理部254は、行動計画生成部240に路肩停止のための目標軌道を生成するように指示したり、運転者に行動を促すためにHMI30の制御をしたりする。
【0074】
第2制御部260は、行動計画生成部240によって生成された目標軌道を、予定の時刻通りに自車両Mが通過するように、走行駆動力出力装置300、ブレーキ装置310、およびステアリング装置320を制御する。
【0075】
[自動運転の状態に応じた制御]
以下、自動運転の状態に応じた予備動作制御について説明する。運転支援装置100は、自動運転制御装置200から動作状態(いずれのモードになっているか)の情報を取得し、以下の制御を行う。
【0076】
第2予備動作制御部130は、自動運転制御装置200がモードCで動作している場合、自動運転制御装置200が動作していない場合(つまりモードD、Eのいずれかである場合)に比して、第2予備動作の作動開始条件を緩和する(作動しやすい側に作動開始条件を変更する)。
【0077】
「第2予備動作の作動開始条件を緩和する」とは、例えば、(1)第2予備動作の少なくとも一部において、出力する制動力を大きくすること、(2)第2予備動作の開始タイミングを早くする(具体的には第3閾値Th3を大きくする)こと、(3)第2予備動作において制動力を第3減速度B3から第4減速度B4に上げるタイミングを早めること(具体的には第4減速度に上げる基準を、早くなる側に変更すること)、のうち一部または全部を含む。
【0078】
図9は、自動運転制御装置200が動作していない場合(車両がモードDまたはEである場合)と、モードCで動作している場合とで第2予備動作が異なる様子を例示した図である。図示するように、モードCで動作している場合、自動運転制御装置200が動作していない場合に比して、最初に出力される制動力がより大きくなるように、且つ第4減速度B4に上げるタイミングが早くなるようにブレーキ装置310等が制御される。
【0079】
自動運転制御装置200がモードCで動作している場合、運転者はステアリングホイール82を把持しているものの、車両Mの加減速に関しては自動運転制御装置200が制御している状態である。その状態において、運転者はブレーキペダルの近傍に足を置いているとは限らず、急な制動が必要になった場合に迅速に対応することができないことがあり得る。そこで、第2予備動作制御部130は、上記のように第2予備動作の作動開始条件を緩和することで、早期に前方状況を運転者に伝えることができ、必要な制動を運転者が行うように誘導することができる。
【0080】
また、第2予備動作制御部130は、自動運転制御装置200がモードAまたはBで動作している場合、自動運転制御装置200が動作していない場合(つまりモードD、Eのいずれかである場合)に比して、第2予備動作の作動開始条件を厳しくする(作動しにくい側に作動開始条件を変更する)。
【0081】
「第2予備動作の作動開始条件を厳しくする」とは、「作動開始条件を緩和する」の逆であり、例えば、(A)第2予備動作の少なくとも一部において、出力する制動力を小さくすること、(B)第2予備動作の開始タイミングを遅くする(具体的には第3閾値Th3を小さくする)こと、(C)第2予備動作において制動力を第3減速度B3から第4減速度B4に上げるタイミングを遅くすること(具体的には第4減速度B4に上げる基準を、遅くなる側に変更すること)、のうち一部または全部を含む。
【0082】
自動運転制御装置200がモードAまたはBで動作している場合、運転者は操舵と加減速の双方を車両Mに委ねている状態となる。この状態において急に強い第2予備動作が発動すると、違和感を覚える場合がある。そこで、第2予備動作制御部130は、上記のように第2予備動作の作動開始条件を厳しくすることで、運転者に違和感を与えないようにすることができる。
【0083】
また、第2予備動作制御部130は、自動運転制御装置200がモードAまたはBで動作している場合、第2予備動作と同期して、運転者にステアリングホイール82を把持するよう促す情報をHMI30に出力させてもよい。第2予備動作と同期してとは、例えば、車両Mを第3減速度B3で減速させるタイミング、第4減速度B4で減速させるタイミング、或いはそれらの所定時間前、所定時間後に定められるタイミングで動作を行うことをいう。好ましくは、車両Mを第4減速度B4で減速させるタイミングの少し前のタイミングで情報をHMI30に出力させるとよい。そして、第2予備動作制御部130は、情報をHMI30に出力させた後、運転者がステアリングホイール82を把持しなかった場合、運転者がステアリングホイール82を把持した場合に比して、第2予備動作の作動タイミングを早くしてもよい。情報をHMI30に出力させる処理は、自動運転制御装置200を介して行われてもよいし、自動運転制御装置200が第2予備動作の発動タイミングを見ながら行ってもよい。なお、上記に代えて、第2予備動作が実行されると予想される段階(実際に実行されるかどうかは確定していない段階)で、運転者にステアリングホイール82を把持するよう促す情報をHMI30に出力させてもよい。例えば、第2予備動作制御部130は、第2予備動作が開始される条件よりも緩和された条件が満たされた場合に第2予備動作が実行されると予想してもよいし、TTCの変化などを時系列に観察し、現在のトレンドでTTCが推移した場合に所定時間後に第2予備動作が開始されるという状況になったときに第2予備動作が実行されると予想してもよい。
【0084】
図10は、自動運転制御装置200が動作していない場合(車両がモードDまたはEである場合)と、モードAまたはBで動作している場合とで第2予備動作が異なる様子を例示した図である。図示するように、モードAまたはBで動作している場合、自動運転制御装置200が動作していない場合に比して、遅いタイミングで且つより小さい制動力で、制動力の出力が開始される。また、運転者にステアリングホイール82を把持するよう促す情報をHMI30に出力させた後、運転者がステアリングホイール82を把持しなかった場合に出力される制動力は、運転者がステアリングホイール82を把持した場合に出力される制動力よりも大きくなるようにブレーキ装置310等が制御される。
【0085】
上記に加えて、第1予備動作制御部112も、自動運転制御装置200がモードCで動作している場合、自動運転制御装置200が動作していない場合に比して、第1予備動作の作動開始条件を緩和するようにしてもよい。また、第1予備動作制御部112も、自動運転制御装置200がモードAまたはBで動作している場合、自動運転制御装置200が動作していない場合に比して、第1予備動作の作動開始条件を厳しくするようにしてもよい。
【0086】
図11は、運転支援装置100により実行される処理の流れの一例を示すフローチャート(その2)である。まず、第2予備動作制御部130は、自動運転制御装置200から現在のモード情報を取得する(ステップS20)。次に、第2予備動作制御部130は、現在のモードがモードDまたはモードEであるか否かを判定する(ステップS21)。現在のモードがモードDまたはモードEである場合、第2予備動作制御部130は、第2予備動作の動作設定を標準に設定する(ステップS22)。標準とは、例えば図5で例示した動作を行うための動作設定である。現在のモードがモードDまたはモードEでない場合、第2予備動作制御部130は、現在のモードがモードCであるか否かを判定する(ステップS23)。現在のモードがモードCである場合、第2予備動作制御部130は、第2予備動作の動作設定を積極的に行う側に(作動開始条件を緩和する側に)設定する(ステップS24)。現在のモードがモードCでない場合、つまり現在のモードがモードAまたはモードBである場合、第2予備動作制御部130は、第2予備動作の動作設定を消極的に行う側に(作動開始条件を厳しくする側に)設定する(ステップS25)。
【0087】
以上説明した実施形態によれば、自動運転の状態に応じた適切な予備動作を行うことができる。
【0088】
上記実施形態において、第1予備動作と第2予備動作のいずれかにおいて、制動力の出力に代えて、注意喚起のための表示、音声出力、振動出力などが行われてもよい。この場合、「第2予備動作の作動開始条件を緩和する」ことの例として、表示の色彩やコントラストを強くする、表示するテキストの語気を強める、音声の音量を上げる、振動を強くする、或いはそれらのタイミングを早めることが挙げられる。また、「第2予備動作の作動開始条件を厳しくする」ことの例として、表示の色彩やコントラストを弱くする、表示するテキストの語気を弱める、音声の音量を下げる、振動を弱くする、或いはそれらのタイミングを遅くすることが挙げられる。
【0089】
上記実施形態において、ナビゲーション装置50において設定されている目的地への分岐路が、車両Mが走行している車線の左右いずれかの側にある場合、予備動作の途中で強制的に車線変更を行ってもよい。こうすれば、結果的に、目的地に近づく方向に車両Mを移動させ、且つ対象物体がとなる物体が車両Mの近くにいない状態に誘導することができる。
【0090】
上記説明した実施形態は、以下のように表現することができる。
コンピュータによって読み込み可能な命令(computer-readable instructions)を格納する記憶媒体(storage medium)と、
前記記憶媒体に接続されたプロセッサと、を備え、
前記プロセッサは、前記コンピュータによって読み込み可能な命令を実行することにより(the processor executing the computer-readable instructions to:)
前記車両の前方に存在する物体の存在を検知する検知デバイスの出力を参照し、前記物体のうち対象物体と前記車両との距離を相対速度で除算した指標値が第1閾値未満である場合に、前記車両の制動装置に指示して前記車両を停止させることと、前記対象物体との接触を操舵により回避するように、前記車両の操舵装置に指示することとのうち一方または双方を行い、
前記指標値が第2閾値未満である場合に、第1予備動作を行い、
前記指標値が第3閾値未満であり、且つ、前記指標値が第3閾値未満となった時点において、前記対象物体の側方の走路のいずれにも前記操舵による回避を行った後に進行可能なスペースが存在しないと判定される場合に、第2予備動作を行い、
前記第2予備動作制御部は、前記自動運転制御装置が前記第2状態で動作している場合、前記自動運転制御装置が動作していない場合に比して、前記第2予備動作の作動開始条件を緩和し、
前記第1閾値は前記第2閾値よりも小さく、
前記第2閾値は前記第3閾値よりも小さい、
運転支援装置。
【0091】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0092】
10 カメラ
12 レーダ装置
14 LIDAR
16 物体認識装置
80 運転操作子
100 運転支援装置
110 制動制御部
112 第1予備動作制御部
120 操舵回避制御部
130 第2予備動作制御部
132 操舵回避可否判定部
200 自動運転制御装置
300 走行駆動力出力装置
310 ブレーキ装置
320 ステアリング装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11