(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】発光装置、発光システム、発光装置の制御装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H05B 47/19 20200101AFI20231214BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20231214BHJP
H05B 47/165 20200101ALI20231214BHJP
【FI】
H05B47/19
H05B47/16
H05B47/165
(21)【出願番号】P 2022090809
(22)【出願日】2022-06-03
【審査請求日】2022-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000243881
【氏名又は名称】名古屋電機工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505398952
【氏名又は名称】中日本高速道路株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000660
【氏名又は名称】Knowledge Partners弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩二
(72)【発明者】
【氏名】榊 真
(72)【発明者】
【氏名】清水 章一
(72)【発明者】
【氏名】谷川 芳久
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173846(JP,A)
【文献】再公表特許第2017/154410(JP,A1)
【文献】特開2022-080530(JP,A)
【文献】特開2022-066794(JP,A)
【文献】特開2017-025488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光装置であって、
マスター装置として機能する場合に、当該発光装置を含む、複数の発光装置それぞれにおける点灯と消灯の時間変化が、予め定められた点灯パターンになるように、前記点灯パターンにおける
点灯と消灯の切り替えタイミング
の基準となる基準時刻を補正するための同期信号を、前記複数の発光装置のうち、当該発光装置以外の発光装置に送信する通信処理部を備える、発光装置。
【請求項2】
前記通信処理部は、定期的に前記同期信号を送信する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項3】
前記通信処理部は、
前記複数の発光装置を制御する制御装置から、前記発光装置の設置に係る設置情報を受信し、
前記複数の発光装置のうち、他の発光装置から前記同期信号を受信する前に、前記設置情報を受信した場合に、前記マスター装置として、前記同期信号を送信する、請求項1に記載の発光装置。
【請求項4】
前記発光装置は、前記通信処理部が前記設置情報を受信する前に、前記複数の発光装置のうち、他の発光装置から前記同期信号を受信した場合に、スレーブ装置として機能し、
前記スレーブ装置として機能する場合には、前記通信処理部は、前記同期信号の送信を行わない、請求項3に記載の発光装置。
【請求項5】
前記スレーブ装置として機能している場合において、予め設定された待機時間の間、前記同期信号を受信しない場合に、
前記機能は、前記スレーブ装置から前記マスター装置に変更され、
前記通信処理部は、前記同期信号を送信する、請求項4に記載の発光装置。
【請求項6】
前記待機時間は、発光装置毎に異なる、請求項5に記載の発光装置。
【請求項7】
位置を特定するための情報と共に時刻情報を受信するGNSS受信部と、
前記GNSS受信部が前記時刻情報を受信できない場合に、前記同期信号に基づいて、前記点灯パターンに応じた点灯を行う点灯実行部と
をさらに備えた、請求項1に記載の発光装置。
【請求項8】
複数の発光装置群それぞれを制御する複数の制御装置と、前記複数の発光装置群と、を備えた発光システムであって、
各発光装置群は、複数の発光装置を含み、
前記複数の制御装置は、同一の時刻提供装置から、時刻情報を受信する受信部を備え、
前記発光装置は、
前記発光装置が属する前記発光装置群を制御する前記制御装置から前記時刻情報を受信し、前記時刻情報に対応する同期信号を、前記発光装置群に含まれる他の発光装置に送信する通信処理部と、
を備える、発光システム。
【請求項9】
複数の発光装置それぞれにおける、点灯と消灯の時間変化が予め定められた点灯パターンになるように、前記点灯パターンにおける
点灯と消灯の切り替えタイミング
の基準となる基準時刻を補正するための同期信号を、前記複数の発光装置に送信する通信処理部を備える、発光装置の制御装置。
【請求項10】
発光装置のコンピュータを、
マスター装置として機能する場合に、当該発光装置を含む、複数の発光装置それぞれにおける点灯と消灯の時間変化が、予め定められた点灯パターンになるように、前記点灯パターンにおける
点灯と消灯の切り替えタイミング
の基準となる基準時刻を補正するための同期信号を、前記複数の発光装置のうち、当該発光装置以外の発光装置に送信する通信処理部として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置、発光システム、発光装置の制御装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、道路工事が行われていること等を運転者に通知するために、道路に沿って複数の発光装置を配置し、各々の発光装置を並び順に沿って点灯と消灯を繰り返させる技術が知られている。このような発光装置においては、GNSS(Global Navigation Satellite System)の信号に含まれる時刻情報に基づいて、点灯と消灯のタイミングの同期が行われていた。トンネル内での発光制御としては、特許文献1に、トンネル内の複数の照明装置の制御を、無線通信によって受信した指令情報に基づいて行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、トンネル内では、GNSS信号を受信することができない場合があり、このような場合には、トンネル内に設置された発光装置における点灯同期が行えないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような課題にかんがみてなされたもので、複数台の発光装置間での点灯同期を可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、発光装置であって、マスター装置として機能する場合に、当該発光装置を含む、複数の発光装置それぞれにおける点灯と消灯の時間変化が、予め定められた点灯パターンになるように、前記点灯パターンにおけるタイミングを補正するための同期信号を、複数の発光装置のうち、当該発光装置以外の発光装置に送信する通信処理部を備える。
【0007】
また、本発明の他の形態は、発光装置のコンピュータを、マスター装置として機能する場合に、当該発光装置を含む、複数の発光装置それぞれにおける点灯と消灯の時間変化が、予め定められた点灯パターンになるように、前記点灯パターンにおけるタイミングを補正するための同期信号を、複数の発光装置のうち、当該発光装置以外の発光装置に送信する通信処理部として機能させるためのプログラムである。
【0008】
上記の発光装置及びプログラムにおいては、マスター装置として機能する発光装置が、点灯パターンにおけるタイミングを補正するための同期信号を送信するので、複数台の発光装置間で点灯同期を可能とすることができる。
【0009】
また、本発明の他の形態は、複数の発光装置群それぞれを制御する複数の制御装置と、前記複数の発光装置群と、を備えた発光システムであって、各発光装置群は、複数の発光装置を含み、前記複数の制御装置は、同一の時刻提供装置から、時刻情報を受信する受信部を備え、前記発光装置は、前記発光装置が属する前記発光装置群を管理する前記制御装置から前記時刻情報を受信し、前記時刻情報に対応する同期信号を、前記発光装置群に含まれる他の発光装置に送信する通信処理部と、を備える。
【0010】
上記発光システムにおいては、複数の発光装置群それぞれを管理する複数の制御装置は、同一の時刻提供装置から時刻情報を受信する。そして、発光装置群内の一の発光装置が当該時刻情報を受信し、時刻情報に対応した同期信号と、発光装置群内の他の発光装置に送信する。これにより、発光装置群間での点灯同期を可能とすることができる。
【0011】
本発明の他の形態は、発光装置の制御装置であって、複数の発光装置それぞれにおける、点灯と消灯の時間変化が予め定められた点灯パターンになるように、前記点灯パターンにおけるタイミングを補正するための同期信号を、前記複数の発光装置に送信する通信処理部を備える。
【0012】
本発明の他の形態は、発光装置のコンピュータを、マスター装置として機能する場合に、当該発光装置を含む、複数の発光装置それぞれにおける点灯と消灯の時間変化が、予め定められた点灯パターンになるように、前記点灯パターンにおけるタイミングを補正するための同期信号を、複数の発光装置のうち、当該発光装置以外の発光装置に送信する通信処理部として機能させるためのプログラムである。
【0013】
上記、発光装置の制御装置は、複数の発光装置それぞれの対し、点灯パターンにおけるタイミングを補正するための同期信号を送信するので、複数台の発光装置間で点灯同期を可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここでは、下記の順番にしたがって、実施形態を説明する。
(1)発光システムの構成:
(2)同期のための処理:
(3)その他:
【0016】
(1)発光システムの構成:
図1は、発光システム1の全体構成図である。発光システム1は、点灯管理サーバ装置10と、複数の制御装置20と、複数の発光装置30と、時刻サーバ装置40と、を備えている。ここで、時刻サーバ装置40は、時刻提供装置の一例である。複数の発光装置30は、道路R上の任意の位置に設置可能な装置であり、例えば、道路Rの進行方向に沿って設置される。そして、複数の発光装置30は、その配列に沿って、点灯と消灯を規則的に繰り返す。これにより、発光装置30は、運転者への注意を促す誘導灯として機能することができる。制御装置20は、近距離無線通信により、近くに位置する発光装置30と無線通信を行う。また、制御装置20、点灯管理サーバ装置10及び時刻サーバ装置40は、ネットワーク50を介して相互に通信を行う。
【0017】
本実施形態においては、点灯管理サーバ装置10は、制御装置20を介して、道路に設置された複数の発光装置30の情報を取得し、これらの情報に基づいて、各発光装置30が実行すべき点灯期間パターンの開始時刻を決定する。そして、点灯管理サーバ装置10は、点灯期間パターンと開始時刻を点灯情報として制御装置20に送信する。ここで、点灯期間パターンとは、各発光装置30が実行する点灯と消灯の期間の繰り返しの単位を定めた情報である。発光装置30は、受信した点灯情報に含まれる点灯期間パターンに従い、点灯と消灯を繰り返す。時刻サーバ装置40は、時刻を示す時刻情報を提供するサーバ装置である。時刻サーバ装置40は、制御装置20に時刻情報を送信する。
【0018】
複数の発光装置30は、例えば道路上に200mなど比較的長い距離に渡って配置される。したがって、ある位置に設置された制御装置20が無線通信を行うことのできる発光装置30は無線通信可能な範囲に配置された発光装置30に限られる。道路のうち、トンネル内のように、GNSS信号を受信できない領域においては、領域内のすべての発光装置30がいずれかの制御装置20と無線通信が行えるように、道路上に所定の間隔おきに複数の制御装置20が設置されているものとする。一方、トンネルの外においては、制御装置20として、タブレット端末など携帯可能な情報装置が用いられる。そして、制御装置20を所持した管理者が道路上を移動することで、すべての発光装置30との無線通信が行われる。
【0019】
図2は、発光装置30の外観構成を示す図である。発光装置30は、円錐形状のコーンの頂部に設けられている。発光装置30は、点灯部35を備える。点灯部35は、発光体であり、本実施形態では、緑色に発光するLEDである。コーンの表面に表示された数字は、発光装置30の番号を示している。発光装置30には、番号が割り当てられており、発光装置30が道路に設置される場合には、道路の進行方向に沿って、番号順に発光装置30が設置されるものとする。なお、
図2では、白色は点灯を示し、黒色は消灯を示している。すなわち、図面左側から1番目および5番目の発光装置30の点灯部35は点灯し、2~4番目および100番目の発光装置30の点灯部35は消灯している。
【0020】
本実施形態では、複数の発光装置30の点灯が並び順に沿って移動していくように、車両の運転者等に視認されるように、各発光装置30が点灯と消灯を繰り返す。
図3は、発光システム1の複数の発光装置30により実現される点灯と消灯のパターンの説明図である。
図3において、紙面の横方向に、複数の発光装置30に対応する番号(x番目)を示し、紙面の縦方向に、各発光装置30の点灯と消灯の期間を示している。
図3では、白丸は点灯を示し、黒丸は消灯を示している。各発光装置30の点灯と消灯の期間のパターンは、点灯期間パターン61として設定される。このように、各発光装置30は、実行する期間をずらして、同一の点灯期間パターン61を実行する。本実施形態においては、点灯期間パターン61は、その1周期が第1期間~第4期間の計4つの期間に分割され、当該期間を単位として点灯と消灯を定めたパターンである。本実施形態では、1期間の長さは0.3秒とする。すなわち、点灯期間パターン61全体の長さは、1.2秒である。
図3に示す点灯期間パターン61は、点灯、消灯、消灯、消灯と一巡したのち、再び点灯、消灯、消灯、消灯の周期を繰り返すことを示している。
【0021】
さらに、番号順に配置された発光装置30は、1期間ずつずれて点灯期間パターン61を開始する。これにより、複数の発光装置30においては、道路の進行方向に沿った、4台の装置の点灯、消灯、消灯、消灯のパターン62を単位パターンとし、この単位パターンが時間経過と共に、道路上を移動していくような点灯パターンが実現される。ここで、道路の進行方向に沿った複数の発光装置30の点灯と消灯を示すパターン62を移動点灯パターンと称する。ここで、移動点灯パターンは、複数の発光装置30それぞれにおける点灯と消灯の時間変化が定められた点灯パターンの一例である。移動点灯パターンが道路上を移動していくように視認されるためには、各発光装置30による点灯期間パターン61における各期間(第1期間~第4期間)の切り替えのタイミングが一致する必要がある。本実施形態の発光システム1は、このタイミングのずれを補正する。
【0022】
図4は、発光システム1の構成図である。点灯管理サーバ装置10は、CPU、ROM、RAM等を備える制御部11と、記録媒体12と、通信部13と、を備える。制御部11は、点灯管理プログラム110を実行することにより、各発光装置30が点灯期間パターン61を開始する開始時刻を決定する。記録媒体12は、各種データ及び各種プログラムを格納する。記録媒体12は、例えば、装置情報DB121を格納する。装置情報DB121には、発光システム1が備える発光装置30それぞれの装置情報が格納される。ここで、装置情報は、発光装置を識別する発光装置IDを含む。装置情報は、制御装置20を介して各発光装置30から送信される。通信部13は、ネットワーク50を介して制御装置20との通信を行う。
【0023】
制御部11が実行する点灯管理プログラム110は、点灯管理サーバ装置10のコンピュータを、通信処理部111、並び順決定部112、及び時刻算出部113として機能させるためのプログラムである。以下において、通信処理部111、並び順決定部112、及び時刻算出部113が実行するのとして記載する処理は、制御部11(CPU)が実行する処理である。
【0024】
通信処理部111は、通信部13を介した制御装置20とのデータの送受信を行う。並び順決定部112は、装置情報に基づいて発光装置30の並び順を決定する。ここで、並び順とは、道路上に配置された発光装置30の配列である。基本的に、番号順に配置されるが、例えば、番号11の発光装置30が配置されず、1~10、12、13、というように、番号が連続しない場合があり、この場合には、並び順は発光装置30の番号順とは異なるものとなる。本実施形態では、発光装置30の番号(
図2にてコーンの表面に表示された数字)と、発光装置IDと、が対応付けられた対応表が点灯管理サーバ装置10の記録媒体12に記録されている。並び順決定部112は、装置情報に示される発光装置IDと対応表とを参照し、複数の発光装置30の並び順を特定する。特定された並び順は、点灯管理サーバ装置10のRAMに記録される。
【0025】
時刻算出部113は、並び順に基づいて、各々の発光装置30が点灯期間パターンの繰り返しを開始する開始時刻を算出する。時刻算出部113は、1番目の発光装置30の開始時刻については、制御装置20から開始時刻を受信した場合には、受信した時刻を開始時刻として設定する。一方で、時刻算出部113は、制御装置20から開始時刻を受信しなかった場合には、時刻算出の処理時点から所定時間(例えば10分)経過後を開始時刻として設定する。時刻算出部113は、並び順が2番目以降の発光装置30の開始時刻を、当該発光装置30より並び順が1つ前の発光装置30の開始時刻にTを加えることにより算出する。ここで、Tとは、点灯期間パターンの1周期を等分した4つの期間のうちの1期間あたりの長さのことである。本実施形態では、1期間あたりの長さ(=T)は0.3秒であることから、並び順が2番目の発光装置30の開始時刻は、並び順が1番目の発光装置30の開始時刻に0.3秒を足した時刻となる。同様に、例えば、並び順が50番目の発光装置30の開始時刻は、並び順が49番目の発光装置30の開始時刻に0.3秒を足した時刻となる。各発光装置30の点灯期間パターンと開始時刻は、点灯情報として、各発光装置30と無線通信可能な制御装置20を介して、各発光装置30に送信される。
【0026】
次に、制御装置20について説明する。制御装置20は、CPU、ROM、RAM等を備える制御部21と、記録媒体22と、第1通信部23と、第2通信部24と、ユーザIF25と、を備える。制御部21は、発光装置制御プログラム210を実行することにより、各発光装置の点灯と消灯を制御する。記録媒体22は、各種データ及び各種プログラムを格納する。記録媒体22は、例えば、装置情報DB221を格納する。装置情報DB221には、制御装置20が無線通信可能な各発光装置30の装置情報が格納される。第1通信部23は、ネットワーク50を介して点灯管理サーバ装置10及び時刻サーバ装置40と通信を行う。第2通信部24は、発光装置30と無線通信を行うための無線通信回路である。ユーザIF25は、作業者からの入力を受け付け、また作業者に各種の情報を提供するためのインタフェース部である。ユーザIF25は、図示しないタッチパネルディスプレイからなる表示部やタッチパネルや各種のボタン等によって構成される入力部、スピーカー等の音声出力部を備えている。
【0027】
制御部21が実行する発光装置制御プログラム210は、制御装置20のコンピュータを、通信処理部211、設定管理部212、情報収集部213及び点灯制御部214として機能させるためのプログラムである。以下において、通信処理部211、設定管理部212、情報収集部213及び点灯制御部214が実行するものとして記載する処理は、制御部21(CPU)が実行する処理である。
【0028】
通信処理部211は、第1通信部23及びネットワーク50を介したデータの送受信と、第2通信部24を介した無線通信によるデータの送受信を行う。設定管理部212は、同期設定を管理する。ここで、同期設定とは、複数の発光装置30において、各点灯期間パターンにおける点灯と消灯の切り替えのタイミングの基準となる基準時刻を同期させるための処理である。同期設定については後に詳述する。
【0029】
情報収集部213は、第2通信部24を介して、複数の発光装置30それぞれから装置情報を収集する。具体的には、情報収集部213は、装置情報の送信要求及び制御装置20の識別情報である制御装置IDを、複数の発光装置30に対してブロードキャスト送信する。ブロードキャストされる情報には、制御装置20が使用可能な複数の無線チャンネルの中から検出された1つの未使用の空きチャンネルを示す情報が含まれる。当該情報を受信した各発光装置30は、当該空きチャンネルを用いて、制御装置IDにより特定される制御装置20に対し装置情報を送信する。情報収集部213は、こうして発光装置30から送信された装置情報を収集する。収集された装置情報は、装置情報DB221に格納される。装置情報DB221において、装置情報には、発光装置IDに示された発光装置30との通信に用いる空きチャンネルが対応付けられた状態で記録される。
【0030】
点灯制御部214は、点灯パターン及び開始時刻を含む点灯情報を各々の発光装置30に送信するとともに、各々の発光装置30において点灯期間パターンの繰り返しを開始させる。具体的には、点灯制御部214は、装置情報DB221に格納されている発光装置IDを参照し、点灯管理サーバ装置10から受信した点灯情報を各発光装置30に送信する。このとき、発光装置IDに対応付けて記憶される無線チャンネルが通信に用いられる。点灯情報を受信した各発光装置30は、受信した点灯情報を記録媒体32に格納する。開始時刻が経過して発光装置30が点灯期間パターンによる点灯および消灯を開始した後、作業者からユーザIF25を介して終了の指示を受け付けたとする。この場合、点灯制御部314は、各々の発光装置30に対して、点灯期間パターンによる点灯および消灯を終了するよう指示する終了信号を送信することもできる。
【0031】
次に、発光装置30について説明する。発光装置30は、CPU、ROM、RAM等を備える制御部31と、記録媒体32と、通信部33と、GNSS受信部34と、点灯部25と、を備える。制御部31は、点灯実行プログラム310を実行することにより、発光装置の点灯と消灯を実行する。記録媒体32は、各種データ及び各種プログラムを格納する。記録媒体32は、例えば、点灯情報321及び発光装置ID322を格納する。点灯情報321は、通信部33が制御装置20から点灯情報を受信する度に、受信した点灯情報に更新される。発光装置ID322は、当該発光装置30を識別するための識別情報である。
【0032】
通信部33は、制御装置20の第2通信部24と無線通信を行うための無線通信回路である。GNSS受信部34は、Global Navigation Satellite Systemの信号を受信する装置である。GNSS受信部34は、航法衛星からの電波を受信し、図示しないインタフェースを介して、発光装置30の位置を算出するための信号を出力する。航法衛星からの電波には、位置を特定するための情報と時刻情報が含まれている。GNSS受信部34は、この信号を取得して発光装置30の位置を特定する。点灯部35は、
図2を参照しつつ説明したように、発光体である。また、発光装置30は、図示しない計時回路を備えている。
【0033】
制御部31が実行する点灯実行プログラム310は、発光装置30のコンピュータを、通信処理部311、同期管理部312及び点灯実行部313として機能させるためのプログラムである。以下において、通信処理部311、同期管理部312及び点灯実行部313が実行するものとして記載する処理は、制御部31(CPU)が実行する処理である。
【0034】
通信処理部311は、通信部33を介した無線通信によるデータの送受信を行う。同期管理部312は、複数の発光装置30における、基準時刻を同期させるための処理を行う。本処理については、後に詳述する。点灯実行部313は、点灯情報に含まれる開始時刻になると、点灯部35による点灯期間パターンの実行を開始させる。本実施形態では、点灯実行部313は、点灯部35による点灯期間パターンの実行を、点灯期間パターンの第1期間から開始させる。点灯パターンを終了するよう指示する終了信号を発光装置30が受信した際、点灯実行部313は、点灯期間パターンによる点灯部35の点灯および消灯を終了させる。
【0035】
(2)同期のための処理:
次に、複数の発光装置30それぞれが計測する時刻の同期について説明する。複数の発光装置30がトンネルの外の通常の道路に設置されている場合には、各発光装置30は、定期的にGNSS信号を受信する。GNSS信号には、時刻情報が含まれているため、各発光装置30は、GNSS信号を受信する度に、GNSS信号の時刻情報に基づいて、時刻の同期を行う。このように、複数の発光装置30が道路上に設置された状態において、GNSS信号を受信可能な場合には、複数の発光装置30における同期は、GNSS信号の時刻情報に基づいて行われる。
【0036】
一方で、複数の発光装置30がトンネル内に設置される場合もある。この場合、発光装置30は、GNSS信号を受信することができず、GNSS信号に含まれる時刻情報を用いた同期を行うことができない。そこで、本実施形態においては、トンネル内に設置された発光装置30に対しては、トンネル内に配置された複数の発光装置30のうち一部の発光装置30が他の発光装置30に対し、同期信号を送ることで時刻の同期を行う。
【0037】
以下では、
図1に示す複数の発光装置30がトンネル内に設置されており、制御装置Aは、発光装置群G1を管理し、制御装置Bは発光装置群G2を管理するとする。すなわち、発光装置群G1に属する複数の発光装置30は、制御装置A(制御装置20)と無線通信可能であり、制御装置Aにより制御されるものとする。また、発光装置群G2に属する複数の発光装置30は、制御装置B(制御装置20)と無線通信可能であり、制御装置Bにより制御されるものとする。この場合において、発光装置群G1に属する複数の発光装置30と発光装置群G2に属する複数の発光装置30を含むすべての発光装置30の同期を行う場合について説明する。なお、この場合、制御装置Aと制御装置Bは、異なる無線チャンネルを用いてそれぞれの管理対象の発光装置群G1,G2の発光装置30との無線通信を行う。したがって、制御装置Aが送信した情報を発光装置群G2に属する発光装置30が受信する、発光装置群G2に属する発光装置30か送信した情報を制御装置Aが受信する、ということは生じない。
【0038】
図5は、制御装置20により実行される第1同期処理を示すフローチャートである。
図6及び
図7は、発光装置30により実行される第2同期処理を示すフローチャートである。
【0039】
まず、
図5に示す、制御装置20の第1同期処理により、制御装置間の同期(制御装置Aと制御装置Bの同期)が行われる。具体的には、制御装置20の通信処理部211は、第1通信部23を介して時刻サーバ装置40から時刻情報を受信する(ステップS100)。次に、制御部21は、時刻情報に従い、自装置の時刻を補正する(ステップS105)。複数の制御装置20(制御装置A及び制御装置B)のそれぞれが、ステップS100及びステップS105の処理を実行することで、複数の制御装置20の時刻が同期される。
【0040】
次に、管理者等のユーザは、制御装置20を用いて、複数の発光装置30のすべてに対して、順番に、制御装置20と同期させるための同期設定を行っていく。具体的には、ユーザは、制御装置20から発光装置30に同期設定情報を送信するためのユーザ操作を行う。
【0041】
これに対し、S105の処理の後、制御部21は、ユーザ操作に応じて、管理対象の発光装置群に属する各発光装置30に対して同期設定情報を送信する(ステップS110)。本処理は、同期設定に対応した処理である。ここで、同期設定情報とは、制御装置20と同期するための情報である。同期設定情報には、発光装置30がトンネル内に設置されたことを示す設置情報と、時刻サーバ装置40から受信した時刻情報と、設定待機時間が含まれる。設定待機時間は、発光装置30毎に異なる時間である。ユーザは、各発光装置30に対して、順番に同期設定を行い、制御装置20は、各発光装置30に対する同期設定において、同期設定が行われる順番に応じて、より長い時間を、各発光装置30に対する設定待機時間として設定する。ここで、設定待機時間は、待機時間の一例である。そして、各発光装置30に対して設定された設定待機時間を含む同期設定情報が、各発光装置30に送信される。以上で、制御装置20による第1同期処理が完了する。
【0042】
本実施形態の発光システム1においては、同一の発光装置群に属する複数の発光装置30のうち、最初に同期設定が行われた発光装置30は、マスター装置に設定され、同一の発光装置群に属する残りの発光装置30は、スレーブ装置に設定される。そして、マスター装置は、制御装置20から受信した時刻情報に対応した同期パケット(同期信号)の定期的な送信を開始する。マスター装置は、例えば、1秒毎に、同期パケットを送信する。
【0043】
スレーブ装置に設定された発光装置30は、スレーブ装置に設定された後は、定期的に同期パケットを受信し、同期パケットに基づいて、時刻を補正する。スレーブ装置は、点灯期間パターンにおけるタイミングの補正も、同期パケットに基づいて行う。このように、本実施形態においては、複数の発光装置30のうち所定の1台がマスター装置として設定されているのではなく、同期設定時にマスター装置が都度決定される。以下、
図6に示すフローチャートを参照しつつ、発光装置30の処理について説明する。
【0044】
発光装置30では、第2同期処理において、まず、通信処理部311は、制御装置20から同期設定情報を受信するまで待機し(ステップS200でN)、同期設定情報を受信した場合に(ステップS200でY)、処理をステップS205へ進める。ステップS205において、同期管理部312は、同期設定情報に示される時刻情報に従い、同期設定を行う。具体的には、同期管理部312は、当該発光装置30がカウントする時刻を補正する。次に、同期管理部312は、第1時間のカウントを開始する(ステップS210)。第1時間は、同期設定情報を受信したタイミングからの経過時間である。次に、同期管理部312は、同期パケットを受信したか否かを確認する(ステップS215)。
【0045】
なお、同期パケットは、マスター装置として設定された発光装置30から送信されるが、本処理については後述する。同期パケットは、同一の発光装置群に属する複数の発光装置30が点灯期間パターンにおけるタイミングを補正するための同期信号の一例である。また、同期パケットによる点灯期間パターンにおけるタイミングが補正されることで、複数の発光装置30により実現される移動点灯パターンの時間変化のタイミングも補正される。すなわち、同期パケットは、移動点灯パターン(点灯パターン)の時間変化のタイミングを補正するための同期信号の一例である。
【0046】
同期管理部312は、同期パケットを受信しなかった場合には(ステップS215でN)、処理をステップS220へ進める。ステップS220において、同期管理部312は、同期設定情報を受信したタイミングから、同期設定情報に含まれる設定待機時間が経過したか否かを確認する。具体的には、同期管理部312は、ステップS210においてカウントを開始した第1時間が設定待機時間を超えた場合に、設定待機時間が経過したと判断する。同期管理部312は、設定時間が経過していない場合には(ステップS220でN)、処理をステップS215へ進め、同期パケットの受信を待つ。同期管理部312は、設定待機時間が経過した場合には(ステップS220でY)、第1時間のカウントを終了し、その後、処理をステップS225へ進める。
【0047】
ステップS225において、通信処理部311は、同一の発光装置群に属する発光装置30に対する同期パケット送信を開始する。同期パケットには、時刻サーバ装置40から受信した時刻情報に従い生成された、タイミング情報が含まれる。これ以降、通信処理部311は、定期的に同期パケットを送信する。次に、同期管理部312は、当該発光装置30をマスター装置に設定する(ステップS230)。このように、同期管理部312は、同期パケットを受信する前に、同期設定情報に含まれる設定待機時間が経過した場合に、当該発光装置30をマスター装置に設定する。そして、通信処理部311は、マスター装置として同期パケットの送信を開始する。なお、同期パケット送信は、当該発光装置30を管理する制御装置20に割り当てられた無線チャンネルを用いたブロードキャスト送信である。これにより、同一の発光装置群に属する発光装置30に同期パケットが送信される。
【0048】
次に、制御部31は、制御装置20から、処理の終了指示を受信したか否かを確認する(ステップS235)。制御部31は、終了指示を受信するまで同期パケットのブロードキャスト送信を継続し(ステップS235でN)、終了指示の受信が確認された場合には(ステップS235でY)、処理を終了する。このように、マスター装置に設定された発光装置30は、マスター装置に設定された後は、定期的に当該発光装置30の時刻のカウントに従い、同期パケットを送信する。
【0049】
一方、ステップS215において、同期パケットを受信した場合には(ステップS215でY)、制御部31は、第1時間のカウントを終了した上で、当該発光装置30をスレーブ装置に設定する(ステップS240)。作業者の操作に従い、制御装置20から最初に同期設定情報を受信し、同期設定が完了した発光装置30は、ステップS225において、速やかに同期パケットの送信を開始する。したがって、同期設定情報の送信が2番目以降の発光装置30は、設定待機時間が経過する前に、ステップS215において、マスター装置から同期パケットを受信することになり、スレーブ装置に設定される。
【0050】
次に、同期管理部312は、同期パケットに従い、時刻を補正する(ステップS245)。次に、同期管理部312は、マスター装置に設定された発光装置30から同期パケットを受信したか否かを確認する(ステップS250)。同期パケットを受信しなかった場合には(ステップS250でN)、制御部21は、処理をステップS260へ進める。同期パケットを受信した場合には(ステップS250でY)、同期管理部312は、同期パケットに従い、時刻を補正する(ステップS255)。さらに、同期管理部312は、点灯期間パターンに応じた点灯部35の点灯と消灯が開始されている場合には、同期パケットを受信する度に、点灯期間パターンにおける期間を切り替えるタイミングを同期パケットに基づいて補正する。以上のように、発光装置30は、スレーブ装置として機能する場合には、同期パケット(同期信号)を受信する一方、同期パケットの送信は行わない。
【0051】
次に、同期管理部312は、第2時間のカウントを開始する(ステップS260)。第2時間は、同期パケットを受信したタイミングからの経過時間である。次に、同期管理部312は、直前に同期パケットを受信したタイミングから、予め設定された共通待機期間が経過したか否かを確認する(ステップS265)。ここで、共通待機期間は、すべての発光装置30に予め設定された値であり、いずれの発光装置30においても、等しい値が共通待機時間として設定されているものとする。スレーブ装置が同期パケットを受信しない場合には、同期パケットの送信元であるマスター装置が故障している可能性がある。ステップS265の処理は、マスター装置が故障しているか否かを判断するための処理である。
【0052】
ステップS265において、同期管理部312は、具体的には、ステップS255においてカウントを開始した第2時間が共通待機時間を超えた場合に、共通待機時間が経過したと判断する。共通待機時間が経過していない場合には(ステップS265でN)、制御部31は、処理をステップS270へ進める。そして、ステップS270において、制御部31は、制御装置20から、処理の終了指示を受信したか否かを確認する。制御部31は、終了指示の受信が確認された場合には(ステップS270でY)、処理を終了する。制御部31は、終了指示の受信が確認されなかった場合には(ステップS270でN)、処理をステップS250へ進める。この場合、制御部31は、ステップS250以降の処理を繰り返すことで、定期的に時刻補正(ステップS255)を行う。なお、同期管理部312は、ステップS250において、同期パケットを受信した場合に、第2時間をカウント中の場合にはこれを終了し、続くステップS260において、改めて第2時間のカウントを開始する。
【0053】
同期管理部312は、共通待機時間が経過した場合には(ステップS265でY)、第2時間のカウントを終了し、第3時間のカウントを開始する(ステップS275)。第3時間は、共通待機時間が経過したタイミングからの経過時間である。次に、同期管理部312は、共通待機時間が経過したタイミングから、さらに設定待機時間が経過したか否かを判断する(ステップS280)。同期管理部312は、設定待機時間が経過していない場合には(ステップS280でN)、処理をステップS285へ進める。ステップS285において、同期管理部312は、同期パケットを受信したか否かを判断する。同期管理部312は、同期パケットを受信した場合には(ステップS285でY)、第3時間のカウントを終了し、処理をステップS255へ進める。すなわち、この場合には、同期管理部312は、同期パケットに基づく時刻補正を継続する。
【0054】
同期管理部312は、同期パケットを受信しない場合には(ステップS285でN)、処理をステップS290へ進める。ステップS290において、制御部31は、終了指示を受信したか否かを確認する。制御部31は、終了指示の受信が確認された場合には(ステップS290でY)、処理を終了する。制御部31は、終了指示の受信が確認されなかった場合には(ステップS290でN)、処理をステップS280へ進める。すなわち、この場合には、同期管理部312は設定待機時間が経過するまでに、同期パケットを受信するかの確認を継続する。
【0055】
ステップS280において、制御部31は、設定待機時間が経過した場合(ステップS280でY)、すなわち、同期パケットを受信しない状態で、共通待機時間が経過し、さらに設定待機時間が経過した場合には、第3時間のカウントを終了した上で、処理をステップS225へ進める。そして、ステップS225において、同期管理部312は、同期パケットの送信を開始し、さらに、当該発光装置30をマスター装置に設定する(ステップS230)。
【0056】
これにより、当該発光装置30は、スレーブ装置からマスター装置に変更になり、以降は、故障した発光装置30に代わって、ステップS225において、同期パケットの送信を開始する。さらに、前述の通り、各発光装置30には、設定待機時間として、異なる値が設定されている。このため、複数の発光装置30が同時にステップS225において同期パケットの送信を開始することがない。そして、最も早くステップS225の処理を行った発光装置30により同期パケットが送信されると、残りのスレーブ装置は、新たにマスター装置になった発光装置30から同期パケットを受信する。したがって、残りのスレーブ装置は、ステップS225へ進むことなく、スレーブ装置として、同期パケットの受信を待つ処理を繰り返す。このように、各発光装置30に異なる設定待機時間が設定されているため、最も短い設定待機時間が設定されたスレーブ装置がマスター装置になる。したがって、スレーブ装置間でマスター装置の取り合いになるのを防ぐことができる。
【0057】
続いて、
図8を参照しつつ、発光装置群G1に含まれる複数台の発光装置30(L01、L02・・・)のそれぞれが第2同期処理を実行する場合の、各発光装置30の動作を具体的に説明する。
図8の上段に示すように、まず、発光装置群を管理する制御装置により、1台の発光装置(
図8の例では、L01)に対して、同期設定情報が送信され、同期設定が行われる。これにより、L01の発光装置30は、同期パケットの送信を開始し(ステップS225)、マスター装置に設定される(ステップS230)。
【0058】
他の発光装置30(
図8の例では、L02、L03・・・)は、L01の発光装置30に続いて、順に、同期設定が行われる。そして、他の発光装置30(L02、L03・・・)は、設定待機時間が経過する前に同期パケットを受信するので(ステップS215でY)、スレーブ装置に設定される(ステップS240)。よって、発光装置群G1の各発光装置30は、GNSS信号を受信できない場合においても、点灯期間パターンに応じた点灯と消灯を同期して実行することができる。
【0059】
さらに、
図8の中段に示すように、マスター装置が故障したとする。この場合には、マスター装置から同期パケットの送信が行われなくなる。このように、同期パケットの送信が行われなくなった場合には、スレーブ装置は、最後に同期パケットを受信してから共通待機期間が経過し、さらに設定待機時間が経過すると、同期パケットを送信する(ステップS225)。そして、スレーブ装置は、マスター装置に設定される(ステップS230)。前述の通り、最も短い設定待機時間が設定されたスレーブ装置がマスター装置に設定される。残りのスレーブ装置は、設定待機時間が経過する前に同期パケットを受信するので、マスター装置に変更されることがない。これにより、マスター装置が故障した場合にも、直ちに新たなマスター装置が設定されるので、同期パケットの送信が継続される。
【0060】
例えば、複数のスレーブ装置(L02、L03・・・)のうち、L02のスレーブ装置が、他のスレーブ装置よりも早く、ステップS225の処理を行ったとする。この場合には、
図8の下段に示すように、L02の発光装置30は新たにマスター装置に設定される。そして、他のスレーブ装置(L03、L04・・・)は、経過待機期間が経過する前に、新たなマスター装置(L02)から同期パケットを受信するため、スレーブ装置としてステップS250~ステップS290の処理を継続する。
【0061】
なお、各制御装置20から、異なる発光装置群(例えば、G1とG2)に送信される時刻情報が同期していることから、異なる発光装置群(例えば、G1とG2)のマスター装置が送信する同期パケット同士も同期している。これにより、道路上に設置されたすべての発光装置30における同期が実現される。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る発光システム1においては、複数の発光装置間での点灯同期を行うことができる。これにより、複数の発光装置30が同期することで、運転者等からの点灯パターンの見え方が向上するので、運転者による速やかな速度回復や速度抑制が期待できる。さらに、GNSS信号を不要とするため、設置場所によらず、同型の誘導灯を計画することができる。さらに、制御装置が複数台存在する場合、すなわち、複数の発光装置群それぞれを制御する複数の制御装置が存在する場合には、各制御装置は、同一の時刻サーバ装置40から受信した時刻情報に従い時刻を補正することで、互いに同期する。そして、各制御装置が、それぞれ同期した時刻情報を、管理対象の発光装置群に設定する。したがって、異なる発光装置群に属する発光装置も同期することができる。さらに、発光装置は無線通信により同期が可能なため、時刻情報を受信するための通信回線の設置等、特別な工事を不要とすることができ、部材の削減と、設置工事の簡略化を実現できる。
【0063】
(3)その他:
以上の実施形態は本発明を実施するための一例であり、他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、発光システム1の各装置が行う処理の一部が複数の装置により実行されてもよく、また、所定の装置する処理が他の装置において実行されてもよい。また、上述の実施形態の一部の構成が省略されてもよいし、処理の順序が変動または省略されてもよい。
【0064】
そうした第1の変形例としては、制御装置20としては、トンネル内においても、携帯型の制御装置20が利用されてもよい。また、逆に、トンネル外においても、制御装置20は、一定間隔おきに設置されてもよい。
【0065】
第2の変形例としては、
図5を参照しつつ説明した、同期パケットを用いた同期処理は、トンネル外で、GNSS信号を受信できる状況において実行されてもよい。設置場所によらず、同期パケットを用いた同期処理が行われる場合には、発光装置30は、GNSS受信部を備えなくてもよい。この場合には、同期設定において、制御装置20は、トンネル内外に関わらず、道路に設置されたことを示す設置情報を発光装置30に送信する。そして、発光装置30は、設置情報により、ステップS205における同期設定を行えばよい。
【0066】
第3の変形例としては、発光装置30は、GNSS信号を受信した場合には、GNSS信号に基づいて同期を行い、GNSS信号を受信しなかった場合には、マスター装置から送信される同期パケットにより同期を行うこととしてもよい。具体的には、発光装置30は、第2同期処理において、ステップS200の処理の前に、GNSS信号を受信したか否かを確認する。そして、発光装置30は、GNSS信号を受信した場合には、GNSS信号に基づいて同期を行い、GNSS信号を受信しなかった場合には、ステップS200以降の処理を実行することで、同期パケットによる同期を行う。これにより、点灯実行部313は、GNSS信号を受信した場合には、GNSS信号に応じた発光制御を行い、GNSS信号を受信しなかった場合には、同期パケットに応じた点灯を実行することができる。
【0067】
第4の変形例としては、制御装置20がマスター装置として機能し、制御装置20の管理対象となる発光装置群に含まれるすべての発光装置30がスレーブ装置として機能してもよい。この場合には、制御装置20は、ステップS110の処理の後、各発光装置30に対し、定期的に同期パケットを送信する。このように、制御装置20が同期パケットを送信する場合においても、すべての発光装置30が同期することができる。
【0068】
第5の変形例としては、発光システム1は、点灯管理サーバ装置10を備えなくてもよい。この場合には、例えば、作業者が、携帯型の制御装置20を持ちながら移動することで、制御装置20がすべての発光装置30と、発光装置群単位で通信を行い、複数の発光装置30それぞれの点灯期間パターンの開始時刻を設定してもよい。以下では、この場合の処理について説明する。
【0069】
制御装置20は、発光装置30の装置情報に含まれる発光装置IDに基づいて、並び順を決定する。そして、制御装置20は、並び順が1番目の発光装置30の開始時刻に基づいて、並び順が2番目以降の発光装置30の開始時刻を設定する。並び順が1番目の発光装置30の開始時刻は、以下のように決定される。すなわち、第m群に含まれる各々の発光装置30を第m-1群と同期させる場合、第m群の1番目の発光装置の開始時刻Tm1は、(式1)を用いて算出される。
Tm1=T11+RT …(式1)
T11:第1群の1番目の発光装置30の開始時刻
T:点灯期間および消灯期間の長さ(秒)
R:第1群から第m-1群までに含まれる発光装置30の台数をSで割った場合の余り
(式1)を構成するT11、RTについてそれぞれ説明する。T11は、上述しているとおり、第1群の1番目の発光装置30の開始時刻である。換言すれば、第1群の1番目の発光装置30は、T11で示された時刻より点灯期間パターンを開始する。RTは、第1群の1番目の発光装置30の開始時刻(T11)と比べて、第m群の1番目の発光装置30が少なくとも何期間分だけ遅れて点灯期間パターンを開始すべきかを示す値である。
【0070】
例えば、(式1)を用いて、第2群の1番目の発光装置30の開始時刻(T
21)を算出するとする。
図4Aに示されているように、第1群に含まれる発光装置30の台数が50台であり、第1群に設定された点灯期間パターンに含まれる期間(点灯期間および消灯期間)の合計数(=S)が4である場合には、Rの値は、(式2)より2となる。
50÷4(=S)=12…余り2(=R) …(式2)
【0071】
したがって、第2群の1番目の発光装置30は、第1群の1番目の発光装置30の開始時刻と比べて少なくとも2期間分だけ遅れて点灯期間パターンを開始すれば、第1群に対して第2群の点灯を連携させることができる。換言すれば、少なくともT21=T11+RT(連携成立条件式とする)を満たせば、第1群の点灯に対して第2群の点灯を連携させることができる。
【0072】
また、他の例としては、制御装置20が、一定間隔おきに設置されている場合には、複数の制御装置20間で通信を行うことで、各発光装置30の点灯期間パターンの開始時刻を設定してもよい。具体的には、第1群に対応した制御装置20が、第1群の発光装置30の点灯期間パターンの開始時刻を決定する。そして、第1群の制御装置20は、第2群の制御装置20に第1群の発光装置30の台数を通知する。第2群の制御装置20は、第1群の発光装置30の台数に基づいて、第2群の発光装置30の点灯期間パターンの開始時刻を決定する。そして、第2群の制御装置20は、第1群と第2群の発光装置30の合計台数を第3群の制御装置20に通知する。このように、第1群の制御装置20から最後の群の制御装置20までが、順に各群の発光装置30の点灯期間パターンの開始時刻を決定する。
【0073】
第6の変形例としては、発光装置30は、設定待機時間を考慮せず、実施形態において説明した共通待機時間に相当する待機時間が経過した場合に、同期パケットの送信を開始し、マスター装置に設定されてもよい。例えば、発光装置30における同期パケット受信に係る遅延時間に差がある場合には、共通待機時間の経過タイミングは各発光装置30において異なる。このような場合には、各発光装置が同時に同期パケット待機時間を考慮しなくてもよい。また、他の例としては、発光装置30は、実施形態において説明した設定待機時間と共通待機時間の合計時間を各発光装置の待機時間とし、待機時間が経過した場合に、同期パケットの送信を開始し、マスター装置に設定されてもよい。
【0074】
第7の変形例としては、発光装置30の設置方法は、実施形態に限定されるものではない。すなわち、発光装置30は、コーンの頂部以外の位置に設置されてもよい。例えば、発光装置30は、道路脇に設置された柱の先端や、壁面、トンネルの天井面などに取り付けられてもよい。
【0075】
さらに、本発明の手法は、プログラムや方法としても適用可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、システムを制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのプログラムの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし半導体メモリであってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【符号の説明】
【0076】
1…発光システム、10…点灯管理サーバ装置、11…制御部、12…記録媒体、13…通信部、20…制御装置、21…制御部、22…記録媒体、23…第1通信部、24…第2…通信部、25…ユーザIF、30…発光装置、31…制御部、32…記録媒体、33…通信部、34…GNSS受信部、35…点灯部、121…装置情報DB、221…装置情報DB、321…点灯情報、322…発光装置