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  • 特許-ハダニ類の防除方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】ハダニ類の防除方法
(51)【国際特許分類】
   A01M 1/00 20060101AFI20231214BHJP
   A01N 61/00 20060101ALI20231214BHJP
   A01P 7/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A01M1/00 Z
A01N61/00 A
A01P7/02
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022108992
(22)【出願日】2022-07-06
(62)【分割の表示】P 2020522241の分割
【原出願日】2019-05-29
(65)【公開番号】P2022132344
(43)【公開日】2022-09-08
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2018103188
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】518189998
【氏名又は名称】株式会社アクアソリューション
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴志
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-053004(JP,A)
【文献】特開2015-211973(JP,A)
【文献】特開2015-097509(JP,A)
【文献】特開2018-015715(JP,A)
【文献】株式会社コスモスエンタープライズ,農業用ナノバブル水素水で病害虫を防除! 農薬の使用回数が激減!バラ(切り花)栽培への使用事例をご紹介。,https://www.dreamnews.jp/press/0000040242
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01M 1/00
A01N 61/00
A01P 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧溶解方式にて水中にナノバブルを発生させてナノバブル水を生成し、
前記ナノバブル水を単独で用いた散水を実施して、前記ナノバブル水を植物体に施用し、
前記植物体が、果菜類であり、
前記ナノバブル水に含まれる気泡の最頻粒子径が10~500nmであり、
前記ナノバブル水が、1×10~1×1010個/mLの気泡を有し、
前記ナノバブル水に含まれる気泡が、酸素、窒素、二酸化炭素およびオゾンからなる群から選択される少なくとも1種の気体を含む、ハダニ類の防除方法。
ここで、気泡が前記少なくとも1種の気体を含む態様は、空気中の前記少なくとも1種の気体よりも高い濃度で含む態様をいう。
【請求項2】
前記植物体が、イチゴである、請求項1に記載のハダニ類の防除方法。
【請求項3】
前記ナノバブル水が、5×10~1×1010個/mLの気泡を有する、請求項1又は2に記載のハダニ類の防除方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハダニ類の防除方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハダニ類の防除方法として、置換フェニルエーテル化合物等の殺ダニ剤を植物体に施用する方法が知られている。例えば、特許文献1には、所定の置換フェニルエーテル化合物を有効成分として含有することを特徴とする殺ダニ剤が記載されている。
【0003】
一方で、ハダニ類は、繁殖力が強く、かつ、世代交代の期間が短いため、殺ダニ剤に対する耐性を獲得しやすいという問題があった。そのため、いったん植物体にハダニ類が寄生してしまうと、殺ダニ剤を使用してこれを駆除する場合には、殺ダニ剤を輪番で使用する等の煩雑な管理が求められていた。また、一部の殺ダニ剤は、ミツバチ、および、ハダニ類の天敵昆虫にも危害を及ぼす場合があることが知られ、殺ダニ剤を使用しなくても高い防除効果が得られるハダニ類の防除方法が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-61825号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、殺ダニ剤を使用しなくても高い防除効果が得られるハダニ類の防除方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、植物体にナノバブル水を施用することにより、殺ダニ剤を使用しなくても、ハダニ類の防除効果が高くなることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0007】
[1] ナノバブル水を植物体に施用する、ハダニ類の防除方法。
[2] 上記ナノバブル水を用いた散水、および、上記ナノバブル水を用いて希釈した農薬の散布のうち、少なくとも一方を実施する、[1]に記載のハダニ類の防除方法。
[3] 上記ナノバブル水に含まれる気泡の最頻粒子径が10~500nmである、[1]または[2]に記載のハダニ類の防除方法。
[4] 上記ナノバブル水に含まれる気泡が、酸素、窒素、二酸化炭素およびオゾンからなる群から選択される少なくとも1種の気体を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のハダニ類の防除方法。
[5] 上記ナノバブル水が、1×10~1×1010個/mLの気泡を有する、[1]~[4]のいずれかに記載のハダニ類の防除方法。
[6] 上記植物体が、果菜類である、[1]~[5]のいずれかに記載のハダニ類の防除方法。
[7] 上記植物体が、イチゴである、[6]に記載のハダニ類の防除方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、殺ダニ剤を使用しなくても、高い防除効果を得ることができるハダニ類の防除方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ナノバブル生成装置の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明のハダニ類の防除方法(以下、「本発明の防除方法」とも略す。)は、ナノバブル水を植物体に施用する、ハダニ類の防除方法である。
ここで、ハダニ類としては、例えば、ナミハダニ(Tetranychus urticae)、カンザワハダニ(Tetranychus kanzawai)、ミカンハダニ(Panonychus citri)、リンゴハダニ(Panonychus ulmi)、イエローマイト(Eotetranychus carpini)、および、テキサスシトラスマイト(Eotetranychus banksi)等が挙げられるが、上記に制限されない。
以下に、本発明の防除方法で用いるナノバブル水および任意の成分について詳述する。
【0012】
〔ナノバブル水〕
本発明の防除方法で用いるナノバブル水は、直径が1μm未満の気泡を含む水であって、上記気泡を混入させた水である。なお、「上記気泡を混入させた水」とは、ナノバブル水の生成に使用する水(例えば、不純物を含む井水)などに起因して不可避的に含まれる上記気泡を含む水を除外する意図である。
ナノバブル水に含まれる気泡の直径(粒子径)、ならびに、後述する気泡の最頻粒子径および気泡の個数は、水中の気泡のブラウン運動移動速度を、ナノ粒子トラッキング解析法を用いて測定した値であり、本明細書においては、ナノ粒子解析システム ナノサイトシリーズ(NanoSight社製)により測定した数値を採用する。
なお、ナノ粒子解析システム ナノサイトシリーズ(NanoSight社製)では、直径(粒子径)は、粒子のブラウン運動の速度を計測し、その速度から算出することができ、最頻粒子径は、存在するナノ粒子の粒子径分布から、モード径として確認することができる。
【0013】
本発明においては、ハダニ類の防除効果がより向上する理由から、上記ナノバブル水に含まれる気泡の最頻粒子径が10~500nmであることが好ましく、30~300nmであることがより好ましく、70~130nmであることが更に好ましい。
【0014】
上記ナノバブル水に含まれる気泡を構成する気体は特に限定されないが、水中に長時間残存させる観点から、水素以外の気体が好ましく、具体的には、例えば、空気、酸素、窒素、フッ素、二酸化炭素、および、オゾンなどが挙げられる。
これらのうち、ハダニ類の防除効果がより向上する理由から、酸素、窒素、二酸化炭素およびオゾンからなる群から選択される少なくとも1種の気体を含むことが好ましく、特に、植物体の生育が良好となり、また、気泡がより長時間残存することができる理由から、酸素を含むことがより好ましい。
ここで、酸素を含むこととは、空気中の酸素濃度よりも高い濃度で含むことをいう。窒素、および、二酸化炭素も同様である。なお、酸素の濃度については、気泡中の30体積%以上であることが好ましく、50体積%超100体積%以下であることが好ましい。
【0015】
上記ナノバブル水は、ハダニ類の防除効果がより向上する理由から、1×10~1×1010個/mLの気泡を有していることが好ましく、特に、気泡の生成時間と気泡の残存性のバランスが良好となる理由から、1×10個/mLより多く、1×1010個/mLより少ない気泡を有していることがより好ましく、5×10~5×10個/mLの気泡を有していることが更に好ましい。特に、ナノバブル水の気泡が5×10個/mLを超えると、従来の栽培方法において必要とされてきた農薬の散布が不要となる等の効果がより顕著に奏され、ナノバブル水によるハダニ類の防除効果を十分に享受することが可能となる。
【0016】
上記ナノバブル水は、水および気泡以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記他の成分としては、例えば、肥料、および、農薬等が挙げられる。ナノバブル水中における他の成分の種類、および、含有量は特に限定されず、目的に応じて選択可能である。
ただし、本発明においては、上記他の成分として、上記ナノバブル水中にラジカルを実質的に含まないことが好ましい。なお、「ラジカルを実質的に含まない」とは、上記ナノバブル水の生成に使用する水(例えば、不純物を含む井水)などに起因して不可避的にラジカルが含まれることを除外する意図ではなく、何らかの操作で生成させたラジカルを混入させることを除外する意図である。
また、本発明の防除方法は、殺ダニ剤を使用しなくても高い防除効果を有するため、ナノバブル水は殺ダニ剤を含む農薬を含まなくてもよい。
【0017】
上記ナノバブル水の生成方法としては、例えば、スタティックミキサー法、ベンチュリ法、キャビテーション法、蒸気凝集法、超音波法、旋回流法、加圧溶解法、および、微細孔法等が挙げられる。
ここで、本発明の防除方法は、上記ナノバブル水を施用する前に、上記ナノバブル水を生成させる生成工程を有していてもよい。すなわち、本発明の防除方法は、例えば、貯水タンク、井戸、もしくは農業用水などの水源から水をナノバブル生成装置に取り込み、ナノバブル水を生成させる生成工程と、生成したナノバブル水を施用する施用工程とを有する防除方法であってもよい。なお、水源からの水をナノバブル生成装置に取り込む手法としては、例えば、桶またはポンプ等を用いて水源から汲み上げた水をナノバブル生成装置に供給する手法、および、水源とナノバブル生成装置との間に敷設された流路をナノバブル生成装置に繋いで流路からナノバブル生成装置へ水を直接送り込む手法などが挙げられる。
【0018】
また、上記ナノバブル水の生成方法としては、意図的にラジカルを発生させることがない装置を用いた生成方法が好ましく、具体的には、例えば、特開2018-15715号公報の[0080]~[0100]段落に記載されたナノバブル生成装置を用いて生成する方法が挙げられる。なお、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
【0019】
意図的にラジカルを発生させることがない他のナノバブル生成装置としては、例えば、水を吐出する液体吐出機と、液体吐出機から吐出された水に気体を加圧して混入させる気体混入機と、気体を混入させた水を内部に通すことにより水中に微細気泡を生成する微細気泡生成器と、を有する微細気泡生成装置であって、上記気体混入機が、上記液体吐出機と上記微細気泡生成器の間において、加圧された状態で上記微細気泡生成器に向かって流れる液体に、気体を加圧して混入させる微細気泡生成装置が挙げられる。具体的には、図1に示すナノバブル生成装置を用いて生成する方法が挙げられる。
ここで、図1に示すナノバブル生成装置10は、その内部に液体吐出機30、気体混入機40、および、ナノバブル生成ノズル50を備える。
また、液体吐出機30は、ポンプによって構成され、ナノバブル水の原水(例えば、井戸水)を取り込んで吐出する。気体混入機40は、圧縮ガスが封入された容器41と、略筒状の気体混入機本体42とを有し、液体吐出機30から吐出された水を気体混入機本体42内に流しつつ、気体混入機本体42内に容器41内の圧縮ガスを導入する。これにより、気体混入機本体42内で気体混入水が生成されることになる。
また、ナノバブル生成ノズル50は、その内部に気体混入水が通過することにより、加圧溶解の原理に従って気体混入水中にナノバブルを発生させるものであり、その構造としては、特開2018-15715号公報に記載されたナノバブル生成ノズルと同じ構造が採用できる。ナノバブル生成ノズル50内に生成されたナノバブル水は、ナノバブル生成ノズル50の先端から噴出した後、ナノバブル生成装置10から流出し、不図示の流路内を通じて所定の利用先に向けて送水される。
以上のようにナノバブル生成装置10では、気体混入機40が、液体吐出機30とナノバブル生成ノズル50の間において、加圧された状態でナノバブル生成ノズル50に向かって流れる水(原水)に、圧縮ガスを混入させる。これにより、液体吐出機30の吸込み側(サクション側)で気体を水に混入させるときに生じるキャビテーション等の不具合を回避することができる。また、ガスが加圧(圧縮)された状態で水に混入されるので、ガス混入箇所での水の圧力に抗してガスを混入させることができる。このため、ガス混入箇所において特に負圧を発生させなくとも、ガスを適切に水に混入させることが可能となる。
さらに、液体吐出機30のサクション側に、井戸または水道等の水源から供給される水の流路が繋ぎ込まれており、その流路において液体吐出機30の上流側から液体吐出機30に流れ込む水の圧力(すなわち、サクション側の水圧)が正圧であるとよい。この場合には、上記の構成がより有意義なものとなる。すなわち、液体吐出機30の上流側の水圧(サクション圧)が正圧となる場合には、液体吐出機30の下流側でガスを水に混入させることになるため、液体吐出機30の下流側でもガスを適切に水に混入させることができるナノバブル生成装置10の構成がより際立つことになる。
【0020】
また、上記ナノバブル水の生成に使用する水は特に限定されず、例えば、雨水、水道水、井水、農業用水、および、蒸留水等を使用することができる。
このような水は、ナノバブル水の発生に供される前に他の処理を施されたものであってもよい。他の処理としては、例えば、pH調整、沈殿、ろ過、および、滅菌(殺菌)等が挙げられる。具体的には、例えば、農業用水を使用する場合、典型的には、沈殿、および、ろ過のうちの少なくとも一方を施した後の農業用水を使用してもよい。
【0021】
本発明においては、上記ナノバブル水の植物体への施用態様は、植物体の栽培方法により異なるため特に限定されないが、例えば、土耕栽培において上記ナノバブル水を散水する態様、土耕栽培において上記ナノバブル水によって希釈された農薬を散布する態様、養液栽培(水耕、噴霧耕、あるいは固形培地耕)または養液土耕栽培(灌水同時施肥栽培)において上記ナノバブル水によって希釈された培養液を培地に供給する態様、および、養液土耕栽培において上記ナノバブル水をそれ単独で散水(灌水)する態様などが挙げられる。
これらのうち、操作が簡便であり、ハダニ類の防除効果がより向上する理由から、上記ナノバブル水を用いた散水、および、上記ナノバブル水を用いて希釈した農薬の散布のうち、少なくとも一方を実施する態様が好ましい。
なお、施用の一態様である「散水」の方法は特に限定されず、栽培方法が土耕栽培である場合には、例えば、植物体の全体に水を散布する方法、植物体の一部(例えば、茎、または葉など)に水を散布する方法、および、植物体が植えられた土壌に水を散布する方法などが挙げられる。また、栽培方法が養液土耕栽培である場合は、上述したように、灌水による散水であってもよい。
【0022】
また、本発明においては、上記ナノバブル水の植物体への施用時期は、施用態様および植物体の種類により異なるため特に限定されないが、例えば、果菜類を土耕栽培する場合は、播種から収穫までの全期間であってもよく、一定期間(例えば、播種および育苗期)のみに施用してもよい。
【0023】
ナノバブル水を施用する植物体としては特に制限されず、ハダニ類が寄生する、または、寄生する可能性がある植物体であればよい。また、植物体は農耕地等において生育した状態であってもよいし、収穫された後の状態であってもよい。
このような植物体としては、例えば、ナス科植物(例えば、ナス、ペピーノ、トマト(ミニトマトを含む)、タマリロ、トウガラシ、シシトウガラシ、ハバネロ、ピーマン、パプリカ、および、カラーピーマンなど)、ウコギ科植物(例えば、タカノツメなど)、ウリ科植物(例えば、カボチャ、ズッキーニ、キュウリ、ツノニガウリ、シロウリ、ゴーヤ、トウガン、ハヤトウリ、ヘチマ、ユウガオ、スイカ、メロン、および、マクワウリなど)、アオイ科植物(例えば、オクラなど)、ならびに、バラ科植物(例えば、イチゴなど)等の果菜類;
イネ、ムギ、および、トウモロコシ等の穀物類;
アズキ、インゲンマメ、エンドウ、エダマメ、ササゲ、シカクマメ、ソラマメ、ダイズ、ナタマメ、ラッカセイ、レンズマメ、および、ゴマ等のマメ類;
アイスプラント、アシタバ、カラシナ、キャベツ、クレソン、ケール、コマツナ、サラダナ、サニーレタス、サイシン、サンチュ、山東菜、シソ、シュンギク、ジュンサイ、シロナ、セリ、セロリ、タアサイ、ダイコンナ(スズシロ)、タカナ、チシャ、チンゲンサイ、ツケナ、菜の花、野沢菜、白菜、パセリ、ハルナ、フダンソウ、ホウレンソウ、ホトケノザ、ミズナ、ミドリハコベ、コハコベ、ウシハコベ、ミブナ、ミツバ、メキャベツ、モロヘイヤ、リーフレタス、ルッコラ、レタス、および、ワサビナ等の葉菜類;
ネギ、細ネギ、アサツキ、ニラ、アスパラガス、ウド、コールラビ、ザーサイ、タケノコ、ニンニク、ヨウサイ、ネギ、ワケギ、および、タマネギ等の茎菜類;
アーティチョーク、ブロッコリー、カリフラワー、食用菊、なばな、フキノトウ、および、ミョウガなどの花菜類;
スプラウト、モヤシ、および、かいわれ大根等の発芽野菜;
カブ、ダイコン、ハツカダイコン、ワサビ、ホースラディッシュ、ゴボウ、チョロギ、ショウガ、ニンジン、ラッキョウ、レンコン、および、ユリ根等の根菜類;
サツマイモ、サトイモ、ジャガイモ、ナガイモ(大和芋)、および、ヤマノイモ等のイモ類;
ミカン科植物(例えば、ミカンなど)、バラ科植物(例えば、リンゴ、モモ、スモモ、ヤマモモ、カリン、ナシ、西洋ナシ、ウメ、アンズ、サクランボ、キイチゴ、ラズベリー、ブラックベリー、および、ビワなど)、バショウ科植物(例えば、バナナなど)、ブドウ科植物(例えば、ブドウなど)、グミ科植物(例えば、グミなど)、ツツジ科植物(例えば、ブルーベリーなど)、クワ科植物(例えば、クワ、および、イチジクなど)、カキノキ科植物(例えば、カキなど)、アケビ科植物(例えば、アケビなど)、ウルシ科植物(例えば、マンゴーなど)、クスノキ科植物(例えば、アボカドなど)、クロウメモドキ科植物(例えば、ナツメなど)、ミソハギ科植物(例えば、ザクロなど)、トケイソウ科植物(例えば、パッションフルーツなど)、パイナップル科植物(例えば、パイナップルなど)、パパイア科植物(例えば、パパイアなど)、マタタビ科植物(例えば、キウイフルーツなど)、ブナ科植物(例えば、クリなど)、アカテツ科植物(例えば、ミラクルフルーツなど)、フトモモ科植物(例えば、グァバなど)、カタバミ科植物(例えば、スターフルーツなど)、ならびに、キントラノオ科(例えば、アセロラなど)等の果樹類;
等が挙げられる。
【0024】
これらのうち、より優れた本発明の効果が得られる点で、果菜類が好ましく、特に、栽培期間が長く、殺ダニ剤を連用しにくい点で、イチゴがより好ましい。
【実施例
【0025】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、および、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0026】
(試験1)
<試験1の内容>
試験1は、2017年9月~2018年4月にかけて福島県いわき市で栽培したイチゴ(品種:ふくはる香)の農業ハウスにおいて以下の区分により実施した。
試験区1-1:培養土を使用した高設栽培における散水に下記の方法で生成したナノバブル水を用いた。
試験区1-2:培養土を使用した高設栽培における散水に、井戸水を使用し、ナノバブル水を用いなかった。
各試験区は、隣り合う農業ハウスで区画し、各農業ハウスにおいて約3500株のイチゴを栽培した。
なお、散水の頻度および量は、常法に従い、イチゴの生育状況、および、天候等に応じて適宜変更したが、両試験区で概ね同様となるように調整した。
【0027】
また、両試験区共に、月に1~2回程度、「イオウフロアブル」、および、殺ダニ剤「シグナム」を散布した。このとき、試験区1-1については、上記「イオウフロアブル」および「シグナム」の希釈にナノバブル水を用い、試験区1-2については、希釈に井戸水を用いた。
【0028】
<ナノバブル水の生成方法>
ナノバブル水は、ナノバブル生成装置〔株式会社カクイチ製作所 アクアソリューション事業部(現:株式会社アクアソリューション)製、200V,10L/minタイプ〕を用いて加圧溶解方式にて水中に気泡(ナノバブル)を発生させることで生成した。
なお、ナノバブル水の生成用に使用した水には、井戸水を用い、気泡を構成する気体には、酸素(工業用酸素、濃度:99.5体積%)を用いた。
また、上記のナノバブル生成装置を用いてナノバブルを発生させる条件は、ナノ粒子解析システム ナノサイトLM10(NanoSight社製)による解析結果が以下となる条件で行った。
・水1mL当たりの気泡の数:5×10個/mL
・気泡の最頻粒子径:100nm
【0029】
<ハダニ類の防除効果の評価>
1ハウスにつき、任意に選択した10株を対象に、1株当たり展開した葉1枚におけるハダニ類の成虫数を9月~1月にかけて1回/月の頻度で調査した。調査結果は以下の基準により評価し、表1にまとめて示した。
【0030】
(評価基準)
A:ハダニ類の寄生は見られず、ハダニの死骸もみられなかった。
B:平均して1匹以上、30匹未満のハダニ類の寄生が見られた。
C:平均して30匹以上、70匹未満のハダニ類の寄生が見られた。
D:平均して70匹以上のハダニ類の寄生が見られた。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示した結果から、ナノバブル水を散水に用いた試験区1-1では、ハダニ類の寄生は見られず、また、ハダニ類の死骸も見られなかったことから、ナノバブル水を施用したことにより、ハダニ類の寄生が予防されていることがわかった。
一方、ナノバブル水を用いなかった試験区1-2では所望の効果は得られなかった。
【0033】
(試験2)
試験2は、2018年9月~2019年1月にかけて長野県小諸市で栽培したイチゴ(品種:紅ほっぺ)の圃場において以下の区分により実施した。各試験区は、同一のビニールハウス内に設定されている。
試験区2-1:ビニールハウス栽培において、毎日の散水に、農業用水を使用し、ナノバブル水を用いなかった。
試験区2-2:ビニールハウス栽培において、毎日の散水に、水1mL当たりの気泡数が2×10個/mLに調整されたナノバブル水を用いた。
試験区2-3:ビニールハウス栽培において、毎日の散水に、水1mL当たりの気泡数が5×10個/mLに調整されたナノバブル水を用いた。
各試験区では、それぞれ、5株のイチゴを栽培した。散水の頻度および量は、常法に従い、イチゴの生育状況、および、天候等に応じて適宜変更したが、3つの試験区の間で概ね同様となるように調整した。また、試験2では、ナノバブル水1mL中の気泡数による優位性を試験するために、農薬の散布を意図的に実施しなかった。
【0034】
<ナノバブル水の生成方法>
ナノバブル水は、ナノバブル生成装置(株式会社アクアソリューション製、100V,10L/minタイプ)を用いて加圧溶解方式にて水中に気泡(ナノバブル)を発生させることで生成した。ナノバブル水の生成用に使用した水には、農業用水を用い、気泡を構成する気体の種類は、酸素(工業用酸素、濃度:99.5体積%)であることとした。
【0035】
また、上記のナノバブル生成装置を用いてナノバブルを発生させる条件のうち、気泡のサイズ(最頻粒子径)は、100nmとした。また、ナノバブル水1mL当たりの気泡数は、前述したように試験区2-2では2×10個/mLとし、試験区2-3では5×10個/mLとした。ナノバブル水1mL当たりの気泡数は、例えば、上記のナノバブル生成装置の下流側にナノバブル水の貯留槽を設置し、貯留槽内のナノバブル水をナノバブル生成装置に返送してナノバブル水を系内で循環させ、その循環時間を変えることで調整可能である。
【0036】
<ハダニ類の防除効果の評価>
各試験区につき、5株のそれぞれから任意に選択した10枚の葉におけるハダニ類の発生量を栽培期間中(具体的には、収穫途中の時点)に下記の基準に従って評価し、各評価区分に該当する株数を調査した。
[評価区分]
「発生なし」:ハダニ類が1匹も確認されなかった
「少量発生」:肉眼では確認できないが、ルーペ等でハダニ類の存在が確認できた
「大量発生」:肉眼でハダニが確認できた
各試験区における評価結果は、下記の表2に示すとおりである。
【0037】
【表2】
【0038】
上記の評価結果から明らかなように、ナノバブル水を施用しなかった試験区2-1に比べ、ナノバブル水を施用した試験区2-2、および、試験区2-3では、ハダニ類の発生量が少なくなり、ハダニ類が大量発生した株は、試験区2-2、および、試験区2-3では確認されなかった。
また、ナノバブル水1mL中の気泡数が5×10個/mLである試験区2-3では、農薬の散布を意図的に実施しなかったにもかかわらず、気泡数が2×10個/mLである試験区2-2よりもハダニ類の発生がより抑えられた。
以上までに説明したように、試験1および試験2の試験結果から、ナノバブル水によるハダニ類の防除効果が明らかとなった。
【符号の説明】
【0039】
10 ナノバブル生成装置
30 液体吐出機
40 気体混入機
41 容器
42 気体混入機本体
50 ナノバブル生成ノズル
図1