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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1368 20060101AFI20231214BHJP
   G02F 1/1343 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
G02F1/1368
G02F1/1343
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022159430
(22)【出願日】2022-10-03
(62)【分割の表示】P 2020091232の分割
【原出願日】2014-07-15
(65)【公開番号】P2022183195
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2013154170
(32)【優先日】2013-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】深井 修次
(72)【発明者】
【氏名】初見 亮
(72)【発明者】
【氏名】久保田 大介
【審査官】横井 亜矢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-103797(JP,A)
【文献】特開2011-090293(JP,A)
【文献】特開2011-227477(JP,A)
【文献】国際公開第2013/084846(WO,A1)
【文献】特開2008-180928(JP,A)
【文献】特開2008-032899(JP,A)
【文献】特開2009-288495(JP,A)
【文献】特開2011-258949(JP,A)
【文献】特開2011-022182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0112979(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/136-1/1368
G02F 1/1343-1/1345,1/135
H01L 21/336,29/786
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタと、
画素電極として機能する領域を有する第1の導電膜と、
コモン電極として機能する領域を有する第2の導電膜と、
配線として機能する領域を有する第3の導電膜と、
第1の絶縁層と、
第2の絶縁層と、
第3の絶縁層と、
第4の絶縁層と、
スペーサと、を有し、
前記トランジスタは、
ゲート電極として機能する領域を有する第4の導電膜と、
前記第の導電膜上の、ゲート絶縁層として機能する領域を有する第5の絶縁層と、
前記第5の絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上の、ソース電極として機能する領域を有する第5の導電膜と、
前記酸化物半導体層上の、ドレイン電極として機能する領域を有する第6の導電膜と、を有し、
前記第1の絶縁層は、酸化珪素を有し、かつ前記第5の導電膜の上面に接する領域と、前記第6の導電膜の上面に接する領域と、を有し、
前記第2の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第1の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第3の絶縁層は、有機物を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第4の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域と、前記第3の絶縁層の上面に接する領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記第1の絶縁層の側面に接する領域と、前記第2の絶縁層の側面に接する領域と、を有し、
前記酸化物半導体層は、チャネル領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第4の導電膜と重なる領域と、前記第4の導電膜と重ならない領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層を挟んで前記第2の導電膜と重なる領域を有し、
前記第2の導電膜は、透光性を有し、
前記第2の導電膜は、前記第3の導電膜に接する領域を有し、
前記第2の導電膜は、開口を有し、
前記第2の導電膜は、前記第5の導電膜又は前記第6の導電膜の少なくとも一方と重なる領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記開口を介して前記第5の導電膜の上面又は前記第6の導電膜の上面に接する領域を有し、
平面視において、前記第5の導電膜は、
前記第1の導電膜に沿うように配置され且つ第1の幅を有する第1の領域と、
前記第4の導電膜と交差する位置に配置され且つ前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2の領域と、を有し、
前記スペーサは、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記スペーサは、前記第5の導電膜と重なる領域を有する、表示装置。
【請求項2】
トランジスタと、
画素電極として機能する領域を有する第1の導電膜と、
コモン電極として機能する領域を有する第2の導電膜と、
配線として機能する領域を有する第3の導電膜と、
第1の絶縁層と、
第2の絶縁層と、
第3の絶縁層と、
第4の絶縁層と、
スペーサと、を有し、
前記トランジスタは、
ゲート電極として機能する領域を有する第4の導電膜と、
前記第の導電膜上の、ゲート絶縁層として機能する領域を有する第5の絶縁層と、
前記第5の絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上の、ソース電極として機能する領域を有する第5の導電膜と、
前記酸化物半導体層上の、ドレイン電極として機能する領域を有する第6の導電膜と、を有し、
前記第1の絶縁層は、酸化珪素を有し、かつ前記第5の導電膜の上面に接する領域と、前記第6の導電膜の上面に接する領域と、を有し、
前記第2の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第1の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第3の絶縁層は、有機物を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第4の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域と、前記第3の絶縁層の上面に接する領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記第1の絶縁層の側面に接する領域と、前記第2の絶縁層の側面に接する領域と、を有し、
前記酸化物半導体層は、チャネル領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第4の導電膜と重なる領域と、前記第4の導電膜と重ならない領域と、を有し
記第5の導電膜は、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記第6の導電膜は、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層を挟んで前記第2の導電膜と重なる領域を有し、
前記第2の導電膜は、透光性を有し、
前記第2の導電膜は、前記第3の導電膜に接する領域を有し、
前記第2の導電膜は、開口を有し、
前記第2の導電膜は、前記第5の導電膜又は前記第6の導電膜の少なくとも一方と重なる領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記開口を介して前記第5の導電膜の上面又は前記第6の導電膜の上面に接する領域を有し
平面視において、前記第5の導電膜は、
前記第1の導電膜に沿うように配置され且つ第1の幅を有する第1の領域と、
前記第4の導電膜と重なり且つ前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2の領域と、を有し、
前記スペーサは、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記スペーサは、前記第5の導電膜と重なる領域を有する、表示装置。
【請求項3】
トランジスタと、
画素電極として機能する領域を有する第1の導電膜と、
コモン電極として機能する領域を有する第2の導電膜と、
配線として機能する領域を有する第3の導電膜と、
第1の絶縁層と、
第2の絶縁層と、
第3の絶縁層と、
第4の絶縁層と、
スペーサと、を有し、
前記トランジスタは、
ゲート電極として機能する領域を有する第4の導電膜と、
前記第4の導電膜上の、ゲート絶縁層として機能する領域を有する第5の絶縁層と、
前記第5の絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上の、ソース電極として機能する領域を有する第5の導電膜と、
前記酸化物半導体層上の、ドレイン電極として機能する領域を有する第6の導電膜と、を有し、
前記第1の絶縁層は、酸化珪素を有し、かつ前記第5の導電膜の上面に接する領域と、前記第6の導電膜の上面に接する領域と、を有し、
前記第2の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第1の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第3の絶縁層は、有機物を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第4の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域と、前記第3の絶縁層の上面に接する領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記第1の絶縁層の側面に接する領域と、前記第2の絶縁層の側面に接する領域と、を有し、
前記酸化物半導体層は、チャネル領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第4の導電膜と重なる領域と、前記第4の導電膜と重ならない領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層を挟んで前記第2の導電膜と重なる領域を有し、
前記第2の導電膜は、透光性を有し、
前記第2の導電膜は、前記第3の導電膜に接する領域を有し、
前記第2の導電膜は、開口を有し、
前記第2の導電膜は、前記第5の導電膜又は前記第6の導電膜の少なくとも一方と重なる領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記開口を介して前記第5の導電膜の上面又は前記第6の導電膜の上面に接する領域を有し、
平面視において、前記第5の導電膜は、
前記第1の導電膜に沿うように配置され且つ第1の幅を有する第1の領域と、
前記第4の導電膜と交差する位置に配置され且つ前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2の領域と、
前記第1の領域と前記第2の領域の間に配置され且つ前記第1の幅よりも大きい第3の幅を有する第3の領域と、を有し、
前記スペーサは、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記スペーサは、前記第5の導電膜と重なる領域を有する、表示装置。
【請求項4】
トランジスタと、
画素電極として機能する領域を有する第1の導電膜と、
コモン電極として機能する領域を有する第2の導電膜と、
配線として機能する領域を有する第3の導電膜と、
第1の絶縁層と、
第2の絶縁層と、
第3の絶縁層と、
第4の絶縁層と、
スペーサと、を有し、
前記トランジスタは、
ゲート電極として機能する領域を有する第4の導電膜と、
前記第4の導電膜上の、ゲート絶縁層として機能する領域を有する第5の絶縁層と、
前記第5の絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層上の、ソース電極として機能する領域を有する第5の導電膜と、
前記酸化物半導体層上の、ドレイン電極として機能する領域を有する第6の導電膜と、を有し、
前記第1の絶縁層は、酸化珪素を有し、かつ前記第5の導電膜の上面に接する領域と、前記第6の導電膜の上面に接する領域と、を有し、
前記第2の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第1の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第3の絶縁層は、有機物を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第4の絶縁層は、窒化珪素を有し、かつ前記第2の絶縁層の上面に接する領域と、前記第3の絶縁層の上面に接する領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層の上面に接する領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記第1の絶縁層の側面に接する領域と、前記第2の絶縁層の側面に接する領域と、を有し、
前記酸化物半導体層は、チャネル領域を有し、
前記酸化物半導体層は、前記第4の導電膜と重なる領域と、前記第4の導電膜と重ならない領域と、を有し、
前記第1の導電膜は、前記第4の絶縁層を挟んで前記第2の導電膜と重なる領域を有し、
前記第2の導電膜は、透光性を有し、
前記第2の導電膜は、前記第3の導電膜に接する領域を有し、
前記第2の導電膜は、開口を有し、
前記第2の導電膜は、前記第5の導電膜又は前記第6の導電膜の少なくとも一方と重なる領域を有し、
前記第1の導電膜は、前記開口を介して前記第5の導電膜の上面又は前記第6の導電膜の上面に接する領域を有し、
平面視において、前記第5の導電膜は、
前記第1の導電膜に沿うように配置され且つ第1の幅を有する第1の領域と、
前記第4の導電膜と重なり且つ前記第1の幅よりも小さい第2の幅を有する第2の領域と、
前記第1の領域と前記第2の領域の間に配置され且つ前記第1の幅よりも大きい第3の幅を有する第3の領域と、を有し、
前記スペーサは、前記第4の導電膜と重なる領域を有し、
前記スペーサは、前記第5の導電膜と重なる領域を有する、表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一において、
前記酸化物半導体層は、Inと、Gaと、Znと、を有する表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示装置およびその駆動方法等に関する。また、液晶表示装置を表示部に
備えた電子機器に関する。
【0002】
なお、本明細書において、半導体装置とは半導体素子(トランジスタ、ダイオード等)を
含む回路、および同回路を有する装置をいう。また、半導体特性を利用することで機能し
うる装置全般をいう。例えば、集積回路、集積回路を備えたチップ、表示装置、発光装置
、照明装置および電子機器等は全て半導体装置である。
【背景技術】
【0003】
情報化社会の発展とともに、情報を得る手段は、紙媒体からよりも、スマートフォンやパ
ーソナルコンピュータ等の情報端末によることが多くなっている。そのため、近い距離で
長時間画面を見続けているため、日常的に目を酷使している。目の疲れの原因は複合的で
あるが、その1つとして画面のちらつきがある。
【0004】
表示装置では、1秒間に数十回表示される画像が切り換っている。1秒間あたりの画像の
切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周
波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚できないような高速の画面の切り換えが
、目の疲労の原因として考えられている。情報端末の表示手段としては、液晶表示装置(
LCD)が代表的である。そこで、非特許文献1、2では、LCDのリフレッシュレート
を低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。
【0005】
アクティブマトリクス型のLCDの駆動方式(モード)には、液晶分子の配向の制御によ
り区別される。例えば、TN(Twisted Nematic)モード、VA(垂直配
向)モード、IPS(面内スイッチング)モードや、FFS(縞状電界スイッチング)モ
ードなどが知られている。駆動方式の違いにより、LCDの画素の構造が異なる。
【0006】
TNモード、VAモードのLCDの画素は、一対の基板の一方に画素電極が、他方にコモ
ン電極(対向電極とも呼ばれる)が形成されており、画素電極とコモン電極間に2つの基
板面に垂直な電界を形成して、液晶分子の配向を制御することで、画素の透過率を制御し
ている。
【0007】
他方、IPSモードやFFSモードのLCDでは、コモン電極が画素電極と同じ基板上に
形成される。IPSモードのLCDでは、コモン電極と画素電極は櫛歯状とされ、同じ絶
縁膜上に形成される。FFSモードはIPSモードを改良した表示方式であり、絶縁膜を
介して、画素電極とコモン電極が対向して形成されている。FFSモードのLCDの画素
電極は、例えば、複数のスリットが形成された構造を有しており、画素電極のフリンジと
コモン電極間に形成される電界(フリンジ・フィールド)により、液晶分子の配向を制御
しているため、FFSモードのLCDは、IPSモードのLCDよりも広視野角で、高透
過率との特徴がある。
【0008】
FFSモードのLCDについて様々な改良が行われており、例えば、特許文献1には、画
素電極が形成されていない基板に第2のコモン電極を形成し、この第2のコモン電極に与
える電位により、LCDを高速応答で広視野角にすることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2004/019117号
【非特許文献】
【0010】
【文献】S.Amano et al.,”Low Power LC Display Using In-Ga-Zn-Oxide TFTs Based On Variable Frame Frequency”,SID International Symposium Digest of Technical Papers,2010,p.626-629
【文献】R.Hatsumi et al.,”Driving Method of FFS-Mode OS-LCD for Reducing Eye Strain”,SID International Symposium Digest of Technical Papers,2013,p.338-341
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
このような背景技術を踏まえ、本発明の一形態の課題の1つは、新規なFFSモードの液
晶表示装置、およびその駆動方法等を提供することである。
【0012】
また、本発明の一形態の課題の1つは、目にやさしい表示が可能な液晶表示装置、および
その駆動方法等を提供することである。
【0013】
なお、複数の課題の記載は、互いの課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一
態様は、これらの課題の全て解決する必要はない。また、列記した以外の課題が、明細書
、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、これらの課題も、本発
明の一形態の課題となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の形態は、対向している第1および第2の基板と、第1の基板と第2の基板の間の
液晶層と、第1の基板に形成された画素電極および第1のコモン電極と、第2の基板に形
成された第2のコモン電極と、を有し、絶縁層を挟んで、画素電極は第1のコモン電極と
対向し、液晶層を挟んで、第2のコモン電極は第1のコモン電極と対向し、画素電極には
、画像データに対応するデータ信号が供給され、第1および第2のコモン電極には、同じ
電位が印加されることを特徴とする液晶表示装置である。
【0015】
本発明の他の形態は、対向している第1および第2の基板と、第1の基板と第2の基板の
間の液晶層と、画素と、画素に接続されたゲート線およびソース線と、ゲート信号を生成
し、ゲート線に出力するゲートドライバと、データ信号を生成し、ソース線に出力するソ
ースドライバと、ゲートドライバおよびソースドライバを制御するコントローラと、を有
し、画素は、第1の基板に形成されたトランジスタ、画素電極および第1のコモン電極と
、第2の基板に形成された第2のコモン電極と、を有し、トランジスタは、ゲートにゲー
ト線が接続され、画素電極とソース線との接続を制御するスイッチとして機能し、画素電
極は、絶縁層を挟んで第1のコモン電極と対向し、第2のコモン電極は、液晶層を挟んで
第1のコモン電極と対向し、第1のコモン電極の電位と同じ電位が印加され、コントロー
ラは、ゲートドライバおよびソースドライバに対して、1フレーム期間よりも長い期間、
画素に入力されたデータ信号を保持させる制御機能を備えることを特徴とする液晶表示装
置である。
【0016】
上記の形態において、画素のトランジスタは、画素電極とソース線との接続を制御するス
イッチとして、チャネルが酸化物半導体層で形成されているトランジスタを用いることが
好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一形態により、データ書き換えに伴うちらつきを低減することができるので、目
にやさしい表示が可能な液晶表示装置、およびその駆動方法等を提供することが可能にな
る。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】FFSモードのLCDの画素の構成の一例を説明する図。A:回路図。B:電極構造を示す模式的な断面図。C:同斜視図。
図2】FFSモードのLCDの構成の一例を説明する図。A:ブロック図。B:液晶(LC)パネルの構成の一例を示す平面図。
図3】LCDの駆動方法の一例を説明する模式図。A:通常駆動。B:IDS駆動。
図4】LCDの駆動方法の一例を説明するタイミングチャート。A:通常駆動。B:IDS駆動。
図5】A,B:IDS駆動の一例を説明する図。
図6】FFSモードのLCパネルの構成の一例を示す断面図。
図7図6のLCパネルの画素の構成の一例を示すレイアウト図。
図8】情報処理システムの構成の一例を示すブロック図。
図9】A-F:情報処理システムの具体例を示す外観図。
図10】LCDの透過率の変動量の測定結果のグラフ。A:実施例1。B:比較例1。
図11】LCDの表示品位に関する主観評価結果のグラフ。A:実施例1。B:比較例1。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を用いて、本発明の実施の形態について詳細に説明する。ただし、本発明は
以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態お
よび詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本
発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0020】
また、発明の実施の形態の説明に用いられる図面において、同一部分または同様な機能を
有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0021】
(実施の形態1)
図1図4を用いて、本実施の形態では、半導体装置の一例としてLCDについて説明す
る。また、本実施の形態では、FFS方式のLCDについて説明する。
【0022】
<<LCDの構成例>>
図2Aは、LCD100の構成の一例を示すブロック図である。図2Aに示すように、L
CD100は、画素部111、ゲートドライバ112、ソースドライバ113およびコン
トローラ180を有する。また、LCD100では、図2Aの一点鎖線で囲まれた回路ブ
ロックがモジュール化されて、液晶(LC)パネル110として構成されている。LCパ
ネル110は、画素部111、ゲートドライバ112、およびソースドライバ113を有
する。
【0023】
LCD100には、画像信号(Video)、およびLCパネル110のデータの書き換
えを制御するための同期信号(SYNC)および基準クロック信号(CLK)等の制御信
号が入力される。同期信号としては、例えば水平同期信号、垂直同期信号等がある。また
、LCD100には、電源190から動作に必要な電圧が供給される。
【0024】
画素部111は、複数の画素121、複数のゲート線122および複数のソース線123
を有する。複数の画素121は、2次元のアレイ状に配置されており、画素121の配置
に対応して、ゲート線122およびソース線123が設けられている。同じ行の画素12
1は、共通のゲート線122によりゲートドライバ112に接続され、同じ列の画素12
1は共通のソース線123によりソースドライバ113に接続されている。
【0025】
コントローラ180はLCパネル110全体を制御する回路であり、LCD100を構成
する回路の制御信号を生成する。コントローラ180は、同期信号(SYNC)から、ド
ライバ(112、113)の制御信号を生成する制御信号生成回路を有する。同期信号(
SYNC)とは、垂直同期信号、水平同期信号、基準クロック信号等である。
【0026】
コントローラ180は、ゲートドライバ112の制御信号として、スタートパルス信号(
GSP)、クロック信号(GCLK)等を生成し、ソースドライバ113の制御信号とし
て、スタートパルス信号(SSP)、クロック信号(SCLK)等を生成する。なお、こ
れら制御信号は、1つの信号でなく、信号群である場合がある。
【0027】
以下の説明において、スタートパルス信号(GSP)を単にGSPや、信号GSPと呼ぶ
ことがある。これは、他の信号、電圧、電位、回路、および配線等についても同様である
【0028】
また、コントローラ180は、電源管理ユニットを備えており、ドライバ(112、11
3)への電源供給およびその停止を制御する機能を備える。
【0029】
ゲートドライバ112では、GSPが入力されるとGCLKに従ってゲート信号を生成し
、ゲート線122に順次出力する。ゲート信号は、データ信号が書き込まれる画素121
を選択するための信号である。
【0030】
ソースドライバ113は、画像信号(Video)を処理して、データ信号を生成し、ソ
ース線123に出力する機能を有する。ソースドライバ113は、SSPが入力されると
、SCLKに従ってデータ信号を生成し、それをソース線123に順次出力する。
【0031】
画素121は、ゲート信号によりオン、オフが制御されるスイッチング素子を有する。ス
イッチング素子がオンになると、ソースドライバ113から画素121にデータ信号が書
き込まれる。スイッチング素子がオフ状態になると、画素121は、書き込まれたデータ
信号を保持するデータ保持状態となる。
【0032】
<<LCパネルの構成例>>
LCパネル110は、対向して設けられた基板21および基板22を有する。基板21、
基板22は、隙間を有するように、封止部材23により固定されている。基板21と基板
22の間には、液晶層20が存在する(図1B参照)。
【0033】
基板21は、LCパネル110のバックプレーンの支持基板であり、基板21上には、回
路(111―113)および端子部24が形成されている。回路(111―113)が形
成されている基板21は、素子基板、TFT(薄膜トランジスタ)基板等と呼ばれる。
【0034】
なお、図2Bには、ゲートドライバ112を2つの回路(ゲートドライバ112a、11
2b)に分け、画素部111の両側に配置している構成例を示す。もちろん、ゲートドラ
イバ112を1つの回路で構成し、画素部111の片側に配置することも可能である。
【0035】
端子部24には、複数の端子が形成されている。基板21に形成された電極および配線、
並び基板22に形成された電極および配線が、引き回し配線等により端子部24の端子に
接続される。異方性導電膜等の導電性部材により、端子部24には、FPC(Flexi
ble printed circuit)25が接続されている。FPC25を介して
、基板21上の回路(111―113)に電圧および信号が入力される。
【0036】
なお、基板21に、コントローラ180を含むICチップを実装してもよい。また、ドラ
イバ(112、113)の一部、またはすべてをICチップにして、基板21に実装して
もよい。実装方法としては、COG(Chip On Glass)法、COF(Chi
p On Film)法、ワイヤボンディング法、およびTAB(Tape Autom
ated Bonding)法等がある。
【0037】
また、以下で説明する通り、基板21には、液晶分子を駆動するための画素電極およびコ
モン電極が形成される。基板22は、対向基板あるいはカラーフィルタ基板等と呼ばれる
部品の支持基板であり、基板22にもコモン電極が設けられる。
【0038】
<<画素の構成例>>
図1Aは、画素121の回路構成の一例を示す回路図である。また、図1B図1Cは、
画素121の電極構造を説明するための模式図であり、図1Bは、画素121の要部の断
面図であり、図1Cは、同斜視図である。
【0039】
<回路構成>
図1Aに示すように、画素121は、トランジスタ130、液晶素子131、および容量
素子132を有する。
【0040】
トランジスタ130は、そのゲートはゲート線122に接続されており、液晶素子131
とソース線123との接続を制御するスイッチング素子である。ゲートドライバ112か
ら出力されるゲート信号により、トランジスタ130のオン、オフが制御される。
【0041】
液晶素子131は、2つの電極(30、31)と、液晶層20を有する(図1B)。ここ
では、液晶素子131の2つの電極のうち、トランジスタ130を介してソース線123
に接続されている電極(30)を”画素電極”と呼び、他方の電極(31)を”コモン電
極”と呼ぶことにする。コモン電極31には、コモン電圧VCOMが印加される。
【0042】
容量素子132は、液晶素子131と並列に接続されており、液晶素子131の補助容量
として機能する。容量素子132は、絶縁層40を誘電体に、画素電極30およびコモン
電極31を一対の電極(端子)とするMIM構造の容量素子である(図1B)。
【0043】
<画素電極、コモン電極>
図1Bに示すように、画素電極30およびコモン電極31は、基板21上に形成されてい
る。画素電極30は絶縁層40を介してコモン電極31に対向する。
【0044】
図1Cに示すように、画素電極30は、画素121ごとに電気的に分離して設けられる。
他方、画素部111の全ての画素121に同じ電圧(VCOM)を供給するため、コモン
電極31は画素部111において1つの電極として設けられる。なお、実際のコモン電極
31には、画素電極30をトランジスタ130に接続するための開口が設けられている。
【0045】
図1Cの例では、画素電極30の平面形状を、複数の帯状の開口を有する四角としている
が、もちろんこのような形状に限定されるものではない。画素電極30は、画素電極30
とコモン電極31に電圧を印加することでフリンジ・フィールドが形成されるような形状
であればよい。画素電極30は、例えば、複数の帯状構造物が規則的に配列している部分
と、それらを接続する接続部を有する構造とすることができる。
【0046】
液晶層20を挟んで、基板22上には、コモン電極31に対向してコモン電極32が設け
られている。コモン電極32も、コモン電極31と同様に、全ての画素121に対して、
1つの電極(1つの導電膜)として設けられている。また、表示を行う際に、コモン電極
32はコモン電極31と同じ電位とされ、コモン電圧VCOMが印加される。
【0047】
コモン電極31とコモン電極32を同じ電位にするには、LCパネル110内でコモン電
極31とコモン電極32を接続し、共通の引き回し配線により端子部24の同じ端子に接
続し、この端子にVCOMを印加するようにしてもよい。あるいは、コモン電極31とコ
モン電極32を別々の引き回し配線で異なる端子に接続して、それぞれの端子にVCOM
を印加するようにしてもよい。
【0048】
LCパネル110へのVCOM供給は、電源190でVCOMを生成し、LCパネル11
0に供給することで行うことができる。VCOMを0V(接地電位)にする場合は、コモ
ン電極31とコモン電極32を、接地電位(GND)用の端子に接続すればよく、この場
合は、電源190からの電源電圧の供給は不要になる。
【0049】
<<LCDの画像表示方法>>
画像表示時に、対向する2つの基板にそれぞれ形成されたコモン電極を同じ電位とするこ
とで、画像の書き換え時におけるちらつきを低減したFFSモードのLCDを提供するこ
とが可能になる。
【0050】
LCDでは、データを書き換えるごとに、画素に書き込む信号(データ信号)の極性を反
転する反転駆動により画像を表示する。また、液晶材料の性質上、データ信号の極性によ
り、画素の電圧-透過率(V-T)特性が異なる。そのため、データ信号の極性反転に伴
う画素の透過率の変動が、LCDによる目の疲れの原因となると考えられている。
【0051】
そこで、本実施の形態では、データの書き換え回数(データの極性反転の回数)を減らす
ことで、使用者の目の負担を軽減する。そのため、LCD100は、少なくとも2つの駆
動方法(表示モード)を有する。1つは、一般的な動画を表示するための駆動方法であり
、1フレーム毎にデータを書き換える駆動方法である。これを”通常駆動”と呼ぶ。もう
1つは、データの書き込み処理を実行した後、データの書き換えを停止する駆動方法であ
る。これを”アイドリング・ストップ(IDS)駆動”と呼ぶ。IDS駆動とは、通常駆
動よりも低い頻度でデータを書き換える駆動方法である。
【0052】
また、通常駆動、IDS駆動により、LCD100が画像を表示しているモードを、それ
ぞれ、”通常モード(状態)”、”IDSモード(状態)”と呼ぶ。
【0053】
動画の表示は、通常駆動により行われる。静止画の表示は、通常駆動またはIDS駆動に
より行われる。表示モードを決定する信号が、LCD100のコントローラ180に入力
されると、コントローラ180では、その表示モードで表示が行われるように、ドライバ
(112、113)を制御する。
【0054】
静止画は1フレームごとの画像データに変化がないため、静止画を表示する場合は1フレ
ームごとにデータの書き換えを行う必要がない。そこで、静止画を表示する際は、LCD
100をIDSモードで動作させることで、画面のちらつきを低減すると共に、消費電力
を削減することができる。以下、図3および図4を用いて、通常駆動およびIDS駆動を
説明する。
【0055】
図3Aは、通常駆動による静止画の表示方法を説明する図であり、図3Bは、IDS駆動
による静止画の表示方法を説明する図である。また、図4Aは通常駆動、図4BはIDS
駆動の一例を示すタイミングチャートである。図4において、Videoは、LCパネル
110へ入力される画像信号であり、GVDDは、ゲートドライバ112の高電源電圧で
あり、VDataは、ソースドライバ113からソース線123に出力されるデータ信号
である。
【0056】
<通常駆動>
通常駆動では、1フレーム期間(Tpd)ごとに反転駆動を行って画素のデータを周期的
に書き換える駆動方法である。GSPの入力をトリガーにして、ゲートドライバ112は
、GCLKに従いゲート信号を生成し、ゲート線122に出力する。ソースドライバ11
3では、SSPが入力されると、SCLKに従いVDataを生成し、ソース線123に
出力する。
【0057】
また、図4Aに示すように、各画素121に入力されるVDataは1フレーム期間ごと
に極性が反転される。反転駆動には、代表的には、ドッド反転駆動、ゲート線反転駆動、
ソース線反転駆動がある。
【0058】
ここでは、VDataの極性はVCOMを基準に決定される。VDataの電圧がVCO
Mより高い場合は正の極性であり、低い場合は負の極性である。
【0059】
<IDS駆動>
IDS駆動では、通常駆動よりも低いリフレッシュレートでデータが周期的に書き換えら
れる。そのため、データ保持期間は、1フレーム期間よりも長くなる。図3Bには、10
フレームごとに画像を書き換える例を示している。これにより、IDS駆動のリフレッシ
ュレートは、通常駆動の1/10になる。例えば、通常駆動のリフレッシュレートが60
Hzであれば、図3BのIDS駆動のリフレッシュレートは、6Hzである。
【0060】
図3Bおよび図4Bに示すように、IDS駆動でのデータの書き換え処理は、データ書き
換え(または、書き込み処理とも呼ぶこともできる。)と、データ保持とに分けることが
できる。
【0061】
まず、通常駆動と同じリフレッシュレート(間隔Tpd)で、データの書き換えが1回ま
たは複数回実行され、画素121にデータが書き込まれる。データ書き込みの後、ゲート
ドライバ112でのゲート信号の生成を停止して、データの書き換えを停止する。これに
より、全ての画素121は、トランジスタ130がオフ状態となり、データ保持状態とな
る。
【0062】
データの書き換え回数は1回でもよいし、複数回でもよい。IDS駆動でも、通常駆動と
同じリフレッシュレートで、データを書き換えればよい。データ書き換え回数は、通常、
IDS駆動のリフレッシュレート等を考慮して設定すればよい。図3Bおよび図4Bはデ
ータ書き換え回数が3回の例である。
【0063】
また、最後に画素121に書き込むVDataの極性が、直前のIDSモードのデータ保
持期間で、画素121が保持していたVDataの極性とは逆の極性なるように、データ
書き換え回数を調節する。これにより、IDS駆動による液晶素子131の劣化を抑制す
ることができる。例えば、データ書き換え回数を奇数回とする場合、1回目の書き換えで
は、直前のIDSモードのデータ保持期間で画素121が保持していたVDataの極性
とは逆の極性のVdataを画素121に書き込めばよい。
【0064】
図3図4から明らかなように、IDSモードによる静止画表示は、通常モードよりもデ
ータの書き換え回数を少なくすることができるので、IDSモードで静止画を表示するこ
とで、画面のちらつきが抑えられるため目の疲れを抑制することができる。
【0065】
また、図4Bに示すように、IDSモードでは、データ保持期間は、コントローラ180
からゲートドライバ112への制御信号(GSP、GCLK)の供給が停止される。その
ため、コントローラ180において、制御信号(GSP、GCLK)の供給を停止した後
に、ゲートドライバ112への電源電圧GVDDの供給を停止するような制御を行っても
よい。また、データ保持期間ではソースドライバ113への制御信号(SSP、SCLK
)の供給も停止されるため、同様に、ソースドライバ113への電源電圧の供給を停止す
る制御を行うことができる。つまり、IDS駆動により、目に優しい表示を行うことがで
き、かつ低消費電力なLCD100を提供することができる。
【0066】
なお、本明細書において、配線や端子等に、信号および電圧を供給しないとは、回路を動
作させるための所定の電圧とは異なる大きさの信号や電圧を配線等に印加すること、およ
び/又は配線等を電気的に浮遊状態にすることをいう。
【0067】
通常駆動でもIDS駆動でも、画素121に供給された電圧は、次のデータの書き換えま
で保持する必要がある。この電圧の変動は、LCD100の表示品位の低下につながる。
通常駆動では、60Hzあるいは120Hzの頻度でデータの書き換えを行っているため
、画素121は交流電圧により駆動される。一方で、IDS駆動は、表示期間の多くがデ
ータ保持期間となるので、疑似的な直流(DC)駆動とみなすことができる。そのため、
IDS駆動では、通常駆動よりも、残留DC電圧を誘起させるような状態が長く続くため
、液晶のイオン性不純物の局在化や、液晶層と配向膜界面での残留電荷の蓄積が生じやす
い。残留DC電圧は、画素121で保持している電圧を変動させ、結果として、液晶セル
の透過率を変動させてしまう。
【0068】
ちらつきを抑制する方法には、IDS駆動のようにデータ書き換え回数を減らす方法があ
る。その一方で、液晶セルに残留DC電圧が存在していると、データ保持時間が長いID
S駆動のほうが通常駆動よりも、液晶セルの透過率の変動量が大きくなるおそれがある。
その結果、IDS駆動のほうが、データ書き換えに伴うちらつきが視認されやすくなると
いう新たな問題が生ずる。本実施の形態は、このような課題を解決するものである。
【0069】
本実施の形態のLCD100では、コモン電極31とコモン電極32を等電位にすること
で、IDS駆動による残留DC電圧の発生を抑制する。つまり、コモン電極31とコモン
電極32間を等電位とすることで、データ保持期間に、液晶セルに印加される基板21(
コモン電極31)に垂直な方向のDC電圧成分を小さくする。これにより、液晶セル内の
残留電荷の蓄積を抑制して、データ保持期間での液晶セルの透過率の変動を抑える。
【0070】
液晶セルの透過率の変動を抑えることで、データ書き換え時のちらつきが抑制されるため
、LCD100にて、目が疲れにくい表示を行うことが可能になる。コモン電極31とコ
モン電極32を等電位とすることで、IDSモードでの動作時の液晶セルの透過率の変動
を抑止して、ちらつきを低減できることは、実施例1にて明らかにする。
【0071】
また、液晶セルの透過率を変動する別の要因は、液晶セルで保持している電荷がリークす
ることによる、保持電圧の変化である。そこで、液晶素子131の印加電圧の変動量をよ
り少なくするために、トランジスタ130として、オフ電流が非常に小さいトランジスタ
を用いることが好ましく、また、液晶層20の液晶材料として抵抗が高い材料を用いるこ
とが好ましい。
【0072】
<画素のトランジスタ>
トランジスタのオフ電流とは、オフ状態でソースードレイン間を流れる電流のことをいう
。また、トランジスタがオフ状態とは、nチャネル型のトランジスタの場合、ゲート電圧
がしきい値電圧よりも十分小さい状態をいう。
【0073】
トランジスタ130のオフ電流は小さいほど好ましい。トランジスタ130は、チャネル
幅1μmあたりのオフ電流が100zA以下にするとよい。オフ電流は少ないほど好まし
いため、この規格化されたオフ電流が10zA/μm以下、あるいは1zA/μm以下と
することが好ましく、10yA/μm以下であることがさらに好ましい。
【0074】
このようにオフ電流をきわめて小さくするには、Si、Geよりもバンドギャップが広い
(3.0eV以上)の酸化物半導体でトランジスタ130のチャネルを構成するとよい。
ここでは、酸化物半導体(OS)でチャネルが形成されているトランジスタをOSトラン
ジスタと呼ぶ。
【0075】
電子供与体(ドナー)となる水分または水素等の不純物を低減し、かつ酸素欠損も低減す
ることで、酸化物半導体をi型(真性半導体)にする、あるいはi型に限りなく近づける
ことができる。ここでは、このような酸化物半導体を高純度化酸化物半導体と呼ぶことに
する。高純度化酸化物半導体でチャネルを形成することで、規格化されたオフ電流を数y
A/μm―数zA/μm程度に低くすることができる。
【0076】
OSトランジスタの酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)または亜鉛(Zn)
を含むものが好ましい。また、酸化物半導体は、電気的特性のばらつきを減らすためのス
タビライザとなる元素を含むものが好ましい。このような元素として、Ga、Sn、Hf
、Al、Zr等がある。OSトランジスタを構成する酸化物半導体としては、In-Ga
-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物が体表的である。実施の形態4において、酸
化物半導体についてより詳細に説明する。
【0077】
<液晶材料>
トランジスタ130を経由してリークする電荷量を抑えるため、トランジスタ130の抵
抗値を高くするとよい。そのため、液晶層20の液晶材料の固有抵抗率は1.0×10
Ωcm以上であることが好ましく、1.0×1014Ωcm以上であることがより好ま
しい。例えば、液晶材料として、固有抵抗率が、1.0×1013Ωcm以上1.0×1
16Ωcm以下の材料、好ましくは、1.0×1014Ωcm以上1.0×1016Ω
cm以下の材料を選択するとよい。なお、液晶材料の固有抵抗率は、20℃で測定した値
である。
【0078】
以上述べたように、本実施の形態により、目が疲れにくい表示が可能であり、かつ低消費
電力化が可能なLCDを提供することが可能になる。
【0079】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることが可能である。
【0080】
(実施の形態2)
本実施の形態では、IDS駆動の他の例を説明する。
【0081】
<IDS駆動>
図3BのIDS駆動は、通常駆動よりも低いリフレッシュレートでデータの書き換えが定
期的に行われる。静止画の表示では、表示する画像が変化しない限りデータの書き換えを
停止することができる。そこで、データ書き換えを定期的に行うのではなく、表示する画
像が変わるときに行うような駆動方法で静止画を表示することができる。ここでは、この
駆動方法を第2のIDS駆動と呼び、図3BのIDS駆動を第1のIDS駆動と呼ぶこと
にする。以下、図5を用いて、第2のIDS駆動を説明する。
【0082】
ここでは、図5Aに示すような、静止画IM1を表示した後に、静止画IM2を表示する
場合を例に説明する。図5Bに示すように、IDS駆動により、静止画IM1の画像デー
タを画素121に書き込む。データの書き込みは、第1のIDS駆動と同様に行うことが
できる。通常駆動と同じリフレッシュレート(間隔Tpd)でデータの書き換えが1回ま
たは複数回実行され、画素121にデータが書き込まれる。図5Bの例では、データの書
き換えが3回行なわれる。
【0083】
データ書き込みの後、データの書き換えを停止し、データ保持状態とする。第2のIDS
駆動では、表示する画像が切り替わるまで、データ保持状態が継続される。静止画IM2
を表示するためのデータの書き換えは、静止画IM1と同様に行われ、まず、データの書
き換えを3回行い、その後、データの書き換えを停止して、データ保持状態とする。
【0084】
なお、静止画IM1から静止画IM2への画面の切り換えをスムーズに行うため、静止画
IM1と静止画IM2の表示の間に、通常駆動により静止画IM1から静止画IM2への
画面切り替え用動画を表示してもよい。
【0085】
LCD100では、IDS駆動として、第1、第2のIDS駆動の双方を行えるようにし
てもよいし、一方のみを行うようにしてもよい。LCD100が適用される半導体装置の
用途や、画素121を構成する部材(配向膜、液晶など)により、適切なIDS駆動が実
行できるようにすればよい。
【0086】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることが可能である。
【0087】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図6図7を参照して、FFSモードの液晶パネルのより具体的な構
成について説明する。
【0088】
<<FFSモードのLCパネル>>
図6は、LCパネル210の構成の一例を示す断面図である。LCパネル210も、LC
パネル110と同様に、同一基板上に画素部、並びにドライバ(ゲートドライバおよびソ
ースドライバ)が形成されている。ここでは、これら回路を構成するトランジスタをOS
トランジスタとする。OSトランジスタはnチャネル型のトランジスタである。
【0089】
図6には、LCパネル210の画素部211および端子部224が代表的に示されている
。また画素部211として、代表的に画素221、およびコモン電極331(COM-1
)の接続部222が示されている。
【0090】
図7は、画素221の構成の一例を示すレイアウト図である。画素221の回路構成は、
図1Aの画素121の回路構成と同様である。
【0091】
図6に示すように、基板301と基板302の間には、封止部材304により封止された
液晶層303が存在する。液晶層303には、上述したように固有抵抗率が1.0×10
13Ωcm以上の液晶材料を用いることが好ましい。
【0092】
LCパネル210のセルギャップを維持するための部材として、基板302にスペーサ3
83が形成されている。図7に示すように、スペーサ383は、ゲート線311およびソ
ース線321が重なる領域に存在する。このような領域は、液晶材料の配向が乱れる領域
であり表示に寄与しない。スペーサ383をこのような領域に形成することで、画素22
1の開口率を高くすることができる。なお、スペーサ383は基板301側に設けること
もできる。
【0093】
基板301の封止部材304の外側の領域には、複数の端子324を含む端子部224が
形成されている。これら端子324は異方性導電膜226によりFPC225に接続され
る。端子324は引き回し配線312に接続されている。
【0094】
基板302の表面には絶縁層391が形成され、絶縁層391上に遮光層381およびカ
ラーフィルタ層382が形成されている。絶縁層391は、例えば窒化シリコン膜で形成
される。遮光層381およびカラーフィルタ層382は、例えば樹脂で形成される。遮光
層381は、画素221に形成される配線や電極等の表示に寄与しない領域を隠すように
設けられている。
【0095】
遮光層381およびカラーフィルタ層382を覆って、樹脂等でなる絶縁層392が形成
されている。絶縁層392上にコモン電極332(COM-2)が形成され、コモン電極
332上にスペーサ383が形成されている。スペーサ383は、感光性樹脂材料から形
成することができる。コモン電極332およびスペーサ383を覆って、配向膜352が
形成されている。コモン電極332は、TNモードのLCDパネルの対向電極と同様に、
異方性導電膜により基板301に形成される接続部(コモンコンタクト)の端子に接続さ
れる。この端子は、引き回し配線312を介して端子部224の端子324に接続されて
いる。
【0096】
トランジスタ231は、ゲート線311(GL)、ソース線321(SL)、電極322
および酸化物半導体(OS)層340を有する。電極322には、画素電極330(PX
)が接続されている。OS層340は、チャネルが形成される酸化物半導体層を少なくと
も1層有する。絶縁層371はトランジスタ231のゲート絶縁層を構成する。
【0097】
また、ドライバにも、トランジスタ231と同様の素子構造を有するトランジスタが形成
される。
【0098】
図6の例では、トランジスタ231をボトムゲート型のトランジスタとしているが、トッ
プゲート型としてもよい。また、チャネルを挟んで2つのゲート電極を有するデュアルゲ
ート型としてもよい。デュアルゲート型とすることで、OSトランジスタの電流駆動特性
を向上させることができる。また、ドライバにおいては、その用途に合わせて、一部のト
ランジスタをデュアルゲート型とし、他をボトムゲート型またはトップゲート型とするこ
ともできる。
【0099】
コモン電極331(COM-1)が絶縁層375を介して画素電極330に対向して設け
られている。画素電極330が画素221毎に形成されるのに対して、コモン電極331
は、1つの導電膜から形成されており、全ての画素221で共有されている。図6図7
に示すように、コモン電極331には、トランジスタ231と画素電極330を接続する
ための開口が画素221毎に設けられている。
【0100】
電極(330-332)は、透光性を有する導電膜から形成される。透光性を有する導電
材料としては、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むイン
ジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫
酸化物、インジウム錫酸化物(以下、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化シ
リコンを添加したインジウム錫酸化物等がある。これらの導電材料からなる膜は、スパッ
タリング法で形成することができる。
【0101】
第1層目の配線・電極として、ゲート線311の他、引き回し配線312等が形成されて
いる。第1層目の配線・電極(311、312)覆って、絶縁層371が形成されている
【0102】
絶縁層371上にOS層340が形成され、絶縁層371およびOS層340上に、第2
層目の配線・電極(321―324)が形成される。配線323は、コモン電極331を
引き回し配線312に接続するための配線である。第2層目の配線・電極(321―32
4)の形成前に、絶縁層371には、引き回し配線312を露出する開口が形成されてい
る。配線323や端子324は、この開口において引き回し配線312に接続されている
【0103】
第2層目の配線・電極(321―324)を覆って、無機材料からなる絶縁層372、3
73が形成されている。絶縁層372、373に、第2層目の配線・電極(322―32
4)を露出する開口を形成した後に、例えば、樹脂材料からなる絶縁層374が形成され
る。感光性樹脂材料を用いることで、エッチング工程を用いずに、開口を有する絶縁層3
74を形成することができる。絶縁層374には、接続用の開口の他に、封止部材304
が形成される領域に開口が形成されている。
【0104】
絶縁層374上にコモン電極331が形成されている。コモン電極331を覆って絶縁層
375が形成されている。絶縁層375には、第2層目の配線・電極(322―324)
を露出する開口が形成されている。絶縁層375上に画素電極330が形成されており、
画素電極330を覆って配向膜351が形成されている。画素電極330が絶縁層375
を介してコモン電極331と重なっている領域が、液晶素子の補助容量として機能する。
【0105】
基板301、302に適用可能な基板としては、例えば、無アルカリガラス基板、バリウ
ムホウケイ酸ガラス基板、アルミノホウケイ酸ガラス基板、セラミック基板、石英基板、
サファイア基板、金属基板、ステンレス基板、プラスチック基板、ポリエチレンテレフタ
レート基板、ポリイミド基板等が挙げられる。
【0106】
基板301、基板302は、画素221や、コモン電極332等を作製するために使用さ
れる支持基板(ガラス基板など)でなくてよい。画素221等を作製した後、支持基板を
剥離して、接着層により可撓性基板を取り付けてもよい。可撓性基板としては、代表的に
はプラスチック基板をその例に挙げる事ができる他、厚さが50μm以上500μm以下
の薄いガラス基板などを用いることもできる。基板301、302を可撓性基板とするこ
とで、LCパネル210を曲げることが可能になる。
【0107】
第1層目、第2層目の配線・電極(311、312、321―324)は、単層の導電膜
で、または2層以上の導電膜で形成することができる。このような導電膜としては、アル
ミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タン
グステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、
ベリリウム等の金属膜を用いることができる。また、これら金属を成分とする合金膜およ
び化合物膜、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコン膜等を用いることができる
【0108】
絶縁層(371―375、391、392)は、単層の絶縁膜で、または2層以上の絶縁
膜で形成することができる。無機絶縁膜としては、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム
、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化ガリウム、
酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム
、酸化ハフニウムおよび酸化タンタル等でなる膜があげられる。また、これらの絶縁膜は
、スパッタリング法、CVD法、MBE法、ALD法またはPLD法を用いて形成するこ
とができる。また、樹脂膜としては、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ベンゾシクロブテ
ン系樹脂、シロキサン系樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等の有機樹脂膜がある。な
お、本明細書において、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいい、
窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。
【0109】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることが可能である。
【0110】
(実施の形態4)
本実施の形態では、OSトランジスタのチャネルを形成する酸化物半導体について説明す
る。
【0111】
OSトランジスタの酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、In-
Zn系酸化物、Sn-Zn系酸化物、Al-Zn系酸化物、Zn-Mg系酸化物、Sn-
Mg系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、In-Ga-Zn系酸化物(
IGZOとも表記する)、In-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物、Sn
-Ga-Zn系酸化物、Al-Ga-Zn系酸化物、Sn-Al-Zn系酸化物、In-
Hf-Zn系酸化物、In-Zr-Zn系酸化物、In-Ti-Zn系酸化物、In-S
c-Zn系酸化物、In-Y-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化物、In-Ce-
Zn系酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物、In-Sm-Z
n系酸化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、In-Tb-Zn
系酸化物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、In-Er-Zn系
酸化物、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In-Lu-Zn系酸
化物、In-Sn-Ga-Zn系酸化物、In-Hf-Ga-Zn系酸化物、In-Al
-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Hf-Zn系酸
化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用いることができる。
【0112】
OSトランジスタの酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)または亜鉛(Zn)
を含むものが好ましい。また、酸化物半導体は、電気的特性のばらつきを減らすためのス
タビライザとなる元素を含むものが好ましい。このような元素として、Ga、Sn、Hf
、Al、Zr等がある。OSトランジスタを構成する酸化物半導体としては、In-Ga
-Zn系酸化物、In-Sn-Zn系酸化物が代表的である。
【0113】
ここで、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物
という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の
金属元素が入っていてもよい。
【0114】
また、酸化物半導体として、InMO(ZnO)(m>0)で表記される材料を用い
てもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれた一の金属元素または複
数の金属元素、若しくは上記のスタビライザとしての元素を示す。また、酸化物半導体と
して、InSnO(ZnO)(n>0)で表記される材料を用いてもよい。
【0115】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1、In:Ga:Zn=1:3:2、In:Ga:
Zn=3:1:2、あるいはIn:Ga:Zn=2:1:3の原子数比のIn-Ga-Z
n系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0116】
酸化物半導体膜に水素が多量に含まれると、酸化物半導体と結合することによって、水素
の一部がドナーとなり、キャリアである電子を生じてしまう。これにより、OSトランジ
スタのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。そのため、酸化物半導体膜の形
成後において、脱水化処理(脱水素化処理)を行い酸化物半導体膜から、水素、又は水分
を除去して不純物が極力含まれないように高純度化することが好ましい。
【0117】
なお、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水素化処理)によって、酸化物半導体膜から酸
素も同時に減少してしまうことがある。よって、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水素
化処理)によって増加した酸素欠損を補填するため酸素を酸化物半導体膜に加える処理を
行うことが好ましい。ここでは酸化物半導体膜に酸素を供給する処理を、加酸素化処理、
または過酸素化処理と呼ぶことがある。
【0118】
このように、酸化物半導体膜は、脱水化処理(脱水素化処理)により、水素または水分が
除去され、加酸素化処理により酸素欠損を補填することによって、i型(真性)化または
i型に限りなく近く実質的にi型(真性)である酸化物半導体膜とすることができる。な
お、実質的に真性とは、酸化物半導体膜中にドナーに由来するキャリアが極めて少なく(
ゼロに近く)、キャリア密度が1×1017/cm以下、1×1016/cm以下、
1×1015/cm以下、1×1014/cm以下、1×1013/cm以下であ
ることをいう。
【0119】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0120】
酸化物半導体膜は、単結晶酸化物半導体膜または非単結晶酸化物半導体膜とすればよい。
非単結晶酸化物半導体膜とは、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、多結晶酸
化物半導体膜、CAAC-OS(C Axis Aligned Crystallin
e Oxide Semiconductor)膜等をいう。
【0121】
OSトランジスタの酸化物半導体膜は、単層構造でもよいし、例えば、非晶質酸化物半導
体膜、微結晶酸化物半導体膜、CAAC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であっ
てもよい。
【0122】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が無秩序であり、結晶成分を有さない酸
化物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。非
晶質酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において結晶部を確認することができない。非
晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out-of-pl
ane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物半導
体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物半導
体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターンが観
測される。
【0123】
微結晶酸化物半導体膜は、高分解能TEM像において、結晶部を確認することのできる領
域と、明確な結晶部を確認することのできない領域とを有する。微結晶酸化物半導体膜に
含まれる結晶部は、例えば、1nm以上100nm以下、または1nm以上10nm以下
の大きさであることが多い。特に、1nm以上10nm以下の大きさの微結晶(nc:n
anocrystal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrysta
lline Oxide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜
は、例えば、高分解能TEM像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。nc-
OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも秩序性が高い酸化物半導体膜である。そのため、
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし、nc-
OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-OS膜は
、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0124】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部を有する酸化物半導体膜の一つである。
以下、CAAC-OS膜について詳細な説明を行う。
【0125】
透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Micro
scope)によって、CAAC-OS膜の明視野像および回折パターンの複合解析像(
高分解能TEM像ともいう。)を観察することで複数の結晶部を確認することができる。
一方、高分解能TEM像によっても明確な結晶部同士の境界、即ち結晶粒界(グレインバ
ウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CAAC-OS膜は、粒
界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0126】
試料面と概略平行な方向から、CAAC-OS膜の断面の高分解能TEM像を観察すると
、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子の各層は
、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸を反映し
た形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0127】
一方、試料面と概略垂直な方向から、CAAC-OS膜の平面の高分解能TEM像を観察
すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列していることを確認
できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0128】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概
略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0129】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理等の結晶化処理を行っ
た際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面または
上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形状
をエッチング等によって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面また
は上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0130】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS膜
の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面
近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAA
C-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分
的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0131】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、ZnGaの結晶の(311)面に帰
属されることから、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜中の一部に、Zn
Gaの結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍
にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0132】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素、
シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリコ
ンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸化
物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させる
要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半径
(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜の
原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不純
物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0133】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化物
半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによって
キャリア発生源となることがある。
【0134】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性または
実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体膜
は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。したがって、
当該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(
ノーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純
度真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導
体膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとな
る。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要す
る時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が
高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定と
なる場合がある。
【0135】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動
が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0136】
なお、結晶構造の説明において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の
角度で配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また
、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をい
う。従って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0137】
CAAC-OS膜は、例えば、金属酸化物の多結晶ターゲットを用い、スパッタリング法
によって成膜する。当該ターゲットにイオンが衝突すると、ターゲットに含まれる結晶領
域がa-b面から劈開し、a-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッ
タリング粒子として剥離することがある。この場合、当該平板状またはペレット状のスパ
ッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基板に到達することで、CAAC-OS膜を
成膜することができる。
【0138】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0139】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制でき
る。例えば、処理室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素、および窒素等)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0140】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、平板状またはペレット状のスパッタリング
粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の
平らな面が基板に付着する。例えば、基板加熱温度は、100℃以上740℃以下、好ま
しくは200℃以上500℃以下とすればよい。
【0141】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージ
を軽減することができる。例えば、成膜ガス中の酸素の割合は、30体積%以上、好まし
くは100体積%とすることができる。
【0142】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることができる。
【0143】
(実施の形態5)
本実施の形態では、LCDが表示部に用いられた電子機器について説明する。実施の形態
1―4を適用することで、目に優しい表示が可能で、低消費電力な電子機器を提供するこ
とが可能になる。
【0144】
<<情報処理システムの構成例>>
図8は、LCDを表示部に備えた情報処理システムの構成の一例を示すブロック図である
。情報処理システム500は、演算部510、LCD520、入力装置530、および記
憶装置540を備える。
【0145】
演算部510は、情報処理システム500全体を制御する機能を有する。演算部510は
、プロセッサ511、記憶装置512、入出力(I/O)インターフェース513、およ
びバス514を有する。バス514により、プロセッサ511、記憶装置512およびI
/Oインターフェース513が互いに接続されている。演算部510は、I/Oインター
フェース513を介して、LCD520、入力装置530および記憶装置540との通信
を行う。例えば、入力装置530からの入力信号は、I/Oインターフェース513およ
びバス514を経てプロセッサ511や記憶装置512に伝送される。
【0146】
記憶装置512には、プロセッサ511の処理に必要なデータ(プログラムも含む)や、
I/Oインターフェース513を経て入力されたデータが保存される。
【0147】
プロセッサ511は、プログラムを実行して、情報処理システム500を動作させる。プ
ロセッサ511は、例えば、入力装置530からの入力信号を解析する、記憶装置540
に情報を読み出す、記憶装置512および記憶装置540にデータを書き込む、LCD5
20に出力する信号を生成する、等の処理を行う。
【0148】
LCD520は、出力装置として設けられており、情報処理システム500の表示部を構
成する。また、情報処理システム500には、出力装置として、表示装置の他に、スピー
カ、プリンタ等の他の出力装置を備えていてもよい。
【0149】
入力装置530は、演算部510にデータを入力するための装置である。使用者は入力装
置530を操作することにより、情報処理システム500を操作することができる。入力
装置530には、様々なヒューマンインターフェースを用いることができ、複数の入力装
置を情報処理システム500に設けることができる。入力装置530としては、例えば、
タッチパネル、キーボード、操作ボタン等がある。これらを使用者が直接操作することに
より、情報処理システム500の操作を行うことできる。その他、音声、視線、ジェスチ
ャ等を検出する装置を組み込んだ入力装置を設けて、これらにより情報処理システム50
0を操作するようにしてもよい。例えば、マイクロフォン、カメラ(撮像システム)等を
設けてもよい。
【0150】
記憶装置540には、プログラムや画像信号等の各種のデータが格納される。記憶装置5
40の記憶容量は記憶装置512よりも大きい。記憶装置540としては、フラッシュメ
モリ、DRAM、ハードディスクドライブ(HDD)等がある。また、記憶装置540は
必要に応じて設ければよい。
【0151】
情報処理システム500は、演算部510等の全ての装置が1つの筐体に収められている
形態の装置であってもよいし、一部の装置が有線、または無線により、演算部510に接
続されている形態の装置であってもよい。例えば、前者の形態として、ノート型パーソナ
ルコンピュータ(PC)、タブレットPC(端末)、電子書籍リーダ(端末)、およびス
マートフォン等がある。後者の形態として、デスクトップ型PC、キーボード、マウス、
およびモニタのセットがある。
【0152】
情報処理システム500のLCD520では、通常駆動とIDS駆動での表示が可能であ
る。また、IDS駆動としては、第1、第2のIDS駆動の双方または一方が行われる。
例えば、第2のIDS駆動(図5参照)で静止画表示を行う情報処理システム500の好
適な用途としては、電子書籍を読む、デジタルカメラで撮影した写真を鑑賞する、等であ
る。つまり、同じ画像である状態が比較的長く、また使用者の操作により画面全体の表示
を切り換えることで、情報処理システム500を使用する場合に、第2のIDS駆動で静
止画を表示することが好ましい。
【0153】
図9A図9Fを参照して、情報処理システム500のいくつかの具体例を示す。図9A
図9Fは、表示部がLCDで構成された情報処理システムの一例を示す外観図である。
【0154】
図9Aに示す携帯型ゲーム機700は、筐体701、筐体702、表示部703、表示部
704、マイクロフォン705、スピーカ706、操作ボタン707、およびスタイラス
708等を有する。表示部703および/又は表示部704に、入力装置530としてタ
ッチパネルを設けてもよい。
【0155】
図9Bに示すビデオカメラ710は、筐体711、筐体712、表示部713、操作ボタ
ン714、レンズ715、および接続部716等を有する。操作ボタン714およびレン
ズ715は筐体711に設けられており、表示部713は筐体712に設けられている。
そして、筐体711と筐体712とは、接続部716により接続されており、筐体711
と筐体712の間の角度は、接続部716により可動となっている。表示部713の画面
の切り換えを、接続部716における筐体711と筐体712との間の角度に従って行う
構成としてもよい。表示部713にタッチパネルを設けてもよい。
【0156】
図9Cに示すタブレット型端末720は、筐体721に組み込まれた表示部722の他、
操作ボタン723、スピーカ724、その他図示しないマイク、ステレオヘッドフォンジ
ャック、メモリカード挿入口、カメラ、USBコネクタ等の外部接続ポート等を備えてい
る。表示部722には、入力装置530として、タッチパネルが設けられている。
【0157】
図9Dに示す2つ折りタイプのタブレット型端末730は、筐体731、筐体732、表
示部733、表示部734、接続部735、および操作ボタン736等を有する。表示部
733および表示部734はLCD520で構成されている。表示部733、734には
、入力装置530として、タッチパネルが設けられている。
【0158】
図9Eに示すスマートフォン740は、筐体741、操作ボタン742、マイクロフォン
743、表示部744、スピーカ745、およびカメラ用レンズ746等を有する。表示
部744と同一面上にカメラ用レンズ746を備えているため、テレビ電話が可能である
。表示部744には、入力装置530として、タッチパネルが設けられている。
【0159】
図9Fに示すノート型PC750は、筐体751、表示部752、キーボード753、お
よびポインティングデバイス754等を有する。表示部752には、LCD520が用い
られる。また、表示部752に、入力装置530としてタッチパネルを設けてもよい。
【0160】
本実施の形態は、他の実施の形態および実施例と適宜組み合わせることが可能である。
【実施例1】
【0161】
<LCパネルの仕様>
実施の形態3のFFSモードのLCパネル(図6図7参照)を作製し、その動作を検証
した。試作したLCパネル(以下、テストパネルと呼ぶ。)の仕様を表1に示す。実際の
検証では、テストパネルにバックライトモジュール等を組み込んで、透過型のLCDとし
て動作させた。
【0162】
【表1】
【0163】
テストパネルの2枚の基板はガラス基板である。ゲートドライバとソースドライバは、画
素部と共に素子基板に集積した。作製したトランジスタはOSトランジスタであり、その
酸化物半導体層を、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn系酸化物膜で形成した。
【0164】
<<テストパネルの評価>>
テストパネルのコモン電圧VCOM(コモン電極COM-1の電圧)は0Vとした。また
、コモン電極COM-2の電圧VCOM2も0Vにして、コモン電極COM-1とコモン
電極COM-2を等電位にした状態で動作させて、ちらつきに関して客観評価および主観
評価を行った。
【0165】
また、比較例1として、コモン電極COM-1とコモン電極COM-2間に電位差がある
状態で、テストパネルを動作させ、同じ評価を行った。比較例1では、VCOM2=-1
.7Vとした。また、VCOMは、-1.8―-1.7Vの範囲で一定電圧とした。VC
OMの値は、テストパネルごとに異なり、中間調の表示が最適になるように決定された。
【0166】
<透過率の測定>
客観評価として、テストパネルの透過率の測定を行った。IDS駆動により、テストパネ
ルにグレーの静止画を表示させた。リフレッシュレートは1Hzである。つまり1秒ごと
にデータの書き換えを行った。また、IDS駆動において、1回の画面書き換えにおいて
、データの書き込みは3回行った(図3B図4B参照)。これは、下記の主観評価でも
同様である。
【0167】
実施例1、比較例1ともに、IDS駆動直後と、6時間経過後の透過率を測定した。測定
結果を図10に示す。図10Aは実施例1の透過率の変動を示すグラフであり、図10B
は比較例1のグラフである。
【0168】
図10Bに示すように、比較例1では、6時間経過後のテストパネルは、データ保持期間
にデータ書き換え直後の透過率を維持できず、透過率が1%以上低下している。他方、図
10Aに示すように、実施例1では、IDS駆動を6時間連続して行っても、透過率の変
動は、駆動直後と同程度である。
【0169】
図10から、FFSモードのLCDの透過率の変動は、コモン電極COM-1とコモン電
極COM-2間の電位差が原因となることが分かった。2つのコモン電極(COM-1、
COM-2)を等電位とすることで、長時間IDS駆動しても透過率の変動が抑制される
ことが確認された。IDS駆動は疑似的なDC駆動であるため、2つのコモン電極(CO
M-1、COM-2)間に電位差がある状態で、数時間連続してIDS駆動すると、液晶
セル内に電荷の偏析が生じ、それが透過率を変動させる原因になったと考えられる。
【0170】
LCDの一般的なV-T(電圧―透過率)特性では、中間調(グレー表示)の方が、低階
調(黒表示)や高階調(白表示)よりも電圧に対する透過率の変動量が大きくなる。図1
0Aには、実施例1によりIDS駆動によるグレー表示の透過率の変動が抑えられている
ことが示されている。すなわち、2つのコモン電極(COM-1、COM-2)を等電位
とすることで、IDS駆動でも、中間調で表現される自然画を高品位で表示することが可
能になることが分かった。
【0171】
<ちらつきに関する主観評価>
コモン電極COM-1とコモン電極COM-2間の電位差を調整することで、人の目で感
じるちらつきを低減できることを主観評価で確認した。図11A図11Bに、実施例1
、比較例1の主観評価の結果を示す。
【0172】
主観評価は、2つのテストパネルを用意し、一方を通常駆動(リフレッシュレート60H
z)で動作させ、他方をIDS駆動(リフレッシュレート1Hz)で動作させた。動作モ
ードがわからないようにして、被験者に2つのテストパネルの画面を比較させることで、
それぞれの表示品位を評価させた。
【0173】
被験者に評価目的について先入観を与えないようにするため、「ちらつき」以外の表示品
位に関する評価項目を設けた。評価項目は、「ちらつき」の他、「色合い」、「解像度」
、「画面への映り込み(反射)」、「ムラ」、および「文字の読みやすさ」である。これ
らについて、「非常に良い」、「やや良い」、「どちらでもない」、「やや悪い」、「非
常に悪い」の5段階で被験者に評価させた。
【0174】
評価には、動物や風景などの13の自然画と、7つのテキスト(アルファベット、ひらが
な)の20の静止画を使用した。スライドショー形式で、これらの静止画を5秒間隔でテ
ストパネルに表示した。また、実施例1、比較例1ともに、2つのテストパネルを6時間
常時動作させた。この間に、被験者が適宜評価を行ったため、被験者により、テストパネ
ルの動作開始から評価時点の経過時間が異なる。表2に、被験者の内訳を示す。(a)が
実施例1であり、(b)が比較例1である。
【0175】
【表2】
【0176】
図11Aに示すように、実施例1では、通常駆動とIDS駆動とで、ちらつきに関する評
価結果の差が小さい。86人中、3人がIDS駆動の方がよりちらつきを感じ、6人が通
常駆動の方がよりちらつきを感じた、という回答であった。実施例1では、総合的な評価
結果は、IDS駆動の方が通常駆動よりもちらつきを感じないというものであった。
【0177】
図11Bに示すように、ちらつきに関する評価結果について、表示モードによる差が比較
例1の方が実施例1よりも大きくなった。84人中、11人がIDS駆動の方がよりちら
つきを感じ、3人が通常駆動の方がよりちらつきを感じた、という回答であった。比較例
1では、総合的な評価結果は、IDS駆動の方が通常駆動よりもちらつきを感じるという
ものであった。また、テスト開始から時間が経つほど、IDS駆動の方がちらつきを感じ
るという回答が多くなった。比較例1の主観評価結果は、図10Bの、時間経過に伴う透
過率の変動量の増加という客観評価に合致する。
【0178】
以上述べたように、2つのコモン電極(COM-1、COM-2)を同じ電位にすること
で、疑似的なDC駆動であるIDS駆動を長時間行っても、透過率の変動を抑えることが
できることが確認された。また、IDS駆動時のデータ書き換えに伴うちらつきを低減で
きることが、確認された。
【0179】
また、図11の主観評価結果は、実施例1では、IDS駆動と通常駆動とで、表示品位に
ついて評価結果に大きな差がないが、比較例1では、IDS駆動の方が通常駆動よりも表
示品位が劣化してしまうことを示している。これは、2つのコモン電極(COM-1、C
OM-2)の電位を等しくすることで、長時間IDS駆動を行ったLCDでも、通常駆動
の動作時と同様の表示品位を維持することが可能なことを示している。
【符号の説明】
【0180】
20 液晶層
21 基板
22 基板
23 封止部材
24 端子部
25 FPC
30 画素電極
31 コモン電極
32 コモン電極
40 絶縁層
100 液晶表示装置(LCD)
110 液晶(LC)パネル
111 画素部
112 ゲートドライバ
113 ソースドライバ
121 画素
122 ゲート線
123 ソース線
130 トランジスタ
131 液晶素子
132 容量素子
180 コントローラ
190 電源
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11