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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】針部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B21D 5/01 20060101AFI20231214BHJP
   A61B 5/1473 20060101ALI20231214BHJP
   B21G 1/08 20060101ALI20231214BHJP
   B21D 19/08 20060101ALI20231214BHJP
   B21J 5/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B21D5/01 S
A61B5/1473
B21G1/08
B21D19/08 C
B21J5/02 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022161737
(22)【出願日】2022-10-06
(62)【分割の表示】P 2019528380の分割
【原出願日】2018-05-10
(65)【公開番号】P2022188216
(43)【公開日】2022-12-20
【審査請求日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】P 2017132085
(32)【優先日】2017-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186015
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 靖之
(72)【発明者】
【氏名】秋山 毅
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-136343(JP,A)
【文献】特開2011-104623(JP,A)
【文献】特開2003-190282(JP,A)
【文献】特開2015-020706(JP,A)
【文献】特開2001-321439(JP,A)
【文献】特開2016-059427(JP,A)
【文献】国際公開第2015/114706(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21G 1/08
B21D 5/01
A61B 5/1473
B21D 22/00 - 24/00
B21D 19/08
B21J 5/02
A61M 5/158
A61M 5/32
B21D 51/10
B21J 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板材をプレス加工して厚肉部を有する板状体を形成する厚肉プレス工程と、
前記板状体をプレス加工して管状に変形させ、針部材となる管状体を取得する管状プレス工程と、を含み、
前記管状プレス工程で管状に変形させる際に突き合わせる、前記板材又は前記板状体の外縁に、凹部を形成する、凹部形成工程を更に含み、
前記管状プレス工程において、線状の検出部材を、管状に変形させる前記板状体に内包させる、針部材の製造方法。
【請求項2】
前記凹部形成工程では、前記板材又は前記板状体の外縁の一部を屈曲させることにより前記凹部を形成する、請求項1に記載の針部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はセンサ及びセンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、患者などの被検者の体内にセンサを挿入又は埋め込み、被検者の血液又は体液中の被計測物質(例えば、グルコースやpH、生理活性物質、たんぱく質等)を該センサによって検出することが行われている。
【0003】
特許文献1には、挿入装置及び挿入銃を使用して患者の中へ挿入され、埋め込まれる電気化学センサが開示されている。また、特許文献2には、経皮的にセンサをデリバリ可能な、スロットが形成されている針が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4499128号公報
【文献】国際公開第2016/191302号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
センサを被検者の体内に埋め込んで、例えば1週間などの所定の期間、被計測物質の検出を行う場合、針部材を検出部材の挿入時のみに利用する場合と、針部材と検出部材とを共に体内に埋め込まれた状態で使用する場合がある。いずれの場合においても、針部材は、挿入時の衝撃や日常生活を行う所定期間の間に折れ曲がりや破断が生じることが無いような十分な強度を有することが好ましい。また、針部材は、被検者への侵襲が低減された構成とすることが好ましい。
【0006】
本開示は、強度の確保と細径化との両立を可能な構成を有する針部材を備えるセンサ及びこのセンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様としてのセンサは、中空部を区画する管状の針部材と、前記中空部に位置する線状の検出部材と、を備え、前記針部材の側壁には、前記中空部に向かって張り出す厚肉部が設けられている。
【0008】
本発明の1つの実施形態として、前記針部材の内壁のうち前記厚肉部が構成する厚肉部内壁には、前記検出部材を受ける受け面が設けられている。
【0009】
本発明の1つの実施形態として、前記受け面は、前記検出部材の横断面外形の一部の領域に面接触して受けることが可能な受け形状を有している。
【0010】
本発明の1つの実施形態として、前記検出部材は、横断面の外形が略円形であり、前記受け面は、前記検出部材を受ける凹状の湾曲面により構成されている。
【0011】
本発明の1つの実施形態として、前記検出部材は、前記中空部において少なくとも2つ設けられており、前記厚肉部内壁には、前記少なくとも2つの検出部材を受ける少なくとも2つの前記受け面が設けられている。
【0012】
本発明の1つの実施形態として、前記厚肉部内壁は、頂部と、前記頂部から前記針部材の周方向の一方側に連続し、前記頂部から前記針部材の周方向の前記一方側に離れるにつれて前記針部材の肉厚が漸減する第1側部と、前記頂部から前記針部材の周方向の他方側に連続し、前記頂部から前記針部材の周方向の前記他方側に離れるにつれて前記針部材の肉厚が漸減する第2側部と、を備え、前記受け面は、前記第1側部及び前記第2側部の少なくとも一方に形成されている。
【0013】
本発明の1つの実施形態として、前記針部材の前記側壁には貫通孔又はスリットにより構成される開口部が形成されている。
【0014】
本発明の1つの実施形態として、前記側壁のうち前記開口部を区画する縁部には、開口補強部が設けられている。
【0015】
本発明の1つの実施形態として、前記開口部は、前記針部材の径方向において前記厚肉部と対向している。
【0016】
本発明の1つの実施形態として、前記針部材の先端部には、前記針部材の中心軸線の軸線方向に対して傾斜する刃面と、前記刃面の先端である針先と、を備える刃面部が形成されており、前記厚肉部は、前記軸線方向において、前記刃面部により区画される前記針部材の先端開口まで延在しており、前記厚肉部は、前記針部材を先端側から見た平面視において、前記針部材の前記中心軸線と前記針先とを結ぶ線分と前記側壁とが交差する位置に形成されている。
【0017】
本発明の第2の態様としてのセンサの製造方法は、板材をプレス加工して厚肉部を有する板状体を形成する厚肉プレス工程と、前記板状体をプレス加工して管状に変形させ、管状体を取得する管状プレス工程と、を含む。
【0018】
本発明の1つの実施形態として、前記管状プレス工程において、線状の検出部材を、管状に変形させる前記板状体に内包させる。
【0019】
本発明の1つの実施形態としてのセンサの製造方法は、前記管状プレス工程で管状に変形させる際に突き合わせる、前記板材又は前記板状体の外縁に、凹部を形成する、凹部形成工程を更に含む。
【0020】
本発明の1つの実施形態として、前記凹部形成工程では、前記板材又は前記板状体の外縁の一部を屈曲させることにより前記凹部を形成する。
【0021】
本発明の第3の態様としてのセンサの製造方法は、棒材をプレス加工して、厚肉部及び開放部を備える半管状体を形成する厚肉プレス工程と、前記半管状体をプレス加工して管状に変形させ、管状体を取得する管状プレス工程と、を含む。
【0022】
本発明の1つの実施形態として、前記管状プレス工程において、線状の検出部材を、前記開放部を通じて、前記半管状体に内包させる。
【発明の効果】
【0023】
本開示によれば、強度の確保と細径化との両立を可能な構成を有する針部材を備えるセンサ及びこのセンサの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態としてのセンサを備える計測装置を示す図である。
図2A図1に示すセンサ単体の全体を示す斜視図である。
図2B図2Aに示すセンサの先端側の部分を拡大して示す拡大斜視図である。
図3図1に示すセンサの先端側の部分の正面図である。
図4図1に示すセンサの先端側の部分の側面図である。
図5図3のI-I断面図である。
図6図3のII-II断面図である。
図7】本発明の一実施形態としてのセンサを示す斜視図である。
図8図7に示すセンサの正面図である。
図9図7に示すセンサの側面図である。
図10図8のIII-III断面図である。
図11図8のIV-IV断面図である。
図12】本発明の一実施形態としてのセンサを示す断面図である。
図13図1に示すセンサの製造方法を示す図である。
図14A図13に示す一連の工程の一部の概要を示す概要図である。
図14B図13に示す一連の工程の一部の概要を示す概要図である。
図15図13の一連の工程においてプレス加工される被プレス材の断面形状の経時的な変化を示す図である。
図16A図7に示すセンサの製造方法の一連の工程の一部の概要を示す概要図である。
図16B図7に示すセンサの製造方法の一連の工程の一部の概要を示す概要図である。
図17図12に示すセンサの製造方法の一連の工程の概要を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るセンサ及びセンサの製造方法の実施形態について、図1図17を参照して説明する。各図において共通する部材・部位には同一の符号を付している。
【0026】
図1は、本発明に係るセンサの一実施形態としてのセンサ1を備える計測装置100を示す図である。図1に示すように、計測装置100は、センサ1と、制御部2と、支持部材3と、ハウジング4と、を備える。
【0027】
センサ1は、被計測物質(アナライト)を検出し、検出結果の情報を制御部2に送信する。制御部2は、プロセッサやメモリ、電池等により構成される。制御部2は、センサ1から受信した検出信号を解析し、解析結果を必要に応じて表示装置等の外部装置に送信する。支持部材3は、センサ1を支持している。具体的には、支持部材3は、センサ1の後述する針部材10の基端部を保持することで、センサ1を支持している。ハウジング4は、制御部2を内部に収容しており、制御部2を覆った状態で支持部材3に取り付けられる。
【0028】
計測装置100は、センサ1が体内に挿入された状態で、被検者に装着される。図1では、計測装置100の制御部2、支持部材3及びハウジング4が、被検者の体表面BS上に装着されている状態を示している。計測装置100は、被検者に装着されている間、被検者の体液中の被計測物質を経時的に計測する。計測装置100が被検者に装着されている期間は、数時間、数日、1週間、1カ月など、医師等の判断で適宜決定される。
【0029】
被計測物質は特に限定されないが、センサの検出部材の選択によって、間質液中のグルコース、酸素、pH、乳酸等を測定することができる。
【0030】
また、図1に示す計測装置100が、センサ1を体内に挿入する挿入機構を備える構成としてもよい。あるいは、挿入機構を計測装置100とは別に設けてもよい。この場合、センサ1を体内に挿入後に計測装置100から挿入機構を取り外す構成としてもよい。
【0031】
以下、本実施形態のセンサ1について説明する。図2A図2Bはセンサ1を示す斜視図である。具体的に図2Aは、センサ1全体を示す斜視図であり、図2Bは、図2Aに示すセンサ1の先端側の部分を拡大して示す拡大斜視図である。図3はセンサ1の先端側の部分の正面図である。図4はセンサ1の先端側の部分の側面図である。図5図3のI-I断面図である。図6図3のII-II断面図である。
【0032】
図2図6に示すように、センサ1は、針部材10と、検出部材20と、を備える。
【0033】
針部材10は、内部に中空部11を区画する管状の中空針である。針部材10の太さは、例えば、25~33ゲージ(外径0.5mm~0.2mm)であり、その長さは、1mm~10mm、好ましくは3~6mmである。また、針部材10の肉厚は、後述する厚肉部12aを除く位置で、例えば、0.02mm~0.15mmの範囲から設定される。
【0034】
針部材10の材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、アルミニウム合金、チタン、チタン合金等の金属材料を用いることができる。ステンレス鋼であれば、JIS G 4305:2012に規定するSUS304、SUS304L、SUS321、ISO9626:2016に適合するステンレス鋼が好ましい。
【0035】
針部材10の側壁12には、中空部11に向かって張り出す厚肉部12aが設けられている。このように、針部材10の側壁12に厚肉部12aを設けることにより、針部材10の強度の確保と細径化とを両立することができる。
【0036】
厚肉部12aは、中空部11に向かって突出している。また、この厚肉部12aは、針部材10の側壁12の周方向Aの一部の位置に設けられており、針部材10の中心軸線Oの軸線方向Bに沿って延在している。より具体的には、本実施形態の厚肉部12aは、針部材10の側壁12の周方向Aの一部の位置に、針部材10の中心軸線Oの軸線方向Bに沿って設けられている。また、本実施形態の針部材10の側壁12は、厚肉部12a及び後述する開口補強部50、以外の位置では略一様な肉厚を有している。
【0037】
換言すれば、針部材10の側壁12の内壁は、厚肉部12aが突出しているため、針部材10の中心軸線Oと直交する任意の断面視において円周面ではない面を有する。これに対して、本実施形態の針部材10の側壁12の外壁形状は、後述する開口部40が形成されている位置を除き、針部材10の中心軸線Oと直交する任意の断面視において円周面あるいは略円周面である。このように、本実施形態の針部材10の側壁12の外壁には針部材10の径方向C外側に突出する部分が形成されていないため、体内への挿入時及び/又は抜去時の刺通抵抗を低減することができる。
【0038】
上述の「針部材10の側壁12の周方向A」とは、針部材10の横断面視において外壁に沿う方向を意味する。また、本実施形態の「針部材10の中心軸線O」とは、針部材10の横断面視において外壁が円周面となる部分のみにより特定される中心軸線を意味する。本実施形態の「軸線方向B」とは、針部材10の延在方向と略一致する。更に、本実施形態の「針部材10の径方向C」とは、針部材10の中心軸線Oを中心として放射状に延びる方向を意味する。したがって、針部材10の径方向Cの内側とは、針部材10の中心軸線Oを中心として放射状に延びる方向において中心軸線O側を意味する。針部材10の径方向Cの外側とは、針部材10の中心軸線Oを中心として放射状に延びる方向において中心軸線O側とは反対側を意味する。
【0039】
また、針部材10の内壁のうち厚肉部12aが構成する厚肉部内壁13には、検出部材20を受ける受け面13aが設けられている。厚肉部内壁13に受け面13aを備えることにより、厚肉部12aによる上述の針部材10の強度確保と細径化との両立に加えて、後述する線状の検出部材20の中空部11における位置固定性を高めることができる。位置固定性を高めることで、針部材10内で検出部材20が動くことに起因するノイズを低減することができる。
【0040】
更に、受け面13aは、本実施形態のように、検出部材20の横断面外形の一部の領域に面接触して受けることが可能な受け形状としてもよい。受け面13aをこのような形状とすることにより、後述する線状の検出部材20の中空部11における位置固定性を更に高めることができる。本実施形態の検出部材20は、後述するように、横断面の外形が略円形である。そのため、本実施形態の受け面13aは、検出部材20を受ける凹状の湾曲面により構成されている。
【0041】
また、本実施形態の厚肉部内壁13には、2つの受け面13aが設けられており、2つの受け面13aそれぞれが、別々の検出部材20を受けている。
【0042】
より具体的に、本実施形態の厚肉部内壁13は、頂部14と、この頂部14から針部材10の周方向Aの一方側に連続し、頂部14から針部材10の周方向Aの一方側に離れるにつれて針部材10の肉厚が漸減する位置の内壁である第1側部15と、頂部14から針部材10の周方向Aの他方側に連続し、頂部14から針部材10の周方向Aの他方側に離れるにつれて針部材10の肉厚が漸減する位置の内壁である第2側部16と、を備える。そして、受け面13aは、第1側部15及び第2側部16にそれぞれ形成されている。より具体的に、本実施形態の各検出部材20は、第1側部15及び第2側部16それぞれに形成されている受け面13aを含む受け溝19に収容されている。
【0043】
本実施形態の厚肉部内壁13に設けられる受け面13aの個数は、中空部11に配置される検出部材20の本数に合わせて2つであるが、この個数に限られない。受け面13aの個数は2つまたは3つが好ましいが、中空部11に配置される検出部材20の本数の増減に応じて適宜変更することができる。また、本実施形態の厚肉部内壁13に設けられる受け面13aは、第1側部15及び第2側部16にそれぞれ形成されているが、いずれか一方のみに形成してもよい。但し、複数の検出部材20それぞれの位置固定性を高めるためには、本実施形態のように、第1側部15及び第2側部16それぞれに、別々の検出部材20を受ける受け面13aを形成することが好ましい。更に、厚肉部12aを挟んで検出部材20どうしを離間させる配置が好ましい場合においても、本実施形態のように受け面13aを第1側部15及び第2側部16それぞれに形成する。かかる場合には、厚肉部12aを隣接する検出部材20の間に介在させ、検出部材20どうしが接触しないようにする。
【0044】
また、本実施形態の頂部14は、2つの受け面13aが交差する稜線により形成されている。このような頂部14とすれば、頂部が平面や湾曲面により構成される場合と比較して、第1側部15及び第2側部16に形成される2つの受け面13aをより近接させて配置することができる。その結果、検出部材20の位置固定性を向上させる針部材10の構成を、針部材10を大径化させることなくコンパクトに実現し易くなる。
【0045】
更に、本実施形態の針部材10の側壁12には、被検者の間質液等の体液を中空部11に導入可能な開口部40としての貫通孔40aが形成されている。中空部11は、貫通孔40a及び先端開口11aを通じて、針部材10の外部と連通している。そのため、開口部40がない構成と比較して、被検者の体液が針部材10内に出入りし易く、針部材10内に位置する検出部材20に接触する体液も入れ替わり易い。つまり、被計測物質の経時的な変化をより正確に計測できる。
【0046】
図6に示すように、開口部40としての貫通孔40aは、針部材10の径方向Cにおいて厚肉部12aと対向している。つまり、厚肉部12aを、開口部40と対向する位置に設けている。厚肉部12aをこのような位置に設けることで、開口部40が形成される構成であっても、この開口部40の形状によらず、軸線方向Bにおける開口部40の位置で針部材10の強度を補強することができる。すなわち、所望の開口部40を、針部材10の強度低下を抑制しつつ実現することができる。厚肉部12aは、針部材10の軸線方向Bにおいて、少なくとも一部に亘って設けられるのが好ましい。本実施形態のように、針部材10の軸線方向Bの全域に亘って設けられていることがより好ましい。このようにすれば、針部材10の軸線方向Bにおける開口部40の位置のみならず、針部材10の軸線方向Bの全域において針部材10の強度を高めることができる。図6に示すように、中空部11のうち、開口部40と検出部材20との間には空隙が確保されている。また、図5に示すように、この空隙は、中空部11内で軸線方向Bに連通している。つまり、開口部40から中空部11内に流入した体液は、上述の空隙を通じて軸線方向Bに移動可能である。これにより、中空部11に位置する検出部材20の周囲に体液を充満させ易く、検出部材20による被計測物質の検出を促進させることができる。
【0047】
図6に示すように、側壁12のうち開口部40としての貫通孔40aを区画する縁部18には、中空部11側に屈曲して形成された開口補強部50が設けられている。具体的に、本実施形態の開口補強部50は、開口部40としての貫通孔40aに対して周方向Aの両側の縁部18にそれぞれ形成されている。より具体的に、本実施形態の側壁12は、板材で形成されており、この板材は、貫通孔40aの周方向A両側の位置で中空部11側に屈曲している。換言すれば、本実施形態の側壁12を構成する板材は、貫通孔40aの周方向A両側の位置で折り返されて重ね合わされており、この折り返されて積層されている屈曲積層部により、開口補強部50が構成されている。すなわち、屈曲積層部により、貫通孔40aを区画する縁部18が周方向Aの周囲よりも厚肉化され、これにより、開口部40としての貫通孔40aの縁部18の強度を高めることができる。
【0048】
図2図6に示すように、本実施形態の開口部40は貫通孔40aであるが、針部材10の軸線方向Bにおいて、針部材10の先端まで延在するスリットにより開口部40を構成することも可能である。また、スリットにより開口部40を構成する場合であっても、上述と同様の開口補強部50を形成することができる。スリットにより開口部40を構成した構成については後述する(図12図17参照)。ここで、本実施形態で言う「管状」は、真円形状あるいは楕円形状も含む。また、本実施形態で言う「管状」は、無端状の構成に限られず、例えばC形の断面形状など、針部材の延在方向(本実施形態では軸線方向Bと同じ方向)の全域に亘って延在するスリットなどの隙間が存在することで、閉鎖した完全な輪を構成しない形状も含む意味である。開口部40を先端開口11aまで設けた場合、検出部材20を被検者の体内に挿入した後に、検出部材20と制御部2との接続箇所を通ることなく針部材10を抜去することができる。すなわち、針部材10は、検出部材20のみを生体内に挿入する挿入針として使用することができる。
【0049】
更に、本実施形態の針部材10の先端部には、刃面部17が形成されている。刃面部17は、針部材10の中心軸線Oの軸線方向Bに対して傾斜する刃面17aと、この刃面17aの先端である針先17bと、を備えている。また、刃面部17は、針部材10の中空部11の一端である先端開口11aを区画している。
【0050】
ここで、本実施形態の厚肉部12aは、針部材10の軸線方向Bにおいて、先端開口11aまで延在している。更に、本実施形態の厚肉部12aは、針部材10を先端側から見た平面視において、針部材10の中心軸線Oと針先17bとを結ぶ線分と側壁12とが交差する位置に形成されている。より具体的に、本実施形態の厚肉部12aは、針部材10を先端側から見た平面視において、頂部14が針部材10の中心軸線Oと針先17bとを結ぶ線分上に位置するように、形成されている。加えて、先端開口11aにおける厚肉部12aは、先端開口11aから突出しない。このように、厚肉部12aを針部材10の周方向Aにおいて針先17b近傍に設けることにより、周方向Aにおいて刃面部17のヒール部17c近傍に設ける構成と比較して、針部材10の挿入時に厚肉部12aが被検者の皮膚に引っ掛かることを抑制することができ、挿入時の被検者の痛みを軽減することができる。ヒール部17cとは、刃面部17のうち、軸線方向Bの基端で針部材10の外周面に連続する部位を意味する。
【0051】
換言すれば、図3図4に示すように、開口部40としての貫通孔40aは、周方向Aにおいて、針先17bよりもヒール部17cに近い位置に形成されている。より具体的に、本実施形態の貫通孔40aの周方向Aにおける中央位置を、針部材10を先端側から見た平面視に投影した場合に、同平面視において、貫通孔40aの周方向Aにおける中央位置は、針部材10の中心軸線Oを始点としてヒール部17cを通って径方向Cの外側に延在する直線上に位置している。図6において、説明の便宜上、貫通孔40aの周方向Aにおける中央位置を「P1」で示している。また、図6では、針部材10のヒール部17cを通り中心軸線Oに平行な直線と、図6に示す断面と、の交点の位置を「P2」で示している。以下、説明の便宜上、図6の「P2」を、単に、ヒール部17cの位置P2と記載する。図6に示す、貫通孔40aの周方向Aにおける中央位置P1、中心軸線O、及びヒール部17cの位置P2の位置関係は、針部材10を先端側から見た平面視の位置関係と同様である。つまり、図6に示す、貫通孔40aの周方向Aにおける中央位置P1、中心軸線O、及びヒール部17cの位置P2を、針部材10を先端側から見た平面視に投影すると、同平面視において、本実施形態の貫通孔40aの周方向Aにおける中央位置P1は、針部材10の中心軸線Oを始点としてヒール部17cの位置P2を通って径方向Cの外側に延在する直線上に位置している。但し、開口部40の位置での断面視(図6参照)において、中心軸線Oとヒール部17cの位置P2とを通る直線は、中心軸線Oと中央位置P1とを通る直線と、一致していなくてもよい。このような場合であっても、開口部40の位置での断面視(図6参照)において、中心軸線Oとヒール部17cの位置P2とを通る直線は、開口部40を通過することが好ましい。
【0052】
検出部材20は、針部材10の中空部11に位置する線状部材である。検出部材20としては、被計測物質の量または濃度に応じた電気的信号を検出する部材を用いることができる。検出部材20は、中空部11内で、針部材10の軸線方向Bに沿って延在している。
【0053】
より具体的に、本実施形態の検出部材20は横断面形状が円形のワイヤ電極である。図2図6に示すように、本実施形態では、2本の検出部材20としてのワイヤ電極が、中空部11に収容されている。本実施形態の検出部材20としてのワイヤ電極の外径は、0.02mm~0.2mmである。以下、2本の検出部材20を区別なく記載する場合には「検出部材20」と記載し、2本の検出部材20を区別して記載する場合には、2本の検出部材20の一方を「第1検出部材20a」と記載し、他方を「第2検出部材20b」と記載する。
【0054】
第1検出部材20aは、導電性の芯材をベースに構成され、芯材の外壁上に被計測物質を検出するよう構成された検出部と、芯材の外壁上が絶縁性の素材でコーティングされた保護部とを備える。検出部は、被計測物質に対する電気的特性の変化を検出する作用電極であり、芯材表面にディッピング、電解重合、スパッタリング等の薄膜形成手段を用いて形成される。本実施形態では、第2検出部材20bにより、上述の検出部としての作用電極に対する参照電極が構成されている。中空部11内に3本の検出部材20を配置し、その3本の検出部材20それぞれにより、作用電極、参照電極及び対極を構成してもよい。また、参照電極または対極として、針部材10を利用する構成としてもよい。
【0055】
また、本実施形態の検出部材20の基端部には、支持部材3を貫通して制御部2に接続される接続部が設けられている。検出部によって検出された被計測物質の情報は、接続部を経由して制御部2に送信される。
【0056】
更に、針部材10に対する検出部材20の位置を固定する固定部材を、針部材10の基端部の位置に設けてもよい。固定部材は、例えば、接着剤等の固定材料とすることができる。このような固定部材を用いれば、針部材10の基端部において、検出部材20の針部材10に対する位置を固定することができる。針部材10の基端部に固定部材を設けても、検出部材20のうち針部材10の基端部よりも先端側に位置する部分は、針部材10の径方向Cに移動し得るが、本実施形態の針部材10には上述の受け面13aが設けられているため、検出部材20のうち針部材10の先端側に位置する部分についても移動し難い。固定部材としては、上述した接着剤等の固定材料により構成される例のみならず、例えば、針部材10により挟持、支持等されることにより、針部材10によって係止されるゴムなどの弾性体で構成される固定部材としてもよい。
【0057】
次に、上述のセンサ1とは別の実施形態としてのセンサ60について説明する。図7はセンサ60の斜視図である。図8はセンサ60の正面図である。図9はセンサ60の側面図である。図10図8のIII-III断面図であり、図11図8のIV-IV断面図である。
【0058】
図7図11に示すように、センサ60は、針部材61と、検出部材62と、を備える。検出部材62は、上述したセンサ1の検出部材20と同様であるためここでは説明を省略する。
【0059】
針部材61は、中心軸線Oの軸線方向Bの位置によって異なる外径を有する形状を有する点で、上述のセンサ1の針部材10と異なっている。また、針部材61には、上述のセンサ1の針部材10と同様、開口部40としての貫通孔63が形成されているが、この貫通孔63を区画する縁部64の形状が上述のセンサ1の針部材10と異なっている。以下、針部材61における針部材10との相違点について主に説明し、共通する構成については説明を省略する。
【0060】
針部材61は、本体部61aと、この本体部61aよりも外径が小さく、刃面部65が形成されている先端部61bと、本体部61aと先端部61bとの間に位置し、軸線方向Bにおいて本体部61aから先端部61bに向かって外径が漸減するテーパー部61cと、を備えている。
【0061】
本体部61aは、軸線方向Bの位置によらず略一定の内径及び外径を有している。本実施形態の本体部61aの太さは、17ゲージ~29ゲージであり、好ましくは29ゲージ(外径約0.3mm)である。また、上述の開口部40としての貫通孔63は、本体部61aの側壁66aに形成されており、先端部61b及びテーパー部61cの位置には形成されていない。つまり、貫通孔63は、本体部61aの側壁66aにのみ形成されている。
【0062】
先端部61bは、軸線方向Bの位置によらず略一定の内径及び外径を有している。本実施形態の先端部61bの太さは、21ゲージ~33ゲージであり、好ましくは33ゲージ(外径約0.2mm)である。先端部61bの先端を含む一部に形成されている刃面部65は、上述したセンサ1の針部材10の刃面部17と同様である。
【0063】
テーパー部61cの側壁66cの軸線方向Bの基端側は本体部61aの側壁66aと連続しており、テーパー部61cの側壁66cの軸線方向Bの先端側は先端部61bの側壁66bと連続している。すなわち、テーパー部61cの側壁66cの軸線方向Bの基端の太さは、本体部61aと同様、29ゲージである。また、テーパー部61cの側壁66cの軸線方向Bの先端の太さは、先端部61bと同様、33ゲージである。
【0064】
次に、開口部40としての貫通孔63を区画する縁部64について説明する。図7図11に示す開口部40としての貫通孔63の縁部64のうち、針部材61の周方向A両側に位置する部分には、センサ1の針部材10における開口補強部50と同様、板材を折り返して形成された開口補強部50が設けられている。その一方で、図7図11に示す開口部40としての貫通孔63の縁部64のうち、針部材61の軸線方向B両側に位置する部分は、軸線方向Bに対して傾斜する斜面部67により構成されている。具体的に、貫通孔63に対して軸線方向Bの基端側の縁部64は、軸線方向Bの先端側に向かうにつれて中心軸線Oに近づくように傾斜する第1斜面部67aにより構成されている。また、貫通孔63に対して軸線方向Bの先端側の縁部64は、軸線方向Bの先端側に向かうにつれて中心軸線Oから遠ざかるように傾斜する第2斜面部67bにより構成されている。このように、開口部40としての貫通孔63の軸線方向B両側の縁部64を上述の斜面部67とすることにより、上述のセンサ1の同位置における中心軸線Oと直交する面で構成された縁部18と比較して、針部材61を被検者に挿入する際や抜去する際の刺通抵抗を低減することができる。特に、第1斜面部67a、第2斜面部67bは、針部材61の挿入時にも、抜去時にも、刺通抵抗の低減に寄与する。すなわち、第1斜面部67aおよび第2斜面部67bは、被検者の皮膚挿入部位において、挿入中および抜去中の針部材61の径の変化や引っ掛かりに伴う痛みを軽減することができる。
【0065】
図7図9に示すように、第2斜面部67bは、本体部61aの外周面とテーパー部61cの外周面とが交差して形成される稜線の位置まで達している。これにより、本体部61aの外周面とテーパー部61cの外周面とが交差して形成される稜線による刺通抵抗の増加を抑制することができる。
【0066】
次に、上述したセンサ1及びセンサ60とは別の実施形態としてのセンサ70について説明する。図12は、センサ70の横断面を示す図である。センサ70は、針部材71と、検出部材72と、を備えている。針部材71には、開口部40としてのスリット73が形成されている点で、上述したセンサ1の針部材10と異なっている。針部材71は横断面が略C形状であり、スリット73は、針部材71の軸線方向Bの全域に亘って延在している。
【0067】
また、図12に示す針部材71の側壁74は、スリット73の縁部75に開口補強部50が設けられていない点で、上述したセンサ1の針部材10と異なっている。そして、図12に示すように、針部材71の側壁74の肉厚は、厚肉部12aから針部材71の周方向Aにおいてスリット73の縁部75に向かうにつれて漸減している。これにより、中空部の内部容積を増やすことができるため、検出部材72の短軸方向における断面形状が平板状や楕円状であっても、センサ70の径を増大させることなく収容することが可能である。
【0068】
針部材71のその他の構成は、上述したセンサ1の針部材10と同様であるため、ここでは説明を省略する。また、センサ70の検出部材72についても、上述したセンサ1の検出部材20と同様であるため、ここでは説明を省略する。
【0069】
次に、センサ1の製造方法について説明する。図13は、センサ1の製造方法の一例を示すフローチャートであり、図14A及び図14Bは、図13に示す一連の工程の概要を示す概要図である。図13図14A及び図14Bに示すセンサ1の製造方法は、板材110を第1プレス成形機201によりプレス加工して厚肉部12aを有する板状体111を形成する厚肉プレス工程S1と、板状体111の外縁112に凹部113を形成する凹部形成工程S2と、凹部113が形成された板状体111を第2プレス成形機202に受け入れる受入工程S3と、この第2プレス成形機202により板状体111を連続的にプレス加工して管状に変形させ、管状体を取得する管状プレス工程S4と、管状に変形させた板状体111の継ぎ目Xの部分を溶接又接着して筒体114を形成する接合工程S5と、筒体114の一端部に刃面部115を形成する刃付け工程S6と、を含む。図15は、図13図14A及び図14Bの一連の工程S1~S6においてプレス加工される被プレス材の断面形状の経時的な変化を示す図である。以下、図14A図14B図15を参照して、図13の各工程S1~S6について詳細に説明する。図14A図14B図15における白抜き矢印は、工程の経時的な変化を表す。具体的に、厚肉プレス工程S1の概要は図14Aの上段に描く2つの図及び図15の最上段に描く図に示す。凹部形成工程S2の概要は図14Aの下段に描く2つの図に示す。受入工程S3及び管状プレス工程S4の概要は、図14Bの上段に描く2つ図、図14Bの下段の左に描く図、及び、図15の中段に描く2つの図、に示す。接合工程S5の概要は図14Bの下段の左に描く図及び図15の最下段に描く図に示す。刃付け工程S6の概要は図14Bの下段の右に描く図に示す。
【0070】
図14A図15に示すように、厚肉プレス工程S1では、略一様な厚さを有する金属製の板材110を、第1プレス成形機201によりプレス加工し、厚肉部12aを有する板状体111を形成する。図14A図15に示す板材110及び厚肉部12aが形成された直後の板状体111は、矩形状の板材110及び板状体111である。このとき、板状体111の厚肉部12aは、板状体111の長手方向Dの全域に亘って延在している。また、厚肉部12aは、板状体111の厚さ方向の一方側の面において周囲よりも突出しているが、板状体111の厚さ方向の他方側の面では周囲と共に一様な平面を構成している。
【0071】
図14A図15に示す板材110の板厚は0.15mmである。この板材110をプレス加工することで、厚肉部12aの厚み0.15mm、かつ、最小の厚み0.05mmの板状体111を形成している。但し、板材110の板厚及び板状体111の各部の厚みについては上述の厚みに限られず、製造するセンサの検出部材の太さ等に応じて適宜設計することができる。
【0072】
図14A図14B図15に示す厚肉部12aは、板状体111の短手方向Eの中央(管状にプレス加工される途中の段階では周方向の中央)の一箇所のみに形成されているが、板状体111の短手方向Eの複数の位置に形成してもよい。
【0073】
また、ここで示す厚肉プレス工程S1は、板材110をプレス加工して厚肉部12aを有する板状体111を形成しているが、棒材をプレス加工して厚肉部を有する板状体を形成してもよい。棒材をプレス加工することで厚肉部を形成する製法については後述する(図17参照)。
【0074】
図14Aに示すように、凹部形成工程S2では、板状体111の短手方向Eの両側の直線状の外縁112それぞれに、上述の開口補強部50(図2A等参照)の軸線方向B(長手方向Dと同じ方向)の幅に対応した複数の切れ込み116を形成する。そして、各外縁112において隣接する切れ込み116間の部分を、板状体111の厚み方向において厚肉部12aが形成されている面側に向かって折り曲げることで屈曲片117を形成する。この屈曲片117を、板状体111の厚肉部12aが形成されている面と接触するまで折り曲げることで、板状体111の屈曲片117の部分を2層の積層構造にすると共に、外縁112に凹部113を形成する。すなわち、図14Aに示す凹部形成工程S2では、板状体111の外縁112の一部を屈曲させることにより凹部113を形成している。屈曲片117により2層の積層構造となった部分が、センサ1の完成時に、上述の開口補強部50となる。また、凹部113が、センサ1の完成時に、上述の開口部40としての貫通孔40aとなる。換言すれば、図14Aに示す凹部形成工程S2では、板状体111の外縁112の一部を屈曲させることにより、開口補強部50となる屈曲片117を形成すると同時に、貫通孔40aとなる凹部113を形成することができる。
【0075】
次に、受入工程S3では、厚肉部12a及び凹部113が形成されている板状体111を、第2プレス成形機202に設置する。そして、図14B図15に示すように、管状プレス工程S4において、板状体111を管状に変形させ、管状体を取得する。第2プレス成形機202では、板状体111を複数回のプレス加工を行い、徐々に湾曲させながら管状に変形させる。図14B図15では、板状体111の短手方向Eの両端部のみを湾曲させる第1上型202a1及び第1下型202b1と、板状体111を短手方向Eの半分を管状に変形させる第2上型202a2及び第2下型202b2と、板状体111を管状に変形させる第3上型202a3及び第3下型202b3と、を示している。ここでは、板状体111を管状に変形させるまでの途中の段階で、更に別の上型及び下型を利用してもよい。第1上型202a1及び第2上型202a2は、板状体111の厚肉部12aが形成されている面と接触するのに対して、第3上型202a3は、板状体111の厚肉部12aが形成されている面とは反対側の面と接触する。また、本実施形態では、第2下型202b2と第3下型202b3とは同一形状である。
【0076】
この管状プレス工程S4において、線状の検出部材20を管状に変形させる板状体111に内包させることができる。具体的に、管状プレス工程S4において、板状体111をある程度湾曲させ、板状体111の厚肉部12aが形成されている面とは反対側の面と接触する上型(例えば第3上型202a3)を使用する段階になった場合に、この上型によるプレス加工を実行する前に、検出部材20をある程度湾曲した状態の板状体111の内部に設置する。そして、検出部材20の設置後に、板状体111の厚肉部12aが形成されている面とは反対側の面、すなわち、完成したセンサ1の針部材10(図2A等参照)の外周面となる面、と接触する上型を利用したプレス加工を実行する。このようにすれば、板状体111を、検出部材20の外形に沿う内面となるように管状に変形させることができる。このように、板状体111を管状に変形させる途中又はその前の段階で、検出部材20を予め配置し、検出部材20を内包した状態のまま、管状プレス工程S4を完了させる。この場合、検出部材20を針部材10内に収容させる工程を、針部材10を製造する一連の工程内に組み込むことができるため、センサ製造工程を効率化することができる。さらに、針部材10の完成後に検出部材20を針部材10内に挿入する場合と比較して、針部材10の内面との摺動が低減されるため、検出部材20のコーティング等が傷つき、剥がれることを抑制できる。但し、針部材10の完成後に検出部材20を針部材10内に挿入してもよい。しかしながら、上述した理由から、本実施形態のように、針部材10の完成前の、管状に変形させる段階で、検出部材20を予め配置し、その状態で管状にする工程を実行及び完了することが好ましい。
【0077】
次に、接合工程S5では、管状プレス工程S4において管状に変形させた板状体111の継ぎ目Xの部分を溶接又接着する。換言すれば、管状プレス工程S4において取得された管状体の継ぎ目Xの部分をレーザー加工等で溶接又は接着する。具体的に、図15では、板状体111のうち凹部113が形成された外縁112どうしを突き合わせ、この継ぎ目Xを溶接している。そのため、管状プレス工程S4で管状に変形させる際に突き合わせる板状体111の外縁112に形成された凹部113は、接合工程S5により貫通孔40aとなる。これにより、開口部40としての貫通孔40aが形成されている筒体114を得ることができる。
【0078】
そして、刃付け工程S6では、砥石、ワイヤーカッター、レーザーカッター等を用いて筒体114の一端部に刃面部115を形成することで、上述のセンサ1を作成することができる。
【0079】
図13図15に示す例では、厚肉プレス工程S1の後に、凹部形成工程S2を実行しているが、厚肉プレス工程S1の前に、凹部形成工程S2を実行してもよい。つまり、凹部形成工程は、厚肉部12aを備える前の板材110に対して実行してもよく、図13図15に示すように、厚肉部12aを備える板状体111に対して実行してもよい。
【0080】
また、図13図15に示すセンサ1の製造方法は、上述の6つの工程S1~S6に加えて洗浄工程等の別の工程を含んでもよい。
【0081】
次に、センサ60の製造方法について説明する。センサ60の製造方法の一例として、図13に示すセンサ1の製造方法と同一の方法を採用することができる。図16A図16Bは、図13に示すセンサ1の製造方法をセンサ60の製造方法として適用した場合の、一連の工程S1~S6の概要を示す概要図である。図16A図16Bに示すセンサ60の製造方法は、板材120を第1プレス成形機201によりプレス加工して厚肉部12aを有する板状体121を形成する厚肉プレス工程S1と、板状体121の外縁122に凹部123を形成する凹部形成工程S2と、凹部123が形成された板状体121を第2プレス成形機202に受け入れる受入工程S3と、この第2プレス成形機202により板状体121を連続的にプレス加工して管状に変形させ、管状体を取得する管状プレス工程S4と、管状に変形させた板状体121の継ぎ目の部分を溶接又接着して筒体124を形成する接合工程S5と、筒体124の一端部に刃面部125を形成する刃付け工程S6と、を含む。図16A図16Bにおける白抜き矢印は、工程の経時的な変化を表す。具体的に、厚肉プレス工程S1の概要は図16Aの上段に描く2つの図に示す。凹部形成工程S2の概要は図16Aの下段に描く2つの図に示す。管状プレス工程S4の概要は、図16Aの下段の右に描く図、図16Bの上段に描く図及び下段の左に描く図に示す。接合工程S5の概要は図16Bの下段の左に描く図に示す。刃付け工程S6の概要は図16Bの下段の右に描く図に示す。図16A図16Bでは、管状プレス工程S4に利用する第2プレス成形機202の上型及び下型を省略して描いている。各工程S1~S6の詳細は上述した図13図15に示すセンサ1の製造方法と同様であるためここでは説明を省略する。但し、センサ60の製造方法においては、例えば、管状プレス工程S4、または、接合工程S5の後に、上述した斜面部67を形成する斜面部形成工程を含んでもよい。ここで示す例では、管状プレス工程S4において、斜面部67を形成する斜面部形成工程を含んでいる。
【0082】
また、上述したセンサ70については、図13図15に示すセンサ1の製造方法における凹部形成工程S2、受入工程S3及び接合工程S5を除く、工程S1、S4及びS6を実行することにより製造することができる。具体的には、図17に示すように、センサ70の製造方法は、厚肉部12a及び開放部132を有する半管状体131を形成する厚肉プレス工程と、半管状体131をプレス加工して管状に変形させ、管状体133を取得する管状プレス工程と、刃面部115を形成する刃付け工程S6と、を含む。刃付け工程S6では、上述の筒体114(図14B図15参照)ではなく、横断面がC形状の管状体133の一端部に刃面部115を形成する。このように、棒材130をプレス加工することでセンサ70を形成すれば、上述のセンサ1及びセンサ60の製造方法と比較して、より細径かつ柔軟な検出部材20を利用し易くなる。検出部材20については、半管状体131を管状に変形させる管状プレス工程において、開放部132を通じて、半管状体131に内包させているが、横断面が略C形状の針部材71を完成させた後に、スリット73又は軸線方向Bの基端側の開口を通じて、検出部材20を内部に配置してもよい。ここで、「半管状体」及び「管状体」は、管状の度合いの相対的な違いを意味する。具体的に、「管状体」とは、「半管状体」よりも、閉鎖した完全な輪(筒体)に近い状態を意味する。図17に示す例では、横断面が略U形状の構成を「半管状体」とし、横断面が略C形状の構成を「管状体」としているが、管状の度合いが相違していれば、別の2つの状態を「半管状体」及び「管状体」と呼んでもよい。
【0083】
本開示に係るセンサ及びセンサの製造方法は、上述の実施形態に記載した具体的な構成及び工程に限られず、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限り、種々の変形・変更・組み合わせが可能である。上述の実施形態で示すセンサは、周方向Aにおいて1箇所のみに厚肉部を有する構成であるが、周方向Aにおいて複数の箇所に厚肉部を有する構成としてもよい。また、上述の実施形態で示すセンサ1の製造方法では、筒体114が形成された際に貫通孔40aとなる凹部113を、板材110又は板状体111に形成しているが、筒体114とした後で貫通孔40aを形成する加工を行ってもよい。この場合は、筒体114に熱を加えない加工方法を採用するのが好ましい。但し、上述した実施形態で示すように、筒体114を形成する過程で凹部113を形成すれば、筒体114を形成する一連の工程において貫通孔40aの基となる凹部113を形成することができる。そのため、筒体114を形成した後に貫通孔40aを形成するためだけの後加工を別途実行する必要がなく、センサ1の製造における作業効率を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示は、センサ及びセンサの製造方法に関する。
【符号の説明】
【0085】
1:センサ
2:制御部
3:支持部材
4:ハウジング
10:針部材
11:中空部
11a:先端開口
12:側壁
12a:厚肉部
13:厚肉部内壁
13a:受け面
14:頂部
15:第1側部
16:第2側部
17:刃面部
17a:刃面
17b:針先
17c:ヒール部
18:縁部
19:受け溝
20:検出部材
20a:第1検出部材
20b:第2検出部材
40:開口部
40a:貫通孔
50:開口補強部
60:センサ
61:針部材
61a:本体部
61b:先端部
61c:テーパー部
62:検出部材
63:貫通孔
64:縁部
65:刃面部
66a:本体部の側壁
66b:先端部の側壁
66c:テーパー部の側壁
67:斜面部
67a:第1斜面部
67b:第2斜面部
70:センサ
71:針部材
72:検出部材
73:スリット
74:側壁
75:縁部
100:計測装置
110:板材
111:板状体
112:板状体の外縁
113:凹部
114:筒体
115:刃面部
116:切れ込み
117:屈曲片
120:板材
121:板状体
122:外縁
123:凹部
124:筒体
125:刃面部
130:棒材
131:半管状体
132:開放部
133:管状体
201:第1プレス成形機
202:第2プレス成形機
202a1:第1上型
202a2:第2上型
202a3:第3上型
202b1:第1下型
202b2:第2下型
202b3:第3下型
A:針部材の周方向
B:針部材の軸線方向
C:針部材の径方向
D:板材及び板状体の長手方向
E:板材及び板状体の短手方向
O:針部材の中心軸線
X:継ぎ目
BS:被検者の体表面
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17