(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】消火栓設備及び消火栓装置
(51)【国際特許分類】
A62C 35/20 20060101AFI20231214BHJP
A62C 3/00 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
A62C35/20
A62C3/00 J
(21)【出願番号】P 2022209261
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2020207341の分割
【原出願日】2016-11-21
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【氏名又は名称】竹内 進
(74)【代理人】
【識別番号】100228669
【氏名又は名称】竹内 愛規
(72)【発明者】
【氏名】安藤 拓史
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-048706(JP,U)
【文献】実開平04-050068(JP,U)
【文献】特開2010-104432(JP,A)
【文献】特開2010-284307(JP,A)
【文献】特開2017-196109(JP,A)
【文献】特開2001-009053(JP,A)
【文献】実開昭64-037258(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル壁面に沿った監視員通路に埋込み設置され、筐体内にノズル付きのホースが収納された消火栓装置に於いて、
前記監視員通路に埋込み設置された状態で点検者により開放可能である前記筐体の所定の面に設けられた開口を閉鎖するように固定され、固定が解除された場合に前記筐体から離脱することなく開放可能であると共に、開放された場合に前記開口を開放した状態に維持可能である点検扉と、
前記点検扉に設けられた扉開口を開閉自在に配置され、前記ホースを外部に引き出す際に開放される扉と、
を備え、
前記点検扉の固定が解除され前記筐体の所定の面に設けられた前記開口を開放したときに、前記扉が前記点検扉に設けられた前記扉開口を開放することを特徴とする消火栓装置。
【請求項2】
請求項1記載の消火栓装置に於いて、
閉鎖状態にある前記点検扉は、前記扉を開放したときに閉鎖状態を維持することを特徴とする消火栓装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の消火栓装置に於いて、
前記点検扉は、前記監視員通路に埋込み設置された状態で道路側となる前記筐体の前面に設けられた前面開口を閉鎖するように固定され、前記固定が解除された場合に開放可能であり、
前記扉は、前記道路側となる前記点検扉の前面に設けられた前面扉開口を開閉自在に配置され、前記ホースを外部に引き出す際に開放される前扉であることを特徴とする消火栓装置。
【請求項4】
請求項1乃至3何れかに記載の消火栓装置に於いて、
前記点検扉は、固定部材により前記
開口を閉鎖するように固定され、前記固定部材による固定を解除するための操作部を有さないことで利用者が前記ホースを外部に引き出す際に開放不可であることを特徴とする消火栓装置。
【請求項5】
トンネル内のトンネル壁面に沿った監視員通路の路面下の内部空間である埋込部を備える消火栓設備であって、
請求項1乃至4何れかに記載の消火栓装置が、前記埋込部に上面が前記監視員通路の路面側に露出し
前記開口が設けられた面
が道路側に露出するように埋込設置されたことを特徴とする消火栓設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル付きホースを引き出して消火用水又は消火泡を放出させる消火栓収納箱を備えた消火栓設備及び消火栓装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高速道路や自動車専用道などのトンネルには、トンネル内で発生する火災事故から人身及び車両を守るため、非常用設備が設置されている。
【0003】
このような非常用設備としては、火災の監視と通報のため火災検知器、手動通報装置、非常電話が設けられ、また火災の消火や延焼防止のために消火栓装置が設けられ、更にトンネル躯体を火災から防護するために水噴霧ヘッドから消火用水を散水させる水噴霧設備などが設置され、非常用設備の設備機器を監視センターに設けられた防災受信盤からの伝送回線に接続して監視制御している。
【0004】
例えば消火栓装置は、トンネル内に設けた監視員通路に面した側壁に沿って50メートル間隔で設置され、開放自在な消火栓扉を備えた筐体に、先端にノズルを装着したホースとバルブ類を収納している。
【0005】
また、水噴霧設備にあっては、消火栓装置と一体又は近傍の側壁に自動弁装置が設置され、トンネル上部に配置された複数の水噴霧ヘッドに自動弁装置から立ち上げた給水配管を接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-83344号公報
【文献】特開2006-181057号公報
【文献】特開2008-055024号公報
【文献】特開2009-285126号公報
【文献】特開2001-009053号公報
【文献】実開昭64-037258号公報
【文献】特開2017-196109号公報
【文献】特開2010-136946号公報
【文献】実開平06-048706号のCD-ROM
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、従来の水噴霧設備に設けられた自動弁装置にあっては、定期点検等の際に、筐体内に収納している自動弁を点検するため、筐体開口部に点検扉を着脱自在に設けている。自動弁の点検扉は、例えば厚さ数ミリメートル程度の鋼板を点検扉とし、筐体開口部の上部から点検扉を吊り下げ、点検扉の下側はゴムストッパーにより位置決めし、点検扉の重量で閉鎖状態に保持させている。
【0008】
これに対し消火栓装置は、筐体開口部の下側に下開きする消火栓扉が設けられると共に筐体開口部の上側に上開きする保守扉が設けられており、点検の際には、消火栓扉と保守扉を開いて筐体内の機器の点検が可能であり、自動弁装置のように重量で閉鎖状態を保持させるような点検扉は必要としていない。
【0009】
ところで、シールド工法等により作られた都市型トンネルにあっては、トンネル壁面に消火栓装置を埋込み設置できない構造であり、監視員通路側面(壁面)に消火栓装置を埋込み設置する必要がある。
【0010】
しかしながら、従来の消火栓のように扉を前開きする消火栓装置を監視員通路に設置した場合には、消火栓扉が開くと建築限界を超えて道路側に飛び出す問題がある。
【0011】
この問題を解決するため、本願出願人は、監視員通路内に消火栓収納箱を埋込み設置し、道路側に面してスライド開閉される前扉を設けると共に、監視員通路面に上向きに開閉される上扉を設けた構造の消火栓収納箱の検討を進めている。
【0012】
このように監視員通路に埋込み設置された消火栓収納箱によれば、車両事故による火災の発生時に、利用者は、道路に面した前扉を開くことで、筐体内に内巻きされているノズル付きホースを引き出して消火を行うことができる。また、消火栓装置の前に車両が停止して前扉からの操作ができない場合には、監視員通路の上扉を開くことで、停止車両に妨げられることなく、筐体内に内巻きされているノズル付きホースを引き出して消火を行うことができる。更に、消火作業が終了した場合には、ホースの水抜きを行った後に、筐体内にホースを内巻き状態に巻き戻す作業を行っている。
【0013】
ところで、消火作業の終了に伴いホースを筐体内に巻き戻す場合、開放されている前扉又は上扉の開口から手を入れ、ホースを筐体内に内巻きする作業を行うことになるが、前扉又は上扉の開口はホース巻き戻し作業を行うには狭く、ホースの巻き戻し作業が行いづらい問題がある。また、定期点検の際には、筐体内に収納されたホースの状態を前扉又は上扉を開いて確認することになるが、開口が狭いためにホースの点検作業が行いづらい問題がある。
【0014】
前扉開口からホースを筐体内に巻き戻す場合、前扉以外の前面パネルが邪魔となり、筐体内の底部に存在するホース接続口が見えづらいこと、巻き戻す作業のために前扉開口から頭と肩を差し入れる必要があることから、前扉開口に頭と肩を差し入れながらホースを巻き戻すこととなり、苦しい体勢を維持し続けなければならないことから、大きな労苦を伴うこととなる。
【0015】
そこで、監視員通路に埋込設置された消火栓収納箱についても、ホースの巻き戻し作業や点検作業のために、消火栓収納箱の筐体前面に点検用の開口部を形成し、開口部に従来の消火栓装置と同様に、前面パネルを兼ねるような点検扉を設けることが考えられる。
【0016】
しかしながら、このような従来の点検扉にあっては、強度を十分に持った板金等で形成するため扉重量が例えば50キログラムと重くなり、ホース巻き戻しや点検の際に点検扉を取り外す作業及び巻戻し後や点検後に点検扉を取付ける作業が大変であり、設置されている消火栓装置が多い場合は、作業負担が増大してしまう。
【0017】
本発明は、点検扉を備えた消火栓装置の点検作業の負担を軽減する消火栓装置及び消火栓設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
(消火栓装置)
本発明は、トンネル壁面に沿った監視員通路に埋込み設置され、筐体内にノズル付きのホースが収納された消火栓装置に於いて、
監視員通路に埋込み設置された状態で点検者により開放可能である筐体の所定の面に設けられた開口を閉鎖するように固定され、固定が解除された場合に筐体から離脱することなく開放可能であると共に、開放された場合に開口を開放した状態に維持可能である点検扉と、
点検扉に設けられた扉開口を開閉自在に配置され、ホースを外部に引き出す際に開放される扉と、
を備え、
点検扉の固定が解除され筐体の所定の面に設けられた開口を開放したときに、扉が点検扉に設けられた扉開口を開放することを特徴とする。
【0019】
(扉の開放に連動しない点検扉)
閉鎖状態にある点検扉は、扉を開放したときに閉鎖状態を維持する。
【0020】
(筐体の前面に設けられた点検扉)
点検扉は、監視員通路に埋込み設置された状態で道路側となる筐体の前面に設けられた前面開口を閉鎖するように固定され、固定が解除された場合に開放可能であり、
扉は、道路側となる点検扉の前面に設けられた前面扉開口を開閉自在に配置され、ホースを外部に引き出す際に開放される前扉である。
【0021】
(開放するための操作部を有さない点検扉)
点検扉は、固定部材により開口を閉鎖するように固定され、固定部材による固定を解除するための操作部を有さないことで利用者がホースを外部に引き出す際に開放不可である。
【0022】
(消火栓設備)
本発明は、トンネル内のトンネル壁面に沿った監視員通路の路面下の内部空間である埋込部を備える消火栓設備であって、
前述した消火栓装置が、埋込部に上面が監視員通路の路面側に露出し開口が設けられた面(前面)が道路側に露出するように埋込設置されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
(基本的な効果)
本発明は、トンネル壁面に沿った監視員通路に埋込み設置され、筐体内にノズル付きのホースが収納された消火栓装置に於いて、監視員通路に埋込み設置された状態で点検者により開放可能である筐体の所定の面に設けられた開口を閉鎖するように固定され、固定が解除された場合に筐体から離脱することなく開放可能であると共に、開放された場合に開口を開放した状態に維持可能である点検扉と、点検扉に設けられた扉開口を開閉自在に配置され、ホースを外部に引き出す際に開放される扉と、を備え、点検扉の固定が解除され筐体の所定の面に設けられた開口を開放したときに、扉が点検扉に設けられた扉開口を開放するため、点検扉を開くことで、点検扉と一体に設けられている扉の点検作業を簡単且つ安全に行うことを可能とする。また、点検扉を手で支えていなくとも筐体から点検扉が離脱することがなく、点検扉に設けられた扉開口も開放されているため、十分な大きさの開口が形成され、筐体内にホースを内巻き状態に収納するホース巻き戻し作業や筐体内に収納されているホースの点検作業を簡単且つ安全に行うことが可能となる。また、重量の重い点検扉を筐体から着脱させる必要がなく、点検扉を開閉する作業を簡単且つ安全に行うことを可能とする。また、消火活動の際には重量の重い点検扉を開放させるのでなく、点検扉に形成された扉開口に設けられた扉を開放することで筐体内部のホースを引き出し可能としているため、消火活動を妨げない。
【0024】
(扉の開放に連動しない点検扉の効果)
閉鎖状態にある点検扉は、扉を開放したときに閉鎖状態を維持するため、点検扉の開放に連動して扉は開放される一方、扉の開放に連動して点検扉が開放されることがなく、ホースを外部に引き出す際に不要な混乱を招くことがない。
【0025】
(開放するための操作部を有さない点検扉の効果)
点検扉は、固定部材により開口を閉鎖するように固定され、固定部材による固定を解除するための操作部を有さないことで利用者がホースを外部に引き出す際に開放不可であるため、ホースを外部に引き出す際に誤って利用者により点検扉が開放されることがない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図
【
図2】通常時における消火栓収納箱の外観を示した説明図
【
図3】
図2の消火栓収納箱の外観を正面及び平面から示した説明図
【
図4】
図2の消火栓収納箱の外観を側面から示した説明図
【
図5】前開き機構が設けられた消火栓収納箱の前開きハンドルの部分を取り出して示した説明図
【
図6】第2上扉を前開きして前扉の落下によりスライド開放させる前開き機構の機構構造を示した説明図
【
図7】道路側から操作する場合の前扉と第2上扉の開放操作を示した説明図
【
図8】監視員通路側から操作する場合の第1上扉の開放操作を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0027】
[トンネル非常用設備の概要]
図1は自動車専用道路のトンネル内に設置された消火栓設備を含むトンネル非常用設備を示した説明図である。
図1に示すように、シールド工法により構築されたトンネル10内は円筒形のトンネル壁面12により覆われ、床版18により仕切られることで道路15が設けられており、この例にあっては、道路15は1方向2車線としている。
【0028】
床版18で仕切られた道路15の左側のトンネル壁面12に沿って監視員通路14が設けられ、監視員通路14の下側の内部空間はダクト22として利用され、電線管等が敷設される。監視員通路14は例えば高さが90センチメートル、横幅が70センチメートルといった大きさをもつ。
【0029】
道路15が形成された床版18の下側はトンネル横方向に複数の区画に仕切られており、例えば、監視員通路14の下に位置する区画は、管理用通路20として使用され、また、管理用通路20はトンネル内での火災発生時には、緊急避難通路として使用される。管理用通路20には給水本管24が敷設されている。
【0030】
トンネル10の長手方向の50メートルおきには、消火栓設備16が設置され、消火栓設備16の消火栓装置はホースが収納された消火栓収納箱30と放水制御機構収納部26に分離して設置されている。
【0031】
消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面及び道路15側の壁面にかけて箱形に刳り貫かれた消火栓埋込部に配置されている。放水制御機構収納部26は、消火栓収納箱30の下側となる管理用通路20に配置され、給水本管24から分岐した分岐本管24aが引き込まれ、また、消火栓収納箱30に消火用水を供給する給水配管25が立ち上げられている。
【0032】
[消火栓設備]
図2は通常時における消火栓収納箱の外観を示した説明図、
図3は
図2の消火栓収納箱の外観を正面及び平面から示した説明図、
図4は
図2の消火栓収納箱の外観を側面から示した説明図である。
【0033】
(消火栓収納箱の外観構造)
図2乃至
図4に示すように、消火栓設備16の消火栓収納箱30は、監視員通路14の路面下の内部空間に埋込み設置されている。消火栓収納箱30は、筐体31の前面に点検扉100をボルト106により固定しており、点検扉100の前面中央の上側に形成された前面扉開口33に前扉32が上下方向にスライド自在に配置されている。
【0034】
また、消火栓収納箱30の監視員通路14の路面側となる上面中央に形成された第1上面扉開口35には、前扉32と同じ横幅の第1上扉34が配置されている。更に、第1上扉34の前側中央には第2上面扉開口37が形成され、ここに第2上扉36が配置されている。
【0035】
第1上扉34は扉前縁の両側を、筐体31の上部の前縁コーナー部に配置した円弧状のヒンジ46により軸支されており、
図4の第1上扉34aに示すように、ヒンジ46の回動により上向きに開放させる後ろ開きができるようにしている。
【0036】
第2上扉36は扉後縁を第1上扉34の第2上面扉開口37にヒンジ42により軸支されており、
図4の第2上扉36aに示すように、ヒンジ42を中心に上向きに開放させる前開きができるようにしている。
【0037】
第2上扉36の前縁にはヒンジ44により前開きハンドル38が軸支されており、前開きハンドル38のハンドル本体に設けられた前開き機構により、第2上扉36の閉鎖状態で、前扉32が図示の閉鎖状態に係止されており、利用者が道路15側から操作する場合には、前開きハンドル38を開操作すると、第2上扉36に対する前扉32の係止が解除され、前扉32は自重により筐体31の裏側に落下して前面扉開口33を開放させ、また、第2上扉36を前開きすることで、消火栓収納箱30の第2上面扉開口37を開放させる。
【0038】
ここで、第1上扉34を筐体31の前縁コーナー部に回動自在に軸支させるヒンジ46と、第2上扉36の前縁に前開きハンドル38を軸支させるヒンジ44は、両者の軸心線が同軸となるように配置されており、筐体31及び前扉32を閉鎖位置に係止している前開きハンドル38を固定側として、ヒンジ44,46により第2上扉36と共に第1上扉34を後開き自在に軸支している。
【0039】
消火栓収納箱30の前面左上部には通報装置パネル48が設けられる。通報装置パネル48には、赤色表示灯50及び発信機52、応答ランプ54及び電話ジャック55が設けられている。赤色表示灯50は常時点灯し、消火栓設備の設置場所が遠方から分かるようにしている。火災時には、発信機52を押して押し釦スイッチをオンすると、発信信号が監視室の監視センター等に設置された防災受信盤に送信されて火災警報が出され、これに伴い応答信号が防災受信盤から送られて、応答ランプ54が点灯され、更に、赤色表示灯50が点滅される。
【0040】
[前開き機構]
図5は前開き機構が設けられた消火栓収納箱の前開きハンドルの部分を取り出して示した説明図であり、
図5(A)は正面を示し、
図5(B)は
図5(A)のX-Xから見た側面を示す。
図6は第2上扉を前開きして前扉の落下によりスライド開放させる前開き機構の機構構造を示した説明図であり、
図6(A)は閉鎖状態を示し、
図6(B)は前開きハンドルを開操作した状態を示す。
【0041】
図5に示すように、消火栓収納箱30の上面に配置された第2上扉36の先端にヒンジ44で軸支された前開きハンドル38のハンドル本体38aの両側には、前開き機構の軸部材56が取り出されおり、第2上扉36の閉鎖状態で軸部材56の先端は、前扉32の裏側に配置された軸受部材58の軸穴に挿入されており、これにより第2上扉36に前扉32が係止され、閉鎖位置に保持されている。
【0042】
軸部材56は前開きハンドル38をリフトアップすると、内側に引き込まれ、軸受部材58の軸穴から抜けることで、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重によりスライドしながら落下して前面扉開口33を開放させる。
【0043】
図6(A)に示すように、前開き機構60は、ハンドル本体38a内に、一対の屈曲したリンク62の一端が移動支点64で連結され、リンク62の屈曲位置が回動支点66としてハンドル本体38a側に固定され、リンク62の他端はスライド支点70として、軸部材56の軸端の支点68に連結されており、更に、移動支点64はスプリング72により図示で上方向に付勢されている。
【0044】
前開きハンドル38を操作していない場合、スプリング72の力を受けて、リンク62は外側に回動することで、軸部材56を軸受部材58の軸穴58aに嵌め入れ、第2上扉36に前扉32を係止させている。
【0045】
前開きンドル38をリフトアップすると、
図6(B)に示すように、図示しないリンク機構を介して移動支点64がスプリング72に抗して下側に移動し、これによりリンク62は内側に回動し、軸部材56を内側に引き込むことで、軸受部材58の軸穴58aから軸部材56の先端を引き外し、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重によりスライドしながら落下して前面扉開口33を開放させる。
【0046】
なお、前開き機構60は
図6のリンク機構に限定されず、前開きハンドル32のリフトアップにより軸部材56を内側に引き込んで軸受部材58の軸穴58aから引き外す適宜のリンク機構が含まれる。
【0047】
[道路側から第2上扉及び前扉を開放させる操作]
図7は道路側から操作する場合の前扉と第2上扉の開放操作を示した説明図である。
【0048】
図7に示すように、利用者が道路側から消火栓収納箱30を操作する場合には、前開きハンドル38をリフトアップすると、前扉32の係止が解除され、前扉32は自重によりスライド落下し、前面扉開口33が開放される。
【0049】
続いて、利用者が第2上扉36を奥行方向に開く前開き操作を行うと、
図6(A)(B)に示したように、ハンドル本体38aの両側に配置されている軸部材56が前扉32の裏面の軸受部材58から抜き出され、第2上扉36はヒンジ42を中心に前開きされ、第2上面扉開口37が開放され、第2上扉36の裏側に配置されているノズルホルダーからノズルを取り出してホースを引き出し、第2上扉36の裏面等に配置された消火栓弁開閉レバー(図示せず)を操作することでノズルからの放水により消火作業を行う。
【0050】
なお、第2上扉36の裏面等に配置された消火栓弁開閉レバーは手動パイロット弁を開閉操作させるようにしており、消火栓弁開閉レバーを開操作すると、手動パイロット弁が開放され、
図1に示した放水制御機構収納部26に分離配置された消火栓弁を遠隔的に開放され、ノズルから放水させることができる。
【0051】
一方、消火作業が終了した場合には、係員が引き出したホースの水抜きを行った後に、前面扉開口33及び第2上面扉開口37から筐体31内にホースを巻き戻して水平回りに内巻きし、最終的に、第2上扉36を閉鎖した状態で、開放している前扉32を引上げ、第2上扉36の前開き操作ハンドル38のハンドル本体38aに係止させ、前扉32を閉鎖状態に保持させる。
【0052】
[監視員通路から第1上扉を開閉させる操作]
図8は監視員通路側から操作する場合の第1上扉の開放操作を示した説明図である。
【0053】
図8に示すように、利用者が監視員通路側から消火栓収納箱30を操作する場合には、利用者が監視員通路から体をかがめて後開きハンドル40をリフトアップすると、第1上扉34の後縁側の筐体31側に対する係止が解除され、前縁コーナー部のヒンジ46を中心に、第1上扉34は後開きされ、第1上面扉開口35が開放される。
【0054】
このとき第1上扉34と一体に第2上扉36もヒンジ44を中心に後開きされ、ヒンジ44で軸支された前開きハンドル38は動くことがなく、前開きハンドル38に設けられた
図6に示した前開き機構60の軸部材56の先端は前扉32の裏面に配置された軸部材58の軸穴58aに嵌め込まれた状態を維持しており、前扉32の閉鎖状態への係止を保持したまま、第2上扉36は第1上扉34と一体に後開きされる。
【0055】
第1上扉34の後開きにより第1上面扉開口35が開放されると、利用者は第2上扉36の裏側に配置されているノズルホルダーに係止されたノズルを取り出してホースを引き出し、第2上扉36の裏面等に配置された消火栓弁開閉レバー(図示せず)を操作することで、ノズルからの放水により消火作業を行う。
【0056】
一方、消火作業が終了した場合には、係員が引き出したホースの水抜きを行った後に、第1上面扉開口35から筐体31内にホースを巻き戻して水平回りに内巻きし、最終的に、第1上扉34を閉鎖させる。
【0057】
[消火栓収納箱の内部構造]
図9は消火栓収納箱の内部構造を示した説明図であり、
図9(A)は正面を示し、
図9(B)は
図9(A)のY-Y断面から見た側面を示す。
【0058】
図9に示すように、消火栓収納箱30における筐体31の内部下側はホース収納部74となっており、保形構造のホース76を水平回りに重ねて内巻きしている。
【0059】
筐体31の平面からみた長方形は、横幅は約1.4メートル程度、奥行きは約0.35メートル程度であることから、ホース収納部74にホース76を内巻きした場合、ホース76の内巻き形状は、2つの平行線と2つの半円からなる角丸長方形となり、平面長方形の筐体31内に内巻きされたホース76の1ターンの長さは概ね3.5メートル程度となり、ホース長さは30メートル以上必要とすることから、ホース76は9ターン以上重ねて内巻きすればよい。
【0060】
ここで、筐体31内に角丸長方形に内巻きされたホース76を、平行線ホース部分76a,76c及び半円ホース部分76b,76dで示している。
【0061】
筐体31の中央前面側には、筐体31内に角丸長方形に内巻きされるホース76の前面側の平行線部分76aを内側に変形させるホースガイド構造80が設けられる。
【0062】
ホースガイド構造80は金属パイプを用いた2本のガイドパイプ80a,80bを底板81に起立させており、ホース76をホースガイド構造80のガイドパイプ80a,80bに沿って内巻きすることで、ホース76の前面側の平行線ホース部分76aが内側に変形されて略ひょうたん形に近い形状となり、この変形によりホース76の変形された平行線ホース部分76aには外側に広がろうとする反発力が発生している。
【0063】
このようなホースガイド構造80が設けられたことで、筐体31内に重ねて内巻きされたホース76は、角丸長円形の平行線ホース部分76aがホースガイド構造80により内側に変形されることで、外側に広がろうとする反発力が発生し、筐体31の内壁側に押し付ける力が発生することで、重ねて内巻きしたホース76の平行線ホース部分76a,76cが長くなっても内側に崩れてしまうことを確実に防止可能とする。
【0064】
ここで、ホースガイド構造80はホース76の前面側の平行線ホース部分76aを内側に変形させ、背面側の平行ホース部分76cは内側に変形させていないが、平行線ホース部分76aの内側へ変形により、ホース76全体として外側に広がろうとする力が増加し、内側に変形させていない背面側の平行ホース部分76cについても、内側に崩れてしまうことを確実が防止可能となる。
【0065】
また、前扉32及び第2上扉36又は第1上扉34を開いてホース76を外部に引き出す場合には、ホース76の半円ホース部分76b,76dの変形によるホースを押し出そうとする力に加え、ホース76の平行線ホース部分76aについても、ホースガイド構造80による内側への変形でホース76を押し出そうとする力が発生し、ホース76の引き出し力を低減可能とする。
【0066】
ホースガイド構造80の上部には、
図2に示した前面扉開口33、第1上面扉開口35及び第2上面扉開口37の内側を囲むように、ガイドパイプ82が配置され、ホース76を外部に引き出す際にガイドパイプ82に摺接させることで、ホース76の損耗を防止すると共にホース引き出し力を低減させている。
【0067】
また、第2上扉36の裏面にはノズルホルダー86によりホース76の先端に連結された泡ノズル78が着脱自在に係止されている。本実施形態のノズルホルダー86は、泡ノズル78を第2上扉36の裏面に軸支して懸垂状態に吊り下げる懸架構造により係止しており、第2上扉36を
図4の第2上扉36aに示すように前開きした場合、又は、1上扉34を第2上扉36と一体に
図4の第1上扉34aに示すように後ろ開きした場合にも、第2上扉36の扉裏面にノズルホルダー86が泡ノズル78を懸垂した状態で係止している。
【0068】
このため第2上扉36を前開き又は第1上扉34を第2上扉36と共に後開きすると、扉裏面に懸垂状態に保持されている泡ノズル78が消火栓収納箱30の上部に現れることになる。
【0069】
第2上扉36の前開きで扉裏面に保持されている泡ノズル78が現れる位置は、道路15から概ね0.9~1.3メートルの範囲のいずれかとなり、これは道路15に立った利用者の腰から肩までの範囲に相当し、目の前に泡ノズル78が出現することから、泡ノズル78の取出しが容易にできる。
【0070】
また、第1上扉34の後開きで扉裏面に保持されている泡ノズル78が現れる位置は、監視員通路14の路面から概ね0.2~0.4メートルの範囲のいずれかとなり、監視員通路14に体をかがめて後開きハンドル40を操作している利用者の目の前に泡ノズル78が出現し、利用者は監視員通路14側から泡ノズル78を容易に取り出すことができる。
【0071】
[点検扉]
図10は点検扉を前開きした状態を示した説明図、
図11は点検扉を前開きした状態を示した側面図である。
【0072】
図10及び
図11に示すように、消火栓収納箱30における筐体31の前面にボルトにより固定されている点検扉100は、ボルトを外して固定状態を解除することで、点検扉100の下側のヒンジ102を回動軸として上側が所定の傾斜角θに前開きされるように構成されている。
【0073】
点検扉100を筐体31の前面にボルトにより固定するため、点検扉100の両側上側には通し穴108が形成され、通し穴108に相対する筐体31のフレームにはねじ穴110が形成されている。
【0074】
また、点検扉100の両側と筐体31の両側フレームとの間は、可撓性の紐部材として機能するチェーン104で連結されており、チェーン104の長さを決めることで、ヒンジ102を中心に上側を前開きした場合の点検扉100の傾斜角θが設定される。
【0075】
本実施形態では、前開きされる点検扉100の傾斜角θが例えば30°となるようにチェーン104の長さが決められている。ここで、傾斜角θ=30°とした場合、点検扉100の高さを80~90センチメートルとすると、前開きされた点検扉100の上端と筐体31との間の間隔は概ね数十センチメートル程度となり、点検扉100の前面扉開口33が前扉32により閉鎖された状態にあっても、前開きされた点検扉100の上端と筐体31との間に数十センチメートルといった十分に広い開口が形成される。
【0076】
しかしながら、点検扉100を前開きさせた場合、前扉32の第2上扉36に設けた前開きハンドル38による係止は解除され、
図10に示すように、前開きされた点検扉100に設けられている前扉32は開放状態にあり、このため前開きされた点検扉100と筐体31との間には、十分に広い開口が形成されている。
【0077】
図10及び
図11に示した点検扉100の開放は、消火作業が終了して水抜きしたホースを筐体31内に水平回りに巻き戻す作業に先立って行われる。このように点検扉100が前開きされ、チェーン104により所定の傾斜角θに保持された状態で、係員は水抜きしたホース76を
図9に示すように、筐体31内のホース収納部74に水平回りに巻き戻す作業を行う。
【0078】
このとき係員は前開きされた点検扉100の前に立ち、傾斜して前開きされた点検扉100の上側から筐体31内に手を入れてホースの内巻きを行うことができ、
図7に示したように、前面扉開口33及び第2上面扉開口37から道路側にホースを引き出した場合、又は、
図8に示したように、第1上面扉開口35から監視員通路側にホースを引き出した場合のいずれについても、ホースを筐体31内に巻き戻す作業を容易に行うことができる。
【0079】
また、消火栓収納箱30に収納されているノズル付きホースを点検する場合にも、点検扉100の固定を解除して
図10及び
図11に示すように、点検扉100を傾斜した前開き状態とすることで、前開きした点検扉100と筐体31との間の開口から目視によりホースの状態を確認する点検作業を容易に行うことができる。
【0080】
更に、点検扉100の裏面側には前扉32が上下方向にスライド開閉自在に設けられており、点検扉100を傾斜した前開き状態とすることで、前扉32をスライド開閉させる扉開閉機構の点検も容易に行うことができる。
【0081】
[本発明の変形例]
(泡消火栓設備)
上記の実施形態は、消火泡を放出させる泡消火栓設備を例にとっているが、これに限定されず、消火用水を放水させる消火栓設備としても良い。
【0082】
(消火栓収納箱の設置)
また、上記の実施形態は、ホースガイド構造80a、80bは固定構造としているが、底板との接触部にヒンジを設け、前方向に軸回りに回転できるようにしても良い。点検時にホースガイド構造80a、80bを前方向に軸回りに回転し点検扉と接触させることで、点検扉を傾斜させて開口した空間からホース収納部までの阻害要因がなくなる。
【0083】
これにより、あらかじめまとめたホース束を点検扉及びホースガイド構造80a、80bの上を滑らせてホース収納部に格納する方法を取ることができる。また、ホースを巻き戻す作業を行う際もホースガイド82の上を通す必要がないので、巻き戻し作業を簡単にできるようになる。このとき傾斜角θは、まとめたホース束を収納できる程度に開口できることが好適である。このため、傾斜角θは底板の奥行をS、底板からホースガイド82までの高さをLとしたとき、sinθ≧S/Lを満たす程度に開口するよう、チェーン長を設定する。
【0084】
また、上記の実施形態は、トンネル消火栓設備の消火栓装置を例にとっているが、一般の道路に埋め込まれた消火栓に用いても良い。また、消火栓収納箱を埋め込まずに露出するようにしても良い。露出型の消火栓収納箱に用いる場合、上扉の開閉操作を行い易くし、ノズルを取り出す易くするために上扉が1メートル程度の高さに来るようにすることが好適である。また、例えば高さの異なる2つの通路面や、例えば体育館や舞台などの壇上とその下のような、それぞれ人が歩行可能な高さの異なる面とその面に接する壁面において本願消火栓収納箱を適用しても良い。
【0085】
(その他)
また、点検扉は前面への傾斜でなく、筐体の前面左端又は右端を軸として回転し、横方向に開くものであっても良い。これにより、正面からの制限がなくホースの収納等を行うことができる。この方式の場合、前扉を傾斜させる方法より、消火栓前の空間を要するが、ホース収納時においてはトンネルの通行が規制状態であるため、実施可能である。
【0086】
また、点検扉・前扉を中央で分割することにより、両側の軸から開くように構成しても良い。左端又は右端のみを軸として回転させる場合よりも、軸の最下点付近集中する力が減じられ、歪みが生じる可能性を低減させることが出来る。
【0087】
また本発明は、その目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0088】
10:トンネル
12:トンネル壁面
14:監視員通路
15:道路
16:消火栓設備
18:床版
20:管理用通路
22:ダクト
24:給水本管
24a:分岐配管
25:給水配管
26:放水制御機構収納部
30:消火栓収納箱
31:筐体
32:前扉
33:前面扉開口
34:第1上扉
35:第1上面扉開口
36:第2上扉
37:第2上面扉開口
38:前開きハンドル
40:前開きハンドル
42,44,46:ヒンジ
48:通報装置パネル
56:軸部材
58:軸受部材
58a:軸穴
60:前開き機構
74:ホース収納部
76:ホース
78:泡ノズル
80:ホースガイド構造
80a,80b,82:ガイドパイプ
86:ノズルホルダー
100:点検扉
102:ヒンジ
104:チェーン
106:ボルト
108:通し穴
110:ねじ穴