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特許7402967空調システム管理装置および空調システム管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】空調システム管理装置および空調システム管理方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/54 20180101AFI20231214BHJP
   F24F 11/52 20180101ALI20231214BHJP
   F24F 11/30 20180101ALI20231214BHJP
   G05B 23/02 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
F24F11/54
F24F11/52
F24F11/30
G05B23/02 301Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022505883
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006185
(87)【国際公開番号】W WO2021182065
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-08-19
(31)【優先権主張番号】P 2020042747
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 廣一郎
(72)【発明者】
【氏名】駒崎 就哉
(72)【発明者】
【氏名】川合 英充
【審査官】安島 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-139313(JP,A)
【文献】特開2012-034092(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0266719(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 11/00 - 11/89
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の室内機が下位通信ネットワークを介して接続された室外機が、上位通信ネットワークを介して複数台接続された空調システム管理装置であって、
前記上位通信ネットワークの通信状態情報を算出する上位通信状態情報算出部と、
複数の前記下位通信ネットワークの通信状態情報を、それぞれ接続された室外機を介して取得する下位通信状態情報取得部と、
前記上位通信状態情報算出部で算出した前記上位通信ネットワークの通信状態情報と、前記下位通信状態情報取得部で取得した前記複数の下位通信ネットワークの通信状態情報とに基づいて、通信ネットワークごとの通信品質情報を所定時間間隔ごとに算出する通信品質情報算出部と、
前記上位通信ネットワークを介して接続されている室外機の台数と、前記上位通信ネットワークの回線速度と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれを介して接続されている室内機の台数と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれの回線速度とを取得し、取得したこれらの情報と、前記通信品質情報算出部算出した前記通信ネットワークごとの通信品質情報を、同一画面上に表示させるための表示情報を生成する表示情報生成部と、
前記表示情報生成部で生成した表示情報を表示させる表示部と
を備える
空調システム管理装置。
【請求項2】
前記上位通信ネットワークの通信状態情報は、前記上位通信ネットワークの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率を含み、前記複数の下位通信ネットワークの通信状態情報は、前記下位通信ネットワークそれぞれの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率を含む、請求項1に記載の空調システム管理装置。
【請求項3】
前記通信品質情報算出部で算出された、通信ネットワークごとの通信品質情報を記憶する通信品質情報記憶部を更に備え、
前記表示情報生成部は、前記通信品質情報記憶部に記憶された情報から、指定された日時または期間に対応する通信品質情報を取得し、取得した前記通信品質情報を用いて前記表示情報を生成する
請求項1または2に記載の空調システム管理装置。
【請求項4】
前記表示情報生成部は、通信品質が所定値よりも低い通信ネットワークの通信品質情報を強調して、前記表示情報を生成する
請求項1~3いずれか1項に記載の空調システム管理装置。
【請求項5】
複数台の室内機が下位通信ネットワークを介して接続された室外機が、上位通信ネットワークを介して複数台接続された空調システム管理装置であって、
前記上位通信ネットワークの通信状態情報として、前記上位通信ネットワークの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率を算出する上位通信状態情報算出部と、
複数の前記下位通信ネットワークの通信状態情報として、前記下位通信ネットワークの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率を、それぞれ接続された室外機を介して取得する下位通信状態情報取得部と、
前記上位通信ネットワークを介して接続されている室外機の台数と、前記上位通信ネットワークの回線速度と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれを介して接続されている室内機の台数と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれの回線速度とを取得し、取得したこれらの情報と、前記上位通信状態情報算出部が算出した前記上位通信ネットワークの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率と、前記下位通信状態情報取得部が取得した前記複数の下位通信ネットワークそれぞれの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率とを、同一画面上に表示させるための表示情報を生成する表示情報生成部と、
前記表示情報生成部で生成した表示情報を表示させる表示部と
を備える
空調システム管理装置。
【請求項6】
複数台の室内機が下位通信ネットワークを介して接続された室外機が、上位通信ネットワークを介して複数台接続された空調システム管理装置を用いた空調システム管理方法であって、
前記上位通信ネットワークの通信状態情報を算出する上位通信状態情報算出ステップと、
複数の前記下位通信ネットワークの通信状態情報を、それぞれ接続された室外機を介して取得する下位通信状態情報取得ステップと、
前記上位通信状態情報算出ステップで算出した前記上位通信ネットワークの通信状態情報と、前記下位通信状態情報取得ステップで取得した前記複数の下位通信ネットワークの通信状態情報とに基づいて、通信ネットワークごとの通信品質情報を所定時間間隔ごとに算出する通信品質情報算出ステップと、
前記上位通信ネットワークを介して接続されている室外機の台数と、前記上位通信ネットワークの回線速度と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれを介して接続されている室内機の台数と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれの回線速度とを取得し、取得したこれらの情報と、前記通信品質情報算出ステップで算出した前記通信ネットワークごとの通信品質情報を、同一画面上に表示させるための表示情報を生成する表示情報生成ステップと、
前記表示情報生成ステップで生成した表示情報を表示させる表示ステップと
を有する
空調システム管理方法。
【請求項7】
複数台の室内機が下位通信ネットワークを介して接続された室外機が、上位通信ネットワークを介して複数台接続された空調システム管理装置を用いた空調システム管理方法であって、
前記上位通信ネットワークの通信状態情報として、前記上位通信ネットワークの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率を算出する上位通信状態情報算出ステップと、
複数の前記下位通信ネットワークの通信状態情報として、前記下位通信ネットワークの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率を、それぞれ接続された室外機を介して取得する下位通信状態情報取得ステップと、
前記上位通信ネットワークを介して接続されている室外機の台数と、前記上位通信ネットワークの回線速度と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれを介して接続されている室内機の台数と、前記複数の下位通信ネットワークそれぞれの回線速度とを取得し、取得したこれらの情報と、前記上位通信状態情報算出ステップで算出した前記上位通信ネットワークの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率と、前記下位通信状態情報取得ステップで取得した前記複数の下位通信ネットワークそれぞれの回線使用率、レスポンス要求に対するフレーム再送率、およびフレーム衝突率とを、同一画面上に表示させるための表示情報を生成する表示情報生成ステップと、
前記表示情報生成ステップで生成した表示情報を表示させる表示ステップと
を有する
空調システム管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、空調システム管理装置および空調システム管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商業施設やオフィスビルなどの大型の建物には、1台の室外機に複数台の室内機が接続されて構成された、マルチタイプの空調システムが搭載されている。このような空調システムでは、1台の室外機と複数台の室内機とが冷媒配管で接続されて冷凍サイクルが構成されるとともに、通信線でも接続されて通信ネットワークが構築されている。更に、この通信ネットワークに複数台の室外機及びシステムコントローラ(集中コントローラともいう)が接続される。そして、この通信ネットワークを介して、集中コントローラと、複数の室外機と、複数台の室内機との間で、制御指令等の情報が送受信される。
【0003】
空調システム内では、室外機や集中コントローラから所定の室内機に対して送信された制御指令に基づいて該当する室内機で動作が所定時間内に実行されれば、正常に通信が行われているように見える。しかし、このような場合でも、通信ネットワーク内では通信品質が低下しており、何度もリトライした結果、動作が実行されている場合もある。
【0004】
例えば、空調システム内の一部の通信線の近くに他の装置で利用する電源線が並走しており、この電源線に大電流が流れるなどすると、その影響で空調システムの通信線にノイズが乗ってしまい、一時的に通信品質が低下する場合がある。また、配線が異常に延長され、本来の通信距離より長く敷設されてしまい、通信がつながりにくくなり、通信品質が低下する場合もある。
【0005】
このような状況では、一時的に通信が不能となり、機器の運転制御ができなくなる可能性があるため、通信ネットワークを介して実行された通信に関するログを取得し、取得した通信ログから送信データの衝突率や再送率を算出して通信ネットワーク内の通信状態を監視する技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第3300452号公報(JP 3300452 B2)
【発明の概要】
【0007】
しかし、上述のようにして通信ネットワーク内の通信状態を監視するには、空調システム内のすべての室外機および室内機に通信ログを取得する機能を搭載しなければならず、コストがかかるとともにシステム構成が煩雑になるという問題があった。
【0008】
また、上述のように通信ネットワーク内の通信状態を監視しても、通信品質の低下が検出された際に、空調システム内のどの箇所の通信線に要因があるかを特定することができず、対応が困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空調システムの通信ネットワーク内の通信状況の監視作業を支援するための空調システム管理装置および空調システム管理方法を提供することを目的とする。
【0010】
上記目的を達成するために、実施形態に係る空調システム管理装置は、複数台の室内機が下位通信ネットワークを介して接続された室外機が、上位通信ネットワークを介して複数台接続された空調システム管理装置であって、前記上位通信ネットワークの通信状態情報を算出する上位通信状態情報算出部と、複数の前記下位通信ネットワークの通信状態情報を、それぞれ接続された室外機を介して取得する下位通信状態情報取得部と、前記上位通信状態情報算出部で算出した前記上位通信ネットワークの通信状態情報と、前記下位通信状態情報取得部で取得した前記複数の下位通信ネットワークの通信状態情報とに基づいて、通信ネットワークごとの通信品質情報を所定時間間隔ごとに算出する通信品質情報算出部と、前記通信品質情報算出部で算出した前記通信ネットワークごとの通信品質情報を、同一画面上に表示させるための表示情報を生成する表示情報生成部と、前記表示情報生成部で生成した表示情報を表示させる表示部とを備える。
【0011】
実施形態に係る空調システム管理方法は、複数台の室内機が下位通信ネットワークを介して接続された室外機が、上位通信ネットワークを介して複数台接続された空調システム管理装置を用いた空調システム管理方法であって、前記上位通信ネットワークの通信状態情報を算出する上位通信状態情報算出ステップと、複数の前記下位通信ネットワークの通信状態情報を、それぞれ接続された室外機を介して取得する下位通信状態情報取得ステップと、前記上位通信状態情報算出ステップで算出した前記上位通信ネットワークの通信状態情報と、前記下位通信状態情報取得ステップで取得した前記複数の下位通信ネットワークの通信状態情報とに基づいて、通信ネットワークごとの通信品質情報を所定時間間隔ごとに算出する通信品質情報算出ステップと、前記通信品質情報算出ステップで算出した前記通信ネットワークごとの通信品質情報を、同一画面上に表示させるための表示情報を生成する表示情報生成ステップと、前記表示情報生成部で生成した表示情報を表示させる表示ステップとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、実施形態に係る空調システム管理装置を利用した空調システムを示す全体図である。
図2図2は、実施形態に係る空調システム管理装置を利用した空調システムの詳細な構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施形態に係る空調システム管理装置により実行される通信状態情報の送信処理を示すフローチャートである。
図4図4は、実施形態に係る空調システム管理装置により実行される各通信ネットワークの通信品質情報の算出処理を示すフローチャートである。
図5図5は、実施形態に係る空調システム管理装置の表示部に表示された第1表示情報の一例を示す図である。
図6図6は、実施形態に係る空調システム管理装置の表示部に表示された第2表示情報の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〈実施形態に係る空調システム管理装置を用いた空調システムの構成〉
実施形態に係る空調システム管理装置を用いた空調システムの構成について、図1を参照して説明する。実施形態に係る空調システム1は、所定の建物に対して設置された複数台の室外機(第1室外機10、第2室外機20、および第3室外機30)を備える。
【0014】
第1室外機10には、第1下位通信ネットワーク11を介して10台の室内機12-1~12-10が接続され、これらの室内機12-1~12-10にはそれぞれ、リモートコントローラ13-1~13-10が接続されている。第2室外機20には、第2下位通信ネットワーク21を介して15台の室内機22-1~22-15が接続され、これらの室内機22-1~22-15にはそれぞれ、リモートコントローラ23-1~23-15が接続されている。第3室外機30には、第3下位通信ネットワーク31を介して24台の室内機32-1~32-24が接続され、これらの室内機32-1~32-24にはそれぞれ、リモートコントローラ33-1~33-24が接続されている。
【0015】
第1室外機10、第2室外機20、および第3室外機30は、上位通信ネットワーク40を介して、空調システム管理装置としてのシステムコントローラ50に接続されている。
【0016】
システムコントローラ50に接続される室外機の台数、室外機に各下位通信ネットワークを介して接続される室内機の台数、おおび各室内機に接続されるリモートコントローラの数はこれには限定されない。
【0017】
各室内機は、接続されたリモートコントローラから入力された指令、および、システムコントローラ50から該当する室外機を介して送信された指令に基づいて動作する。
【0018】
第1室外機10、第2室外機20、第3室外機30、およびシステムコントローラ50の詳細な構成を、図2に示す。
【0019】
第1室外機10は、下位通信データ取得部101と、下位通信データ記憶部102と、下位通信状態情報算出部103とを有する。下位通信データ取得部101は、第1下位通信ネットワーク11の通信データを取得する。通信データの詳細については、後述する。下位通信データ記憶部102は、下位通信データ取得部101で取得された第1下位通信ネットワーク11の通信データを記憶する。下位通信状態情報算出部103は、所定時間間隔で、下位通信データ記憶部102に記憶された通信データに基づいて第1下位通信ネットワーク11の通信状態情報を算出し、システムコントローラ50に送信する。通信状態情報の詳細については、後述する。
【0020】
第2室外機20は、下位通信データ取得部201と、下位通信データ記憶部202と、下位通信状態情報算出部203とを有する。下位通信データ取得部201は、第2下位通信ネットワーク21の通信データを取得する。下位通信データ記憶部202は、下位通信データ取得部201で取得された第2下位通信ネットワーク21の通信データを記憶する。下位通信状態情報算出部203は、所定時間間隔で、下位通信データ記憶部202に記憶された通信データに基づいて第2下位通信ネットワーク21の通信状態情報を算出し、システムコントローラ50に送信する。
【0021】
第3室外機30は、下位通信データ取得部301と、下位通信データ記憶部302と、下位通信状態情報算出部303とを有する。下位通信データ取得部301は、第3下位通信ネットワーク31の通信データを取得する。下位通信データ記憶部302は、下位通信データ取得部301で取得された第3下位通信ネットワーク31の通信データを記憶する。下位通信状態情報算出部303は、所定時間間隔で、下位通信データ記憶部302に記憶された通信データに基づいて第3下位通信ネットワーク31の通信状態情報を算出し、システムコントローラ50に送信する。
【0022】
システムコントローラ50は、上位通信データ取得部51と、上位通信データ記憶部52と、上位通信状態情報算出部53と、下位通信状態情報取得部54と、下位通信状態情報記憶部55と、通信品質情報算出部56と、通信品質情報記憶部57と、操作情報入力部58と、表示情報生成部59と、表示部60とを有する。
【0023】
上位通信データ取得部51は、上位通信ネットワーク40の通信データを取得する。上位通信データ記憶部52は、上位通信データ取得部51で取得された上位通信ネットワーク40の通信データを記憶する。
【0024】
上位通信状態情報算出部53は、所定時間間隔で、上位通信データ記憶部52に記憶された通信データに基づいて上位通信ネットワーク40の通信状態情報を算出する。
【0025】
下位通信状態情報取得部54は、第1室外機10から送信された第1下位通信ネットワーク11の通信状態情報、第2室外機20から送信された第2下位通信ネットワーク21の通信状態情報、および、第3室外機30から送信された第3下位通信ネットワーク31の通信状態情報を取得する。下位通信状態情報記憶部55は、下位通信状態情報取得部54で取得された各下位通信ネットワーク11、21、31の通信状態情報を記憶する。
【0026】
通信品質情報算出部56は、上位通信状態情報算出部53で上位通信ネットワーク40の通信状態情報が算出されると、この算出された情報と、下位通信状態情報記憶部55に記憶された情報とに基づいて、各通信ネットワーク11、21、31、40の通信品質情報を算出する。通信品質情報記憶部57は、通信品質情報算出部56で算出された各通信ネットワーク11、21、31、40の通信品質情報を記憶する。
【0027】
操作情報入力部58は、空調システム1の管理者による操作情報を入力する。表示情報生成部59は、操作情報入力部58から通信品質情報の表示を要求する操作情報が入力されると、通信品質情報記憶部57に記憶された各通信ネットワーク11、21、31、40の通信品質情報を同一画面上に表示させるための表示情報を生成する。表示部60はモニタ画面で構成され、表示情報生成部59で生成された表示情報を表示する。
【0028】
〈実施形態に係る空調システム管理装置を用いた空調システムの動作〉
次に、実施形態に係る空調システム1の動作について説明する。空調システム1の稼動中、所定時間間隔で、第1室外機10、第2室外機20、および第3室外機30からシステムコントローラ50に、それぞれ対応する下位通信ネットワーク11、21、31の通信状態情報が送信される。この下位通信ネットワーク11、21、31の通信状態情報の送信処理に関し、第1室外機10、第2室外機20、および第3室外機30で実行される処理について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0029】
第1室外機10の下位通信状態情報算出部103、第2室外機20の下位通信状態情報算出部203、および第3室外機30の下位通信状態情報算出部303には予め、それぞれ対応する下位通信ネットワーク11、21、31の通信状態情報の送信周期が「10分」として設定されている。
【0030】
第1室外機10の下位通信データ取得部101では、前回通信状態情報が送信されてから次の送信タイミングが到来するまでの間の第1下位通信ネットワーク11の通信データが取得され、下位通信データ記憶部102に記憶される(S1の「NO」→S2)。
【0031】
この第1下位通信ネットワーク11の通信データは、該当する期間内に室内機12-1~12-10との間で送受信されたフレーム数を、フレームの種類ごとに計数した計数値、これらのフレームのバイト数の総数、および衝突検出回数の情報を含む。フレームの種類ごとのフレーム数の計数値としては、例えば、送信フレーム総数、受信フレーム総数、レスポンス要求の送信フレーム数、レスポンス要求に対する応答の受信フレーム数がある。
【0032】
そして、通信状態情報の送信タイミングが到来すると(S1の「YES」)、下位通信状態情報算出部103により下位通信データ記憶部102に記憶された通信データに基づいて、第1下位通信ネットワーク11内の通信に関する通信状態情報として、回線使用率、再送率、および衝突率が算出される(S3)。
【0033】
この回線使用率は、下記式(1)により算出される。
回線使用率(%)=(((1分間あたりの送受信バイト数× 11(bit)) /60)/回線速度(bps))×100 ・・・(1)
【0034】
また、再送率は、下記式(2)により算出される。
再送率(%)=(1 -(1分間当たりのレスポンス要求の送信フレーム数の総数/1分間当たりのレスポンス要求に対する応答の受信フレーム数の総数))×100・・・(2)
【0035】
また、衝突率は、下記式(3)により算出される。
衝突率(%)=(1分間に衝突を検出した回数/1分間当たりの正常に受信したフレーム数)×100・・・(3)
【0036】
算出された通信状態情報は、下位通信状態情報算出部103からシステムコントローラ50に送信される。以上のステップS1~S4の処理が繰り返されることで、所定時間間隔で第1下位通信ネットワーク11の通信状態情報が、システムコントローラ50に送信される(S4)。
【0037】
同様にして、第2室外機においても、所定時間間隔で、第2下位通信ネットワーク21内の通信に関する、回線使用率、再送率、および衝突率が算出され、システムコントローラ50に送信される。また、第3室外機においても、所定時間間隔で、第3下位通信ネットワーク31内の通信に関する、回線使用率、再送率、および衝突率が算出され、システムコントローラ50に送信される。
【0038】
第1室外機10、第2室外機20、および第3室外機30から送信された各下位通信ネットワーク11、21、および31の通信状態情報は、システムコントローラ50の下位通信状態情報取得部54で取得され、下位通信状態情報記憶部55に記憶される。
【0039】
次に、空調システム1の稼動中にシステムコントローラ50において所定時間間隔で実行される、各通信ネットワークの通信品質情報の算出処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。システムコントローラ50の上位通信状態情報算出部53には予め上位通信ネットワーク40の通信品質情報の算出周期が「10分」として設定されている。
【0040】
上位通信データ取得部51では、前回通信品質情報が算出されてから次の算出タイミングが到来するまでの間の上位通信ネットワーク40の通信データが取得され、上位通信データ記憶部52に記憶される(S11の「NO」→S12)。
【0041】
上位通信ネットワーク40の通信データは、該当する期間内に室外機10、20、および30との間で送受信されたフレーム数を、フレームの種類ごとに計数した計数値、これらのフレームのバイト数の総数、および衝突検出回数を含む。
【0042】
そして、通信品質情報の算出タイミングが到来すると(S11の「YES」)、上位通信状態情報算出部53により上位通信データ記憶部52に記憶された通信データに基づいて、上位通信ネットワーク40内の通信に関する通信状態情報として、回線使用率、再送率、および衝突率が算出される(S13)。
【0043】
次に、上述したステップS1~S4の処理により、第1室外機10、第2室外機20、および第3室外機30のすべてから、それぞれ対応する下位通信ネットワーク11、21、31の通信状態情報が取得され、下位通信状態情報記憶部55に記憶されていれば(S14の「YES」)、通信品質情報算出部56により、上位通信ネットワーク40、第1下位通信ネットワーク11、第2下位通信ネットワーク21、および第3下位通信ネットワーク31それぞれの通信品質情報が算出される(S15)。
【0044】
この通信品質情報は、回線使用率、再送率、および衝突率が低い程低い値になるように算出され、通信品質情報の値が低い程、該当する通信ネットワークの通信品質が高い。
【0045】
そして、管理者により操作情報入力部58から当該空調システム1内の通信状態の第1の表示を指示する操作が行われると(S16の「YES」)、表示情報生成部59により、通信品質情報算出部56で算出された最新の各通信ネットワークの通信品質情報を含む第1表示情報が生成される。生成された第1表示情報は、表示部60に表示される(S17)。
【0046】
表示部60に表示された第1表示情報の一例を、図5に示す。この第1表示情報では、上位通信ネットワーク40に関する上位通信ネットワーク情報601、第1下位通信ネットワーク11に関する第1下位通信ネットワーク情報602、第2下位通信ネットワーク21に関する、第2下位通信ネットワーク情報603、および第3下位通信ネットワーク31に関する、第3下位通信ネットワーク情報604が示されている。これらの通信ネットワーク情報601~604内には、該当する通信状態情報を算出した機器に該当する通信ネットワークを介して接続されているノードの台数611と、通信品質情報612と、該当する通信ネットワークの回線速度613とが示されている。
【0047】
管理者は、この第1表示情報を視認することで、上位通信ネットワーク情報601内の通信品質情報612の値「60~65%」が、第1下位通信ネットワーク情報602の通信品質情報612の値「10~15%」、第2下位通信ネットワーク情報603の通信品質情報612の値「20~25%」、および第3下位通信ネットワーク情報604の通信品質情報612の値「25~30%」よりも高くなっていることを認識することができる。これにより、管理者は、上位通信ネットワーク40の通信品質が低くなっており、当該上位通信ネットワーク40内で不具合が発生する可能性が高いと予測することができる。
【0048】
また、上位通信ネットワーク情報601内の回線速度「1000bps」が、第1下位通信ネットワーク情報602~第3下位通信ネットワーク情報604の回線速度よりも低いことから回線使用率等が上昇し易く、これが通信品質の低下に影響していると予測することができる。
【0049】
また、第3下位通信ネットワーク情報604内の通信品質情報612の値が、他の下位通信ネットワーク情報602、603の通信品質情報612の値よりも高くなっていることを認識することができる。これは、第3下位通信ネットワーク31は接続ノード台数「24台」が、第1下位通信ネットワーク11の接続ノード台数「10台」、第2下位通信ネットワーク21の接続ノード台数「15台」よりも多いため、第3下位通信ネットワーク31内の通信距離が長いと考えられ、これに起因して通信品質が低下していると予測することができる。
【0050】
また、第3下位通信ネットワーク31の通信品質情報の低下は、上位通信ネットワーク40内の通信品質の低下の影響を受けていると予測することができる。
【0051】
また、管理者により操作情報入力部58から当該空調システム1内の通信状態の第2の表示への切り替えを指示する操作が行われると(S18の「YES」)、表示情報生成部59により、通信品質情報算出部56で算出された最新の各通信ネットワークの通信状態情報(回線使用率、再送率、および衝突率)を含む第2表示情報が生成される。生成された第2表示情報は、表示部60に表示される(S19)。
【0052】
表示部60に表示された第2表示情報の一例を、図6に示す。この第2表示情報では、上位通信ネットワーク40に関する上位通信ネットワーク情報621、第1下位通信ネットワーク11に関する第1下位通信ネットワーク情報622、第2下位通信ネットワーク21に関する第2下位通信ネットワーク情報623、および第3下位通信ネットワーク31に関する第3下位通信ネットワーク情報624が示されている。これらの通信ネットワーク情報621~624内には、接続ノードの台数631と、回線使用率632と、再送率633と、衝突率634と、回線速度635とが示されている。
【0053】
管理者は、この第2表示情報を視認することで、さらに詳細に、通信品質の低下の要因を認識することができる。例えば、上位通信ネットワーク情報621内の回線使用率632が40%、再送率633が40%、衝突率634が30%であり、いずれの値も他の第1下位ネットワーク情報622~624内の値よりも高くなっていることを認識することができる。
【0054】
このようにして、通信環境を考慮しつつ通信品質が低下している通信ネットワークを予測することで、通信不能となる前に故障の予兆を認識し、適切な対応をとることができる。
【0055】
上述した実施形態では、システムコントローラ50の表示情報生成部59で第1表示情報および第2表示情報を生成する際に、通信品質情報記憶部57に記憶された最新の通信品質情報を用いる場合について説明した。しかし、これには限定されず、管理者の操作により指定された日時や期間に対応する通信品質情報を通信品質情報記憶部57から取得し、これを用いて表示情報を生成するようにしてもよい。
【0056】
また、表示情報生成部59で表示情報を生成する際に、通信品質が所定値よりも低い通信ネットワークの通信品質情報を強調して、表示情報を生成してもよい。このように生成した表示情報を表示部60に表示させることで、管理者が、通信品質が低下している通信ネットワークを認識し易くなる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6