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特許7402970積層体、これを用いたロール体および梱包体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-12-13
(45)【発行日】2023-12-21
(54)【発明の名称】積層体、これを用いたロール体および梱包体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20231214BHJP
   B32B 7/022 20190101ALI20231214BHJP
   B32B 7/06 20190101ALI20231214BHJP
   B65D 85/672 20060101ALI20231214BHJP
【FI】
B32B27/32 103
B32B7/022
B32B7/06
B65D85/672
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022510485
(86)(22)【出願日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2021011720
(87)【国際公開番号】W WO2021193537
(87)【国際公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-06-21
(31)【優先権主張番号】P 2020057581
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】野間 賢士
(72)【発明者】
【氏名】又吉 智也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 孝行
【審査官】馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/143411(WO,A1)
【文献】特開2017-065182(JP,A)
【文献】特開2009-231047(JP,A)
【文献】特開2009-088480(JP,A)
【文献】特開2012-106747(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176743(WO,A1)
【文献】特開2004-160868(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0082798(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0186373(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 85/58
B65D 85/62-85/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシートと、
当該シートの少なくとも一方の面上に配置された剥離層と、
からなる積層単位を2以上備える積層体であって、
前記シートは、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であり、
前記シートの平均厚みが0.1mm以上30mm以下の範囲内であり、
前記剥離層の、チャック間距離100mm、引張速度100mm/分、気温23℃、相対湿度50%の条件で、引張伸び2%での引張荷重[N/15mm]が、1.0N/15mm以上、1,000N/15mm以下であり、
前記剥離層の両面において、前記シートに対する静摩擦係数(試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して気温23℃、相対湿度50%で測定)が、0.2以上である、積層体。
【請求項2】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位とを含む、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、前記4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%としたとき、前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が10モル%以上90モル%以下である、請求項1または2に記載の積層体。
【請求項4】
前記剥離層は合成樹脂からなる層を含む、請求項1乃至3いずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記合成樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリスチレン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記剥離層の平均厚みが10~85μmの範囲内である請求項1乃至いずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
当該シートが発泡体であり、かつ密度が0.10~0.80g/cmである、請求項1乃至6いずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
請求項1乃至いずれか一項に記載の積層体が、巻芯に巻き取られた、ロール体。
【請求項9】
前記積層体の幅に対し、前記積層体の幅方向における少なくとも一方の端部からの前記巻芯の張り出し長さが5mm~500mmである、請求項に記載のロール体。
【請求項10】
請求項またはに記載のロール体と、
前記ロール体を収容する梱包容器と、
前記梱包容器内の底面に配置され、前記ロール体の巻芯が嵌め込まれる凹部または貫通孔を有する支持部材と、
を含み、
前記ロール体の巻芯が、前記支持部材の凹部または貫通孔で支持されている、梱包体。
【請求項11】
4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシートと、
当該シートの少なくとも一方の面上に配置された剥離層と、
からなる積層単位を形成する工程を2以上含み、
10~100℃の環境下で当該シートを保管する、シートの保管方法であって、
前記シートは、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であり、
前記シートの平均厚みが0.1mm以上30mm以下の範囲内であり、
前記剥離層の、チャック間距離100mm、引張速度100mm/分、気温23℃、相対湿度50%の条件で、引張伸び2%での引張荷重[N/15mm]が、1.0N/15mm以上、1,000N/15mm以下であり、
前記剥離層の両面において、前記シートに対する静摩擦係数(試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して気温23℃、相対湿度50%で測定)が、0.2以上である、シートの保管方法。
【請求項12】
20~50℃の環境下で前記シートを保管する、請求項11に記載のシートの保管方法。
【請求項13】
請求項またはに記載のロール体の保管方法であって、
10~100℃の環境下で前記ロール体を保管する、ロール体の保管方法。
【請求項14】
20~50℃の環境下で前記ロール体を保管する、請求項13に記載のロール体の保管方法。
【請求項15】
請求項10に記載の梱包体の保管方法であって、
10~100℃の環境下で前記梱包体を保管する、梱包体の保管方法。
【請求項16】
20~50℃の環境下で前記梱包体を保管する、請求項15に記載の梱包体の保管方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、これを用いたロール体および梱包体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロール状に巻き取られたシートの保管方法として、例えば、特許文献1に開示される方法がある。特許文献1には、ポリビニルアセタール系樹脂を主成分とした接着剤シートについて、両面にエンボス形状を形成し、かつ、当該接着剤シートと離型性を有する保護シートを用いて、ロール状に巻き取る際に、接着剤シートのブロッキングを抑制する技術が開示されている。
【0003】
ところで、4-メチル-1-ペンテンを主たる構成モノマーとする4-メチル-1-ペンテン系重合体は、離型性、耐熱性、耐水性、耐溶剤性等の諸性能に優れているため各種用途に広く使用されている。例えば、特許文献2には、4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いたシートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2018/097145号
【文献】特開2018-44175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に開示されるような4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いたシートは、例えば、20℃以下で硬く、ガラス転移温度(Tg)付近では、柔らかくなり、損失弾性率/貯蔵弾性率の比(tanδ)が大きくなるという特性を有する。
本発明者らの検討によれば、かかるシートは、室温付近で軟化し粘着性を帯び易いため、シート同士を直接接触させて積層したり、巻き取りした場合に、ブロッキングしやすい傾向があった。そして、ブロッキングしたシートを引き剥がそうとすると、シートの形状が大きくゆがみ、その後、元の形状に戻らなくなるという永久変形の課題が発生することが新たに知見された。一方、かかるブロッキングを抑制するために、特段の工夫を施さずに離型性を有するフィルムを用いると、シートの保管時に、シートと離型フィルム間でずれが生じたり、ロール状に巻かれたシートの両端がずれるといった課題が生じた。
【0006】
本発明者らは、所定の4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシートの保管中のずれの発生を抑止しつつ、永久変形の課題を解決する観点から鋭意検討を行った結果、シート同士が対向する面に剥離層を設け、当該剥離層とシートとの間の静摩擦係数を制御することが、有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、シートの保管中のずれの発生を抑止しつつ、永久変形の発生を抑制する積層体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明によれば、以下に示す積層体が提供される。
【0009】
[1]
4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシートと、
当該シートの少なくとも一方の面上に配置された剥離層と、
からなる積層単位を2以上備える積層体であって、
前記シートは、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であり、
前記剥離層の両面において、前記シートに対する静摩擦係数(試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して気温23℃、相対湿度50%で測定)が、0.2以上である、積層体。
[2]
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位とを含む、[1]に記載の積層体。
[3]
前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、前記4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位との合計を100モル%としたとき、前記4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量が10モル%以上90モル%以下である、[1]または[2]に記載の積層体。
[4]
前記剥離層は合成樹脂からなる層を含む、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の積層体。
[5]
前記剥離層の平均厚みが10~85μmの範囲内である[1]乃至[4]いずれか一つに記載の積層体。
[6]
前記合成樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリスチレン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含む、[4]または[5]に記載の積層体。
[7]
当該シートが発泡体であり、かつ密度が0.10~0.80g/cmである、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の積層体。
[8]
前記シートの平均厚みが0.1mm以上30mm以下の範囲内である、[1]乃至[7]いずれか一つに記載の積層体。
[9]
前記剥離層の、チャック間距離100mm、引張速度100mm/分、気温23℃、相対湿度50%の条件で、引張伸び2%での引張荷重[N/15mm]が、1.0N/15mm以上、1,000N/15mm以下である、[1]乃至[8]いずれか一つに記載の積層体。
[10]
[1]乃至[9]いずれか一つに記載の積層体が、巻芯に巻き取られた、ロール体。
[11]
前記積層体の幅に対し、前記積層体の幅方向における少なくとも一方の端部からの前記巻芯の張り出し長さが5mm~500mmである、[10]に記載のロール体。
[12]
[10]または[11]に記載のロール体と、
前記ロール体を収容する梱包容器と、
前記梱包容器内の底面に配置され、前記ロール体の巻芯が嵌め込まれる凹部または貫通孔を有する支持部材と、
を含み、
前記ロール体の巻芯が、前記支持部材の凹部または貫通孔で支持されている、梱包体。
[13]
4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシートと、
当該シートの少なくとも一方の面上に配置された剥離層と、
からなる積層単位を形成する工程を2以上含み、
10~100℃の環境下で当該シートを保管する、シートの保管方法であって、
前記シートは、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であり、
前記剥離層の両面において、前記シートに対する静摩擦係数(試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して気温23℃、相対湿度50%で測定)が、0.2以上である、シートの保管方法。
[14]
20~50℃の環境下で前記シートを保管する、[13]に記載のシートの保管方法。
[15]
[10]または[11]に記載のロール体の保管方法であって、
10~100℃の環境下で前記ロール体を保管する、ロール体の保管方法。
[16]
20~50℃の環境下で前記ロール体を保管する、[15]に記載のロール体の保管方法。
[17]
[12]に記載の梱包体の保管方法であって、
10~100℃の環境下で前記梱包体を保管する、梱包体の保管方法。
[18]
20~50℃の環境下で前記梱包体を保管する、[17]に記載の梱包体の保管方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、シートの保管中のずれの発生を抑止しつつ、シートの永久変形の発生を抑制する積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態の積層体の模式的斜視図である。
図2】本実施形態のロール体の模式的斜視図である。
図3】本実施形態の梱包体の製造方法を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
煩雑さを避けるため、(i)同一図面内に同一の構成要素が複数ある場合には、その1つのみに符号を付し、全てには符号を付さない場合や、(ii)特に図2以降において、図1と同様の構成要素に改めては符号を付さない場合がある。
すべての図面はあくまで説明用のものである。図面中の各部材の形状や寸法比などは、必ずしも現実の物品と対応するものではない。
【0013】
本明細書中、「略」という用語は、特に明示的な説明の無い限りは、製造上の公差や組立て上のばらつき等を考慮した範囲を含むことを表す。
本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0014】
1.積層体
図1は、本実施形態の積層体の模式的斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の積層体1は、4-メチル-1-ペンテン系重合体を含むシート11(以下、「シート11」とも表記する)と、シート11の少なくとも一方の面上に配置された剥離層12と、からなる積層単位を2つ備える。
また、シート11は、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下であり、剥離層12の両面において、シート11に対する静摩擦係数(試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して気温23℃、相対湿度50%で測定)が、0.2以上である。
これにより、シート11の保管中のずれの発生を抑止しつつ、永久変形の発生を抑制することができる。
【0015】
なお、積層体1の積層単位は、3つ以上であってもよく、複数のシート11が、剥離層12を介して積層したものであればよい。
【0016】
[静摩擦係数]
積層体1において、剥離層12の両面のシート11に対する静摩擦係数(試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して気温23℃、相対湿度50%で測定)が、0.2以上である。当該静摩擦係数の上限値は特に限定されないが、例えば、10以下、好ましくは5以下、より好ましくは3以下が挙げられる。
剥離層12の一方の面と他方の面のシート11に対する静摩擦係数は、ともに0.2以上を満たせば、互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、一方の面のシート11に対する静摩擦係数が0.2~0.8、好ましくは0.2~0.7である場合、他方の面の当該静摩擦係数は、1.3以上であることが好ましい。また、一方の面と他方の面のシート11に対する静摩擦係数が同じである場合、ともに、0.8以上であることが好ましい。効果的に耐ブロッキング性を得る観点からは、一方の面と他方の面の当該静摩擦係数が同じ、または当該静摩擦係数の差の絶対値が0.2以下であることが好ましい。
【0017】
剥離層12のシート11に対する静摩擦係数は、試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して、気温23℃、相対湿度50%の条件で測定される。
また、剥離層12のシート11に対する静摩擦係数は、後述する剥離層12を構成する材料や剥離層12の表面形状、シート11の構成材料等によって調整される。
【0018】
以下、積層体1を構成する各層について、詳述する。
【0019】
<シート>
[損失正接(tanδ)]
本実施形態に係るシート11は、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上100℃以下の範囲に1つ以上あり、かつ、上記損失正接の極大値が0.5以上3.5以下である。
例えば、シート11を縦30mm×幅10mmの試験片に切り出し、周波数1.59Hz、昇温速度4℃/分、測定温度範囲0℃~110℃、歪量0.1%、チャック間距離20mm、捻りモードの条件で、レオメータを用いて測定することができる。
【0020】
すなわち、本実施形態のシート11は、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度範囲および損失正接の極大値を上記範囲に調整されているため、シート11同士を直接積層した場合、ブロッキングが生じやすい。
かかる理由の詳細は明らかではないが、以下のように考えられる。
まず、周波数1.59Hzという比較的低周波数領域での損失正接(tanδ)が高くなることは、瞬間的な衝撃などの力と比較して時間をかけてかかる力(遅い力ともいう)に対しては追従しやすくなることを意図する。そのため、シート11同士を直接積層した場合、シート11の表面形状が互いに追従し、ブロッキングしやすくなると推測される。
また、10℃以上100℃以下の範囲において損失正接の極大値が上記範囲内であるシート11は、積層体1の通常の環境温度において保管した場合、シート11が軟化し易くなるため、シート11同士を直接積層した場合において、変形しやすく、互いに密着し、ブロッキングしやすくなると推測される。
その結果、シート11同士を引き剥がそうとすると、永久変形を起こしやすくなると考えられる。
【0021】
本実施形態に係るシート11の上記損失正接は、例えば、(1)後述する4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の種類や配合割合、(2)シート11の架橋の有無、(3)シート11の成形方法等を適切に調節することにより、上記範囲内に制御することが可能である。
具体的には、例えば、シート11中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の配合割合を高めること、シート11に対し架橋処理をおこなわないこと等が挙げられる。
【0022】
本実施形態に係るシート11は、良好な形状追従性を得る観点から、未架橋であることが好ましい。すなわち、本実施形態に係るシート11は、例えば、電子線やγ線を用いた電離性放射架橋等の架橋処理がなされていない未架橋シートであることが好ましい。これにより10℃以上100℃以下の範囲における損失正接の極大値を向上させることができ、形状追従性により一層優れるシート11を得ることができる。
【0023】
本実施形態に係るシート11において、動的粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度が少なくとも10℃以上80℃以下の範囲に1つ以上あることが好ましく、10℃以上60℃以下の範囲に1つ以上あることがより好ましく、10℃以上50℃以下の範囲に1つ以上あることがさらに好ましく、10℃以上40℃以下の範囲に1つあることが特に好ましい。これにより、より一層優れた形状追従性を有するシート11が得られるようになる。
【0024】
また、本実施形態に係るシート11において、上記損失正接の極大値は0.8以上であることが好ましく、1.0以上であることがより好ましく、1.2以上であることがさらに好ましい。そして本実施形態に係るシートにおいて、上記損失正接の極大値は3.0以下であることが好ましく、2.8以下であることがより好ましい。
これにより、本実施形態に係るシート11の柔軟性および形状追従性の性能バランスをより良好にすることができる。ここで、損失正接の極大値が大きいほど、シート11の粘性的な性質が強いことを意味する。粘性的な性質が強いシート11は、変形する際に与えられる力学的エネルギーのより多くを熱エネルギーに変換でき、エネルギーをより多く吸収できるため、変形後の復元速度がより一層緩やかになると考えられる。その結果、シート11が有する柔軟性を維持した上で、形状追従性が発揮される。
【0025】
[厚み]
シート11の厚みは特に限定されないが、好ましくは0.1mm以上30mm以下の範囲であり、より好ましくは0.1mm以上5mm以下の範囲であり、さらに好ましくは0.1mm以上3mm以下の範囲である。
シート11の厚みを、上記下限値以上とすることにより、剥離性を保持しつつ、シート11が有する形状追従性、機械的特性、および成形性等といった性能が保持されやすくなる。
シート11の厚みを、上記上限値以下とすることにより、永久変形抑制機能を発揮しやすくなり、軽量性、外観、および取扱い性を良好にできる。
【0026】
本実施形態に係るシート11は、用途に応じて、通気性を高めるために通気孔を有してもよい。例えば、機械式パンチング、ニードル加工、レーザーパーフォレーション、ウォータージェット等の加工技術により、表裏に連通した多数の通気孔を設けることができる。
【0027】
[形態]
本実施形態に係るシート11は、発泡体であってもよい。これにより、軽量性、耐衝撃性、柔軟性、追従性などの特性が発揮されるとともに、積層体1におけるブロッキングを抑制し易くなる。発泡体とする場合、後述の発泡剤とともに成形されることが好ましい。
【0028】
また、本実施形態のシート11が発泡体である場合、その密度は、0.10~0.80g/cmであることが好ましく、0.20~0.75g/cmであることがより好ましく、0.30~0.70g/cmであることがさらに好ましく、0.40~0.65g/cmであることがことさらに好ましい。
発泡体の密度を、上記下限値以上とすることにより、形状追従性、機械的特性、成形性等の良好なバランスが得られる。一方、発泡体の密度を、上記上限値以下とすることにより、軽量性、外観、および取扱い性を良好にできる。
【0029】
[用途]
本実施形態に係るシート11は、形状追従性、機械的特性、成形性、および耐湿性等といった様々な機能を有するため、機能に応じて、広く利用することができる。
【0030】
以下、本実施形態に係るシート11を構成する各成分について説明する。
【0031】
[4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)]
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)としては、例えば、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(c1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素原子数2~20のα-オレフィン由来の構成単位(c2)とを含む4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)が挙げられる。
ここで、本実施形態において、「炭素原子数2~20のα-オレフィン」は特に断らない限り、4-メチル-1-ペンテンを含まないことを意味する。
【0032】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、積層体1のシート11の柔軟性および保管安定性をより向上させる観点から、構成単位(c1)と構成単位(c2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(c1)の含有量が10モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上90モル%以下であることが好ましい。
また、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、シート11の柔軟性や機械的特性等をより良好にする観点から、構成単位(c1)と構成単位(c2)との合計を100モル%としたとき、構成単位(c1)の含有量が30モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上70モル%以下であることがより好ましく、構成単位(c1)の含有量が50モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上50モル%以下であることがさらに好ましく、構成単位(c1)の含有量が60モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上40モル%以下であることがさらにより好ましく、構成単位(c1)の含有量が65モル%以上90モル%以下であり、構成単位(c2)の含有量が10モル%以上35モル%以下であることが特に好ましい。
【0033】
本実施形態において、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)に用いられる炭素原子数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、直鎖状又は分岐状のα-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物等が挙げられ、直鎖状のα-オレフィンが好ましい。
【0034】
直鎖状α-オレフィンの炭素原子数は、好ましくは2~10、より好ましくは2~3である。直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン等が挙げられ、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンおよび1-デセンから選択される一種または二種以上が好ましく、エチレンおよびプロピレンから選択される少なくとも一種がより好ましい。
分岐状のα-オレフィンの炭素原子数は、好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。分岐状のα-オレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン等が挙げられる。
環状オレフィンの炭素原子数は、好ましくは5~15である。環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0035】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のモノ又はポリアルキルスチレン等が挙げられる。
共役ジエンの炭素原子数は、好ましくは4~20、より好ましくは4~10である。共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン等が挙げられる。
【0036】
官能基化ビニル化合物としては、例えば、水酸基含有オレフィン、ハロゲン化オレフィン、(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸およびその酸無水物や酸ハライド、アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-ヘプテンアミン等の不飽和アミン、(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物、不飽和エポキシ化合物、エチレン性不飽和シラン化合物等が挙げられる。
上記水酸基含有オレフィンとしては、例えば、炭素原子数2~20、好ましくは2~15の直鎖状又は分岐状の末端水酸基化α-オレフィン等が挙げられる。
上記ハロゲン化オレフィンとしては、例えば、炭素原子数が2~20、好ましくは2~15の直鎖状又は分岐状のハロゲン化α-オレフィン等が挙げられる。
【0037】
これらの炭素原子数2~20のα-オレフィンは、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記の中でもエチレン、プロピレンが好適であるが、プロピレンを使用すると、柔軟性等をより良好にできる点で特に好ましい。
【0038】
なお、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(c)は、本発明の目的を損なわない範囲で、構成単位(c1)と構成単位(c2)以外の構成単位を含んでいてもよい。その他の構成としては、非共役ポリエン由来の構成単位が挙げられる。
非共役ポリエンとしては、炭素原子数が好ましくは5~20、より好ましくは5~10の直鎖状、分岐状又は環状のジエン、各種のノルボルネン、ノルボルナジエン等が挙げられる。これらの中でも、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネンが好ましい。
【0039】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の135℃のデカリン中での極限粘度[η]は、シートの変色性、柔軟性や機械的強度をより良好にする観点から、0.01~5.0dL/gであることが好ましく、0.1~4.0dL/gであることがより好ましく、0.5~3.0dL/gであることがさらに好ましく、1.0~2.8dL/gであることが特に好ましい。
【0040】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)のASTM D 1505(水中置換法)に従って測定された密度は、好ましくは0.810~0.850g/cm、より好ましくは0.820~0.850g/cm、さらに好ましくは0.830~0.850g/cmである。
【0041】
本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)は種々の方法により製造することができる。例えば、マグネシウム担持型チタン触媒;国際公開第01/53369号、国際公開第01/027124号、特開平3-193796号公報、および特開平02-41303号公報等に記載のメタロセン触媒;国際公開第2011/055803号に記載されるメタロセン化合物を含有するオレフィン重合触媒等の公知の触媒を用いて製造することができる。
【0042】
本実施形態に係るシート11中の4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の含有量は特に限定されないが、シート11の全体を100質量%としたとき、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上、さらにより好ましくは70質量%以上、特に好ましくは75質量%以上であり、一方、好ましくは100質量%以下、より好ましくは99.5質量%以下、さらに好ましくは99質量%以下、さらにより好ましくは98質量%以下、特に好ましくは97質量%以下である。
これにより、変色性、発色性、柔軟性、形状追従性、軽量性、機械的特性、取扱い性、外観、成形性、耐湿性等のバランスにより優れたシート11を得ることができる。
【0043】
本実施形態に係るシート11は、上記4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)以外の成分を含んでもよい。
【0044】
[改質樹脂(a2)]
本実施形態に係るシート11は、外観や肌触り等をより良好にする観点から、改質樹脂(a2)(ただし、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)を除く)を含有してもよい。本実施形態に係る改質樹脂(a2)は、例えば、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマーおよびゴムから選択される1種または2種以上が挙げられる。
【0045】
上記の熱可塑性樹脂(ただし、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a1)を除く)としては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、環状オレフィン共重合体、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性ポリオレフィン樹脂;脂肪族ポリアミド(ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612)、ポリエーテルブロックアミド共重合体等の熱可塑性ポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;ポリスチレン、ABS樹脂、AS樹脂等の熱可塑性ビニル芳香族系樹脂;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル樹脂;エチレン・酢酸ビニル共重合体;エチレン・メタクリル酸アクリレート共重合体;アイオノマー;エチレン・ビニルアルコール共重合体;ポリビニルアルコール;ポリフッ化ビニル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ETFE等のフッ素系樹脂;ポリカーボネート;ポリアセタール;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンサルファイド;ポリイミド;ポリアリレート;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ロジン系樹脂;テルペン系樹脂;石油樹脂等が挙げられる。
ゴムとしては、例えば、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体ゴム、プロピレン・α-オレフィン・ジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
さらに、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー、酸変性スチレン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー等が挙げられる。
また、これらの改質樹脂(a2)をアクリル酸やメタクリル酸、マレイン酸等により酸変性したものであってもよい。
これらの改質樹脂(a2)は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
これらの改質樹脂(a2)の中でも、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、ポリ3-メチル-1-ブテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体から選択される一種または二種以上が好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1-ブテン、ポリ4-メチル-1-ペンテン、エチレン・α-オレフィン共重合体、プロピレン・α-オレフィン共重合体、1-ブテン・α-オレフィン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリエーテルブロックアミド、アイオノマー、フッ素系樹脂、酸変性フッ素系樹脂、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、石油樹脂およびスチレン系エラストマーから選択される一種または二種以上で、添加により溶融張力を向上させるものがより好ましい。
また、本実施形態に係る4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)と適度な相容性があるものがさらに好ましい。さらに、スチレン系エラストマーの中で、クラレ社製のビニルSIS(製品名:ハイブラー、銘柄5127)、SEPS(製品名:ハイブラー、銘柄7125)、SEEPS(製品名:ハイブラー、銘柄7311F)、クレイトンポリマージャパン社製SEBS(製品名:クレイトン、銘柄:G1657MS)、および旭化成社製SEBS(製品名:S.O.E.、銘柄:S1605、S1611、およびL609)についても、相容性、損失正接の極大値を示す温度範囲、損失正接の極大値の大きさの観点から、好ましく用いることができる。
【0047】
本実施形態に係るシート11は、これらの改質樹脂(a2)の中から1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0048】
本実施形態に係るシート11中の改質樹脂(a2)の含有量は特に限定されないが、シート11全体を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、さらに好ましくは2質量%以上、さらにより好ましくは3質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、さらにより好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
改質樹脂(a2)の含有量が上記下限値以上であると、本実施形態に係るシート11の外観や肌触り等をより良好にすることができる。改質樹脂(a2)の含有量が上記上限値以下であると、本実施形態に係るシート11の柔軟性等の性能バランスをより良好にすることができる。
【0049】
[その他の成分]
本実施形態に係るシート11は、必要に応じて、発泡剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、着色剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス等の添加剤を配合してもよい。これらの中でも、可塑剤、軟化剤、天然油および合成油は、本実施形態に係るシート11の固体粘弾性の損失正接(tanδ)の極大値を示す温度および損失正接の極大値を調整するために、種類および添加量を制御して用いてもよい。
【0050】
上記の発泡剤としては、化学発泡剤、物理発泡剤が挙げられる。
化学発泡剤としては、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウム、各種カルボン酸塩、水素化ホウ素ナトリウム、アゾジカルボアミド、N,N-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、P,P-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジッド)、アゾビスイソブチロニトリル、パラトルエンスルホニルヒドラジッド、重曹クエン酸ナトリウム等が挙げられる。
物理発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、または二酸化炭素と窒素の混合物等が挙げられ、いずれもガス状、液状または超臨界状態のいずれでも供給することが可能である。
【0051】
[製造方法]
シート11の原料となる4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)を含む樹脂組成物は、各成分をドライブレンド、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、単軸押出機、二軸押出機、高速二軸押出機、熱ロール等により混合または溶融・混練することにより調製することができる。
【0052】
また、本実施形態に係るシート11が発泡体である場合、例えば、成形装置を用いて、発泡剤を含む樹脂組成物を特定の形状に発泡成形することにより得ることができる。
【0053】
また、化学発泡剤は押出成形機に投入する前に樹脂組成物と配合して均一に混合することが好ましい。また、物理発泡剤として二酸化炭素を使用する場合は、樹脂組成物が押出成形機内で混練、可塑化された状態になった後、直接押出成形機内へ注入することが好ましい。
発泡倍率は特に限定されず、シート11の物性を考慮して適宜決定することができる。
【0054】
<剥離層>
本実施形態の剥離層12は、シート11同士のブロッキングを低減しつつ、シート11の永久変形を抑制するために用いられる。
【0055】
[引張荷重]
剥離層12の引張荷重は、1.0N/15mm以上であることが好ましく、2.0N/15mm以上であることがより好ましい。これにより、積層体の巻き取り時に、シートに巻取皴が入るのを抑制できる。
一方、剥離層12の引張荷重の上限値は特に限定されないが、例えば、1,000N/15mm以下が挙げられる。また、ブロッキングを高度に低下させつつ、巻きずれを抑制する観点からは、剥離層12の引張荷重の上限値は、100N/15mm以下が好ましく、50N/15mm以下がより好ましく、35N/15mm以下がさらに好ましい。
剥離層12の引張荷重は、試験片の形状が短冊状で、幅15mmであり、チャック間距離100mm、引張速度100mm/分、気温23℃、相対湿度50%の条件で、引張伸び2%での引張荷重[N/15mm]として測定される。
【0056】
剥離層12を構成する材料としては、紙、不織布、合成樹脂からなる層等が挙げられ、これらを組み合わせたものであってもよい。良好な耐ブロッキング性と永久変形の抑制効果を両立する観点から、合成樹脂からなる層を含むことが好ましい。
【0057】
合成樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン11、ナイロン12、MXDナイロン(ポリメタキシリレンアジパミド)、及びこれらの共重合体等のポリアミド樹脂;ポリアラミド樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリアセタール樹脂;フッ素樹脂;ポリエーテル系、アジペートエステル系、カプロラクトンエステル系、ポリ炭酸エステル系等の熱可塑性ポリウレタン;ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化ビニル樹脂;ポリアクリロニトリル;α-オレフィンと酢酸ビニル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等との共重合体、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体;ポリエチレンやポリプロピレン等のα-オレフィン(共)重合体をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性オレフィン樹脂;エチレンとメタクリル酸との共重合体等にNaイオンやZnイオン等を作用させたアイオノマー樹脂;これらの混合物等が挙げられる。なかでも、良好な耐ブロッキング性と永久変形の抑制効果を両立する観点からポリオレフィン系樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアラミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリスチレン樹脂の中から選ばれる1種または2種以上を含むことが好ましく、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂を含むことがより好ましい。
【0058】
また、合成樹脂からなる層は、1層であってもよく、2層以上であってもよい。
合成樹脂からなる層の製造方法(製膜方法)は特に限定されない。押出、インフレーション、カレンダーリング等の公知の方法を適用することができる。合成樹脂からなる層を多層構造とする場合にも、共押出(マルチダイを使用した押出)、各種ラミネート法など、公知の方法を適宜適用することができる。
【0059】
合成樹脂からなる層の製造の際、必要に応じて、スリップ剤などの添加物を混練または塗布してもよい。また、2種類以上の樹脂をブレンドしてもよい。また、製膜の際、延伸処理やアニーリング処理などを施してもよい。
【0060】
剥離層12の平均厚みは10~1,000μmであることが好ましい。剥離層12の平均厚みの上限値は、より好ましくは200μm以下であり、さらに好ましくは100μm以下であり、ことさらに好ましくは85μm以下である。一方、剥離層12の平均厚みの下限値は、より好ましくは15μm以上であり、さらに好ましくは20μm以上である。
【0061】
剥離層12の表面には、追加の層が設けられてもよいし、何らかの機能を付与するためにコーティングや研磨または粗化等の表面処理が施されていてもよい。
【0062】
剥離層12は、透明であっても不透明であってもよい。視認性の点では透明であることが好ましい。
【0063】
なお、上記の積層体1は、一例であり、本発明の効果を損なわない範囲で、上記以外の様々な構成の積層体とすることができる。
【0064】
2.ロール体
図2は、本実施形態のロール体の模式的斜視図である。
図2に示すように、ロール体10は、シート11と離型層12とが積層した積層体が、巻芯13に巻き取られたものからなる。本実施形態において、ロール体10は、シート11および剥離層12とからなる積層単位を2~数千の単位で有する。
また、剥離層12は、シート11よりも、長さおよび幅とも、同等以上であることが好ましい。
【0065】
また、巻芯13の長さは、積層体の幅(図2中のX;流れ方向に垂直な方向の長さ)と同じまたは長いことが好ましく、ロール体10を安定に保管する観点から、積層体の少なくとも一方の端部から、巻芯13が張り出していることが好ましい。具体的には、積層体の幅Xに対して、巻芯13の張り出し部の長さYが5~500mmであることが好適である。
張り出し部は、積層体の幅に対し、少なくとも一方の端部から張り出したものであってもよく、両端部から張り出したものであってもよい。張り出し部が両端部にある場合、張り出し長さYは、同じであっても、異なっていてもよいが、取り扱い性を良好にする観点から、同じであることが好ましい。
【0066】
巻芯13の材質は、特に限定されないが、紙、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、繊維強化プラスチック、金属などが挙げられる。
【0067】
また、巻芯13の直径(外径)は、特に限定されないが、例えば、25~300mmである。
また、積層体1の長さ、幅は、用途に応じて適宜設定することができるが、より安定的かつ高度にずれを抑制しつつ、ブロッキングを低減する観点から、例えば、幅10~200cm、全長0.1~100mであることが好適である。
【0068】
本実施形態のロール体10は、シート11および剥離層12が積層したものであるため、上記の積層体1と同様に、シート11の保管中のずれの発生を抑止しつつ、永久変形の発生を抑制することができる。
【0069】
3.梱包体
図3は、本実施形態の梱包体30の製造方法を示す模式的斜視図である。
図3(a)には、4本のロール体10と、ロール体10の巻芯13の一部が嵌め込まれる4つの凹部21を有する支持部材20が示されている。より詳細には、ロール体10は、巻芯13が張り出しており、凹部21の深さは、かかる張り出し長さと同等またはそれ以下となっている。その結果、ロール体10の幅方向端部が、支持部材20の表面と接しにくくなり、接触に伴い荷重が作用した場合の変形リスクを軽減することができる。
【0070】
また、凹部21の形状、サイズは、特に限定されず、巻芯13の形状、サイズに合わせて適宜調整されるが、ロール体10を縦方向(軸方向)に安定的に支持する観点から、凹部21の深さは、巻芯13の張り出し部よりも小さいことが好適である。
また、凹部21の配置は、適宜調整されるが、複数のロール体10の外周面が互いに接しない程度の最小限の間隔で配置されることが好ましい。これにより、ロール体10同士のブロッキングを抑制しつつ、より省スペース化を図ることができる。
【0071】
また、図3(a)では、支持部材20が凹部21を示す例が示されているが、凹部21の代わりに、支持部材20を貫通する貫通孔であってもよい。
【0072】
支持部材20の材質としては、特に限定されず、紙、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、繊維強化プラスチック、金属などが挙げられる。なかでも、コストを抑え、加工性が良好な観点から、紙であることが好ましく、機械的強度を得る観点からは、熱硬化性樹脂、繊維強化プラスチックを用いてもよい。
【0073】
次に、図3(b)には、内部にロール体10を収容し、支持部材20が底面に配置された梱包容器23が示されている。また、支持部材20は、梱包体30の底面において、位置ずれしないようはめられている。これにより、複数のロール体10を安定的に梱包し、保管することができる。具体的には、支持部材20と、梱包体30との間の間隙は、10mm以下であることが好ましい。
【0074】
梱包体30の材質としては、特に限定されないが、紙、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などが挙げられる。なかでも、コストを抑え、加工性が良好な観点から、紙であることが好ましく、機械的強度を得る観点からは、熱硬化性樹脂、繊維強化プラスチックを用いてもよい。
【0075】
また、梱包体30内において、振動などによってロール体10同士が接しないよう、自立式の仕切り板が配置されてもよい(不図示)。この場合、できるだけ、仕切り板とロール体10とが直接接しない程度に離隔されることが好ましい。
仕切り板の材質としては、梱包体30で用いられる材質と同様の物が挙げられる。また、仕切り板と、梱包体30とは、同じ材質であってもよく、異なる材質であってもよい。
【0076】
本実施形態の梱包体30は、上記のロール体10と同様に、シート11の保管中のずれの発生を抑止しつつ、永久変形の発生を抑制することができる。
【0077】
なお、本実施形態では、梱包体30が、4つのロール体10を包装、梱包している例を挙げて説明したが、ロール体10の数は、これに限られず、4以下であってもよく、5以上であってもよく、数十の単位であってもよい。
【0078】
4.保管方法
本実施形態において、上記の積層体1、ロール体10、および梱包体30はいずれも、-30℃~100℃の環境下で保管されてもよく、0~100℃の環境下で保管されることが好ましい。言い換えると、シート11は、好ましくは0℃~100℃の環境下で保管されることにより、シート11の保管中のずれが抑止されるとともに、永久変形が抑制される。
また、保管温度のより好ましい下限値は20℃以上であり、一方、より好ましい上限値は、50℃以下、30℃以下、27℃以下、25℃以下の順である。保管される環境温度をかかる数値範囲内とすることにより、シート11の保管中のずれの抑止作用、および永久変形抑制作用を安定的に得ることができる。
保管期間は、特に限定されないが、たとえば、1~730日間が挙げられる。また、保管期間中、輸送・搬送などが行われてもよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。また、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【実施例
【0080】
以下、本実施形態を、実施例・比較例を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
【0081】
<測定方法>
【0082】
(1)4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の動的粘弾性測定
4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)を短冊状に縦30mm×幅10mmに切り出し、試験片とした。次いで、得られた試験片に対して、Anton Paar社製MC301を用いて、チャック間距離20mm、周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/分、捻りモードの条件で温度範囲0℃~110℃までの動的粘弾性の温度依存性を測定した。得られたグラフから、損失正接(tanδ)の極大値を示す温度およびそのtanδの極大値(Tg[℃])をそれぞれ求めた。
【0083】
(2)4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の極限粘度[η]
極限粘度[η]は、デカリン溶媒を用いて135℃で測定した。
【0084】
(3)4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の組成
4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)中の4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィンの含有量は13C-NMRにより定量した。
【0085】
(4)4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)の密度
ASTM D 1505(水中置換法)に従って、ALFA MIRAGE社電子比重計MD-300Sを用い、水中と空気中で測定された各試料の重量から算出した。
【0086】
(5)4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)のメルトフローレート(MFR)
JIS K7210に従って、230℃、試験荷重2.16kgfの条件で測定した。
【0087】
(6)剥離層のシートに対する静摩擦係数
スリップ試験:試験速度200mm/分とするほかは、ASTM D1893に準拠して、気温23℃、相対湿度50%で、静摩擦係数を測定した。
【0088】
(7)剥離層の引張荷重
引張伸び2%での引張荷重:剥離層に対する引張試験条件として、剥離層の試験片サイズ:短冊状・幅15mm、チャック間距離100mm、引張速度100mm/分とし、試験片のMD方向に対して、試験環境:気温23℃、相対湿度50%として、引張伸び2%での引張荷重[N/15mm]を求めた。
【0089】
<材料>
実施例および参考例で用いた材料について以下に示す。
(1)4-メチル-1-ペンテン系重合体(a):4-メチル-1-ペンテンとプロピレンとの共重合体(4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の含有量:72モル%、プロピレン由来の構成単位の含有量:28モル%)
・損失正接(tanδ)の極大値を示す温度:28℃
・損失正接の極大値:2.6
・ガラス転移温度:28℃
・135℃のデカリン中での極限粘度[η]:1.5dL/g
・密度:0.84g/cm
・MFR:10g/10min
【0090】
(2)発泡剤
・化学発泡剤:永和化成工業社製ポリスレン EE275F
【0091】
(3)剥離層
・剥離層1:二軸延伸ポリプロピレン両面粗化品(三井化学東セロ社製「WH-OP FM-0」)
・剥離層2:二軸延伸ポリプロピレン両面平滑品(王子エフテックス社製「アルファン SD-101)
・剥離層3:無延伸ポリプロピレン単層(オカモト社製「アロマーU #50」)
・剥離層4:低密度ポリエチレン単層(東洋紡社製「リックスフィルム/LIX-NP L4102」)
・剥離層5:二軸延伸PET単層(東レ社製「ルミラー #50-S10)
・剥離層6:片面シリコーン離型コート付二軸延伸PETフィルム(三井化学東セロ社製「SP-PET PET-01-T」)
・剥離層7:シリコーン/ポリエチレン/クラフト紙/ポリエチレン(住化加工紙社製「スミリーズ SLK-50WST」)
・剥離層8:シリコーン/ポリエチレン/上質紙(住化加工紙社製「スミリーズ SLK-64WV2」)
【0092】
<シート(A)の作製>
上記材料を用いて、以下に示す手順により、4-メチル-1ペンテン共重合体を含むシート(以下、「シート(A)」)を作成した。
【0093】
(1)シート(A-1)の作製
4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)を用いた発泡シートを作製した。
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:50mm、フルフライトスクリュー、スクリュー有効長をLとしたときL/D:32mm)、Tダイ(ダイ幅:320mm、リップ開度:0.34mm)、冷却ロール(外径50mm、鏡面仕上げ硬質クロムメッキ表面処理付のスチール製、水冷式)、および引取機、とからなる装置を用いた。
まず、4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)100質量部に対して化学発泡剤(永和化成工業社製ポリスレンEE275F)を3質量部の配合比でドライブレンドし、得られた混合物をホッパーにそれぞれ投入した。シリンダー各部の温度115℃~190℃、スクリュー回転数10rpmの条件で各成分原料を溶融・混練し、シリンダーヘッド部の樹脂温度160℃で、押出量3kg/時間となるようにTダイから押出した。押し出された発泡シートは、冷却ロール(ロール内部通水温度25℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.6m/分)、シート幅約280mmの4-メチル-1-ペンテン共重合体発泡シート(以下「シート(A-1)」とする)を得た。
【0094】
得られたシート(A-1)の物性は以下のとおりである。
・損失正接(tanδ)の極大値を示す温度:28℃
・損失正接の極大値: 2.6
・厚さ:0.5mm
・密度:0.66g/cm
【0095】
(2)シート(A-2)の作製
4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)100質量部からなる無発泡シートを作製した。
成形機としては、単軸押出成形機(シリンダー内径D:20mm、フルフライトスクリュー、スクリュー有効長をLとしたときL/D:28mm)、Tダイ(ダイ幅:300mm、リップ開度:0.6mm)、冷却ロール(外径200mm、鏡面仕上げ硬質クロムメッキ表面処理付のスチール製、水冷式)、および引取機、とからなる装置を用いた。
4-メチル-1-ペンテン系重合体(a)100質量部を成形機ホッパーに投入し、シリンダー各部の温度115~230℃、スクリュー回転数118rpmの条件で原料を溶融・混練し、シリンダーヘッド部の樹脂温度230℃で、押出量3.3kg/時間となるようにTダイから押出した。押し出された無発泡シートは、冷却ロール(ロール内部通水温度20℃)で冷却して、引取機を用いて引き取り(引取速度0.7m/分)、シート幅約280mmの4-メチル-1-ペンテン共重合体無発泡シート(以下「シート(A-2)」とする)を得た。
【0096】
得られたシート(A-2)の物性は以下のとおりである。
・損失正接(tanδ)の極大値を示す温度:28℃
・損失正接の極大値:2.6
・厚さ:0.6mm
・密度:0.84g/cm
【0097】
<評価>
続いて、表1に示す組み合わせとなるようにして、シート(A)と、各剥離層(以下「セパレータ(B)」とする)とを用いて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
なお、表1中、シート(A)のおもて面とはシート作製時に冷却ロールと直接接触する側とし、うら面とはおもて面の反対面を示す。また、セパレータ(B)のおもて面とはロール体としたときの巻外面を示し、うら面とはロール体としたときの巻内面を示す。但し、セパレータ(B)の片面にシリコーン層がある場合、シリコーン層がある面をうら面とし、その反対面をおもて面とした。
【0099】
(1)ロール体(巻物)の縦置保管時のずれ量測定
セパレータ(B)とシート(A)とを交互に重ねるようにして円筒状芯材の外周面に巻いて巻物としたものを縦置きした際のずれ量を評価した。
まず、セパレータ(B)、及びシート(A)共に、幅280mm、全長約5mを用意した。円管状の芯材として、円管の長さ方向に対し垂直な両端面を有する紙管(内径50.8mm、肉厚2mm、長さ400mm)を用いた。紙管に対して、紙管の長手方向の中間に、セパレータ(B)、及びシート(A)の幅方向の中間が一致するようにし、シート(A)(うら面)を紙管側となるようにし、シート(A)(おもて面)は、セパレータ(B)(うら面)に対し、直接、接触するようにして連続して巻き取った。ここで、巻き始める前に、予め、紙管の外周面に対し、セパレータ(B)と共にシート(A)の巻き始める側の端面を粘着テープで固定しておいた。その後、自動巻取機を用いて、巻取張力3N、巻取速度1m/分で、シート(A)とセパレータ(B)を同時に巻き取った。シート(A)の総巻取長さは3mとした。なお、巻き取る際、紙管に平行かつ円形断面の中心を通る中心軸が水平方向になるようにした。また、巻き取ったあと、セパレータ(B)の巻き終わりの端面を粘着テープで固定し、外れないようにした。さらに、巻物の外周面に紙管の長手方向の中間、すなわち、紙管の両端面から200mmの位置に巻ずれ前の基準位置として、油性マジックで印を付した。
次いで、巻取機から水平方向の巻物を静かに取り外し、剛直かつ平坦な水平面をもつスチール製の定盤の上面に、紙管の長手方向に平行かつ円形断面の中心を通る中心軸が、水平方向から鉛直方向に平行な縦置きとなるよう巻物を静置した。このとき、紙管の長手方向の両端のうち、その片側の端面のみが、スチール製定盤の上面に接触していることとなる。
その後、巻物の自重により、印をつけた位置が鉛直下方にずれているかどうかを調べるため、巻物を縦置きにしてから10分経過後、紙管の長手方向の中間位置から下方への巻きずれ量(mm)を物差しで測定し、以下の基準で評価した。
シート(A):縦3m×幅280mm
セパレータ(B):縦3m×幅280mm
試験環境:気温23℃、相対湿度50%
・基準
〇:巻ずれ量が2mm未満
△:巻ずれ量が2mm以上5mm以下
×:巻ずれ量が5mm以上
【0100】
(2)ブロッキング力
セパレータ(B)とシート(A)間のブロッキング力を以下の方法により評価した。
(I)セパレータ(B)(うら面)とシート(A)(おもて面)との重ね合わせに対するブロッキング力測定
まず、セパレータ(B)、シート(A)のそれぞれを短冊状に縦100mm×幅50mmに切り出した。次いで、当該短冊片を長手方向に対し、セパレータ(B)(うら面)とシート(A)(おもて面)とを重ね合わせた。重ね合わせた二枚の試験片(縦100mm×幅50mm)の半分の面積部分に相当する部分(縦50mm×幅50mm)に対し、上下方向から2枚の黄銅製平板で挟み、その黄銅製平板の上に、トータル荷重(上部一枚の黄銅製平板の自重を含む)が24.5Nとなるように錘を載せた。次いで、恒温槽内で40℃の環境下に24時間静置した。その後、錘を除荷して、室温で30分放置した。
次いで、水平方向に固定した丸棒(外径6mmのステンレス鋼製チューブにポリテトラフルオロエチレンを含浸したガラスクロス製粘着テープ(厚さ80μm)を貼り付けたもの)を試験片のセパレータ(B)(うら面)とシート(A)(おもて面)との重ね合わせ部分の隙間に入れ、引張試験機を用いて下記の条件で丸棒に対し垂直方向に試験片を引っ張り、試験片のセパレータ(B)(うら面)とシート(A)(おもて面)とを引き剥がし、ブロッキング力(=引き剥がし力(N)/試験片幅(50mm))を測定した。ここで、試験片を剥離したときの荷重の初期値を引き剥がし力(N)とした。
試験片:縦100mm×幅50mm
試験環境:気温23℃、相対湿度50%
引張速度:50mm/分
得られたブロッキング力に基づいて、セパレータ(B)/シート(A)の間のブロッキング力レベルを以下の基準で評価した。
・基準
◎:ブロッキング力が0.2N/50mm未満
○:ブロッキング力が0.2N/50mm以上3N/50mm未満
△:ブロッキング力が3N/50mm以上10N/50mm未満
×:ブロッキング力が10N/50mm以上
(II)セパレータ(B)(おもて面)とシート(A)(うら面)との重ね合わせに対するブロッキング力測定
前記(I)と同様に、セパレータ(B)(おもて面)とシート(A)(うら面)との重ね合わせに対し、ブロッキング力を測定した。
【0101】
(3)巻物の巻出時の剥離性評価方法
セパレータ(B)とシート(A)とを共に同時に巻き取った巻物から、巻き出す際の取り扱い性にかかわるシート(A)とセパレータ(B)間の剥離性について、以下の方法で評価した。
まず、巻物として、前述した「巻ずれ量測定」の際に用いた巻物と同じ方法で、巻物を作製した。
次いで、巻物を縦置にした状態を維持した上で、恒温槽内で40℃の環境下に24時間静置した。
その後、巻物をとり出し、気温23℃、相対湿度50%の環境下で6時間冷却した。
巻物からセパレータ(B)とシート(A)とを人の手で引き剥がす際の剥がし易さを以下の基準に従い、評価した。
・基準
〇:セパレータ(B)とシート(A)間で、密着があるが、スムーズに剥がれる。
△:セパレータ(B)とシート(A)間で、引き剥がそうとすると、密着力が高く、シート(A)に引張伸びを伴いながら、剥がれる。
×:密着力が高く、剥離界面で、強固にブロッキングして剥がれない。
【0102】
【表1】
【0103】
この出願は、2020年3月27日に出願された日本出願特願2020-057581号を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。
【符号の説明】
【0104】
10 ロール体
11 シート
12 剥離層
13 巻芯
20 支持部材
21 凹部
23 梱包容器
30 梱包体
図1
図2
図3